(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164358
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
F16F9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079773
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069EE10
3J069EE31
(57)【要約】
【課題】ばらつきの無い均一な減衰力を発生可能な減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明における減衰バルブVは、ケース側弁座10eを有するバルブケース10と、バルブケース10に対して遠近可能であるとともにディスク側弁座11eとを有するディスク11と、環状であって外周部がケース側弁座10eに離着座可能であって内周部がディスク側弁座11eに離着座可能なリーフバルブ12と、頂部13aと脚部13bとを有してディスク11とリーフバルブ12とを収容するキャップ13と、ディスク11とリーフバルブ12とをバルブケース10へ向けて付勢するばね14とを備え、バルブケース10は、リーフバルブ側へ向けて起立するとともに各脚部13bの内側に接する内接円以内にリーフバルブ12をケース側弁座10eに対して調心するガイド面10d1を持つガイド10dとを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース側ポートを有するとともに、前記ケース側ポートの開口を取り囲む環状のケース側弁座を一端に有するバルブケースと、
前記バルブケースの一端に対向して前記バルブケースの一端に対して遠近可能であるとともに、ディスク側ポートと、環状であって外径が前記ケース側弁座よりも小径であってバルブケース側端の前記ディスク側ポートの開口よりも内周側に設けられたディスク側弁座とを有するディスクと、
環状であって弾性を有して前記バルブケースと前記ディスクとの間に設けられてバルブケース側の外周部が前記ケース側弁座に離着座可能であってディスク側の内周部が前記ディスク側弁座に離着座可能なリーフバルブと、
頂部と、頂部から放射状に垂下される複数の脚部とを有して、前記脚部が前記バルブケースに嵌合されるとともに、前記ディスクと前記リーフバルブとを収容するキャップと、
前記キャップにおける前記頂部と前記ディスクとの間に介装されて前記ディスクと前記リーフバルブとを前記バルブケースへ向けて付勢するばねとを備え、
前記バルブケースは、前記一端からリーフバルブ側へ向けて起立するとともに、前記各脚部の内側に接する内接円以内に前記リーフバルブを前記ケース側弁座に対して調心するガイド面を持つガイドを有する
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記ガイドは、前記ディスクを前記リーフバルブとともに前記ケース側弁座に対して調心する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記ガイドが前記バルブケースに対して周方向に間隔を空けて複数設けられており、前記キャップの前記脚部間に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記バルブケースは、前記ケース側弁座の前記ガイドと前記脚部と径方向で対向しない位置に設けた凹部で形成されるオリフィスを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも2つの作動室を有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられる請求項1から4のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体と車輪との間に介装される緩衝器に利用される減衰バルブは、たとえば、ケース側ポートとケース側ポートの開口を取り囲む環状のケース側弁座を有するバルブケースと、バルブケースに対して遠近可能であるとともにディスク側ポートとディスク側ポートの内周側に設けられた環状のディスク側弁座とを有するディスクと、環状であってバルブケースとディスクとの間に介装されてケース側弁座とディスク側弁座とに離着座するリーフバルブと、有底筒状であって開口端がバルブケースの外周に嵌合されて内部にディスクとリーフバルブとを収容するキャップと、キャップとディスクとの間に介装されてディスクとともにリーフバルブをバルブケースヘ向けて付勢するコイルばねとを備えるものがある(たとえば、特許文献1参照)。減衰バルブにおけるリーフバルブは、バルブケース側の外周部をケース側弁座に着座させ、ディスク側の内周部をケース側弁座よりも小径のディスク側弁座に着座させている。
【0003】
このように構成された減衰バルブは、たとえば、複筒型の緩衝器の圧側室とリザーバとの間に、ケース側ポートをリザーバに連通させるとともにディスク側ポートを圧側室に連通させて設置される。このように緩衝器に設置された減衰バルブでは、圧側室からリザーバへ向かう作動油の流れに対しては、ケース側弁座を支点としてリーフバルブの内周が撓んでディスク側弁座から離座して、ディスク側ポートを開放する。よって、圧側室内の作動油は、ディスク側ポートを抜け、ディスク側弁座とリーフバルブの内周部との間を通過し、さらにケース側ポートを通過してリザーバへ移動する。よって、減衰バルブでは、緩衝器の収縮作動時に、圧側室からリザーバへ向かう作動油の流れに対してリーフバルブによって抵抗を与えて、緩衝器の収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0004】
他方、リザーバから圧側室へ作動油が流れる場合、ばねが縮んでリーフバルブがディスク側弁座に着座したままディスクとともにバルブケースから離間するので、作動油がリーフバルブとバルブケースとの間を通過してキャップの筒部に設けた切欠を介してキャップ外へ移動する。そして、従来の減衰バルブは、ばねの付勢力が小さくリザーバから圧側室へ作動油が移動する場合には作動油の流れに殆ど抵抗を与えないので、チェックバルブとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように従来の減衰バルブでは、作動油の流れる方向に応じて抵抗を与えるバルブとしてもチェックバルブとしても機能するために、バルブケースに対してリーフバルブ全体が遠近できるようになっているが、バルブケースに対するリーフバルブの径方向への移動が何ら制限されていない。
