IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-減衰バルブおよび緩衝器 図1
  • 特開-減衰バルブおよび緩衝器 図2
  • 特開-減衰バルブおよび緩衝器 図3
  • 特開-減衰バルブおよび緩衝器 図4
  • 特開-減衰バルブおよび緩衝器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164357
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
F16F9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079772
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069EE10
3J069EE31
(57)【要約】
【課題】ばらつきの無い均一な減衰力を発生可能な減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明における減衰バルブVは、ケース側弁座10eを有するバルブケース10と、センターロッド15と、センターロッド15の外周との間に隙間Gを形成してバルブケース10に対して遠近可能であるとともにディスク側弁座11eとを有するディスク11と、環状であって弾性を有して外周部がケース側弁座10eに離着座可能であって内周部がディスク側弁座11eに離着座可能なリーフバルブ12と、ディスク11の反バルブケース側に配置されるばね受13と、ばね受13とディスク11との間に介装されてディスク11とリーフバルブ12とをバルブケース10へ向けて付勢するばね14と、隙間Gに連通されるオリフィス16aを有するオリフィスプレート16とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース側ポートを有するとともに、前記ケース側ポートの開口を取り囲む環状のケース側弁座を一端に有するバルブケースと、
前記バルブケースから立ち上がるセンターロッドと、
環状であって前記センターロッドの外周との間に隙間を形成して前記バルブケースに対して軸方向に遠近可能であって、ディスク側ポートと、環状であって外径が前記ケース側弁座よりも小径であってバルブケース側端の前記ディスク側ポートの開口よりも内周側に設けられたディスク側弁座とを有するディスクと、
環状であって弾性を有して前記バルブケースと前記ディスクとの間に設けられてバルブケース側の外周部が前記ケース側弁座に離着座可能であってディスク側の内周部が前記ディスク側弁座に離着座可能なリーフバルブと、
前記センターロッドの外周に嵌合されて前記ディスクの反バルブケース側に配置されるばね受と、
前記ディスクと前記ばね受との間に介装されて前記ディスクと前記リーフバルブとを前記バルブケースへ向けて付勢するばねと、
環状であって前記センターロッドの外周に軸方向へ移動可能に嵌合されて前記ディスクに積層されるとともに、前記隙間に連通されるオリフィスを有するオリフィスプレートとを備えた
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記ばね受は、前記ばねの一端を支承する頂部と、頂部から放射状に垂下されて先端が前記バルブケースに嵌合するとともに前記ディスクおよび前記リーフバルブの外周と径方向で対向する複数の脚部とを有し、
前記脚部によって前記ディスクおよび前記リーフバルブを前記バルブケースに対して調心する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記ディスクは、前記センターロッドによって調心され、
前記バルブケースは、前記リーフバルブの外周に径方向で対向して前記リーフバルブを調心する複数のガイドを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも2つの作動室を有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられる請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体と車輪との間に介装される緩衝器に利用される減衰バルブは、たとえば、ケース側ポートとケース側ポートの開口を取り囲む環状のケース側弁座を有するバルブケースと、バルブケースに対して遠近可能であるとともにディスク側ポートとディスク側ポートの内周側に設けられた環状のディスク側弁座とディスク側ポートの外周に設けられた環状の外周シート部とを有するディスクと、環状であってバルブケースとディスクとの間に介装されてケース側弁座とディスク側弁座とに離着座するリーフバルブと、頂部と頂部の外周から放射状にバルブケースヘ向けて延びてバルブケースの外周に圧入される複数の脚部とを有して内方にディスクとリーフバルブとを収容するキャップと、キャップとディスクとの間に介装されてディスクとともにリーフバルブをバルブケースヘ向けて付勢するコイルばねとを備えるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
減衰バルブにおけるリーフバルブは、バルブケース側の外周部をケース側弁座に着座させ、ディスク側の内周部をケース側弁座よりも小径のディスク側弁座に着座させている。また、ケース側弁座には、ケース側弁座にリーフバルブが着座する状態でオリフィスを形成する凹部が設けられている。
【0004】
このように構成された減衰バルブは、たとえば、緩衝器内の圧側室とリザーバとの間に設けられている。そして、減衰バルブは、圧側室からリザーバへ向かう作動油の流れに対し、リーフバルブがディスク側弁座とケース側弁座とに着座する閉弁時にはキャップの脚部間を通過した作動油がオリフィスを介してリザーバへ移動する際にオリフィスによって抵抗を与え、リーフバルブの内周側が撓んでディスク側弁座から離間する開弁時にはリーフバルブによって抵抗を与えて、減衰力を発生する。
【0005】
