(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164382
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】異常対処システムおよび異常対処方法
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20241120BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G16H40/40
A61N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079822
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛昌
【テーマコード(参考)】
4C082
5L099
【Fターム(参考)】
4C082AC04
4C082AP11
4C082AR07
4C082AR14
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】粒子線治療装置で異常が発生した場合に、ユーザが治療の継続の可否を直ぐに判断可能な対処項目を表示する。
【解決手段】異常対処システム1は、粒子線治療装置に関する情報を処理する複数のコンピュータ4にネットワークを介して接続された1つ以上の管理コンピュータ2を備え、管理コンピュータ2は、複数のコンピュータ4から粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得し、粒子線治療装置で少なくとも1つの異常が発生したときに、取得した処理情報から異常を検出し、異常を検出したときに、ユーザが異常に対処するための対処方法を示す少なくとも1つの対処項目であり、患者の治療の継続または中断をユーザが判断可能な情報を含む対処項目を表示するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線治療装置に関する情報を処理する複数のコンピュータにネットワークを介して接続された1つ以上の管理コンピュータを備え、
前記管理コンピュータは、
前記複数のコンピュータから前記粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得し、
前記粒子線治療装置で少なくとも1つの異常が発生したときに、取得した前記処理情報から前記異常を検出し、
前記異常を検出したときに、ユーザが前記異常に対処するための対処方法を示す少なくとも1つの対処項目であり、患者の治療の継続または中断を前記ユーザが判断可能な情報を含む前記対処項目を表示する、
ように構成されている、
異常対処システム。
【請求項2】
前記ユーザが前記異常に対処するための各種の前記対処方法を示す複数の前記対処項目が登録されているデータベースを備え、
前記管理コンピュータは、
前記異常を検出したときに、取得した前記処理情報から前記異常の種類を特定し、
特定した前記異常の種類に対応付けて前記データベースに登録されている前記対処項目を特定し、
特定した前記対処項目を表示する、
請求項1に記載の異常対処システム。
【請求項3】
前記管理コンピュータは、
前記異常を検出したときに、前記異常の対処に必要な対処時間から前記患者の前記治療の継続または中断を判定し、
判定した結果を前記対処項目として表示する、
請求項1または請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項4】
前記管理コンピュータは、前記対処時間を予め設定した閾値と比較して前記患者の前記治療の継続または中断を判定する、
請求項3に記載の異常対処システム。
【請求項5】
前記管理コンピュータは、
前記異常を検出したときに、取得した前記処理情報から複数の前記対処項目を特定した場合に、2つ目の前記対処項目の実行に必要な前記対処時間を、1つ目の前記対処項目の実行に必要な時間と前記2つ目の前記対処項目の実行に必要な時間とを合計した時間として算出する、
請求項4に記載の異常対処システム。
【請求項6】
前記管理コンピュータは、前記異常を検出したときに、前記異常の対処に必要な対処時間を表示する、
請求項1または請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項7】
前記管理コンピュータは、前記異常を検出したときに、取得した前記処理情報から複数の前記対処項目を特定した場合に、予め設定された条件に基づいて、優先して表示する前記対処項目の順位を特定する、
請求項1または請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項8】