【0007】
よって、バルブケースに対してリーフバルブが離間してから当接する際に、バルブケースに対してリーフバルブが径方向でいつも同じ位置に配置されるとは限られない。バルブケースは、リーフバルブの撓みの支点となるケース側弁座を備えており、リーフバルブがバルブケースに対する径方向の位置が作動するたびに区々になるとリーフバルブの撓みの支点が変化してリーフバルブが作動油の流れに与える抵抗が都度変化してしまう。
【0008】
以上のように、従来の減衰バルブでは、作動のたびに発生する減衰力がばらついてしまうという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、ばらつきの無い均一な減衰力の発生が可能な減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を解決するために、本発明の減衰バルブは、ケース側ポートを有するとともに、ケース側ポートの開口を取り囲む環状のケース側弁座を一端に有するバルブケースと、バルブケースの一端に対向してバルブケースの一端に対して遠近可能であるとともに、ディスク側ポートと、環状であって外径がケース側弁座よりも小径であってバルブケース側端のディスク側ポートの開口よりも内周側に設けられたディスク側弁座とを有するディスクと、環状であって弾性を有してバルブケースとディスクとの間に設けられてバルブケース側の外周部がケース側弁座に離着座可能であってディスク側の内周部がディスク側弁座に離着座可能なリーフバルブと、頂部と頂部から放射状に垂下される複数の脚部とを有して脚部がバルブケースに嵌合されるとともに、ディスクとリーフバルブとを収容するキャップと、キャップにおける頂部とディスクとの間に介装されてディスクとリーフバルブとをバルブケースへ向けて付勢するばねとを備え、バルブケースは、一端からリーフバルブ側へ向けて起立するとともに、各脚部の内側に接する内接円以内にリーフバルブをケース側弁座に対して調心するガイド面を持つガイドを備えている。
【0011】
このように構成された減衰バルブによれば、バルブケースにガイドが設けられているので、リーフバルブがバルブケースのケース側弁座に対して離間と着座とを繰り返してもリーフバルブがガイドによって調心されてリーフバルブに対するケース側弁座の支持位置が変化しない。
【0012】
また、減衰バルブにおけるガイドは、ディスクをリーフバルブともにケース側弁座に対して調心してもよい。このように構成された減衰バルブによれば、リーフバルブとディスクとがバルブケースにおけるケース側弁座に対して調心されるので、リーフバルブがディスクのディスク側弁座に着座する位置が一定するので、リーフバルブがディスク側ポートから受ける圧力で開弁する際の開弁圧もばらつきが抑制されて、より一層均一な減衰力の発生が可能となる。
【0013】
また、減衰バルブにおけるガイドがバルブケースに対して周方向に間隔を空けて複数設けられており、キャップの脚部間に配置されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、ガイドをキャップの脚部間に配置しているので、ガイド内に収容されるリーフバルブの外径を大径にしてもガイドをバルブケースに設置でき、開弁時の流路面積を大きく確保し易くなるとともに、ガイドの設置によってキャップの大径化を招かずに済む。
【0014】
さらに、減衰バルブにおけるバルブケースは、ケース側弁座のガイドと脚部と径方向で対向しない位置に設けた凹部で形成されるオリフィスを有してもよい。このように構成された減衰バルブによれば、ガイドによるリーフバルブの調心をしつつも意図しない圧力損失を生じさせずに狙い通りの減衰力特性を発生できる。
【0015】
さらに、緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも2つの作動室を有する緩衝器本体と、作動室間に設けられる減衰バルブとを備えている。このように構成された緩衝器では、ばらつきの無い均一な減衰力を発生できるので、車両における乗心地を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
よって、本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、ばらつきの無い均一な減衰力を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態における減衰バルブを備えた緩衝器の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における減衰バルブの拡大縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における減衰バルブのバルブケースの平面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態における減衰バルブのキャップの底面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の第1変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態の第2変形例における減衰バルブのバルブケースとキャップの拡大横断面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態の第3変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施の形態の第3変形例における減衰バルブのバルブケースの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、アウターシェル1と、アウターシェル1内に移動可能に挿入されるピストンロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる