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特開2024-164386オゾンガス発生装置及び冷媒流量調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164386
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】オゾンガス発生装置及び冷媒流量調整方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/11 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
C01B13/11 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079829
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 真一
【テーマコード(参考)】
4G042
【Fターム(参考)】
4G042CA01
4G042CB23
4G042CC04
4G042CD03
4G042CE04
(57)【要約】
【課題】冷媒の使用量を必要最小限に抑え、かつ、比較的高い生成量のオゾンガスを安定性良く発生することができるオゾンガス発生装置を得ることを目的とする。
【解決手段】電気制御部19は、オゾン発生器1のオゾン生成処理の実行期間中に、冷媒調整弁14の開閉度合を制御する冷媒流量調整処理を実行する。冷媒流量調整処理は、オゾン濃度C1及び電力情報S2のうち少なくとも一つを含む制御パラメータを用いて、目標オゾン生成量GMに達するための必要冷媒流量L2を求め、冷媒流路RCを流れる冷媒(冷却水)の流量が必要冷媒流量L2になるように冷媒調整弁14の開閉度合を制御する処理である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成するオゾン生成処理を実行するオゾン発生器と、
前記オゾン発生器に電源電力を付与するオゾン用電源と、
前記オゾン発生器により生成されたオゾンガスの濃度を測定してオゾン濃度を得るオゾンガス濃度計と、
一部が前記オゾン発生器の内部に設けられ、冷媒を循環させる冷媒流路と、
前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量を計測して計測冷媒流量を得る冷媒流量計と、
前記冷媒流路に設けられ、開閉度合を変化させることにより、前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量を増減させる冷媒調整弁と、
設定電源電力値及び目標オゾン生成量を設定する初期設定処理と、前記オゾン発生器の前記オゾン生成処理の実行期間中に、前記冷媒調整弁の開閉度合を制御する冷媒流量調整処理とを実行する制御部とを備え、
前記オゾン用電源から前記制御部に前記電源電力に関連する電力情報が付与され、
前記初期設定処理は、前記オゾン発生器における前記電源電力とオゾン生成量との関係を示す第1の計算式に基づき実行され、前記オゾン用電源から前記オゾン発生器に付与される前記電源電力は前記設定電源電力値に設定され、
前記冷媒流量調整処理は、前記オゾン濃度及び前記電力情報のうち少なくとも一つを含む制御パラメータを用いて、前記目標オゾン生成量に達するための必要冷媒流量を求め、前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量が前記必要冷媒流量になるように前記冷媒調整弁の開閉度合を制御する処理である、
オゾンガス発生装置。
【請求項2】
請求項1記載のオゾンガス発生装置であって、
前記冷媒流量計は前記計測冷媒流量を示す流量信号を出力し、
前記制御パラメータは前記電力情報であり、
前記冷媒流量調整処理は、
(a) 前記オゾン用電源から前記電力情報を受け、前記電力情報に基づき現電源電力を認識するステップと、
(b) 前記流量信号を受け、前記流量信号が示す前記計測冷媒流量を現冷媒流量として認識するステップと、
(c) 前記オゾン発生器における前記電源電力と必要な冷媒流量との関係を示す第2の計算式に前記現電源電力を適用して、前記冷媒流路に流すべき前記冷媒の流量を第1の必要冷媒流量として求めるステップとを備え、前記必要冷媒流量は前記第1の必要冷媒流量を含み、
(d) 前記第1の必要冷媒流量と前記現冷媒流量との差分値である第1の差分流量に基づき、前記第1の差分流量が“0”になるように、前記冷媒調整弁の開閉度合を変化させるステップをさらに備える、
オゾンガス発生装置。
【請求項3】
請求項1記載のオゾンガス発生装置であって、
前記冷媒流量計は前記計測冷媒流量を示す流量信号を出力し、
前記オゾンガス濃度計は前記オゾン濃度を示す濃度信号を出力し、
前記制御パラメータは前記オゾン濃度であり、
前記冷媒流量調整処理は、
