(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164353
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20241120BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
H02J7/00 302D
H02J7/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079766
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】奥田 定治
(72)【発明者】
【氏名】山口 隼人
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA17
5G503DB01
5G503EA05
(57)【要約】
【課題】電源を適正に制御することができる電源制御装置を提供する。
【解決手段】電源制御装置1において、制御部Mは、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに駆動電流を流す駆動モードと、駆動電流を遮断して暗電流を流す待機モードと、暗電流を遮断する遮断モードとに切り替え可能である。そして、制御部Mのリレー制御部42は、待機モードの際に、バッテリセンサ30により検出されたバッテリBの充電率が、暗電流遮断用の閾値以下である場合、リレー41を切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断し、待機モードから遮断モードに切り替える。スイッチ機構50は、遮断モードの際に、押下操作によって当該スイッチ機構50がオンされた場合、制御部Mの制御を介さずに遮断後のリレー41を切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力モードを切り替えて、車両に搭載されるバッテリから負荷部に供給される電力を制御する制御部と、
前記バッテリと前記負荷部との間に設けられ前記バッテリから前記負荷部に供給される電力を遮断可能なリレーと、
前記バッテリの充電率を検出する検出部と、
前記制御部による前記電力モードの切り替えとは別に、前記電力モードを切り替えるスイッチ機構と、を備え、
前記制御部は、前記電力モードの切り替えとして、前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に当該負荷部及び当該制御部を駆動させる駆動電流を流す駆動モードと、前記駆動電流を遮断しかつ前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に暗電流を流す待機モードと、前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に流れる暗電流を遮断する遮断モードとに切り替え可能であり、前記待機モードの際に、前記検出部により検出された前記バッテリの充電率が、予め定められる暗電流遮断用の閾値以下である場合、前記リレーを切り替えて前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に流れる暗電流を遮断し、前記待機モードから前記遮断モードに切り替え、
前記スイッチ機構は、前記遮断モードの際に、押下操作によって当該スイッチ機構がオンされた場合、前記制御部の制御を介さずに遮断後の前記リレーを切り替えて前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に暗電流を流し、前記遮断モードから前記待機モードに切り替えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記スイッチ機構は、前記車両の鍵を差し込むキーシリンダー内に設けられ、前記鍵を前記キーシリンダー内に差し込んだ際に当該鍵によって押下されてオンし、前記制御部の制御を介さずに遮断後の前記リレーを切り替える請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記駆動モードから前記待機モードに切り替える電源制御部、及び、前記待機モードから前記遮断モードに切り替えるリレー制御部を有し、
前記リレーは、第1接点が前記バッテリの正極に接続され、第2接点が前記負荷部に接続されオンオフされる接点部、及び、一端が前記接点部の第1接点と前記バッテリの正極との間の接続線に接続され、他端が前記リレー制御部に接続され、前記バッテリから供給される電力により励磁されることで前記接点部をオンするコイル部を有し、
前記リレー制御部は、第1接点が前記コイル部の他端に接続され、第2接点がグランドに接続される制御スイッチを有し、一端が前記リレーと前記負荷部との間の接続線に接続され、他端が当該リレー制御部に接続される電力供給線を介して前記バッテリから電力が供給され、
