(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164364
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ブドウ房及び人工ブドウ穂軸
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20241120BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079783
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】521220600
【氏名又は名称】株式会社岡本ファーム
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100229389
【弁理士】
【氏名又は名称】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一郎
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LE03
4B016LG01
4B016LP13
(57)【要約】
【課題】ブドウ房から外れたブドウ粒を有効に利用し、見栄え等の視覚効果等を得ることができるブドウ房及び人工ブドウ穂軸を提供する。
【解決手段】人工的に作製される人工ブドウ穂軸にブドウ粒が係止され、ブドウ形状を形成しているブドウ房。人工ブドウ穂軸は可撓性を有する線材から作製され、線材はU字型に湾曲して一定の間隔をあけて並列するように形成される。人工ブドウ穂軸は複数の線材で構成され、線材に挿着される固定部材を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工的に作製される人工ブドウ穂軸にブドウ粒が係止され、ブドウ形状を形成していることを特徴とするブドウ房。
【請求項2】
前記人工ブドウ穂軸が可撓性を有する線材から作製されている請求項1に記載のブドウ房。
【請求項3】
前記線材が、U字型に湾曲して一定の間隔をあけて並列するように形成されている請求項2に記載のブドウ房。
【請求項4】
前記人工ブドウ穂軸が、複数の前記線材から作製されている請求項3に記載のブドウ房。
【請求項5】
前記人工ブドウ穂軸が、前記線材に挿着される固定部材を更に有する請求項2乃至4のいずれかに記載のブドウ房。
【請求項6】
前記線材が、前記固定部材の貫通孔に貫通され、
前記ブドウ粒が、前記固定部材の上面に隣接する前記線材の部分に係止されている請求項5に記載のブドウ房。
【請求項7】
前記ブドウ粒が、前記ブドウ粒に付着している支梗において、前記人工ブドウ穂軸に係止されている請求項1に記載のブドウ房。
【請求項8】
種類が異なるブドウ粒が係止されている請求項1乃至4のいずれかに記載のブドウ房。
【請求項9】
色が異なるブドウ粒が係止されている請求項8に記載のブドウ房。
【請求項10】
前記人工ブドウ穂軸が、柱部と前記柱部に接着される枝部とから構成され、前記ブドウ粒が、前記枝部に係止されている請求項1に記載のブドウ房。
【請求項11】
人工的に作製される人工ブドウ穂軸であって、
ブドウ粒を係止できるように形成されていることを特徴とする人工ブドウ穂軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工的に作製される人工ブドウ穂軸及びそれを使用したブドウ房に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ブドウは、複数の粒(ブドウ粒)で構成される房(ブドウ房)の状態で販売される。ブドウ房では、ブドウ房の中心にある穂軸(果軸と呼ばれることもある)から枝分かれしている支梗にブドウ粒が付着している。
【0003】
