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特開2024-164356印刷装置、カートリッジ、制御装置、印刷制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164356
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】印刷装置、カートリッジ、制御装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20241120BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241120BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241120BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A45D29/00
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079769
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刑部 文裕
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA16
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA59
4F042AA27
4F042BA08
4F042CB03
4F042CC11
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】専用用紙を用いずに印刷アライメントを行うことができる。
【解決手段】印刷装置100が、本印刷に先立って行われるアライメント印刷において、インクからなるアライメントマークMが印刷される第1領域としてのアライメント印刷領域Ar1と、アライメント印刷領域Ar1(第1領域)に接触可能に構成された除去部材であるワイプ部材63と、を備え、除去部材であるワイプ部材63は、アライメント印刷領域Ar1(第1領域)に印刷されたアライメントマークMとしてのインクをアライメント印刷領域Ar1(第1領域)から除去することが可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本印刷に先立って行われる印刷アライメントにおいて、インクからなるアライメントマークが印刷される第1領域と、
前記第1領域に接触可能に構成された除去部材と、
を備え、
前記除去部材は、前記第1領域に印刷されたアライメントマークとしての前記インクを前記第1領域から除去することが可能となっている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記アライメントマークを印刷するときに前記第1領域に対して相対移動されるとともに前記インクを吐出させる印刷ヘッドを備え、
前記除去部材は、前記印刷ヘッドと一体的に移動するように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドを第1方向及び前記第1方向に直交する第2方向に移動させる駆動手段を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記アライメントマークを印刷する前記インクは、溶媒に対して沈降しやすい溶質を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記アライメントマークが印刷される前記第1領域は、前記アライメントマークを印刷する前記インクとのコントラストが高い色となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
撮像手段による前記アライメントマークの撮像により取得したアライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量に対応する補正値を導出するとともに、第2領域に配置された印刷対象物に対して前記本印刷を行う場合に前記本印刷の印刷位置に前記補正値を反映させる制御手段を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
インクからなるアライメントマークが印刷される第1領域を備え、
前記第1領域は、前記アライメントマークとしての前記インクが所定の除去部材により除去可能に構成されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
インクが貯留されたカートリッジを着脱することが可能に構成されたカートリッジ収容部を備え、
前記除去部材は、前記カートリッジに設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項9】
インクが貯留され、印刷装置に着脱可能に取り付けられるカートリッジであって、
前記印刷装置における第1領域に印刷されたアライメントマークとしての前記インクを前記第1領域から除去するための除去部材を備える、
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項10】
収容部にカートリッジが収容されたことが検出されたことを契機に、本印刷に先立って前記カートリッジを第1領域に移動させ、前記第1領域に、前記カートリッジに貯留されているインクからなるアライメントマークを印刷させるアライメント印刷制御部と、
前記第1領域に印刷された前記アライメントマークを撮影させてアライメントマーク画像を取得する画像取得部と、
前記アライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量に対応する補正値を導出する補正値導出部と、
前記第1領域に印刷されたアライメントマークとしての前記インクを除去部材により前記第1領域から除去させる除去動作制御部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
収容部にカートリッジが収容されたことが検出されると、本印刷に先立って前記カートリッジを第1領域に移動させ、前記第1領域に、前記カートリッジに貯留されているインクからなるアライメントマークを印刷させるアライメントマーク印刷工程と、
前記第1領域に印刷された前記アライメントマークを撮影することでアライメントマーク画像を取得する画像取得工程と、
前記アライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量に対応する補正値を導出する補正値導出工程と、
前記第1領域に印刷されたアライメントマークとしての前記インクを除去部材により前記第1領域から除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
収容部にカートリッジが収容されたことが検出されたことを契機に、本印刷に先立って前記カートリッジを第1領域に移動させ、前記第1領域に、前記カートリッジに貯留されているインクからなるアライメントマークを印刷させる印刷制御機能と、
前記第1領域に印刷された前記アライメントマークを撮影させてアライメントマーク画像を取得する画像取得機能と、
前記アライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量に対応する補正値を導出する補正値導出機能と、
前記第1領域に印刷されたアライメントマークとしての前記インクを除去部材により前記第1領域から除去させる除去処理機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、カートリッジ、制御装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、ネイルデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリンタ)が知られている。
ネイルプリントを印刷装置で実現する場合、爪の範囲に正確に印刷を行う必要がある。
【0003】
