IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特開2024-164370感光性組成物、硬化物、表示装置、及び硬化物の製造方法
<>
  • 特開-感光性組成物、硬化物、表示装置、及び硬化物の製造方法 図1
  • 特開-感光性組成物、硬化物、表示装置、及び硬化物の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164370
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】感光性組成物、硬化物、表示装置、及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241120BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241120BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241120BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20241120BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20241120BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241120BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241120BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/027 514
G03F7/038 504
G03F7/027 515
H10K50/00
H10K59/122
H10K59/10
C08F2/44 Z
C08F290/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079790
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 勇剛
(72)【発明者】
【氏名】相原 涼介
(72)【発明者】
【氏名】宮内 拓也
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC53
2H225AC54
2H225AC58
2H225AC66
2H225AC67
2H225AC68
2H225AC70
2H225AC79
2H225AD06
2H225AE03P
2H225AE05P
2H225AE06P
2H225AM74P
2H225AM75P
2H225AM76P
2H225AM77P
2H225AM99P
2H225AN39P
2H225AN66P
2H225AN95P
2H225AN96P
2H225AP11P
2H225BA16P
2H225BA17P
2H225BA35P
2H225CA21
2H225CA24
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107FF14
3K107GG28
4J011PA23
4J011PA25
4J011PA26
4J011PA39
4J011PA43
4J011PA50
4J011PB25
4J011QA15
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA25
4J011QA27
4J011QA32
4J011QA34
4J011QA38
4J011QA39
4J011QA40
4J011QA45
4J011QA46
4J011QB19
4J011QB20
4J011QC07
4J011SA65
4J011UA01
4J011VA01
4J127BB033
4J127BB041
4J127BB042
4J127BB081
4J127BB082
4J127BB113
4J127BB221
4J127BB222
4J127BB223
4J127BB281
4J127BB282
4J127BB301
4J127BB302
4J127BC022
4J127BC023
4J127BC061
4J127BC062
4J127BC123
4J127BC151
4J127BC152
4J127BD062
4J127BD121
4J127BD183
4J127BD201
4J127BD202
4J127BD322
4J127BD332
4J127BE112
4J127BE11X
4J127BE311
4J127BE31Y
4J127BE341
4J127BE342
4J127BE34X
4J127BE34Y
4J127BE411
4J127BE412
4J127BE41Y
4J127BE592
4J127BE59Y
4J127BF231
4J127BF232
4J127BF23Z
4J127BF291
4J127BF292
4J127BF29Y
4J127BF312
4J127BF31Y
4J127BF382
4J127BF38Y
4J127BF451
4J127BF452
4J127BF45Y
4J127BF531
4J127BF532
4J127BF53Y
4J127BF712
4J127BF71Y
4J127BF722
4J127BF72Y
4J127BF742
4J127BF74Y
4J127BF751
4J127BF75Y
4J127BF761
4J127BF762
4J127BF76Z
4J127BG041
4J127BG042
4J127BG043
4J127BG04X
4J127BG04Y
4J127BG051
4J127BG052
4J127BG053
4J127BG05Y
4J127BG081
4J127BG082
4J127BG08Y
4J127BG102
4J127BG103
4J127BG10Y
4J127BG111
4J127BG112
4J127BG11Y
4J127BG121
4J127BG122
4J127BG123
4J127BG12Y
4J127BG161
4J127BG162
4J127BG16Y
4J127BG16Z
4J127BG171
4J127BG172
4J127BG17Y
4J127BG181
4J127BG18Y
4J127BG231
4J127BG232
4J127BG23Y
4J127BG331
4J127BG332
4J127BG33Z
4J127BG371
4J127BG37Y
4J127BG382
4J127BG38Y
4J127BG391
4J127BG392
4J127BG39Z
4J127CB281
4J127CB284
4J127CB341
4J127CB372
4J127CC021
4J127CC034
4J127CC112
4J127CC134
4J127CC162
4J127CC291
4J127DA43
4J127DA51
4J127DA61
4J127FA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】現像後の残渣抑制、現像後のパターン寸法制御、及び優れたハーフトーン特性を有する硬化物を提供する。
【解決手段】(A)バインダー樹脂及び(C)感光剤を含有し、さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する感光性組成物であって、該(A)バインダー樹脂が(Aa)樹脂:カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基を有する樹脂を含有し、該(Aa)樹脂が樹脂の構造単位中に特定の構造を有し、さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(2)の条件を満たす、感光性組成物。(2)該感光性組成物の全固形分に占める塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、該感光性組成物の全固形分に占める硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー樹脂及び(C)感光剤を含有し、さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する感光性組成物であって、
該(A)バインダー樹脂が(Aa)樹脂:カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基を有する樹脂を含有し、該(Aa)樹脂が樹脂の構造単位中に(I)構造:環状構造、又は、少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、該(I)構造とは異なる(II)構造:カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、及び(III)構造:該(I)構造と該(II)構造とを連結する構造を有し、
さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(2)の条件を満たす、感光性組成物。
(2)該感光性組成物の全固形分に占める塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、該感光性組成物の全固形分に占める硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下
【請求項2】
前記(Aa)樹脂の合計100,000質量部に対する塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.0040質量部以上、かつ200質量部以下、及び/又は、前記(Aa)樹脂の合計100,000質量部に対する硫黄元素の含有量が0.0040質量部以上、かつ200質量部以下である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記(Aa)樹脂が、カルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記(I)構造、前記(II)構造、及び前記(III)構造からなる群より選ばれる1つ以上の構造がアルコキシシリル基及び/又はヒドロキシシリル基を有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記アルコキシシリル基が硫黄原子を含む置換基を有する、及び/又は、前記ヒドロキシシリル基が硫黄原子を含む置換基を有する、請求項4に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記(I)構造が脂環式構造を有し、前記(II)構造が、含フッ素置換基を含む芳香族構造、又は、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、含フッ素置換基を含む構造が結合した連結基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記(I)構造中の脂環式構造が、シクロヘキサン構造、カルボニルオキシアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造、又はシロキサン構造を含むアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造を含み、
前記(II)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有する、請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記(I)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有し、
前記(II)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有し、
該(I)構造及び該(II)構造のうち少なくとも1つが、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基を有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記(I)構造が縮合多環脂環式構造を有し、該(I)構造中の縮合多環脂環式構造がアダマンタン構造を含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記(III)構造が、炭化水素基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミド基、又は以下の(X)構造を含む炭化水素基であって、
(X)構造:ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボニルオキシ基、窒素原子、カルボニルアミド基、及びラジカル重合性基が結合した酸素原子からなる群より選ばれる一種類以上
前記(I)構造が、(Ia)構造:該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、であって、
該(Ia)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基である、請求項4~9のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項11】
前記(II)構造が、(IIa)構造:前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した環状構造、又は、前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基であって、該(IIa)構造がテトラカルボン酸二無水物残基である、請求項10に記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記(III)構造が、炭化水素基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミド基、又は以下の(X)構造を含む炭化水素基であって、
(X)構造:ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボニルオキシ基、窒素原子、カルボニルアミド基、及びラジカル重合性基が結合した酸素原子からなる群より選ばれる一種類以上
以下の条件(a)及び/又は条件(b)を満たす、請求項1~3のいずれかに記載の感光性組成物。
(a)前記(I)構造が、(Ia)構造:該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基である
(b)前記(II)構造が、(IIb)構造:該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基である
【請求項13】
前記(Ia)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基であって、
前記(IIb)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基である、請求項12に記載の感光性組成物。
【請求項14】
前記条件(a)を満たし、前記(II)構造が、(IIa)構造:前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した環状構造、又は、前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基であって、該(IIa)構造がテトラカルボン酸二無水物残基である、請求項12に記載の感光性組成物。
【請求項15】
さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンからなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(1)の条件を満たす、請求項1~9のいずれかに記載の感光性組成物。
(1)該感光性組成物中に占めるベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンの含有量の合計が0.010質量ppm以上、1,000質量ppm以下
【請求項16】
さらに有機黒色顔料を含有し、該有機黒色顔料が、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、及びアゾメチン系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
該ベンゾフラノン系黒色顔料が、ベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該ペリレン系黒色顔料が、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該アゾメチン系黒色顔料が、アゾメチン構造及びカルバゾール構造を有する化合物又はその塩を含む、請求項1~9のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項17】
請求項1~9のいずれかに記載の感光性組成物を硬化した硬化物。
【請求項18】
請求項17に記載の硬化物を具備する表示装置。
【請求項19】
(1)基板上に、請求項1~9のいずれかに記載の感光性組成物の塗膜を成膜する工程、(2)前記感光性組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、(3)現像液を用いて現像し、前記感光性組成物のパターンを形成する工程、及び(4)前記パターンを加熱し、前記感光性組成物の硬化パターンを得る工程、を有する、硬化物の製造方法。
【請求項20】
基板、第1電極、第2電極、画素分割層、発光層、及びTFT平坦化層を有する表示装置であって、該画素分割層及び/又は該TFT平坦化層が(XA)樹脂を含み、
該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を有するカルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有し、かつ以下の(Xα)、(Xβ)、(Xγ)、及び(Xδ)の条件のうち少なくとも1つを満たし、
該画素分割層及び/又は該TFT平坦化層が、さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(X2a)及び/又は(X2b)の条件を満たす、表示装置。
(Xα)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、硫黄原子を含む置換基が結合したアルコキシシリル基を有する、及び/又は、硫黄原子を含む置換基が結合したヒドロキシシリル基を有する
(Xβ)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、シクロヘキサン構造、カルボニルオキシアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造、又はシロキサン構造を含むアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造を有し、さらに、樹脂の構造単位中に、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基又は直接結合を有する
(Xγ)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、エーテル結合、又は炭化水素基を有し、さらに、樹脂の構造単位中に、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基又は直接結合を有する
(Xδ)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中にアダマンタン構造を有する
(X2a)該画素分割層中の塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、該画素分割層中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下
(X2b)該TFT平坦化層中の塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、該TFT平坦化層中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、硬化物、表示装置、及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの薄型ディスプレイにおいて、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)ディスプレイ、量子ドットディスプレイ、又はマイクロ発光ダイオード(以下、「LED」)ディスプレイに関する技術が盛んに研究されている。例えば、有機ELディスプレイの画素分割層は、開口部の寸法が画素寸法となり発光特性に影響を及ぼすこととなる。そのため用いられる材料には、フォトマスク設計通りに開口部を形成するため、開口パターンの狭マスクバイアス抑制が求められる。さらにフォトリソグラフィーによるポジ型又はネガ型のパターン形成時の現像残渣抑制も両立する必要がある。
【0003】
また発光材料成膜時の蒸着マスクの支持台となる膜厚の厚い領域(以下、「厚膜部」)と、厚膜部よりも膜厚の小さい薄膜部とを有する画素分割層における段差形状を、ハーフトーンフォトマスクを用いて一括形成するプロセスも適用される。従って、プロセスタイム削減及び歩留まり向上のため優れたハーフトーン特性が必要とされる。さらに、画素分割層や薄層トランジスタ(以下、「TFT」)平坦化層が発光素子に隣接又は近接する位置に形成されるため、それらの層からの脱ガス等は発光素子の寿命低下に繋がる。そのため、有機ELディスプレイの高耐久性実現には、画素分割層等の構成や、用いられる材料の耐熱性等の物性による発光素子の信頼性向上が必要とされる。
【0004】
感光性組成物としては、例えば、ポリイミドなどの第1樹脂と、カルド系樹脂などの第2の樹脂とを含有するネガ型感光性組成物(特許文献1参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/057281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物は、現像後の残渣抑制、現像後の開口パターン寸法の狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性を兼ね備えるには課題があった。そのため感光性組成物には、更なる特性向上が望まれていた。本発明は、現像後の残渣抑制、現像後の開口パターンの狭マスクバイアス抑制、及び優れたハーフトーン特性を兼ね備えつつ、発光素子の信頼性に優れる表示装置に具備される硬化物を提供することを目的とする。また本発明の別の目的は、発光素子の信頼性に優れる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の感光性組成物及び電子部品は、以下の[1]~[20]の構成を有する。
