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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164349
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ワッシャ
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/04 20060101AFI20241120BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F16C17/04 Z
F16C33/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079761
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄三
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA09
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA03
3J011MA08
3J011PA02
3J011RA03
(57)【要約】
【課題】フリクションを低減することができるワッシャを提供する。
【解決手段】第1面10aにおいて周方向に複数設けられた第1ランド部11aと、第1ランド部11aの周方向両側に隣接して設けられ、第1ランド部11aに対して周方向に離間するに従いスラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第1テーパ部12aと、第2面10bにおいて周方向に複数設けられた第2ランド部11bと、第2ランド部11bの周方向両側に隣接して設けられ、第2ランド部11bに対して周方向に離間するに従いスラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第2テーパ部12bと、を具備し、第1ランド部11aは、第1ランド部11aの周方向における中央が、互いに隣り合う2つの第2ランド部11bの間の周方向における中央に位置する場合の位相差には至らない範囲で、第2ランド部11bに対して周方向の位相が異なるように配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材のスラスト方向の荷重を受けるワッシャであって、
前記スラスト方向一方側の面である第1面において、周方向に複数設けられた第1ランド部と、
前記第1面において、前記第1ランド部の前記周方向両側に隣接してそれぞれ設けられ、前記第1ランド部に対して前記周方向に離間するに従い前記スラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第1テーパ部と、
前記スラスト方向他方側の面である第2面において、前記周方向に複数設けられた第2ランド部と、
前記第2面において、前記第2ランド部の前記周方向両側に隣接してそれぞれ設けられ、前記第2ランド部に対して前記周方向に離間するに従い前記スラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第2テーパ部と、
を具備し、
前記第1ランド部は、当該第1ランド部の前記周方向における中央が、互いに隣り合う2つの前記第2ランド部の間の前記周方向における中央に位置する場合の位相差には至らない範囲で、前記第2ランド部に対して前記周方向の位相が異なるように配置されている、
ワッシャ。
【請求項2】
前記第1ランド部は、当該第1ランド部の前記周方向における中央が、互いに隣り合う2つの前記第2ランド部の間の前記周方向における中央に位置する場合の位相差の半分の位相差には至らない範囲で、前記第2ランド部に対して前記周方向の位相が異なるように配置されている、
請求項1に記載のワッシャ。
【請求項3】
前記第1ランド部及び前記第2ランド部は、
前記スラスト方向に見て一部が互いに重複している、
請求項1に記載のワッシャ。
【請求項4】
前記第1面において、前記第1テーパ部のうち前記第1ランド部とは隣接しない側で、前記第1テーパ部と前記周方向に隣接し、潤滑油の流通路となる第1油溝と、
前記第2面において、前記第2テーパ部のうち前記第2ランド部とは隣接しない側で、前記第2テーパ部と前記周方向に隣接し、潤滑油の流通路となる第2油溝と、
を具備し、
前記第1ランド部は、
前記スラスト方向に見て、前記第2油溝と重複しない、
請求項1に記載のワッシャ。
【請求項5】
前記第1面及び前記第2面は、
前記第1ランド部、前記第1テーパ部及び前記第1油溝と、前記第2ランド部、前記第2テーパ部及び前記第2油溝と、の前記周方向の位相差を除いて、互いに同様な形状に形成されている、
請求項4に記載のワッシャ。
【請求項6】
前記ワッシャは、
