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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164373
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】研磨用加工工具形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20241120BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20241120BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01B11/26 Z
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079796
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 武志
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直哉
【テーマコード(参考)】
2F065
3C034
【Fターム(参考)】
2F065AA26
2F065AA32
2F065AA53
2F065BB03
2F065BB16
2F065CC10
2F065FF41
2F065MM03
2F065MM04
2F065PP22
2F065QQ18
3C034AA20
3C034BB91
3C034CA08
3C034CA14
3C034CB13
(57)【要約】
【課題】例えば砥石のような研磨用加工工具を用いて加工する製品の最終形状を効率よく取得可能とする。
【解決手段】研磨用加工工具形状測定装置10は、砥石51と、砥石51を砥石51の中心軸C1回りに回転させる第一回転装置11と、砥石51の外周と対向して配置される非接触センサ41と、非接触センサ41の出力を処理する処理装置40とを有する。処理装置40は、回転する砥石51を測定対象とする非接触センサ41の測定結果に基づいて、砥石51の外周面51aにおける最外径部Qを示すデータを取得する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨用加工工具と、
前記研磨用加工工具を前記研磨用加工工具の中心軸回りに回転させる回転装置と、
前記研磨用加工工具の外周と対向して配置される非接触センサと、
前記非接触センサの出力を処理する処理装置と、
を有し、
前記研磨用加工工具は、砥石である、又は、砥石の形状を整えるロータリドレッサであり、
前記処理装置は、回転する前記研磨用加工工具を測定対象とする前記非接触センサの測定結果に基づいて、前記研磨用加工工具の外周面における最外径部を示すデータを取得する、
研磨用加工工具形状測定装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記データに基づいて、前記研磨用加工工具の外周面の形状を示すパラメータを算出する、
請求項1に記載の研磨用加工工具形状測定装置。
【請求項3】
前記研磨用加工工具は、外周面に、断面が円弧形状となる部分を有し、
前記処理装置は、前記パラメータとして、前記研磨用加工工具の外周面における曲率半径を算出する、
請求項2に記載の研磨用加工工具形状測定装置。
【請求項4】
前記研磨用加工工具は、外周面に、断面が円弧形状となる部分を有し、
前記処理装置は、前記パラメータとして、被加工物に対する前記研磨用加工工具の接触角を算出する、
請求項2に記載の研磨用加工工具形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用加工工具の形状を測定する研磨用加工工具形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、研磨用加工工具である砥石の形状を測定する装置が開示されている。その装置は、砥石に対して走査するセンサを有し、センサの測定結果に基づいて、砥石が有する断面曲線形状のデータを取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-019948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の装置の場合、砥石の断面曲線形状を取得することは可能であるが、その砥石による加工対象となる製品(被加工物)の最終形状を知る(推定する)ことはできない。これは、砥石の一つの断面における曲線形状が取得されても、それと異なる断面における形状が、砥石の最大径を有することで、加工中、製品に対して支配的となる場合、製品の最終形状は、取得した断面曲線形状と一致しないためである。このため、砥石の断面曲線形状から、製品の最終形状を正しく推定することは不可能である。