二つの作動室としての圧側室R2とリザーバRとの間に設けられた減衰バルブVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0019】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、緩衝器本体Aは、有底筒状のアウターシェル1と、アウターシェル1内に挿入されるシリンダ3と、シリンダ3内に移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ3内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ3内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン4と、アウターシェル1とシリンダ3との間に形成されたリザーバRとシリンダ3内の圧側室R2との間に設置される減衰バルブVとを備えている。
【0020】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。アウターシェル1は、有底筒状であって、内部にシリンダ3を収容しており、シリンダ3の外周を覆って、シリンダ3との間の環状隙間でリザーバRを形成している。
【0021】
シリンダ3は、筒状であって内部には、前述したようにピストン4が移動自在に挿入されており、ピストン4の
図1中上方に伸側室R1が、
図1中下方には圧側室R2がそれぞれ区画されている。伸側室R1と圧側室R2内には、液体として、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。リザーバR内には、シリンダ3内に充填される液体と同じ液体の他に気体が充填されている。なお、液体を作動油とする場合、リザーバR内に充填される液体は、作動油の劣化を防止するため気体を窒素等といった不活性ガスとされるとよい。
【0022】
そして、シリンダ3の
図1中下端には、減衰バルブVが取り付けられており、減衰バルブVによって、シリンダ3内の圧側室R2とシリンダ3外のリザーバRとが仕切られている。
【0023】
また、シリンダ3の
図1中上端には、ピストンロッド2を摺動自在に軸支するロッドガイド5が嵌合されている。このロッドガイド5は、アウターシェル1の内周に嵌合され、アウターシェル1の上端を加締めることで、ロッドガイド5の
図1中上方に積層されてアウターシェル1、シリンダ3およびピストンロッド2のそれぞれの間をシールするシール部材6とともにアウターシェル1に固定される。このようにロッドガイド5をアウターシェル1に固定するとシリンダ3は、アウターシェル1の底部に載置された減衰バルブVにおけるバルブケース10とロッドガイド5とで挟持され、シリンダ3も減衰バルブVとともにアウターシェル1内で固定される。なお、アウターシェル1の上端開口端を加締める代わりに、上端開口部にキャップを螺着して、このキャップとアウターシェル1の底部とで、前記シール部材6、ロッドガイド5、シリンダ3およびバルブケース10を挟持して、これら部材をアウターシェル1内で固定してもよい。
【0024】
ピストンロッド2は、円柱状であって先端側の外径が縮径されており、先端側の最小径の小径部2aと、小径部2aより外径が大きく小径部2aの
図2中上側に設けられた大径部2bと、小径部2aと大径部2bとの境に設けられた段部2c、小径部2aの先端外周に設けられた図示しない螺子部とを備えている。
【0025】
そして、ピストンロッド2の
図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ピストンロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の一方に連結される。また、アウターシェル1の底部にもブラケット(図示せず)が設けられており、アウターシェル1が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の他方に連結される。
【0026】
このようにして緩衝器Dは車体と車輪との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ピストンロッド2がアウターシェル1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン4がシリンダ3内を上下(軸方向)に移動する。
【0027】
ピストン4は、環状であって
図1に示すように、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート4aと、圧側室R2と伸側室R1とを連通する圧側ポート4bを備えている。ピストン4の
図1中上方には環状の圧側チェックバルブ8が重ねられ、ピストン4の
図1中下方には環状の伸側リーフバルブ7が重ねられている。そして、圧側チェックバルブ8、ピストン4および伸側リーフバルブ7は、ピストンロッド2の小径部2aの外周に順番に嵌合され、ピストンロッド2の先端の図外の螺子部に螺子結合されるピストンナット9と段部2cとで挟持されてピストンロッド2に固定される。
【0028】
伸側リーフバルブ7は、環状板を複数枚積層して構成されてピストン4の
図1中下側である圧側室側に重ねられており、伸側ポート4aの出口端を開閉する。伸側リーフバルブ7は、内周がピストンロッド2に固定されて外周側の撓みが許容されており、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力より高くなり両者の差圧が開弁圧に達すると、伸側ポート4aを介して作用する伸側室R1の圧力を受けて撓んで開弁し、伸側ポート4aを開放して伸側室R1と圧側室R2とを連通させる。伸側リーフバルブ7は、伸側ポート4aを通過する液体の流れに抵抗を与えて伸側室R1の圧力を上昇させる。反対に、伸側リーフバルブ7は、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力より高いと背面側から作用する圧側室R2の圧力によってピストン4に押しつけられて伸側ポート4aを閉塞して圧側室R2と伸側室R1との連通を遮断する。
【0029】
他方、圧側チェックバルブ8は、ピストン4に対して軸方向で遠近可能な環状板と環状板をピストン4に向けて付勢するばねとで構成されてピストン4の