この点、印刷を行う印刷ヘッドは、装置本体のキャリッジ(キャリッジのホルダ)に装着して使用されるが、キャリッジや印刷ヘッドには、製造段階での公差等による装着遊びがあるため、印刷ヘッドの取り付け、交換時に装着位置ずれやガタを生じるおそれがある。
印刷ヘッドに位置ずれ等が生じたまま印刷を行うと爪に印刷されたデザインがずれたり、爪以外の皮膚の部分にはみ出して印刷されてしまう等のおそれがある。
このため、印刷ヘッドを印刷装置に装着する際には、印刷アライメント(印刷位置合わせ)を実施する必要がある。
【0004】
印刷ヘッドを着脱する場合としては、印刷ヘッドにおけるインク貯留部分であるカートリッジが空になって印刷ヘッドを交換する場合の他、カートリッジに貯留されるインクを撹拌する必要が生じた場合が考えられる。
この点、例えば特許文献2には、インクを吐出させる吐出部を有する印刷ヘッド(特許文献2においてインクヘッド)とは別にインク経路を介してインクヘッドと接続されたカートリッジを備え、インクを撹拌する必要がある場合にはカートリッジ部分のみを回動させて撹拌を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003-534083号公報
【特許文献2】国際公開WO2017/217001明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されているようにインクを吐出させる部分(インク吐出部、特許文献2においてインクヘッド)とインクを貯留する部分(インク貯留部、特許文献2においてカートリッジ)とを離れた場所に設けるとその分スペースが必要となり、印刷装置が大型化してしまう。
【0007】
他方で、インク貯留部をインク吐出部の近くに設けた場合、インク貯留部を回動させる際の振動等がインク吐出部に影響して精度の低下等を招くおそれもある。
インク貯留部とインク吐出部とを一体の印刷ヘッドとすることも考えられるが、この場合でも、印刷装置に装着したまま印刷ヘッドの回動等を行うことは難しい。印刷装置内に撹拌のための機構を設けることは装置の大型化・複雑化にもつながるため、インクを撹拌するための装置は印刷装置外に設けることが好ましい。しかしこの場合、撹拌動作を行う度に印刷ヘッドを一旦印刷装置から取り外さなければならない。
このため、印刷時には再度印刷装置に印刷ヘッド(カートリッジ)を装着することとなり、印刷アライメントを行う必要が生じる。
【0008】
印刷アライメントは、例えばアライメント用に印刷したインクの位置情報を取得して印刷ヘッドに位置ずれ等がないか否かを見ることで行われる。
しかしながら、印刷アライメントを行う度にアライメント用の印刷を行うための専用用紙を用意することは、ユーザの負担が大きいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を鑑みてなされたものであり、専用用紙を用いずに印刷アライメントを行うことができる印刷装置、カートリッジ、制御装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る印刷装置は、
本印刷に先立って行われる印刷アライメントにおいて、インクからなるアライメントマークが印刷される第1領域と、
前記第1領域に接触可能に構成された除去部材と、
を備え、
前記除去部材は、前記第1領域に印刷されたアライメントマークとしての前記インクを前記第1領域から除去することが可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、専用用紙を用いずに印刷アライメントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における印刷装置の内部を上方から見た要部構成を示す模式的な平面図である。
図2】本実施形態における印刷装置の概略の制御構成を示す要部ブロック図である。
図3】爪に印刷を行う場合の印刷ヘッド、ワイパ機構及び基台のアライメント印刷領域との位置関係を装置の正面から見た模式図である。
図4】アライメント印刷領域にアライメントマークを印刷する場合の印刷ヘッド、ワイパ機構及び基台のアライメント印刷領域との位置関係を装置の正面から見た模式図である。
図5】アライメント印刷領域からアライメントマークを形成するインクを除去する場合の印刷ヘッド、ワイパ機構及び基台のアライメント印刷領域との位置関係を装置の正面から見た模式図である。
図6】インクの除去処理後にワイパを清掃する場合の印刷ヘッド、ワイパ機構及び基台のアライメント印刷領域との位置関係を装置の正面から見た模式図である。
図7】本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
図8】基台の左側のアライメント印刷領域と印刷ヘッドを装置の上方から見た模式図であり、(a)は、アライメント印刷領域にアライメントマークが印刷されている状態を示し、(b)は、(a)に示したアライメントマークをワイパで除去した状態を示し、(c)は、アライメントマークの印刷と除去を複数回繰り返した状態を示し、(d)は、(c)に示した状態よりもインク残りが進み、アライメントマークの印刷位置をずらした状態を示している。
図9】印刷ヘッドの一変形例を示す模式図であり、ワイパ機構が印刷を邪魔しない収納状態の場合を示している。
図10】印刷ヘッドの一変形例を示す模式図であり、ワイパ機構がインクを除去するワイプ動作状態の場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図8を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、カートリッジ、制御装置、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
[印刷装置の構成]
図1は、本実施形態における印刷装置(ネイルプリント装置)の内部を上方から見た要部構成を示す模式的な平面図である。なお、以下の実施形態において、x方向、y方向、z方向は、図1に示した方向をいうものとする。本実施形態においてx方向は印刷装置100の幅方向(横方向)であり、y方向は印刷装置100の奥行き方向であり、z方向は印刷装置100の高さ方向である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の印刷装置100は、筐体2内に収容された装置本体1を備えている。筐体2の上面や側面等には操作部としての操作ボタンや表示部等が設けられていてもよい。
装置本体1は、印刷装置100の幅方向(x方向)に亘って基台7を有しており、基台7における幅方向(x方向)のほぼ中央部には、爪T及び爪Tに対応する指Uを配置する載置部3が設けられている。
【0016】
筐体2は、例えばほぼ箱形に形成されており、前面側(図1においてY方向の手前側)であって装置の左右方向(図1におけるx方向)のほぼ中央部に、印刷対象物となる爪Tに対応する指U(図1参照)を装置内に挿入する図示しない指挿入口が設けられている。
載置部3は、指挿入口の内側に対応する位置に配置されており、指挿入口から挿入された指Uを受け入れることができるようになっている。
【0017】
図1に示すように、載置部3の下側面は、指Uの腹部分を受ける指受け部31となっている。なお、指受け部31には、例えば樹脂等の柔軟性を有する材料で形成されたクッション部材が設けられていてもよい。
載置部3の奥側(装置後方側)の上面には指挿入口から指Uが挿入され指受け部31により保持された場合に、指Uの爪T部分を露出させる窓部32が形成されている。
また本実施形態では、載置部3の手前側(図1におけるY方向の手前側)に指Uの上方を囲うような枠状部33が設けられている。載置部3に配置された指Uの上側は、この枠状部33の天面に突き当てられるようになっている。
【0018】
これにより、枠状部33の天面が指Uの上方向の位置を規制する指押えとして機能し、指Uが上方向に上がりすぎるのを防いで、指Uの高さ方向を位置決めすることができる。
指挿入口から挿入された指Uは、載置部3の指受け部31上に載置され、指Uの上面が枠状部33の天面によって規定されることで、爪Tが後述の印刷ヘッド41による印刷に適した適正位置に配置された状態で保持される。
【0019】
基台7にはアライメント印刷領域Ar1が設けられている。本実施形態では載置部3の左右両側に配置された領域(予備領域71、図1等において黒の網掛けで示す)の一部(図1等において白破線で囲んで示す領域)をアライメント印刷領域Ar1とする。