他方、減衰バルブは、リザーバから圧側室へ作動油が流れる場合、ばねが縮んでリーフバルブがディスク側弁座に着座したままディスクとともにバルブケースから離間するので、作動油がリーフバルブとバルブケースとの間を通過してキャップの脚部間を介してキャップ外へ移動する。そして、従来の減衰バルブは、ばねの付勢力が小さくリザーバから圧側室へ作動油が移動する場合には作動油の流れに殆ど抵抗を与えないので、チェックバルブとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-059536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように従来の減衰バルブでは、キャップの脚部の下端をバルブケースの外周に設けられた段部に圧入して、キャップとバルブケースとを一体化しているが、キャップをバルブケースに対して周方向に位置決めされていないため、ケース側弁座に設けた凹部でなるオリフィスが径方向で脚部と重なる場合がある。
【0008】
前述した通り、オリフィスが機能するのは、リーフバルブがディスク側弁座およびケース側弁座に着座する閉弁時であり、リーフバルブが脚部によって径方向である程度調心できるようにリーフバルブの外周と脚部との間の隙間が狭くなっているため、ケース側弁座の凹部とキャップの脚部とが径方向で重なると、作動油はリーフバルブと脚部との狭い隙間を通過してからオリフィスを通過することになり、作動油の流れが安定せず、オリフィス以外にもリーフバルブと脚部との間の隙間によって作動油の流れに抵抗を与えてしまう。そうかといって、リーフバルブの内周側にオリフィスとして機能する切欠を設けると、リーフバルブの外周が撓んだ際に応力が集中してリーフバルブの破損の心配があるので、このような構成を採ることが難しい。
【0009】
よって、従来の減衰バルブでは、ケース側弁座の凹部とキャップの脚部とが径方向で重ってしまい、減衰力特性が製品毎にばらついてしまうという課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、ばらつきの無い均一な減衰力の発生が可能な減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を解決するために、本発明の減衰バルブは、ケース側ポートを有するとともに、ケース側ポートの開口を取り囲む環状のケース側弁座を一端に有するバルブケースと、バルブケースから立ち上がるセンターロッドと、環状であってセンターロッドの外周との間に隙間を形成してバルブケースに対して軸方向に遠近可能であって、ディスク側ポートと、環状であって外径がケース側弁座よりも小径であってバルブケース側端のディスク側ポートの開口よりも内周側に設けられたディスク側弁座とを有するディスクと、環状であって弾性を有してバルブケースとディスクとの間に設けられてバルブケース側の外周部がケース側弁座に離着座可能であってディスク側の内周部がディスク側弁座に離着座可能なリーフバルブと、センターロッドの外周に嵌合されてディスクの反バルブケース側に配置されるばね受と、ディスクとばね受との間に介装されてディスクとリーフバルブとをバルブケースへ向けて付勢するばねと、環状であってセンターロッドの外周に軸方向へ移動可能に嵌合されてディスクに積層されるとともに、隙間に連通されるオリフィスを有するオリフィスプレートとを備えている。
【0012】
このように構成された減衰バルブによれば、液体がオリフィスを通過する際、液体はオリフィスへ到達するまでに狭いスペースを通過しないので、液体の流れが安定し、リーフバルブの閉弁時にはオリフィスのみにより減衰力を発生できる。
【0013】
また、減衰バルブにおけるばね受は、ばねの一端を支承する頂部と、頂部から放射状に垂下されて先端がバルブケースに嵌合するとともにディスクおよびリーフバルブの外周と径方向で対向する複数の脚部とを有し、脚部によってディスクおよびリーフバルブをバルブケースに対して調心してもよい。このように構成された減衰バルブによれば、リーフバルブとディスクとがバルブケースに対して遠近する動作を繰り返しても、動作する度に減衰力が変化することが無く狙い通りの減衰力を発生できる。
【0014】
さらに、減衰バルブにおけるディスクは、センターロッドによって調心され、バルブケースは、リーフバルブの外周に径方向で対向してリーフバルブを調心する複数のガイドを有してもよい。このように構成された減衰バルブによれば、リーフバルブとディスクとがバルブケースに対して遠近する動作を繰り返しても、動作する度に減衰力が変化することが無く狙い通りの減衰力を発生できる。
【0015】
さらに、緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも2つの作動室を有する緩衝器本体と、作動室間に設けられる減衰バルブとを備えている。このように構成された緩衝器によれば、ばらつきの無い均一な減衰力を発生でき、車両における乗心地を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、ばらつきの無い均一な減衰力を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態における減衰バルブを備えた緩衝器の縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図3】本発明の一実施の形態における減衰バルブのキャップの底面図である。
図4】本発明の位置実施の形態における減衰バルブのオリフィスプレートの平面図である。
図5】本発明の一実施の形態の第1変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、アウターシェル1と、アウターシェル1内に移動可能に挿入されるピストンロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる二つの作動室としての圧側室R2とリザーバRとの間に設けられた減衰バルブVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0019】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、緩衝器本体Aは、有底筒状のアウターシェル1と、アウターシェル1内に挿入されるシリンダ3と、シリンダ3内に移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ3内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ3内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン4と、アウターシェル1とシリンダ3との間に形成されたリザーバRとシリンダ3内の圧側室R2との間に設置される減衰バルブVとを備えている。