【0005】
ここで、従来、砥石を評価するために、図9に示すように、砥石90により加工した転写ピース99を、形状測定の対象とする方法が存在する。転写ピース99は、例えばカーボン等により製造されたものであり、その転写ピース99に対して砥石90を用いて加工を行い、転写ピース99に転写させた加工表面98の形状を測定する方法である。
【0006】
加工して製造される製品の最終形状の精度は、砥石90のみではなく、砥石90の形状を整えるロータリドレッサ95も影響を与える。そこで、ロータリドレッサ95を評価する場合、ロータリドレッサ95(図9参照)で形状を整えた砥石90を使って、転写ピース99を加工し、その加工表面98の形状を測定する。
【0007】
しかし、形状精度の確保が必要となる対象は、砥石90及びロータリドレッサ95ではなく、実際の製品である。このため、砥石90を用いて加工した製品の最終形状、又は、ロータリドレッサ95で形状を整えた砥石90を用いて加工した製品の最終形状を知ることが必要となる。
前記のような転写ピース99を用いることで、製品の最終形状を推定することは可能である。しかし、転写ピース99への実際の加工が必須であり、工程が増えるという問題点がある。
【0008】
そこで本発明は、研磨用加工工具を用いて加工する製品の最終形状を効率よく取得可能とする研磨用加工工具形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、研磨用加工工具と、前記研磨用加工工具を前記研磨用加工工具の中心軸回りに回転させる回転装置と、前記研磨用加工工具の外周と対向して配置される非接触センサと、
前記非接触センサの出力を処理する処理装置と、を有し、前記研磨用加工工具は、砥石である、又は、砥石の形状を整えるロータリドレッサであり、前記処理装置は、回転する前記研磨用加工工具を測定対象とする前記非接触センサの測定結果に基づいて、前記研磨用加工工具の外周面における最外径部を示すデータを取得する。
【0010】
前記構成を有する研磨用加工工具形状測定装置によれば、研磨用加工工具が、例えば砥石である場合、その砥石の外周面における最外径部を示すデータが取得される。前記最外径部の形状が、その砥石による加工の対象となる製品(被加工物)に転写され、製品の最終形状となる。
したがって、研磨用加工工具の外周面における最外径部を示すデータが取得されることにより、製品の最終形状を推定(取得)ことが可能となる。従来のように、転写ピースは不要であり、効率よく製品の最終形状を取得することが可能となる。
さらに、砥石又はロータリドレッサの外周面における最外径部を示すデータが取得される。その結果、砥石により加工を行った場合の製品の最終形状、又は、ロータリドレッサにより形状を整えた砥石により加工を行った場合の製品の最終形状を推定(取得)ことが可能となる。
【0011】
なお、前記最外径部とは、研磨用加工工具の外周面において、研磨用加工工具の幅方向に沿って複数の測定点が存在していて、研磨用加工工具が回転することで、各測定点を通過する研磨用加工工具の外周面のうち、研磨用加工工具の中心軸から最も離れた位置にある点である。
【0012】
(2)好ましくは、前記処理装置は、前記データに基づいて、前記研磨用加工工具の外周面の形状を示すパラメータを算出する。
前記構成によれば、研磨用加工工具の形状を評価するために好適なパラメータを算出することにより、研磨用加工工具による加工対象となる製品の形状精度が確保され、製品の性能を高めることが可能となる。
【0013】
(3)好ましくは、前記研磨用加工工具は、外周面に、断面が円弧形状となる部分を有し、
前記処理装置は、前記パラメータとして、前記研磨用加工工具の外周面における曲率半径を算出する。
前記構成によれば、研磨用加工工具による加工対象となる製品(被加工物)が、例えば、ボールが転がり接触する溝を有し、その溝が研磨用加工工具により加工される場合、形状精度の高い溝を得ることが可能となる。
【0014】
(4)好ましくは、前記研磨用加工工具は、外周面に、断面が円弧形状となる部分を有し、
前記処理装置は、前記パラメータとして、被加工物に対する前記研磨用加工工具の接触角を算出する。