図1中上側である伸側室側に重ねられており、圧側ポート4bの出口端を開閉する。圧側チェックバルブ8は、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力より高くなり、圧側ポート4bを介して作用する圧側室R2の圧力を受けてピストン4から離間して開弁すると圧側ポート4bを開放して圧側室R2と伸側室R1とを連通させる。なお、圧側チェックバルブ8は、開弁すると然程抵抗を与えずに液体が圧側ポート4bを通過するのを許容する。反対に、圧側チェックバルブ8は、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力より高いと背面側から作用する伸側室R1の圧力によってピストン4に押しつけられて圧側ポート4bを閉塞して圧側室R2と伸側室R1との連通を遮断する。
【0030】
つづいて、減衰バルブVは、
図1および
図2に示すように、バルブケース10と、バルブケース10に対して遠近可能なディスク11と、環状であってバルブケース10とディスク11との間に介装されるリーフバルブ12と、バルブケース10の外周に嵌合されて内部にディスク11とリーフバルブ12とを収容するキャップ13と、ディスク11とキャップ13との間に介装されてディスク11とともにリーフバルブ12をバルブケース10ヘ向けて付勢するばね14とを備えている。
【0031】
バルブケース10は、
図2および
図3に示したように、環状のケース本体10aと、環状であってケース本体10aの下端に連なり外径がケース本体10aよりも大径な大径部10bと、環状であってケース本体10aの
図2中上端から上方へ向けて突出するとともにケース本体10aよりも外径が小径な小径部10cと、ケース本体10aの小径部10cより外周の上端から上方となるリーフバルブ側へ向けて起立するとともに周方向で等間隔に設けられた6つのガイド10dと、ケース本体10aの内周側で形成されたケース側ポート10gと、小径部10cの
図2中上端から上方へ向けて突出してケース側ポート10gの外周を取り囲む環状のケース側弁座10eとを備えている。
【0032】
大径部10bは、ケース本体10aの内径よりも大径であってケース本体10aの外径よりも小径な内径と、ケース本体10aの外径よりも大きな外径を備えるとともに、周方向で間隔を空けて下端から開口する複数の切欠10fを備えている。
【0033】
そして、バルブケース10は、大径部10bがアウターシェル1の底部1aとシリンダ3の
図2中下端とで挟持されることにより、アウターシェル1およびシリンダ3に対して不動に固定されている。このようにアウターシェル1およびシリンダ3に固定されたバルブケース10の内周側の空間は、切欠10fを介してアウターシェル1とシリンダ3との間に形成されたリザーバRに連通されている。このようにバルブケース10は、環状に形成されることによって内周側の空間をケース側ポート10gとしている。
【0034】
また、小径部10cは、ケース本体10aの上端から上方へ向けて突出しており、ケース本体10aの内径と同じ内径を持つがケース本体10aの外径より小さな外径を備えている。よって、ケース本体10aの上端の外周であって小径部10cの外周に段部10hが形成されている。
【0035】
ガイド10dは、本実施の形態の減衰バルブVでは、
図3に示すように、ケース本体10aの上端の外周部に形成された段部10hから上方へ向けて突出しており、段部10hの周方向で等間隔に6つ設けられている。各ガイド10dは、小径部10cの外周部に連なる突起で形成されており、軸方向から見て円弧状となっており、断面円弧状の内周面でガイド面10d1を形成している。全てのガイド10dのガイド面10d1に接する内接円C1は、小径部10cと同心円となっており、小径部10cの外径よりも小さな直径を有している。なお、ガイド10dは、リーフバルブ12をケース側弁座10eに対して調心する目的で設けられており、ガイド10dの設置数はリーフバルブ12の調心を行える限りにおいて任意に変更可能である。よって、たとえば、バルブケース10を軸方向から見てガイド10dが半円以上の円形であれば、1つのガイド10dによってリーフバルブ12を調心できる。また、ガイド10dを円弧状とする場合であってガイド10dの周方向幅を十分広くする場合には、2つのガイド10dの設置によって調心でき、また、ガイド10dの周方向幅を狭く設定する場合には、3つ以上のガイド10dを全てが半円の範囲内に収まることの無いように配置して設けれればよい。
【0036】
また、ケース側弁座10eは、小径部10cの
図2中上端から上方へ向けて突出した小径部10cの周方向に沿う環状の突起で形成されており、小径部10cに対して前記内接円C1と同心に設置されている。なお、小径部10cの外周にガイド10dが連なっており、バルブケース10を焼結によって製造する関係で、製造のし易さの理由から、ガイド10dとケース側弁座10eとの径方向で対向する間の部分についてはケース側弁座10eの上端面がガイド10dのガイド面10d1まで面一に延長されているが、ケース側弁座10eとガイド10dとが互いに接触しないように設けられもよい。また、ケース側弁座10eには、凹部で形成したオリフィス10e1が設けられている。
【0037】
ディスク11は、バルブケース10の上方であってバルブケース10より圧側室R2側に配置されており、バルブケース10の一端となる
図2中上端に対向してバルブケース10の一端に対して遠近可能となっている。詳しくは、ディスク11は、円盤状であって外径がガイド10dの前記内接円C1よりも小径であってケース側弁座10eの
図2中上端面の外径よりも大径なディスク本体11aと、ディスク本体11aのバルブケース側端となる
図2中下端からバルブケース側へ立ち上がるとともに外径がケース本体10aの内径よりも小径な円盤状の凸部11bと、ディスク本体11aの凸部11bよりも外周側のバルブケース側端に設けられた環状の凹部で形成された環状窓11cと、ディスク本体11aの反バルブケース側端から開口して環状窓11cに連通される複数のディスク側ポート11dとを備えている。なお、ディスク11の外径は、バルブケース10に対して遠近してもガイド10dに接触することがない場合、前述したところによらず、キャップ13の脚部13b内に収容可能な径であればよい。
