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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164380
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ドア下シール構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/18 20060101AFI20241120BHJP
   F25D 23/02 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
E06B7/18 E
F25D23/02 305Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079817
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】514137573
【氏名又は名称】ガリレイパネルクリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】木全 宏尚
【テーマコード(参考)】
2E036
3L102
【Fターム(参考)】
2E036AA02
2E036AA03
2E036BA01
2E036BA04
2E036CA01
2E036DA02
2E036DA12
2E036EB02
2E036EC01
2E036GA02
2E036HB14
3L102JA02
3L102KA01
3L102KB05
3L102KC02
3L102KC07
3L102KC10
3L102KC11
(57)【要約】
【課題】ドアの下縁部およびその下方の床面の隙間に応じて容易に調整可能なできるドア下シール構造を提供する。
【解決手段】ドア下シール構造40は、ドア4の下縁部に沿うように横方向にのびた帯板状のゴム弾性材からなり、ドア4の下縁部の略垂直な取付面43に垂下状に取り付けられたズリパッキン44を備えており、ズリパッキン44には、上下方向にのびた長孔またはスリットよりなる複数のネジ挿通部45がズリパッキン44の長さ方向に間隔をおいて並列状に形成されており、複数のネジ挿通部45をそれぞれ挿通させられて取付面43にねじ止めされた複数の取付ネジ46によって、ズリパッキン44が取付面43に複数のネジ挿通部45の長さの範囲内で上下位置調整可能に取り付けられており、ズリパッキン44の両面のうち少なくとも一方の面に、位置調整のために上下方向にずらす際のズリパッキン44の変形および/または摩擦抵抗を抑制するための補助シート49が接合されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性および/または気密性が要求される壁にあけられた開口を開閉自在に閉じるドアの下縁部に設けられて、閉位置における前記ドアの下縁部とその下方の床面との隙間をシールするドア下シール構造であって、
前記ドアの下縁部に沿うように横方向にのびた帯板状のゴム弾性材からなり、前記ドアの下縁部の略垂直な取付面に垂下状に取り付けられたズリパッキンを備えており、
前記ズリパッキンには、上下方向にのびた長孔またはスリットよりなる複数のネジ挿通部が前記ズリパッキンの長さ方向に間隔をおいて並列状に形成されており、
前記複数のネジ挿通部をそれぞれ挿通させられて前記取付面にねじ止めされた複数の取付ネジによって、前記ズリパッキンが前記取付面に前記複数のネジ挿通部の長さの範囲内で上下位置調整可能に取り付けられており、
前記ズリパッキンの両面のうち少なくとも一方の面に、位置調整のために上下方向にずらす際の前記ズリパッキンの変形および/または摩擦抵抗を抑制するための補助シートが接合されている、ドア下シール構造。
【請求項2】
前記複数の取付ネジの頭部と前記ズリパッキンにおける前記取付面と反対側の面との間に、前記ズリパッキンの長さ方向に沿ってのびかつ前記複数の取付ネジの締付力により前記ズリパッキンを前記取付面に向かって押圧する押さえ板が設けられており、
前記補助シートは、位置調整のために前記ズリパッキンに対して上向きまたは下向きの外力を作用させた際に、前記取付面と前記押さえ板との間で前記ズリパッキンが圧縮または伸長変形することを抑制しうるもの、および/または、前記取付面および前記押さえ板の押さえ面のうち少なくとも一方との間の摩擦抵抗を抑制しうるものである、請求項1記載のドア下シール構造。