前記構成によれば、研磨用加工工具による加工対象となる製品(被加工物)が、例えば、ボールが転がり接触する溝を有し、その溝が研磨用加工工具により加工される場合、形状精度の高い溝を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の研磨用加工工具形状測定装置によれば、研磨用加工工具を用いて加工する製品の最終形状を効率よく取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、砥石及びロータリドレッサを有する加工装置の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、砥石及びロータリドレッサの説明図である。
図3図3は、非接触センサの説明図である。
図4図4は、砥石を、その中心軸に平行な方向から見た場合の説明図である。
図5図5は、最外径部を示すデータの一例を示す説明図である。
図6図6は、最外径部を示すデータの一例を示す説明図である。
図7図7は、被加工物の一部を示す説明図である。
図8図8は、表示装置に出力された情報の一例を示す説明図である。
図9図9は、従来の形状測定装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、砥石51及びロータリドレッサ52を有する加工装置50の一例を示す概略構成図である。砥石51及びロータリドレッサ52の形状が、本発明の研磨用加工工具形状測定装置10によって測定される。図1に示す形態の場合、研磨用加工工具形状測定装置10は、加工装置50と共に設置されている。
【0018】
〔加工装置50について〕
加工装置50は、砥石51及びロータリドレッサ52の他に、砥石51を回転させる第一回転装置11と、ロータリドレッサ52を回転させる第二回転装置12と、砥石51により加工されて製品となる被加工物Wを支持すると共に被加工物Wを回転させる第三回転装置13と、第一回転装置11を移動させる第一アクチュエータ14と、第一回転装置11に装着された砥石51と第二回転装置12に装着されたロータリドレッサ52とを相対的に接近させる第二アクチュエータ15とを有する。
【0019】
図2は、砥石51及びロータリドレッサ52の説明図である。砥石51は、円板形状を有し、砥石51の外周面51aは、凸の円弧形状の部分55を有する。ロータリドレッサ52は、円板形状を有し、砥石51の外周面51aの形状を整える。ロータリドレッサ52は、その外周面52aに、凹の円弧形状の部分56を有する。
砥石51の中心軸C1に平行な方向が、砥石51の幅方向である。ロータリドレッサ52の中心軸C2に平行な方向が、ロータリドレッサ52の幅方向である。中心軸C1と中心軸C2とは平行の関係にある。
【0020】
図1において、第一回転装置11は、モータ21と、モータ21によって回転する回転軸22と、回転軸22を回転可能に支持する軸受装置23とを有する。回転軸22に砥石51が取り付けられる。モータ21の回転駆動により、砥石51は、砥石51の中心軸C1回りに回転する。
【0021】
第二回転装置12は、モータ26と、モータ26によって回転する回転軸27と、回転軸27を回転可能に支持する軸受装置28とを有する。回転軸27にロータリドレッサ52が取り付けられる。モータ26の回転駆動により、ロータリドレッサ52は、ロータリドレッサ52の中心軸C2回りに回転する。
【0022】
第三回転装置13は、モータ31と、モータ31によって回転する回転軸32と、回転軸32を回転可能に支持する軸受装置33とを有する。回転軸32に、被加工物Wを保持するチャック装置34が連結されている。モータ31の回転駆動により、チャック装置34は、回転軸32の中心軸C3回りに回転する。これにより、被加工物Wは、中心軸C3回りに回転する。被加工物Wは、例えば、ボールナット式ステアリングのシャフトであり、そのシャフトは、螺旋溝53を有する。螺旋溝53が、砥石51により加工(研磨)される。
【0023】
第一アクチュエータ14は、第一回転装置11を移動させることで、砥石51を被加工物Wに接近させ、接触させる。これにより、砥石51による被加工物Wの加工が行われる。砥石51は、被加工物Wを加工する研磨用加工工具である。
第二アクチュエータ15は、例えば、第一回転装置11を移動させることで、砥石51をロータリドレッサ52に接近させ、砥石51をロータリドレッサ52に接触させる。これにより、砥石51のドレス作業が行われる。ロータリドレッサ52は、砥石51のドレス作業を行うための研磨用加工工具である。
【0024】