前記スイッチ機構は、第1接点が前記コイル部と前記制御スイッチとの間の接続線に接続され、第2接点がグランドに接続される請求項1又は2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記駆動モードから前記待機モードに切り替える電源制御部、及び、前記待機モードから前記遮断モードに切り替えるリレー制御部を有し、
前記リレーは、第1接点が前記バッテリの正極に接続され、第2接点が前記負荷部に接続されオンオフされる接点部、及び、一端が前記接点部の第1接点と前記バッテリの正極との間の接続線に接続され、他端が前記リレー制御部に接続され、前記バッテリから供給される電力により励磁されることで前記接点部をオンする第1コイル部と、一端が前記接点部の第1接点と前記バッテリの正極との間の接続線に接続され、他端が前記リレー制御部に接続され、前記バッテリから供給される電力により励磁されることで前記接点部をオフする第2コイル部とを有するラッチ回路を含み、
前記リレー制御部は、第1接点が前記第1コイル部の他端に接続され、第2接点がグランドに接続される第1制御スイッチ、及び、第1接点が前記第2コイル部の他端に接続され、第2接点がグランドに接続される第2制御スイッチを有し、一端が前記リレーと前記負荷部との間の接続線に接続され、他端が当該リレー制御部に接続される電力供給線を介して前記バッテリから電力が供給され、
前記スイッチ機構は、第1接点が前記第1コイル部と前記第1制御スイッチとの間の接続線に接続され、第2接点がグランドに接続される請求項1又は2に記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源制御装置として、例えば、特許文献1には、エンジン停止後にバッテリ電源によって動作する各種の負荷に対し、電源線開閉手段を介して、バッテリ電源を供給するバッテリ上がり防止装置が記載されている。このバッテリ上がり防止装置は、バッテリ電圧を検知するバッテリ電圧検知手段と、第1のバッテリ残存容量に対応した電圧値を記憶する第1のスレッシュホールド電圧記憶手段と、第1のバッテリ残存容量よりも少ないバッテリ残存容量に対応した電圧値を記憶する第2のスレッシュホールド電圧記憶手段と、車両の使用状態を検出する使用状態検出手段と、エンジンが停止したことを検出するエンジン停止検出手段と、エンジン停止検出手段によりエンジンの停止が検出されると、使用状態検出手段により検出された車両の使用状態に応じて、第1または第2のスレッシュホールド電圧記憶手段よりスレッシュホールド電圧を読み出し、該スレッシュホールド電圧と、バッテリ電圧検知手段により検知されたバッテリ電圧とを比較する電圧比較手段と、電圧比較手段により、バッテリ電圧がスレッシュホールド電圧以下であると判別されると、電源線開閉手段を制御し、各種の負荷全てに対して電源の供給を停止する電源供給停止手段とを備えたことを特徴とする。なお、特許文献2~5には、電源を制御する電源制御装置に関連する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-334498号公報
【特許文献2】特開2008-290604号公報
【特許文献3】特開2008-179221号公報
【特許文献4】特開2015-120465号公報
【特許文献5】特開2018-038116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のバッテリ上がり防止装置は、バッテリ電圧がスレッシュホールド電圧以下である場合に、暗電流負荷を含む負荷全てに対して電源の供給を停止しているが、この場合に、電源供給停止手段を含む遮断制御回路には電源が供給されており、このため、電源が無駄に消費されるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電源を適正に制御することができる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源制御装置は、電力モードを切り替えて、車両に搭載されるバッテリから負荷部に供給される電力を制御する制御部と、前記バッテリと前記負荷部との間に設けられ前記バッテリから前記負荷部に供給される電力を遮断可能なリレーと、前記バッテリの充電率を検出する検出部と、前記制御部による前記電力モードの切り替えとは別に、前記電力モードを切り替えるスイッチ機構と、を備え、前記制御部は、前記電力モードの切り替えとして、前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に当該負荷部及び当該制御部を駆動させる駆動電流を流す駆動モードと、前記駆動電流を遮断しかつ前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に暗電流を流す待機モードと、前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に流れる暗電流を遮断する遮断モードとに切り替え可能であり、前記待機モードの際に、前記検出部により検出された前記バッテリの充電率が、予め定められる暗電流遮断用の閾値以下である