樹脂で形成されている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト方向の荷重を受けるワッシャの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラスト方向の荷重を受けるワッシャの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、スラスト方向の荷重を受ける面に、ランド部と、ランド部に対して周方向に傾斜するテーパ部と、が形成されたワッシャが開示されている。特許文献1に記載のワッシャは、スラスト方向の荷重が掛かる使用状態で、スラスト方向の負荷に応じて、摺動対象の面とテーパ部とが成す角度が小さくなるように変形する。これにより、上記角度が比較的小さく形成されたくさび状の隙間に潤滑油を誘導させることができ、くさび効果により油膜圧力を高めることができる。
【0004】
しかしながら、上述のようなワッシャでは、スラスト方向の負荷によりワッシャが過度に変形した場合、上記くさび状の隙間を形成することが困難になり、かえって油膜の形成が抑制され、フリクションが増大するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-180582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、フリクションを低減することができるワッシャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、回転部材のスラスト方向の荷重を受けるワッシャであって、前記スラスト方向一方側の面である第1面において、周方向に複数設けられた第1ランド部と、前記第1面において、前記第1ランド部の前記周方向両側に隣接してそれぞれ設けられ、前記第1ランド部に対して前記周方向に離間するに従い前記スラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第1テーパ部と、前記スラスト方向他方側の面である第2面において、前記周方向に複数設けられた第2ランド部と、前記第2面において、前記第2ランド部の前記周方向両側に隣接してそれぞれ設けられ、前記第2ランド部に対して前記周方向に離間するに従い前記スラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第2テーパ部と、を具備し、前記第1ランド部は、当該第1ランド部の前記周方向における中央が、互いに隣り合う2つの前記第2ランド部の間の前記周方向における中央に位置する場合の位相差には至らない範囲で、前記第2ランド部に対して前記周方向の位相が異なるように配置されているものである。
【0009】
請求項2においては、前記第1ランド部は、当該第1ランド部の前記周方向における中央が、互いに隣り合う2つの前記第2ランド部の間の前記周方向における中央に位置する場合の位相差の半分の位相差には至らない範囲で、前記第2ランド部に対して前記周方向の位相が異なるように配置されているものである。
【0010】
請求項3においては、前記第1ランド部及び前記第2ランド部は、前記スラスト方向に見て一部が互いに重複しているものである。
【0011】
請求項4においては、前記第1面において、前記第1テーパ部のうち前記第1ランド部とは隣接しない側で、前記第1テーパ部と前記周方向に隣接し、潤滑油の流通路となる第1油溝と、前記第2面において、前記第2テーパ部のうち前記第2ランド部とは隣接しない側で、前記第2テーパ部と前記周方向に隣接し、潤滑油の流通路となる第2油溝と、を具備し、前記第1ランド部は、前記スラスト方向に見て、前記第2油溝と重複しないものである。
【0012】
請求項5においては、前記第1面及び前記第2面は、前記第1ランド部、前記第1テーパ部及び前記第1油溝と、前記第2ランド部、前記第2テーパ部及び前記第2油溝と、の前記周方向の位相差を除いて、互いに同様な形状に形成されているものである。
【0013】
請求項6においては、前記ワッシャは、樹脂で形成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、フリクションの低減を図ることができる。
【0016】
請求項2においては、より好適にフリクションの低減を図ることができる。
【0017】
請求項3においては、より好適にフリクションの低減を図ることができる。
【0018】
請求項4においては、より好適にフリクションの低減を図ることができる。
【0019】
請求項5においては、第1面及び第2面の両面で、フリクションが増大することを抑制することができる。
【0020】
請求項6においては、より好適にフリクションの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係るワッシャを示す正面図。
図2】プラネタリ減速機の一部分を示す側面断面図。
図3図1におけるX-X断面図。
図4】(a)ピニオンギヤを第2回転方向に回転させた場合のワッシャの摺動の様子を模式的に示す側面断面図。(b)ピニオンギヤを第1回転方向に回転させた場合のワッシャの摺動の様子を模式的に示す側面断面図。
図5】(a)ピニオンギヤを第2回転方向に回転させた場合のワッシャの高さの変化を示すグラフ。(b)ピニオンギヤを第1回転方向に回転させた場合のワッシャの高さの変化を示すグラフ。