【0008】
[1](A)バインダー樹脂及び(C)感光剤を含有し、さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する感光性組成物であって、
該(A)バインダー樹脂が(Aa)樹脂:カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基を有する樹脂を含有し、該(Aa)樹脂が樹脂の構造単位中に(I)構造:環状構造、又は、少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、該(I)構造とは異なる(II)構造:カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、及び(III)構造:該(I)構造と該(II)構造とを連結する構造を有し、
さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(2)の条件を満たす、感光性組成物。
(2)該感光性組成物の全固形分に占める塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、該感光性組成物の全固形分に占める硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下
[2]前記(Aa)樹脂の合計100,000質量部に対する塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.0040質量部以上、かつ200質量部以下、及び/又は、前記(Aa)樹脂の合計100,000質量部に対する硫黄元素の含有量が0.0040質量部以上、かつ200質量部以下である、前記[1]に記載の感光性組成物。
【0009】
[3]前記(Aa)樹脂が、カルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有する、前記[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
【0010】
[4]前記(I)構造、前記(II)構造、及び前記(III)構造からなる群より選ばれる1つ以上の構造がアルコキシシリル基及び/又はヒドロキシシリル基を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0011】
[5]前記アルコキシシリル基が硫黄原子を含む置換基を有する、及び/又は、前記ヒドロキシシリル基が硫黄原子を含む置換基を有する、前記[4]に記載の感光性組成物。
【0012】
[6]前記(I)構造が脂環式構造を有し、前記(II)構造が、含フッ素置換基を含む芳香族構造、又は、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、含フッ素置換基を含む構造が結合した連結基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0013】
[7]前記(I)構造中の脂環式構造が、シクロヘキサン構造、カルボニルオキシアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造、又はシロキサン構造を含むアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造を含み、
前記(II)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有する、前記[6]に記載の感光性組成物。
【0014】
[8]前記(I)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有し、
前記(II)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有し、
該(I)構造及び該(II)構造のうち少なくとも1つが、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基を有する、前記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0015】
[9]前記(I)構造が縮合多環脂環式構造を有し、該(I)構造中の縮合多環脂環式構造がアダマンタン構造を含む、前記[1]~[8]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0016】
[10]前記(III)構造が、炭化水素基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミド基、又は以下の(X)構造を含む炭化水素基であって、
(X)構造:ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボニルオキシ基、窒素原子、カルボニルアミド基、及びラジカル重合性基が結合した酸素原子からなる群より選ばれる一種類以上
前記(I)構造が、(Ia)構造:該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、であって、
該(Ia)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基である、前記[4]~[9]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0017】
[11]前記(II)構造が、(IIa)構造:前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した環状構造、又は、前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基であって、該(IIa)構造がテトラカルボン酸二無水物残基である、前記[10]に記載の感光性組成物。
【0018】
[12]前記(III)構造が、炭化水素基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミド基、又は以下の(X)構造を含む炭化水素基であって、
(X)構造:ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボニルオキシ基、窒素原子、カルボニルアミド基、及びラジカル重合性基が結合した酸素原子からなる群より選ばれる一種類以上
以下の条件(a)及び/又は条件(b)を満たす、前記[1]~[11]のいずれかに記載の感光性組成物。
(a)前記(I)構造が、(Ia)構造:該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基である
(b)前記(II)構造が、(IIb)構造:該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、該(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基である
[13]前記(Ia)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基であって、
前記(IIb)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基である、前記[12]に記載の感光性組成物。
【0019】
[14]前記条件(a)を満たし、前記(II)構造が、(IIa)構造:前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した環状構造、又は、前記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基であって、該(IIa)構造がテトラカルボン酸二無水物残基である、前記[12]又は[13]に記載の感光性組成物。
【0020】
[15]さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンからなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(1)の条件を満たす、前記[1]~[14]のいずれかに記載の感光性組成物。
(1)該感光性組成物中に占めるベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンの含有量の合計が0.010質量ppm以上、1,000質量ppm以下
[16]さらに有機黒色顔料を含有し、該有機黒色顔料が、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、及びアゾメチン系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
該ベンゾフラノン系黒色顔料が、ベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該ペリレン系黒色顔料が、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該アゾメチン系黒色顔料が、アゾメチン構造及びカルバゾール構造を有する化合物又はその塩を含む、前記[1]~[15]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0021】
[17]前記[1]~[16]のいずれかに記載の感光性組成物を硬化した硬化物。
【0022】
[18]前記[17]に記載の硬化物を具備する表示装置。
【0023】
[19](1)基板上に、前記[1]~[16]のいずれかに記載の感光性組成物の塗膜を成膜する工程、(2)前記感光性組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、(3)現像液を用いて現像し、前記感光性組成物のパターンを形成する工程、及び(4)前記パターンを加熱し、前記感光性組成物の硬化パターンを得る工程、を有する、硬化物の製造方法。
【0024】
[20]基板、第1電極、第2電極、画素分割層、発光層、及びTFT平坦化層を有する表示装置であって、該画素分割層及び/又は該TFT平坦化層が(XA)樹脂を含み、
該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を有するカルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有し、かつ以下の(Xα)、(Xβ)、(Xγ)、及び(Xδ)の条件のうち少なくとも1つを満たし、
該画素分割層及び/又は該TFT平坦化層が、さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(X2a)及び/又は(X2b)の条件を満たす、表示装置。
(Xα)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、硫黄原子を含む置換基が結合したアルコキシシリル基を有する、及び/又は、硫黄原子を含む置換基が結合したヒドロキシシリル基を有する
(Xβ)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、シクロヘキサン構造、カルボニルオキシアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造、又はシロキサン構造を含むアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造を有し、さらに、樹脂の構造単位中に、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基又は直接結合を有する
(Xγ)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中に、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、エーテル結合、又は炭化水素基を有し、さらに、樹脂の構造単位中に、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、該連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基又は直接結合を有する
(Xδ)該(XA)樹脂が樹脂の構造単位中にアダマンタン構造を有する
(X2a)該画素分割層中の塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、該画素分割層中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下
(X2b)該TFT平坦化層中の塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、該TFT平坦化層中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【発明の効果】
【0025】
本発明の感光性組成物によれば、現像後の残渣抑制、現像後の開口パターン寸法の狭マスクバイアス抑制、及び優れたハーフトーン特性を兼ね備えることができる。加えて、発光素子の信頼性に優れる表示装置に具備される硬化物を提供可能である。また本発明の表示装置によれば、発光素子の信頼性に優れる表示装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ハーフトーン特性評価に用いたハーフトーンフォトマスクにおける、透光部、遮光部、及び半透光部の、配置及び寸法を例示する概略図である。
図2】発光特性評価に用いた有機ELディスプレイの基板における工程1~工程4の製造プロセスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の感光性組成物について述べる。ただし、本発明は以下の各実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然ありえる。なお樹脂の主鎖とは、構造単位を含む樹脂を構成する鎖のうち最も鎖長が長いものをいう。樹脂の側鎖とは、構造単位を含む樹脂を構成する鎖のうち、主鎖から分岐した又は主鎖に結合した、主鎖よりも鎖長が短いものをいう。樹脂の末端とは主鎖を封止する構造をいい、例えば、末端封止剤などに由来する構造である。また「○○結合」や「○○基」を含む、炭化水素基やアルキレン基とは、「○○結合」や「○○基」が結合した、炭化水素基やアルキレン基、又は、「○○結合」や「○○基」によって連結された、少なくとも2つの炭化水素基や少なくとも2つのアルキレン基をいう。「○○構造」や「○○原子」を含む△△基とは、「○○構造」や「○○原子」が結合した△△基、又は、「○○構造」や「○○原子」を構造中のいずれかに含む△△基をいう。
【0028】
<感光性組成物>
本発明の感光性組成物は上記の[1]の構成を有する。上記の構成とすることで、本発明の感光性組成物は、現像後の残渣抑制、現像後の開口パターン寸法の狭マスクバイアス抑制、及び優れたハーフトーン特性を兼ね備えることができる。加えて、発光素子の信頼性に優れる表示装置に具備される硬化物を提供可能である。これは感光性組成物中に上記の特定の構造を有する(A)バインダー樹脂を含有させることで、当該樹脂を含有するUV硬化した膜の疎水性が向上するためと推測される。すなわち、当該樹脂が樹脂の構造単位中に環状構造を含む構造と、当該構造とは異なるカルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した別の環状構造とを有しており、これらの環状構造が疎水性であるため現像時にアルカリ現像液の浸透が抑えられ、とりわけUV硬化が不足しやすい膜深部のサイドエッチングを抑制できると考えられる。その結果、現像後の逆テーパー化が阻害され、現像後に順テーパー形状のパターン形成が可能となるため、過剰な露光量でのパターン形成が抑制されることで狭マスクバイアス抑制の効果を奏功すると推定される。また上記の環状構造の立体障害や分子運動阻害により、UV硬化時の過剰な光硬化が阻害されることで狭マスクバイアス抑制の効果を奏功するとも考えられる。加えて、UV硬化した膜の疎水性により現像時にアルカリ現像液の浸透が抑えられることで、完全に硬化が進行していないハーフトーン露光部のサイドエッチングを抑制できるとともに、ハーフトーン露光部の溶解性を制御できるため、優れたハーフトーン特性の効果を奏功すると推定される。また上記の環状構造が、開口部(ネガ型の感光性を有する場合は未露光部)における有機物の残渣成分と相互作用し、現像液に対して溶解促進するため、現像後の残渣抑制の効果を奏功すると考えられる。
【0029】
さらに感光性組成物中に上記の塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、又は硫黄元素を含む成分を微量含有させることで、これらの成分中の塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素やこれらの成分に由来する上記元素を含むアニオンにより、感光性組成物中のプロトンが局所的に活性化されると推定される。そのため、現像液に対する溶解促進作用により、現像後の残渣抑制の効果を奏功すると考えられる。また基板表面がこれらの成分によって表面改質されるため、開口部における残渣付着防止により、現像後の残渣抑制の効果を奏功するとも考えられる。加えて、上記の塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素が有する非共有電子対や空の原子軌道である3d軌道が、パターニング露光時の回折光によって発生したラジカルを安定化することで狭マスクバイアス抑制の効果を奏功すると推定される。加えて、上記の塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素が有する非共有電子対や空の原子軌道である3d軌道がラジカルを安定化することで、UV硬化時の過度な光硬化を制御でき、露光量に対する光硬化度の勾配を緩やかにできるため、優れたハーフトーン特性の効果を奏功すると推定される。また意図的に上記の成分を微量含有させることで、硬化物中における分極構造や電荷バランスが制御されると考えられる。その結果、発光特性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制されることに加え、電極や配線における金属のマイグレーション抑制や凝集抑制により、優れた発光素子の信頼性の効果を奏功すると推定される。すなわち、電子部品、半導体装置、表示装置、又は金属張積層板における優れたマイグレーション耐性の効果も奏功すると推定される。
【0030】
<(A)バインダー樹脂>
本発明の感光性組成物は(A)バインダー樹脂を含有する。(A)バインダー樹脂とは、組成物を硬化した硬化物中に少なくとも一部が残存する耐熱性を有する樹脂である。(A)バインダー樹脂は、反応によって架橋構造が形成されて硬化する樹脂が好ましい。反応は、加熱によるもの、エネルギー線の照射によるもの等、特に限定されるものではなく、後述する(F)架橋剤によって架橋構造が形成されても構わない。(A)バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0031】
(A)バインダー樹脂は、酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂又は有機溶剤可溶性構造を有する有機溶剤可溶性樹脂が好ましい。(A)バインダー樹脂は、後述する(C)感光剤によって組成物にポジ型又はネガ型の感光性が付与され、ポジ型又はネガ型のパターンを形成可能な溶解性を有する樹脂が好ましい。(A)バインダー樹脂は樹脂の構造単位中に酸性基を有することがより好ましい。酸性基はアルカリ現像液でのパターン加工性の観点から、フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、メルカプト基、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基が好ましく、さらに露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基がより好ましい。酸性基は狭マスクバイアス抑制及びハーフトーン特性向上渣抑制の観点から、(WA)弱酸性基:フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、又はメルカプト基が好ましい。
【0032】
(A)バインダー樹脂はラジカル重合性基を有することが好ましく、樹脂の構造単位中にラジカル重合性基を有することがより好ましい。ラジカル重合性基はエチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましく、光反応性基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基がより好ましい。光反応性基は、スチリル基、シンナモイル基、マレイミド基、ナジイミド基、又は(メタ)アクリロイル基が好ましく、露光時の感度向上の観点から、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。一方、炭素数2~5のアルケニル基又は炭素数2~5のアルキニル基は、ビニル基、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基、クロトニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、エチニル基、又は2-プロパルギル基が好ましく、露光時の感度向上の観点から、ビニル基又はアリル基がより好ましい。
【0033】
<(Aa)樹脂、(Ab)樹脂、(Ac)樹脂、及び(Ad)樹脂>
本発明の感光性組成物は、(A)バインダー樹脂が(Aa)樹脂:カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基を有する樹脂を含有する。(Aa)樹脂は露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、カルボキシ基を有することが好ましい。(Aa)樹脂は狭マスクバイアス抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、フェノール性水酸基を有することも好ましい。(Aa)樹脂は上記の特性向上の観点から、カルボキシ基及びフェノール性水酸基を有することがより好ましい。