前記管理コンピュータは、前記異常を検出したときに、取得した前記処理情報から複数の前記対処項目を特定した場合に、前記治療の継続に対応付けられた前記対処項目を優先して表示する、
請求項1または請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項9】
前記管理コンピュータは、前記異常を検出したときに、取得した前記処理情報から複数の前記対処項目を特定した場合に、復旧が成功する確率が最も高い前記対処項目を優先して表示する、
請求項1または請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項10】
前記管理コンピュータは、前記異常を検出したときに、取得した前記処理情報から複数の前記対処項目を特定した場合に、最も現在に近い日時に実行された前記対処項目を優先して表示する、
請求項1または請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項11】
前記管理コンピュータは、前記ユーザの入力により取得した新規な前記対処項目を前記データベースに登録する、
請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項12】
前記管理コンピュータは、前記粒子線治療装置で前記異常が発生すると同時に、関連する他の装置でインターロックが作動した場合に、特定した前記異常の種類に対応付けて前記他の装置に関する情報を前記データベースに登録する、
請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項13】
前記管理コンピュータは、表示された複数の前記対処項目から前記ユーザが指定した前記対処項目に基づいてレポートを生成する、
請求項1または請求項2に記載の異常対処システム。
【請求項14】
粒子線治療装置に関する情報を処理する複数のコンピュータにネットワークを介して接続された1つ以上の管理コンピュータが実行する方法であり、
前記管理コンピュータが、
前記複数のコンピュータから前記粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得し、
前記粒子線治療装置で少なくとも1つの異常が発生したときに、取得した前記処理情報から前記異常を検出し、
前記異常を検出したときに、ユーザが前記異常に対処するための対処方法を示す少なくとも1つの対処項目であり、患者の治療の継続または中断を前記ユーザが判断可能な情報を含む前記対処項目を表示する、
異常対処方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、異常対処技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷電粒子線装置で検出された異常および故障が生じたときに、その対処方法を表示する技術が知られている。荷電粒子線装置は、様々な分野で用いられており、特に、粒子線治療装置が普及している。しかし、従来の技術では、粒子線治療装置で異常が生じたときに、対処にかかる時間が不明確であるため、患者を治療台から降ろすか否かの判断、つまり、治療の継続または中断の判断をユーザが行う必要がある。そのため、ユーザに負担が強いられる。また、直ぐに復旧できるにも関わらず、治療を中断してしまうと、後日再び治療を行う必要があり、患者に負担がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、粒子線治療装置で異常が発生した場合に、ユーザが治療の継続の可否を直ぐに判断可能な対処項目を表示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る異常対処システムは、粒子線治療装置に関する情報を処理する複数のコンピュータにネットワークを介して接続された1つ以上の管理コンピュータを備え、前記管理コンピュータは、前記複数のコンピュータから前記粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得し、前記粒子線治療装置で少なくとも1つの異常が発生したときに、取得した前記処理情報から前記異常を検出し、前記異常を検出したときに、ユーザが前記異常に対処するための対処方法を示す少なくとも1つの対処項目であり、患者の治療の継続または中断を前記ユーザが判断可能な情報を含む前記対処項目を表示する、ように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態により、粒子線治療装置で異常が発生した場合に、ユーザが治療の継続の可否を直ぐに判断可能な対処項目を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】