場合、前記リレーを切り替えて前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に流れる暗電流を遮断し、前記待機モードから前記遮断モードに切り替え、前記スイッチ機構は、前記遮断モードの際に、押下操作によって当該スイッチ機構がオンされた場合、前記制御部の制御を介さずに遮断後の前記リレーを切り替えて前記バッテリから前記負荷部及び前記制御部に暗電流を流し、前記遮断モードから前記待機モードに切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電源制御装置は、バッテリの充電率が暗電流遮断用の閾値以下である場合、バッテリから負荷部及び制御部に流れる暗電流を遮断するので、バッテリの充電率がゼロになることを抑制できる。このとき、電源制御装置は、制御部に流れる暗電流も遮断するので、暗電流を無駄に消費することを抑制できる。そして、電源制御装置は、押下操作によってスイッチ機構がオンされた場合、バッテリから負荷部及び制御部に暗電流を流すので、車両を始動させることができる。このように、電源制御装置は、電源を適正に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る暗電流遮断用の閾値を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態の変形例に係る電源制御装置の構成例を示す回路図である。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例に係るスイッチ機構の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
図面を参照しながら実施形態に係る電源制御装置1について説明する。電源制御装置1は、車両に搭載されるバッテリBを制御するものであり、特に、バッテリBの充電率に基づいて暗電流を制御することで、バッテリBの充電率がゼロになることを抑制するものである。以下、電源制御装置1について詳細に説明する。
【0011】
電源制御装置1は、例えば、
図1に示すように、電源制御部10と、ヒューズボックス20と、検出部としてのバッテリセンサ30と、電源ボックス40と、スイッチ機構50とを備える。なお、電源制御部10及び後述のリレー制御部42は、制御部Mとも称する。
【0012】
電源制御部10は、車両の電力モードを切り替えて、車両のバッテリBから負荷部Lに供給される電力を制御するものである。ここで、電源制御装置1は、車両の電力モードとして、駆動モード、待機モード、及び、遮断モードを有している。
【0013】
駆動モードとは、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに、当該負荷部L及び当該制御部Mを駆動させる駆動電流を流すモードである。すなわち、駆動モードは、車両のイグニッションスイッチがオンされた際に、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに駆動電流を流すモードである。負荷部L及び制御部Mは、駆動モードの場合、バッテリBから駆動電流が供給されることで、所定の動作を実行可能な駆動状態となる。
【0014】
待機モードとは、駆動電流を遮断しかつバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流すモードである。すなわち、待機モードは、イグニッションスイッチがオフされた際に、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流すモードである。ここで、負荷部Lには、車両を駐車している場合でも低電力で動作させる必要があるものが含まれる。このような負荷部Lには、例えば、キーレス受信器、時計、セキュリティ装置、パワトレECU等がある。暗電流で動作する負荷部L及び制御部Mは、待機モードの場合、バッテリBから暗電流が供給されることで、待機動作を実行可能な待機状態(低電力状態)となる。
【0015】
遮断モードとは、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断するモードである。すなわち、遮断モードは、待機モードの際に、バッテリBの充電率が予め定められる暗電流遮断用の閾値Th(
図2参照)以下になったとき、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断するモードである。負荷部L及び制御部Mは、遮断モードの場合、バッテリBから供給される暗電流が遮断されることで、待機動作を停止する停止状態となる。なお、
図2には、バッテリBの充電率(SOC)に応じて、車両を始動するために確保している電力領域である始動用電力領域、暗電流を放電することが可能な領域である暗電流放電可能領域、及び、負荷部Lを駆動する領域である負荷部駆動領域(ICオン)を図示している。暗電流遮断用の閾値Thは、暗電流放電可能領域と始動用電力領域との境界に設定している。
【0016】