【0020】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。アウターシェル1は、有底筒状であって、内部にシリンダ3を収容しており、シリンダ3の外周を覆って、シリンダ3との間の環状隙間でリザーバRを形成している。
【0021】
シリンダ3は、筒状であって内部には、前述したようにピストン4が移動自在に挿入されており、ピストン4の図1中上方に伸側室R1が、図1中下方には圧側室R2がそれぞれ区画されている。伸側室R1と圧側室R2内には、液体として、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。リザーバR内には、シリンダ3内に充填される液体と同じ液体の他に気体が充填されている。なお、液体を作動油とする場合、リザーバR内に充填される液体は、作動油の劣化を防止するため気体を窒素等といった不活性ガスとされるとよい。
【0022】
そして、シリンダ3の図1中下端には、減衰バルブVが取り付けられており、減衰バルブVによって、シリンダ3内の圧側室R2とシリンダ3外のリザーバRとが仕切られている。
【0023】
また、シリンダ3の図1中上端には、ピストンロッド2を摺動自在に軸支するロッドガイド5が嵌合されている。このロッドガイド5は、アウターシェル1の内周に嵌合され、アウターシェル1の上端を加締めることで、ロッドガイド5の図1中上方に積層されてアウターシェル1、シリンダ3およびピストンロッド2のそれぞれの間をシールするシール部材6とともにアウターシェル1に固定される。このようにロッドガイド5をアウターシェル1に固定するとシリンダ3は、アウターシェル1の底部に載置された減衰バルブVにおけるバルブケース10とロッドガイド5とで挟持され、シリンダ3も減衰バルブVとともにアウターシェル1内で固定される。なお、アウターシェル1の上端開口端を加締める代わりに、上端開口部にキャップを螺着して、このキャップとアウターシェル1の底部とで、前記シール部材6、ロッドガイド5、シリンダ3およびバルブケース10を挟持して、これら部材をアウターシェル1内で固定してもよい。
【0024】
ピストンロッド2は、円柱状であって先端側の外径が縮径されており、先端側の最小径の小径部2aと、小径部2aより外径が大きく小径部2aの図2中上側に設けられた大径部2bと、小径部2aと大径部2bとの境に設けられた段部2c、小径部2aの先端外周に設けられた図示しない螺子部とを備えている。
【0025】
そして、ピストンロッド2の図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ピストンロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の一方に連結される。また、アウターシェル1の底部にもブラケット(図示せず)が設けられており、アウターシェル1が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の他方に連結される。
【0026】
このようにして緩衝器Dは車体と車輪との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ピストンロッド2がアウターシェル1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン4がシリンダ3内を上下(軸方向)に移動する。
【0027】
ピストン4は、環状であって図1に示すように、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート4aと、圧側室R2と伸側室R1とを連通する圧側ポート4bを備えている。ピストン4の図1中上方には環状の圧側チェックバルブ8が重ねられ、ピストン4の図1中下方には環状の伸側リーフバルブ7が重ねられている。そして、圧側チェックバルブ8、ピストン4および伸側リーフバルブ7は、ピストンロッド2の小径部2aの外周に順番に嵌合され、ピストンロッド2の先端の図外の螺子部に螺子結合されるピストンナット9と段部2cとで挟持されてピストンロッド2に固定される。
【0028】
伸側リーフバルブ7は、環状板を複数枚積層して構成されてピストン4の図1中下側である圧側室側に重ねられており、伸側ポート4aの出口端を開閉する。伸側リーフバルブ7は、内周がピストンロッド2に固定されて外周側の撓みが許容されており、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力より高くなり両者の差圧が開弁圧に達すると、伸側ポート4aを介して作用する伸側室R1の圧力を受けて撓んで開弁し、伸側ポート4aを開放して伸側室R1と圧側室R2とを連通させる。伸側リーフバルブ7は、伸側ポート4aを通過する液体の流れに抵抗を与えて伸側室R1の圧力を上昇させる。反対に、伸側リーフバルブ7は、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力より高いと背面側から作用する圧側室R2の圧力によってピストン4に押しつけられて伸側ポート4aを閉塞して圧側室R2と伸側室R1との連通を遮断する。
【0029】
他方、圧側チェックバルブ8は、ピストン4に対して軸方向で遠近可能な環状板と環状板をピストン4に向けて付勢するばねとで構成されてピストン4の図1中上側である伸側室側に重ねられており、圧側ポート4bの出口端を開閉する。圧側チェックバルブ8は、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力より高くなり、圧側ポート4bを介して作用する圧側室R2の圧力を受けてピストン4から離間して開弁すると圧側ポート4bを開放して圧側室R2と伸側室R1とを連通させる。なお、圧側チェックバルブ8は、開弁すると然程抵抗を与えずに液体が圧側ポート4bを通過するのを許容する。反対に、圧側チェックバルブ8は、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力より高いと背面側から作用する伸側室R1の圧力によってピストン4に押しつけられて圧側ポート4bを閉塞して圧側室R2と伸側室R1との連通を遮断する。
【0030】