【請求項3】
前記複数のネジ挿通部が前記ズリパッキンの上側部に形成されており、前記補助シートが、前記ズリパッキンの両面のうち少なくとも一方の面の上側部における少なくとも前記複数のネジ挿通部の周囲の部分に接合されている、請求項1記載のドア下シール構造。
【請求項4】
前記補助シートは、樹脂フィルム、金属箔、金属蒸着フィルム、またはこれらの二種以上を積層した複合材よりなるものであって、接着剤層または粘着剤層を介して前記ズリパッキンの両面のうち少なくとも一方の面に接合されている、請求項1記載のドア下シール構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば組立式の冷凍冷蔵庫、物流センター、食品加工室、クリーンルーム等のドアに適用されるドア下シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記建物は一般的に、使用者の出入りや物品の搬入出のための出入口として壁の所定箇所に開口が形成され、その開口を開閉するためのドアが取り付けられている。なかでも、上記出入口において、例えば物品の搬入出の際に台車等に物品を載せて出入りできるように出入口の下縁が床面に対して開放されたウォークイン形式と称される形態が広く採用されている。一方で上記建物は断熱性および/または気密性が要求されるため、出入口においてドアを設置して建物の内部と外部とを遮断する場合、ドアの周縁の全周にわたってパッキンを装着し、ドアの閉位置においてパッキンと開口縁または開口縁に取り付けられた開口枠とを密着させることで建物を密閉する構造が採用される。しかし、ウォークイン形式の出入口ではドアの周縁の全周にわたってパッキンを装着する構造を採用することができないため、例えば、ドアの上縁から左右の側縁にわたっては開口縁または開口枠に当接するパッキンを配設する一方、ドアの下縁部には、床面に対して接触するシール部材を設けた構造が採用されている。さらに、このような構造のドアにおいて、ドアの設置時に、ドアの下縁部およびその下方の床面の隙間に応じたシール部材の上下方向への調整や、使用に伴って摩耗したシール部材の下端部をカットした場合のシール部材の下方への引き出しを目的として、上下位置調整可能とされたシール部材が求められている。
【0003】
上記のシール部材として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1のシール部材の態様は、扉体の下端部に垂下状に装着され、床面に接触するパッキンと、扉体の下端側面に沿設されてパッキンを押圧する押え金具とを含むスライド扉装置において、パッキンに形成された切れ目および押え金具に形成された長孔にねじを貫挿することでパッキンを扉体の下端に対して高さ調節可能にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-344948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシール部材の場合、扉体の下端および床面間の隙間に応じてパッキンの高さ調節をする際、すなわちパッキンを上下にずらす際、ねじを緩めて作業を行うが、合成ゴム部材からなるパッキンは剛性が低い(いわゆるコシがない)ため、上方向へずらす際は撓みや折れ曲がりといった変形が発生し、下方向へずらす際はパッキンの伸長、特に切れ目における意図しない断裂といった損傷が発生するというおそれがあった。さらに、パッキンは、合成ゴム部材の特性上扉体の下端部、押え金具およびねじとの接触箇所において摩擦抵抗を受けやすく、上記の変形や損傷の発生がさらに増加するというおそれもあった。また、上記の変形や損傷の発生を回避するために、ねじおよび押え金具を完全に取り外してからパッキンを上下へずらす場合は作業効率が低下するという問題があった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、組立式の冷凍冷蔵庫、物流センター、食品加工室、クリーンルーム等におけるドアに適用されるドア下シール構造として、簡易な構成で、作業効率を低下させることなく、ドアの下縁部およびその下方の床面の隙間をこの隙間に応じた調整が容易にできるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)断熱性および/または気密性が要求される壁にあけられた開口を開閉自在に閉じるドアの下縁部に設けられて、閉位置における前記ドアの下縁部とその下方の床面との隙間をシールするドア下シール構造であって、
