(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164352
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ノイズ特定支援装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079765
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡 和久
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA10
2G036BB09
2G036BB22
(57)【要約】
【課題】ノイズ源を特定することを支援することができるノイズ特定支援装置を提供する。
【解決手段】ノイズ特定支援装置1は、モデル生成部41と、係数特定部42とを備える。モデル生成部41は、複数の電子部品を含む電気回路に生じるノイズを表す値を目的変数とし、電気回路を複数のブロックに分割して構成した複数の回路ブロックにおいてそれぞれの回路ブロックの動作状態を表す値を説明変数として回帰分析を行うことで、目的変数を、各回路ブロックにそれぞれ対応する説明変数、及び、説明変数ごとに求められる係数で表した重回帰式で示されるモデルを生成する。係数特定部42は、モデル生成部41により生成されたモデルの係数を特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品を含む電気回路に生じるノイズを表す値を目的変数とし、前記電気回路を複数のブロックに分割して構成した複数の回路ブロックにおいてそれぞれの前記回路ブロックの動作状態を表す値を説明変数として回帰分析を行うことで、前記目的変数を、各前記回路ブロックにそれぞれ対応する前記説明変数、及び、前記説明変数ごとに求められる係数で表したモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部により生成された前記モデルの前記係数を特定する係数特定部と、を備えることを特徴とするノイズ特定支援装置。
【請求項2】
前記説明変数は、前記回路ブロックの動作状態を表す値として、前記回路ブロックに流れる電流値、前記電子部品としてのスイッチング素子を駆動する周波数、及び、前記回路ブロックで通信される信号パターンを表す値の少なくとも1つの値を含み、
前記モデル生成部は、前記複数の回路ブロックにおいてそれぞれの前記回路ブロックの前記少なくとも1つの値を前記説明変数として回帰分析を行うことで、前記目的変数を、それぞれの前記回路ブロックの前記少なくとも1つの値ごとに対応する前記説明変数、及び、前記説明変数ごとに求められる前記係数で表した前記モデルを生成する請求項1に記載のノイズ特定支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ特定支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、ノイズ等に基づく異常値の影響を抑えることを可能とする機械学習装置が記載されている。この機械学習装置は、製造機械の内的データ及び外的データの少なくとも一方を含む入力データを取得する状態観測部と、入力データにおける異常を検出し、安全な入力データを出力する入力安全回路と、安全な入力データに基づいて学習モデルを用いた推論を実行し、推論結果としての推論データを出力する機械学習部と、推論データにおける異常を検出し、安全な推論データを出力する出力安全回路と、安全な推論データに基づく出力データを出力する出力部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載の機械学習装置は、ノイズ等に基づく異常値の影響を抑えるものである。ところで、従来、作業者は、電気回路に生じるノイズ源を特定する作業を行うことがある。この場合、作業者は、電気回路には複数の機能が含まれおり、また、電気回路を動作させる様々なデータパターンがあるため、膨大な量を検証する必要があり、作業工数の増加が問題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ノイズ源を特定することを支援することができるノイズ特定支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るノイズ特定支援装置は、 複数の電子部品を含む電気回路に生じるノイズを表す値を目的変数とし、前記電気回路を複数のブロックに分割して構成した複数の回路ブロックにおいてそれぞれの前記回路ブロックの動作状態を表す値を説明変数として回帰分析を行うことで、前記目的変数を、各前記回路ブロックにそれぞれ対応する前記説明変数、及び、前記説明変数ごとに求められる係数で表したモデルを生成するモデル生成部と、前記モデル生成部により生成された前記モデルの前記係数を特定する係数特定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るノイズ特定支援装置は、係数特定部により特定された係数に基づいて、電気回路で生じるノイズに影響を及ぼしていると推定される回路ブロックを特定することができ、特定した回路ブロックに基づいて電気回路のノイズ源を特定することを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るノイズ特定支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る説明変数としての複数の回路ブロックを示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るノイズ特定支援装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る信号パターンを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例に係るノイズ特定支援装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