【0034】
上記の(Aa)樹脂がフェノール性水酸基を有することで、フェノール性水酸基の適度な酸性度によりハーフトーン露光部が緩やかな現像膜減りをするため、溶解性が制御されることでハーフトーン特性向上の効果が顕著となる。フェノール性水酸基のアルカリ溶解促進作用により、現像後の残渣抑制の効果も顕著となる。また組成物がネガ型の感光性を有する場合、フェノール性水酸基は露光部における過度なUV硬化を制御するため、露光時の回折光によって発生したラジカルを安定化するとともに、露光量に対するUV硬化度の勾配を緩やかにできるため、現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の効果が顕著となる。(Aa)樹脂は露光時の感度向上の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0035】
本発明の感光性組成物は、(Aa)樹脂が樹脂の構造単位中に(I)構造:環状構造、又は、少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、(I)構造とは異なる(II)構造:カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、及び(III)構造:(I)構造と(II)構造とを連結する構造を有する。これらの構造を有する(Aa)樹脂をまとめて特定の構造を有する(Aa)樹脂という場合もある。(Aa)樹脂は、(1)構造:含ケイ素置換基を含む構造、(2)構造:脂環式構造と、含フッ素置換基を含む構造、(3)構造:芳香族構造と、トリフルオロメチル基を含む構造、又は(4)構造:アダマンタン構造を有することが好ましい。
【0036】
特定の構造を有する(Aa)樹脂は露光時の感度向上の観点から、上記(I)構造、上記(II)構造、及び上記(III)構造からなる群より選ばれる1つ以上の構造がラジカル重合性基を有し、ラジカル重合性基が、スチリル基、シンナモイル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基、炭素数2~5のアルケニル基、及び炭素数2~5のアルキニル基からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましい。ラジカル重合性基を有することが好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0037】
またラジカル重合性基を含むカルボン酸残基、ラジカル重合性基を含むエポキシ化合物残基、又はラジカル重合性基を含むフェノール化合物残基が、上記(I)構造、(II)構造、又は(III)構造中のラジカル重合性基を有することが好ましい。上記(I)構造、(II)構造、及び(III)構造中のラジカル重合性基は、酸素原子に結合していることが好ましい。
【0038】
(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、カルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有することが好ましい。(Aa)樹脂におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂とは、樹脂の構造単位中に以下の(P1)~(P5)からなる群より選ばれる一種類以上の構造を有する樹脂をいう。(Aa)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
(P1)多官能エポキシ化合物及び(メタ)アクリル酸に由来する構造
(P2)多官能カルボン酸及びエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造
(P3)少なくとも3つのフェノール性水酸基含有フェノール化合物及びエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造
(P4)ビスアミノフェノール化合物及びエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造
(P5)少なくとも2つのフェノール性水酸基含有多官能カルボン酸及びエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造。
【0039】
カルド系樹脂とは、樹脂の構造単位中にフルオレン構造、インデン構造、又はインダン構造を有する樹脂をいう。樹脂の構造単位中のフルオレン構造は、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、ベンゾインデン構造、ベンゾインダン構造、又はキサンテン構造など、フルオレン構造、インデン構造、又はインダン構造を一部に含む構造であっても構わない。(Aa)樹脂におけるカルド系樹脂は、多官能エポキシ化合物に由来する構造、多官能カルボン酸に由来する構造、少なくとも3つのフェノール性水酸基含有フェノール化合物に由来する構造、ビスアミノフェノール化合物に由来する構造、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基含有多官能カルボン酸に由来する構造を有し、これらの構造がフルオレン構造、インデン構造、又はインダン構造を有することが好ましく、(Aa)樹脂におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂のうち、樹脂の構造単位中にフルオレン構造、インデン構造、又はインダン構造を有する樹脂がより好ましい。
【0040】
(A)バインダー樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、さらに、(Ab)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造(以下、「イミド構造等」)からなる群より選ばれる一種類以上を有する樹脂、及び/又は、(Ac)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂を含有することが好ましい。(Ab)樹脂及び(Ac)樹脂は(Aa)樹脂とは異なる樹脂である。
【0041】
(Ab)樹脂は、(Ab1)樹脂:上記の(WA)弱酸性基を有する(Ab)樹脂、及び/又は、(Ab2)樹脂:上記の(WA)弱酸性基を有しない(Ab)樹脂を含むことが好ましく、(Ab1)樹脂を含むことがより好ましい。(WA)弱酸性基は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、フェノール性水酸基、シラノール基、又は1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基が好ましく、フェノール性水酸基がより好ましい。(Ab2)樹脂は(WA)弱酸性基とは異なる酸性基を有することが好ましく、露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基を有することが好ましい。(Ab)樹脂は露光時の感度向上の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0042】
(Ab)樹脂は狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、ポリシロキサン、マレイミド樹脂、マレイミド-スチレン樹脂、マレイミド-トリアジン樹脂、及びマレイミド-オキサジン樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(Ab)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0043】
(Ac)樹脂はフェノール性水酸基を有する。(Ac)樹脂は露光時の感度向上の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0044】
(Ac)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、フェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、フェノール基含有エポキシ樹脂、及びフェノール基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(Ac)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0045】
(A)バインダー樹脂は現像後の残渣抑制の観点から、さらに、(Ad)樹脂:(Aa)カルボキシ基を有し、かつフェノール性水酸基を有しない樹脂を含有することが好ましい。(Ad)樹脂は(Aa)樹脂とは異なる樹脂である。(Ad)樹脂は露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、カルボキシ基を有し、さらに、カルボン酸無水物基又はスルホン酸基を有することが好ましい。(Ad)樹脂は露光時の感度向上の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0046】
(Ad)樹脂は露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、カルド系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、カルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有することがより好ましい。(Ad)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0047】
(Ad)樹脂がカルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有する場合、(Ad)樹脂は樹脂の構造単位中に、上記(Aa)樹脂に記載の(I)構造、(I)構造とは異なる(II)構造、及び(III)構造を有する。一方、(Ad)樹脂は、上記の(Aa)樹脂における(1)構造、(2)構造、(3)構造、及び(4)構造を有しない。すなわちカルボキシ基を有し、上記の(Aa)樹脂における(1)構造、(2)構造、(3)構造、及び(4)構造を有しないカルド系樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は(Ad)樹脂に分類される。
【0048】
(Ad)樹脂におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂とは、樹脂の構造単位中に以下の(P1)及び/又は(P2)の構造を有する樹脂をいう。
(P1)多官能エポキシ化合物及び(メタ)アクリル酸に由来する構造
(P2)多官能カルボン酸及びエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造。
【0049】
カルド系樹脂とは、上記の(Aa)樹脂における記載の通りである。(Ad)樹脂におけるカルド系樹脂は、多官能エポキシ化合物に由来する構造又は多官能カルボン酸に由来する構造を有し、これらの構造がフルオレン構造、インデン構造、又はインダン構造を有することが好ましく、(Ad)樹脂におけるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂のうち、樹脂の構造単位中にフルオレン構造、インデン構造、又はインダン構造を有する樹脂がより好ましい。
【0050】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、“KAYARAD”(登録商標) PCR-1222H、同 CCR-1171H、同 TCR-1348H、同 ZAR-1494H、同 ZFR-1401H、同 ZCR-1798H、同 ZXR-1807H、同 ZCR-6002H、又は同 ZCR-8001H(以上、いずれも日本化薬社製)が挙げられる。カルド系樹脂としては、例えば、例えば、“ADEKA ARKLS”(登録商標) WR-301(ADEKA社製)、“OGSOL”(登録商標) CR-1030(大阪ガスケミカル社製)、又はV-259ME(新日鉄住金化学社製)が挙げられる。
【0051】
なお(Aa)樹脂、(Ab1)樹脂、(Ab2)樹脂、(Ac)樹脂、及び(Ad)樹脂は、これらの中でそれぞれが別の樹脂を構成する構造や基を有する場合は、以下の表1-1に示す分類方法によりいずれかに分類するものとする。ある樹脂が(Aa)樹脂、(Ab1)樹脂、(Ab2)樹脂、(Ac)樹脂、及び(Ad)樹脂のうち、2つ以上に該当しうる場合は、当該分類方法によりいずれの樹脂に該当するか決定する。樹脂の分類における優先順位は(Aa)樹脂>(Ab)樹脂>(Ac)樹脂>(Ad)樹脂の順とする。また(Aa)樹脂が樹脂の構造単位中にイミド構造等からなる群より選ばれる一種類以上を有する場合、当該樹脂は(Aa)樹脂と(Ab)樹脂との共重合体とする。
【0052】
【表1-1】
【0053】
(A)バインダー樹脂は各樹脂による特性向上の観点から、(Aa)樹脂を含有し、さらに、(Ab)樹脂、(Ac)樹脂、及び(Ad)樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、さらに、(Ab)樹脂及び/又は(Ac)樹脂、並びに、(Ad)樹脂を含有することがより好ましく、さらに、(Ab)樹脂、(Ac)樹脂、及び(Ad)樹脂を含有することがさらに好ましい。また(A)バインダー樹脂は、(Aa)樹脂を含有し、さらに、(Ab)樹脂、(Ac)樹脂、及び(Ad)樹脂からなる群より選ばれる二種類以上を含有することも好ましい。
【0054】
<(Aa)樹脂;特定の構造を有する樹脂>
(Aa)樹脂としては、以下の(a1)樹脂~(a16)樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、二種類以上を含有することがより好ましい。以下の(a1)樹脂、(a3)樹脂、(a5)樹脂、(a7)樹脂、(a9)樹脂、及び(a11)樹脂はカルボキシ基を有する。以下の(a2)樹脂、(a13)樹脂、及び(a16)樹脂はフェノール性水酸基を有する。以下の(a4)樹脂、(a6)樹脂、(a8)樹脂、(a10)樹脂、(a12)樹脂、(a14)樹脂、及び(a15)樹脂は、カルボキシ基及びフェノール性水酸基を有する。また以下の(a2)樹脂及び(a13)樹脂は、さらにカルボン酸無水物を反応させた場合、カルボキシ基及びフェノール性水酸基を有する。なお(φ1)化合物、(φ2)化合物、及び(φ3)化合物は以下の化合物である。
(φ1)化合物:少なくとも3つのフェノール性水酸基含有フェノール化合物
(φ2)化合物:ビスアミノフェノール化合物
(φ3)化合物:少なくとも2つのフェノール性水酸基含有多官能カルボン酸
(a1)樹脂:多官能エポキシ樹脂と、(ラジカル重合性基を有する)カルボン酸化合物とを反応させた後、カルボン酸無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、エポキシ変性樹脂。
(a2)樹脂:多官能エポキシ化合物又は多官能エポキシ樹脂と、(ラジカル重合性基を有する)カルボン酸化合物並びに(φ1)化合物、(φ2)化合物、若しくは(φ3)化合物との混合物とを反応させた樹脂。あるいは、さらにカルボン酸無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、フェノール性水酸基含有エポキシ変性樹脂。
(a3)樹脂:多官能エポキシ化合物と(ラジカル重合性基を有する)カルボン酸化合物とを反応させた後、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂。
(a4)樹脂:多官能エポキシ化合物と(ラジカル重合性基を有する)カルボン酸化合物とを反応させた後、(φ1)化合物又は(φ2)化合物を添加し、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリエステル樹脂との共重合体、又は、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリアミド酸/ポリイミドとの共重合体。
(a5)樹脂:多官能エポキシ化合物と多官能カルボン酸とを反応させた後、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂。
(a6)樹脂:多官能エポキシ化合物と、多官能カルボン酸並びに(φ1)化合物、(φ2)化合物、若しくは(φ3)化合物との混合物とを反応させた後、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有エポキシ・フェノール付加樹脂との共重合体、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有エポキシ・アミン付加樹脂との共重合体、又はポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有エポキシ・カルボン酸付加樹脂との共重合体。
(a7)樹脂:多官能カルボン酸化合物と(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物とを反応させた後、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂。
(a8)樹脂:多官能カルボン酸化合物と(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物とを反応させた後、(φ1)化合物又は(φ2)化合物を添加し、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリエステル樹脂との共重合体、又は、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリアミド酸/ポリイミドとの共重合体。
(a9)樹脂:多官能フェノール化合物又は多官能アルコール化合物と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させた後、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂。
(a10)樹脂:多官能フェノール化合物若しくは多官能アルコール化合物、並びに、(φ1)化合物若しくは(φ2)化合物との混合物と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させた後、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリエステル樹脂との共重合体、又は、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリアミド酸/ポリイミドとの共重合体。
(a11)樹脂:多官能フェノール化合物又は多官能アルコール化合物と、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物とを反応させた後、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂。
(a12)樹脂:多官能フェノール化合物又は多官能アルコール化合物と、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物とを反応させた後、(φ1)化合物又は(φ2)化合物を添加し、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリエステル樹脂との共重合体、又は、ポリエステル樹脂とフェノール性水酸基含有ポリアミド酸/ポリイミドとの共重合体。
(a13)樹脂:多官能エポキシ化合物と、(φ1)化合物、(φ2)化合物、又は(φ3)化合物とを反応させた後、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物を反応させて得られる樹脂。あるいは、さらにカルボン酸無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、フェノール性水酸基含有エポキシ・フェノール付加樹脂、フェノール性水酸基含有エポキシ・アミン付加樹脂、又はフェノール性水酸基含有エポキシ・カルボン酸付加樹脂。
(a14)樹脂:(φ1)化合物、(φ2)化合物、又は(φ3)化合物と、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物とを反応させた後、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂。すなわち、フェノール性水酸基含有エポキシ・フェノール付加樹脂とポリエステル樹脂との共重合体、フェノール性水酸基含有エポキシ・アミン付加樹脂とポリエステル樹脂との共重合体、又はフェノール性水酸基含有エポキシ・カルボン酸付加樹脂とポリエステル樹脂との共重合体。
(a15)樹脂:(φ1)化合物又は(φ2)化合物と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させた後、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物を反応させて得られる樹脂。すなわち、フェノール性水酸基含有ポリエステル樹脂、又は、フェノール性水酸基含有ポリアミド酸/ポリイミド。
(a16)樹脂:(φ1)化合物、(φ2)化合物、又は(φ3)化合物と、(ラジカル重合性基を有する)エポキシ化合物とを反応させた後、多官能エポキシ化合物を反応させて得られる樹脂。すなわち、フェノール性水酸基含有エポキシ・フェノール付加樹脂とエポキシ・アルコール付加樹脂との共重合体、フェノール性水酸基含有エポキシ・アミン付加樹脂とエポキシ・アルコール付加樹脂との共重合体、又はフェノール性水酸基含有エポキシ・カルボン酸付加樹脂とエポキシ・アルコール付加樹脂との共重合体。
【0055】
(a1)樹脂は一般式(11)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0056】
【化1】
【0057】
一般式(11)において、X11は炭素数1~6の脂肪族基を表す。W及びWは、それぞれ独立して、一般式(21)又は一般式(22)で表される基を有する、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を表す。R111は、ハロゲン原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。aは0~10の整数を表す。一般式(21)及び一般式(22)において、X12及びX13は、それぞれ独立して、直接結合又は炭素数1~10のアルキレン基を表す。R112及びR113は、それぞれ独立して、ラジカル重合性基又はフェノール性水酸基を有する基を表す。R114及びR115は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又はカルボキシ基を有する有機基を表す。一般式(21)及び一般式(22)における上記環状構造に関する例示及び好ましい記載は、後述する(I)構造及び(II)構造における記載の通りである。
