IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本海洋サービスの特許一覧

<>
  • 特開-ウォールソー装置 図1
  • 特開-ウォールソー装置 図2
  • 特開-ウォールソー装置 図3
  • 特開-ウォールソー装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164379
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ウォールソー装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/04 20060101AFI20241120BHJP
   B28D 7/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B28D1/04 A
B28D1/04 B
B28D7/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079816
(22)【出願日】2023-05-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】595065150
【氏名又は名称】株式会社日本海洋サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【弁理士】
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】板橋 克幸
【テーマコード(参考)】
3C069
【Fターム(参考)】
3C069AA01
3C069BA01
3C069BA04
3C069BC02
3C069BC04
3C069CA07
3C069DA01
3C069DA05
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】潜水作業員の安全を確保しつつ、水流による振動の発生を抑制できる、水中使用に適したウォールソー装置を提供する。
【解決手段】円板状のブレード2と、ブレード2を回転駆動する回転駆動機構3と、切断部位に沿ってブレード2を移動させる走行機構4と、ブレード2を被覆するブレードカバー5とを有し、水中のコンクリート構造物の切断に用いるウォールソー装置1において、ブレードカバー5として、コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、かつ、ブレード2の回転に伴ってブレードカバー5内に生じる水流をカバーの外部に流出させる複数の貫通孔51,51,…を有するカバーを用いる。カバーの構成材料としては、パンチングメタル、エキスパンドメタルが好適に用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中においてコンクリート構造物を切断するウォールソー装置であって、
円板状のブレードと、
前記ブレードを回転駆動する回転駆動機構と、
前記ブレードを切断部位に沿って移動させる走行機構と、
前記ブレードを被覆するブレードカバーとを有してなり、
前記ブレードカバーは、前記コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、かつ、前記ブレードの回転に伴って生じる水流を前記ブレードカバーの外部に流出させる通水構造を有している
ことを特徴とするウォールソー装置。
【請求項2】
前記ブレードカバーは、その全体または一部を形成する構成材料として、複数の貫通孔を有する板状材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載のウォールソー装置。
【請求項3】
前記板状材はパンチングメタルであることを特徴とする請求項2に記載のウォールソー装置。
【請求項4】
前記板状材はエキスパンドメタルであることを特徴とする請求項2に記載のウォールソー装置。
【請求項5】
前記走行機構は、前記切断部位に沿って配設される走行用レールと、前記走行用レール上を走行する走行体と、前記走行体の制御装置とを有してなり、
前記走行体は、動力源として油圧モータを備えるとともに、前記走行用レールを撮像する撮像装置を備え、