図面を参照しながら実施形態に係るノイズ特定支援装置1について説明する。ノイズ特定支援装置1は、例えば、車載機器の電気回路ECに生じるノイズの発生源を特定することを支援するものである。ノイズ特定支援装置1は、例えば、車載機器を出荷する前のテスト環境下で使用される。ノイズ特定支援装置1は、
図1に示すように、入力部10と、出力部20と、記憶部30と、回帰分析部40とを備える。
【0011】
入力部10は、ノイズ特定支援装置1に対する種々の入力を行う機器である。入力部10は、例えば、ユーザからの各種の操作入力を受け付ける操作入力部、他の機器からのデータ(情報)入力を受け付けるデータ入力機器等によって実現される。操作入力部は、例えば、マウス、キーボード等により実現される。データ入力機器は、例えば、USBメモリ等の記録媒体から各種データを読み出す記録媒体インターフェース等によって実現される。
【0012】
出力部20は、ノイズ特定支援装置1から種々の出力を行う機器である。出力部20は、例えば、各種画像情報を出力して表示するディスプレイ、音情報を出力するスピーカ等によって実現される。
【0013】
記憶部30は、各種データを記憶する回路である。記憶部30は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。記憶部30は、例えば、ノイズ特定支援装置1が各種の機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶部30に記憶されるプログラムには、入力部10、出力部20、回帰分析部40等を機能させるプログラム等が含まれる。具体的には、記憶部30は、回帰分析部40による回帰分析用のプログラム、回帰分析で用いる各種データを記憶する。ここで、回帰分析用のプログラムは、例えば、回帰分析のプログラムが組み込まれた表計算ソフトや、統計解析用のRプログラミング言語を用いたプログラムによって実現され、これらは回帰分析の計算量に応じて適宜選択される。記憶部30は、回帰分析部40等によってこれらの各種データが必要に応じて読み出される。
【0014】
回帰分析部40は、目的変数及び説明変数を用いて回帰分析を行うものである。この例では、目的変数は、複数の電子部品Pや信号伝送路等を含んで構成される車載機器の電気回路ECに生じるノイズを表す値である。ここで、複数の電子部品Pは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、スイッチング素子としてのFET(Field EffectTransistor)、コンデンサ、インダクタ等であり、例えば、電源分配部やDC/DCコンバータ等の電源回路を構成する。目的変数は、これらの電子部品Pによって電気回路ECに生じるノイズを表す値として、例えば、データの誤りの比率を表すビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)である。ビットエラーレートは、電気回路ECに設けられる信号伝送路を介して送信側から受信側にデータを送信した際に、受信側で受信した、全データに対する誤ったデータの比率である。
【0015】
説明変数は、複数の回路ブロックBL(BL1~BLn)においてそれぞれの回路ブロックBLの動作状態を表す値である。ここで、各回路ブロックBLは、
図2に示すように、複数の電子部品Pを含む電気回路ECを複数のブロックに分割して構成したものである。例えば、各回路ブロックBLは、複数の電子部品Pを含む電気回路ECを、予め定められた領域ごとに分割して構成したブロックである。また、各回路ブロックBLは、複数の電子部品Pを含む電気回路ECを、機能ごとに分割して構成したブロックであってもよいし、その他の分割方法で分割してもよい。回路ブロックBLの動作状態を表す値、すなわち説明変数は、例えば、回路ブロックBLに流れる電流の電流値である。回帰分析部40は、上述の目的変数(例えば、ビットエラーレート)及び説明変数(例えば、電流値)を用いて回帰分析を行う。回帰分析部40は、モデル生成部41と、係数特定部42とを含んで構成される。
【0016】
モデル生成部41は、目的変数及び説明変数を用いて回帰分析を行うことでモデルを生成するものである。モデル生成部41は、例えば、電気回路ECに生じるノイズを表す値(例えば、ビットエラーレート)を目的変数とし、複数の回路ブロックBLにおいてそれぞれの回路ブロックBLの動作状態を表す値(例えば、電流値)を説明変数として重回帰分析を行うことで、目的変数を、各回路ブロックBLにそれぞれ対応する説明変数、及び、説明変数ごとに求められる係数で表したモデルを生成する。このモデルは、目的変数(ビットエラーレート)をyとし、説明変数(電流値)をXnとし、係数をanとした場合、以下の重回帰式(1)で表される(nは自然数)。
y=a1X1+a2X2+a3X3+・・・+anXn ・・・(1)
【0017】