つづいて、減衰バルブVは、図1および図2に示すように、環状のバルブケース10と、バルブケース10の内周に挿入されてバルブケース10から立ち上がるセンターロッド15と、バルブケース10に対して遠近可能なディスク11と、環状であってバルブケース10とディスク11との間に介装されるリーフバルブ12と、ディスク11の反バルブケース側に配置されるばね受としてのキャップ13と、ディスク11とキャップ13との間に介装されてディスク11とともにリーフバルブ12をバルブケース10ヘ向けて付勢するばね14と、ディスク11に積層されるオリフィスプレート16とを備えている。
【0031】
センターロッド15は、図2に示すように、先端となる下端側に外径が小径な小径部15bと小径部15bよりも上方側に外径が小径部15bよりも大径な大径部15cとを有する軸部15aと、軸部15aの上端に設けられたフランジ15dとを備えている。
【0032】
バルブケース10は、環状とされており、内周にセンターロッド15の軸部15aにおける小径部15bが挿入されている。バルブケース10は、センターロッド15の軸部15aの先端となる下端に設けられた筒部を加締めて径方向へ押し広げて形成された加締部15eと、軸部15aの小径部15bと大径部15cとの境に形成された段部とによって挟持されて、センターロッド15に固定されている。
【0033】
バルブケース10は、図2に示したように、環状のケース本体10aと、環状であってケース本体10aの下端に連なり外径がケース本体10aよりも大径な大径部10bと、ケース本体10aの図2中上端の外周に設けられた環状凹部10cと、ケース本体10aを図2中上下に貫通するケース側ポート10dと、ケース本体10aの図2中上端であってケース側ポート10dの外周側から上方へ向けて突出してケース側ポート10dの外周を取り囲む環状のケース側弁座10eとを備えている。
【0034】
大径部10bは、ケース本体10aの図2中下端のケース側ポート10dの外周側に連なってケース本体10aの外径よりも大きな外径を備えるとともに、周方向で間隔を空けて下端から開口する複数の切欠10fを備えている。
【0035】
そして、バルブケース10は、大径部10bがアウターシェル1の底部1aとシリンダ3の図2中下端とで挟持されることにより、アウターシェル1およびシリンダ3に対して不動に固定されている。このようにアウターシェル1およびシリンダ3に固定されたバルブケース10の内周側の空間は、切欠10fを介してアウターシェル1とシリンダ3との間に形成されたリザーバRに連通されている。
【0036】
また、ケース本体10aは、図2中上端の外周に上端外周の角部を取り除くように環状凹部10cが設けられており、環状凹部10cを設けることによって外周に段部が形成されている。
【0037】
ケース側ポート10dは、ケース本体10aを図2中上下に貫通するとともにケース本体10aの周方向に沿って設けられた扇状の3つの孔で形成されている。なお、ケース側ポート10dの断面形状は、扇状でなくてもよく円形その他の形状とされてもよい。
【0038】
ケース側弁座10eは、環状であってケース本体10aの図2中上端であって、ケース側ポート10dよりも外周側であって環状凹部10cよりも内周側からディスク側となる図2中上方へ突出しており、ケース側ポート10dの上方開口端を取り囲んでいる。なお、ケース側弁座10eとケース本体10aとの間の高低差は、後述するリーフバルブ12がケース側弁座10eに支持されつつ内周側をケース本体側へ向けて撓んだ際にケース本体10aと干渉しないように設定される。
【0039】
なお、センターロッド15は、本実施の形態では、バルブケース10とは別部品とされているが、バルブケース10に一体に設けられてもよい。
【0040】
ディスク11は、バルブケース10の図2中上方であってバルブケース10より圧側室R2側に配置されており、バルブケース10の一端となる図2中上端に対向してバルブケース10の一端に対して遠近可能となっている。詳しくは、ディスク11は、環状であって外径がケース側弁座10eの図2中上端面の外径よりも大径なディスク本体11aと、環状であってディスク本体11aのバルブケース側端となる図2中下端からバルブケース側へ突出するとともに内径がディスク本体11aの内径と同一であって外径がケース側弁座10eの内径よりも小径な凸部11bと、ディスク本体11aの凸部11bよりも外周側のバルブケース側端に設けられた環状の凹部で形成された環状窓11cと、ディスク本体11aの反バルブケース側端から開口して環状窓11cに連通される複数のディスク側ポート11dとを備えている。ディスク本体11aの内周面と凸部11bの内周面とは面一となっており、双方の内周面でディスク11の内周面を形成している。
【0041】
凸部11bは、バルブケース側を向く図2中下端の外周部で環状のディスク側弁座11eを形成している。ディスク側弁座11eは、ケース側弁座10eの内径よりも小さな外径を持ち、凸部11bの外周部で形成されているので、ディスク本体11aのディスク側ポート11dの開口となる環状窓11cよりも内周側に設けられている。ディスク側弁座11eは、本実施の形態では凸部11bの外周部とされているが、凸部11bからバルブケース側へ突出する環状突起により形成されてもよい。
【0042】
各ディスク側ポート11dは、ディスク本体11aの図2中上端であって軸方向から見て凸部11bよりも外周側から開口して環状窓11cに通じている。また、ディスク側ポート11dは、ディスク本体11aに対して同一円周上に互いに間隔を空けて設けれており、シリンダ3内の圧側室R2に連通されている。
【0043】
このように構成されたディスク11は、センターロッド15の軸部15aにおける大径部15cの外周側に配置される。具体的には、ディスク11の内径、つまり、ディスク本体11aおよび凸部11bの内径は、大径部15cの外径よりも大径となっており、ディスク11内にセンターロッド15が挿入されると、ディスク11の内周面と大径部15cの外周面との間に環状の隙間Gが形成される。隙間Gは、常時、ディスク11とバルブケース10との間の空隙を介してケース側ポート10dに連通されている。
【0044】
また、ディスク11の内周とセンターロッド15の大径部15cの外周との間に環状隙間が形成されるので、ディスク11は、センターロッド15およびセンターロッド15の小径部15bに固定されるバルブケース10に対してセンターロッド15の軸方向に沿って遠近できる。なお、隙間Gの形成にあたり、ディスク11の内周面と大径部15cに摺接させるとともにディスク11の内周に軸方向に沿って溝を形成して、当該溝によって隙間Gを形成してもよく、このようにしてもディスク11はバルブケース10に対して遠近可能であってセンターロッド15との間に隙間を形成できる。