このような構成のブドウ房では、箱詰めや運送等の際に、ブドウ粒がブドウ房から落下してしまうことがある。落下したブドウ粒は販売されず、廃棄されたり、ジュース等の加工品に使用されたりする。しかし、落下によりブドウ粒の品質が急速に劣化するわけではなく、特に、支梗が付着した状態で落下したブドウ粒の保存性は、落下前とさほど違いがない。よって、落下等によりブドウ房から外れたブドウ粒(以下、「分離ブドウ粒」とする)を、廃棄や加工等で処理するのではなく、ブドウ粒のままで有効に利用することが考えられる。
【0004】
分離ブドウ粒の有効利用の1つとして、ブドウには味、色、香り等が異なる種類が存在するので、種類が異なる分離ブドウ粒を集積して1つの集合体とする方法が考えられる。例えば、色が異なる分離ブドウ粒の集合体には視覚効果が期待でき、味や香りが異なる分離ブドウ粒の集合体には種々の味や香りの享受が期待できる。
【0005】
分離ブドウ粒を集積して利用する方法として、例えば、特許文献1では、種類が異なる複数のブドウ粒を包装するブドウの販売用パッケージが提案されている。
特許文献1で提案のパッケージでは、色や大きさが異なる複数のブドウ粒を積み上げて、それを透明な合成樹脂性の第1シートで包装し、更に網目を有する第2シートで包装している。これにより、異なる種類のブドウ粒の配置状態を外部から観察できるので、購買者を視覚的に楽しませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のブドウ販売用パッケージは、分離ブドウ粒を積み上げてシートで包装しているだけであるから、同じ種類の粒ができるだけ隣接しないようにする等、ブドウ粒の配置を調整しても、ブドウ粒を寄せ集めたものとの印象が拭えず、ブドウ房に比べて、見栄え等が劣るおそれがある。
【0008】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、分離ブドウ粒を有効に利用し、見栄え等の視覚効果等を得ることができるブドウ房及び人工ブドウ穂軸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 人工的に作製される人工ブドウ穂軸にブドウ粒が係止され、ブドウ形状を形成しているブドウ房。
<2> 前記人工ブドウ穂軸が可撓性を有する線材から作製されている<1>に記載のブドウ房。
<3> 前記線材が、U字型に湾曲して一定の間隔をあけて並列するように形成されている<2>に記載のブドウ房。
<4> 前記人工ブドウ穂軸が、複数の前記線材から作製されている<2>又は<3>に記載のブドウ房。
<5> 前記人工ブドウ穂軸が、前記線材に挿着される固定部材を更に有する<2>から<4>のいずれかに記載のブドウ房。
<6> 前記線材が、前記固定部材の貫通孔に貫通され、
前記ブドウ粒が、前記固定部材の上面に隣接する前記線材の部分に係止されている<5>に記載のブドウ房。
<7> 前記ブドウ粒が、前記ブドウ粒に付着している支梗において、前記人工ブドウ穂軸に係止されている<1>から<6>のいずれかに記載のブドウ房。
<8> 種類が異なるブドウ粒が係止されている<1>から<7>のいずれかに記載のブドウ房。
<9> 色が異なるブドウ粒が係止されている<1>から<8>に記載のブドウ房。
<10> 前記人工ブドウ穂軸が、柱部と前記柱部に接着される枝部とから構成され、前記ブドウ粒が前記枝部に係止されている<1>に記載のブドウ房。
【0011】
<1a> 人工的に作製される人工ブドウ穂軸であって、ブドウ粒を係止できるように形成されている人工ブドウ穂軸。
<2a> 可撓性を有する線材で作製される<1a>に記載の人工ブドウ穂軸。
<3a> 前記線材が、U字型に湾曲して一定の間隔をあけて並列するように形成されている<2a>に記載の人工ブドウ穂軸。
<4a> 複数の前記線材で作製される<2a>又は<3a>に記載の人工ブドウ穂軸。
<5a> 前記線材に挿着される固定部材を更に有する<2a>から<4a>のいずれかに記載の人工ブドウ穂軸。