アライメント印刷領域Ar1は、本印刷に先立って行われる印刷アライメントにおいて、インクからなるアライメントマークM(後述する図8(a)等参照)が印刷される「第1領域」である。
【0020】
印刷アライメントは、例えばアライメント用に印刷されたインクの位置情報(インクで印刷されたアライメントマークMの座標情報)を取得して印刷ヘッド41に位置ずれ等がないかどうか、位置ずれがある場合にはどの方向にどの程度ずれているか、どのような補正をすればよいかを見るためのものである。このため、印刷ヘッド41が印刷装置100に対して着脱された場合には実際に爪T等の印刷対象物に印刷する前に印刷アライメントを行うことが好ましい。なお、爪T等に対する印刷をアライメントマークMの印刷と区別して、以下において「本印刷」という。
【0021】
特に印刷ヘッド41が溶媒に対して沈降しやすい溶質を含んでいるインクを印刷するものである場合には、できるだけ本印刷の直前まで撹拌を行って分散状態を維持しておくことが好ましい。
印刷装置100の大型化を避ける等の観点からは、撹拌動作を印刷装置100外で行うことが好ましいが、この場合、印刷ヘッド41を一旦装置外に取り出して、印刷前に装置に再装着する必要が生じる。このため、本印刷を行う前に印刷アライメントを行うことが望まれる。
【0022】
ここで、溶媒に対して沈降しやすい溶質を含んでいるインクとは、例えば色材として酸化チタン等を含む下地用のインクである。下地用のインクは、水等を溶媒とし、酸化チタン、酢酸ブチル、ニトロセルロース、アクリル酸アルキルコポリマー等を溶質として含んでいる。
酸化チタンは白色の色材であり、酸化チタンを含むインクは、白色又はそれに近い色(例えば白に近いピンクやブルー等)をしている。このため、酸化チタンを含むインクを印刷する印刷ヘッド41(図1等において例えば第1の印刷ヘッド41a)の印刷アライメントを行う場合、インクによってアライメントマークMが印刷される媒体(被印刷媒体)は、アライメントマークMを識別しやすい黒色等の濃い色調の部材、すなわち、アライメントマークMを印刷するインクとのコントラストが高い色の部材で構成されていることが好ましい。
【0023】
本実施形態では印刷アライメント用のアライメントマークMが、基台7上の所定の領域(アライメント印刷領域Ar1)に印刷されるようになっており、少なくともアライメント印刷領域Ar1を含む基台7上の一定範囲(本実施形態では予備領域71)は黒色等の濃い色調(白色等のインクに対してコントラストが高い色)となっている。
アライメント印刷領域Ar1を含む基台7上の一定範囲を濃い色調で形成する手法は特に限定されない。例えば基台7を構成する板部材として黒色等の板を用いてもよいし、板部材の表面に黒色等の塗装を施したり、表面加工(例えばアルミニウムに対する黒色アルマイト加工等)等を施すことで濃い色調に仕上げてもよい。また基台7を構成する板部材自体は透明または半透明の部材でも、当該板部材の下に黒色等の紙を配置する等により、基台7の表面が濃い色調に見えるように構成してもよい。
【0024】
また本実施形態では、アライメントマークMを基台7上の所定の領域(アライメント印刷領域Ar1)に印刷することで、アライメント用に印刷したインクの位置情報を取得した後は、インクからなるアライメントマークMを除去することができる。これにより、アライメントマークMの印刷場所としてアライメント印刷領域Ar1を繰り返し利用することができるようになっている。
【0025】
インクからなるアライメントマークMを比較的容易に除去できるようにするため、基台7のうち、少なくともアライメント印刷領域Ar1は、アライメントマークMとしてのインクができるだけ定着しないように、インクが浸透しにくい材料で形成されている。
他方でアライメントマークMが印刷されるアライメント印刷領域Ar1の表面があまり撥水性が高いとインクが水玉状となって、印刷されたアライメントマークMの形(実施例では十字の形状、図8(a)等参照)が崩れ、インクの位置情報を正しく取得することができなくなってしまう。
このため、基台7のうち少なくともアライメント印刷領域Ar1は、インクが浸透しにくいが、ある程度のインク受容性を有する材料で表面が形成されていることが好ましい。
【0026】
具体的には、例えば各種の樹脂(例えばABS樹脂、PE(polyethylene))等が好適に用いられる。なおアライメント印刷領域Ar1を形成する材料は、非浸透性の材料であり、かつある程度のインク受容性を有するものであれば適用可能であり、樹脂に限定されない。例えばアライメント印刷領域Ar1は、SUS等の各種の金属やガラス、表面にコーティングを施した紙等で形成されていてもよい。
【0027】
なお、アライメント印刷領域Ar1は、白破線で示した範囲に限定されない。本実施形態では図1に示すように、基台7のうち、載置部3の両側の予備領域71は広く黒色等の濃い色調の領域となっており、アライメント印刷領域Ar1は、このような濃い色の領域全体であってもよい。また、基台7全体を黒色等の濃い色調として、全体的に非浸透性の材料でありかつある程度のインク受容性を有する材料で形成してもよい。そしてこの場合には、基台7全体を広くアライメント印刷領域Ar1として用い、この範囲内であればどこにでもアライメントマークMを印刷できるようにしてもよい。
【0028】
なお、本実施形態においてアライメント用に印刷したインクの位置情報は、後述する撮影部5のカメラ51で撮像することにより得られる画像を解析することで取得される。
このカメラ51は載置部3に配置された爪Tを検出するためのものであり、図1に一点鎖線で示すように載置部3の上方等に配置されている。このためアライメントマークMを印刷するアライメント印刷領域Ar1は、カメラ51の画角内にある必要があり、載置部3の両側の載置部3に近い部分であることが好ましい。
【0029】
また、正確な印刷アライメントを行うために、アライメントマークMは、印刷ヘッド41によって爪Tに対して印刷する場合にできるだけ近い条件で印刷されることが好ましい。このため、アライメント印刷領域Ar1は、載置部3に指Uを載置したときの爪Tの表面の高さ位置と同程度の高さに設けられていることが好ましい(図3から図6参照)。
【0030】
図2は、本実施形態における印刷装置の要部制御構成を示す要部ブロック図である。
図1及び図2に示すように、印刷装置100の筐体2内には、印刷機構4や撮影部5等が設けられている。
【0031】
印刷機構4は、印刷ヘッド41を収容する収容部であるヘッドホルダ42と、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を収容するヘッドホルダ42)を移動させる移動手段としてのX方向移動機構450、Y方向移動機構470とを備えている(図1参照)。
ヘッドホルダ42には、印刷ヘッド41が収容(装着)されたか否かを検出する図示しない検出部や印刷ヘッド41に各種の駆動信号を伝達するための図示しない配線基板等が設けられており、ヘッドホルダ42に収容された印刷ヘッド41と電気的に接続されるようになっている。
【0032】
X方向移動機構450は、x方向のほぼ全体に亘って設けられたキャリッジ452を備えている。キャリッジ452内には、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を収容するヘッドホルダ42)をx方向に沿って案内するガイドレール451と、ガイドレール451に沿って設けられた図示しない駆動ベルトと、駆動ベルトを駆動させるX方向移動モータ45等が設けられている。
またY方向移動機構470は、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を収容するヘッドホルダ42)を含むキャリッジ452全体をy方向に沿って案内するガイドレール471及びガイドレール471に沿って設けられた図示しない駆動ベルトと、駆動ベルトを駆動させるY方向移動モータ47等を備えている。X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、例えばステッピングモータである。
【0033】
本実施形態において印刷機構4は、印刷ヘッド41として第1の印刷ヘッド41a及び第2の印刷ヘッド41bを備えている。