【0038】
凸部11bは、バルブケース側を向く
図2中下端の外周部で環状のディスク側弁座11eを形成している。ディスク側弁座11eは、ケース側弁座10eの内径よりも小さな外径を持ち、凸部11bの外周部で形成されているので、ディスク本体11aのディスク側ポート11dの開口となる環状窓11cよりも内周側に設けられている。ディスク側弁座11eは、本実施の形態では凸部11bの外周部とされているが、凸部11bからバルブケース側へ突出する環状突起により形成されてもよい。
【0039】
各ディスク側ポート11dは、ディスク本体11aの
図2中上端であって軸方向から見て凸部11bよりも外周側から開口して環状窓11cに通じている。また、ディスク側ポート11dは、ディスク本体11aに対して同一円周上に互いに間隔を空けて設けれており、シリンダ3内の圧側室R2に連通されている。
【0040】
リーフバルブ12は、本実施の形態では、弾性を備えた3枚の環状板を積層して構成されている。リーフバルブ12を構成する環状板の枚数は所望する減衰力の大きさに応じて任意に変更可能である。また、リーフバルブ12の内径は、ディスク側弁座11eに離着座可能であればよく、リーフバルブ12の外径は、ケース側弁座10eの
図2中上端の外径より大きく、ガイド10dにおけるガイド面10d1の内接円C1より僅かに小さくなっている。
【0041】
このように構成されたリーフバルブ12は、バルブケース10とディスク11との間に配置されると、バルブケース側端となる
図2中下端の外周をバルブケース10のケース側弁座10eに着座させるとともに、ディスク側端となる
図2中上端の内周をディスク11のディスク側弁座11eに着座させる。
【0042】
また、リーフバルブ12は、バルブケース10のケース側弁座10eに着座した状態では、外周をガイド10dのガイド面10d1に対して少しの隙間を介して対向させる。ガイド10dにおけるガイド面10d1の上下方向の長さは、リーフバルブ12の軸方向長さよりも長く、ガイド面10d1の上端はケース側弁座10eの上端に着座したリーフバルブ12の上端面よりもディスク側へ突出している。よって、バルブケース10のケース側弁座10eに着座したリーフバルブ12の外周は、各ガイド10dで囲まれる空間内に完全に収容され、リーフバルブ12が各ガイド10dにおけるガイド面10d1に倣ってバルブケース10のケース側弁座10eに対して調心される。
【0043】
リーフバルブ12は、ディスク側弁座11eに着座する状態ではディスク11のディスク側ポート11dから圧側室R2の圧力を受けて押し下げられると、内周側を
図2中で下方となるバルブケース側に撓ませて、ディスク側弁座11eから離座してディスク側ポート11dを開放できる。
【0044】
また、リーフバルブ12は、ディスク側弁座11eに着座する状態では、バルブケース10のケース側ポート10gからリザーバRの圧力を受けて押し上げられると、ディスク11がバルブケース10に対して遠近できるので、ディスク11とともにバルブケース10に対して
図2中上方へ移動してケース側弁座10eから離座して、ケース側ポート10gを開放できる。
【0045】
キャップ13は、
図2および
図4に示すように、環状の頂部13aと、頂部13aから放射状に垂下される6つの脚部13bとを備えている。脚部13bは、符示はしないが頂部13aに連続する水平部と水平部からバルブケース側へ向けて垂下される垂直部とを備えており、頂部13aに対して軸方向から見てバルブケース10の各ガイド10d,10d間に対応するように設けられている。また、脚部13bの垂直部は、円弧状の断面を備えている。このように、キャップ13は、有頂筒状の筒体から下端から頂部にかけて6箇所を切り欠いてできる形状に近似した形状となっている。なお、頂部13aは、環状となっているが円盤状となっていてもよい。
【0046】
そして、このように構成されたキャップ13は、脚部13bの垂直部における下端がバルブケース10のケース本体10aの外周の段部10hに当接させるまで、脚部13bの垂直部の下端部の内周側を小径部10cの外周に嵌合されることによって、バルブケース10に取り付けられる。
【0047】
また、このようにバルブケース10に取り付けられたキャップ13の内方、つまり、頂部13aと各脚部13bで囲まれる空間内には、リーフバルブ12とディスク11とがバルブケース10に対して軸方向に遠近可能に収容されている。
【0048】
各脚部13bの内側である内周面に接する内接円C2の直径は、ガイド面10d1の内接円C1よりも大径となっており、キャップ13内に収容されるリーフバルブ12がガイド10dによってバルブケース10に調心されるのを邪魔しないように配慮されている。なお、各脚部13bの内側に接する内接円C2以内にガイド10dのガイド面10d1が配置されていれば、ガイド10dによってリーフバルブ12をバルブケース10に対して調心できるので、各脚部13bの内接円C2の直径とガイド面10d1の内接円C1とが同心円であれば、互いに直径が同じであってもよい。
【0049】
また、キャップ13とディスク11との間には、ディスク11とリーフバルブ12とをバルブケース10へ向けて付勢するばね14が介装されている。ばね14は、円錐コイルばねとされており、大径側の端部がキャップ13の脚部13bの水平部と垂直部との折れ曲がり部分に嵌合しており、小径側の端部がディスク11の反バルブケース側端に当接して、ディスク11とキャップ13との間に圧縮状態で介装されている。
【0050】
ばね14は、常時、ディスク11をリーフバルブ12とともにバルブケース側へ向けて接近させる方向に付勢しており、無負荷状態ではリーフバルブ12をケース側弁座10eとディスク側弁座11eとの双方に着座させる。また、ばね14が円錐コイルばねとされているので、ばね14が最収縮する際の軸方向の全長が短くなるので、ディスク11およびリーフバルブ12のバルブケース10に対する軸方向へのストローク量を確保しつつも減衰バルブVにおける高さを低くでき、緩衝器Dのストローク長を確保し易くなる。
【0051】
つづいて、このように構成された減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。まず、ピストン4がシリンダ3に対して