【0058】
(a2)樹脂は上記一般式(11)で表される構造単位及び一般式(12)で表される基を有することが好ましい。
【0059】
【化2】
【0060】
一般式(12)において、X14及びX15は、それぞれ独立して、酸素原子、水素原子が結合した窒素原子、炭素数1~6のアルキル基が結合した窒素原子、又はYに結合した炭素原子を含むカルボニルオキシ基を表す。Yは、芳香族構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を表す。Y上のヒドロキシ基であるフェノール性水酸基は芳香族性の環状構造に結合する。R116は、水素原子又はカルボキシ基を有する有機基を表す。bは0~6の整数を表す。cは0又は1を表す。bは1~6の整数が好ましい。
【0061】
(a3)樹脂は一般式(13)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0062】
【化3】
【0063】
一般式(13)において、X16及びX17は、それぞれ独立して、直接結合又は一般式(23)若しくは一般式(24)で表される基を表す。W及びWは、それぞれ独立して、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を表す。R121及びR122は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。R123及びR124は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は上記一般式(21)若しくは上記一般式(22)で表される基を表す。a及びbは、それぞれ独立して、0~10の整数を表す。cは0又は1を表す。一般式(23)及び一般式(24)において、R125及びR126は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又はラジカル重合性基を有する有機基を表す。*及び*は、それぞれ独立して、一般式(13)中のWとの結合点又は炭素原子との結合点を表す。*及び*は、それぞれ独立して、一般式(13)中の酸素原子との結合点を表す。
【0064】
(a4)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位及び一般式(14)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0065】
【化4】
【0066】
一般式(14)において、X18及びX19は、それぞれ独立して、酸素原子、水素原子が結合した窒素原子、又は炭素数1~6のアルキル基が結合した窒素原子を表す。Yは、芳香族構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を表す。Y上のヒドロキシ基であるフェノール性水酸基は芳香族性の環状構造に結合する。Yは、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を表す。Z及びZは、それぞれ独立して、直接結合又は一般式(25)で表される基を表す。R127~R129は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシ基を有する有機基、又は上記一般式(21)若しくは上記一般式(22)で表される基を表す。dは0~6の整数を表す。dは1~6の整数が好ましい。一般式(25)において、R130は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又はラジカル重合性基を有する有機基を表す。*は、一般式(14)中のX18又はX19との結合点を表す。*は、一般式(14)中の炭素原子との結合点を表す。
【0067】
(a5)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位を有することが好ましい。(a6)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位及び一般式(15)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0068】
【化5】
【0069】
一般式(15)において、X20及びX21は、それぞれ独立して、酸素原子、水素原子が結合した窒素原子、炭素数1~6のアルキル基が結合した窒素原子、又はYに結合した炭素原子を含むカルボニルオキシ基を表す。Yは、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を表す。Yは、芳香族構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を表す。Y上のヒドロキシ基であるフェノール性水酸基は芳香族性の環状構造に結合する。Z及びZは、それぞれ独立して、直接結合又は上記一般式(25)で表される基を表す。R131~R133は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシ基を有する有機基、又は上記一般式(21)若しくは上記一般式(22)で表される基を表す。eは0~6の整数を表す。eは1~6の整数が好ましい。一般式(25)において、R130は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又はラジカル重合性基を有する有機基を表す。*は、一般式(15)中のX20又はX21との結合点を表す。*は、一般式(15)中の炭素原子との結合点を表す。
【0070】
(a7)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位を有することが好ましい。(a8)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位及び上記一般式(14)で表される構造単位を有することが好ましい。(a9)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位を有することが好ましい。(a10)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位及び上記一般式(14)で表される構造単位を有することが好ましい。(a11)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位を有することが好ましい。(a12)樹脂は上記一般式(13)で表される構造単位及び上記一般式(14)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0071】
(a13)樹脂は上記一般式(15)で表される構造単位を有することが好ましい。(a14)樹脂は上記一般式(14)で表される構造単位を有することが好ましい。(a15)樹脂は上記一般式(14)で表される構造単位を有することが好ましい。(a16)樹脂は上記一般式(15)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0072】
特定の構造を有する(Aa)樹脂において、上記の(I)構造における環状構造は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を有することが好ましい。脂環式構造は、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、又はシクロヘプタン構造を含むことが好ましい。芳香族構造は、ビフェニル構造、ベンゼン構造、ビスフェノールA構造、ビスフェノールF構造、又はビスフェノールAF構造を含むことが好ましい。縮合多環脂環式構造は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造、アダマンタン構造、又はノルボルネン構造を含むことが好ましい。縮合多環式構造は、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インデン構造、インダン構造、ベンゾインデン構造、ベンゾインダン構造、アントラセン構造、又はナフタレン構造を含むことが好ましい。ヘテロ環構造は、イソシアヌル酸構造又はトリアジン構造を含むことが好ましい。縮合多環式ヘテロ環構造は、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造、インドール構造、インドリン構造、イソインドリン構造、ベンゾインドール構造、ベンゾインドリン構造、ベンゾイソインドリン構造、フェノチアジン構造、フェノチアジンオキシド構造、キサンテン構造、インドリノン構造、又はイソインドリノン構造を含むことが好ましい。上記の(I)構造における環状構造は置換基を有しても構わない。置換基は環状構造を有しない置換基である。
【0073】
上記の(I)構造における連結基は、直接結合、エーテル結合、スルフィド結合、スルホニル基、カルボニル基、カルボン酸エステル結合、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、炭酸エステル結合、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、エーテル結合を含む炭化水素基、オキシカルボニル基及び/又はカルボニルオキシ基を含む炭化水素基、又は、アミノカルボニル基及び/又はカルボニルアミド基を含む炭化水素基が好ましい。
炭化水素基は脂肪族基が好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基はアルキレン基が好ましい。
【0074】
特定の構造を有する(Aa)樹脂において、上記の(II)構造における環状構造は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造を有することが好ましい。これらの環状構造に関する例示及び好ましい記載は、上記の(I)構造における記載の通りである。上記の(II)構造における環状構造は置換基を有しても構わない。置換基は環状構造を有しない置換基である。なお(II)構造において、上記(I)構造とは異なる(II)構造とは、(I)構造とは別に(II)構造を有することをいう。例えば、(I)構造における環状構造と(II)構造における環状構造とが、いずれも脂環式構造であっても構わない。そのような場合、(Aa)樹脂は樹脂の構造単位中に(I)構造である脂環式構造と、(II)構造である脂環式構造とを有する。
【0075】
上記の(II)構造におけるカルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基が結合した環状構造は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基が好ましい。上記の(II)構造における連結基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(I)構造における連結基に関する記載の通りである。
【0076】
特定の構造を有する(Aa)樹脂において、上記の(III)構造は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、炭化水素基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミド基、又は以下の(X)構造を含む炭化水素基が好ましい。上記の(III)構造は、エポキシ基残基、カルボキシ基残基、カルボン酸無水物基残基、フェノール性水酸基残基、又はアミノ基残基を含むことが好ましい。上記の(III)構造は置換基を有しても構わない。置換基は環状構造を有しない置換基である。
(X)構造:ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボニルオキシ基、窒素原子、カルボニルアミド基、及びラジカル重合性基が結合した酸素原子からなる群より選ばれる一種類以上。
【0077】
炭化水素基は脂肪族基が好ましい。(X)構造を含む炭化水素基中の炭化水素基も脂肪族基が好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基はアルキレン基が好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0078】
<(Aa)樹脂;好適な特定の構造を有する樹脂>
特定の構造を有する(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、上記(I)構造、(II)構造、及び(III)構造からなる群より選ばれる1つ以上の構造がアルコキシシリル基及び/又はヒドロキシシリル基を有することが好ましい。このような場合、(Aa)樹脂は上記の(1)構造を有することが好ましい。アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基は、(Aa)樹脂中の(I)構造、(II)構造、又は(III)構造が有する基と、オルガノシラン化合物などとを反応させることで導入できる。オルガノシラン化合物が含む置換基中の基を反応させてもよく、オルガノシラン化合物をヒドロシリル化によって反応させても構わない。
【0079】
アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基は、脂肪族基、ラジカル重合性基、架橋性基、窒素原子、又は硫黄原子を含む置換基を有することも好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基は、アルキル基又はアルキレン基が好ましい。ラジカル重合性基、架橋性基、窒素原子、又は硫黄原子を含む置換基は、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、ウレア結合、メルカプト基、スルフィド結合、又はチオウレア結合を含む置換基が好ましい。なおアルコキシシリル基又はヒドロキシシリル基が置換基を有するとは、アルコキシシリル基又はヒドロキシシリル基に置換基が結合していることをいう。アルコキシシリル基中のアルコキシ基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
【0080】
上記のような(Aa)樹脂は上記(I)構造中の縮合多環式構造が、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、インデン構造、インダン構造、ベンゾインデン構造、ベンゾインダン構造、アントラセン構造、又はナフタレン構造を含むことが好ましい。また上記(I)構造中の縮合多環式ヘテロ環構造が、インドリン構造、イソインドリン構造、キサンテン構造、インドリノン構造、又はイソインドリノン構造を含むことが好ましい。
【0081】
特定の構造を有する(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、アルコキシシリル基が硫黄原子を含む置換基を有する、及び/又は、ヒドロキシシリル基が硫黄原子を含む置換基を有することが好ましい。このような場合、(Aa)樹脂は上記の(1)構造を有することが好ましい。アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基における硫黄原子を含む置換基は、(Aa)樹脂中の(I)構造、(II)構造、又は(III)構造が有するエチレン性不飽和二重結合基又はラジカル重合性基に対して、オルガノシラン化合物が含む置換基中の硫黄原子を有する基が反応した残基が好ましく、オルガノシラン化合物が含む置換基中のメルカプト基が反応した残基がより好ましい。すなわち、アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基における硫黄原子を含む置換基は、ラジカル重合性基に由来する構造に結合していることが好ましく、エチレン性不飽和二重結合基に由来する構造に結合していることがより好ましい。
【0082】
アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基における硫黄原子を含む置換基は、メルカプト基を含む置換基、スルフィド結合を含む置換基、又はチオウレア結合を含む置換基が好ましく、スルフィド結合を含む置換基がより好ましい。アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基における硫黄原子を含む置換基は脂肪族基を有することが好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基は、アルキル基又はアルキレン基が好ましい。
【0083】
特定の構造を有する(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、上記(I)構造が脂環式構造を有し、上記(II)構造が、含フッ素置換基を含む芳香族構造、又は、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、連結基が、含フッ素置換基を含む構造が結合した連結基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合であることが好ましい。含フッ素置換基を含む構造が結合した連結基は、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基が好ましい。このような場合、(Aa)樹脂は上記の(2)構造を有することが好ましい。
【0084】
上記の(I)構造における脂環式構造は、炭素数4~10のシクロアルカン構造を含むことが好ましく、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、又はシクロヘプタン構造を含むことがより好ましい。上記の(I)構造における脂環式構造は、シクロヘキサン構造、カルボニルオキシアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造、又はシロキサン構造を含むアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造を含むことがさらに好ましい。
【0085】
上記の(II)構造における芳香族構造は、炭素数6~15のアリール基を含むことが好ましく、ベンゼン構造、ビフェニル構造、又はナフタレン構造を含むことがより好ましい。上記の(II)構造における含フッ素置換基は、炭素数1~6のフッ化アルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基、トリフルオロプロピル基、又はテトラフルオロプロピル基がより好ましい。上記の(II)構造における連結基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(I)構造における連結基に関する記載の通りである。炭化水素基は脂肪族基が好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基はアルキレン基が好ましい。
【0086】
特定の構造を有する(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、上記(I)構造中の脂環式構造が、シクロヘキサン構造、カルボニルオキシアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造、又はシロキサン構造を含むアルキレン基で連結された2つのシクロヘキサン構造を含み、
上記(II)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有することが好ましい。炭化水素基は脂肪族基が好ましい。このような場合、(Aa)樹脂は上記の(2)構造を有することが好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基はアルキレン基が好ましい。
【0087】
特定の構造を有する(Aa)樹脂は、上記(I)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、連結基が、含フッ素置換基を含む構造が結合した連結基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有することが好ましい。上記(II)構造は、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、連結基が、含フッ素置換基を含む構造が結合した連結基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有することが好ましい。上記(I)構造及び上記(II)構造のうち少なくとも1つは、フッ素置換基を含む構造が結合した連結基を有することが好ましい。このような場合、(Aa)樹脂は上記の(3)構造を有することが好ましい。上記の(II)構造における連結基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(I)構造における連結基に関する記載の通りである。
【0088】
特定の構造を有する(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、上記(I)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有し、
上記(II)構造が、少なくとも2つの芳香族構造とそれらの連結基を有し、連結基が、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基、炭化水素基、エーテル結合、又は直接結合を有し、
該(I)構造及び該(II)構造のうち少なくとも1つが、トリフルオロメチル基を含む構造が結合した炭化水素基を有することが好ましい。このような場合、(Aa)樹脂は上記の(3)構造を有することが好ましい。
【0089】
上記の(I)構造における芳香族構造は、炭素数6~15のアリール基を含むことが好ましく、ベンゼン構造、ビフェニル構造、又はナフタレン構造を含むことがより好ましい。炭化水素基は脂肪族基が好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基はアルキレン基が好ましい。
【0090】