<1b> 柱部と、前記柱部に接着されブドウ粒を保持するための枝部と、から構成される人工ブドウ穂軸。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブドウ房及び人工ブドウ穂軸によれば、人工ブドウ穂軸にブドウ粒を係止することが可能で、自然のブドウ房と同様な形状にブドウ粒を集積することができるので、分離ブドウ粒を有効に利用することができると共に、見栄えが良いブドウ房を生成することができる。色、味、香り等が異なるブドウ粒を使用した場合、自然には生成することが難しい、視覚効果等を更に向上させたブドウ房を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】自然に生育されたブドウ房の例を示す正面図である((A)ブドウ粒が付いた状態、(B)ブドウ粒を全て外した状態)。
【
図2】本発明に係る人工ブドウ穂軸を使用して生成されたブドウ房の例を示す正面図である。
【
図3】人工ブドウ穂軸に掛着するブドウ粒の例を示す図である((A)二股に分かれた枝梗、(B)鋭角に屈曲した枝梗)。
【
図4】人工ブドウ穂軸の作製の基となる基本部材の例を示す図である。
【
図5】ブドウ粒を係止した状態での基本部材の例を示す図である((A)ブドウ粒を係止した状態、(B)ブドウ粒を係止し固定部材を挿着した状態、(C)複数のブドウ粒を係止した状態)。
【
図6】複数の基本部材を用いた人工ブドウ穂軸の例を示す図である。
【
図7】複数の固定部材を用い、複数のブドウ粒を係止した状態での複数の基本部材の例を示す図である((A)概略図、(B)写真)。
【
図8】複数の基本部材を用いて生成されたブドウ房の例を示す写真である。
【
図9】色が異なるブドウ粒を使用して生成されたブドウ房の例を示す正面図である。
【
図10】人工ブドウ穂軸の変形例を示す図である((A)U字型の枝部、(B)切込み型の枝部)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、人工的に作製される人工ブドウ穂軸を使用して、人工ブドウ穂軸にブドウの粒(ブドウ粒)を係止することにより、房(ブドウ房)を生成する。
【0015】
図1は、自然に生育されたブドウ房を示す正面図であり、
図1(A)はブドウ粒が付いた状態を示し、
図1(B)はブドウ粒を全て外した状態を示している。ブドウ房1は、穂軸を中心として、その周りにブドウ粒13が生育する。具体的には、穂軸は主穂軸10及び二次穂軸11から構成され、
図1(B)に示されるように、ブドウ房1の中心に位置する主穂軸10から二次穂軸11が枝分かれし、さらに二次穂軸11から支梗12が伸び、支梗12の先端にブドウ粒13が生育する。
【0016】
本発明のブドウ房は、穂軸として機能する人工ブドウ穂軸を使用し、人工ブドウ穂軸に複数のブドウ粒を係止したブドウ房であり、自然のブドウ房と同様な形状を有する。
すなわち、本発明のブドウ房は、人工ブドウ穂軸を使用していることに特徴があり、当該人工ブドウ穂軸には、ブドウ形状を形成するようにブドウ粒が係止されている。
【0017】
ここで、「ブドウ形状」とは、
図1(A)に示されるように、自然に生育されたブドウ房1と類似した形状で、主穂軸10のような中心軸の周方向及び軸方向に複数のブドウ粒が密接して重畳した形状となっている。ブドウ形状では、ブドウ粒は周方向及び/又は軸方向に不規則に連接可能であり、部分的に間隙が存在しても良い。
【0018】
本発明に係る人工ブドウ穂軸は、可撓性を有する線材、更に線材に挿着される固定部材から作製することが可能である。本発明に係る人工ブドウ穂軸は、柱部と柱部に接着される枝部とから構成することも可能であり、枝部にブドウ粒を係止することが可能である。
【0019】
本発明では、ブドウ粒に付着している支梗において、ブドウ粒を人工ブドウ穂軸に係止することが可能である。また、本発明では、種類が異なる(例えば色が異なる)ブドウ粒を係止することが可能である。これにより、色、味、香り等が異なるブドウ粒を1つのブドウ房で堪能することが可能となる。