【0045】
リーフバルブ12は、本実施の形態では、弾性を備えた3枚の環状板を積層して構成されている。リーフバルブ12を構成する環状板の枚数は所望する減衰力の大きさに応じて任意に変更可能である。また、リーフバルブ12の内径は、ディスク側弁座11eに離着座可能であればよく、リーフバルブ12の外径は、ケース側弁座10eの図2中上端の外径より大きい。なお、ディスク11およびリーフバルブ12は、後述するばね受としてのキャップ13の脚部13bによって調心される。また、リーフバルブ12の内径は、センターロッド15の大径部15cの外径よりも大径となっており、リーフバルブ12は、内周側に挿入されるセンターロッド15の大径部15cに対してディスク11とともにバルブケース10に遠近する方向へ移動可能である。
【0046】
このように構成されたリーフバルブ12は、バルブケース10とディスク11との間に配置されると、バルブケース側端となる図2中下端の外周をバルブケース10のケース側弁座10eに着座させるとともに、ディスク側端となる図2中上端の内周をディスク11のディスク側弁座11eに着座させる。
【0047】
また、ディスク11およびリーフバルブ12は、後述するばね14によってバルブケース側へ向けて付勢され、また、ディスク11が圧側室R2の圧力によってバルブケース側へ向けて付勢されるので、リーフバルブ12の内周側がディスク側弁座11eに着座しつつ、リーフバルブ12の外周側がケース側弁座10eとディスク11のディスク本体11aの環状窓11cより外周側の部分とで挟み込まれる。また、リーフバルブ12の内周はディスク側弁座11eによって支持されて、ディスク本体11aから見てディスク側弁座11eの方がディスク本体11aの環状窓11cより外周側の部分の図2中下端面よりも高く、ディスク側弁座11eの下端面と前記部分の下端面との間に高低差が設けられている。そのため、リーフバルブ12は、外周がケース側弁座10eとディスク本体11aの前記部分とで挟持されて内周側が前記高低差に応じて撓み、当該高低差によって初期撓みが与えられる。予め初期撓みが与えられるリーフバルブ12は、自身が発生する弾発力でディスク側弁座11eを押し付けており、ディスク側ポート11d内を通じて作用する圧側室R2の圧力によって内周側を図2中下方へ押し下げる力が前記弾発力に打ち勝つとディスク側弁座11eから離間してディスク側ポート11dを開放する。なお、リーフバルブ12に与える初期荷重の調整によって、リーフバルブ12の開弁圧を調整でき、初期荷重は前記高低差によって変更できる。
【0048】
また、リーフバルブ12は、ディスク側弁座11eに着座する状態では、バルブケース10のケース側ポート10dからリザーバRの圧力を受けて押し上げられると、ディスク11がバルブケース10に対して遠近できるので、ディスク11とともにバルブケース10に対して図2中上方へ移動してケース側弁座10eから離座して、ケース側ポート10dを開放できる。
【0049】
ばね受としてのキャップ13は、図2および図3に示すように、環状の頂部13aと、頂部13aから放射状に垂下される6つのガイドとしての脚部13bとを備えている。脚部13bは、符示はしないが頂部13aに連続する水平部と水平部からバルブケース側へ向けて垂下される垂直部とを備えている。また、脚部13bの垂直部は、円弧状の断面を備えている。このように、キャップ13は、有頂筒状の筒体から下端から頂部にかけて6箇所を切り欠いてできる形状に近似した形状となっている。なお、頂部13aは、環状となっているが円盤状となっていてもよい。
【0050】
そして、このように構成されたキャップ13は、脚部13bの垂直部における下端がバルブケース10のケース本体10aの外周の環状凹部10cによって形成される段部に当接させるまで、脚部13bの垂直部の下端部の内周側を環状凹部10cの外周に嵌合される。
【0051】
また、キャップ13における頂部13aの内周にセンターロッド15の大径部15cが挿入されており、頂部13aの図2中上端はセンターロッド15のフランジ15dに当接している。キャップ13の脚部13bの図2中下端がセンターロッド15の小径部15bに固定されるバルブケース10の外周に設けられた環状凹部10cによって形成される段部に当接しているので、キャップ13は、バルブケース10とセンターロッド15のフランジ15dとの間で挟持されて、センターロッド15に固定される。
【0052】
また、このようにバルブケース10に取り付けられたキャップ13の内方、つまり、頂部13aと各脚部13bで囲まれる空間内には、ディスク11およびリーフバルブ12がバルブケース10に対して軸方向に遠近可能に収容される。ディスク11およびリーフバルブ12は、キャップ13の脚部13bがバルブケース10およびセンターロッド15に一体化されるため、キャップ13内でのみバルブケース10に対して遠近する方向への移動が許容され、キャップ13外へ脱落することもない。また、キャップ13で囲まれた前記空間は、脚部13b,13b間を通じて圧側室R2に連通されている。
【0053】
各脚部13bの垂直部における湾曲面でなる内周面は、ディスク11およびリーフバルブ12の外周に径方向で対向しており、脚部13bによってこれらディスク11およびリーフバルブ12が調心される。
【0054】
具体的には、各脚部13bの内周面に接する内接円の直径は、ディスク11の外径およびリーフバルブ12の外径よりわずかに大きく、各脚部13bの内側に収容されたディスク11およびリーフバルブ12がキャップ13内で軸方向へ往復移動しても、移動中のディスク11およびリーフバルブ12の外周が脚部13bの内周面に倣って滑るので、キャップ13に対して自動的に調心されるとともに、脚部13bに対してスティックスリップを起こさずに円滑に移動できる。
【0055】
つづいて、キャップ13とディスク11との間には、ディスク11とリーフバルブ12とをバルブケース10へ向けて付勢するばね14が介装されている。ばね14は、円錐コイルばねとされており、大径側の端部がキャップ13の脚部13bの水平部と垂直部との折れ曲がり部分に嵌合しており、小径側の端部がディスク11の反バルブケース側端に当接して、ディスク11とキャップ13との間に圧縮状態で介装されている。
【0056】