図6】(a)ワッシャのフリクションの変化を示すグラフ。(b)比較例のワッシャの摺動の様子を模式的に示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の一実施形態に係るワッシャ1について説明する。また、以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明する。また、各図においては、説明の便宜上、部材の形状や大きさを適宜変更している場合がある。
【0023】
ワッシャ1は、回転部材のスラスト方向の荷重を受けるスラストワッシャである。本実施形態では、回転部材としてのピニオンギヤ5を備えるプラネタリ減速機2に、ワッシャ1を取り付ける例を説明する。以下では、まずプラネタリ減速機2について説明する。
【0024】
図2に示すプラネタリ減速機2は、動力の回転速度を落として出力する装置である。プラネタリ減速機2は、例えば電気自動車(EV車)のモータの回転速度の減速に用いられる。なお、プラネタリ減速機2としては、電気自動車のモータの減速に使用されるものに限定されず、種々の動力の減速に使用可能である。
【0025】
プラネタリ減速機2は、モータの駆動力により回転するサンギヤ3と、サンギヤ3の径方向外側に設けられる環状のリングギヤ4と、サンギヤ3から伝達された駆動力をリングギヤ4に伝達すると共に、リングギヤ4に沿って移動するピニオンギヤ5と、を備えている。ピニオンギヤ5は、例えば樹脂(合成樹脂)により形成される。ピニオンギヤ5は、前後方向に軸線を向けた軸部6、及び軸部6に装着される軸受7を介して、キャリア8に対して支持されている。ピニオンギヤ5のリングギヤ4に沿う移動に伴い、キャリア8はリングギヤ4に対して回転する。上述のように回転するキャリア8により、減速された駆動力が出力される。なお、ピニオンギヤ5は、周方向の両方向(後述する第1回転方向及び第2回転方向)に回転可能である。
【0026】
図2に示すように、キャリア8は、ピニオンギヤ5の前後方向両側において、軸部6の両端を支持する。以下では、キャリア8のうち、ピニオンギヤ5の前面に対向する部分を前部8a、ピニオンギヤ5の後面に対向する部分を後部8bと称して説明する。ピニオンギヤ5の前面と前部8aとの間、及びピニオンギヤ5の後面と後部8bとの間には、ワッシャ1がそれぞれ配置される。
【0027】
以下では、図1から図3までを用いて、ワッシャ1について説明する。なお以下では、前後のワッシャ1のうち、ピニオンギヤ5の後方側のワッシャ1に注目して説明を行う。
【0028】
ワッシャ1は、環状の板形状に形成される。ワッシャ1は、例えば樹脂(合成樹脂)により形成される。具体的には樹脂として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等を採用可能である。なお、樹脂としてはPPS樹脂に限定されず、種々の樹脂を採用可能である。また、ワッシャ1は、例えば射出成型により形成される。ワッシャ1の厚さ寸法は、例えば1.0mm程度に形成される。ワッシャ1を樹脂で形成した場合には、射出成型等によりワッシャ1を容易に製造可能である。また、金属製のワッシャと比較して製造コストの低減を図ることができる。また、ワッシャ1をスラスト方向に弾性変形させ易くなるため、油膜の形成を促し易くなる。なお、ワッシャ1の弾性変形の詳細な説明は後述する。
【0029】
ワッシャ1は、厚さ方向を前後方向に向けて配置される。ワッシャ1は、ピニオンギヤ5及びキャリア8に対して相対的に摺動する摺動面10を有する。摺動面10には、ピニオンギヤ5に対して相対的に摺動する面(前面)である第1面10aと、キャリア8(後部8b)に対して摺動する面(後面)である第2面10bと、が含まれる。なお以下では、ピニオンギヤ5のうち、ワッシャ1の第1面10aに対して摺動する面(後面)を、「摺動面5a」と称する(図4を参照)。
【0030】
ワッシャ1は、正面視中心において前後方向に開口し、軸部6が挿通される孔10cを有する。ワッシャ1は、軸部6に支持された状態で、ピニオンギヤ5とキャリア8との間で前後方向(スラスト方向)の荷重を受ける。ワッシャ1は、ランド部11、テーパ部12、油溝13及び切欠部14を具備する。なお以下では、主としてワッシャ1の第1面10a側に注目して、ワッシャ1の各部の説明を行う。
【0031】
図1及び図3に示すランド部11は、摺動対象(ピニオンギヤ5やキャリア8)に対して摺動する部分である。ランド部11は、前後方向(スラスト方向)に対して垂直な面(平坦面)を有する。ランド部11は、摺動面10(第1面10a)において、周方向に沿う所定の範囲に亘って形成される。ランド部11の範囲は、ランド部11の周方向両端部と、ワッシャ1の正面視中心(中心軸O)と、が成す角度θ1によって特定される(図1を参照)。本実施形態では、θ1を20°程度に設定している。
【0032】
図3に示すように、ランド部11は、ワッシャ1の厚さ方向の中心に対して、所定の高さ(厚さ)を有する。図3では、ランド部11の高さ寸法をd1として示している。また、図1に示すように、ランド部11は、第1面10aに複数設けられている。本実施形態では、周方向に間隔を開けて3つのランド部11を設けている。
【0033】