モデル生成部41で用いる目的変数(y:ビットエラーレート)と各説明変数(Xn:電流値)とからなるデータセットは、電気回路ECをランダムに動作させることで取得される。このデータセットは、例えば、回路ブロックBL1に流れる電流の第1電流値(説明変数X1)、回路ブロックBL2に流れる電流の第1電流値(説明変数X2)、回路ブロックBL1及び回路ブロックBL2に第1電流値の電流を流した際のビットエラーレート(目的変数y)を含むデータセット、回路ブロックBL3に流れる電流の第2電流値(説明変数X3)、回路ブロックBL4に流れる電流の第2電流値(説明変数X4)、回路ブロックBL3及び回路ブロックBL4に第2電流値の電流を流した際のビットエラーレート(目的変数y)を含むデータセット等の複数のデータセットから構成されるビッグデータである。このビッグデータは、記憶部30に記憶されている。
【0018】
係数特定部42は、モデル生成部41により生成された上記重回帰式(1)で表されるモデルの係数を特定するものである。ここで、係数(a1~an)は、その値が相対的に大きいほど、当該係数に対応する説明変数、すなわち回路ブロックBLが、電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定される。例えば、電気回路ECに電流を印加した際に、説明変数X1の係数a1が説明変数X2の係数a2よりも大きい場合は、係数a1に対応する説明変数X1、すなわち電流が印加された回路ブロックBL1が、係数a2に対応する説明変数X2、すなわち電流が印加された回路ブロックBL2よりも、電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定される。これにより、ノイズ特定支援装置1は、電気回路ECのノイズ源を特定することを支援することができる。なお、係数特定部42は、係数の有意性を表す指標であるP値に基づいて、係数の有意性を判定する。係数特定部42は、例えば、P値が「0.05」以下である場合、係数に有意性があると判定し、P値が「0.05」を超える場合、係数に有意性がないと判定する。
【0019】
次に、ノイズ特定支援装置1の動作例について説明する。モデル生成部41は、記憶部30を参照して、目的変数(y:ビットエラーレート)と各説明変数(Xn:電流値)とからなるデータセットを取得する(ステップS1)。次に、モデル生成部41は、取得したデータセットの目的変数及び説明変数を用いて回帰分析を行うことでモデルを生成する(ステップS2)。モデル生成部41は、例えば、目的変数(ビットエラーレート)をyとし、説明変数(電流値)をXnとし、係数をanとした上述の重回帰式(1)で表されるモデルを生成する。次に、係数特定部42は、モデル生成部41により生成された上記重回帰式(1)で表されるモデルの係数(a1~an)を特定する。係数特定部42により特定された係数(a1~an)は、その値が相対的に大きいほど、当該係数(a1~an)に対応する説明変数Xn、すなわち回路ブロックBLが、電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定される。
【0020】
以上のように、実施形態に係るノイズ特定支援装置1は、モデル生成部41と、係数特定部42とを備える。モデル生成部41は、複数の電子部品Pを含む電気回路ECに生じるノイズを表す値を目的変数とし、電気回路ECを複数のブロックに分割して構成した複数の回路ブロックBLにおいてそれぞれの回路ブロックBLの動作状態を表す値を説明変数として回帰分析を行うことで、目的変数を、各回路ブロックBLにそれぞれ対応する説明変数、及び、説明変数ごとに求められる係数で表した重回帰式(1)で示されるモデルを生成する。係数特定部42は、モデル生成部41により生成されたモデルの係数を特定する。
【0021】
この構成により、ノイズ特定支援装置1は、係数特定部42により特定された係数に基づいて、電気回路ECで生じるノイズに影響を及ぼしていると推定される回路ブロックBLを特定することができ、特定した回路ブロックBLに基づいて電気回路ECのノイズ源を特定することを支援することができる。これにより、ノイズ特定支援装置1は、電気回路ECのノイズ源を特定する際に、作業工数の増加を抑制できる。ところで、近年、車両の機能を集約化して、分散していた機能を1つの基板に集約する傾向があり、この場合に、例えば、電源回路で生じるノイズが通信に影響を及ぼすことがある。このようなノイズを網羅的に検証するためには、膨大な量を検証する必要があり、作業工数の増加が懸念されるが、このような検証に対して、実施形態に係るノイズ特定支援装置1は、ノイズに影響を及ぼしていると推定される回路ブロックBLを特定することができるので、特に有効である。
【0022】
なお、上記説明では、説明変数Xnは、回路ブロックBLの動作状態を表す値として、回路ブロックBLに流れる電流値である例について説明したが、これに限定されない。説明変数Xnは、例えば、回路ブロックBLの動作状態を表す値として、回路ブロックBLに流れる電流値に加えて、さらに、電子部品Pとしてのスイッチング素子を駆動する周波数、及び、回路ブロックBLで通信される信号パターンを表す値を含んでもよい。ここで、信号パターンは、例えば、
図4に示すように、複数の異なる信号パターンがあり、それぞれの信号パターンが4ビットで表される値と対応付けられている。説明変数には、電気回路ECの信号伝送路で伝送される信号パターンに応じて、4ビットで表される値が設定される。
【0023】