いずれの印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41a及び第2の印刷ヘッド41b)も、インクを貯留する貯留部であるカートリッジ411と、カートリッジ411に貯留されているインクを微細な液滴として吐出させ、印刷対象面に印刷を施すインクジェット方式のインク吐出部412とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドとなっている。
【0034】
印刷ヘッド41のうち第1の印刷ヘッド41aは、アライメントマークMを印刷するときに第1領域であるアライメント印刷領域Ar1に対して相対移動されるとともにアライメントマークMを印刷するインクを吐出させるものである。第1の印刷ヘッド41aのカートリッジ411には、水等の溶媒に対して時間経過に伴って分離沈降しやすい溶質を含むインクが貯留されている。前述したように、溶媒に対して分離沈降しやすい溶質を含むインクとは、例えば白色成分として酸化チタン等の溶質を含み、デザイン印刷前に爪Tの上に白色等(白色若しくはこれに近いピンクやブルー等)の下地を形成する下地用のインクである。
また印刷ヘッド41のうち第2の印刷ヘッド41bは、例えばシアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のデザイン用のインク(カラーインク)を貯留するカートリッジ411を備え、ネイルデザインを印刷するものである。
【0035】
指Uの爪Tに印刷を行う場合には、デザイン用のインクを用いてネイルデザインを印刷する前に下地用のインクを爪Tに塗布することで、デザイン用のインクの発色向上等を図ることができ、美しい仕上がりの印刷(ネイルプリント)を行うことができる。
また、印刷機構4が下地用の第1の印刷ヘッド41aとデザイン用の第2の印刷ヘッド41bとを両方備えることにより、下地の塗布からネイルデザインの印刷までを1台の印刷装置100で自動的に行うことが可能となる。
【0036】
また本実施形態におけるヘッドホルダ42の外側面にはワイパ機構6が設けられている。本実施形態では、図1等に示すように、ヘッドホルダ42のx方向左側の側面にワイパ機構6が取り付けられている。
ワイパ機構6は、第1領域であるアライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMとしてのインク(第1の印刷ヘッド41aにより印刷されるインク)を第1領域であるアライメント印刷領域Ar1から除去することが可能な除去部材である。
【0037】
図3から図6は、印刷ヘッドと基台のアライメント領域等と載置部との位置関係を示す印刷装置の要部正面図である。なお、図1に示すように基台7には載置部3を挟んで左右両側にアライメント印刷領域Ar1、スクレーパ部材72、廃棄スペース73が設けられているが、図3から図6及び後述の図8(a)から図8(d)ではこのうちの左側のみを図示し、右側を省略している。
除去部材としてのワイパ機構6の具体的な構成は限定されないが、ワイパ機構6は、例えば図3から図6に示すように、ヘッドホルダ42の外側面に固定された支持部材62と支持部材62の下端側(図3等における下側、基台7に対向する先端側)にワイプ部材63を備えている。ワイプ部材63は、例えば樹脂で形成されたへら状の部材である。ワイプ部材63の材料は特に限定されないが、ある程度弾性があり、かつインクに対する耐腐食性に優れることが好ましい。
【0038】
また、支持部材62の上端側(図3等における上側)にはワイプ部材63を上下動させるワイパ駆動部61が設けられている。ワイプ部材63を上下動させる構成は特に限定されないが、例えばワイパ駆動部61は例えば上下方向に動作する駆動部品62aを備えるソレノイド等で構成されている。駆動部品62aが適宜上下動することによりワイプ部材63が上下動する。
【0039】
図3及び図4は、駆動部品62aが上方に上がっている状態(この状態を「第1状態」とする。)を示している。「第1状態」は、ワイパ機構6が印刷を邪魔しない収納状態である。この「第1状態」では、ワイパ機構6のワイプ部材63は、その先端がアライメント印刷領域Ar1や載置部3に載置された爪T等に接触しない高さ位置に保持される。
これに対して図5及び図6は、駆動部品62aが下方に下がっている状態(この状態を「第2状態」とする。)を示している。「第2状態」は、ワイパ機構6がインクを除去するワイプ動作が可能な状態である。この「第2状態」では、ワイパ機構6のワイプ部材63は、その先端がアライメント印刷領域Ar1上に接触した状態となる。
【0040】
本実施形態では、ワイパ機構6のワイプ部材63を「第2状態」としたまま、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するヘッドホルダ42)をx方向(図3から図6において白抜き矢印で示す)に移動させることで、ワイパ機構6も印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するヘッドホルダ42)とともに移動し、ワイプ部材63がアライメント印刷領域Ar1上を摺動して、アライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMとしてのインクを掻き取ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、ワイプ部材63に付着したインク等の汚れを除去することのできるスクレーパ部材72が基台7上であって、アライメント印刷領域Ar1よりもx方向における装置端部(図3から図6において左側端部)近傍に配置されている。
これによりワイプ部材63によってアライメント印刷領域Ar1からインクを除去した後、ワイプ部材63をスクレーパ部材72に接する位置まで移動させることで、ワイプ部材63に付着したインク等の汚れを掻き落とす清掃動作を行うことが可能となっている。
【0042】
さらにこのスクレーパ部材72の近傍には、スクレーパ部材72によって掻き落とされたインク等の汚れや、ワイプ部材63によってアライメント印刷領域Ar1から除去されたインク等が廃棄される廃棄スペース73が設けられている。図示例ではアライメント印刷領域Ar1(予備領域71)とスクレーパ部材72との間に廃棄スペース73が配置されている。
これにより、アライメント印刷領域Ar1から除去されたインク等は基台7の表面にとどまることなく廃棄スペース73に廃棄され、排除される。
【0043】
なお、本実施形態において単に印刷ヘッド41とするときは、下地用の第1の印刷ヘッド41aとデザイン用の第2の印刷ヘッド41bとを含むものとする。
各印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のインク吐出部412)、及びX方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、後述する制御部11によりその動作を制御される。これにより印刷ヘッド41は、基台7上をxy方向に適宜移動可能となっており、印刷データに基づいた印刷を行うようになっている。また本実施形態ではワイパ機構6のワイパ駆動部61も、制御部11の制御により適宜動作し、ワイプ部材63を上下動させる。
【0044】
撮影部5は、カメラ51と、光源52とを備えている。光源52は、例えば白色LED等の照明灯である。
撮影部5(撮影部5のカメラ51)は、窓部32を含む載置部3周辺を撮像可能となっており、載置部3に配置された印刷対象物である爪T等を光源52によって照明しながらカメラ51で撮像し、画像を取得する。すなわち、載置部3に配置された爪Tや爪Tを含む指Uを撮像して図示しない爪画像(爪Tを含む指Uの画像)を取得する。
また本実施形態において、撮影部5(撮影部5のカメラ51)は、アライメント印刷領域Ar1に印刷されたインクであるアライメントマークMを撮像する撮像手段であり、アライメントマークMを撮像することによりアライメントマーク画像を取得する。
このため、カメラ51としてはアライメント印刷領域Ar1まで広く撮像可能範囲とするようなものが適用される。
カメラ51によって取得された画像は、後述の制御部11に送られる。
【0045】
また図2に示すように、印刷装置100は前述の印刷機構4、撮影部5等を備える他、操作部22、表示部23、通信部25及び制御装置10等を備えている。