図1及び図2に示すテーパ部12は、ランド部11に対して傾斜する傾斜面を有する部分である。テーパ部12は、ランド部11の周方向両側に隣接するように一対配置される。一対のテーパ部12は、互いに周方向に対称に形成される。テーパ部12は、第1面10aにおいて、周方向に沿う所定の範囲に亘って形成される。テーパ部12の範囲は、テーパ部12の周方向両端部と、中心軸Oと、が成す角度θ2によって特定される(図1を参照)。本実施形態では、θ2を42.5°程度に設定している。
【0034】
図3に示すように、テーパ部12は、ランド部11に対して周方向に沿って離間するに従い、徐々に高さ(ワッシャ1の厚さ)が小さくなるように傾斜する。換言すれば、テーパ部12は、ランド部11に対して徐々に凹むように傾斜する。図3では、テーパ部12のうち最も高さが小さい部分のランド部11に対する深さ寸法をd2として示している。d2としては、例えば0.025mm程度の値を採用可能である。また、d2は、例えば0.04mm以下であることが望ましく、0.01mm程度(例えば0.005mm以上、0.015mm未満)であることがより望ましい。また、図1に示すように、一対のテーパ部12は、複数のランド部11に対応するように、周方向に複数設けられる。本実施形態では、第1面10aに、一対のテーパ部12を3組設けている。
【0035】
油溝13は、ワッシャ1の内周面(孔10c側)から、外周面側へ潤滑油を流通させ、テーパ部12へ供給する部分である。油溝13には、軸部6から潤滑油が供給される。油溝13は、テーパ部12の周方向における端部(反ランド部11側の端部)に隣接するように配置される。油溝13は、第1面10aにおいて、周方向に沿う所定の範囲に亘って形成される。油溝13の範囲は、油溝13の周方向両端部と、中心軸Oと、が成す角度θ3によって特定される(図1を参照)。本実施形態では、θ3を15°程度に設定している。
【0036】
図3に示すように、油溝13は、テーパ部12の周方向における端部(反ランド部11側の端部)に対して凹むように形成される。図3では、ランド部11に対する油溝13の深さ寸法をd3として示している。d3としては、例えば0.2mm程度の値を採用可能である。図1に示すように、油溝13は、複数のテーパ部12に対応するように、周方向に複数設けられる。本実施形態では、第1面10aに3つのランド部11を設けている。
【0037】
図1に示す切欠部14は、孔10cが形成されたワッシャ1の内周面において、径方向に切り欠かれた部分である。切欠部14は、正面視において略半円形状に形成される。切欠部14は、周方向に複数設けられる。本実施形態では、ランド部11及び油溝13に対応する(径方向に視て重複する)位置に、それぞれ(合計6つの)切欠部14を設けている。
【0038】
図1に示すように、ワッシャ1の第1面10aには、1つのランド部11と、当該ランド部11の両側に隣接した一対のテーパ部12と、一対のテーパ部12のいずれか一方に隣接した1つの油溝13と、からなる一組の各部が、3つ設けられている。上記一組の各部は、周方向に沿って、上記一組の各部を構成する角度の和(θ1+θ2+θ2+θ3)に相当する位相(本実施形態では120°の位相)ごとに設けられている。
【0039】
以上、ワッシャ1の第1面10a側に注目して、ワッシャ1の各部(ランド部11、テーパ部12及び油溝13)について説明を行った。図3に示すように、上記各部は、ワッシャ1の第2面10b側にも形成されている。ワッシャ1の第2面10b側に形成された各部の形状は、第1面10a側に形成された各部と概ね同形状である。
【0040】
ここで、ワッシャ1は、第1面10a側に形成された各部(ランド部11、テーパ部12及び油溝13)と、第2面10b側に形成された各部と、の周方向の位相が互いに異なるように形成されている。すなわち、ワッシャ1は、第1面10a側に形成された各部と、第2面10b側に形成された各部と、の周方向の位相差を除いて、第1面10a及び第2面10bが互いに同様な形状に形成されている。以下では、第1面10a側及び第2面10b側の各部の位置関係について説明する。
【0041】
なお以下では、必要に応じて、第1面10a側に形成された各部をそれぞれ第1ランド部11a、第1テーパ部12a及び第1油溝13aと称し、第2面10b側に形成された各部をそれぞれ第2ランド部11b、第2テーパ部12b及び第2油溝13bと称する。また、以下では、ワッシャ1の周方向のうち、正面視における反時計回り方向を第1回転方向、時計回りを第2回転方向と称する。
【0042】
図3に示すように、第2ランド部11b、第2テーパ部12b及び第2油溝13bは、第1ランド部11a、第1テーパ部12a及び第1油溝13aに対して、第1回転方向に位相が僅かにずれるように配置されている。図3に示す例では、第1ランド部11aの一部(第1回転方向側の端部)と、第2ランド部11bの一部(第2回転方向側の端部)と、が正面視で(前後方向に見て)重複する範囲で、第1面10a側及び第2面10b側の各部の位相がずれている。
【0043】
このように、図3に示す例では、第1ランド部11a及び第2ランド部11bが、正面視で重複しなくなる位相差には至らない範囲で、第1面10a側及び第2面10b側の各部の周方向の位相がずれている。換言すれば、本実施形態における第1面10a側及び第2面10b側の各部の周方向の位相差は、0°より大きく、θ1(例えば20°)より小さい範囲の位相差である(図1を参照)。
【0044】