(a) 前記濃度信号を受け、前記濃度信号が示す前記オゾン濃度に基づき、現オゾン生成量を算出するステップと、
(b) 前記流量信号を受け、前記流量信号が示す前記計測冷媒流量を現冷媒流量として認識するステップと、
(c) 前記現オゾン生成量に前記第1の計算式を適用して得られる前記電源電力を推定電源電力として求めるステップと、
(d) 前記オゾン発生器における前記電源電力と必要な冷媒流量との関係を示す第2の計算式に前記推定電源電力を適用して、前記冷媒流路に流すべき前記冷媒の流量を第2の必要冷媒流量として求めるステップとを備え、前記必要冷媒流量は前記第2の必要冷媒流量を含み、
(e) 前記第2の必要冷媒流量と前記現冷媒流量との差分値である第2の差分流量に基づき、前記第2の差分流量が“0”になるように、前記冷媒調整弁の開閉度合を変化させるステップをさらに備える、
オゾンガス発生装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載のオゾンガス発生装置であって、
前記制御部は前記必要冷媒流量を示す冷媒表示信号を出力し、
前記オゾンガス発生装置は、
前記冷媒表示信号を受け、前記冷媒表示信号が示す前記必要冷媒流量を、視覚認識可能に表示する、必要流量表示器をさらに備える、
オゾンガス発生装置。
【請求項5】
請求項1記載のオゾンガス発生装置であって、
前記冷媒流量計は前記計測冷媒流量を示す流量信号を出力し、
前記流量信号を受け、前記流量信号が示す前記計測冷媒流量を積算して積算冷媒流量を求め、視覚認識可能に前記積算冷媒流量を表示する、積算流量表示器をさらに備える、
オゾンガス発生装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載のオゾンガス発生装置であって、
前記制御部は
前記必要冷媒流量と前記計測冷媒流量との差が基準流量差より大きい場合、冷媒流量異常低下を示す警告信号を出力する流量異常警告処理をさらに実行する、
オゾンガス発生装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載のオゾンガス発生装置であって、
前記オゾン発生器は、
前記オゾン用電源より前記電源電力を受ける高圧側電極と、
基準電圧を受ける低圧側電極と、
前記高圧側電極に対し絶縁板を介して配置される冷却電極とを含み、
前記高圧側電極と前記低圧側電極との間に前記放電空間が形成され、
前記オゾン発生器は、
前記冷却電極の内部を流れる高圧側冷媒流路と、
前記低圧側電極の内部を流れる低圧側冷媒流路とをさらに含み、
前記冷媒流路は前記高圧側冷媒流路及び前記低圧側冷媒流路を含む、
オゾンガス発生装置。
【請求項8】
オゾンガス発生装置における冷媒流量調整方法であって、
前記オゾンガス発生装置は、
放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成するオゾン生成処理を実行するオゾン発生器と、
前記オゾン発生器に電源電力を付与するオゾン用電源と、
一部が前記オゾン発生器の内部に設けられ、冷媒を循環させる冷媒流路と、
前記冷媒流路に設けられ、開閉度合を変化させることにより、前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量を増減させる冷媒調整弁とを備え、
前記オゾン用電源は前記電源電力に関連する電力情報を出力し、
前記オゾンガスのオゾン生成量は目標オゾン生成量に設定され、前記オゾン用電源から前記オゾン発生器に付与される前記電源電力は設定電源電力値に設定されており、
(a) 前記オゾンガスのオゾン濃度及び前記電力情報のうち少なくとも一つを制御パラメータとするステップと、
(b) 前記制御パラメータを用いて前記目標オゾン生成量に達するための必要冷媒流量を求めるステップと、
(c) 前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量が前記必要冷媒流量になるように前記冷媒調整弁の開閉度合を制御するステップとを備える、
冷媒流量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オゾンガスを発生するオゾン発生器及びその冷却機能を有するオゾンガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンガス発生装置が採用するオゾンガスを発生する方式として、紫外線を用いた方式、電気分解を用いた方法、及び放電現象を利用した方式等が挙げられる。高濃度なオゾンガスを生成するオゾンガス発生装置は、放電現象を利用してオゾンガスを発生する放電式を採用することが一般的であった。放電式を採用したオゾンガス発生装置は、オゾンガスを発生させるための電源電力を供給するオゾン用電源と、オゾンガス生成用の放電セル(オゾン発生セル)を内蔵したオゾン発生器との組合せを主要構成要素としている。