前記ドアの下縁部に沿うように横方向にのびた帯板状のゴム弾性材からなり、前記ドアの下縁部の略垂直な取付面に垂下状に取り付けられたズリパッキンを備えており、
前記ズリパッキンには、上下方向にのびた長孔またはスリットよりなる複数のネジ挿通部が前記ズリパッキンの長さ方向に間隔をおいて並列状に形成されており、
前記複数のネジ挿通部をそれぞれ挿通させられて前記取付面にねじ止めされた複数の取付ネジによって、前記ズリパッキンが前記取付面に前記複数のネジ挿通部の長さの範囲内で上下位置調整可能に取り付けられており、
前記ズリパッキンの両面のうち少なくとも一方の面に、位置調整のために上下方向にずらす際の前記ズリパッキンの変形および/または摩擦抵抗を抑制するための補助シートが接合されている、ドア下シール構造。
【0009】
2)前記複数の取付ネジの頭部と前記ズリパッキンにおける前記取付面と反対側の面との間に、前記ズリパッキンの長さ方向に沿ってのびかつ前記複数の取付ネジの締付力により前記ズリパッキンを前記取付面に向かって押圧する押さえ板が設けられており、
前記補助シートは、位置調整のために前記ズリパッキンに対して上向きまたは下向きの外力を作用させた際に、前記取付面と前記押さえ板との間で前記ズリパッキンが圧縮または伸長変形することを抑制しうるもの、および/または、前記取付面および前記押さえ板の押さえ面のうち少なくとも一方との間の摩擦抵抗を抑制しうるものである、上記1)に記載のドア下シール構造。
【0010】
3)前記複数のネジ挿通部が前記ズリパッキンの上側部に形成されており、前記補助シートが、前記ズリパッキンの両面のうち少なくとも一方の面の上側部における少なくとも前記複数のネジ挿通部の周囲の部分に接合されている、上記1)に記載のドア下シール構造。
【0011】
4)前記補助シートは、樹脂フィルム、金属箔、金属蒸着フィルム、またはこれらの二種以上を積層した複合材よりなるものであって、接着剤層または粘着剤層を介して前記ズリパッキンの両面のうち少なくとも一方の面に接合されている、上記1)に記載のドア下シール構造。
【発明の効果】
【0012】
上記1)のドア下シール構造によれば、ズリパッキンの変形および/または摩擦抵抗を抑制してズリパッキンを上下方向にずらしやすくなり、さらに、ネジの緩め量が減り、または、ネジを完全に取り外す必要がなくなり、作業効率が向上する。また、ズリパッキンの変形や損傷も防止されるうえ、簡素な構成で上記効果を得ることができるので、製造・管理すべき部品点数が低減し、コストも抑えられる。
【0013】
上記2)のドア下シール構造によれば、ズリパッキンが押さえ板に面接触させられた状態で押圧されるので、ズリパッキンを所望の上下位置で確実に保持できるとともに、ズリパッキン、特にネジ挿通部の周囲に作用するねじの押圧力を分散することができ、損傷のリスクを低下させることができる。
【0014】
上記3)のドア下シール構造によれば、ズリパッキンを下方向に移動した際でもネジ挿通部がドアの下縁部より下方に位置することがなく、断熱性および/または気密性が保たれる。また、補助シートが少なくともネジ挿通部の周囲の部分に接合されていることで、よりズリパッキンの変形および/または摩擦抵抗を抑制してズリパッキンを上下方向によりずらしやすくなり、より作業効率が向上する。さらに、ネジ挿通部の周囲に作用するねじの押圧力による損傷のリスクを確実に低下させることができる。
【0015】
上記4)のドア下シール構造によれば、ズリパッキンに補助シートを接合しても、厚みや重量の増加にともなう作業効率の低下や製造コストの増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態に係るドア下シール部材を取り付けたドアを備えた建物の概略部分斜視図である。
図2】同ドアの下縁部の一部を切り欠いて建物外側から見た部分拡大正面図であり。
図3】同ドアの下縁部の一部を切り欠いて建物内側から見た部分拡大正面図である。
図4】同ドアの下縁部の部分拡大側面図である。
図5図2のA-A線に沿う拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態を、図1図5を参照しながら以下に説明する。
【0018】