ばね14は、常時、ディスク11をリーフバルブ12とともにバルブケース側へ向けて接近させる方向に付勢しており、無負荷状態ではリーフバルブ12をケース側弁座10eとディスク側弁座11eとの双方に着座させる。また、ばね14が円錐コイルばねとされているので、ばね14が最収縮する際の軸方向の全長が短くなるので、ディスク11およびリーフバルブ12のバルブケース10に対する軸方向へのストローク量を確保しつつも減衰バルブVにおける高さを低くでき、緩衝器Dのストローク長を確保し易くなる。なお、ばね14は、円錐コイルばね以外の円筒コイルバネやウェーブワッシャ、環状の皿ばね等とされてもよい。
【0057】
オリフィスプレート16は、環状であって、ディスク11の反バルブケース側面となる図2中上面に重ねられてディスク11とばね14との間で挟まれている。オリフィスプレート16の内周は、センターロッド15の大径部15cの外周に摺接しており、センターロッド15に対して軸方向に移動可能であって、ディスク11とともにバルブケース10に対して遠近可能である。また、オリフィスプレート16は、図4に示すように、内周から開口して径方向へ向かって形成される複数の切欠でなるオリフィス16aを備えており、センターロッド15の大径部15cが内周に挿入されてディスク11に積層されるとオリフィス16aをセンターロッド15とディスク11との間の隙間Gに連通させる。このようにオリフィスプレート16は、ディスク11に積層されるとともに内周側にセンターロッド15が挿入されると、圧側室R2をオリフィス16aのみを介して隙間Gに連通させる。よって、オリフィスプレート16は、圧側室R2から隙間Gへ向かう液体の流れに対してオリフィス16aによって抵抗を与えることができる。また、オリフィスプレート16がディスク11とばね14とによって挟まれており、常時、ディスク11へ向けてばね14の付勢力が作用するので、ディスク11から離間せずディスク11と一体となってキャップ13内で軸方向へ移動できる。オリフィスプレート16は、ディスク11自体に保持されていてもよいが、前述したようにディスク11とばね14との間で挟持されてディスク11に当接した状に維持されると、径方向への移動が許容されるため、センターロッド15のみによって調心されることになり、キャップ13によって調心されるディスク11から干渉を受けることが無くなるので、組付性が向上するとともに寸法管理も容易となる。なお、オリフィスプレート16がディスク11に取り付けられる場合、オリフィスプレート16は、ディスク11のバルブケース側端に積層されてディスク11に取り付けられてもよい。
【0058】
また、オリフィスプレート16におけるオリフィス16aは、内周側から開口する切欠によって形成されているが、隙間Gに連通されてオリフィスとして機能できればよいので、内周に通じる切欠によらず、オリフィスプレート16の肉厚を軸方向に貫通する孔によって形成されてもよい。
【0059】
つづいて、このように構成された減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。まず、ピストン4がシリンダ3に対して図1中上方側へ移動する緩衝器Dの伸長作動時における減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。ピストン4がシリンダ3に対して図1中上方へ移動すると、ピストン4の移動に伴って伸側室R1が縮小されるとともに圧側室R2が拡大される。縮小される伸側室R1内の液体は、伸側ポート4aを通過して伸側リーフバルブ7を撓ませて圧側室R2へ移動する。伸側リーフバルブ7は、伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流れに対して抵抗を与えるので、伸側室R1内の圧力が上昇する。
【0060】
緩衝器Dの伸長作動に伴ってシリンダ3内からピストンロッド2が退出するので、シリンダ3内でピストンロッド2が押し退ける容積が減少するためシリンダ3内でピストンロッド2のシリンダ3内から退出する体積分の液体が不足する。すると、減衰バルブVにおけるリーフバルブ12は、バルブケース10のケース側ポート10dからリザーバRの圧力を受けて図2中上方へ押圧され、ばね14を押し縮めてディスク11とともにバルブケース10に対して上方へ移動してケース側弁座10eから離座し、ケース側ポート10dをキャップ13における脚部13bと脚部13bとの間を介して圧側室R2へ連通する。よって、シリンダ3内で不足する液体は、リーフバルブ12とケース側弁座10eとの間を通過してリザーバRから圧側室R2へ供給される。このように、緩衝器Dの伸長作動時には、リーフバルブ12とともにディスク11がバルブケース10から離間してケース側ポート10dを開放してリザーバRと圧側室R2とが連通されるので、シリンダ3内で不足する液体がリザーバRから供給される。また、減衰バルブVは、リーフバルブ12およびディスク11がバルブケース10から離間してリーフバルブ12とケース側弁座10eとの間の隙間を大きくして当該隙間を通過する液体の流れに然程の抵抗を与えない。
【0061】
よって、緩衝器Dの伸長作動時には、圧側室R2の圧力はリザーバRの圧力と略等しくなる一方で、伸側リーフバルブ7によって伸側室R1の圧力が高くなって圧側室R2の圧力とに差が生じて、ピストン4には図1中下方へ押し下げる方向の力が作用し、緩衝器Dは伸長作動を妨げる減衰力を発生する。
【0062】
つづいて、ピストン4がシリンダ3に対して図1中下方側へ移動する緩衝器Dの収縮作動時における減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。ピストン4がシリンダ3に対して図1中下方へ移動すると、ピストン4の移動に伴って圧側室R2が縮小されるとともに伸側室R1が拡大される。縮小される圧側室R2内の液体は、圧側ポート4bを通過して圧側チェックバルブ8を撓ませて伸側室R1へ移動する。圧側チェックバルブ8は、圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに対して然程抵抗を与えないので、伸側室R1と圧側室R2の圧力は略等しくなる。
【0063】
緩衝器Dの収縮作動に伴ってシリンダ3内にピストンロッド2が侵入するので、シリンダ3内でピストンロッド2が押し退ける容積が増大するためシリンダ3内でピストンロッド2のシリンダ3内へ侵入する体積分の液体が過剰となる。緩衝器Dの収縮速度が低く、ディスク11のディスク側ポート11dを介してリーフバルブ12の図2中上面に作用する圧側室R2の圧力とリーフバルブ12の図2中下面に作用するリザーバRの圧力との差が開弁圧に達しない状態では、リーフバルブ12がディスク側弁座11eに着座したままとなり、液体はディスク側ポート11dを通過できない。他方、オリフィスプレート16におけるオリフィス16aは、ケース側ポート10dに連通されるディスク11の内周の隙間Gに常に連通しており、キャップ13内の空間をケース側ポート10dに連通させる。