図4に続く異常情報表示処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、異常対処システムおよび異常対処方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1の符号1は、本実施形態の異常対処システムである。この異常対処システム1は、粒子線治療装置(図示略)に異常が生じたときに、ユーザが異常に対処するための対処方法を提示するシステムである。
【0010】
異常対処システム1は、管理コンピュータ2を備える。この管理コンピュータ2は、ネットワーク3を介して複数の他のコンピュータ4に接続されている。これら他のコンピュータ4は、粒子線治療装置に関する情報を処理する。これら他のコンピュータ4は、例えば、放射線管理、建屋設備、加速器、医用画像処理装置、治療室内機器・制御などの粒子線治療装置に関する情報を処理するものである。
【0011】
管理コンピュータ2は、それぞれの他のコンピュータ4から粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得し、粒子線治療装置で異常が発生した場合に、ユーザに対処方法を示す情報を含む対処項目を提供する。
【0012】
つぎに、異常対処システム1のシステム構成を
図2に示すブロック図を参照して説明する。なお、異常対処システム1には、
図2に示す構成以外のものが含まれてもよいし、
図2に示す一部の構成が省略されてもよい。
【0013】
管理コンピュータ2は、通信部5と表示部6と入力部7と異常情報データベース8と処理回路9とを備える。
【0014】
処理回路9は、異常情報特定部10と対処方法特定部11と対処時間特定部12と連絡先特定部13とを備える。さらに、対処方法特定部11は、回数演算部14と処置日判定部15と順位特定部16とを備える。これらは、メモリまたはHDD(Hard Disk Drive)に記憶されたプログラムがCPU(Central Processing Unit)によって実行されることで実現される。
【0015】
処理回路9は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、専用または汎用のプロセッサを備える回路である。このプロセッサは、各種のプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。また、処理回路9は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアで構成されてもよい。これらのハードウェアによっても各種の機能を実現することができる。また、処理回路9は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。さらに、本実施形態の異常対処方法は、各種プログラムを処理回路9に実行させることで実現される。
【0016】
異常対処システム1の各構成は、必ずしも1つの管理コンピュータ2に設ける必要はない。例えば、1つの異常対処システム1が、ネットワーク3で互いに接続された複数の管理コンピュータ2で実現されてもよい。例えば、異常対処システム1が、それぞれ個別の管理コンピュータ2に搭載されていてもよい。
【0017】
通信部5は、ネットワーク3を介して他のコンピュータ4と通信を行う。ネットワーク3は、例えば、LAN(Local Area Network)などの通信回線である。なお、ネットワーク3は、インターネット、WAN(Wide Area Network)、携帯通信網などでもよい。
【0018】
表示部6は、所定の情報の出力を行う。管理コンピュータ2には、情報を出力するディスプレイなどの画像の表示を行う装置である表示部6が含まれる。
【0019】
入力部7には、管理コンピュータ2を使用するユーザの操作に応じて所定の情報が入力される。この入力部7には、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置が含まれる。つまり、これら入力装置の操作に応じて所定の情報が管理コンピュータ2に入力される。
【0020】
入力部7は、表示部6と連携して情報の入力処理を行う。例えば、表示部6と入力部7は、ユーザの入力操作を、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)で受け付ける。表示部6が所定のブラウザを表示し、ユーザがマウスポインタで画面を指定するとともに、選択と入力の操作が行えるようにしている。
【0021】
異常情報データベース8は、メモリ、HDD、クラウドコンピューティングのリソースに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。異常情報データベース8は、必ずしも管理コンピュータ2の内部のHDDなどの記憶部に記憶される必要はなく、クラウドコンピューティングのリソースに記憶されているものでもよい。つまり、異常情報データベース8は、いずれの場所に記憶されていても、管理コンピュータ2がアクセス可能なものであればよい。