電源制御部10は、イグニッションスイッチがオンされたことを表すIGオン信号(IG信号)を受信した場合、待機モードから駆動モードに切り替える。電源制御部10は、例えば、IGオン信号を受信した場合、待機状態である負荷部L及びリレー制御部42を起動させて駆動状態とする。また、電源制御部10は、イグニッションスイッチがオフされたことを表すIGオフ信号(IG信号)を受信した場合、駆動モードから待機モードに切り替える。電源制御部10は、例えば、IGオフ信号を受信した場合、駆動状態である負荷部L及びリレー制御部42を待機状態(低電力状態)とする。
【0017】
ヒューズボックス20は、過電流が流れた際に電流流路を遮断するものである。ヒューズボックス20は、電源ボックス40と負荷部Lとの間に設けられ、複数のヒューズ21~25を含んで構成される。複数のヒューズ21~25は、それぞれ低融点の導電性を有する可溶体を含む。可溶体は、電源ボックス40から負荷部Lに過電流が流れた際に溶断する。複数のヒューズ21~25は、可溶体が溶断することにより、電源ボックス40と負荷部L(L1~L5)との電気的な接続を遮断する。
【0018】
バッテリセンサ30は、バッテリBの充電率(SOC:State Of Charge)を検出するものである。バッテリセンサ30は、例えば、バッテリBの電圧に基づいて当該バッテリBの充電率を検出する。充電率は、バッテリBの電圧が相対的に高い場合、相対的に大きくなり、バッテリBの電圧が相対的に低い場合、相対的に小さくなる。なお、バッテリセンサ30による充電率を検出する方法は、上記方法に限定されず、例えば、バッテリBに流入した電流と、バッテリBから流出した電流とに基づいて充電率を検出してもよい。バッテリセンサ30は、電源ボックス40に接続され、充電率を表す検出結果を電源ボックス40に出力する。
【0019】
電源ボックス40は、バッテリBから負荷部Lに流れる電流を通電又は遮断するものである。電源ボックス40は、リレー41と、リレー制御部42と、電力供給線43とを備える。
【0020】
リレー41は、電流を通電又は遮断するものであり、電流が流れている間だけオンするシングルステイブル型のリレーである。リレー41は、バッテリBと負荷部Lとの間に設けられ、バッテリBから負荷部Lに供給される電力を遮断可能に構成されている。リレー41は、接点部411と、コイル部412とを有する。
【0021】
接点部411は、第1接点411aと、第2接点411bとを有し、第1接点411aがバッテリBの正極に接続され、第2接点411bがヒューズボックス20を介して負荷部Lに接続される。
【0022】
コイル部412は、接点部411をオンオフするものである。コイル部412は、鉄心と、当該鉄心に巻かれたコイルとを有し、コイルの一端が接点部411の第1接点411aとバッテリBの正極との間の接続線に接続され、コイルの他端がリレー制御部42に接続される。そして、コイル部412は、バッテリBから供給される電力により励磁されることで、第1接点411a及び第2接点411bを閉じて接点部411をオンする。また、コイル部412は、バッテリBから供給される電力が遮断されることで、第1接点411a及び第2接点411bを開いて接点部411をオフする。
【0023】
リレー制御部42は、バッテリBから負荷部Lに供給される電力を制御するものであり、制御スイッチ421を有している。制御スイッチ421は、第1接点421aと、第2接点421bとを有し、第1接点421aがコイル部412のコイルの他端に接続され、第2接点421bがグランドに接続される。
【0024】
リレー制御部42は、待機モードの際に、バッテリセンサ30により検出されたバッテリBの充電率と暗電流遮断用の閾値Thとに基づいて、リレー41を制御して電力モードを切り替える。リレー制御部42は、例えば、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Th以下である場合、リレー41をオフに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断し、待機モードから遮断モードに切り替える。具体的には、リレー制御部42は、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Th以下である場合、制御スイッチ421をオフしてリレー41のコイル部412に供給される電力を遮断し、リレー41の接点部411を開いてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断する。
【0025】
一方で、リレー制御部42は、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Thを超える場合、リレー41のオンを維持してバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、待機モードを維持する。具体的には、リレー制御部42は、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Thを超える場合、制御スイッチ421のオンを維持してリレー41のコイル部412に供給される電力を継続して、リレー41の接点部411の閉じ状態を維持し、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流す。