図1図5には、この発明の実施形態が示されている。この実施形態は、この発明をプレハブ式冷凍冷蔵庫のドアに適用したものである。以下の説明において、「上下」は図2ないし図5の各上下をいうものとする。「左右」は図1の左上および右下をいうものとする。また、「前後」は図1の左下および右上、ならびに図4および図5の左右をいうものとする。
ただし、これらの図面上での方向による構成部品等の方向の指称は便宜的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。また、以下の説明において、「垂直」との用語には垂直から若干傾いた角度も含まれるものとする。なお、この実施例に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1に示すように、プレハブ式冷凍冷蔵庫(1)は前壁(2)を有している。図示は省略するが、前壁(2)は複数の断熱パネルを連結してなり、断熱パネルは、例えば、ステンレス鋼板やアルミニウム板等よりなる2枚の表面板の対向する縁部間にポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂形材よりなる枠材が介在固定されるとともに、両表面板および枠材によって形成された内部空間に合成樹脂発泡体やロックウール等よりなる芯材が充填されてなる。
【0020】
前壁(2)の所定箇所には、縦長方形の開口(21)が形成されている。開口(21)は、その下縁が床面(8)に対して開放するように形成されている。前壁(2)における開口(21)の縁部には、開口枠(3)が取り付けられている。開口枠(3)は、上枠部材(3a)および左右側枠部材(3b)(3c)よりなる三方枠となされている。各枠部材(3a)(3b)(3c)は、前壁(2)の開口(21)の上縁面および左右側縁面をそれぞれ被覆している内側枠部と、内側枠部の前端縁部分から開口(21)と反対側に向かってのびかつ前壁(2)前面の開口(21)周縁部を被覆している前側枠部とよりなる横断面略L形のものとなされている(図1参照)。また、内側枠部の後部から前壁(2)後面の開口(21)周縁部にかけて、アルミニウム板やステンレス鋼板等よりなる横断面L形の被覆部材が取り付けられている。
【0021】
開口枠(3)の一方の側枠部(図では右側枠部)に、上下2つのヒンジ(6)を介して、断熱ドア(4)の一方の側縁部(図では右側縁部)が取り付けられている。この片開き式の断熱ドア(4)によって、前壁(2)の開口(21)が開閉自在に閉塞されるようになっている。断熱ドア(4)は、前壁(2)を構成している断熱パネルと同様に、例えば、ステンレス鋼板やアルミニウム板等よりなる2枚の表面板(41)の対向する縁部間にポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂形材よりなる枠材(42)が介在固定されるとともに、両表面板(41)および枠材(42)によって形成された内部空間に合成樹脂発泡体やロックウール等よりなる芯材(図示略)が充填されてなる。枠材(42)は、2枚の表面板(41)の対向する縁部間、すなわち、断熱ドア(4)の側面にのみ配置させられていてもいいが、例えば、この実施形態のように、断熱ドア(4)の側面の後端から断熱ドア(4)の後面の周縁部に所定の幅で沿うようになされた横断面略L形のものとされていてもよい。
【0022】
また、詳細は後述するが、断熱ドア(4)の下縁部には、ゴム弾性材からなる帯板状のズリパッキン(44)(一般的にズリゴムと称される)が垂下状に取り付けられて、断熱ドア(4)の閉位置における断熱ドア(4)の下縁部とその下方の床面(8)との隙間をシールする。ここで、断熱ドア(4)の下縁部とは、その下方の床面(8)と対向する水平部(下端面)および水平部の周縁から上方へ立ち上がり状に延びた垂直部(断熱ドア(4)の前後面および左右側面)における所定の高さの範囲を含むものとする。
【0023】
また、ヒンジ(6)は、断熱ドア(4)を所定角度範囲内で開いた状態から自重によって閉扉しうる自閉機構を備えているとともに、断熱ドア(4)の上縁部および開口枠(3)の上枠部には、ドアセルファーが設けられているのが好ましい。(図示略)断熱ドア(4)の前後各面には、戸先側縁部(図では左側縁部)の高さ中間位置に、ハンドル(7)が取り付けられている。
【0024】