図1中上方側へ移動する緩衝器Dの伸長作動時における減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。ピストン4がシリンダ3に対して
図1中上方へ移動すると、ピストン4の移動に伴って伸側室R1が縮小されるとともに圧側室R2が拡大される。縮小される伸側室R1内の液体は、伸側ポート4aを通過して伸側リーフバルブ7を撓ませて圧側室R2へ移動する。伸側リーフバルブ7は、伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流れに対して抵抗を与えるので、伸側室R1内の圧力が上昇する。
【0052】
緩衝器Dの伸長作動に伴ってシリンダ3内からピストンロッド2が退出するので、シリンダ3内でピストンロッド2が押し退ける容積が減少するためシリンダ3内でピストンロッド2のシリンダ3内から退出する体積分の液体が不足する。すると、減衰バルブVにおけるリーフバルブ12は、バルブケース10のケース側ポート10gからリザーバRの圧力を受けて
図2中上方へ押圧され、ばね14を押し縮めてディスク11とともにバルブケース10に対して上方へ移動してケース側弁座10eから離座し、ケース側ポート10gをキャップ13における脚部13bと脚部13bとの間を介して圧側室R2へ連通する。よって、シリンダ3内で不足する液体は、リーフバルブ12とケース側弁座10eとの間を通過してリザーバRから圧側室R2へ供給される。このように、緩衝器Dの伸長作動時には、リーフバルブ12とともにディスク11がバルブケース10から離間してケース側ポート10gを開放してリザーバRと圧側室R2とが連通されるので、シリンダ3内で不足する液体がリザーバRから供給される。また、減衰バルブVは、リーフバルブ12およびディスク11がバルブケース10から離間してリーフバルブ12とケース側弁座10eとの間の隙間を大きくして当該隙間を通過する液体の流れに然程の抵抗を与えない。
【0053】
よって、緩衝器Dの伸長作動時には、圧側室R2の圧力はリザーバRの圧力と略等しくなる一方で、伸側リーフバルブ7によって伸側室R1の圧力が高くなって圧側室R2の圧力とに差が生じて、ピストン4には
図1中下方へ押し下げる方向の力が作用し、緩衝器Dは伸長作動を妨げる減衰力を発生する。
【0054】
つづいて、ピストン4がシリンダ3に対して
図1中下方側へ移動する緩衝器Dの収縮作動時における減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。ピストン4がシリンダ3に対して
図1中下方へ移動すると、ピストン4の移動に伴って圧側室R2が縮小されるとともに伸側室R1が拡大される。縮小される圧側室R2内の液体は、圧側ポート4bを通過して圧側チェックバルブ8を撓ませて伸側室R1へ移動する。圧側チェックバルブ8は、圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに対して然程抵抗を与えないので、伸側室R1と圧側室R2の圧力は略等しくなる。
【0055】
緩衝器Dの収縮作動に伴ってシリンダ3内にピストンロッド2が侵入するので、シリンダ3内でピストンロッド2が押し退ける容積が増大するためシリンダ3内でピストンロッド2のシリンダ3内へ侵入する体積分の液体が過剰となる。緩衝器Dの収縮速度が低く、ディスク11のディスク側ポート11dを介してリーフバルブ12の
図2中上面に作用する圧側室R2の圧力とリーフバルブ12の
図2中下面に作用するリザーバRの圧力との差が開弁圧に達しない状態では、リーフバルブ12がディスク側弁座11eに着座したままとなり、圧側室R2内の液体は、キャップ13の脚部13b,13b間を通ってオリフィス10e1を通過した後、ケース側ポート10gを通ってリザーバRへ移動する。よって、シリンダ3内で過剰となる液体は、オリフィス10e1を通過して圧側室R2からリザーバRへ排出される。このように、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が低い場合には、オリフィス10e1が圧側室R2からリザーバRへ移動する液体の流れに抵抗与えるので、圧側室R2と伸側室R1の圧力が略等しく上昇する。ピストン4がピストンロッド2に連結されていて、ピストン4における圧側室R2の圧力を受ける受圧面積の方が伸側室R1の圧力を受ける受圧面積がピストンロッド2の断面積分だけ大きいので、ピストン4を
図1中上方へ押し上げる力が作用し、緩衝器Dは、収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0056】
また、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が高くなると、リーフバルブ12の
図2中上面に作用する圧側室R2の圧力と
図2中下面に作用するリザーバRの圧力との差が開弁圧に達して、リーフバルブ12は、ケース側弁座10eおよびディスク側弁座11eに着座する状態から圧側室R2の圧力で押圧されて、内周側を
図2中で下方となるバルブケース側に撓ませてディスク側弁座11eから離座してディスク側ポート11dをケース側ポート10gに連通させて圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れを許容しつつ当該液体の流れに対して抵抗を与える。
【0057】
このように、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が高くなると、シリンダ3内で過剰となる液体は、リーフバルブ12とディスク側弁座11eとの間を通過して圧側室R2からリザーバRへ排出される。よって、緩衝器Dの収縮作動時であって収縮速度が高い場合には、リーフバルブ12が圧側室R2からリザーバRへ移動する液体の流れに抵抗与えるので、緩衝器Dは、リーフバルブ12によって収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0058】
緩衝器Dが伸長作動と収縮作動とを繰り返すと、その度に、リーフバルブ12がバルブケース10から