上記の(II)構造における芳香族構造は、炭素数6~15のアリール基を含むことが好ましく、ベンゼン構造、ビフェニル構造、又はナフタレン構造を含むことがより好ましい。炭化水素基は脂肪族基が好ましい。脂肪族基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。脂肪族基はアルキレン基が好ましい。
【0091】
特定の構造を有する(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、上記(I)構造が縮合多環脂環式構造を有し、上記(I)構造中の縮合多環脂環式構造が、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造、アダマンタン構造、又はノルボルネン構造を含むことが好ましく、アダマンタン構造を含むことがより好ましい。上記(I)構造中の縮合多環脂環式構造がアダマンタン構造を含む場合、(Aa)樹脂は上記の(4)構造を有することが好ましい。
【0092】
(Aa)樹脂が、上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造を有する場合、特定の構造を有する(Aa)樹脂は露光時の感度向上、現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、上記(III)構造が、炭化水素基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミド基、又は以下の(X)構造を含む炭化水素基であって、
(X)構造:ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボニルオキシ基、窒素原子、カルボニルアミド基、及びラジカル重合性基が結合した酸素原子からなる群より選ばれる一種類以上
上記(I)構造が、(Ia)構造:(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、であって、
(Ia)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基(以下、「複数のフェノール性水酸基を有する残基等」)であることが好ましい。
【0093】
上記の(III)構造に関する例示及び好ましい記載は、上述した通りである。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0094】
(Aa)樹脂が、上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造を有する場合、特定の構造を有する(Aa)樹脂は露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、上記(II)構造が、(IIa)構造:(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した環状構造、又は、(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基であって、(IIa)構造がテトラカルボン酸二無水物残基であることが好ましい。
【0095】
(Aa)樹脂が、上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造を有さず、かつフェノール性水酸基を有する場合、特定の構造を有する(Aa)樹脂は露光時の感度向上、現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、上記(III)構造が、炭化水素基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミド基、又は以下の(X)構造を含む炭化水素基であって、
(X)構造:ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボニルオキシ基、窒素原子、カルボニルアミド基、及びラジカル重合性基が結合した酸素原子からなる群より選ばれる一種類以上
以下の条件(a)及び/又は条件(b)を満たすことが好ましい。
(a)上記(I)構造が、(Ia)構造:(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基である
(b)上記(II)構造が、(IIb)構造:(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した環状構造、又は、(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合し、かつ、フェノール性水酸基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基である。
【0096】
(Aa)樹脂が、上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造を有さず、かつフェノール性水酸基を有する場合、特定の構造を有する(Aa)樹脂は露光時の感度向上、現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、上記(Ia)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基(以下、「複数のフェノール性水酸基を有する残基等」)であって、
上記(IIb)構造が、少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物残基、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン残基、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸残基(以下、「複数のフェノール性水酸基を有する残基等」)であることが好ましい。
【0097】
上記の(III)構造に関する例示及び好ましい記載は、上述した通りである。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0098】
(Aa)樹脂が、上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造を有さず、かつフェノール性水酸基を有する場合、露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、上記条件(a)を満たし、上記(II)構造が、(IIa)構造:上記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した環状構造、又は、上記(III)構造中のカルボニル基が結合し、かつ、カルボキシ基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基であって、(IIa)構造がテトラカルボン酸二無水物残基であることが好ましい。
【0099】
(Aa)樹脂が、上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造を有さず、かつフェノール性水酸基を有する場合、狭マスクバイアス抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、上記条件(b)を満たし、上記(I)構造が、(Ib)構造:上記(III)構造中のエーテル結合を含む炭化水素基における酸素原子又はカルボニル基が結合した環状構造、又は、上記(III)構造中のエーテル結合を含む炭化水素基における酸素原子又はカルボニル基が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、であることが好ましく、上記(Ib)構造が、上記(III)構造中のエーテル結合を含む炭化水素基における酸素原子が結合した環状構造、又は、上記(III)構造中のエーテル結合を含む炭化水素基における酸素原子が結合した少なくとも2つの環状構造とそれらの連結基、がより好ましい。
【0100】
また上記(Ib)構造は多官能エポキシ化合物残基であることが好ましい。上記(III)構造中のエーテル結合を含む炭化水素基における酸素原子は、エポキシ基残基の酸素原子が好ましい。上記(III)構造中のカルボニル基は、カルボン酸エステル結合のカルボニル基又はカルボニルアミド基のカルボニル基が好ましい。
【0101】
なお(Aa)樹脂が、上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造を有さず、かつフェノール性水酸基を有する場合、フェノール性水酸基を有する点で(Ad)樹脂とは異なる。
【0102】
(Aa)樹脂中の上記の(1)構造、(2)構造、(3)構造、又は(4)構造の有無に関わらず、上記の(Ia)構造において、(III)構造中の酸素原子若しくは窒素原子が結合するとは、上記の少なくとも3つのフェノール性水酸基を有する化合物、少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのアミノ基を有するアミン、又は少なくとも2つのフェノール性水酸基と少なくとも2つのカルボキシ基を有するカルボン酸における、フェノール性水酸基又はアミノ基が反応した後の構造が(III)構造の一部を構成しており、当該フェノール性水酸基又はアミノ基が反応した後の酸素原子若しくは窒素原子が(III)構造として(Ia)構造に結合することをいう。
【0103】
同様に、上記の(IIa)構造において、(III)構造中のカルボニル基が結合するとは、上記のテトラカルボン酸二無水物における酸無水物基が反応した後の構造が(III)構造の一部を構成しており、当該酸無水物基が反応した後のカルボニル基が(III)構造として(Ia)構造に結合することをいう。
【0104】
(Aa)樹脂は現像後の残渣抑制及び保管安定性向上の観点から、樹脂の末端にモノカルボン酸、ジカルボン酸無水物、又はトリカルボン酸無水物で封止された構造を有することが好ましい。(Aa)樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」)で測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量(以下、「Mw」)は発光素子の信頼性向上の観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましい。一方、Mwは現像後の残渣抑制及びパターン形状の低テーパー化の観点から、50,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。
【0105】
(A)バインダー樹脂の合計100質量%に占める、(Aa)樹脂の含有比率の合計は各樹脂による特性向上の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、(Aa)樹脂の含有比率の合計は各樹脂による特性向上の観点から、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。また(Ab)樹脂の含有比率の合計は各樹脂による特性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、(Ab)樹脂の含有比率の合計は各樹脂による特性向上の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。また(Ac)樹脂の含有比率の合計の好ましい範囲も、それぞれ上記の(Ab)樹脂の含有比率の合計と同様である。また(Ad)樹脂の含有比率の合計の好ましい範囲も、それぞれ上記の(Ab)樹脂の含有比率の合計と同様である。
【0106】
本発明の感光性組成物の全固形分に占める(A)バインダー樹脂の含有比率は各樹脂による特性向上の観点から、10質量%以上が好ましい。一方、(A)バインダー樹脂の含有比率は各樹脂による特性向上の観点から、75質量%以下が好ましい。なお組成物の全固形分とは、組成物中の溶剤を除く全ての成分の質量の合計をいう。また固形分濃度は、組成物1gを150℃で30分間加熱して蒸発乾固させ、加熱後に残存した質量を測定し、加熱前後の質量から算出される固形分濃度として算出できる。
【0107】
<(B)ラジカル重合性化合物>
本発明の感光性組成物は、(B)ラジカル重合性化合物(以下、「(B)化合物」)及び/又は(F)架橋剤を含有する。(B)化合物とはラジカル重合性基を有する化合物をいう。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。ラジカル重合性基はラジカル重合促進、露光時の感度向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。(B)化合物が有するラジカル重合性基数は露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、4個以上がさらに好ましい。一方、ラジカル重合性基数は発光素子の信頼性向上の観点から、12個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましく、6個以下が特に好ましい。
【0108】
本発明の感光性組成物が(A)バインダー樹脂及び(B)化合物を含有する場合、(A)バインダー樹脂の含有量は(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、25質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましい。一方、(A)バインダー樹脂の含有量は露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、85質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、75質量部以下がさらに好ましい。また(B)化合物の含有量は(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、上記の特性向上の観点から、15質量部以上が好ましい。一方、(B)化合物の含有量は上記の特性向上の観点から、75質量部以下が好ましい。
【0109】
<(B1)化合物~(B5)化合物>
本発明の感光性組成物は露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、以下の条件(δ)、条件(ε)、及び条件(ζ)のうち少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(δ)(B)化合物が、以下の(B1)化合物及び(B2)化合物を含有する
(ε)(B)化合物が、以下の(B3)化合物及び(B4)化合物を含有する
(ζ)(B)化合物が、以下の(B1)化合物又は(B2)化合物を含有し、さらに、以下の(B3)化合物又は(B4)化合物を含有する
(B1)化合物:(I-b1)構造:縮合多環脂環式構造、脂環式構造、又はヘテロ環構造を含む構造を有し、さらに少なくとも2つのラジカル重合性基を有する化合物
(B2)化合物:(I-b2)構造:縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を含む構造及び(II-b2)構造:脂肪族構造を含む構造を有し、さらに少なくとも2つのラジカル重合性基を有する化合物
(B3)化合物:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、さらに(I-b3)構造:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基間を最小原子数4~10個で連結し、かつ、脂肪族構造を含む構造を有する化合物
(B4)化合物:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、さらに(I-b4)構造:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基間を最小原子数11~45個で連結し、かつ、脂肪族構造を含む構造を有する化合物。
【0110】
(B1)化合物において(I-b1)構造は発光素子の信頼性向上の観点から、縮合多環脂環式構造が好ましく、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造又はアダマンタン構造がより好ましい。また上記の(I-b1)構造は発光素子の信頼性向上の観点から、ヘテロ環構造が好ましく、含窒素環状構造がより好ましく、窒素原子を少なくとも2つ有する環状構造がさらに好ましく、イソシアヌル酸構造又はトリアジン構造が特に好ましい。
【0111】
(B1)化合物は、さらに(II-b1)構造:脂肪族構造を含む構造を有することが好ましい。(B1)化合物、(B2)化合物、(B3)化合物、及び(B4)化合物における脂肪族構造は、それぞれ独立して、露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、アルキレン基、オキシアルキレン基、ヒドロキシ基を含むアルキレン基、ヒドロキシ基を含むオキシアルキレン基、アルキレンカルボニル基、オキシアルキレンカルボニル基、又はアミノアルキレンカルボニル基が好ましい。なお(B3)化合物及び(B4)化合物は、上記の(B1)化合物及び(B2)化合物とは異なる化合物であり、縮合多環脂環式構造、脂環式構造、又はヘテロ環構造を含む構造と、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を含む構造とをいずれも有しない。
【0112】
(B2)化合物の(I-b2)構造における縮合多環式構造は狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、フルオレン構造、インダン構造、又はナフタレン構造が好ましい。また上記の(I-b2)構造における縮合多環式ヘテロ環構造は発光素子の信頼性向上の観点から、キサンテン構造、インドリノン構造、又はイソインドリノン構造が好ましい。また上記の(I-b2)構造における芳香族構造は狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、ベンゼン構造又はビフェニル構造が好ましい。
【0113】
(B3)化合物又は(B4)化合物が2つの(メタ)アクリロイル基を有する場合、上記の(I-b3)構造又は(I-b4)構造における最小原子数とは、2つの(メタ)アクリロイル基のカルボニル炭素間における炭素原子及びヘテロ原子を含む最小原子数をいう。なおカルボニル炭素間における炭素原子及びヘテロ原子に結合する原子は、最小原子数の計算には含めない。例えば、カルボニル炭素間に酸素原子、プロピレン基、及び酸素原子が存在する場合、最小原子数は5個である。また(B3)化合物又は(B4)化合物が3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する場合、上記の最小原子数とは、全ての(メタ)アクリロイル基のカルボニル炭素を連結する炭素原子及びヘテロ原子を含む最小原子数をいう。同様に、カルボニル炭素を連結する炭素原子及びヘテロ原子に結合する原子は、最小原子数の計算には含めない。(B3)化合物は発光素子の信頼性向上の観点から、上記の(I-b3)構造における最小原子数を上記範囲とすることが好ましい。(B4)化合物は露光時の感度向上の観点から、上記の(I-b4)構造における最小原子数を上記範囲とすることが好ましい。
【0114】
(B)化合物は狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、さらに(B5)化合物:縮合多環式構造又は縮合多環式ヘテロ環構造を含む構造を有し、さらに少なくとも2つのラジカル重合性基を有する化合物を含有することも好ましい。なお(B5)化合物は上記の(B2)化合物とは異なる化合物であり、上記の(II-b2)構造を有しない。(B5)化合物において上記の縮合多環式構造は、フルオレン構造、インダン構造、又はナフタレン構造が好ましい。また(B5)化合物において上記の縮合多環式ヘテロ環構造は、キサンテン構造、インドリノン構造、又はイソインドリノン構造が好ましい。
【0115】
(B)化合物は、上記の(B1)化合物、(B2)化合物、(B3)化合物、(B4)化合物、及び(B5)化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有することも好ましい。これらの(B)化合物の好ましい含有量も、それぞれ上記と同様である。
【0116】
<(C)感光剤>
本発明の感光性組成物は(C)感光剤を含有する。(C)感光剤とは、露光によって結合開裂、反応、又は構造変化して別の化合物を発生させることで、組成物にポジ型又はネガ型の感光性を付与する化合物をいう。(C)感光剤は、(C1)光重合開始剤(以下、「(C1)化合物」)、(C2)ナフトキノンジアジド化合物(以下、「(C2)化合物」)、(C3)光酸発生剤(以下、「(C3)化合物」)、及び(C4)光塩基発生剤(以下、「(C4)化合物」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。組成物にネガ型の感光性を付与する場合、(C1)化合物及び/又は(C3)化合物を含有することが好ましく、さらに、(C2)化合物又は(C4)化合物を含有することも好ましい。組成物にポジ型の感光性を付与する場合、(C2)化合物及び/又は(C3)化合物を含有することが好ましく、さらに、(C1)化合物又は(C4)化合物を含有することも好ましい。(C2)化合物とは、露光によって構造変化してインデンカルボン酸及び/又はスルホインデンカルボン酸を発生する化合物をいう。(C3)化合物とは、露光によって結合開裂及び/又は反応して酸を発生する化合物をいう。(C4)化合物とは、露光によって結合開裂及び/又は反応して塩基を発生する化合物をいう。
【0117】
(C)感光剤の含有量は(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、露光時の感度向上の観点から、1.0質量部以上が好ましい。一方、(C)感光剤の含有量は現像後の残渣抑制の観点から、30質量部以下が好ましい。
【0118】
<(C1)光重合開始剤>
(C1)化合物とは、露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物をいう。(C1)化合物を含有させることがネガ型のパターン形成に好適である。露光時、(C1)化合物から発生するラジカルが僅かな量であっても上記の(B)化合物などのラジカル重合が連鎖的に進行するため、露光時の感度向上の効果が顕著となる。
【0119】