なお、断熱ドア(4)後面の上縁部および左右側縁部、より具体的には、断熱ドア(4)の枠材(42)に後方開口凹状に形成されたマグネットパッキン取付部に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等よりなりかつ内部にゴム磁石等のマグネットが収容されたマグネットパッキンが取り付けられ、開口枠(3)の各枠部材(3a)(3b)(3c)における前側枠部前面の開口側部分に、鋼板等の磁性材料よりなる磁着部材(磁着部)が設けられていてもよい。このような構造とすることで、断熱ドア(4)が閉まる際、磁着部材がマグネットパッキンに磁着され、それによって断熱ドア(4)による前壁(2)の開口(21)の密閉効果が向上し、断熱性がより確実に保たれる。
【0025】
ズリパッキン(44)は、断熱ドア(4)における前後面の両面の下縁部の略垂直な取付面(43)に垂下状に取り付けられている。ズリパッキン(44)を断熱ドア(4)における前後面の両面のうちの片方の面のみに取り付けられていてもよいが、前後面の両面に取り付けられている方が好ましい。この実施形態では、前側ズリパッキン(44)は断熱ドア(4)における前面の下縁部(前側の表面板(41)の前面の下縁部)に横方向に沿うように取り付けられており(図2参照)、後側ズリパッキン(44)は断熱ドア(4)における後面の下縁部(枠材(42)の後面)に横方向に沿うように取り付けられている(図3参照)。また、枠材(42)を断熱ドア(4)の側面の前端から断熱ドア(4)の前面の周縁部に所定の幅で沿うような構成として場合、前側ズリパッキン(44)を枠材(42)の前面に取り付ける構成とすることもできる。なお、以下においてズリパッキン(44)とのみ記載した場合は、前側および後側の両ズリパッキン(44)を含むものとする。ズリパッキン(44)の長さは200mm~3300mmとされ、その上下高さは70~150mmとされ、さらに、その厚さは1.0~2.0mmとされる。また、断熱ドア(4)の開閉動作の繰り返しによってズリパッキン(44)の下端が床面(8)と擦れて摩耗することによりシール性が低下した際やズリパッキン(44)の上下高さ調整のために、ズリパッキン(44)の下縁部を横方向に切断するための複数の溝がズリパッキン(44)の下側部に形成されている。なお、ズリパッキン(44)は、その機能を果たしうるゴム弾性を有していれば素材は特に限定されないが、好ましくはゴムやエラストマー等よりなる。
【0026】
ズリパッキン(44)には、上下方向にのびた長孔よりなる複数(この実施形態では4つ)のネジ挿通部(45)がズリパッキン(44)の長さ方向に間隔をおいて並列状に形成されており、4つのネジ挿通部(45)をそれぞれ挿通させられて断熱ドア(4)における前後両面の取付面(43)にねじ止めされた複数(この実施形態では4つ)の取付ネジ(46)によって、ズリパッキン(44)が取付面(43)にネジ挿通部(45)の上下長さの範囲内で上下位置調整可能に取り付けられている。ネジ挿通部(45)は長孔ではなくスリットとされていてもよいし、その個数は複数であれば特に限定されない。ネジ挿通部(45)の形成位置も特に限定されないが、使用者がズリパッキン(44)を手で上下方向へずらす際に使用者による上下方向への外力が均等に伝わりやすよう左右対称に形成されているのが好ましく、さらに、ズリパッキン(44)を上下位置の下限まで下降させた際にネジ挿通部(45)が断熱ドア(4)の下端より下方に位置するということがないようズリパッキン(44)の上側部に形成されているのが好ましく、それらのピッチは0~180mmとされる。また、ネジ挿通部(45)の上下長さや幅は特に限定されず、ズリパッキン(44)やズリパッキン(44)が取り付けられる断熱ドア(4)の規格や、ネジ挿通部(45)の形成位置に応じて適宜設定されるが、上下長さは好ましくはズリパッキン(44)の上下長さの16~36%とされ、その幅は4~8mmとされる。
【0027】
取付ネジ(46)のネジ頭部(47)とズリパッキン(44)における取付面(43)と反対側の面との間に、ズリパッキン(44)の長さ方向に沿って延び、かつ、取付ネジ(46)の締付力によりズリパッキン(44)を取付面(43)に向かって押圧する押さえ板(48)が設けられている。押さえ板(48)を設けず、ネジ頭部(47)で直接ズリパッキン(44)を取付面(43)に向かって押圧する構成にしてもよいが、押さえ板(48)を設けることで、ズリパッキン(44)が押さえ板(48)に面接触させられた状態で押圧されてズリパッキン(44)を所望の上下位置で確実に保持できるとともに、ズリパッキン(44)、特にネジ挿通部(45)の周囲に作用する取付ネジ(46)の押圧力を分散することができ、ズリパッキン(44)の損傷のリスクを低下させることができるため、押さえ板(48)が設けられている方が好ましい。押さえ板(48)の長さは220mm~1500mmとされ、その上下高さは45~100mmとされ、さらに、その厚さは2.0~3.0mmとされる。なお、この実施形態において、断熱ドア(4)の後面の下縁部において、後面側の押さえ板(48)は後面側のズリパッキン(44)の長さ方向の一部にのみ設けられているが、長さ方向の全部に設けられていてもよい。