次に、図4を用いて、ワッシャ1の摺動の様子について説明する。なお、図4では、説明の便宜上、ワッシャ1の第1面10aと、ピニオンギヤ5の摺動面5aと、を離間させて図示している。
【0045】
まず、図4(a)を用いて、ピニオンギヤ5を第2回転方向に回転させた場合のワッシャ1の摺動の様子を説明する。図例では、ピニオンギヤ5の摺動面5aに対して、第1ランド部11aを相対的に摺動させた例を示している。ここで、第1テーパ部12aと摺動面5aとの間には、くさび状の隙間Sが形成される。
【0046】
図4(a)において一点鎖線の矢印で示すように、第1油溝13aを流通する潤滑油は、ピニオンギヤ5の第2回転方向の回転に伴い、第1油溝13aに対して回転方向下流側の隙間S(第1ランド部11aに対して第1回転方向側に形成される隙間S)に誘導されて、第1ランド部11a側へ引き込まれる。この際に、くさび効果により、上記隙間Sに引き込んだ潤滑油による油膜圧力を高めることができる。これにより、摺動に伴うワッシャ1のフリクションが軽減される。
【0047】
図4(a)では、くさび効果により発生する油膜圧力を、破線で(破線で囲まれた範囲を塗りつぶして)模式的に示している。ワッシャ1の第1面10aのうち、第1ランド部11aと回転方向上流側の第1テーパ部12aとの境界付近の部分は、油膜圧力によるスラスト方向の荷重を大きく受ける。
【0048】
次に、図4(b)を用いて、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合のワッシャ1の摺動の様子を説明する。この場合においても、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合(図4(a)を参照)と概ね同様に、第1テーパ部12aと摺動面5aとの間には隙間Sが形成される。
【0049】
図4(b)に示すように、ピニオンギヤ5の第1回転方向の回転に伴い、第1油溝13aを流通する潤滑油は、第1油溝13aに対して回転方向下流側の隙間S(第1ランド部11aに対して第2回転方向側に形成される隙間S)に誘導されて、第1ランド部11a側へ引き込まれる。この際に、くさび効果により、上記隙間Sに引き込んだ潤滑油による油膜圧力を高めることができ、摺動に伴うワッシャ1のフリクションが軽減される。また、図4(b)に示す例でも、ワッシャ1の第1面10aのうち、第1ランド部11aと回転方向上流側の第1テーパ部12aとの境界付近の部分は、油膜圧力によるスラスト方向の荷重を大きく受ける。
【0050】
ここで、樹脂で形成されたワッシャは、金属製のワッシャ等と比べて弾性率が小さく、比較的弾性変形し易い。このような樹脂製のワッシャは、上記油膜圧力による荷重でスラスト方向に変形する場合がある。上記ワッシャにおいて、過度に変形した場合、くさび状の隙間Sの形成が困難となり、くさび効果を発生させ難くなるおそれがある。
【0051】
本実施形態に係るワッシャ1は、上述したように、第1面10a側及び第2面10b側の各部の周方向の位相差を好適にずらした構成を採用している。これにより、樹脂製でありながらも、スラスト方向の負荷により過度に変形することを抑制すると共に、スラスト方向の負荷に応じて適度に形状を変形させて、効果的にくさび効果を発生させ、フリクションの低減を図ることができる。
【0052】
以下では、本実施形態に係るワッシャ1の特徴的な構成を採用していない樹脂製のワッシャ20を比較対象として、本実施形態に係るワッシャ1の効果について説明する。図6(b)に示す比較対象のワッシャ20は、第1面10a側及び第2面10b側の各部の周方向の位相差が最も大きくなるように(逆位相の位相差となるように)形成されている。上記ワッシャ20は、断面視においてジグザグ状(皿バネ状)に形成されている。具体的には、ワッシャ20は、第1面10a側において油膜圧力によるスラスト方向の荷重を大きく受ける部分(第1ランド部11aと回転方向上流側の第1テーパ部12aとの境界付近の部分)と、第2面10b側における第2油溝13bの近傍部分(第2油溝13bが形成された部分や、第2テーパ部12bのうち第2ランド部11bに対して大きく凹んだ部分)と、が正面視において概ね重複している。
【0053】
上記ワッシャ20は、第1ランド部11aの周方向中央の位相が、隣り合う2つの第2ランド部11bの間(第2油溝13b)の周方向中央の位相と一致するような位相差となるように構成されている。また、換言すれば、ワッシャ20は、第1ランド部11a及び第2ランド部11bの周方向の位相差が、60°程度となるように構成されている。なお、60°は、一組の各部(ランド部11、一対のテーパ部12及び1つの油溝13)を構成する角度の和(θ1+θ2+θ2+θ3)の半分の角度である。また、ワッシャ20は、上記位相差を除いて、ワッシャ1と概ね同様に形成されている。
【0054】