前記制御装置は、水上に配置され、前記撮像装置で撮像された画像を表示する表示部と、前記油圧モータに油圧油を供給する油圧ポンプを制御する操作部とを有している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のウォールソー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウォールソー装置に関し、より詳細には、水中のコンクリート構造物を切断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりコンクリート構造物を切断する装置として、ウォールソー装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のウォールソー装置は、円板状のブレードと、ブレードを回転駆動する回転駆動機構と、コンクリート構造物の切断部位に沿ってブレードを移動させる走行機構とを主要部として備えており、ブレードを回転させながらコンクリート構造物に切り込むとともに、切り込んだブレードを切断部位に沿って移動させることで、コンクリート構造物を切断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3144719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のウォールソー装置は、安全上の観点から、ブレードにはブレードカバーが設けられている。ブレードカバーは、コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、このカバーによって、ブレードの両側面、移動方向の前後両側、および、ブレードの上部が被覆される構造を有している。
【0006】
しかしながら、このようなブレードカバーを備えたウォールソー装置は、水中での使用に適さない。ブレードカバーを備えたウォールソー装置を用いて水中のコンクリート構造物を切断しようとすると、ブレードの回転駆動によってブレードカバー内に強い水流が発生する。発生した水流はブレードカバーをコンクリート構造物から引き離すように作用するため、走行機構上のブレードがブレードカバー内の水流によって激しく振動し、その結果、切断作業が困難になる。
【0007】
なお、このような振動はブレードカバーを取り除くことによって解消し得るが、ブレードカバーを取り外して切断作業を行うと、回転するブレードが露出することになるため、ケーブル類の巻き込みや潜水作業員との接触などのおそれが生じ、安全管理上好ましくない。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、潜水作業員の安全を確保しつつ、水流による振動の発生を抑制できる、水中使用に適したウォールソー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るウォールソー装置は、水中においてコンクリート構造物を切断するウォールソー装置であって、円板状のブレードと、上記ブレードを回転駆動する回転駆動機構と、上記ブレードを切断部位に沿って移動させる走行機構と、上記ブレードを被覆するブレードカバーとを有してなり、上記ブレードカバーは、上記コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、かつ、上記ブレードの回転に伴って生じる水流を上記ブレードカバーの外部に流出させる通水構造を有していることを特徴とする。
【0010】
この発明では、円板状のブレードを収容するブレードカバーが、コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、かつ、ブレードの回転に伴って生じる水流をブレードカバーの外部に流出させる通水構造を有していることから、水中のコンクリート構造物の切断にあたり、水中でブレードを回転駆動させもブレードの回転によって発生する水流は通水機構を通じて外部に流出する。そのため、水流の影響によるブレードの振動が軽減され、水中での切断作業を円滑に行うことができる。
【0011】
そして、本発明は好適な実施態様として、上記ブレードカバーは、その全体または一部を形成する構成材料として、複数の貫通孔を有する板状材が用いられていることを特徴とする。たとえば、上記板状材として、パンチングメタルやエキスパンドメタルが好適に用いられる。
【0012】
また、本発明は他の好適な実施態様として、上記走行機構は、上記切断部位に沿って配設される走行用レールと、上記走行用レール上を走行する走行体と、上記走行体の制御装置とを有してなり、上記走行体は、動力源として油圧モータを備えるとともに、上記走行用レールを撮像する撮像装置を備え、上記制御装置は、水上に配置され、上記撮像装置で撮像された画像を表示する表示部と、上記油圧モータに油圧油を供給する油圧ポンプを制御する操作部とを有していることを特徴とする。
【0013】
この発明では、切断部位に沿ってブレードを移動させる走行体に備えられた撮像装置によって走行用レールの画像が撮像されるとともに、撮像された画像が水上に配置された制御装置の表示部に表示されるので、オペレータは、表示部の画像によって走行体の走行距離を把握することができる。また、制御装置の操作部により、走行体の動力源となる油圧モータに油圧油を供給する油圧ポンプを制御できるので、オペレータは走行体の走行距離を確認しながら走行体を走行させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブレードの回転によって発生する水流は通水機構を通じてブレードカバーの外部に流出するので、水流の影響によるブレードの振動を抑制でき、水中での切断作業を円滑に行うことができる。また、ブレードはブレードカバーによって覆われているので、潜水作業員やケーブルなどのブレードとの接触事故を防止することができ、作業を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るウォールソー装置の一例を示す正面図である。