【0064】
よって、リーフバルブ12の閉弁時には、圧側室R2内の液体は、キャップ13の脚部13b,13b間を通ってキャップ13内に入り、その後、オリフィス16a、隙間Gおよびケース側ポート10dを通過してリザーバRへ移動する。よって、シリンダ3内で過剰となる液体は、オリフィス16aを通過して圧側室R2からリザーバRへ排出される。このように、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が低い場合には、オリフィス16aが圧側室R2からリザーバRへ移動する液体の流れに抵抗与えるので、圧側室R2と伸側室R1の圧力が略等しく上昇する。ピストン4がピストンロッド2に連結されていて、ピストン4における圧側室R2の圧力を受ける受圧面積の方が伸側室R1の圧力を受ける受圧面積がピストンロッド2の断面積分だけ大きいので、ピストン4を図1中上方へ押し上げる力が作用し、緩衝器Dは、収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0065】
このように液体がオリフィス16aを通過する際、液体は脚部13bとリーフバルブ12との間の狭い隙間を通過する必要はなく、キャップ13の脚部13b,13b間およびディスク11とキャップ13の頂部13aとの間の広いスペースのみを通過してオリフィス16aへ到着するので、オリフィス16a以外に液体の流れに抵抗が与えられず、減衰バルブVは、リーフバルブ12の閉弁時にはオリフィス16aのみにより減衰力を発生できる。
【0066】
また、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が高くなると、リーフバルブ12の図2中上面に作用する圧側室R2の圧力と図2中下面に作用するリザーバRの圧力との差が開弁圧に達して、リーフバルブ12は、ケース側弁座10eおよびディスク側弁座11eに着座する状態から圧側室R2の圧力で押圧されて、内周側を図2中で下方となるバルブケース側に撓ませてディスク側弁座11eから離座してディスク側ポート11dをケース側ポート10dに連通させて圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れを許容しつつ当該液体の流れに対して抵抗を与える。
【0067】
このように、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が高くなると、シリンダ3内で過剰となる液体は、リーフバルブ12とディスク側弁座11eとの間を通過して圧側室R2からリザーバRへ排出される。よって、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が高い場合には、リーフバルブ12が圧側室R2からリザーバRへ移動する液体の流れに抵抗与えるので、緩衝器Dは、リーフバルブ12によって収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0068】
緩衝器Dが伸長作動と収縮作動とを繰り返すと、その度に、リーフバルブ12がディスク11とともにバルブケース10から図2中上方へ離間する動作と、リーフバルブ12がディスク11とともにバルブケース10から離間してからバルブケース側へ接近する動作とを繰り返す。このような動作を行っても、ディスク11およびリーフバルブ12がキャップ13における脚部13bによって調心されるためリーフバルブ12のディスク側弁座11eおよびケース側弁座10eに接触する部位が径方向にずれず変化しない。よって、減衰バルブVは、リーフバルブ12とディスク11とがバルブケース10に対して遠近する動作を繰り返しても、動作する度に減衰力が変化することが無く狙い通りの減衰力を発生できる。
【0069】
よって、緩衝器Dの伸長作動と収縮作動とを繰り返しても、リーフバルブ12の内周側がディスク側弁座11eに着座するとともに、ディスク11の環状窓11cよりも外周側の部分とケース側弁座10eとで外周側が挟持される状態となると、ディスク側弁座11eと前記部分との高低差に応じた一定の初期撓みがリーフバルブ12に与えれるのでリーフバルブ12の開弁圧も安定する。
【0070】
以上、本実施の形態の減衰バルブVは、ケース側ポート10dを有するとともにケース側ポート10dの開口を取り囲む環状のケース側弁座10eを一端に有するバルブケース10と、バルブケース10から立ち上がるセンターロッド15と、環状であってセンターロッド15の外周との間に隙間Gを形成してバルブケース10に対して軸方向に遠近可能であって、ディスク側ポート11dと、環状であって外径がケース側弁座10eよりも小径であってバルブケース側端のディスク側ポート11dの開口よりも内周側に設けられたディスク側弁座11eとを有するディスク11と、環状であって弾性を有してバルブケース10とディスク11との間に設けられてバルブケース側の外周部がケース側弁座10eに離着座可能であってディスク側の内周部がディスク側弁座11eに離着座可能なリーフバルブ12と、センターロッド15の外周に嵌合されてディスク11の反バルブケース側に配置されるキャップ(ばね受)13と、ディスク11とキャップ(ばね受)13との間に介装されてディスク11とリーフバルブ12とをバルブケース10へ向けて付勢するばね14と、環状であってセンターロッド15の外周に軸方向へ移動可能に嵌合されてディスク11に積層されるとともに隙間Gに連通されるオリフィス16aを有するオリフィスプレート16とを備えている。
【0071】
このように構成された減衰バルブVでは、液体がオリフィス16aを通過する際、液体はオリフィス16aへ到達するまでに狭いスペースを通過しないので、液体の流れが安定し、リーフバルブ12の閉弁時にはオリフィス16aのみにより減衰力を発生できる。以上より、本実施の形態の減衰バルブVによれば、減衰力特性が製品毎にばらつくことがなく、均一な減衰力の発生が可能である。また、減衰バルブVは、リーフバルブ12の内周側にオリフィスを設けるような構造を採用しなくて済むので、リーフバルブ12の破損を招くこともない。
【0072】