【0046】
操作部22は、ユーザが各種入力を行うものである。
操作部22は、例えば、印刷装置100の電源をON/OFFする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦で構成されている。
操作部22が操作されると操作に応じた操作信号が制御装置10の制御部11に出力され、制御部11が操作信号に従った制御を行い、印刷装置100の各部を動作させる。
【0047】
また表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELD)、その他のディスプレイ(フラットディスプレイ)を含んでいる。表示部23は、後述の制御部11から入力される表示信号に基づいて、ディスプレイに各種画像や情報を表示させる。
本実施形態の表示部23のディスプレイは、タッチパネルと一体的に構成されていてもよく、この場合にはタッチパネルが、ユーザによるタッチ操作を受け付け、各種入力を行う操作部22としても機能する。
【0048】
通信部25は、外部装置との間で通信する通信手段である。「外部装置」としては、例えば後述のスマートフォン等の端末装置が想定される。
印刷装置100と外部装置との間の通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置100と外部装置との間の通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線接続方式に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部25は通信することが想定される各種外部装置の通信方式、通信規格に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0049】
印刷装置100に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備えるコンピュータである。
記憶部12のROM等には、印刷装置100を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
ROM等に格納された各種プログラムを制御部11がRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置100の各部の動作を統合的に制御する。
すなわち、制御部11はプログラム(例えば印刷制御処理プログラム等)との協働により、印刷装置100が印刷制御処理等を行うための各種機能を実現する。
【0050】
まず本実施形態の制御部11は、印刷機構4の各部を制御して印刷動作を行わせる。
具体的には、制御部11は印刷データに基づいて印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41a、第2の印刷ヘッド41b)のインク吐出部412を制御し、適宜インクを吐出させて、印刷を行わせる。また、制御部11は、適宜X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47を動作させて適宜印刷ヘッド41をxy方向に移動させる。
【0051】
特に本実施形態では、印刷ヘッド41をアライメント印刷領域Ar1まで移動させ、アライメント印刷領域Ar1に、印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41a)のカートリッジ411に収容されているインク(酸化チタン等の溶質が分離沈降しやすいインク)からなるアライメントマークMを印刷させる。アライメントマークMは印刷されたインクの位置情報が取得できればよく、その形状等は特に限定されないが、例えば図8(a)等では十字のマークを図示している。
【0052】
また制御部11は、撮影部5の動作を制御する。
すなわち、制御部11は、撮影部5のカメラ51及び光源52の動作を制御して、光源52によって爪T(爪Tを含む指U)等やその周辺を照明させ、カメラ51によって爪画像等の画像を取得させる。
制御部11は、カメラ51によって撮像された爪画像を取得して、爪画像から印刷領域である爪領域を画する爪Tの輪郭線(爪輪郭)を検出する。
【0053】
また制御部11は、第1領域であるアライメント印刷領域Ar1に印刷されたインクであるアライメントマークMを撮影部5(撮影部5のカメラ51)によって撮像させてアライメントマーク画像を取得する。
【0054】
そして、制御部11は、アライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量を取得する。具体的には例えばアライメントマークMが図8(a)等に示すような十字のマークの場合、制御部11は、十字の交点の座標を取ることで、アライメントマークMが印刷された位置情報を正確に把握する。そしてその印刷位置の座標が本来印刷されるべき位置からずれているか否か、ずれている場合にはどの程度どのような方向にずれているのかのずれ量の情報を取得する。そして制御部11は取得したずれ量に対応する補正値を導出する。
【0055】
さらに印刷アライメントにより補正値が導出されると、制御部11は、導出された補正値を印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41a)による印刷位置に反映させて、載置部3に保持されている指Uの爪Tに対して本印刷処理を行う。本印刷処理は、例えば第1の印刷ヘッド41aによる下地印刷、第2の印刷ヘッド41bによるデザイン印刷であるが、このうち本実施形態の印刷アライメントにより得られた補正値を用いて補正されるのは第1の印刷ヘッド41aによる下地印刷における印刷位置である。
【0056】
さらに、本実施形態ではアライメントマークMの印刷に先立ち、第1領域であるアライメント印刷領域Ar1を撮影部5(撮影部5のカメラ51)によって撮像させ、アライメント印刷領域Ar1の色情報を取得する。色情報は例えば白色度等である。例えば記憶部12は、黒色等の濃い色調の部材で形成されているアライメント印刷領域Ar1のもともとの色調を記憶しており、制御部11は、このアライメント印刷領域Ar1のもともとの色とアライメント印刷領域Ar1を撮影した画像から検出された色との差分を取得する。なお、制御部11は、アライメント印刷領域Ar1を撮影した画像から検出された色とアライメントマークMを印刷するインク(第1の印刷ヘッド41aのカートリッジ411に貯留されているインク)との差分を取得してもよい。
【0057】
さらに制御部11は、ワイパ機構6のワイパ駆動部61の動作を制御する。これにより駆動部品62aが上下し、ワイプ部材63を適宜上下動させることができる。
【0058】
また制御部11は、表示部23の動作を制御する。
すなわち、制御部11は、表示部23のディスプレイに表示させる表示データを生成し、表示部23に出力する。例えば制御部11は、撮影部5により取得された爪画像等を表示させるための画像データや、デザイン(ネイルデザイン)等を表示部23に表示させるための表示データ、各種メッセージ画面、案内画面、エラー表示画面等を表示部23のディスプレイに表示させる表示データ等を生成する。
【0059】
その他制御部11は、通信部25を制御して外部装置の通信部との間で通信を行わせ、各種データを送受信させる。
【0060】
[印刷制御処理、印刷装置、制御装置の動作]
続いて、図7図3から図6及び図8(a)から図8(d)等を参照しつつ、本実施形態における印刷装置、制御装置の動作、印刷制御処理について説明する。
【0061】
図7は、本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態では制御部11は随時ヘッドホルダ42に印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41a)が装着(収容)されたか否かを判断している(ステップS1)。
本実施形態において第1の印刷ヘッド41aのカートリッジ411に貯留されているインクは、時間の経過に伴って分離沈降しやすい溶質(例えば酸化チタン等)を含んでいる。このため第1の印刷ヘッド41aは、印刷に用いないときは印刷装置100から取り外されて図示しない撹拌装置等によりカートリッジ411内のインクを撹拌する処理が行われている。