【0022】
異常情報データベース8には、ユーザが粒子線治療装置の異常に対処するための各種の対処方法を示す複数の対処項目が登録されている。なお、異常情報データベース8に登録される対処項目は、予め登録されてもよいし、ユーザが任意に登録するものでもよい。
【0023】
図3に示すように、管理コンピュータ2の表示部6には、粒子線治療装置の異常発生時に各種の対処項目が表示される。異常情報データベース8には、この画面を生成するための情報が登録されている。例えば、対処項目の1つとして、異常を特定するための記号が、異常情報データベース8に登録さていれる。この記号は、それぞれの異常を個々に識別可能な識別情報(異常情報)である。この記号を管理テーブルの主キーとして各種情報が異常情報データベース8に登録されている。新規に生じた異常の対処項目を登録する場合には、管理コンピュータ2が記号を自動的に生成する。
【0024】
異常情報データベース8には、記号に対応付けて、異常フラグ、処置対応、連絡先、異常名称、治療状態、対処時間、最終実行日、備考などの情報(対処項目)が登録される。なお、これらの情報は、予め異常情報データベース8に登録されてもよいし、リアルタイムで登録または更新されるものでもよい。
【0025】
さらに、異常情報データベース8には、ユーザが過去に所定の対処方法を実行して復旧に成功したか否かを示す復旧履歴が登録される。例えば、ユーザが過去に実行した対処方法の実行日(回数)と、復旧に成功した回数(有効回数)と、復旧に失敗した回数(失敗回数)とが異常情報データベース8に登録されている。
【0026】
また、異常情報データベース8には、ユーザが過去に所定の対処方法を実行した場合において、それぞれの対処方法が、有効だったか、どのくらいの時間がかかったかなどの他の情報も登録される。
【0027】
例えば、異常フラグは、異常の種類を示す情報であり、異常が重度なものか、軽度なものかなどの分類を示す情報である。処置対応は、ユーザが行うべきである操作を示す情報である。連絡先は、粒子線治療装置を保守する業者の担当者、粒子線治療装置の製造元であるベンダーなどのユーザが問い合わせるべき者の情報である。異常名称は、異常の種類に対応した名称である。治療状態は、ユーザが処置対応を実行する場合に患者の治療を継続または中断すべきか否かを示す情報である。治療状態は、予め登録された情報のみならず、任意に更新される情報である。対処時間は、ユーザが処置対応を実行するときに必要な時間(復旧までの時間)を示す情報である。最終実行日は、直近で所定の処置対応をしたときの日付を示す情報である。備考は、ユーザまたはベンダーなどの関係者によって以前に入力された任意の情報である。なお、「継続」とは、患者を治療台から降ろさずに当日中に治療を再開することをいう。「中断」とは、ユーザが患者を治療台から降ろし、後日または数時間後に治療を再開することをいう。
【0028】
従来の技術では、異常の発生時に画面に表示される文字数に制限があり、軽度の異常または重故障などの異常の状態に関わらず、記号などで異常の状態を表示していた。この記号の意味がユーザにとって分かり難いという指摘があった。また、異常の発生時に最初の判断でユーザが何を確認して復帰の対応をしなければならないか不明確であるという指摘があった。また、事象の時系列の解析、まとめ、ログの取得などの対応に時間がかかっていた。本実施形態は、このような課題を解決することができる。
【0029】
つぎに、管理コンピュータ2が実行する異常情報表示処理について
図4から
図5のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を参照する場合がある。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。
【0030】
図4に示すように、まず、ステップS1において、異常情報特定部10(
図2)は、それぞれの他のコンピュータ4(
図1)から粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得する。
【0031】
つぎのステップS2において、異常情報特定部10は、取得した処理情報の中に異常を示すものが含まれているか否かを検出する。つまり、異常情報特定部10は、取得した処理情報に基づいて、粒子線治療装置の異常を検出する。ここで、取得した処理情報の中に異常を示すものが含まれている場合(ステップS2でYESの場合)は、ステップS3に進む。一方、取得した処理情報の中に異常を示すものが含まれていない場合(ステップS2でNOの場合)は、異常情報表示処理を終了する。
【0032】