【0026】
電力供給線43は、リレー制御部42に電力を供給するための電線である。電力供給線43は、一端がリレー41と負荷部Lとの間の接続線に接続され、他端が当該リレー制御部42に接続される。バッテリBは、リレー制御部42によりリレー41がオンされると、電力供給線43を介してリレー制御部42に電力を供給する。バッテリBは、リレー制御部42によりリレー41がオフされると、電力供給線43を介してリレー制御部42に供給する電力が遮断される。
【0027】
スイッチ機構50は、制御部Mによる電力モードの切り替えとは別に、電力モードを切り替えるものである。スイッチ機構50は、例えば、車両のインストルメントパネルPに設けられ、車両の乗員によって操作可能な位置に配置されている。スイッチ機構50は、乗員の押下操作によって操作される機械式のスイッチであり、例えば、押しボタン式のスイッチである。スイッチ機構50は、第1接点51と、第2接点52とを有し、第1接点51がコイル部412と制御スイッチ421との間の接続線に接続され、第2接点52がグランドに接続される。スイッチ機構50は、乗員によって押下操作されると、第1接点51及び第2接点52を閉じてオンし、当該閉じ状態を維持する。そして、スイッチ機構50は、閉じ状態で、再度、乗員によって押下操作されると、第1接点51及び第2接点52を開いてオフし、当該開状態を維持する。このように、スイッチ機構50は、閉じ状態を保持可能なオルタネイト方式のスイッチである。
【0028】
スイッチ機構50は、例えば、遮断モードの際に、乗員の押下操作によって当該スイッチ機構50がオンされた場合、リレー制御部42の制御を介さずにリレー41のコイル部412を励磁し、遮断後のリレー41をオンに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替える。そして、乗員は、遮断モードから待機モードに切り替えた後、イグニッションスイッチをオンして車両を始動させる。電源制御部10は、イグニッションスイッチがオンされると、待機モードから駆動モードに切り替え、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに駆動電流を流す。スイッチ機構50は、待機モードから駆動モードに切り替えられた後、乗員による押下操作によって当該スイッチ機構50がオフされると、コイル部412のコイルからスイッチ機構50側に分岐して流れる電流を遮断する。
【0029】
次に、電源制御装置1の動作例について説明する。なお、ここでは、イグニッションスイッチがオフされ、待機モードが設定されていることを前提とする。電源制御装置1のリレー制御部42は、
図3に示すように、バッテリBの充電率が閾値Th以下であるか否かを判定する(ステップS1)。リレー制御部42は、バッテリBの充電率が閾値Th以下である場合(ステップS1;Yes)、待機モードから遮断モードに切り替える(ステップS2)。リレー制御部42は、例えば、制御スイッチ421をオフしてリレー41のコイル部412に供給される電力を遮断し、リレー41の接点部411を開いてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断し、待機モードから遮断モードに切り替える。スイッチ機構50は、遮断モードに切り替えられた後、乗員の押下操作によって当該スイッチ機構50がオンされた場合(ステップS3;Yes)、遮断モードから待機モードに切り替える(ステップS4)。スイッチ機構50は、例えば、乗員の押下操作によって当該スイッチ機構50がオンされた場合、リレー制御部42の制御を介さずにリレー41のコイル部412を励磁し、遮断後のリレー41をオンに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替える。次に、電源制御部10は、IGオン信号を受信した場合(ステップS5;Yes)、待機モードから駆動モードに切り替える。電源制御部10は、例えば、IGオン信号を受信した場合、待機状態である負荷部L及びリレー制御部42を起動させて駆動状態とし、処理を終了する。
【0030】
なお、上述のステップS1で、リレー制御部42は、バッテリBの充電率が閾値Thを超える場合(ステップS1;Yes)、再度、バッテリBの充電率が閾値Th以下であるかを判定する。上述のステップS3で、スイッチ機構50は、遮断モードに切り替えられた後、乗員の押下操作によって当該スイッチ機構50がオンされるまで待機する(ステップS3;No)。上述のステップS5で、電源制御部10は、IGオン信号を受信しない場合(ステップS5;No)、IGオン信号を受信するまで待機する。
【0031】