(C1)化合物は、ベンジルケタール系化合物、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物、アクリジン系化合物、チタノセン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、芳香族ケトエステル系化合物、又は安息香酸エステル系化合物が好ましく、露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、又はオキシムエステル系化合物がより好ましく、オキシムエステル系化合物がさらに好ましい。
【0120】
上記のα-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、及びオキシムエステル系化合物は、加熱時のラジカル発生や、ヒドロキシ基、アミノ基、イミダゾール構造、ホスフィンオキシド構造、又はオキシムエステル構造による相互作用により、硬化物の架橋度向上や樹脂の閉環反応促進の効果が得られるため、発光素子の信頼性向上の効果が顕著となる。
【0121】
<(C1-1)オキシムエステル系化合物>
(C1)化合物は(C1-1)オキシムエステル系化合物(以下、「(C1-1)化合物」)を含有することが好ましい。(C1-1)化合物とは、分子中に露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する構造として、オキシムエステル構造を有する化合物をいう。(C1-1)化合物を含有することで、露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の効果が顕著となる。
【0122】
(C1-1)化合物は発光素子の信頼性向上の観点から、(Ca)構造:縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、ジアリールスルフィド構造、又はベンゼン構造に、少なくとも1つのオキシムエステル構造又は少なくとも1つのオキシムエステルカルボニル構造が結合した構造を有することが好ましい。
【0123】
(C1-1)化合物は露光時の感度向上の観点から、(Cb)構造:ニトロ基、ハロゲン原子で置換された基、ナフチルカルボニル構造、トリメチルベンゾイル構造、チオフェニルカルボニル構造、フリルカルボニル構造、少なくとも2つのオキシムエステル構造、及び少なくとも2つのオキシムエステルカルボニル構造が結合した構造、からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましい。
【0124】
(C1-1)化合物は露光時の感度向上、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性向上、及び発光素子の信頼性向上の観点から、(Ca)構造及び(Cb)構造を有することがより好ましく、(Ca)構造中の縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、ジアリールスルフィド構造、又はベンゼン構造に、(Cb)構造が結合していることがさらに好ましい。
【0125】
上記の(Ca)構造における縮合多環式ヘテロ環構造は現像後の残渣抑制の観点から、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造、ベンゾカルバゾール構造、インドール構造、インドリン構造、ベンゾインドール構造、ベンゾインドリン構造、フェノチアジン構造、又はフェノチアジンオキシド構造が好ましい。上記の(Ca)構造における縮合多環式構造は現像後の残渣抑制の観点から、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インデン構造、インダン構造、ベンゾインデン構造、又はベンゾインダン構造が好ましい。上記の(Ca)構造におけるジアリールスルフィド構造は現像後の残渣抑制の観点から、ジフェニルスルフィド構造、ナフチルフェニルスルフィド構造、又はジナフチルスルフィド構造が好ましい。
【0126】
上記のオキシムエステル構造はアシル基を有することが好ましい。上記のオキシムエステルカルボニル構造中のオキシムエステル骨格もアシル基を有することが好ましい。アシル基は露光時の感度向上の観点から、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を含むアシル基が好ましく、アセチル基又はプロパノイル基がより好ましい。一方、アシル基は現像後の残渣抑制の観点から、炭素数6~10のアリール基を含むアシル基が好ましく、ベンゾイル基がより好ましい。
【0127】
(C1-1)化合物は露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、ハロゲン原子で置換された基を有することが好ましく、フッ素原子で置換された基を有することがより好ましい。ハロゲン原子で置換された基は、トリフルオロメチル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、フルオロシクロペンチル基、フルオロフェニル基、又はペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0128】
(C1-1)化合物はフォトブリーチング性を有する観点から、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インドール構造、ベンゾインドール構造、フェノチアジン構造、フェノチアジンオキシド構造、又はジフェニルスルフィド構造を有することが好ましく、縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、ジフェニルスルフィド構造、又はベンゼン構造に、少なくとも1つのオキシムエステルカルボニル構造が結合した構造を有することも好ましい。上記の(Ib)構造はフォトブリーチング性を有する観点から、上記の(Ia)構造に結合していることが好ましい。(C1-1)化合物がフォトブリーチング性を有することで、露光時の感度向上、現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性向上の効果が顕著となる。なおフォトブリーチング性とは、露光によって結合開裂及び/又は反応することで、紫外領域の波長(例えば、400nm以下)の吸光度及び/又は可視光線の波長(380~780nm)の吸光度が低下することをいう。
【0129】
上記の(C1-1)化合物は、加熱時のラジカル発生やオキシムエステル構造による相互作用により、硬化物の架橋度向上や樹脂の閉環反応促進の効果が得られるため、発光素子の信頼性向上の効果が顕著となる。
【0130】
<(D)着色剤>
本発明の感光性組成物は、さらに(D)着色剤を含有することも好ましい。(D)着色剤とは、可視光線の波長の光を吸収することで着色させる化合物をいう。(D)着色剤は顔料又は染料が好ましい。(D)着色剤は外光反射抑制の観点から、黒色剤又は二色以上の着色剤混合物を含有することが好ましい。黒色剤は有機黒色顔料及び/又は無機黒色顔料を含有することが好ましい。(D)着色剤における黒色とは、国際公開第2019/087985号の段落[0284]~段落[0285]に記載の通りである。
【0131】
本発明の感光性組成物の全固形分に占める(D)着色剤の含有比率は外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、(D)着色剤の含有比率は露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0132】
本発明の感光性組成物は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の観点から、有機黒色顔料を含有し、有機黒色顔料が、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、及びアゾメチン系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、ベンゾフラノン系黒色顔料が、ベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、ペリレン系黒色顔料が、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、アゾメチン系黒色顔料が、アゾメチン構造及びカルバゾール構造を有する化合物又はその塩を含むことがより好ましい。上記の有機黒色顔料は紫外領域の波長の透過率が高いため、露光時の感度向上の効果が顕著となる。
【0133】
有機黒色顔料は、アントラキノン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、又はカーボンブラックも好ましい。カーボンブラックは、樹脂被覆、染料被覆、酸化処理、イオン性基を有する有機基で表面修飾、又はスルホン酸基で表面処理されていることが好ましい。
【0134】
二色以上の着色剤混合物は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性の観点から、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有することが好ましく、二色以上が、青色及び/又は紫色を含み、かつ、赤色及び橙色を含み、着色顔料が、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、イミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、ピランスロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インダントロン系顔料、又はジオキサジン系顔料であって、着色染料が、スクアリリウム系染料、キサンテン系染料、トリアリールメタン系染料、又はフタロシアニン系染料であることがより好ましい。
【0135】
顔料の平均一次粒子径は素子の信頼性向上の観点から、20nm以上が好ましい。一方、顔料の平均一次粒子径は外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、150nm以下が好ましい。
【0136】
無機黒色顔料は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、及びハーフトーン特性の観点から、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、若しくはタンタルの窒化物、炭化物、及び酸窒化物(以下、「特定の無機黒色顔料」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、さらに露光時の感度向上の観点から、ジルコニウムの窒化物、炭化物、及び酸窒化物からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましい。ジルコニウムの窒化物、炭化物、及び酸窒化物は紫外領域の波長の透過率が高いため、露光時の感度向上の効果が顕著となる。
【0137】
特定の無機黒色顔料は、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、又はタンタルを主成分の元素に含むことが好ましい。なお主成分の元素とは、構成元素において質量を基準として最も多く含まれる元素をいう。特定の無機黒色顔料は外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、主成分の元素とは異なる元素を含むことが好ましく、B、Al、Si、Mn、Co、Ni、Fe、Cu、Zn、又はAgを含むことがより好ましい。
【0138】
特定の無機黒色顔料に含まれる窒化ジルコニウム粒子などの各化合物粒子は、CuKα線をX線源としたX線回折スペクトルにおける(111)面に由来するピークの半値幅から結晶子サイズを計算できる。結晶子サイズは外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、5.0nm以上が好ましい。一方、結晶子サイズは露光時の感度向上及び外光反射抑制の観点から、60nm以下が好ましい。なお粒子粉体の結晶子サイズ、分散液中の粒子の結晶子サイズ、及び膜中の粒子の結晶子サイズは、国際公開第2021/182499号の段落[0172]~段落[0179]に記載の各方法に基づき、求めることができる。
【0139】
本発明の感光性組成物は、顔料が被覆層を有することも好ましい。被覆層とは、顔料表面を被覆する層をいい、例えば、シランカップリング剤による表面処理又は樹脂による被覆処理などで形成される層が挙げられる。顔料が被覆層を有することで、現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の効果が顕著となる。被覆層は、シリカ被覆層、金属酸化物被覆層、及び金属水酸化物被覆層からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましい。
【0140】
<(E)分散剤>
本発明の感光性組成物は、さらに(E)分散剤を含有することも好ましい。(E)分散剤とは、顔料表面と相互作用する構造と、顔料同士の接近を阻害する構造とを有する化合物をいう。(E)分散剤は顔料の分散安定性向上の観点から、塩基性基、酸性基、又はそれらの塩構造を有することが好ましく、塩基性基又はその塩構造を有することがより好ましい。
【0141】
<(F)架橋剤>
本発明の感光性組成物は、(B)化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する。(F)架橋剤とは、樹脂などと反応可能な架橋性基、カチオン重合性基、又はアニオン重合性基を有する化合物をいう。(F)架橋剤は露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシ基、オキセタニル基、及びブロックイソシアネート基(以下、「特定の架橋性基」)からなる群より選ばれる一種類以上の基を有することが好ましい。アルコキシアルキル基はアルコキシメチル基が好ましく、メトキシメチル基がより好ましい。ヒドロキシアルキル基はメチロール基が好ましい。(F)架橋剤が有する特定の架橋性基数は露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、4個以上がさらに好ましく、6個以上が特に好ましい。一方、特定の架橋性基数は発光素子の信頼性向上の観点から、12個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましい。
【0142】
(F)架橋剤の含有量は(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、露光時の感度向上及び発光素子の信頼性向上の観点から、1.0質量部以上が好ましい。一方、(F)架橋剤の含有量は現像後の残渣抑制及び発光素子の信頼性向上の観点から、30質量部以下が好ましい。
【0143】
(F)架橋剤は現像後の残渣抑制及び発光素子の信頼性向上の観点から、(F1)化合物:少なくとも2つのフェノール性水酸基、及び、少なくとも2つの特定の架橋性基を有する化合物及び/又は(F2)化合物:ヘテロ環構造を含む構造、及び、少なくとも2つの特定の架橋性基を有する化合物を含有することが好ましい。これらの(F)架橋剤の好ましい含有量も、それぞれ上記と同様である。
【0144】
(F1)化合物は発光素子の信頼性向上の観点から、1つの芳香族構造に、フェノール性水酸基及び特定の架橋性基が結合した構造、を少なくとも2つ有することが好ましく、1つの芳香族構造に、フェノール性水酸基及び少なくとも2つの特定の架橋性基が結合した構造、を少なくとも2つ有することがより好ましい。(F2)化合物におけるヘテロ環構造は発光素子の信頼性向上の観点から、含窒素環状構造が好ましく、窒素原子を少なくとも2つ有する環状構造がより好ましく、イソシアヌル酸構造、トリアジン構造、グリコールウリル構造、イミダゾリドン構造、ピラゾール構造、イミダゾール構造、トリアゾール構造、テトラゾール構造、又はプリン構造がさらに好ましい。(F2)化合物におけるヘテロ環構造が有する窒素原子数は、1個以上が好ましく、2個以上がより好ましく、3個以上がさらに好ましい。一方、窒素原子数は、6個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。
【0145】
<塩素元素、臭素元素、及び硫黄元素の含有量>
本発明の感光性組成物は、さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(2)の条件を満たす。
(2)感光性組成物の全固形分に占める塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、感光性組成物の全固形分に占める硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【0146】
塩素元素を含む成分及び臭素元素を含む成分は、塩化アルキル化合物、塩化シクロアルキル化合物、塩化アリール化合物、臭化アルキル化合物、臭化シクロアルキル化合物、又は臭化アリール化合物が好ましい。硫黄元素を含む成分は、チオール化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物、スルトン化合物、又はチオフェン化合物が好ましい。
【0147】
本発明の感光性組成物は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の観点から、塩素元素を含むイオン、臭素元素を含むイオン、及び硫黄元素を含むイオンからなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ上記条件(2)が下記条件(2I)であって、下記条件(2I)を満たすことがより好ましい。
(2I)感光性組成物の全固形分に占める、塩素元素を含むイオン中の塩素元素及び臭素元素を含むイオン中の臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、感光性組成物の全固形分に占める、硫黄元素を含むイオン中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【0148】
塩素元素を含むイオン及び臭素元素を含むイオンは、塩化物イオン又は臭化物イオンが好ましい。硫黄元素を含むイオンは、硫化物イオン、硫化水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、又は亜硫酸イオンが好ましい。
【0149】
感光性組成物の全固形分に占める、塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の観点から、0.030質量ppm以上が好ましく、0.050質量ppm以上がより好ましく、0.070質量ppm以上がさらに好ましく、0.10質量ppm以上が特に好ましい。一方、塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の観点から、300質量ppm以下が好ましく、200質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。さらに、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5.0質量ppm以下がさらにより好ましく、3.0質量ppm以下が特に好ましく、1.0質量ppm以下が最も好ましい。
【0150】
本発明の感光性組成物は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の観点から、上記の特定の構造を有する(Aa)樹脂の合計100,000質量部に対する塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.0040質量部以上、かつ200質量部以下、及び/又は、上記の特定の構造を有する(Aa)樹脂の合計100,000質量部に対する硫黄元素の含有量が0.0040質量部以上、かつ200質量部以下であることが好ましい。
【0151】
上記の特定の構造を有する(Aa)樹脂の合計100,000質量部に対する、塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の観点から、0.0080質量部以上が好ましく、0.012質量部以上がより好ましく、0.020質量部以上がさらに好ましく、0.028質量部以上がさらにより好ましく、0.040質量部以上が特に好ましい。一方、塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は現像後の残渣抑制、狭マスクバイアス抑制、ハーフトーン特性、及び発光素子の信頼性向上の観点から、150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましく、40質量部以下が特に好ましい。さらに、20質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、4.0質量部以下がさらに好ましく、2.0質量部以下がさらにより好ましく、1.2質量部以下が特に好ましく、0.40質量部以下が最も好ましい。
【0152】
<特定の芳香族化合物の含有量>
本発明の感光性組成物は現像後の残渣抑制及び発光素子の信頼性向上の観点から、さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレン(以下、「特定の芳香族化合物」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(1)の条件を満たすことが好ましい。
(1)感光性組成物中に占めるベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンの含有量の合計が0.010質量ppm以上、1,000質量ppm以下。
【0153】
感光性組成物中に占める特定の芳香族化合物の含有量の合計は現像後の残渣抑制及び発光素子の信頼性向上の観点から、0.030質量ppm以上が好ましく、0.050質量ppm以上がより好ましく、0.070質量ppm以上がさらに好ましく、0.10質量ppm以上が特に好ましい。一方、特定の芳香族化合物の含有量の合計は現像後の残渣抑制及び発光素子の信頼性向上の観点から、500質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。さらに、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5.0質量ppm以下がさらにより好ましく、3.0質量ppm以下が特に好ましく、1.0質量ppm以下が最も好ましい。
【0154】
上記の特定の芳香族化合物を微量含有させることで、感光性組成物のパターン形成時に開口部表面が表面改質されるため、配線表面への残渣付着防止により、現像後の残渣抑制の効果が顕著となる。また特定の芳香族化合物が、硬化物中における分極構造や電荷バランスの制御に寄与するため、発光素子の信頼性が向上すると推定される。