〔研磨用加工工具形状測定装置10について〕
研磨用加工工具形状測定装置10は、砥石51の形状を測定するために、回転装置と、非接触センサ41と、処理装置40とを有する。
【0025】
本実施形態の場合、砥石51の形状を測定するための前記回転装置は、第一回転装置11である。つまり、第一回転装置11は、加工装置50と、研磨用加工工具形状測定装置10とで兼用される。なお、砥石51の形状を測定するために研磨用加工工具形状測定装置10が有する回転装置は、第一回転装置11と別の装置であってもよい。この場合、砥石51は、第一回転装置11と研磨用加工工具形状測定装置10の回転装置との間で付け替えられる。第一回転装置11は、砥石51を砥石51の中心軸C1回りに回転させる。
【0026】
図3は、非接触センサ41の説明図である。非接触センサ41は、砥石51の外周(外周面51a)と対向して配置される非接触式のセンサである。具体的には、非接触センサ41は、砥石51の外周との変位を計測することにより、砥石51の外周面51aの形状を非接触で計測する。非接触センサ41は、固定式であり、回転する砥石51との間で相対的に移動しない。第一アクチュエータ14及び第二アクチュエータ15によって、砥石51が移動し、砥石51は、非接触センサ41の検出領域に入る。
【0027】
図3に示すように、非接触センサ41の検出領域は、砥石51の外周面51aよりも広い。
非接触センサ41は、砥石51の外周面51aに対して、外周面51aの形状を測定する。非接触センサ41は、計測結果を処理装置40に出力する。図4は、砥石51を、その中心軸C1に平行な方向から見た場合の説明図である。平面Kは中心軸C1を含む仮想の平面である。
【0028】
処理装置40は(図1参照)、非接触センサ41の出力信号を処理する。処理装置40は、プロセッサ(演算処理装置)及びRAM、ROM等よりなるメモリを有するコンピュータにより構成される。プロセッサは、コンピュータプログラムをメモリから読み出して実行し、これにより処理装置40の各機能が実行される。
【0029】
非接触センサ41は、回転する砥石51を測定対象とする。処理装置40は、その非接触センサ41の測定結果に基づいて、砥石51の外周面51aにおける最外径部Qを示すデータを取得する(図5参照)。図5は、その最外径部Qを示すデータの一例を示す説明図である。
【0030】
砥石51に関する最外径部Qとは、砥石51の外周面51aにおいて、砥石51の幅方向に沿って複数の測定点が存在していて、砥石51が回転することで、各測定点を通過する砥石51の外周面51aのうち、砥石51の中心軸C1から最も離れた位置にある点である。図5に示すように、非接触センサ41により、最外径部Qを示す複数の点の集合が検出される。
【0031】
処理装置40は、図5に示すように、非接触センサ41の測定結果に基づいて、砥石51の幅方向に沿った複数の位置における最外径部Qの位置を示すデータを取得する。
砥石51における複数の最外径部Qの位置を結ぶ線(曲線)Q1が、被加工物Wに対して砥石51が加工を行うことで得られる加工表面の形状と一致する。
【0032】
〔ロータリドレッサ52の形状測定〕
図1に示す形態の場合、研磨用加工工具形状測定装置10は、ロータリドレッサ52の形状を測定するために、回転装置と、非接触センサ42と、処理装置(40)とを有する。
【0033】
ロータリドレッサ52の形状を測定するための前記回転装置は、第二回転装置12である。つまり、第二回転装置12は、加工装置50と、研磨用加工工具形状測定装置10とで兼用される。なお、ロータリドレッサ52の形状を測定するために研磨用加工工具形状測定装置10が有する回転装置は、第二回転装置12と別の装置であってもよい。この場合、ロータリドレッサ52は、第二回転装置12と研磨用加工工具形状測定装置10の回転装置との間で付け替えられる。第二回転装置12は、ロータリドレッサ52をロータリドレッサ52の中心軸C2回りに回転させる。
【0034】
ロータリドレッサ52のための非接触センサ42は、砥石51のための前記非接触センサ41と同じ形式のものであり、ロータリドレッサ52の外周面52aの形状を非接触で計測する。非接触センサ42は、固定式であり、回転するロータリドレッサ52との間で相対的に移動しない。
図示しないが、ロータリドレッサ52のための非接触センサ42は(図2参照)、砥石51のための非接触センサ41と同様に(図3及び図4参照)、非接触センサ42の検出領域は、ロータリドレッサ52の外周面52aよりも広い。
【0035】