以上のように、実施形態に係る電源制御装置1は、制御部Mと、リレー41と、バッテリセンサ30と、スイッチ機構50とを備える。制御部Mは、電力モードを切り替えて、車両に搭載されるバッテリBから負荷部Lに供給される電力を制御する。リレー41は、バッテリBと負荷部Lとの間に設けられ、バッテリBから負荷部Lに供給される電力を遮断可能である。バッテリセンサ30は、バッテリBの充電率を検出する。スイッチ機構50は、制御部Mによる電力モードの切り替えとは別に、電力モードを切り替える。ここで、制御部Mは、電力モードの切り替えとして、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに当該負荷部L及び当該制御部Mを駆動させる駆動電流を流す駆動モードと、駆動電流を遮断しかつバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流す待機モードと、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断する遮断モードとに切り替え可能である。そして、制御部Mのリレー制御部42は、待機モードの際に、バッテリセンサ30により検出されたバッテリBの充電率が、予め定められる暗電流遮断用の閾値Th以下である場合、リレー41を切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断し、待機モードから遮断モードに切り替える。スイッチ機構50は、遮断モードの際に、押下操作によって当該スイッチ機構50がオンされた場合、制御部Mの制御を介さずに遮断後のリレー41を切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替える。
【0032】
この構成により、電源制御装置1は、バッテリBの充電率が暗電流遮断用の閾値Th以下である場合、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断するので、バッテリBの充電率がゼロになることを抑制できる。すなわち、電源制御装置1は、暗電流を遮断するので、バッテリBが上がるまでの期間を延ばすことができる。このとき、電源制御装置1は、制御部Mに流れる暗電流も遮断するので、暗電流を無駄に消費することを抑制できる。そして、電源制御装置1は、乗員の押下操作によってスイッチ機構50がオンされた場合、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流して待機モードに切り替えるので、車両を始動させることができる。このように、電源制御装置1は、電源を適正に制御することができる。
【0033】
上記電源制御装置1において、制御部Mは、駆動モードから待機モードに切り替える電源制御部10、及び、待機モードから遮断モードに切り替えるリレー制御部42を有する。リレー41は、接点部411及びコイル部412を有する。接点部411は、第1接点411aがバッテリBの正極に接続され、第2接点411bが負荷部Lに接続されオンオフされる。コイル部412は、一端が接点部411の第1接点411aとバッテリBの正極との間の接続線に接続され、他端がリレー制御部42に接続され、バッテリBから供給される電力により励磁されることで接点部411をオンする。リレー制御部42は、制御スイッチ421を有する。制御スイッチ421は、第1接点421aがコイル部412の他端に接続され、第2接点421bがグランドに接続される。リレー制御部42は、電力供給線43を介してバッテリBから電力が供給される。電力供給線43は、一端がリレー41と負荷部Lとの間の接続線に接続され、他端が当該リレー制御部42に接続される。スイッチ機構50は、第1接点51がコイル部412と制御スイッチ421との間の接続線に接続され、第2接点52がグランドに接続される。
【0034】
この構成により、電源制御装置1は、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Th以下である場合、制御スイッチ421をオフしてリレー41のコイル部412に供給される電力を遮断し、リレー41の接点部411を開いてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断し、待機モードから遮断モードに切り替えることができる。その後、電源制御装置1は、遮断モードの際に、押下操作によってスイッチ機構50がオンされた場合、リレー制御部42の制御を介さずにリレー41のコイル部412を励磁し、遮断後のリレー41をオンに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替えることができる。
【0035】
次に、実施形態の変形例について説明する。なお、変形例では、実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図4は、実施形態の変形例に係る電源制御装置1Aの構成例を示すブロック図である。
図4に示す電源制御装置1Aは、ラッチリレー41Aを備える点で実施形態に係る電源制御装置1とは異なる。