【0062】
印刷を行う際には、第1の印刷ヘッド41aが印刷装置100のヘッドホルダ42に装着されるが、着脱後の印刷ヘッド41は位置ずれを生じている場合があり、位置ずれがある場合にはそのずれ量に応じた補正をした上で印刷(爪T等への本印刷)を行う必要がある。
このため、第1の印刷ヘッド41a(第1の印刷ヘッド41aのカートリッジ411)がヘッドホルダ42に装着(収容)されたことが検出される(ステップS1;YES)と、制御部11は、当該検出されたことを契機として、本印刷に先立って印刷アライメントを行う。すなわち、まず制御部11は、アライメント印刷領域Ar1の状態をチェックするために、アライメント印刷領域Ar1を撮影部5のカメラ51で撮像させて画像を取得する(ステップS2)。このとき印刷ヘッド41は、カメラ51による撮像を阻害しない位置まで(例えば図3に示すようにアライメント印刷領域Ar1の右側に)退避する。
【0063】
制御部11は、取得された画像からアライメント印刷領域Ar1の第1位置P1(図8(a)等)の色情報を取得する(ステップS3)。第1位置P1とは、アライメント印刷領域Ar1のうちアライメントマークMを印刷しようとする予定位置であり、例えば図8(a)から図8(d)の例では、載置部3の左側の基台7上に設けられたアライメント印刷領域Ar1(白破線で囲んだ領域)のうち、右上の位置である。
【0064】
制御部11は、画像からアライメント印刷領域Ar1の第1位置P1がアライメントマークMを識別できない程度まで汚れているか否かを判断する(ステップS4)。
アライメントマークMを識別できない程度まで汚れているか否かは、画像から把握される第1位置P1の色がアライメント印刷領域Ar1のもともとの色(黒色等)と比較してどの程度差があるか、又は第1位置P1の色がアライメントマークMを印刷するインクの色(白色等)とどの程度差があるかによって判断する。アライメント印刷領域Ar1は、アライメントマークMの印刷と除去を繰り返すうちに次第に除去しきれなかったインクのインク残りが蓄積し、もとの黒色等から徐々にインクの色(実施形態では白色)に近付いていく。
アライメントマークMを識別できない程度まで汚れているか否かは、具体的には例えば予め所定の閾値を定めておき、当該閾値を超えているか否か等により判断する。
【0065】
アライメント印刷領域Ar1の第1位置P1がアライメントマークMを識別できない程度まで汚れていない場合(ステップS4;NO)には、制御部11は、印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41a)をアライメント印刷領域Ar1に移動させ(ステップS5、図4参照)、第1の印刷ヘッド41aによりアライメント印刷領域Ar1の第1位置P1にインクでアライメントマークMを印刷させる(ステップS6)。
【0066】
例えば図8(a)に示す状態は、アライメント印刷領域Ar1の第1位置P1がもともとの黒色のままか、ほとんど汚れていない状態である。これに対して例えば図8(c)に示す場合には何度かアライメントマークMの印刷と除去を繰り返した後の状態であり、第1位置P1がもともとの黒色からかなり灰色に変化している。ただ図8(c)に示す程度の状態であれば白色等のインクでアライメントマークMを印刷しても第1位置P1の色と区別することができる。このためこの場合には、制御部11はアライメント印刷領域Ar1の第1位置P1にインクでアライメントマークMを印刷させる。
【0067】
これに対して、アライメント印刷領域Ar1の第1位置P1がアライメントマークMを識別できない程度まで汚れている場合(ステップS4;YES)には、制御部11は、印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41a)をアライメント印刷領域Ar1に移動させ(ステップS7)、さらに第1の印刷ヘッド41aをy方向(図8(d)ではy方向手前側)に移動させる。そして制御部11は、アライメント印刷領域Ar1内であって第1位置P1とは異なる第2位置P2に第1の印刷ヘッド41aによりインクでアライメントマークMを印刷させる(ステップS8、図8(d)参照)。
例えば図8(d)に示す例では、第1位置P1がアライメントマークMの印刷と除去とを繰り返すことでインク残りが生じ、蓄積した結果、第1の印刷ヘッド41aにより印刷されるインク(溶質として酸化チタン等を含む白色又はこれに近い色のインク)がアライメント印刷領域Ar1表面の色と区別しにくい状態となっている。このような場合には、制御部11は第1位置P1とは異なる第2位置P2にアライメントマークMを印刷させる。
【0068】
アライメントマークMが印刷されたら、制御部11は一旦印刷ヘッド41をカメラ51による撮影を阻害しない位置まで(例えば図3に示すようにアライメント印刷領域Ar1の右側に)退避させる(ステップS9)。
そしてアライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMをカメラ51で撮像させ、アライメントマーク画像を取得する(ステップS10)。
さらに制御部11は、当該アライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量を取得する(ステップS11)。具体的には、例えば十字のアライメントマークMの場合に、制御部11は十字の交点の座標を取得し、当該座標が本来あるべき座標からずれているか否か、ずれている場合にはどのようなずれが生じているか、といった印刷位置のずれ量を取得する。そして制御部11は、この印刷位置のずれ量に対応する補正値を導出する(ステップS12)。
【0069】
そして、制御部11はワイプ部材63がアライメント印刷領域Ar1の右横に来る程度の位置まで印刷ヘッド41を移動させ、ワイパ機構6のワイパ駆動部61を動作させてワイプ部材63を下降させる(ステップS13)。
図5は、駆動部品62aが下方に下がり、ワイプ部材63がアライメント印刷領域Ar1の上面に接する位置まで下降した「第2状態」を示している。
【0070】
なお、アライメントマークMが第1位置P1とは異なる第2位置P2に印刷された場合、第2位置P2がワイプ部材63の設けられている範囲から外れた位置である場合(例えば図8(a)から図8(d)においてワイプ部材63の設けられている位置よりも手前側(図中下側)である場合)には、制御部11は印刷機構4のY方向移動機構470を制御してワイプ部材63が第2位置P2において除去作業を行うことができるように印刷ヘッド41(ヘッドホルダ42)の位置を調整する。
【0071】
そして、制御部11はワイプ部材63をアライメント印刷領域Ar1に接している「第2状態」としたまま、印刷機構4のX方向移動機構450を制御して、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するヘッドホルダ42)をx方向(図3から図6において白抜き矢印で示す方向)に移動させる。例えば図8(b)に示す例ではx方向の右側から左側に向って印刷ヘッド41(ヘッドホルダ42)を移動させる。
【0072】
これによりワイパ機構6も印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するヘッドホルダ42)とともにx方向に移動し、ワイプ部材63がアライメント印刷領域Ar1上に摺接しながら移動する(図6図8(b)参照)。そして、ワイプ部材63をスクレーパ部材72が設けられている位置まで移動させると、アライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMとしてのインクがワイプ部材63によって掻き取られ、除去される(ステップS14、図8(b)参照)。
なお、アライメント印刷領域Ar1上に印刷されたインクは時間が経つにつれて水等の溶媒が蒸発する等により印刷面(すなわちアライメント印刷領域Ar1の表面)に固着し除去が難しくなる。このため、ワイプ部材63による掻き取り、除去は、インクによりアライメントマークMが印刷されてから数十秒以内等、印刷後できるだけ早期に行われることが好ましい。
【0073】
アライメント印刷領域Ar1に印刷されたインクであるアライメントマークMがワイプ部材63によって除去されたら、スクレーパ部材72によってワイプ部材63に付着しているインクや汚れを掻き取って除去する(ステップS15)。