つぎのステップS3において、異常情報特定部10は、検出された異常に対応付けて異常情報データベース8に登録されている異常情報を特定する。例えば、異常情報特定部10は、異常を検出したときに、取得した処理情報から異常情報を特定する。さらに、異常情報特定部10は、異常情報から異常の種類を特定する。
【0033】
つぎのステップS4において、対処方法特定部11(
図2)は、特定した異常情報に対応付けて異常情報データベース8に登録されている対処方法を特定する。この対処方法特定部11は、既知の異常が発生したのか、新規の異常が発生したのかを特定する。例えば、対処方法特定部11は、特定した異常の種類に対応付けて異常情報データベース8に登録されている対処項目が有るか否かを判定する。ここで、特定した異常の種類に対応付けられた対処項目が有る場合(ステップS4でYESの場合)は、ステップS5に進む。一方、特定した異常の種類に対応付けられた対処項目が無い場合(ステップS4でNOの場合)は、ステップS6に進む。
【0034】
ステップS5において、対処時間特定部12(
図2)は、特定した異常の種類に対応付けられた対処項目の対処時間を取得する。ここで、対処項目が1つの場合には、これに対応して異常情報データベース8に登録されている対処時間を取得する。複数の対処項目が有る場合には、それぞれの対処項目に対応して異常情報データベース8に登録されている対処時間を取得する。
【0035】
また、対処時間特定部12は、対処方法の平均時間、最大時間、最小時間のいずれかを対処時間として算出する。この対処時間は、予め算出されて異常情報データベース8に登録されているものでもよい。
【0036】
対処方法特定部11は、対処時間とともに、記号(異常情報)、異常フラグ、処置対応、連絡先、異常名称、治療状態、最終実行日、備考などの情報(対処項目)も取得し、ステップS7に進む。
【0037】
ステップS6において、対処方法特定部11は、新規の異常を示す記号(異常情報)を生成し、異常情報データベース8に登録する。そして、対処方法特定部11は、この記号(異常情報)を表示する。ここで、連絡先特定部13(
図2)は、異常情報データベース8に登録されているベンダーなどの連絡先を特定し、この連絡先を表示部6(
図2)表示し、後述のステップS12に進む。
【0038】
ステップS7において、対処時間特定部12は、対処項目の対処時間を予め設定した閾値と比較する。例えば、対処時間特定部12は、対処時間が閾値以上か否かを判定する。ここで、対処時間が閾値未満である場合(ステップS7でNOの場合)は、ステップS8に進む。一方、対処時間が閾値以上である場合(ステップS7でYESの場合)は、ステップS9に進む。複数の対処項目が有る場合には、それぞれの対処時間の判定(複数回の判定)が行われる。
【0039】
ステップS8において、対処時間特定部12は、対処時間が閾値未満であると判定された対処項目に対応付けられた治療状態を「継続」と判定し、ステップS10に進む。
【0040】
ステップS9において、対処時間特定部12は、対処時間が閾値以上であると判定された対処項目に対応付けられた治療状態を「中断」と判定し、ステップS10に進む。
【0041】
管理コンピュータ2が、対処時間を予め設定した閾値と比較して患者の治療の継続または中断を判定することで、予め設定した閾値により、患者の治療の継続または中断を客観的に判定することができる。
【0042】
また、管理コンピュータ2が、異常の対処に必要な対処時間から患者の治療の継続または中断を判定することで、異常の対処に必要な対処時間により、患者の治療の継続または中断を客観的に判定することができる。なお、この判定は、患者の状態に応じてユーザが任意に行ってもよい。
【0043】
なお、複数の対処項目が有る場合には、優先度が高いものから順に、それぞれの対処時間の判定が行われる。例えば、まず、優先度が1番目の対処方法の対処時間が閾値以上であるか否かの判定が行われる。つぎに、優先度が1番目から2番目までの対処方法の合計の対処時間が閾値以上であるか否かの判定が行われる。つぎに、優先度が1番目から3番目までの対処方法の合計の対処時間が閾値以上であるか否かの判定が行われる。
【0044】
ステップS10において、順位特定部16(
図2)は、それぞれの対処項目の順位、つまり、推奨する対処方法の順位を特定する。この順位特定部16は、複数の対処項目を特定された場合に、予め設定された条件に基づいて、管理コンピュータ2が優先して表示部6に表示する対処項目の順位を特定する。このようにすれば、対処項目の優先順位に従ってユーザが復旧作業を進めることができる。
【0045】
例えば、順位特定部16は、治療の継続に対応付けられた対処項目が優先して表示部6に表示されるように順位を特定する。このようにすれば、患者の治療が中断してしまう事態を極力避けることができる。
【0046】