【0036】
ラッチリレー41Aは、電流を通電又は遮断するものであり、パルス電流によりオンオフの切り替えが可能なラッチング型のリレーである。ラッチリレー41Aは、バッテリBと負荷部Lとの間に設けられ、バッテリBから負荷部Lに供給される電力を遮断可能に構成されている。ラッチリレー41Aは、接点部411と、ラッチ回路412Aとを有する。
【0037】
ラッチ回路412Aは、接点部411をオンオフするものであり、第1コイル部412aと、第2コイル部412bとを有する。
【0038】
第1コイル部412aは、鉄心と、当該鉄心に巻かれたコイルとを有し、コイルの一端が接点部411の第1接点411aとバッテリBの正極との間の接続線に接続され、コイルの他端がリレー制御部42Aに接続される。そして、第1コイル部412aは、バッテリBから供給される電力により励磁されることで、第1接点411a及び第2接点411bを閉じて接点部411をオンする。
【0039】
第2コイル部412bは、鉄心と、当該鉄心に巻かれたコイルとを有し、コイルの一端が接点部411の第1接点411aとバッテリBの正極との間の接続線に接続され、コイルの他端がリレー制御部42Aに接続される。そして、第2コイル部412bは、バッテリBから供給される電力により励磁されることで、第1接点411a及び第2接点411bを開いて接点部411をオフする。
【0040】
リレー制御部42Aは、バッテリBから負荷部Lに供給される電力を制御するものであり、第1制御スイッチ421Aと、第2制御スイッチ421Bとを有している。第1制御スイッチ421Aは、第1接点421aと、第2接点421bとを有し、第1接点421aが第1コイル部412aのコイルの他端に接続され、第2接点421bがグランドに接続される。第2制御スイッチ421Bは、第1接点421cと、第2接点421dとを有し、第1接点421cが第2コイル部412bのコイルの他端に接続され、第2接点421dがグランドに接続される。
【0041】
リレー制御部42Aは、待機モードの際に、バッテリセンサ30により検出されたバッテリBの充電率と暗電流遮断用の閾値Thとに基づいて、リレー41を制御して電力モードを切り替える。リレー制御部42Aは、例えば、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Th以下である場合、ラッチリレー41Aをオフに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断し、待機モードから遮断モードに切り替える。具体的には、リレー制御部42Aは、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Th以下である場合、第2制御スイッチ421Bをオンしてラッチリレー41Aの第2コイル部412bに電力(パルス電流)を供給し、リレー41の接点部411を開いてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断する。
【0042】
一方で、リレー制御部42Aは、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Thを超える場合、ラッチリレー41Aのオンを維持してバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、待機モードを維持する。
【0043】
スイッチ機構50は、第1接点51と、第2接点52とを有し、第1接点51が第1コイル部412aと第1制御スイッチ421Aとの間の接続線に接続され、第2接点52がグランドに接続される。スイッチ機構50は、遮断モードの際に、押下操作によって当該スイッチ機構50がオンされた場合、リレー制御部42Aの制御を介さずにラッチリレー41Aの第1コイル部412aを励磁し、遮断後のラッチリレー41Aをオンに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替える。
【0044】
以上のように、変形例に係る電源制御装置1Aは、ラッチリレー41Aを備える。ラッチリレー41Aは、接点部411と、ラッチ回路412Aとを有する。ラッチ回路412Aは、第1コイル部412aと、第2コイル部412bとを有する。接点部411は、第1接点411aがバッテリBの正極に接続され、第2接点411bが負荷部Lに接続されオンオフされる。第1コイル部412aは、一端が接点部411の第1接点411aとバッテリBの正極との間の接続線に接続され、他端がリレー制御部42Aに接続され、バッテリBから供給される電力により励磁されることで接点部411をオンする。第2コイル部412bは、一端が接点部411の第1接点411aとバッテリBの正極との間の接続線に接続され、他端がリレー制御部42Aに接続され、バッテリBから供給される電力により励磁されることで接点部411をオフする。リレー制御部42Aは、第1制御スイッチ421Aと、第2制御スイッチ421Bとを有する。第1制御スイッチ421Aは、第1接点421aが第1コイル部412aの他端に接続され、第2接点421bがグランドに接続される。第2制御スイッチ421Bは、第1接点421cが第2コイル部412bの他端に接続され、第2接点421dがグランドに接続される。リレー制御部42Aは、電力供給線43を介してバッテリBから電力が供給される。電力供給線43は、一端がラッチリレー41Aと負荷部Lとの間の接続線に接続され、他端が当該リレー制御部42Aに接続される。スイッチ機構50は、第1接点51が第1コイル部412aと第1制御スイッチ421Aとの間の接続線に接続され、第2接点52がグランドに接続される。