【0155】
本発明の感光性組成物がネガ型の感光性を有する場合、現像後の残渣抑制の観点から、上記条件(1)を満たすことが好ましい。そのような場合、本発明の感光性組成物は上記の(C1)光重合開始剤及び(B)化合物を含有することがより好ましい。上記の特定の芳香族化合物は、芳香環上のπ電子により、活性ラジカルやカチオン重合又はアニオン重合における活性種と相互作用して安定化することで、現像後の残渣抑制の効果が顕著となる。特に、特定の芳香族化合物は、上記の(C1)光重合開始剤及び(B)化合物由来の活性ラジカルを捕捉することで、露光時のラジカル重合制御による現像後の残渣抑制の効果が顕著となる。
【0156】
<本発明の感光性組成物被膜及び感光性組成物フィルム>
本発明の感光性組成物被膜は、本発明の感光性組成物を成膜した、半硬化状態(Bステージ)のものである。半硬化状態とは、架橋構造を形成していないか、一部反応により架橋構造が形成されているものの、膜が流動性を有していること、又、その状態をいう。例えば、基板等に塗布した後、塗膜を減圧乾燥させて溶剤を留去させた状態、又は、塗膜を40~150℃で加熱して乾燥させた状態が挙げられ、アルカリ溶液又は有機溶剤に可溶である状態をいう。本発明の感光性組成物フィルムは、本発明の感光性組成物を成膜した感光性組成物被膜及び支持体を有することが好ましい。このような構成とすることが、ハンドリング性の観点から好適である。感光性組成物フィルムはポジ型又はネガ型の感光性を有する。感光性組成物フィルムは、単膜で自立膜を形成可能であることも好ましい。単膜で自立膜を形成可能とは、支持体を有しない状態で、幅1.5cm以上、長さ5.0cm以上、かつ厚さ5.0μm以上の膜を形成可能であることをいう。すなわち感光性組成物フィルムは、単膜で自立膜を形成可能な感光性組成物被膜であることも好ましい。
【0157】
<本発明の感光性組成物の硬化物>
本発明の硬化物は本発明の感光性組成物を硬化したものである。硬化とは、反応により架橋構造が形成され膜の流動性が無くなること、又、その状態をいう。反応は加熱によるもの、エネルギー線の照射によるもの等、特に限定されるものではないが、加熱によるものが好ましい。加熱によって架橋構造が形成され膜の流動性が無くなった状態を熱硬化という。加熱条件としては、例えば、150~500℃で、5~300分間加熱するなどの条件である。本発明の硬化物は、本発明の感光性フィルムを硬化したものであっても構わない。
【0158】
本発明の硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度は外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、0.20以上が好ましく、0.50以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましい。一方、上記光学濃度は露光時の感度向上及び素子の信頼性向上の観点から、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がより好ましい。ここで光学濃度とは、本発明の組成物を220℃で60分間加熱して硬化した硬化物における光学濃度をいう。熱硬化条件は酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで220℃まで昇温し、220℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却するというものである。なお組成物が染料若しくは熱発色剤を含有する場合、又は、組成物がポジ型の感光性を有する場合、熱硬化条件は酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで200℃まで昇温し、200℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却する条件とした。この熱硬化条件は特に断りのない限り本明細書全体において共通する。光学濃度が上記範囲であることで入射した外光を遮光できるため、外光反射抑制の効果が顕著となる。また硬化物自身やその内側にある層の光劣化が抑制されるため、素子の信頼性向上の効果が顕著となる。
【0159】
本発明の硬化物の周波数1GHzにおける誘電正接は素子の信頼性向上及び低伝送損失の観点から、0.00010~0.0100が好ましい。なお誘電正接は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)による共振器法で測定した値である。また本発明の硬化物の周波数1GHzにおける誘電率は素子の信頼性向上及び低伝送損失の観点から、2.0~3.5が好ましい。本発明の硬化物の周波数10GHz、30GHz、及び70GHzにおける誘電正接及び誘電率に関する好ましい範囲も、それぞれ上記と同様である。
【0160】
本発明の硬化物の吸水率は発光素子の信頼性向上の観点から、0.10質量%以上が好ましく、0.30質量%以上がより好ましい。一方、上記吸水率は発光素子の信頼性向上の観点から、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%%以下がさらに好ましく、0.70質量%以下がさらにより好ましく、0.50質量%以下が特に好ましい。
【0161】
<硬化物を具備する素子及び物品>
本発明の素子は本発明の硬化物を具備する。また本発明の物品は本発明の硬化物を具備する。物品としては、例えば、電子部品、電子装置、移動体、建造物、又は窓などが挙げられる。電子部品としては、例えば、半導体装置、アンテナ、表示装置、金属張積層板、配線基板、半導体パッケージ、半導体装置を含む能動部品、又は受動部品が挙げられる。本発明の感光性組成物は電子部品の形成に用いられることが好ましい。半導体装置としては、例えば、ファンアウト・ウェハレベル・パッケージ構造、ファンアウト・パネルレベル・パッケージ構造、又はアンテナ・イン・パッケージ構造を有する半導体装置が挙げられる。アンテナとしては、例えば、マイクロストリップラインアンテナ又はストリップラインアンテナが挙げられる。表示装置としては、例えば、有機ELディスプレイ、量子ドットディスプレイ、マイクロ発光ダイオードディスプレイ、ミニLEDディスプレイ、又は液晶ディスプレイが挙げられる。金属張積層板としては、例えば、プリント回路基板が挙げられる。
【0162】
本発明の電子部品は本発明の硬化物を具備する。また本発明の表示装置は本発明の硬化物を具備する。本発明の硬化物は、優れた発光素子の信頼性の効果を奏功することが可能である。そのため本発明の感光性組成物は、電子部品における金属配線の絶縁層、金属配線の保護層、又は金属配線の層間絶縁層の形成に用いられることが好ましい。また本発明の感光性組成物は、半導体装置における再配線の層間絶縁層の形成に用いられることも好ましく、アンテナにおける金属配線の絶縁層、金属配線の保護層、又は金属配線とグランド配線との層間絶縁層の形成に用いられることも好ましく、有機ELディスプレイ、量子ドットディスプレイ、又はマイクロLEDディスプレイにおける画素分割層、TFTの平坦化層、TFTの保護層、TFTの層間絶縁層、又はゲート絶縁層の形成に用いられることも好ましく、金属張積層板における金属配線の絶縁層、金属配線の保護層、又は金属配線のソルダーレジスト層の形成に用いられることも好ましい。
【0163】
<中空構造体>
本発明の中空構造体は本発明の硬化物を具備する。本発明の中空構造体は、中空構造支持材及び中空構造屋根材を有する。中空構造支持材及び中空構造屋根材は耐熱性向上及び信頼性向上の観点から、上記の特定の構造を有する(Aa)樹脂を含有することが好ましい。本発明の感光性組成物は中空構造体の形成に用いられることが好ましい。本発明の感光性フィルムは中空構造体の形成に好適である。
【0164】
<表示装置>
以下、本発明の表示装置について述べる。ただし、本発明は以下の各実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然ありえる。
【0165】
本発明の表示装置は上記の[20]の構成を有する。上記の構成とすることで、本発明の表示装置は、発光素子の信頼性に優れる表示装置を提供可能である。これは画素分割層中及び/又はTFT平坦化層中に、意図的に上記の塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、塩化物イオンを含む成分、又は臭化物イオンを含む成分を微量含有させることで、硬化物中における分極構造や電荷バランスが制御されると考えられる。その結果、発光特性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制されることに加え、電極や配線における金属のマイグレーション抑制や凝集抑制により、優れた発光素子の信頼性の効果を奏功すると推定される。また上記の環状構造を有し、かつ上記の特定の条件を満たすカルド系樹脂及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、硬化物中における分極構造や電荷バランスの制御に寄与するとともに、硬化物の耐熱性向上によりアウトガスが抑制され、発光素子の信頼性の効果を奏功するとも考えられる。すなわち、電子部品、半導体装置、表示装置、又は金属張積層板における優れたマイグレーション耐性の効果も奏功すると推定される。
【0166】
画素分割層中の(XA)樹脂及びTFT平坦化層中の(XA)樹脂に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂に関する例示及び好ましい記載の通りである。画素分割層中及びTFT平坦化層中の、カルド系樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、上記の感光性組成物中のカルド系樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、又は、当該樹脂に由来する構造を有する樹脂であることが好ましい。カルド系樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂における脂環式構造、芳香族構造、縮合多環脂環式構造、縮合多環式構造、ヘテロ環構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂の(I)構造における記載の通りである。画素分割層中及びTFT平坦化層中の、カルド系樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂における上記条件(Xα)、条件(Xβ)、条件(Xγ)、及び条件(Xδ)に係る各構造に関する例示及び好ましい記載は、上記の感光性組成物中の(A)バインダー樹脂における対応する各構造に関する例示及び好ましい記載の通りである。基板、第1電極、第2電極、画素分割層、発光層、及びTFT平坦化層は公知の材料を用いても構わない。
【0167】
画素分割層中及びTFT平坦化層中の、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分(以下、「特定の元素を含む成分」)は、上記の感光性組成物中の特定の元素を含む成分又は特定の元素を含む成分に由来する構造を有する成分であることが好ましい。画素分割層中の特定の元素を含む成分及びTFT平坦化層中の特定の元素を含む成分に関する例示及び好ましい記載は、上記の感光性組成物中の特定の元素を含む成分に関する例示及び好ましい記載の通りである。
【0168】
<画素分割層中及びTFT平坦化層中の塩素元素、臭素元素、及び硫黄元素の含有量>
本発明の表示装置は、画素分割層及び/又はTFT平坦化層が、さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(X2a)及び/又は(X2b)の条件を満たす。
(X2a)画素分割層中の塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、画素分割層中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下
(X2b)TFT平坦化層中の塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、TFT平坦化層中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【0169】
本発明の表示装置は発光素子の信頼性向上の観点から、塩素元素を含むイオン、臭素元素を含むイオン、及び硫黄元素を含むイオンからなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ上記条件(X2a)が下記条件(X2Ia)であって、上記条件(X2b)が下記条件(X2Ib)であって、下記条件(X2Ia)及び/又は(X2Ib)を満たすことが好ましい。
(X2Ia)画素分割層中の塩素元素を含むイオン中の塩素元素及び臭素元素を含むイオン中の臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、画素分割層中の硫黄元素を含むイオン中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下
(X2Ib)TFT平坦化層中の塩素元素を含むイオン中の塩素元素及び臭素元素を含むイオン中の臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、TFT平坦化層中の硫黄元素を含むイオン中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【0170】
画素分割層中及びTFT平坦化層中の塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、硫黄元素を含む成分、塩素元素を含むイオン、臭素元素を含むイオン、及び硫黄元素を含むイオンに関する例示及び好ましい記載は、上記の感光性組成物中の当該成分に関する例示及び好ましい記載の通りである。
【0171】
画素分割層中及びTFT平坦化層中の塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は発光素子の信頼性向上の観点から、0.030質量ppm以上が好ましく、0.050質量ppm以上がより好ましく、0.070質量ppm以上がさらに好ましく、0.10質量ppm以上が特に好ましい。一方、塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は発光素子の信頼性向上の観点から、300質量ppm以下が好ましく、200質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。さらに、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5.0質量ppm以下がさらにより好ましく、3.0質量ppm以下が特に好ましく、1.0質量ppm以下が最も好ましい。
【0172】
<硬化物中の樹脂及び化合物>
本発明の表示装置は硬化物を具備する。本発明の表示装置における硬化物は、感光性組成物の硬化物であることが好ましく、樹脂を含有することがより好ましい。硬化物中の樹脂に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂に関する例示及び好ましい記載の通りである。硬化物中の樹脂は、組成物中の(A)バインダー樹脂又は当該樹脂に由来する構造を有する樹脂のいずれであっても構わない。
【0173】
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化物の製法方法は、(1)基板上に、本発明の感光性組成物の塗膜を成膜する工程、(2)上記感光性組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、(3)現像液を用いて現像し、上記感光性組成物のパターンを形成する工程、及び(4)上記パターンを加熱し、上記感光性組成物の硬化パターンを得る工程、を有する。なおこれらの工程において、国際公開第2019/087985号の段落[0453]~段落[0481]に記載の各方法を適用しても構わない。塗膜を成膜する工程は、塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。硬化パターンを得る工程は、パターンを加熱して熱硬化させることが好ましい。
【実施例0174】
以下に実施例、参考例、及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。なお、以下の説明又は表で用いた化合物のうち略語を使用しているものについて、略語に対応する名称を、まとめて表1-2に示す。
【0175】
【表1-2】
【0176】
<各樹脂の合成例>
(A)バインダー樹脂として、合成例1~30で得られた各樹脂の組成を、まとめて表1-3~表1-6に示す。各樹脂は公知の文献に記載の方法に基づき、適宜モノマーとなる単量体化合物や共重合比率を変更して、公知の方法により合成した。モノマーの共重合比率は、表1-3~表1-6の通りである。
【0177】
合成例21で使用した下記構造のヒドロキシ基含有ジアミンである(HA)は、国際公開第2016/056451号の段落[0374]~段落[0376]における、合成例1に記載の合成方法に基づき、公知の方法により合成した。なお下記構造のヒドロキシ基含有ジアミンである(HA)を用いて合成例5で得られた樹脂は、アミド酸エステル構造単位、アミド酸構造単位、及びイミド閉環構造を有するポリイミド前駆体である。
【0178】
合成例1~4において、樹脂中のACAに由来するエチレン性不飽和二重結合基に対してMcPrTMS又はMcHxTMSを反応させており、硫黄原子を含む置換基を導入させた。合成例16において、樹脂中のTHPに由来するフェノール性水酸基に対してエポキシ基を有するGMAを反応させており、GMAのエポキシ基を全て開環付加させた。合成例18において、樹脂中の6FDAに由来するカルボキシ基に対してエポキシ基を有するGMAを反応させており、GMAのエポキシ基を全て開環付加させた。合成例21において、樹脂中のアミド酸構造単位に対してエステル化剤であるDFAを反応させており、メチル基を有するアミド酸エステル構造単位に構造変換させた。合成例28において、樹脂中のMAAに由来するカルボキシ基に対してエポキシ基を有するGMAを反応させており、GMAのエポキシ基を全て開環付加させた。
【0179】
【化6】
【0180】
【表1-3】
【0181】
【表1-4】
【0182】
【表1-5】
【0183】
【表1-6】
【0184】
各合成例で得られた樹脂、並びに、各実施例、参考例、及び比較例で使用した樹脂について、各樹脂が有する構造単位と構造を、まとめて表2-1に示す。カルド系樹脂(XCR-1)~(XCR-4)及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(XEA-1)~(XEA-15)は(Aa)樹脂に相当する。ポリイミド(PI-1)、ポリイミド前駆体(PIP-1)、ポリベンゾオキサゾール(PB-1)、ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBP-1)、ポリアミドイミド(PAI-1)、及びポリシロキサン(PS-1)は(Ab1)樹脂に相当する。フェノール樹脂(PR-1)及びポリヒドロキシスチレン(PHS-1)は(Ac)樹脂に相当する。カルド系樹脂(CR-1)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(EA-1)、及びアクリル樹脂(AC-1)は(Ad)樹脂に相当する。
【0185】
なおカルド系樹脂(XCR-1)~(XCR-4)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(XEA-1)~(XEA-3)、及び(XEA-6)は上記の(a3)樹脂に相当し、一般式(13)で表される構造単位を有する。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(XEA-4)、(XEA-5)、(XEA-7)、及び(XEA-8)は上記の(a4)樹脂に相当し、一般式(13)で表される構造単位及び一般式(14)で表される構造単位を有する。(XEA-9)は上記の(a7)樹脂に相当し、一般式(13)で表される構造単位を有する。(XEA-10)及び(XEA-11)は上記の(a8)樹脂に相当し、一般式(13)で表される構造単位及び一般式(14)で表される構造単位を有する。(XEA-12)は上記の(a13)樹脂に相当し、一般式(15)で表される構造単位を有する。(XEA-13)は上記の(a14)樹脂に相当し、一般式(14)で表される構造単位を有する。(XEA-14)は上記の(a15)樹脂に相当し、一般式(14)で表される構造単位を有する。(XEA-15)は上記の(a16)樹脂に相当し、一般式(15)で表される構造単位を有する。
【0186】
【表2-1】
【0187】
各実施例、参考例、及び比較例で使用した(D)着色剤及び(E)分散剤の一覧と説明を、まとめて表2-2に示す。なお(A.R.52-B.B.7)は、A.R.52/B.B.7=1/1(mol比)で混合して攪拌し、析出した塩をろ過して水で3回洗浄した後、乾燥させて得た染料である。
【0188】
【表2-2】
【0189】
<各顔料分散液の調製例>
顔料分散液として、調製例Bk-1~Bk-7で得られた各分散液の組成を、まとめて表2-3に示す。調製例Bk-1~Bk-7は、各顔料分散液を下記の方法により調製した。
【0190】
調製例Bk-1~Bk-7 顔料分散液(Bk-1)~(Bk-7)の調製
国際公開第2022/196261号の段落[0138]~段落[0140]、調製例1に記載されている方法に基づき、表2-3に記載の着色剤と、分散剤としてポリアルキレンアミン系-ポリオキシアルキレンエーテル系分散剤であるADPを用い、顔料の平均一次粒子径が表2-3に記載の値となるように循環方式で湿式メディア分散処理を行った。その後、0.80μmφのフィルターで濾過を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/分散剤=100/35(質量比)の顔料分散液(Bk-1)~(Bk-7)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の平均一次粒子径を表2-3に示す。また硬化膜中の顔料の平均一次粒子径、顔料分散液中の顔料の結晶子サイズ、及び硬化膜中の顔料の結晶子サイズも表2-3に示す。
【0191】