さらに、オリフィス16aを環状のオリフィスプレート16に設けているので、ケース側弁座10eに打刻によってオリフィスを形成する場合と比較して、異なる流路面積を持つオリフィス16aを備えたオリフィスプレート16を用意しておくことによってオリフィスプレート16の交換によってオリフィス16aにおける特性のチューニングが容易に行えるほか、打ち抜き加工によって製造できるのでオリフィス16aの流路面積を高精度で設計通りにし得るとともに、リーフバルブ12による攻撃設けないのでオリフィス16aの劣化の心配もない。
【0073】
また、本実施の形態の減衰バルブVでは、キャップ(ばね受)13は、ばね14の一端を支承する頂部13aと、頂部13aから放射状に垂下されて先端がバルブケース10に嵌合するとともにディスク11およびリーフバルブ12の外周と径方向で対向する複数の脚部13bとを備え、脚部13bによってディスク11およびリーフバルブ12をバルブケース10に対して調心する。このように構成された減衰バルブVによれば、ディスク11とセンターロッド15との間に環状の隙間Gを設けても、ディスク11とリーフバルブ12とがキャップ(ばね受)13によって調心されるので、リーフバルブ12とディスク11とがバルブケース10に対して遠近する動作を繰り返しても、動作する度に減衰力が変化することが無く狙い通りの減衰力を発生できる。
【0074】
なお、図5に示した第1変形例の減衰バルブV1のように、ディスク11をセンターロッド15によって調心するとともに、バルブケース10のケース本体10aの外周の環状凹部10cの複数個所から立ち上がって脚部13b間に突出してリーフバルブ12の外周に径方向で対向する複数のガイド10gを設けて、当該ガイド10gによってリーフバルブ12を調心してもよい。
【0075】
具体的には、図5に示すように、ディスク11の内径をセンターロッド15の大径部15cの外周に摺接可能な径に設定し、ディスク11の内周であってオリフィスプレート16が積層される端面側に環状の凹部11fを設けるとともに、ディスク11の内周であって反オリフィスプレート側端から開口して凹部11fに連通される複数の溝11gを設けている。よって、ディスク11は、内周にセンターロッド15が挿入されると大径部15cの外周を軸方向に沿って移動できる一方で、凹部11fと溝11gとでディスク11の内周とセンターロッド15との間に隙間G1を形成できる。また、ディスク11は、内周のオリフィスプレート側に凹部11fを備えているので、オリフィスプレート16がディスク11に対して周方向に回転しても、オリフィス16aが常に凹部11fに対向するので、オリフィス16aは常に隙間G1に連通される。そして、センターロッド15の外周にディスク11が摺動可能に嵌合されるので、センターロッド15によってディスク11が調心される。
【0076】
ガイド10gは、ケース本体10aの上端の外周部に形成された環状凹部10cから図3中上方へ向けて突出しており、環状凹部10cの周方向で等間隔に6つ設けられている。各ガイド10gは、軸方向から見て円弧状となっており、断面円弧状の内周面をリーフバルブ12の外周面に対向させている。各ガイド10gの内周面に接する内接円の直径は、ディスク11より大きく、リーフバルブ12の各外径よりも僅かに大きい。また、ディスク11およびリーフバルブ12が最大限にバルブケース10から離間してもガイド10gの内周面がリーフバルブ12の外周に対向し得るようにガイド10gの高さが設定されている。よって、バルブケース10に対してリーフバルブ12が遠近してもガイド10gの内周面がリーフバルブ12の外周面に径方向で対向するので、各ガイド10gの内側に挿入されるリーフバルブ12を調心し得る。このようにガイド10gをばね受としてのキャップ13以外にもバルブケース10に設けることもできる。
【0077】
このように本実施の形態の第1変形例の減衰バルブV1は、ディスク11がセンターロッド15によって調心され、バルブケース10がリーフバルブ12の外周に径方向で対向してリーフバルブ12を調心する複数のガイド10gを備えている。このように構成された減衰バルブV1によれば、ディスク11とセンターロッド15との間に環状の隙間G1を設けても、ディスク11とリーフバルブ12とが調心されるので、リーフバルブ12とディスク11とがバルブケース10に対して遠近する動作を繰り返しても、動作する度に減衰力が変化することが無く狙い通りの減衰力を発生できる。
【0078】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターシェル)1と、シリンダ(アウターシェル)1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、シリンダ(アウターシェル)1に対するピストンロッド2の移動によって液体が行き来する少なくとも伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体Aと、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブVを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、ばらつきの無い均一な減衰力を発生でき、車両における乗心地を向上できる。
【0079】
なお、前述したところでは、減衰バルブV,V1は、緩衝器Dの圧側室R2とリザーバRとの間に設けられてベースバルブとして機能しているが、ピストンロッド2に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与えるピストンバルブとして利用されてもよい。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・アウターシェル、2・・・ピストンロッド、10・・・バルブケース、10d・・・ケース側ポート、10e・・・ケース側弁座、10g・・・ガイド、11・・・ディスク、11d・・・ディスク側ポート、11e・・・ディスク側弁座、12・・・リーフバルブ、13・・・キャップ(ばね受)、13a・・・頂部、13b・・・脚部(ガイド)、14・・・ばね、15・・・センターロッド、16・・・オリフィスプレート、16a・・・オリフィス、A・・・緩衝器本体、D・・・緩衝器、G,G1・・・隙間、R・・・リザーバ(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)、V,V1・・・減衰バルブ
図1
図2
図3
図4
図5