【0003】
放電セルは、誘電体を介した放電空間を有しており、オゾン用電源からオゾン発生器に付与される電源電力は高電圧のオゾン発生用交流電圧を有している。このため、オゾン発生器は、放電セルの放電空間内で誘電体バリア放電(無声放電)を発生させ原料ガスに放電エネルギーを与えることにより、高濃度のオゾンガスを生成することができる。放電セルは放電によって熱が発生するため、放電セルに近接配置された冷媒流路に冷却水等の冷媒を流すことにより放電セルの温度上昇を抑制している。オゾンガスは熱によって分解しやすい性質を有しているため、放電セルの冷却はオゾンガスの分解抑制を兼ねている。
【0004】
オゾン発生器の冷却機能を有するオゾンガス発生装置として例えば特許文献1で開示されたオゾンガス供給システムがある。
【0005】
高濃度なオゾンガスを供給できるオゾンガス発生装置は半導体成膜分野の酸化膜成膜に利用されている。
【0006】
例えば、高濃度なオゾンガスを用いた熱方式の成膜方法は基板にシリコン酸化膜を成膜する場合や金属酸化膜を成膜する際に、他の酸化源を使用した熱方式や、光方式、またはプラズマ方式など成膜方法の一種として使用される。他の酸化源として、酸素、水、水蒸気等が考えられる。
【0007】
また、オゾンガスを用いた熱方式では他の酸化源を使用した熱方式に比べ、低温で成膜でき、早く成膜できる利点や、プラズマ方式と比較して基材へのダメージが少なくなるといった利点がある。
【0008】
半導体素子の高性能化、サイズダウンに伴い、線幅の微細化が進んでいる。この場合、目に見えないほどの小さな凹凸のある表面に均一に成膜することが求められ、また、近年、従来にない穴径と深さの比(アスペクト比)が大きい穴への均一な成膜が求められている。このため、オゾンガス発生装置としてもオゾン生成量をさらに増やすことのできる高純度のオゾンガスの提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5627027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体成膜分野の傾向により、オゾンガス発生装置に要求されるオゾン生成量は年々増えることが予想される。これは装置の大型化だけに留まらず、必要な電力や冷却水流量の増大に繋がる。
【0011】
その場合、環境の面から用力の増大は歓迎できることではなくオゾンガスの発生量を増やしつつ、必要な用力は抑制することが望ましい。なお、「用力」とは、製品の製造のために必要な電力、ガス、圧縮空気、装置排気、冷却水等を意味する。通常、冷却水の流量は装置の最大出力を想定し決定しているが、装置の運用状況によっては常に最大出力に合わせた冷却水流量が必要のない可能性も考えられる。
【0012】
オゾンガス発生装置の冷却に必要な冷却水流量は仕様書等に明記されており、オゾンガス発生装置の最大出力時を想定した「最大冷却水流量」として決定されている。しかし、客先によってはオゾンガス発生装置を低出力で稼働するような場所もあり、その場合に最大冷却水流量で冷却水を供給することは、冷却水を必要以上に使用することになる。
【0013】
すなわち、オゾンガス発生装置の低出力稼働時において最大冷却水流量で冷却水を長期間使用することは、必要以上の冷却水を流すことになり、冷却に係る電力や環境負荷が高くなる状況にある。例えば、冷却水を流すにはチラーと呼ばれる産業機器が必要になり、チラーは流す冷却水の流量や冷やす温度機能によって電力を消費するため、必要以上の冷却水を流すことはチラーの負担を不要に高くすることになる。
【0014】
従来のオゾンガス発生装置は以上のように構成されており、稼動状態に適した流量で冷媒(冷却水)を供給できていないという問題点があった。
【0015】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、冷媒の使用量を必要最小限に抑え、かつ、比較的高い生成量のオゾンガスを安定性良く発生することができるオゾンガス発生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示に係るオゾンガス発生装置は、放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成するオゾン生成処理を実行するオゾン発生器と、前記オゾン発生器に電源電力を付与するオゾン用電源と、前記オゾン発生器により生成されたオゾンガスの濃度を測定してオゾン濃度を得るオゾンガス濃度計と、一部が前記オゾン発生器の内部に設けられ、冷媒を循環させる冷媒流路と、前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量を計測して計測冷媒流量を得る冷媒流量計と、前記冷媒流路に設けられ、開閉度合を変化させることにより、前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