また、順位特定部16は、復旧が成功する確率が最も高い対処項目が優先して表示部6に表示されるように順位を特定する。ここで、回数演算部14は、異常情報データベース8に登録されている対処項目の中で、異常への対応として有効だった回数(割合)を算出する。例えば、所定の種類の異常に対応付けて複数の対処項目が異常情報データベース8に登録されている場合がある。この場合において、順位特定部16は、回数演算部14で算出した復旧が成功する確率が最も高い順、または、回数演算部14で算出した有効回数が多いもの順に、複数の対処項目を順序付ける。このようにすれば、復旧が成功する確率が最も高い対処項目が優先して表示部6に表示されるため、ユーザが最も適した対処方法から復旧作業を進めることができる。
【0047】
順位特定部16は、例えば、10回実行して5回復旧に成功した対処項目よりも、5回実行して4回復旧に成功した対処項目の方が、復旧が成功する確率が高い(有効回数が多い)対処項目であるとして順位付けをする。
【0048】
また、順位特定部16は、最も現在に近い日時に実行された対処項目が優先して表示部6に表示されるように順位を特定する。例えば、処置日判定部15(
図2)は、それぞれの対処項目において、ユーザが過去に実行した対処方法の実行日を判定する。そして、順位特定部16は、実行日が新しいものから順に、複数の対処項目を順序付ける。このようにすれば、最も現在に近い日時に実行された対処項目が最も復旧が成功する確率が最も高いため、ユーザがこの対処方法から復旧作業を進めることができる。
【0049】
なお、順位特定部16は、対処時間特定部12が算出した対処時間に基づいて、順位付けを行ってもよい。例えば、対処時間特定部12は、複数の対処項目を特定した場合に、2つ目の対処項目の実行に必要な対処時間を、1つ目の対処項目の実行に必要な時間と2つ目の対処項目の実行に必要な時間とを合計した時間として算出する。そして、順位特定部16は、これらの対処時間のうち、最も短いものから順位付けを行うようにする。このようにすれば、ユーザが、2つ目以降の対処項目の実行に必要な時間を把握し、かつ最も短い対処方法から実行することができる。なお、この処理は、ステップS7の判定の前に行ってもよい。
【0050】
また、複数の種類の順位が有る場合において、順位特定部16は、最も現在に近い日時に実行された対処項目よりも、対処時間が最も短い対処項目を優先する。また、順位特定部16は、対処時間が最も短い対処項目よりも、復旧が成功する確率が最も高い対処項目を優先する。また、順位特定部16は、復旧が成功する確率が最も高い対処項目よりも、治療の継続に対応付けられた対処項目を優先する。なお、これらの順位付けは一例であってその他の態様でもよい。
【0051】
つぎのステップS11において、対処方法特定部11は、異常を示す記号(異常情報)とともに、これに対応する対処項目を表示部6に表示する。ここで、処置対応は、順位特定部16で順位付けされた順に表示される。また、連絡先特定部13(
図2)は、異常情報データベース8に登録されているベンダーなどの連絡先を特定し、この連絡先を表示部6に表示する。
【0052】
また、対処方法特定部11は、それぞれの対処項目に対応する対処方法の対処時間を表示部6に表示する。例えば、対処方法の平均時間、最大時間、最小時間の少なくとも1つ、または予め対処方法に設定された時間が表示部6に表示される。
【0053】
管理コンピュータ2には、
図3に示すように、各種の対処項目が表示される。例えば、患者の治療の「継続」または「中断」をユーザが判断可能な情報を含む対処項目が表示される。
【0054】
なお、患者の治療の継続または中断をユーザが判断可能な情報は、「継続」または「中断」の表示のみならず、「対処時間」を表示することを含む。「継続」または「中断」の表示がなされなくても、ユーザが「対処時間」を把握することで、患者の治療の継続または中断を判断することができる。また、「対処時間」を表示する際に、その色彩を変更したり、強調表示したりしてもよく、色彩または強調表示で、その「対処時間」が閾値以上か否かをユーザが認識できるようにしてもよい。
【0055】
管理コンピュータ2が、特定した異常の種類に対応付けて異常情報データベース8に登録されている対処項目を特定し、特定した対処項目を表示することで、異常の種類に基づいて適切な対処方法をユーザに提供することができる。
【0056】
図4に戻り、つぎのステップS12において、異常情報特定部10は、ユーザが対処方法を実行しているときに、所定時間待機する待機モードに移行する。ここで、異常情報特定部10は、それぞれの他のコンピュータ4(
図1)から粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得する。
【0057】