その後制御部11は、ワイパ駆動部61を駆動させてワイプ部材63を上昇させ、ワイプ部材63の先端がアライメント印刷領域Ar1の表面等と接触しない位置に保持された「第1状態」とした上で、印刷ヘッド41を爪Tが配置されている第2領域Ar2に移動させる(ステップS16、図3参照)。
【0074】
そして印刷ヘッド41(本実施形態では第1の印刷ヘッド41a)による印刷位置に印刷アライメントによって導出された補正値を反映させて、第2領域Ar2において爪Tに本印刷を行う(ステップS17)。
なお、カメラ51によりアライメントマーク画像が取得された後であれば、アライメントマーク画像の解析や補正値の導出等を行っている最中でも、印刷ヘッド41がカメラ51の視界を遮っても問題がない。このため、ステップS13からステップS16の処理は、ステップS10の後、ステップS11やステップS12よりも先に行ってもよいし、ステップS11やステップS12と同時並行的に行われてもよい。
【0075】
このようにすれば、印刷アライメントを行うためのアライメントマークMを基台7上の所定の位置に直接印刷することができ、また印刷されたアライメントマークMを除去すれば基台7上をアライメント印刷領域Ar1として繰り返し用いることができる。このため、ユーザがアライメントマークM印刷用の紙等を用意する手間をかけることなく印刷アライメントを行うことができる。
【0076】
[効果]
以上のように、本実施形態の印刷装置100は、本印刷に先立って行われる印刷アライメントにおいて、インクからなるアライメントマークMが印刷される第1領域であるアライメント印刷領域Ar1と、アライメント印刷領域Ar1に接触可能に構成された除去部材であるワイプ部材63と、を備え、ワイプ部材63は、第1領域であるアライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMとしてのインクをアライメント印刷領域Ar1から除去することが可能となっている。
印刷アライメントを行う場合に印刷装置100の基台7上のアライメント印刷領域Ar1に直接アライメントマークMを印刷することで、専用の用紙等を用意する必要がない。また印刷されたインクを除去部材により除去することで繰り返しアライメント印刷領域Ar1を利用することができる。
これにより、ユーザの手を煩わせずに、簡易に印刷アライメントを行うことができる。
【0077】
また、本実施形態では、アライメントマークMを印刷するときに第1領域であるアライメント印刷領域Ar1に対して相対移動されるとともにインクを吐出させる印刷ヘッド41を備え、除去部材であるワイプ部材63は、印刷ヘッド41と一体的に移動するように設けられている。
これにより、除去部材であるワイプ部材63を移動させるための機構を別途設ける必要がなく、もともと印刷装置100が備える機構を用いてアライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMとしてのインクの除去を実現することができる。
このため装置構成を簡易にすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、印刷ヘッド41を第1方向(例えばx方向)及び第1方向に直交する第2方向(例えばy方向)に移動させる駆動手段を備えている。
これにより、アライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMとしてのインクの除去する場合には印刷ヘッド41を第1方向(例えばx方向)に移動させてインクを掻き取ることができるとともに、アライメント印刷領域Ar1の第1位置P1がインク残りで汚れてきた場合には、印刷ヘッド41を第2方向(例えばy方向)に移動させて第1位置P1とは異なる第2位置P2にアライメントマークMとしてのインクを印刷させることができる。そしてこの場合にも、第2位置P2に印刷されたインクを除去できる位置にワイプ部材63が位置するように印刷ヘッド41の位置を調整することで、ワイプ部材63により適切にインクの除去を行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、アライメントマークMを印刷するインクは、水等の溶媒に対して沈降しやすい酸化チタン等の溶質を含んでいる。
このようなインクは、時間の経過とともに溶媒と溶質の分離が進むため、印刷に適した状態を維持するためにはできるだけ印刷の直前までインクの撹拌動作を行うことが好ましい。しかし、ヘッドホルダ42やキャリッジ452に印刷ヘッド41を取り付けたまま撹拌動作を行うことは振動等の影響を考えると困難であり、装置も大型化・複雑化するおそれがある。このため、撹拌動作は印刷装置100外で行われることが好ましいが、この場合一旦装置外に取り出した印刷ヘッド41を再装着することになるため、本印刷前に印刷アライメントを行う必要が生じる。
本実施形態では、このように比較的頻繁に印刷アライメントを行う必要が生じるインクを用いる場合でも、その都度専用用紙を用意する手間等が必要ないため、ユーザの負担が軽減される。
【0080】
また、本実施形態では、アライメントマークMが印刷される第1領域であるアライメント印刷領域Ar1は、アライメントマークMを印刷するインクとのコントラストが高い色で形成されている。
これにより、印刷されたアライメントマークMを撮影したアライメントマーク画像からアライメントマークMが印刷された位置(座標)を容易かつ正確に検出することができ、印刷ヘッド41(特に第1の印刷ヘッド41a)の位置ずれ量の適切な把握、正確な補正値の導出を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、制御手段である制御部11が、撮像手段である撮影部5のカメラ51によるアライメントマークMの撮像により取得したアライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量に対応する補正値を導出するとともに、第2領域Ar2に配置された印刷対象物である爪T等に対して本印刷を行う場合に本印刷の印刷位置に補正値を反映させる。
これにより、アライメントマークMを印刷してその画像を解析する簡易な手法により印刷アライメントを行い、印刷ヘッド41の位置ずれがある場合に適切に印刷位置の補正を行うことができる。
【0082】
また、本実施形態では、制御装置10(制御装置10の制御部11)が、収容部であるヘッドホルダ42にカートリッジ411が収容されたことが検出されたことを契機に、本印刷に先立ってカートリッジ411を第1領域であるアライメント印刷領域Ar1に移動させ、アライメント印刷領域Ar1に、カートリッジ411に貯留されているインクからなるアライメントマークMを印刷させるアライメント印刷制御部、アライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMを撮影させてアライメントマーク画像を取得する画像取得部、アライメントマーク画像に基づいて印刷位置のずれ量に対応する補正値を導出する補正値導出部、アライメント印刷領域Ar1に印刷されたアライメントマークMとしてのインクを除去部材であるワイプ部材63によりアライメント印刷領域Ar1から除去させる除去動作制御部として機能する。
これにより、印刷アライメントを行うために必要なアライメントマークMの印刷から補正値の取得、アライメント印刷領域Ar1を繰り返し使えるようにするためのアライメントマークMの除去までを自動的に行うことができ、ユーザの手間を省いてずれのない高精細な印刷を実現することができる。
【0083】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0084】
例えば本実施形態では、印刷装置100が、インクからなるアライメントマークMが印刷される第1領域であるアライメント印刷領域Ar1と、このアライメント印刷領域Ar1からアライメントマークMとしてのインクを除去する除去部材としてのワイプ部材63とを備えている場合を例示したが、印刷装置100はこれに限定されない。
例えば印刷装置100が、インクからなるアライメントマークMが印刷される第1領域であるアライメント印刷領域Ar1を備え、アライメント印刷領域Ar1からアライメントマークMとしてのインクを除去する除去部材は、別部材としてのカートリッジ411aに設けられていてもよい。