【0045】
この構成により、電源制御装置1Aは、待機モードの際に、バッテリBの充電率が閾値Th以下である場合、第2制御スイッチ421Bをオフしてラッチリレー41Aの第2コイル部412bに電力を供給し、ラッチリレー41Aの接点部411を開いてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに流れる暗電流を遮断し、待機モードから遮断モードに切り替えることができる。その後、電源制御装置1Aは、遮断モードの際に、押下操作によってスイッチ機構50がオンされた場合、リレー制御部42Aの制御を介さずにラッチリレー41Aの第1コイル部412aをパルス電流により励磁し、遮断後のラッチリレー41Aをオンに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替えることができる。これにより、電源制御装置1Aは、電流を流し続けずにパルス電流によりラッチリレー41Aをオンすることができるので、実施形態に係る電源制御装置1と比較して電力の消費を削減することができる。
【0046】
次に、実施形態の変形例に係るスイッチ機構50Aについて説明する。
図5は、実施形態の変形例に係るスイッチ機構50Aの構成例を示す図である。スイッチ機構50Aは、モーメンタリ方式(自動復帰方式)のスイッチである点で実施形態に係るオルタネイト方式のスイッチ機構50とは異なる。
【0047】
スイッチ機構50Aは、
図5に示すように、車両の鍵Kを差し込むキーシリンダーKS内に設けられている。スイッチ機構50Aは、例えば、イグニッションスイッチをオンする際に鍵Kが差し込まれるキーシリンダーKS内に設けられ、鍵Kの先端と対向する位置に配置されている。すなわち、スイッチ機構50Aは、キーシリンダーKS内における鍵Kの差し込み方向の底部に配置されている。スイッチ機構50Aは、遮断モードの際に、鍵KがキーシリンダーKS内に差し込まれると、当該鍵Kの先端によって押下されてオンし、制御部M(電源制御部10及びリレー制御部42A)の制御を介さずに遮断後のラッチリレー41Aをオンに切り替えてバッテリBから負荷部L及び制御部Mに暗電流を流し、遮断モードから待機モードに切り替える。そして、車両の乗員は、遮断モードから待機モードに切り替えた後、鍵Kを回動させてイグニッションスイッチをオンして車両を始動させる。電源制御部10は、イグニッションスイッチがオンされると、待機モードから駆動モードに切り替え、バッテリBから負荷部L及び制御部Mに駆動電流を流す。
【0048】
以上のように、変形例に係るスイッチ機構50Aは、車両の鍵Kを差し込むキーシリンダーKS内に設けられ、鍵KをキーシリンダーKS内に差し込んだ際に当該鍵Kによって押下されてオンし、制御部Mの制御を介さずに遮断後のラッチリレー41Aを切り替える。この構成により、電源制御装置1は、遮断モードの際に、暗電流が遮断されていることを車両の乗員に意識させずに、遮断モードから待機モードに移行することができる。これにより、電源制御装置1は、車両の乗員が遮断モードから待機モードに移行させる手間を省略することができ、ユーザフレンドリーな電源制御装置1を提供することができる。
【0049】
なお、上記説明では、スイッチ機構50がインストルメントパネルPに設けられる例を説明し、スイッチ機構50AがキーシリンダーKS内に設けられる例に説明したが、これに限定されず、その他の場所に設けられてもよい。
【0050】
電力供給線43は、電源ボックス40,40Aの内部に設けられる例について説明したが、これに限定されず、電源ボックス40,40Aの外部に設けられ、当該外部から電源リレー制御部42、42Aに電力を供給してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、1A 電源制御装置
10 電源制御部(制御部)
30 バッテリセンサ(検出部)
41 リレー
41A ラッチリレー(リレー)
411 接点部
411a 第1接点
411b 第2接点
412 コイル部
412A ラッチ回路
412a 第1コイル部
412b 第2コイル部
42 リレー制御部(制御部)
421 制御スイッチ
421A 第1制御スイッチ
421a 第1接点
421b 第2接点
421B 第2制御スイッチ
421c 第1接点
421d 第2接点
43 電力供給線
50、50A スイッチ機構
51 第1接点
52 第2接点
B バッテリ
K 鍵
KS キーシリンダー
L 負荷部