つぎのステップS13において、異常情報特定部10は、取得した処理情報から、粒子線治療装置が正常に戻ったか否かを判定する。ここで、粒子線治療装置が正常に戻った場合(ステップS13でYESの場合)は、ステップS14に進む。一方、粒子線治療装置が正常に戻っていない場合(ステップS13でNOの場合)は、ステップS12の待機モードに戻る。
【0058】
図5に示すように、ステップS14において、異常情報特定部10は、ユーザから対処項目の入力を受け付ける。例えば、ユーザが既に表示されている対処項目(
図3)を選択するものでもよいし、ユーザが新規に対処項目を入力するものでもよい。
【0059】
ここで、入力部7(
図2)には、対処項目として表示されなかったが、異常が発生した日時、実際に行った対処方法の内容、対処にかかった時間、対処が有効であったか否かを示す情報を、ユーザが入力することができる。さらに、ユーザは、対処までに確認したログの情報、連絡先などを入力部7に入力することができる。この連絡先には、表示部6(
図2)に表示された連絡以外の別の担当者または別のベンダーに問い合わせた場合の情報が含まれる。新規な対処項目には、正常に戻るまでにユーザが行った全ての対処方法が含まれる。例えば、復旧に成功した対処方法のみならず、復旧に失敗した対処方法が含まれる。
【0060】
つぎのステップS15において、異常情報特定部10は、ユーザが選択した対処項目、または、ユーザの入力により取得した新規な対処項目を異常情報データベース8に登録する。このようにすれば、ユーザが、管理コンピュータ2に表示された対処項目以外の方法で粒子線治療装置を復旧させた場合に、その方法を新規な対処項目として異常情報データベース8に登録することができる。
【0061】
つぎのステップS16において、異常情報特定部10は、レポートを生成して出力する処理を実行する。ここで、異常情報特定部10は、表示部6に表示された複数の対処項目からユーザが指定した対処項目に基づいてレポートを生成する。このようにすれば、ユーザがレポートを作成する手間を削減することができる。また、異常情報特定部10は、レポートを表示部6に表示する。
【0062】
つぎのステップS17において、異常情報特定部10は、生成したレポートとその内容を異常情報データベース8に登録する。
【0063】
そして、管理コンピュータ2が異常情報表示処理を終了する。以上のステップは、異常情報表示処理に含まれる少なくとも一部の処理であり、他のステップが異常情報表示処理に含まれていてもよい。
【0064】
つぎに、管理コンピュータ2が実行するログ収集処理について
図6のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を参照する場合がある。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。
【0065】
図6に示すように、まず、ステップS21において、異常情報特定部10(
図2)は、それぞれの他のコンピュータ4(
図1)から粒子線治療装置の現在の状態を示す処理情報を取得する。
【0066】
つぎのステップS22において、異常情報特定部10は、取得した処理情報に基づいて、粒子線治療装置の異常を検出したか否かを判定する。ここで、異常を検出した場合(ステップS22でYESの場合)は、ステップS23に進む。一方、異常を検出していない場合(ステップS22でNOの場合)は、ログ収集処理を終了する。
【0067】
ステップS23において、連絡先特定部13(
図2)は、異常情報データベース8に登録されているベンダーなどの連絡先を特定し、この連絡先に異常が生じた旨の連絡を行う。例えば、連絡先特定部13は、特定した連絡先のメールアドレスに、異常が生じた旨を知らせる文面の電子メールを自動的に送信(第1通報)する。なお、この第1通報は、電子メールによる連絡に限らず、その他の態様でもよい。例えば、連絡先特定部13が特定した連絡先ではなく、その他の予め設定された所定の連絡先でもよい。
【0068】
つぎのステップS24において、異常情報特定部10は、ログを収集する。このログは、例えば、異常情報から特定した異常に関連する機器またはシステムのログである。このログ収集処理は、異常が発生した時点から復旧するまでの期間に亘り継続的に実行される。なお、収集されるログには、管理コンピュータ2が自動的に収集したもののみならず、ユーザが手作業で収集し、管理コンピュータ2に入力したものも含まれる。
【0069】
なお、粒子線治療装置で異常が発生したことに起因して、インターロックなどが働いて他の装置(図示略)が停止したり、別の異常が発生したりする場合がある。異常情報特定部10は、粒子線治療装置で異常が発生すると同時に、関連する他の装置でインターロックが作動した場合に、この他の装置に関するログも収集する。
【0070】
つぎのステップS25において、異常情報特定部10は、収集したログを表示部6(