【0085】
図9及び図10は、カートリッジ411aとインク吐出部412とが一体となった印刷ヘッド41cに除去部材としてのワイプ部材83を含むワイパ機構8が設けられている場合を例示している。ワイパ機構8は、実施形態に示したワイパ機構6と同様に支持部材82と支持部材82の下端(図9及び図10において下側の先端部)にワイプ部材83を備え、ワイパ駆動部81によって上下動する駆動部品82aを有している。支持部材82は、第1の印刷ヘッド41cの側面等に取り付けられている。第1の印刷ヘッド41cは、例えば水等の溶媒に対して沈降しやすい酸化チタン等の溶質を含むインクを貯留するカートリッジ411aを備えている。
【0086】
この場合、印刷装置100側には印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41c及び第2の印刷ヘッド41b)を収容する収容部としてのヘッドホルダ42aが設けられる。ヘッドホルダ42aにおいて第1の印刷ヘッド41cが取り付けられる側には多少の余裕が設けており、図9及び図10に示すように、ワイパ駆動部81により駆動部品82aが上下動したときにその動きが阻害されないようになっている。また第1の印刷ヘッド41cをヘッドホルダ42aに収容(装着)すると、インク吐出部412が制御部11と電気的に接続されるとともに、ワイパ機構8のワイパ駆動部81も制御部11と電気的に接続されて制御部11の制御に応じて動作するように構成される。
【0087】
印刷ヘッド41(第1の印刷ヘッド41c及び第2の印刷ヘッド41b)は、カートリッジ411a内部のインク残量がなくなったときには交換される消耗部品である。このような第1の印刷ヘッド41c(第1の印刷ヘッド41cのカートリッジ411a)にワイパ機構8(除去部材としてのワイプ部材83)を設けることで、カートリッジ411a内部のインクを使い切って印刷ヘッド41(ここでは第1の印刷ヘッド41c)を交換するタイミングでワイプ部材83も新しいものと交換することができる。
【0088】
この場合には除去部材としてのワイプ部材83は実施形態で示したようなヘラ状のものに限定されない。例えば除去部材はスポンジ状や布状のものであってもよい。
スポンジ状や布状の除去部材の場合、長期間繰り返し使用されるとインクが目詰まりする等により、アライメント印刷領域Ar1の表面を拭きとることで逆にインクを塗り広げて汚してしまうおそれもある。
この点、比較的短期間で交換される消耗部品である印刷ヘッド41にワイプ部材83が設けられている場合には汚れが蓄積する前に新しいものと交換され使い捨てにすることができる。このため、汚れが蓄積することによる問題を生じにくい。
スポンジ状や布状の除去部材の場合、アライメント印刷領域Ar1の表面を拭きとった際のインク吸収性に優れ、アライメント印刷領域Ar1の表面へのインク残りを生じにくく、アライメント印刷領域Ar1を長くきれいな状態に保つことができる。
【0089】
また、本実施形態では、下地用のインクを貯留するカートリッジ411を有する第1の印刷ヘッド41aとデザイン用のカラーインクを貯留するカートリッジ411を有する第2の印刷ヘッド41bとを有し、下地からデザイン印刷までを1台で行うことのできる印刷装置100を想定したが、印刷装置はこれに限定されない。
例えば印刷装置100は、下地用のインクを貯留するカートリッジ411を有する第1の印刷ヘッド41aのみを有する下地印刷の専用機等であってもよい。
【0090】
また、本実施形態においてアライメントマークMを印刷するインクは、特に撹拌動作が必要であり、印刷ヘッド41の着脱頻度が高い(印刷アライメントを行う頻度が高い)インクであり、実施形態では、白色材料としての酸化チタンを溶質として含む下地用のインクを例示したが、アライメントマークMを印刷するインクは、溶媒に対して沈降しやすい溶質を含んでいるものであればよく、下地用のインクに限定されない。
【0091】
例えば印刷ヘッド41が金粉や銀粉、ラメ等を溶質として含むインクを貯留するカートリッジ411を有する場合にも本発明を適用することができる。
また印刷ヘッド41が、溶媒に対して沈降しやすい溶質を含んでいるインクを貯留するカートリッジ411を有する場合以外でも、印刷ヘッド41を交換する際には印刷アライメントを行う必要が生じる。このため、溶媒に対して沈降しやすい溶質を含んでいるインク以外を貯留する印刷ヘッド41について印刷アライメントを行う場合に本発明を適用してもよい。
【0092】
なお、例えばカラーインク等を用いてアライメントマークMを印刷する場合、黒色等の上に印刷してもコントラストが低く、アライメントマークMから印刷位置を特定しずらい場合も考えられる。
そこで印刷アライメントを行う印刷ヘッドとして複数種類の色のインクを有するものが想定される場合には、例えば基台7のうち、左側は黒色等の部材で形成して白色等のインクによるアライメントマークMを印刷し、右側は白色等の部材で形成してカラーインク等を用いてアライメントマークMを印刷できるようにしてもよい。
【0093】
なお、複数の異なる色のインクでアライメントマークMを印刷すると、除去部材(実施形態ではワイプ部材63)によってインクを除去する際にインクの色が混ざって基台7の上を汚すおそれがある。
そこでこのようなおそれがある場合には、例えば印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を収容するヘッドホルダ42)の左右両側に除去部材を設けて、基台7の左側のアライメント印刷領域Ar1は印刷ヘッド41の左側に設けられている除去部材を用いてインクを除去し、基台7の右側のアライメント印刷領域Ar1は印刷ヘッド41の右側に設けられている除去部材を用いてインクを除去するというように、除去部材を使い分けるようにしてもよい。
【0094】
また、本実施形態では、図1に示すように、載置部3の左右両側にアライメント印刷領域Ar1、スクレーパ部材72、廃棄スペース73が設けられている場合を例示したが、アライメント印刷領域Ar1、スクレーパ部材72、廃棄スペース73は、例えば載置部3の左側等、一方の側のみに設けられていてもよい。この場合には右側の端部まで印刷ヘッド41が移動する必要がない分、装置全体の横幅(x方向の長さ)を短くすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0095】
また、本実施形態では、ワイプ部材63がワイパ駆動部61としてのソレノイドによって上下動する場合を例示したがワイプ部材63を上下動させる構成は図示例に限定されない。
ワイプ部材63はワイパ駆動部61のような制御部11の電気的な制御によって動作するものでなくてもよく、例えば印刷ヘッド41の移動経路上に設けられた段差等を利用して異なる高さ位置(実施形態における「第1状態」の位置、「第2状態」の位置等)に係止される構成となっていてもよい。
【0096】
また上記実施形態では、印刷装置100の制御装置10(制御装置10の制御部11)が印刷アライメントを行うための各部の制御や補正値の導出等を行う場合を例示したが、印刷アライメントを行うための制御処理は印刷装置100の制御装置10で行う場合に限定されない。例えば印刷装置100と連携する端末装置(例えばスマートフォン等)を備え、印刷装置100から画像データ等の提供を受けて端末装置の制御装置等が印刷アライメントにおける補正値の導出等を行ってもよい。
【0097】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0098】
1 装置本体
11 制御部
12 記憶部
2 筐体
3 載置部
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
41a 第1の印刷ヘッド
41b 第2の印刷ヘッド
411 カートリッジ
412 インク吐出部
42 ヘッドホルダ
5 撮影部
51 カメラ
6 ワイパ機構
61 ワイパ駆動部
63 ワイブ部材(除去部材)
100 印刷装置
Ar1 アライメント印刷領域(第1領域)
M アライメントマーク
図1
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