モデル生成部41は、複数の回路ブロックBLにおいてそれぞれの回路ブロックBLの値(電流値、周波数、信号パターンを表す値)を説明変数として回帰分析を行うことで、目的変数を、それぞれの回路ブロックBLの値ごとに対応する説明変数、及び、説明変数ごとに求められる係数で表されるモデルを生成する。このモデルは、目的変数(ビットエラーレート)をyとし、説明変数(電流値)をXn1とし、説明変数(周波数)をXn2とし、説明変数(信号パターン)をXn3とし、説明変数(電流値)Xn1の係数をan1とし、説明変数(周波数)Xn2の係数をan2とし、説明変数(信号パターン)Xn3の係数をan3とした場合、以下の重回帰式(2)で表される(nは自然数)。
【0024】
y=(a11X11+a12X12+a13X13)+(a21X21+a22X22+a33X33)+・・・+(an1Xn1+an2Xn2+an3Xn3) ・・・(2)
【0025】
モデル生成部41で用いる目的変数(y:ビットエラーレート)と各説明変数(Xn1:電流値、Xn2:周波数、Xn3:信号パターン)とからなるデータセットは、電気回路ECをランダムに動作させることで取得される。複数のデータセットから構成されるビッグデータは、記憶部30に記憶されている。
【0026】
モデル生成部41は、記憶部30を参照して、目的変数(y:ビットエラーレート)と各説明変数(Xn1:電流値、Xn2:周波数、Xn3:信号パターン)とからなるデータセットを取得する。データセットを取得後、モデル生成部41は、上述の重回帰式(2)で表されるモデルを生成する。係数特定部42は、モデル生成部41により生成された上記重回帰式(2)で表されるモデルの係数(電流値:a11~an1、周波数:a12~an2、信号パターン:a13~an3)を特定する。係数特定部42により特定された係数は、その値が相対的に大きいほど、当該係数に対応する説明変数、すなわち回路ブロックBLの値(電流値、周波数、信号パターン)が、電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定される。ノイズ特定支援装置1は、ノイズに強い影響を及ぼしている回路ブロックBLを、値ごとに推定することができる。ノイズ特定支援装置1は、例えば、電気回路ECに電流を印加した際に、説明変数X11の係数a11が説明変数X21の係数a21よりも大きい場合は、係数a11に対応する説明変数X11、すなわち電流が印加された回路ブロックBL1が、係数a21に対応する説明変数X22、すなわち電流が印加された回路ブロックBL2よりも、電流の印加によって電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定することができる。また、ノイズ特定支援装置1は、電気回路ECのスイッチング素子を所定の周波数で駆動した際に、説明変数X12の係数a12が説明変数X22の係数a22よりも大きい場合は、係数a12に対応する説明変数X12、すなわちスイッチング素子を駆動した回路ブロックBL1が、係数a22に対応する説明変数X22、すなわちスイッチング素子を駆動した回路ブロックBL2よりも、スイッチング素子の駆動によって電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定することができる。また、ノイズ特定支援装置1は、電気回路ECの信号伝送路にそれぞれ異なる信号パターンを伝送させた際に、説明変数X13の係数a13が説明変数X23の係数a23よりも大きい場合は、係数a13に対応する説明変数X13、すなわち回路ブロックBL1が、係数a23に対応する説明変数X23、すなわち回路ブロックBL2よりも、信号パターンの変化によって電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定することができる。
【0027】
なお、上記説明では、目的変数は、ビットエラーレートである例について説明したが、これに限定されず、例えば、電子部品Pから放出される電磁波を測定したEMI(Emission)測定値、電気回路ECの電源回路から出力される出力電圧の誤差等のその他のノイズを表す値であってもよい。
【0028】
各説明変数は、回路ブロックBLに流れる電流値、回路ブロックBLに含まれるスイッチング素子を駆動する周波数、及び、回路ブロックBLで通信される信号パターンの少なくとも1つの値を含めばよい。また、各説明変数は、上述した電流値、周波数、信号パターン以外の値であってもよい。
【0029】
係数特定部42により特定された係数に基づいて、ノイズに強い影響を及ぼしている回路ブロックBLを自動的に推定してもよい。
図5は、実施形態の変形例に係るノイズ特定支援装置1Aの構成例を示すブロック図である。ノイズ特定支援装置1Aは、例えば、
図5に示すように、ノイズ影響推定部43さらに備える。ノイズ影響推定部43は、ノイズに強い影響を及ぼしている回路ブロックBLを自動的に推定するものである。ノイズ影響推定部43は、例えば、係数特定部42により特定された係数が予め定められた基準値以上である場合、当該係数に対応する説明変数、すなわち回路ブロックBLが、電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていると推定する。一方で、ノイズ影響推定部43は、係数特定部42により特定された係数が基準値未満である場合、当該係数に対応する説明変数、すなわち回路ブロックBLが、電気回路ECで生じるノイズに強い影響を及ぼしていないと推定する。このように、変形例に係るノイズ特定支援装置1Aは、ノイズに強い影響を及ぼしている回路ブロックBLを自動的に推定するノイズ影響推定部43を備えることで、作業工数の増加をより抑制できる。
【符号の説明】
【0030】
1 ノイズ特定支援装置
41 モデル生成部
42 係数特定部
BL 回路ブロック
EC 電気回路
P 電子部品