図2】同ウォールソー装置の右側面図である。
図3】同ウォールソー装置の平面図である。
図4】同ウォールソー装置の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
実施形態1
本発明に係るウォールソー装置1は、水中においてコンクリート構造物を切断するウォールソーであって、図1乃至3に示すように、円板状のブレード2と、ブレード2を回転駆動する回転駆動機構3と、ブレード2を切断部位に沿って移動させる走行機構4と、ブレード2を被覆するブレードカバー5と、後述する油圧モータの駆動装置6と、制御装置7とを主要部として有している。
【0018】
ブレード2は、主にコンクリート・石材などの切断に用いるカッターブレードである。ブレード2は、全体が略円板状を呈した金属製のカッターで構成されており、中央に回転駆動機構3への装着用の装着部が設けられるとともに、外周部にコンクリート切断用の切削刃(チップ)が設けられている。
【0019】
回転駆動機構3は、ブレード2を回転駆動させるための機構部分であって、図示しない主軸と、主軸を回転駆動する油圧モータ31とで構成されており、主軸の先端にブレード2が着脱可能に取り付けられるようになっている。なお、図において符号32は、油圧モータ31に油圧油を供給する往き油圧ホースと油圧モータ31から油圧油を戻す戻り油圧ホースを簡略化して示している。
【0020】
また、油圧モータ31は、ブレード2による切込みが行えるように、主軸と直交する方向(図2では上下方向)に移動可能に構成されている。本実施形態では、油圧モータ31を手動で上下移動させる切込み移動機構33が備えられている。切込み移動機構33は、一端が後述する走行体42に固定された基軸34と、操作ハンドル35の操作に連動して基軸34上を上下に移動するスライドベース36とを主要部として備えており、スライドベース36に油圧モータ31が取り付けられている。すなわち、本実施形態に示すウォールソー装置1では、操作ハンドル35の操作によって、ブレード2の切込み量を任意に調節できるようになっている(たとえば、図1の二点鎖線参照)。
【0021】
走行機構4は、ブレード2を切断部位に沿って移動させるための機構部分であって、走行用レール41と、走行用レール41上を走行する走行体42とを主要部として備えている。
【0022】
走行用レール41は、走行体42の走行位置を案内するガイドレールを構成する部材であって、図3に示すように、走行体42の係合凸部47と係合する係合溝部43と、走行体42に設けられたピニオンギヤと係合するラック44と、走行用レール41を切断対象のコンクリート構造物に固定するためのアンカー挿通穴45とが備えられている。
【0023】
一方、走行体42は、走行用の動力源を構成する油圧モータ46と、走行用の油圧モータ46の主軸に設けられたピニオンギヤ(図示せず)と、係合凸部47とを備えている。そして、係合凸部47を走行用レール41の係合溝部43に係合させることによって、走行体42が走行用レール41上を案内される。なお、この係合にあたっては、図示しない脱落防止機構が備えられており、たとえば、コンクリート構造物の壁面に走行用レール41が取り付けられた場合でも走行体42が走行用レール41から脱落しないようになっている。
【0024】
また、走行用の油圧モータ46のピニオンギヤは走行用レール41のラック44と噛合い係合することで、走行用の油圧モータ46の動力がピニオンギヤを介してラック44に伝達され、走行体42が走行用レール41上を走行する。なお、図において符号48は、走行用の油圧モータ46に油圧油を供給する往き油圧ホースと油圧モータ46から油圧油を戻す戻り油圧ホースを簡略化して示している。
【0025】
また、本実施形態に示すウォールソー装置1では、走行体42には、走行用レールを撮像する撮像装置8が備えられている。ここで、撮像装置8を用いて走行用レール41を撮像するのは、走行レール41を撮影することによってウォールソー装置1の移動距離、すなわち、切断距離を把握できるようにするためである。そのため、たとえば、撮像装置8で撮像される走行用レール41側に、切断距離の把握を容易にする目盛り(たとえば、所定間隔で目印となる印)を設けておくのが好ましい。
【0026】
そして、この撮像装置8は、通信ケーブル81を介して制御装置7と接続され、撮像装置8で撮影された画像は制御装置7の表示部71に表示可能とされている。なお、撮像装置8で撮影される画像は静止画でもよいが、本実施形態では動画を撮影するように構成されている。