上述の如く断面視においてジグザグ状に形成されたワッシャ20は、使用状態において過度に変形し易い。具体的には、ワッシャ20は、上記第1面10a側において荷重を受ける部分に対応する(スラスト方向に見て重複する)第2面10b側(後部8b側)の部分の概ね全体が、第2ランド部11bに対して大きく凹んでいる。このため、ワッシャ20は、上記第1面10a側において受けた荷重を、第2面10b側において支持し難く、第1テーパ部12aと摺動面5aとにより形成される角度(テーパ角)が過度に小さくなるように変形し易い。このため、ワッシャ20においては、くさび状の隙間の形成が困難となることから、くさび効果を発生させ難くなり、摺動に伴うフリクションが大きくなるおそれがある。なお、図6(b)ではピニオンギヤ5を第2回転方向に回転させた例を示しているが、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合でも、ワッシャ20は第2回転方向に回転させた場合と概ね同様に変形する。
【0055】
上記比較対象のワッシャ20とは異なり、本実施形態に係るワッシャ1は、スラスト方向の負荷により過度に変形することを抑制すると共に、スラスト方向の負荷に応じて適度に形状を変形させることができる。以下では、図4及び図5を用いて、ピニオンギヤ5の回転方向ごとに、スラスト方向の荷重によるワッシャ20の形状の変化について説明する。図5示すグラフでは、ピニオンギヤ5を回転させた場合のワッシャ1の形状の変化を示している。上記グラフでは、ピニオンギヤ5を回転させていない状態(無負荷時)のワッシャ1の形状を実線で示し、ピニオンギヤ5を回転させた状態(使用状態)のワッシャ1の形状を一点鎖線で示している。
【0056】
図4(a)に示すように、ワッシャ1は、ピニオンギヤ5を第2回転方向に回転させた場合に、油膜圧力によるスラスト方向の荷重を大きく受ける部分に対応する第2面10b側(後部8b側)の部分に、第2ランド部11bの近傍部分が位置している。具体的には、ワッシャ1は、第1面10a側において油膜圧力によるスラスト方向の荷重を大きく受ける部分(第1ランド部11aと回転方向上流側の第1テーパ部12aとの境界付近の部分)と、第2面10b側における第2ランド部11bの近傍部分(第2ランド部11bや、第2テーパ部12bのうち第2ランド部11b側の部分)と、が正面視において概ね重複している。このため、ワッシャ1は、上記第1面10a側において受けた荷重を、第2面10b側において好適に支持することができる。
【0057】
上述の如く形成されたワッシャ1は、ピニオンギヤ5を第2回転方向に回転させた場合に、スラスト方向の荷重により変形し難い。図5(a)に示すように、ピニオンギヤ5を第2回転方向に回転させた場合では、ワッシャ1の形状は、概ね変化していない。図4(a)に示すように、ワッシャ1は使用時において、第1テーパ部12aと摺動面5aとにより成されるテーパ角αが概ね維持される。これにより、隙間Sのくさび効果により油膜を効果的に形成することができ、摺動に伴うワッシャ1のフリクションを軽減することができる。
【0058】
また、図4(b)に示すように、ワッシャ1は、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合に、油膜圧力によるスラスト方向の荷重を大きく受ける部分に対応する第2面10b側(後部8b側)の部分が、第2ランド部11bに対してある程度凹んでいる。具体的には、ワッシャ1は、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合に、第1面10a側において油膜圧力によるスラスト方向の荷重を大きく受ける部分(第1ランド部11aと回転方向上流側の第1テーパ部12aとの境界付近の部分)と、第2面10b側における第2テーパ部12bの周方向中央側の部分と、が正面視において概ね重複している。このため、ワッシャ1は、図6(b)に示す比較対象のワッシャ20と比較して、上記第1面10a側において受けた荷重を、第2面10b側において好適に支持することができる。
【0059】
また、上述の如く形成されたワッシャ1は、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合に、スラスト方向の荷重により適度に変形し易い。図5(b)に示すように、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合、ワッシャ1は、油膜圧力を受ける部分(第1ランド部11aと、回転方向上流側の第1テーパ部12a)が、ある程度変形する。ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合のワッシャ1は、スラスト方向の変形に伴い、第1テーパ部12aと摺動面5aとにより成されるテーパ角α´が、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合のテーパ角αよりも小さく(鋭角に)なる(図4(b)を参照)。
【0060】
上述のように、隙間Sのテーパ角α´を小さく形成した場合には、より鋭角なくさび状の隙間Sに潤滑油を引き込み、くさび効果をより効果的に発生させることができる。これにより、油膜をより効果的に形成することで、摺動に伴うワッシャ1のフリクションを軽減することができる。
【0061】
図6(a)に示すグラフでは、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合と、ピニオンギヤ5を第2回転方向に回転させた場合と、のワッシャ1のフリクションモーメント(Nmm)の比較を行っている。上記グラフに示すように、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合のフリクションモーメントは3Nmm程度であるのに対し、ピニオンギヤ5を第2回転方向に回転させた場合のフリクションモーメントは6Nmm以上である。このことから、ワッシャ1は、ピニオンギヤ5を第1回転方向に回転させた場合の方が、フリクションモーメントが小さいことが示された。