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付し、説明を省略することがある。また、以下の説明における数値や形状等は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る人工ブドウ穂軸を、可撓性を有する線材、例えばアルミ線(アルミニウム線)から作製すると共に、この人工ブドウ穂軸を使用してブドウ房を生成する例について説明する。アルミ線は、銅線等に比べて、軽量である、柔軟性があり加工しやすい、錆びにくい等の特長を有しており、園芸用、教材用、結束用等として使用されており、人工ブドウ穂軸の作製に適している。本実施形態では、線径が2.5mmのアルミ線を使用する。なお、他の線径のアルミ線や、アルミ線以外の可撓性を有する金属や合成樹脂等の線材で、人工ブドウ穂軸を作製しても良い。
【0022】
図2は、人工ブドウ穂軸を用いて生成されたブドウ房の例の正面図である。本実施形態に係るブドウ房2は、長手方向(
図2において上下方向)に延伸し、径方向の中心に位置する、線材(アルミ線)で作製された人工ブドウ穂軸20を有する。人工ブドウ穂軸20の上部には、ブドウ房2の持ち運びを容易にするために、短手方向(
図2において左右方向)に延伸するT字型の取っ手21が形成されている。人工ブドウ穂軸20にはブドウ粒30が係止されており、複数のブドウ粒30が重畳して、ブドウ形状のブドウ房2を構成している。
【0023】
ブドウ房2を構成するブドウ粒30には支梗が付着しており、支梗部分を人工ブドウ穂軸20に掛着することにより、ブドウ粒30を人工ブドウ穂軸20に係止する。
図3に、人工ブドウ穂軸20に係止するブドウ粒30の例を示す。ブドウ粒30として、
図3(A)に示されるように、2つのブドウ粒30a及び30bが、二股に分かれた支梗31に付着しているものが好適である。支梗31の二股に分かれている部分を、人工ブドウ穂軸20に掛着することにより、ブドウ粒30(30a及び30b)を安定して人工ブドウ穂軸20に係止することができる。支梗31に1つのブドウ粒30のみ付着しているものでも、
図3(B)に示されるように、支梗31が鋭角に屈曲している部分を有する場合、その屈曲している部分を人工ブドウ穂軸20に掛着することができるので、ブドウ粒30として使用可能である。1つの支梗31に3つ以上のブドウ粒が付着しているものも使用可能である。
【0024】
ブドウ粒は、支梗が付着した状態では、ブドウ粒及び支梗が穂軸から外れていない状態のときの保存性を維持することができるので、ブドウ房2の品質の点からも、ブドウ粒30として、支梗が付着したブドウ粒が好ましい。ブドウ粒30として、落下等によりブドウ房から外れた分離ブドウ粒を使用する場合も、支梗が付着した分離ブドウ粒の使用が好ましい。
【0025】
図3に示されるようなブドウ粒30、及び、
図4に示されるような線材(アルミ線)から作製される人工ブドウ穂軸20を用いて、ブドウ房2を生成する手順例を、
図4、及び
図5を参照して説明する。まず、ブドウ房2を生成する基本的な手順例について説明し、次に、大きなブドウ房2を生成する応用的な手順例について説明する。
【0026】
図4は、人工ブドウ穂軸20の作製の基となる基本部材の例を示す図であり、
図5は、ブドウ粒30を係止した状態での基本部材の例を示す図である。
【0027】
まず、
図4に示されるように、1本の線材(アルミ線)が中心にてU字型に湾曲し、一定の間隔をあけて線材が並列するように形成された基本部材22を用意する。基本部材22において、U字型に湾曲した部分(U字部)に、ブドウ粒30が係止される。
【0028】
次に、ブドウ粒30に付着する支梗31をU字部に掛着して、ブドウ粒30を基本部材22に係止させる。例えば、
図3(A)に示されるようなブドウ粒30(30a及び30b)の場合、
図5(A)に示されるように、支梗31の二股に分かれている部分をU字部に掛着する。
【0029】