【0027】
ブレードカバー5は、ブレード2を被覆するためのカバーであって、コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされている。
【0028】
本実施形態では、このブレードカバー5は、複数の貫通孔51,51,…を有する板状の部材を容器状に組み立てることによって形成されている。ここで、このようにブレードカバー5の構成材料として複数の貫通孔51,51,…を有する板状材を用いているのは、水中でブレード2を回転させたときにブレードカバー5内に生じる水流をこれらの貫通孔51,51,…を通じてブレードカバー5の外部に流出させるためである(貫通孔51,51,…による通水構造の採用)。
【0029】
具体的には、ブレードカバー5は、ブレード2の側面を被覆する正面パネル5aおよび背面パネル5bと、ブレード2の移動方向の前後両側を被覆する左右の側面パネル5c,5dと、ブレード2の上側を被覆する上面パネル5eとで構成されており、各パネル5a~5eについて、それぞれ複数の貫通孔51を有するパンチングメタルが用いられている。
【0030】
なお、図示例では、上面パネル5eが中央部を平坦にし、両端部を左右の側面パネル5c、5dに向かって曲折した形状とした場合を示しているが、ブレード2を収容可能な形状であれば、ブレードカバー5の形状は適宜変更可能である。たとえば、上面パネル5eをブレード2の外周に沿った円弧状に形成したり、あるいは、上面パネル5eを平坦面のみで構成するなどの変更が可能である。
【0031】
また、図示例では、油圧モータ31の主軸に1枚のブレード2のみを装着する構成(1条切り)を示しているが、主軸に複数のブレード2を装着する構成(たとえば、ブレード2を2枚装着する2条切り、3枚装着する3条切りなど)の場合、側面パネル5c,5dおよび上面パネル5eの幅寸法は、装着するブレード2の枚数に合わせて適宜拡張したものが用いられる。
【0032】
油圧モータの駆動装置6は、油圧モータ31および走行用の油圧モータ46に対して、モータ作動用の油圧油を供給する装置である。本実施形態では、油圧油の供給を受ける油圧ポンプとして、ブレード2の回転駆動機構3を構成する油圧モータ31と、ブレード2の走行機構4を構成する走行用の油圧モータ46とが存在するので、これらの2系統について、それぞれ油圧ポンプ、油圧制御弁、オイルフィルタなど、油圧ポンプを作動させるための機構が備えられている。
【0033】
制御装置7は、油圧モータの駆動装置6を制御する装置である。この制御装置7には、撮像装置8で撮像された画像を表示する表示部71と、油圧モータの駆動装置6に備えられた油圧ポンプを制御する操作部72とが備えられており、制御装置7のオペレータは、表示部71に表示される画像を視認しながら、油圧ポンプの操作、すなわち、油圧モータ31,46に供給する油圧油の油圧を調節できるようになっている。なお、この制御装置7は、水上、たとえば、ウォールソー装置1を使用するコンクリート構造物に近傍の陸上(または船上)に配置され、陸上(または船上)から水中のウォールソー装置1の操作が行えるようになっている。
【0034】
次に、このように構成されたウォールソー装置1による水中のコンクリート構造物の切断作業について説明する。
【0035】
ウォールソー装置1の使用にあたっては、まず、切断対象となるコンクリート構造物の切断部位(切断予定部位)に沿って走行用レール41を設置する。走行用レール41の設置は、コンクリート構造物の所定位置にアンカーボルト(図示せず)を設置し、設置したアンカーボルトにアンカー挿通穴45を利用して走行用レール41を固定する。
【0036】
走行用レール41の設置が完了すると、次に、走行レール41上にブレード2およびブレード2の回転駆動機構3などを含む走行体42を装着する。走行体42の装着は、走行体42の係合凸部47を走行用レール41の係合溝部43に係合させるとともに、走行用油圧モータ46に設けられたピニオンギヤを走行用レール41のラック44に噛合わせることによって行う。なお、ここまでの作業はいずれも水中での作業になるため、潜水作業員によって行われる。
【0037】
走行体42の装着が完了すると、ここからは潜水作業員と陸上(または船上)に配置した制御装置7のオペレータの協働によって切断作業が進められる。
【0038】
すなわち、制御装置7のオペレータは、制御装置の表示部71を視認して走行体42の初期位置、つまり、ブレード2の初期位置を確認し、ブレード2が切断作業の作業開始位置にあることを確認する。作業位置にないときには、オペレータが操作部72を操作して走行用の油圧モータ46に油圧油を供給して走行体42を所定の作業開始位置に配置させるか、あるいは潜水作業員が手作業で走行体42を作業開始位置に配置させる。
【0039】