【0062】
本実施形態においては、第1回転方向をピニオンギヤ5の正転方向(回転数の割合が大きい方向)に設定し、第2回転方向を逆転方向に設定している。このため、プラネタリ減速機2を好適に動作させることができ、フリクションによるエネルギーロスを削減することができる。また、本実施形態によれば、ピニオンギヤ5の回転方向に逆転方向が含まれる場合でも、回転数の割合が大きい正転方向におけるフリクションの低減の効果を高めているため、トータルのフリクションの低減を図ることができる。
【0063】
以上、本実施形態に係るワッシャ1の一例を説明した。なお、ワッシャ1の形状等は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0064】
上述した例では、ワッシャ1の各面(第1面10a及び第2面10b)のランド部11同士の関係に注目して、ワッシャ1の各面の周方向の位相差の範囲を特定した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、ワッシャ1の各面の他の部分同士の関係に注目して、上記位相差の範囲を特定することも可能である。
【0065】
例えば、ワッシャ1の各面のランド部11とテーパ部12との関係に注目して、上記位相差の範囲を特定することができる。本実施形態では、一対の第1テーパ部12aのうち、第1回転方向側の第1テーパ部12aの少なくとも一部が、第2ランド部11bと重複し、第2回転方向側の第1テーパ部12aの全部が、第2ランド部11bと重複しない範囲で、ワッシャ1の第1面10a側の各部と、第2面10b側の各部と、の周方向の位相を異ならせた構成を採用している(図4を参照)。
【0066】
また、ワッシャ1の各面のランド部11と油溝13との関係に注目して、上記位相差の範囲を特定することができる。本実施形態では、第1ランド部11aが、第2油溝13bと正面視で重複しない範囲で、ワッシャ1の第1面10a側の各部と、第2面10b側の各部と、の周方向の位相を異ならせた構成を採用している(図4を参照)。
【0067】
また、上述した例では、ワッシャ1を樹脂により形成した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、ワッシャ1を金属により形成してもよい。この場合は、ワッシャ1をプレス加工等により成型可能である。ワッシャ1を金属製とした場合は、ワッシャ1を変形し難く形成することができる。
【0068】
また、ワッシャ1を金属により形成した場合には、樹脂でワッシャ1を形成した場合と比較して、第1面10a側及び第2面10b側の各部の位相差がより大きくなるようにワッシャ1の形状を適宜変更可能である。
【0069】
この場合、例えばワッシャ1の第1面10a側及び第2面10b側の各部の周方向の位相差が、図6(b)のワッシャ20のような「逆位相の位相差」の半分の位相差に至らない範囲で、第1面10a側の各部と、第2面10b側の各部と、の位相を異ならせるようにしてもよい。
【0070】
また、例えばワッシャ1の第1面10a側及び第2面10b側の各部の周方向の位相差が、逆位相の位相差に至らない範囲で、第1面10a側の各部と、第2面10b側の各部と、の位相を異ならせるようにしてもよい。
【0071】
以上の如く、本実施形態に係るワッシャ1は、
回転部材(ピニオンギヤ5)のスラスト方向の荷重を受けるワッシャ1であって、
前記スラスト方向一方側の面である第1面10aにおいて、周方向に複数設けられた第1ランド部11aと、
前記第1面10aにおいて、前記第1ランド部11aの前記周方向両側に隣接してそれぞれ設けられ、前記第1ランド部11aに対して前記周方向に離間するに従い前記スラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第1テーパ部12aと、
前記スラスト方向他方側の面である第2面10bにおいて、前記周方向に複数設けられた第2ランド部11bと、
前記第2面10bにおいて、前記第2ランド部11bの前記周方向両側に隣接してそれぞれ設けられ、前記第2ランド部11bに対して前記周方向に離間するに従い前記スラスト方向の寸法が小さくなるように傾斜する複数の第2テーパ部12bと、
を具備し、
前記第1ランド部11aは、当該第1ランド部11aの前記周方向における中央が、互いに隣り合う2つの前記第2ランド部11bの間の前記周方向における中央に位置する場合の位相差(逆位相の位相差)には至らない範囲で、前記第2ランド部11bに対して前記周方向の位相が異なるように配置されているものである。