図5(B)に示されるように、ブドウ粒30を基本部材22に係止した後、ブドウ粒30を固定化するためと、基本部材22を構成している並列するアルミ線(以下、「並列アルミ線」とする)の間隔が広がってブドウ形状を保持できなくなることを抑制するために、湾曲され並列した線材を、固定部材24の貫通孔に貫通させて、固定部材24を基本部材22に挿着する。
【0030】
例えば、固定部材24として、ねじやボルトを締める際に部材とねじの間に挟む板状の部品であるワッシャ(座金)のように、中央に貫通孔を有する円板状の部材を使用する。
図5(B)に示されるように、固定部材24の貫通孔に、並列アルミ線を貫通させ、ブドウ粒30が係止している直上の線材の部分に、固定部材24を固設する。
【0031】
なお、固定部材24として、アルミ線等の他の部材を使用しても良い。また、固定部材24を使用する代わりに、ブドウ粒30が係止している部分の上部で、並列アルミ線を交差させる等の処置を行っても良い。ブドウ粒30の固定化や並列アルミ線の間隔の広がりが問題ではない場合等では、固定部材24の使用や並列アルミ線の交差等を行わなくても良い。
【0032】
その後、
図5(C)に示されるように、基本部材22へのブドウ粒30の係止と、固定部材24の挿着を繰り返して、ブドウ粒30を重畳させていく。この際、ブドウ房2の周方向において、ブドウ粒30がバランス良く配置されるように、ブドウ粒30を重畳させていく。
ブドウ粒30を重畳していく過程では、最上部に位置する固定部材24の上面と隣接する基本部材22(線材)の部分に、ブドウ粒30が係止される。また、固定部材24を挿着していく過程では、最上部に係止されているブドウ粒30の直上の線材の部分に、固定部材24が挿着される。
【0033】
なお、ブドウ粒30を基本部材22に係止するたびに、固定部材24を基本部材22に挿着しなくても良く、複数のブドウ粒30を係止した後に、固定部材24を基本部材22に挿着するようにしても良い。
【0034】
また、ブドウ粒30は、最上部にすでに係止されたブドウ粒30の直上の線材の部分に、係止されてもよい。ブドウ形状を形成しているブドウ房が生成された状態では、直下に隣接して係止されているブドウ粒30の直上の線材の部分、又は、直上に隣接して係止されているブドウ粒30の直下の線材の部分に、ブドウ粒30が係止されてもよい。
【0035】
また、ブドウ粒30の重畳により、最下部に位置するブドウ粒30への加重が大きくなるような場合等では、並列アルミ線を途中で交差させる等により、加重を分散させるようにしても良い。並列アルミ線の交差は、上述のように、並列アルミ線の間隔の広がりの抑制にもなる。
なお、ブドウ粒30を重畳していく過程で並列アルミ線の交差を行った場合、ブドウ粒30は、交差された線材の部分に係止されてもよい。
【0036】
ブドウ房2を構成する全てのブドウ粒30を基本部材22に係止したら、必要に応じて固定部材24を挿着し、重畳されたブドウ粒30の上部に露出している基本部材22を使用して、
図2に示されるような取っ手21を作製する。なお、取っ手として別の部材を用意し、その部材に基本部材22を巻着する等により、取っ手を基本部材22に接着するようにしても良い。また、ブドウ房2を持ち運ぶ必要がない場合等では、取っ手は設けなくても良い。
【0037】
以上、線材がU字型に湾曲して一定の間隔をあけて並列するように形成されている基本部材22を1つ用い、人工ブドウ穂軸20が可撓性を有する線材(基本部材22)から作製されているブドウ房2の基本的な生成手順を説明した。
【0038】
続いて、大きなブドウ房2を生成する応用的な手順例として、複数の基本部材22を用いた場合のブドウ房2の生成手順を説明する。
図6は複数の基本部材を用いた人工ブドウ穂軸の例を示す図であり、
図7は複数の固定部材を用いて複数のブドウ粒30を係止した状態での複数の基本部材の例を示す図であり、
図8は複数の基本部材を用いて生成されたブドウ房の例を示す写真である。
【0039】
大きいサイズのブドウ房2を生成する場合、人工ブドウ穂軸は、複数の基本部材22(線材)で作製される。
【0040】
まず、基本部材22を複数、例えば、