【0028】
ズリパッキン(44)の両面の上側部には補助シート(49)が接合されている。補助シート(49)は所定の剛性(硬度60°以上)を有しており、ズリパッキン(44)を位置調整のために上下方向にずらす際に、ズリパッキン(44)の変形を抑制する機能を有している。詳細には、補助シート(49)の剛性によって、ズリパッキン(44)の位置調整のために使用者がズリパッキン(44)を手で上向きまたは下向きの外力を作用させた際に、取付ネジ(46)の緩め量が十分でない場合であっても、断熱ドア(4)の取付面(43)と押さえ板(48)(押さえ板(48)を設けない場合はネジ頭部(47))との押圧力、および、使用者による外力の協働によってズリパッキン(44)が圧縮または伸長変形することを抑制して、ズリパッキン(44)の上下位置調整を容易にするものである。
【0029】
さらに、好ましくは、補助シート(49)は所定のすべり特性(0.15以下)を有しており、ズリパッキン(44)を位置調整のために上下方向にずらす際に、ズリパッキン(44)の摩擦抵抗を抑制する機能を有している。詳細には、補助シート(49)のすべり特性によって、ズリパッキン(44)の位置調整のために使用者がズリパッキン(44)を手で上向きまたは下向きの外力を作用させた際に、取付ネジ(46)の緩め量が十分でない場合であっても、断熱ドア(4)の取付面(43)および押さえ板(48)の押さえ面(押さえ板(48)を設けない場合はネジ頭部(47))との間の摩擦抵抗を抑制して、ズリパッキン(44)の上下位置調整を容易にするものである。
【0030】
補助シート(49)の厚みは0.05~0.5mmとされ、その上下高さは25~45mmとされる。補助シート(49)はズリパッキン(44)の両面のうち少なくとも一方の面に接合されていればよいが、両面に接合されている方が好ましい。また、補助シート(49)の接合位置は特に限定されず、その機能を果たしうる範囲で適宜設定され、ズリパッキン(44)の上側部にのみ接合されているようにしてもよいし、さらに、ネジ挿通部(45)の周囲の部分にのみ接合されるようにしてもよい。ネジ挿通部(45)の周囲の部分にのみ接合されていれば、少なくとも取付ネジ(46)の締結力に抗してズリパッキン(44)の変形および/または摩擦抵抗を抑制する効果を発揮しうると考えられる。補助シート(49)は、フィルム、金属箔、金属蒸着フィルム、またはこれらの二種以上を積層した複合材よりなるものであって、接着剤層または粘着剤層を介してズリパッキン(44)に接合されるが、補助シート(49)の材質およびズリパッキン(44)への接合方法は上記のものに限定されず、その機能を果たしうる範囲で適宜変更可能である。
【0031】
また、断熱ドア(4)の下縁部側面(枠材(42))には、サイドズリパッキン(サイドズリゴム)(54)が上下位置調整可能に取り付けられている。図4には断熱ドア(4)の下縁部の右側面におけるサイドズリパッキン(54)を詳細に示しているが、断熱ドア(4)の下縁部の左側面も同様の構成であるため、ここでは右側面を例に説明する。サイドズリパッキン(54)には上下方向にのびた長孔よりなるネジ挿通部(55)が1つ形成されており、ネジ挿通部(55)を挿通させられて断熱ドア(4)の下縁部における右側面の取付面(53)にねじ止めされた取付ネジ(56)によって、サイドズリパッキン(54)が取付面(53)にネジ挿通部(55)の上下長さの範囲内で上下位置調整可能に取り付けられている。サイドズリパッキン(54)の横方向の長さは50mm~70mmとされ、その上下高さは70~150mmとされ、さらに、その厚さは1.0~2.0mmとされる。また、サイドズリパッキン(54)は、ズリパッキン(44)と同様、その機能を果たしうるゴム弾性を有していれば素材は特に限定されないが、好ましくはゴムやエラストマー等よりなる。ネジ挿通部(55)は長孔ではなくスリットとされていてもよいし、その個数は特に限定されず、断熱ドア(4)の厚みやサイドズリパッキン(54)の横方向の長さに応じて適宜設定される。また、ズリパッキン(44)と同様に、サイドズリパッキン(54)の下縁部に横方向に延びた切断用の複数の溝が設けられていてもよい。