このように構成することにより、フリクションの低減を図ることができる。すなわち、ピニオンギヤ5を正転方向(第1回転方向)に回転させる場合に、適度に隙間Sのテーパ角α´が小さくなるようにワッシャ1を変形させることで、効果的にくさび効果を発生させて油膜の形成を促すことで、フリクションの低減を図ることができる。また、ピニオンギヤ5を逆転方向(第2回転方向)に回転させる場合は、ワッシャ1を変形させ難くすることができる。これにより、スラスト方向の荷重によりワッシャ1が過度に変形して隙間Sが形成されなくなり、フリクションが増大することを抑制することができる。このように、上記構成によれば、正転方向及び逆転方向の両方でフリクションの低減を図ることができる。
【0072】
また、前記第1ランド部11aは、当該第1ランド部11aの前記周方向における中央が、互いに隣り合う2つの前記第2ランド部11bの間の前記周方向における中央に位置する場合の位相差(逆位相の位相差)の半分の位相差には至らない範囲で、前記第2ランド部11bに対して前記周方向の位相が異なるように配置されているものである。
このように構成することにより、より好適にフリクションの低減を図ることができる。すなわち、スラスト方向の荷重によるワッシャ1の過度な変形をより効果的に抑制することで、フリクションが増大することを抑制することができる。
【0073】
また、前記第1ランド部及び前記第2ランド部は、
前記スラスト方向に見て一部が互いに重複しているものである。
このように構成することにより、より好適にフリクションの低減を図ることができる。特に、本実施形態のようにワッシャ1を樹脂で形成した場合でも、スラスト方向の荷重によりワッシャ1が過度に変形することを抑制することができる。これにより、ワッシャ1が過度に変形して隙間Sが形成されなくなり、フリクションが増大することを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態に係るワッシャ1は、
前記第1面10aにおいて、前記第1テーパ部12aのうち前記第1ランド部11aとは隣接しない側で、前記第1テーパ部12aと前記周方向に隣接し、潤滑油の流通路となる第1油溝13aと、
前記第2面10bにおいて、前記第2テーパ部12bのうち前記第2ランド部11bとは隣接しない側で、前記第2テーパ部12bと前記周方向に隣接し、潤滑油の流通路となる第2油溝13bと、
を具備し、
前記第1ランド部11aは、
前記スラスト方向に見て、前記第2油溝13bと重複しないものである。
このように構成することにより、より好適にフリクションの低減を図ることができる。すなわち、油膜圧力によりスラスト方向の荷重を大きく受け易いランド部11が形成された部分の厚さ寸法を確保することで、スラスト方向の荷重によりワッシャ1が過度に変形することを抑制することができる。これにより、ワッシャ1が過度に変形して隙間Sが形成されなくなり、フリクションが増大することを抑制することができる。
【0075】
また、前記第1面及び前記第2面は、
前記第1ランド部、前記第1テーパ部及び前記第1油溝と、前記第2ランド部、前記第2テーパ部及び前記第2油溝と、の前記周方向の位相差を除いて、互いに同様な形状に形成されているものである。
このように構成することにより、前記第1面10a及び前記第2面10bの両面で、フリクションが増大することを抑制することができる。
【0076】
また、前記ワッシャ1は、
樹脂で形成されているものである。
このように構成することにより、より好適にフリクションの低減を図ることができる。すなわち、フリクションを低減可能な樹脂によりワッシャ1を形成することができる。また、ワッシャ1を射出成型等により容易に形成することができる。
【0077】
なお、本実施形態に係るピニオンギヤ5は、本発明に係る回転部材の実施の一形態である。
【0078】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、本実施形態では、ワッシャ1の各面(第1面10a及び第2面10b)に、一組の各部(ランド部11、一対のテーパ部12及び1つの油溝13)を3つずつ設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、上記一組の各部を、ワッシャ1の各面に2つずつ設けるようにしてもよく、4つ以上設けるようにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、ワッシャ1に切欠部14を設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、切欠部14を設けないようにしてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、ワッシャ1を環状に形成した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、ワッシャ1を、半割り状(半円状)等、環状の部材を周方向に複数に分割した形状に形成してもよい。
【0082】
また、本実施形態では、ワッシャ1の摺動対象となる回転部材を、プラネタリ減速機2のピニオンギヤ5とした例を示したが、このような態様に限定されない。ワッシャ1の摺動対象としては、種々の回転部材を採用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 ワッシャ
2 プラネタリ減速機
5 ピニオンギヤ
11 ランド部
12 テーパ部
13 油溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6