図2)に表示するとともに、異常情報データベース8に登録(保存)する。なお、ログは、異常情報データベース8以外の所定の記憶部(図示略)に保存されてもよい。
【0071】
また、異常情報特定部10は、特定した異常の種類に対応付けて、前述の他の装置に関する情報を異常情報データベース8に登録する。このようにすれば、粒子線治療装置の異常に付随して発生する他の装置の異常を記録することができる。そして、異常情報特定部10は、付随して発生する他の装置の異常を異常情報データベース8に異常情報と対応付けて登録する。
【0072】
なお、粒子線治療装置の1つの異常に関連して発生する多数の異常については、通常の異常の発生時の表示とは異なる表示にしてもよい。例えば、異常情報特定部10は、関連する情報を表示部6(
図2)表示するときに、その色彩を変更したり、強調表示したりする。
【0073】
つぎのステップS26において、異常情報特定部10は、収集したログを含むデータを加工する。例えば、異常情報特定部10は、収集したログのうち、必要なものだけを仕分けしたり、暗号化したりする処理を実行する。
【0074】
つぎのステップS27において、連絡先特定部13は、異常情報データベース8に登録されているベンダーなどの連絡先を特定し、この連絡先に、収集したログを含む加工後のデータを自動的に送信(第2通報)する。
【0075】
そして、管理コンピュータ2がログ収集処理を終了する。以上のステップは、ログ収集処理に含まれる少なくとも一部の処理であり、他のステップがログ収集処理に含まれていてもよい。
【0076】
なお、前述のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わってもよい。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されてもよい。
【0077】
前述の異常対処システム1は、制御デバイスと記憶デバイスと出力デバイスと入力デバイスと通信インターフェースとを備える。ここで、制御デバイスは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、専用のチップなどの高集積化させたプロセッサを含む。記憶デバイスは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などを含む。出力デバイスは、ディスプレイパネル、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクタ、プリンタなどを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、タッチパネルなどを含む。この異常対処システム1は、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0078】
なお、前述の異常対処システム1で実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。追加的または代替的に、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルとして、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されて提供される。この記憶媒体は、CD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などを含む。
【0079】
また、この異常対処システム1で実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワーク3に接続されたコンピュータに格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、この異常対処システム1は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク3または専用回線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0080】
以上説明した実施形態によれば、患者の治療の継続または中断をユーザが判断可能な情報を含む対処項目を表示することにより、粒子線治療装置で異常が発生した場合に、ユーザが治療の継続の可否を直ぐに判断可能な対処項目を表示することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1…異常対処システム、2…管理コンピュータ、3…ネットワーク、4…他のコンピュータ、5…通信部、6…表示部、7…入力部、8…異常情報データベース、9…処理回路、10…異常情報特定部、11…対処方法特定部、12…対処時間特定部、13…連絡先特定部、14…回数演算部、15…処置日判定部、16…順位特定部。