非接触センサ42は、ロータリドレッサ52の外周面52aに対して、中心軸C2を含む仮想の平面に沿って外周面52aとの変位を測定し、外周面52aの形状を測定する。非接触センサ42は、計測結果を処理装置40に出力する。
なお、砥石51のための非接触センサ41を、ロータリドレッサ52のために用いる構成であってもよい。
【0036】
非接触センサ42は、回転するロータリドレッサ52を測定対象とする。ロータリドレッサ52のための前記処理装置は、砥石51のための処理装置40と別であってもよいが、本実施形態の場合、同じである。処理装置40は、ロータリドレッサ52のための非接触センサ42の測定結果に基づいて、ロータリドレッサ52の外周面52aにおける最外径部Pを示すデータを取得する。図6は、その最外径部Pを示すデータの一例を示す説明図である。
【0037】
ロータリドレッサ52に関する最外径部Pとは、ロータリドレッサ52の外周面52aにおいて、ロータリドレッサ52の幅方向に沿って複数の測定点が存在していて、ロータリドレッサ52が回転することで、各測定点を通過するロータリドレッサ52の外周面52aのうち、ロータリドレッサ52の中心軸C2から最も離れた位置にある点である。非接触センサ42により、最外径部Pを示す複数の点の集合が検出される。
【0038】
処理装置40は、図6に示すように、非接触センサ42の測定結果に基づいて、ロータリドレッサ52の幅方向に沿った複数の位置における最外径部Pの位置を示すデータを取得する。
ロータリドレッサ52における複数の最外径部Pの位置を結ぶ線(曲線)が、砥石51に対してロータリドレッサ52がドレス処理を行うことで得られる砥石表面の形状と一致する。
【0039】
〔処理装置40が行う処理について〕
前記のとおり、処理装置40は、砥石51のための非接触センサ41に基づいて、砥石51の外周面51aにおける最外径部Qを示すデータを取得する(図5参照)。処理装置40は、最外径部Qを示すデータに基づいて、砥石51の外周面51aの形状を示すパラメータを算出する。
【0040】
本実施形態の場合(図3参照)、形状測定の対象は、外周面51aに、断面が凸の円弧形状となる部分55を有する砥石51(研磨用加工工具)である。そこで、処理装置40は、前記パラメータとして、砥石51の外周面51aのうち、断面が凸の円弧形状となる部分55における曲率半径を算出する機能を有する。
【0041】
前記のとおり(図5参照)、処理装置40は、砥石51の幅方向に沿った複数の位置における最外径部Qの位置を示すデータを取得する。砥石51の最外径部Qの幅方向の全体形状は、砥石51の幅方向に沿った複数の位置のデータにより構成される点群のデータとして表現される。
そこで、処理装置40は、前記点群のデータに基づいて、複数の最外径部Qを結ぶ近似する線(曲線)Q1を演算により求める。処理装置40は、例えば、最小二乗法により、一つの線Q1を求める。その線Q1から、砥石51の外周面51aにおける曲率半径Rが求められる。
【0042】
処理装置40は、前記パラメータとして、被加工物Wに対する砥石51(研磨用加工工具)の接触角を算出する機能を有する。図7は、被加工物Wの一部を示す説明図である。被加工物Wは、砥石51により、断面凹円弧の形状に加工(研磨)される。被加工物Wは、例えば、ボールナット式ステアリングのシャフトであり、そのシャフトが有する螺旋溝53に対する砥石51の接触角を算出する。
砥石51の凸の円弧形状となる部分55の曲率半径Rは、前記シャフトの螺旋溝53を転がり接触するボールの半径と同じである。このため、前記パラメータとして接触角θを算出することで、そのボールと螺旋溝53との接触角を推定することが可能となる。
【0043】
処理装置40は、非接触センサ41又は非接触センサ42によって取得したデータを、画像として出力する表示装置45を有する(図1参照)。図8は、その表示装置45に出力された情報の一例を示す説明図である。
砥石51の外周面51aにおける第一の最外径部Qの位置と、それに隣の第二の最外径部Qの位置との差は、ごく小さい。このため、最外径部Qの位置を実際の表示スケールとして表示装置45に出力しても、前記差を作業者が視覚的に確認することは不可能である。
【0044】
そこで、処理装置40は、砥石51の外周面51aにおける最外径部Qを示すデータの、一部又は全部に対して、係数を乗算する等の演算を行い、最外径部Qの位置を実際の表示スケールと違えて(つまり、拡大して)変更する処理を行うことが可能である。図8に示すように、その変更した処理を行った最外径部Qを示すデータが、表示装置45に出力される。これにより、作業者は、最外径部Qの差等を、視覚的に確認しやすい。