走行体42が作業開始位置に配置されると、制御装置7のオペレータは、回転駆動機構3の油圧モータ31を作動させてブレード2を回転駆動させる。このとき、切込み移動機構33は、油圧モータ31を上方に配置しており、ブレード2はコンクリート構造物から離れた位置で回転を開始する。
【0040】
ブレード2が回転を始めると、潜水作業員は、切込み移動機構33の操作ハンドル35を操作してブレード2によるコンクリート構造物への切込み量を設定する。すなわち、操作ハンドル35を操作して、油圧モータ31を走行用レール41側に下降させて、ブレード2による切込みを行わせる。
【0041】
コンクリート構造物への切込み量が設定量に到達すると、次に、制御装置7のオペレータは、撮像装置8で撮像された走行用レール41の画像を表示部71で確認しながら、操作部72を操作して走行用の油圧モータ46を作動させて、走行体42を走行用レール41に沿って移動させる。これにより、回転するブレード2が走行用レール41に沿って移動することになり、コンクリート構造物が切断される。
【0042】
このとき、本発明に係るウォールソー装置1では、ブレードカバー5が、ブレード2の回転に伴ってブレードカバー5内に生じる水流を外部に流出させる通水構造を備えている(本実施形態では全体がパンチングメタルで構成されている)ことから、ブレード2の回転によって発生する水流は通水機構を通じて外部に流出する。そのため、水流の影響によるブレード2の振動が大幅に軽減され、水中での切断作業を円滑に行うことができる。
【0043】
また、コンクリート構造物の切断作業中、陸上の制御装置7の表示部71には走行用レール41の画像が表示されるので、制御装置7のオペレータは、表示部71の表示を視認しながら操作部72を操作して走行体42の走行を制御できる。そのため、制御装置7のオペレータは、表示部71を確認しながら、陸上から、あらかじめ決められた距離を正確に切断することができる。また、切断作業中、たとえばブレード2がコンクリート構造物の鉄筋に当たったような場合、オペレータは走行体42の走行速度を緩めるなど、切断部位の状況に応じた適切な制御を行うことができる。
【0044】
加えて、本発明に係るウォールソー装置1によれば、ブレード2はブレードカバー5によって覆われることになるので、水中での作業中に、ケーブル、ホース、浮遊物などが接触したり、あるいは、潜水作業員がブレードに接触するおそれがないので、切断作業を安全に行うことができる。
【0045】
実施形態2
次に、本発明の第2の実施形態を図4を用いて説明する。
第2の実施形態に示すウォールソー装置1は、ブレード2を収容するブレードカバー5の構成材料を改変したものである。ブレードカバー5の構成材料の変更以外は、上述した実施形態1のウォールソー装置1と同様である。したがって、構成が共通する部位には同一の符合を付して説明を省略する。
【0046】
本実施形態に示すウォールソー装置1では、ブレードカバー5の構成材料としてエキスパンドメタルを用いている。周知のとおり、エキスパンドメタルは、金属材料に千鳥状の切れ目を入れて押し伸ばすことによって、菱形・亀甲形などの網目状に加工した部材であって、パンチングメタルに比して貫通孔51,51,…を大きくとることができる。そのため、ブレードカバー5の構成材料としてエキスパンドメタルを用いることで、ブレードカバー5内に発生する水流をより効率的に外部に排出することができ、高い振動抑制効果を得ることができる。
【0047】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0048】
たとえば、上述した実施形態では、ブレードカバー5の全体、すなわち、ブレードカバー5を構成するパネル5a~5eのすべてに貫通孔51を有するパンチングメタルを用いた場合を示したが、一部のパネルについてのみ(たとえば、側面パネル5c,5dのみ)にパンチングメタルを採用するといったようなブレードカバー5の一部にだけ通水構造を採用することも可能である。
【0049】
また、上述した実施形態では、ブレードカバー5を構成する構成材料として、パンチングメタル、エキスパンドメタルを用いた場合を示したが、ブレードカバー5の構成材料としては、複数の貫通孔51,51,…を有する板状の部材であれば、パンチングメタル、エキスパンドメタル以外の部材を用いることも可能である。また、実施形態1では、丸孔のパンチングメタルを用いた場合を示したが、丸孔以外の貫通孔、たとえば、角孔や長孔などのパンチングメタルを用いることももちろん可能である。
【0050】
また、上述した実施形態では、ブレード2に切込み動作を行わせる切込み移動機構33として、油圧モータ31の高さ位置を手動で操作する構成を示したが、たとえば、油圧モータ31の高さ位置(上下方向の位置)を変更するための第3の油圧モータを別途設けておき、第3の油圧モータも他の油圧モータと同様に、陸上の制御装置7から制御可能に構成しておくことも可能である。その場合、油圧モータ31の上下方向の位置、すなわち、ブレード2の切込み量を陸上の制御装置7から把握できるように、油圧モータ31の高さ位置を撮像する第2の撮像装置を設けておくのが好ましい。このように構成することで、コンクリート構造物にウォールソー装置1を装着した後は、潜水作業員の手を煩わすことなく、陸上から制御装置7の操作によってコンクリート構造物の切断作業を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0051】