【0032】
取付ネジ(56)のネジ頭部(57)とサイドズリパッキン(54)における取付面(53)と反対側の面との間に、取付ネジ(56)の締付力によりサイドズリパッキン(54)を取付面(53)に向かって押圧するサイドズリパッキン押さえ板(58)が設けられている。サイドズリパッキン押さえ板(58)は前縁端から断熱ドア(4)の前面に沿うように折り曲げられた横断面略L形のものとされている。サイドズリパッキン押さえ板(58)の形状はこれに限定されず、ズリパッキン(44)や押さえ板(48)に干渉しない範囲で変更可能である。サイドズリパッキン押さえ板(58)を設けず、ネジ頭部(57)で直接サイドズリパッキン(54)を取付面(53)に向かって押圧する構成にしてもよいが、サイドズリパッキン押さえ板(58)を設けることで、サイドズリパッキン(54)がサイドズリパッキン押さえ板(58)に面接触させられた状態で押圧されてサイドズリパッキン(54)を所望の上下位置で確実に保持できるとともに、サイドズリパッキン(54)、特にネジ挿通部(55)の周囲に作用する取付ネジ(56)の押圧力を分散することができ、サイドズリパッキン(54)の損傷のリスクを低下させることができるため、サイドズリパッキン押さえ板(58)が設けられている方が好ましい。さらに、サイドズリパッキン押さえ板(58)は断熱ドア(4)の下縁部側面に確実に固定されうるように、取付ネジ(56)に加えて、断熱ドア(4)の下縁部側面におけるネジ挿通部(55)の上方のサイドズリパッキン(54)の上下位置調整に干渉しない高さ位置にねじ止めされた固定ネジ(59)によっても固定されうるようになされている。サイドズリパッキン押さえ板(58)の横方向の長さは40mm~50mmとされ、その上下高さは65~75mmとされ、さらに、その厚さは0.8~2.0mmとされる。
【0033】
サイドズリパッキン(54)の上下位置調整は、取付ネジ(56)および固定ネジ(59)を緩め、サイドズリパッキン(54)を上下にずらして行われるが、この作業を容易にするために、サイドズリパッキン(54)に補助シート(49)を接合してもよい。また、前後一方または両方のズリパッキン(44)とサイドズリパッキン(54)とを一体とすることもできるし、その場合、押さえ板(48)およびサイドズリパッキン押さえ板(58)を一体とすることもできる。
【0034】
上記の通り、この実施形態に係るドア下シール構造(40)は、ズリパッキン(44)、取付ネジ(46)、押さえ板(48)および補助シート(49)を含んでおり、この構造のドア下シール構造(40)によれば、ズリパッキン(44)の変形および/または摩擦抵抗を抑制してズリパッキン(44)を上下方向にずらしやすくなり、さらに、取付ネジ(46)の緩め量が減り、または、取付ネジ(46)を完全に取り外す必要がなくなり、作業効率が向上する。また、ズリパッキン(44)の変形や損傷も防止されるうえ、簡素な構成で上記効果を得ることができるので、製造・管理すべき部品点数が低減し、コストも抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明によるドア下シール構造は片開き式のドアだけでなくスライド式のドアにも適用可能であり、また、耐熱性が要求されるプレハブ式冷凍冷蔵庫以外にも、例えば気密性が要求されるクリーンルーム、保管庫等や一般の建物にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
(1): プレハブ式冷凍冷蔵庫
(2): 前壁
(21): 開口
(3): 開口枠
(3a); 上枠部材
(3b): 右側枠部材(一方の側枠部)
(3c): 左側枠部材(他方の側枠部)
(4): 断熱ドア
(40): ドア下シール構造
(41): 表面板
(42): 枠材
(43): 取付面
(44): ズリパッキン
(45): ネジ挿通部
(46): 取付ネジ
(47): ネジ頭部
(48): 押さえ板
(49): 補助シート
(53): 取付面
(54): サイドズリパッキン
(55): ネジ挿通部
(56): 取付ネジ
(57): ネジ頭部
(58): サイドズリパッキン押さえ板
(59): 固定ネジ
(6): ヒンジ
(7): ハンドル
(8): 床面
図1
図2
図3
図4
図5