【0045】
〔本実施形態の形状測定装置10について〕
以上のように、本実施形態の研磨用加工工具形状測定装置10は(図1参照)、被加工物Wを加工する研磨用加工工具(砥石51)と、研磨用加工工具(砥石51)を中心軸C1回りに回転させる第一回転装置11と、研磨用加工工具(砥石51)の外周と対向して配置される非接触式の非接触センサ41と、非接触センサ41の出力を処理する処理装置40とを有する。処理装置40は、回転する研磨用加工工具(砥石51)を測定対象とする非接触センサ41の測定結果に基づいて、研磨用加工工具(砥石51)の外周面51aにおける最外径部Qを示すデータを取得する(図5参照)。
【0046】
前記構成を有する研磨用加工工具形状測定装置10によれば、研磨用加工工具が、砥石51である場合、その砥石51の外周面51aにおける最外径部Qを示すデータが取得される。最外径部Q(最外径部Qの位置を結ぶ曲線)の形状が、その砥石51による加工の対象となる製品(被加工物W)に転写され、製品の最終形状となる。
したがって、製品(被加工物W)の最終形状を推定(取得)ことが可能となる。図9に示す従来のように、転写ピース99は不要であり、効率よく製品の最終形状を取得することが可能となる。
【0047】
研磨用加工工具は、ロータリドレッサ52であってもよく、この場合、ロータリドレッサ52による加工の対象は砥石51となる。処理装置40は、ロータリドレッサ52を測定対象とする非接触センサ42の測定結果に基づいて、ロータリドレッサ52の外周面52aにおける最外径部Pを示すデータを取得する(図6参照)。この構成によれば、ロータリドレッサ52により形状を整えた砥石51により加工を行った場合の製品(被加工物W)の最終形状を推定(取得)ことが可能となる。
【0048】
非接触センサ41(42)は、固定式であり、研磨用加工工具の外周面との間の変位を計測するセンサである。
この構成により、センサ41(42)と砥石51(ロータリドレッサ52)とを相対的に移動させて走査しなくても、砥石51(ロータリドレッサ52)の外周面51a(52a)における形状を幅方向について一度に検出可能である。砥石51(ロータリドレッサ52)を回転させれば、その外周面51a(52a)における最外径部Q(P)を示すデータを取得することが可能となる。
【0049】
本実施形態では、処理装置40は、最外径部Q(P)を示すデータに基づいて、研磨用加工工具(砥石51又はロータリドレッサ52)の外周面の形状を示すパラメータを算出する。処理装置40は、研磨用加工工具(砥石51又はロータリドレッサ52)の形状を評価するために好適なパラメータを算出することにより、製品の形状精度が確保され、製品の性能を高めることが可能となる。
【0050】
処理装置40は、前記パラメータとして、砥石51の外周面51aにおける曲率半径Rを算出する(図5参照)。加工対象となる製品(被加工物W)が、ボールが転がり接触する溝(螺旋溝)を有し、その溝(螺旋溝)が砥石51により加工される場合、形状精度の高い溝を得ることが可能となる。
なお、被加工物Wは、ボールナット式ステアリングのシャフト以外であってもよく、例えば、玉軸受であってもよい。この場合、前記溝は、周方向に連続するボール溝となる。
【0051】
処理装置40は、前記パラメータとして、被加工物Wに対する砥石51の接触角θを算出する(図7参照)。加工対象となる製品(被加工物W)が、ボールが転がり接触する溝を有し、その溝が砥石51により加工される場合、形状精度の高い溝を得ることが可能となる。
【0052】
〔その他〕
前記実施形態では、形状測定の対象となる研磨用加工工具は、外周面に、断面が円弧形状となる部分を有する研磨用加工工具であり、その具体例として、砥石51である場合と、砥石51の形状を整えるロータリドレッサ52である場合とを説明した。本発明の研磨用加工工具形状測定装置による形状測定の対象となる研磨用加工工具は、他であってもよい。
【0053】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10 研磨用加工工具形状測定装置
11 第一回転装置
12 第二回転装置
40 処理装置
41 非接触センサ
42 非接触センサ
51 砥石(研磨用加工工具)
51a 外周面
52 ロータリドレッサ(研磨用加工工具)
52a 外周面
C1 中心軸
C2 中心軸
P 最外径部
Q 最外径部
R 曲率半径
θ 接触角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9