図2中上方へ離間する動作と、バルブケース10から離間してから接近してケース側弁座10eに着座する動作とを繰り返す。従来の減衰バルブでは、リーフバルブがキャップの脚部によって径方向に位置決めされるもののリーフバルブと脚部との間に隙間があって、隙間分だけバルブケースに対してリーフバルブが径方向でずれてしまい、リーフバルブに対するケース側弁座の支持位置が変化する。これに対して、本実施の形態の減衰バルブVでは、リーフバルブ12がバルブケース10に設けられたガイド10dによって調心されてリーフバルブ12がバルブケース10のケース側弁座10eに対して離間と着座とを繰り返してもリーフバルブ12に対するケース側弁座10eの支持位置が変化しない。
【0059】
以上、本実施の形態の減衰バルブVは、ケース側ポート10gを有するとともにケース側ポート10gの開口を取り囲む環状のケース側弁座10eを一端に有するバルブケース10と、バルブケース10の一端に対向してバルブケース10の一端に対して遠近可能であるとともに、ディスク側ポート11dと、環状であって外径がケース側弁座10eよりも小径であってバルブケース側端のディスク側ポート11dの環状窓(開口)10cよりも内周側に設けられたディスク側弁座11eとを有するディスク11と、環状であって弾性を有してバルブケース10とディスク11との間に設けられてバルブケース側の外周部がケース側弁座10eに離着座可能であってディスク側の内周部がディスク側弁座11eに離着座可能なリーフバルブ12と、頂部13aと、頂部13aから放射状に垂下される複数の脚部13bとを有して、脚部13bがバルブケース10に嵌合されるとともに、ディスク11とリーフバルブ12とを収容するキャップ13と、キャップ13における頂部13aとディスク11との間に介装されてディスク11とリーフバルブ12とをバルブケース10へ向けて付勢するばね14とを備え、バルブケース10は、一端からリーフバルブ側へ向けて起立するとともに各脚部13bの内側に接する内接円C2以内にリーフバルブ12をケース側弁座10eに対して調心するガイド面10d1を持つガイド10dとを備えている。
【0060】
このように構成された減衰バルブVでは、バルブケース10にガイド10dが設けられているので、リーフバルブ12がバルブケース10のケース側弁座10eに対して離間と着座とを繰り返してもリーフバルブ12がガイド10dによって調心されてリーフバルブ12に対するケース側弁座10eの支持位置が変化しない。よって、本実施の形態の減衰バルブVによれば、減衰バルブVが作動を繰り返しても、ケース側弁座10eがリーフバルブ12の同じ部位を変わらず支持するので、リーフバルブ12の内周側の撓みの支点が一定して、ディスク側弁座11eから離座してディスク側ポート11dからケース側ポート10gへ向かって流れる液体の流れに与える抵抗が安定し、ばらつきの無い均一な減衰力の発生が可能である。
【0061】
また、本実施の形態の減衰バルブVでは、ガイド10dがバルブケース10に対して周方向に間隔を空けて複数設けられており、キャップ13の脚部13b,13b間に配置されている。このように構成された減衰バルブVでは、ガイド10dをキャップ13の脚部13b,13b間に配置しているので、ガイド10d内に収容されるリーフバルブ12の外径を大径にしてもガイド10dをバルブケース10に設置でき、開弁時の流路面積を大きく確保し易くなるとともに、ガイド10dの設置によってキャップ13の大径化を招かずに済む。
【0062】
前述したところでは、バルブケース10に設けられたガイド10dは、リーフバルブ12の外周にガイド面10d1を対向させて、リーフバルブ12のみをバルブケース10におけるケース側弁座10eに調心しているが、
図5に示した第1変形例の減衰バルブV1のように、ガイド10dによって、リーフバルブ12だけではなくディスク11も調心してもよい。具体的には、第1変形例における減衰バルブV1では、減衰バルブVと比較してガイド10dの高さを高くして、ディスク11がバルブケース10から最も離間してもガイド10dのガイド面10d1がディスク11の外周と径方向で対向するようにして、リーフバルブ12とディスク11とがバルブケース10に対して遠近しても常にガイド10dの内側に配置されて、リーフバルブ12とディスク11とがガイド10dによりケース側弁座10eに対して調心される。
【0063】
このように構成された減衰バルブV1によれば、リーフバルブ12とディスク11とがバルブケース10におけるケース側弁座10eに対して調心されるので、リーフバルブ12がディスク11のディスク側弁座11eに着座する位置が一定するので、リーフバルブ12がディスク側ポート11dから受ける圧力で開弁する際の開弁圧もばらつきが抑制されて、より一層均一な減衰力の発生が可能となる。
【0064】
また、
図6に示した第2変形例の減衰バルブV2のように、バルブケース10におけるガイド10d,10d間にキャップ13の脚部13bを配置してキャップ13の脚部13bをバルブケース10に装着した際に、ガイド10dと脚部13bとでリーフバルブ12の外周を全周に亘って取り囲まないようにして、ケース側弁座10eのガイド10dと脚部13bとに径方向で対向しない位置に設けた凹部でオリフィス10e1を形成してもよい。減衰バルブVではキャップ13が6つの脚部13bを備えるのに対してガイド10dもバルブケース10に同数の6つ設けていたところ、
図6に示した減衰バルブV2では、脚部13bの配置と設置数を変えずにガイド10dの設置数を減らして3つにして、各ガイド10d,10d間にそれぞれ周方向で離間した2つの脚部13bが配置されるようにして、脚部13b,13b間にガイド10dが存在しない部分を設けている。そして、ケース側弁座10eの脚部13b,13b間であってガイド10dが存在しない部分に径方向で対向する部分にリーフバルブ12がケース側弁座10eに着座した際にオリフィス10e1と機能する凹部を形成している。このように構成された減衰バルブV2によれば、オリフィス10e1がケース側弁座10eの径方向でガイド10dと脚部13bとに対向していない部位に設けられるので、リーフバルブ12がケース側弁座10eおよびディスク側弁座11eの双方に着座している状態でオリフィス10e1を通過しようとする液体がガイド10dおよび脚部13bに邪魔されずにオリフィス10e1まで到達できる。リーフバルブ12の外周の全周がガイド10dと脚部13bとで取り囲まれている場合、圧側室R2からオリフィス10e1へ到達するまでに、リーフバルブ12の外周と、ガイド10dと脚部13bとで形成される環状の壁との間の狭い環状隙間を通過する必要があり、当該環状隙間を液体が通過する際に抵抗を受けてオリフィス10e1を通過するまでの間に圧力損失が生じるが、第2変形例の減衰バルブV2ではこのような抵抗が生じないので、リーフバルブ12の調心を可能としても意図しない圧力損失を生じさせずに狙い通りの減衰力特性を発生できる。なお、オリフィス10e1は、ケース側弁座10eのガイド10dおよび脚部13bに対して径方向で対向しない位置に設けられればよいので、ガイド10dの設置数を減らすことに代えて、ガイド10dと脚部13bとがバルブケース10の外周に交互に配置されても両者の間に周方向で隙間が設けられるようにそれぞれの周方向幅を設定してもよいし、ガイド10dの設置数より脚部13bの設置数を減らすことで両者の間に間隔を空けて隙間を設けるようにしてもよい。