図6に示されるように3つ用意する。また、複数の基本部材22が互いに離散しないように固定する部材として、接合部材23を準備する。
【0041】
次に、3つの基本部材22a、22b及び22cは、U字部にて重ね合わされ、接合部材23により、接合(複数の基本部材が互いに離散しないように固定)される。接合部材23として、基本部材22と同じ線材(アルミ線)を使用しても良い。重ね合わされたU字部に接合部材23を巻着して、基本部材22a、22b及び22cを接合する。基本部材22a、22b及び22cでは、接合部材23と密接している線材の部分に、ブドウ粒30が係止される。
なお、複数の基本部材を接合可能であれば、接合部材23として、アルミ線以外の部材を使用しても良い。
【0042】
図6に示されるような複数の基本部材(
図6では3つの基本部材22a、22b及び22c)を使用する場合、基本部材毎にブドウ粒30の係止及び固定部材24の挿着を行う。各基本部材に係止するブドウ粒30の数は、生成するブドウ房2全体の形状を考慮して決定する。
例えば、ブドウ房2の形状を、下端を頂点とする逆円錐形とする場合には、U字部近辺のブドウ房2の長手方向の下部では、係止するブドウ粒30の数を少なくするために、1つ又は2つ以上の基本部材にブドウ粒30を係止する。続いて、ブドウ房2の長手方向の中心近辺からは、3つの基本部材のそれぞれにブドウ粒30を係止するようにして、ブドウ房2を生成する。なお、使用する複数の基本部材の数は、3つ以外でも良い。
【0043】
複数の基本部材にブドウ粒30を係止していく過程において、固定部材24に加えて、複数の基本部材22を束ねる別の固定部材25を挿着しても良い。これにより、ブドウ粒30の更なる固定化と基本部材同士が分離するのを抑制する。例えば、固定部材24と同様に、中央に貫通孔を有する円板状の部材を固定部材25として使用する。
図7(A)に、固定部材25を使用した例の概略図を示しており、固定部材25の貫通孔に、基本部材22a、22b及び22cの並列アルミ線を貫通させ、最上部のブドウ粒30が係止している直上の線材の部分に、固定部材25を固設する。
図7(B)には、固定部材25に加えて、固定部材24を使用した例の写真を示しており、固定部材24に重なるように固定部材25が固設されている。
【0044】
なお、固定部材24の場合と同様に、固定部材25として、アルミ線等の他の部材を使用しても良い。また、固定部材24及び固定部材25は必要に応じて使用されればよく、人工ブドウ穂軸20の形態(基本部材を構成する線材の直径、線材の本数等)、ブドウ粒の数、目的とするブドウ房の形状等に応じて適宜使用する固定部材の数を選択すればよい。また、ブドウ粒30の更なる固定化や基本部材22同士の分離の抑制が必要ではない場合等では、固定部材25を使用しなくても良い。固定部材25を使用する場合、最上部に位置する固定部材25の上面と隣接する基本部材22の部分に、ブドウ粒30が係止される。また、基本部材22同士を途中で交差させる等により、加重を分散させるようにしても良い。
【0045】
ブドウ房2を構成する全てのブドウ粒30を基本部材22に係止したら、必要に応じて固定部材25を挿着し、重畳されたブドウ粒30の上部に露出している基本部材22を使用して、
図2に示されるような取っ手21を作製する。
【0046】
このように、線材から人工ブドウ穂軸20を作製し、人工ブドウ穂軸20にブドウ粒30を係止することによりブドウ房2を生成するので、複雑な作業を行わずに、容易にブドウ房2を生成することができる。
【0047】
また、ブドウ粒30として複数の種類のブドウ粒を使用することにより、1つのブドウ房で、色、味、香り等が異なるブドウ粒を堪能することができる。例えば、
図9は、色が異なるブドウ粒40を使用して生成されたブドウ房の例の正面図であり、このような視覚効果を有するブドウ房3を生成することができる。
【0048】