【表2-3】
【0192】
<シリカ粒子分散液の合成例>
各実施例、参考例、及び比較例で使用した無機粒子であるシリカ粒子の一覧と説明を、まとめて表2-4に示す。
【0193】
合成例20~22 シリカ粒子(SP-1)~(SP-3)分散液の合成
国際公開第2022/196261号の段落[0132]~段落[0134]、合成例3に記載されている方法に基づき、表2-4に記載のシリカ粒子分散液、表面修飾剤、及び重合禁止剤を用いてシリカ粒子(SP-1)~(SP-3)の分散液を得た。
【0194】
【表2-4】
【0195】
<各実施例、参考例、及び比較例における評価方法>
各実施例、参考例、及び比較例における評価方法を以下に示す。なおガラス上に、APC(銀/パラジウム/銅=98.07/0.87/1.06(質量比))をスパッタにより100nm成膜し、さらに、APC層の上層に、ITOをスパッタにより10nm成膜したガラス基板(ジオマテック社製;以下、「ITO/Ag基板」)は、卓上型光表面処理装置(PL16-110;セン特殊光源社製)を用いて、100秒間UV-O洗浄処理をして使用した。テンパックスガラス基板(AGCテクノグラス社製)やその他の基板は前処理をせずに使用した。また膜厚測定は、表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;東京精密社製)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sの条件で膜厚を測定した。
【0196】
(1)樹脂の重量平均分子量
上記のポリイミド(PI-1)、ポリイミド前駆体(PIP-1)、ポリベンゾオキサゾール(PB-1)、ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBP-1)、及びポリアミドイミド(PAI-1)は、各樹脂の0.10質量%のN-メチル-2-ピロリドン溶液を調製した。GPC分析装置(Waters 2690;Waters社製)を用い、流動層として塩化リチウムとリン酸とをそれぞれ0.050mol/Lで溶解したN-メチル-2-ピロリドンを用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定して求めた。その他の樹脂は、GPC分析装置(HLC-8220;東ソー社製)を用い、流動層としてテトラヒドロフラン又はN-メチル-2-ピロリドンを用いて、「JIS K7252-3(2008)」に基づき、常温付近での方法によりポリスチレン換算の重量平均分子量を測定して求めた。
【0197】
(2)組成物中の特定の芳香族化合物の含有量
組成物中の特定の芳香族化合物の含有量は、標準物質による検量線を用いたガスクロマトグラフィー質量分析及び液体クロマトグラフィー質量分析によって測定した。
【0198】
(3)組成物中又は硬化膜中の塩素元素、臭素元素、及び硫黄元素の含有量
組成物中又は硬化膜中の塩素元素、臭素元素、及び硫黄元素の含有量は、下記の測定条件で燃焼イオンクロマトグラフィーによって測定した。組成物又は硬化膜を分析装置の燃焼管内で燃焼・分解させ、発生したガスを吸収液に吸収後、吸収液の一部をイオンクロマトグラフィーにより分析した。元素含有量の記載が無いものは、当該元素が検出されなかったことを示す。なお組成物の全固形分に占める含有量は、得られた測定値と下記式から算出した。
(組成物の全固形分に占める含有量)=(組成物中の含有量)×100/(組成物の固形分濃度[質量%])
<燃焼・吸収条件>
システム:AQF-2100H、GA-210(三菱化学社製)
電気炉温度:Inlet 900℃, Outlet 1000℃
ガス:Ar/O 200mL/min, O 400mL/min
吸収液:H 0.1質量%
吸収液量:5mL
<イオンクロマトグラフィー・アニオン分析条件>
システム:ICS1600(DIONEX社製)
移動相:2.7mmol/L NaCO, 0.3mmol/L NaHCO
流速:1.50mL/min
検出器:電気伝導度検出器
注入量:100μL。
【0199】
(4)組成物中又は硬化膜中の塩素元素を含むイオン、臭素元素を含むイオン、及び硫黄元素を含むイオンの含有量
組成物中又は硬化膜中の塩素元素を含むイオン、臭素元素を含むイオン、及び硫黄元素を含むイオンの含有量は、下記の測定条件でイオンクロマトグラフィーによって測定した。10mmol/Lの水酸化カリウム水溶液に組成物又は硬化膜を添加して2時間振とうし、イオン成分を抽出した。抽出液を以下の条件で濾過処理した後、イオンクロマトグラフィーでアニオン成分を分析した。イオン含有量の記載が無いものは、当該イオンが検出されなかったことを示す。なお組成物の全固形分に占める含有量は、得られた測定値と下記式から算出した。
(組成物の全固形分に占める含有量)=(組成物中の含有量)×100/(組成物の固形分濃度[質量%])
<濾過処理条件>
メンブレンフィルター:0.22μmφ、PVDF(Merck Millipore社製)
固相抽出用カートリッジ:InertSep Slim-J PLS-3(ジーエルサイエンス社製)
陽イオン交換カートリッジ:OnGuard II H(Thermo Fisher Scientific社製)
<イオンクロマトグラフィー分析条件>
装置:ICS-5000(Thermo Fisher Scientific社製)
分離カラム:2mmφ×250mm、IonPac AS11-HC-4μm
溶離液:水酸化カリウム/グラジエント
検出器:電気伝導度検出器
試料注入量:100μL。
【0200】
(5)感度
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;ニコン社製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察した。感度の指標として、20μmのライン・アンド・スペースパターンにおいて、開口部に相当するスペースパターンを18μmの寸法幅にて形成できる露光量(i線照度計の値)を感度とした。下記のように判定し、感度が90mJ/cm以下となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とした。
A+:感度が30mJ/cm以下
A:感度が30mJ/cmを超え、かつ40mJ/cm以下
B+:感度が40mJ/cmを超え、かつ50mJ/cm以下
B:感度が50mJ/cmを超え、かつ60mJ/cm以下
C+:感度が60mJ/cmを超え、かつ75mJ/cm以下
C:感度が75mJ/cmを超え、かつ90mJ/cm以下
D:感度が90mJ/cmを超え、かつ150mJ/cm以下
E:感度が150mJ/cmを超過。
【0201】
(6)現像残渣
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;ニコン社製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察した。現像残渣の指標として、20μmのライン・アンド・スペースパターンにおける残渣の有無を観察し、開口部に占める残渣の存在面積を算出した。下記のように判定し、残渣の存在面積が20%以下となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とした。
A+:残渣無し
A:残渣の存在面積が0%を超え、かつ3%以下
B+:残渣の存在面積が3%を超え、かつ6%以下
B:残渣の存在面積が6%を超え、かつ10%以下
C+:残渣の存在面積が10%を超え、かつ15%以下
C:残渣の存在面積が15%を超え、かつ20%以下
D:残渣の存在面積が20%を超え、かつ50%以下
E:残渣の存在面積が50%を超え、かつ100%以下。
【0202】
(7)マスクバイアス
下記、実施例1記載の方法で、組成物の現像後膜を作製した。FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;ニコン社製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察し、マスク寸法が20μmのライン・アンド・スペースパターンにおいて、開口部に相当するパターンの開口寸法(CDDEV)μmを測長した。なお、露光量としては、開口寸法(CDDEV)μmが20μm未満となり、かつプリベーク後の膜厚を(TPB)μmと現像後の膜厚(TDEV)μmにおいて、現像残膜率((TDEV)/(TPB)×100)が70%以上となる最小露光量とした。マスクバイアスの指標として、マスク寸法である20μmとの開口寸法差((CDDEV)-20)μmを算出した。下記のように判定し、開口寸法差が3.0μm以下となる、A+、A、B+、B、C+及びCを合格とし、開口寸法差が2.0μm以下となる、A+、A、B+及びBを良好とし、開口寸法差1.0μm以下となる、A+及びAを優秀とした。
A+:開口寸法差が0.5μm以下
A:開口寸法差が0.5μmを超え、かつ1.0μm以下
B+:開口寸法差が1.0μmを超え、かつ1.5μm以下
B:開口寸法差が1.5μmを超え、かつ2.0μm以下
C+:開口寸法差が2.0μmを超え、かつ2.5μm以下
C:開口寸法差が2.5μmを超え、かつ3.0μm以下
D:開口寸法差が3.0μmを超え、かつ4.0μm以下
E:開口寸法差が4.0μmを超過。
【0203】
(8)ハーフトーン特性
下記、実施例1記載の方法で、ITO/Ag基板上に組成物のプリベーク膜を5μmの膜厚で成膜し、ハーフトーン特性評価用のハーフトーンフォトマスクを介して、露光量を変えて超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光した後、現像して組成物の現像後膜を作製した。ハーフトーンフォトマスクは、半透光部の透過率(%THT)がそれぞれ、透光部の透過率(%TFT)の20%、25%、30%、35%、40%、又は50%である箇所を有する。ハーフトーンフォトマスクの一例として、透光部41、遮光部42、及び半透光部43の配置、並びに、寸法の一例を、図1に示す。作製した現像後膜の段差形状を有する解像パターンについて、透光部から形成された厚膜部の現像後の膜厚(TFT)μmを測定した。ハーフトーン露光部である半透光部から形成された薄膜部は、透過率の異なる箇所の現像後の膜厚(THT)μmを測定し、現像後に残膜した薄膜部の最小膜厚(THT/min)μmを求めた。ハーフトーン特性の指標として、最大段差膜厚((TFT)-(THT/min))μmを算出した。下記のように判定し、最大段差膜厚が0.4μm以上となる、A+、A、B+、B、C+及びCを合格とした。
A+:最大段差膜厚が2.5μm以上
A:最大段差膜厚が2.0μm以上、かつ2.5μm未満
B+:最大段差膜厚が1.5μm以上、かつ2.0μm未満
B:最大段差膜厚が1.0μm以上、かつ1.5μm未満
C+:最大段差膜厚が0.7μm以上、かつ1.0μm未満
C:最大段差膜厚が0.4μm以上、かつ0.7μm未満
D:最大段差膜厚が0.1μm以上、かつ0.4μm未満
E:最大段差膜厚が0.1μm未満、又は現像後に残膜せず測定不能。
【0204】
(9)遮光性(光学濃度値(以下、「OD値」))
下記、実施例1記載の方法で、テンパックスガラス基板(AGCテクノグラス社製)上に組成物の硬化膜を作製した。透過濃度計(X-Rite 361T(V);X-Rite社製)を用いて、作製した硬化膜の面内3箇所における入射光強度(I)及び透過光強度(I)をそれぞれ測定した。遮光性の指標として、膜厚1μm当たりのOD値を下記式により算出し、面内3箇所におけるOD値の平均値を算出した。
OD値=log10(I/I)。
【0205】
(10)発光素子の信頼性
下記、実施例1記載の方法で作製した有機ELディスプレイを10mA/cmで直流駆動にて発光させ、非発光領域や輝度ムラなどの発光不良がないかを観察した。また耐久性試験として、発光素子の光取り出し側を上にして80℃に加熱し、波長365nm、照度0.6mW/cmの光を照射して500時間保持した。500時間後、有機ELディスプレイを10mA/cmで直流駆動にて発光させて発光特性に変化がないかを観察した。発光素子の信頼性の指標として、耐久性試験前の発光領域面積を100%とした場合における耐久性試験後の発光領域面積を測定した。下記のように判定し、発光領域面積が80%以上となる、A+、A、B+、B、C+及びCを合格とした。
A+:発光領域面積が100%
A:発光領域面積が97%以上、かつ100%未満
B+:発光領域面積が94%以上、かつ97%未満
B:発光領域面積が90%以上、かつ94%未満
C+:発光領域面積が85%以上、かつ90%未満
C:発光領域面積が80%以上、かつ85%未満
D:発光領域面積が60%以上、かつ80%未満
E:発光領域面積が60%未満。
【0206】
<各実施例、参考例、及び比較例で使用した化合物>
各実施例、参考例、及び比較例で使用した化合物の構造を以下に示す。上記の(I-b3)構造における最小原子数は、(b-5)が4個である。上記の(I-b4)構造における最小原子数は、(b-6)が13個、(b-7)が23個、(b-8)が31個、(b-9)が17個である。(Cb-1)~(Cb-3)は上記の特定の(C1x-DL)化合物に相当する。これらの化合物は公知の方法により合成した。
【0207】
【化7】
【0208】
【化8】
【0209】
【化9】
【0210】
また各実施例、参考例、及び比較例で使用した、特定の芳香族化合物;塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素を含む化合物(以下、「特定の元素を含む化合物」)、それぞれに対応する化合物を、まとめて表2-5に示す。
【0211】
【表2-5】
【0212】
<感光性組成物の調製>
表3-1~表3-7に記載の組成にて、組成物1~組成物75を調製した。表3-1~表3-7において括弧内の数値は各成分の固形分の質量部を示す。組成物が顔料を含有する場合、まず顔料分散液を含まない調合液を調製した後、顔料分散液と調合液とを混合して組成物を調製した。溶剤として、PGMEA/EDM/MBA=70/20/10(質量比)を用いて、組成物の固形分濃度が20質量%となるように調製した。得られた組成物の溶液は、0.45μmφのフィルターで濾過して使用した。
【0213】
<実施例1>
ITO/Ag基板上に組成物1を、スピンコーター(MS-A100;ミカサ社製)を用いて塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン社製)を用いて120℃で120秒間プリベークし、膜厚約1.8μmのプリベーク膜を作製した。作製したプリベーク膜を、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液又はシクロペンタノンでスプレー現像し、プリベーク膜(未露光部)が完全に溶解する時間(Breaking Point;以下、「BP」)を測定した。
【0214】
同様の方法でプリベーク膜を作製し、作製したプリベーク膜を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、感度測定用のグレースケールマスク(MDRM MODEL 4000-5-FS;Opto-Line International社製)を介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光した。露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液で現像し、水で30秒間リンスして現像後膜を作製した。現像時間は測定したBPの1.3倍とした。なお2.38質量%TMAH水溶液で現像後にパターン形成できなかった場合は、上記の方法と同様に露光した膜を作製し、露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、シクロペンタノンで現像し、水で30秒間リンスして現像後膜を作製した。現像時間は測定したBPの1.3倍とした。現像後のパターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンにおいて、開口部に相当するスペースパターンを18μmの寸法幅にて形成できる最適露光量(i線照度計の値)を求めた。最適露光量で露光後、現像した後のパターンを高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム社製)を用いて220℃で60分間熱硬化させ、膜厚約1.2μmの硬化膜を作製した。熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで220℃まで昇温し、220℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。
【0215】
核磁気共鳴分光分析、赤外分光分析、ガスクロマトグラフィー質量分析、液体クロマトグラフィー質量分析、及び飛行時間型二次イオン質量分析などの方法で硬化膜を分析し、硬化膜中に含まれる樹脂の構造単位と硬化膜中に含まれる化合物の構造を分析した。組成物1の硬化膜は以下の樹脂及び化合物を含有しており、組成物1が含む樹脂に由来する構造を有する樹脂と、組成物1が含む化合物に由来する構造を有する化合物とを含有する。
(XAa)樹脂:スルフィド結合とプロピレン基を有するトリメトキシシリル基を有し、かつフルオレン構造と、それぞれのベンゼン構造にカルボキシ基が結合したビフェニル構造と、それらを連結する3-カルボニルオキシ-2-(カルボニルオキシ)プロピルオキシ基を有するカルド系樹脂。
【0216】
<有機ELディスプレイの作製>
次に、有機ELディスプレイの作製方法について記載する。図2に使用した基板の概略図を示す。まず38×46mmの無アルカリガラス基板47に、非透明導電性金属層としてAPC(銀/パラジウム/銅=98.07/0.87/1.06(質量比))をスパッタにより100nm成膜し、エッチングによりパターン加工してAPC層を形成した。さらに、APC層の上層に透明導電性酸化膜層としてアモルファス性のITOをスパッタにより10nm成膜し、エッチングにより第1電極部48として反射電極を形成した。また第2電極を取り出すため補助電極部49も同時に形成した(図2の(1))。得られた基板を“セミコクリーン”(登録商標)56(フルウチ化学社製)で10分間超音波洗浄し、超純水で洗浄した。次に、この基板上に組成物1を上記の方法で塗布及びプリベークし、所定のパターンを有するフォトマスクを介してパターニング露光、現像及びリンスした後、加熱し熱硬化させた。なお現像時間は事前に測定したBPの1.3倍として、事前にその現像時間における最適露光量を求めた。最適露光量で露光後、現像した後のパターンを220℃で60分間熱硬化させた。熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで220℃まで昇温し、220℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。以上の方法で、幅70μm及び長さ70μmの四角形の開口部が、幅方向にピッチ175μm及び長さ方向にピッチ175μmで配置され、それぞれの開口部が第1電極を露出せしめる形状の画素分割層部50を、基板有効エリアに限定して形成した(図2の(2))。なおこの開口部が、最終的に有機ELディスプレイの発光画素となる。また基板有効エリアは16mm四方であり、画素分割層部50の厚さは約1.5μmで形成した。
【0217】
次に、第1電極部48、補助電極部49、及び画素分割層部50を形成した基板を用いて、有機ELディスプレイの作製を行った。前処理として窒素プラズマ処理を行った後、真空蒸着法により、発光層を含む有機EL層部51を形成した(図2の(3))。なお蒸着時の真空度は、1×10-3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず正孔注入層として化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として化合物(HT-2)を50nm蒸着した。次に、発光層にホスト材料として化合物(GH-1)と、ドーパント材料として化合物(GD-1)とを、ドープ濃度が10体積%になるように40nmの厚さに蒸着した。その後、電子輸送材料として化合物(ET-1)と化合物(LiQ)とを、体積比1:1で40nmの厚さに積層した。なお有機EL層で用いた化合物(化合物(HT-1)、化合物(HT-2)、化合物(GH-1)、化合物(GD-1)、化合物(ET-1)、及び化合物(LiQ))は、国際公開第2017/057281号の段落[0599]~段落[0600]に記載のものと同一化合物を用いた。
【0218】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgAg(マグネシウム/銀=10/1(体積比))を10nm蒸着して第2電極部52とし、透明電極を形成した(図2の(4))。その後、低湿窒素雰囲気下、エポキシ樹脂系接着剤を用いてキャップ状ガラス板を接着することで封止をし、1枚の基板上に5mm四方のトップエミッション型有機ELディスプレイを4つ作製した。なおここでいう膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0219】
<実施例2~実施例69及び比較例1~比較例6>
表3-1~表3-7に示す各組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び評価を行った。これらの評価結果を、まとめて表3-1~表3-7に示す。なお実施例69の熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで200℃まで昇温し、200℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。
【0220】
【表3-1】
【0221】
【表3-2】
【0222】
【表3-3】
【0223】
【表3-4】
【0224】
【表3-5】
【0225】
【表3-6】
【0226】
【表3-7】
【0227】
比較例1は組成物の全固形分に占める塩素元素、臭素元素、及び硫黄元素の含有量が本願発明の発明特定事項を満たさない。比較例2~比較例6は特定の構造を有する(Aa)樹脂を含有しない。そのため、各種特性が劣っている。また比較例5は組成物の全固形分に占める塩素元素の含有量が好適な範囲から外れている。比較例6は組成物中に占める特定の芳香族化合物の含有量が好適な範囲を超過している。そのため、現像残渣、マスクバイアス性、ハーフトーン特性、又は発光素子の信頼性が低下している。
【符号の説明】
【0228】
41 透光部
42 遮光部
43 半透光部
47 無アルカリガラス基板
48 第1電極部
49 補助電極部
50 画素分割層部
51 発光層を含む有機EL層部
52 第2電極部
図1
図2