【0065】
さらに、減衰バルブVではリーフバルブ12の外周に対向するガイド10dをバルブケース10に設けているが、
図7に示した第3変形例の減衰バルブV3のように、ガイド10dの代わりに、バルブケース10にリーフバルブ12の内周に径方向で対向するガイド面10j1を持つガイド10jを設けて、リーフバルブ12の内周面にガイド面10j1を対向させてリーフバルブ12をケース側弁座10eに対して調心してもよい。この場合、バルブケース10のケース本体10aの内周にガイド10jを設ける都合上、ケース本体10aの内周に
図8に示すように放射状に伸びる3つの桁部10iを設けて、各桁部10iにそれぞれ軸方向から見て円弧状のガイド10jを設けている。この場合、桁部10i,10i間の扇状の空隙をケース側ポート10gとしている。このようにガイド10jをリーフバルブ12の内周側に設けて、ガイド10jの外周面をガイド面10j1としてリーフバルブ12の内周に少しの隙間を空けて対向させても、リーフバルブ12がバルブケース10に対して何度も遠近してもガイド10jによってリーフバルブ12がケース側弁座10eに対して調心されて、リーフバルブ12のケース側弁座10eが支持する支持位置が一定する。よって、第3変形例における減衰バルブV3によれば、減衰バルブV3が作動を繰り返しても、ケース側弁座10eがリーフバルブ12の同じ部位を変わらず支持するので、リーフバルブ12の内周側の撓みの支点が一定して、ディスク側弁座11eから離座してディスク側ポート11dからケース側ポート10gへ向かって流れる液体の流れに与える抵抗が安定し、ばらつきの無い均一な減衰力の発生が可能である。
【0066】
ガイド10jをリーフバルブ12の内周側に配置する場合、ディスク11におけるディスク本体11aのバルブケース側端とからバルブケース側へ立ち上がるとともに外周部でディスク側弁座11eを形成する凸部11bを内径が各ガイド10jの外接円の直径よりも大径な環状として、ディスク11がバルブケース10に対して遠近してもガイド10jに干渉しないようにするとよい。このようにすると、ガイド10jが凸部11b内に挿入可能となるので、ガイド10jの高さを常にリーフバルブ12の内周面に対向可能にしてもディスク11のバルブケース10への接近を阻害することがない。また、桁部10iを設けてガイド10jを周方向で間欠的に設けているので、圧側室R2の圧力でリーフバルブ12の内周が撓んだ際にガイド10jが流路を狭めることが無く、リーフバルブ12を通過する液体がスムーズに桁部10i間のケース側ポート10gへ流れることができるが、桁部10i上に円環状にガイド10jを設けてもよい。なお、桁部10iの設置数は、ケース側ポート10gの流路面積を確保できる限りにおいて任意に変更できる。また、桁部10iは、ケース本体10aに対してリーフバルブ12の
図5中下面との間に十分な長さの間隔を空けて設けられており、リーフバルブ12の内周が圧側室R2の圧力を受けて撓んだ際にリーフバルブ12の撓みを規制しないようにしているが、リーフバルブ12が最大限に撓んだ際のリーフバルブ12の
図5下端内周に当接してリーフバルブ12のそれ以上の撓みを規制するバルブストッパとして機能してリーフバルブ12の応力を緩和してリーフバルブ12の疲労を軽減するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターシェル)1と、シリンダ(アウターシェル)1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、シリンダ(アウターシェル)1に対するピストンロッド2の移動によって液体が行き来する少なくとも伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体Aと、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブVを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、ばらつきの無い均一な減衰力の発生が可能な減衰バルブVを備えているので、ばらつきの無い均一な減衰力を発生でき、車両における乗心地を向上できる。
【0068】
なお、前述したところでは、減衰バルブV,V1,V2,V3は、緩衝器Dの圧側室R2とリザーバRとの間に設けられてベースバルブとして機能しているが、ピストンロッド2に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与えるピストンバルブとして利用されてもよい。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・アウターシェル、2・・・ピストンロッド、10・・・バルブケース、10d,10h,10j・・・ガイド、10d1,10h1,10j1・・・ガイド面、10e・・・ケース側弁座、10e1・・・オリフィス、10g・・・ケース側ポート、11・・・ディスク、11d・・・ディスク側ポート、11e・・・ディスク側弁座、12・・・リーフバルブ、13・・・キャップ、13a・・・頂部、13b・・・脚部、14・・・ばね、A・・・緩衝器本体、D・・・緩衝器、R・・・リザーバ(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)、V,V1,V2,V3・・・減衰バルブ