本実施形態に係る上述のブドウ房2での人工ブドウ穂軸20は、アルミ線を線材として、U字部を有する1又は複数の基本部材22から作製されているが、本発明の人工ブドウ穂軸の線材及び形状等はこれに限定されるものではなく、種々の線材及び形状等で作製することが可能である。その例を
図10及び
図11に示す。
【0049】
図10(A)に示される人工ブドウ穂軸50は、生成されるブドウ房の中心に位置する柱部51と、柱部51に接着される複数の枝部52から構成される。人工ブドウ穂軸50は、柱部51が、
図1に示されるブドウ房1の主穂軸10に対応し、枝部52が、ブドウ房1の二次穂軸11に対応する形状となっている。枝部52に、
図3に示されるような支梗31を有するブドウ粒30が係止される。
【0050】
柱部51は一定の長さを有する円柱又は角柱の形状となっており、係止される複数のブドウ粒の重量がかかっても変形しない強度を有する素材で生成されている。同強度を有し、安全性で問題がない素材であれば、柱部51の素材として、アルミニウム等の金属や合成樹脂等、任意の素材が使用可能である。
【0051】
枝部52は、U字型に形成された線材で、一方の端部が柱部51と接着しており、他方の端部は自由端となっている。枝部52の湾曲した部分に、ブドウ粒30が係止される。枝部52は、柱部51の側面に、一定の間隔を空けて接着されている。枝部52は、柱部51と同じ素材でも異なる素材でも生成可能である。
【0052】
図10(B)に示される人工ブドウ穂軸60は、人工ブドウ穂軸50と同様に、生成されるブドウ房の中心に位置する柱部61と、柱部61に接着される複数の枝部62から構成される。但し、枝部62には、ブドウ粒30に付着する支梗31を挟持するための切込みが形成されている。この切込みに、ブドウ粒30が係止される。枝部62は、支梗31を挟持した状態において切込みが開いてブドウ粒30が落下しないような素材、例えばポリウレタンフォーム等で生成されている。
【0053】
人工ブドウ穂軸20、50及び60は、ブドウ粒30に付着する支梗31を掛着することにより、ブドウ粒30を係止しているが、複数の支梗及びブドウ粒を有する二次穂軸を係止するような人工ブドウ穂軸を作製することも可能である。例えば、
図11に示される人工ブドウ穂軸70は、一定の長さを有する円柱又は角柱の形状となっており、側面に、二次穂軸を係止するための複数の挿入孔71が設けられている。この挿入孔71に、切断等によって主穂軸から分離された二次穂軸の端部を挿入することにより、二次穂軸並びに支梗及びブドウ粒を係止する。
【0054】
なお、上述の人工ブドウ穂軸には、支梗が付着しているブドウ粒を係止しているが、支梗が付着していない場合、人工的に作製された支梗をブドウ粒に付着する等により、支梗が付着していないブドウ粒を係止することも可能である。この場合、支梗の欠落によりブドウ粒の品質劣化が進むおそれがあるので、ブドウ房を短期間で消費できる場合等で活用する。
【0055】
本発明は、上記の人工ブドウ穂軸及びそれを使用して生成されたブドウ房として実現するだけではなく、人工ブドウ穂軸を使用したブドウ房の構造として、或いは、人工ブドウ穂軸を含み、ブドウ房を生成するときに使用されるブドウ房生成キットとしても実現することができる。ブドウ房生成キットに含ませる人工ブドウ穂軸として、上記の基本部材22又はその基であるアルミ線を使用しても良いし、ブドウ房生成キットに、上記の固定部材24及び/又は25を含ませても良い。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記形態において明示的に開示されていない事項、例えば人工ブドウ穂軸の寸法、重量等は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3 ブドウ房
10 主穂軸
11 二次穂軸
12、31 支梗
13、30、30a、30b、40 ブドウ粒
20、50、60、70 人工ブドウ穂軸
21 取っ手
22、22a、22b、22c 基本部材
23 接合部材
24、25 固定部材
51、61 柱部
52、62 枝部
71 挿入孔