1 ウォールソー装置
2 ブレード
3 回転駆動機構
4 走行機構
5 ブレードカバー
5a 正面パネル
5b 背面パネル
5c,5d 側面パネル
5e 上面パネル
6 油圧モータの駆動装置
7 制御装置
8 撮像装置
31,46 油圧モータ
32,48 油圧ホース
33 切込み移動機構
35 操作ハンドル
41 走行用レール
42 走行体
51 貫通孔
71 制御装置の表示部
72 制御装置の操作部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中においてコンクリート構造物を切断するウォールソー装置であって、
円板状のブレードと、
前記ブレードを回転駆動する回転駆動機構と、
前記ブレードを切断部位に沿って移動させる走行機構と、
前記ブレードを被覆するブレードカバーとを有してなり、
前記ブレードカバーは、前記コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、かつ、前記ブレードの回転に伴って生じる水流を前記ブレードカバーの外部に流出させる通水構造を有し、
前記走行機構は、前記切断部位に沿って配設される走行用レールと、前記走行用レール上を走行する走行体と、前記走行体の制御装置とを有してなり、
前記走行体は、動力源として油圧モータを備えるとともに、前記走行用レールを撮像する撮像装置を備え、
前記制御装置は、水上に配置され、前記撮像装置で撮像された画像を表示する表示部と、前記油圧モータに油圧油を供給する油圧ポンプを制御する操作部とを有している
ことを特徴とするウォールソー装置。
【請求項2】
前記ブレードカバーは、その全体または一部を形成する構成材料として、複数の貫通孔を有する板状材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載のウォールソー装置。
【請求項3】
前記板状材はパンチングメタルであることを特徴とする請求項2に記載のウォールソー装置。
【請求項4】
前記板状材はエキスパンドメタルであることを特徴とする請求項2に記載のウォールソー装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るウォールソー装置は、水中においてコンクリート構造物を切断するウォールソー装置であって、円板状のブレードと、上記ブレードを回転駆動する回転駆動機構と、上記ブレードを切断部位に沿って移動させる走行機構と、上記ブレードを被覆するブレードカバーとを有してなり、上記ブレードカバーは、上記コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、かつ、上記ブレードの回転に伴って生じる水流を上記ブレードカバーの外部に流出させる通水構造を有し、上記走行機構は、上記切断部位に沿って配設される走行用レールと、上記走行用レール上を走行する走行体と、上記走行体の制御装置とを有してなり、上記走行体は、動力源として油圧モータを備えるとともに、上記走行用レールを撮像する撮像装置を備え、上記制御装置は、水上に配置され、上記撮像装置で撮像された画像を表示する表示部と、上記油圧モータに油圧油を供給する油圧ポンプを制御する操作部とを有していることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
この発明では、円板状のブレードを収容するブレードカバーが、コンクリート構造物と対面する側が開放された容器状の形態とされ、かつ、ブレードの回転に伴って生じる水流をブレードカバーの外部に流出させる通水構造を有していることから、水中のコンクリート構造物の切断にあたり、水中でブレードを回転駆動させもブレードの回転によって発生する水流は通水機構を通じて外部に流出する。そのため、水流の影響によるブレードの振動が軽減され、水中での切断作業を円滑に行うことができる。
また、切断部位に沿ってブレードを移動させる走行体に備えられた撮像装置によって走行用レールの画像が撮像されるとともに、撮像された画像が水上に配置された制御装置の表示部に表示されるので、オペレータは、表示部の画像によって走行体の走行距離を把握することができる。また、制御装置の操作部により、走行体の動力源となる油圧モータに油圧油を供給する油圧ポンプを制御できるので、オペレータは走行体の走行距離を確認しながら走行体を走行させることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】