量を増減させる冷媒調整弁と、設定電源電力値及び目標オゾン生成量を設定する初期設定処理と、前記オゾン発生器の前記オゾン生成処理の実行期間中に、前記冷媒調整弁の開閉度合を制御する冷媒流量調整処理とを実行する制御部とを備え、前記オゾン用電源から前記制御部に前記電源電力に関連する電力情報が付与され、前記初期設定処理は、前記オゾン発生器における前記電源電力とオゾン生成量との関係を示す第1の計算式に基づき実行され、前記オゾン用電源から前記オゾン発生器に付与される前記電源電力は前記設定電源電力値に設定され、前記冷媒流量調整処理は、前記オゾン濃度及び前記電力情報のうち少なくとも一つを含む制御パラメータを用いて、前記目標オゾン生成量に達するための必要冷媒流量を求め、前記冷媒流路を流れる前記冷媒の流量が前記必要冷媒流量になるように前記冷媒調整弁の開閉度合を制御する処理である。
【発明の効果】
【0017】
本開示のオゾンガス発生装置の制御部は、冷媒流路を流れる冷媒の流量が必要冷媒流量になるように上述した冷媒流量調整処理を実行することにより、冷媒の使用量を必要最小限に抑え、かつ、比較的高い生成量のオゾンガスを安定性良く発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の実施の形態1であるオゾンガス発生装置の構成を示すブロック図である。
図2図1で示したオゾン発生器の内部構造を模式的に示す説明図である。
図3】内部流路を含むオゾン発生器内の電極構造を模式的に示す説明図である。
図4図1で示したオゾン用電源の内部構成の一例を示すブロック図である。
図5】オゾン発生器における電源電力とオゾン生成量との関係を示すグラフである。
図6図1で示した電気制御部が実行する初期設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7】オゾン発生器における電源電力と冷却水流量との関係を示すグラフである。
図8】実施の形態1の電気制御部が実行する冷媒流量調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9】実施の形態2の電気制御部が実行する冷媒流量調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
図10】実施の形態3であるオゾンガス発生装置の構成を示すブロック図である。
図11】実施の形態4であるオゾンガス発生装置の構成を示すブロック図である。
図12】実施の形態5であるオゾンガス発生装置の構成を示すブロック図である。
図13】実施の形態5の電気制御部による流量異常警告処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施の形態1>
図1は本開示の実施の形態1であるオゾンガス発生装置100の構成を示すブロック図である。
【0020】
同図に示すように、オゾンガス発生装置100は、オゾン発生器1、オゾン用電源2、オゾンガス濃度計13、冷媒調整弁14、冷媒圧力計15、冷媒温度計16、冷媒流量計17、冷媒開閉弁18及び電気制御部19を主要構成要素として含んでいる。
【0021】
なお、図1において、破線で示す矢印は電気制御部19への入力信号(情報)と電気制御部19からの出力信号(制御信号)の入出力形態を示している。また、電気制御部19は例えばソフトウェアによるプログラムを実行することにより実現される機能である。
【0022】
オゾン発生器1はオゾン用電源2より電源電力を受ける。電源電力は比較的高い高電圧HVを有する高周波な交流電力である。オゾン発生器1は、放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成するオゾン生成処理を実行する。
【0023】
原料ガスとなる酸素ガスは酸素供給設備20からオゾンガス発生装置100に供給される。オゾンガス発生装置100内において酸素ガスは原料ガス供給経路31を経由してオゾン発生器1に供給される。
【0024】
前述したように、オゾン発生器1は放電空間に供給した酸素ガスからオゾンガスを生成するオゾン生成処理を実行する。オゾン発生器1から生成されたオゾンガスはオゾンガス出力経路32を介して外部のオゾン供給先21に供給される。オゾン供給先21として例えば成膜装置が考えられる。
【0025】
オゾンガス発生装置100内においてオゾンガス出力経路32上にオゾンガス濃度計13が設けられており、オゾンガス濃度計13はオゾン発生器1により生成されたオゾンガスの濃度を測定してオゾン濃度C1を得る。そして、オゾンガス濃度計13はオゾン濃度C1を示す濃度信号S13を電気制御部19に出力する。
【0026】
オゾンガス発生装置100は冷媒である冷却水を流すための冷媒流路RCを内部に有している。冷媒流路RCは外部流路R1と内部流路R2(図1では図示せず)とを有し、外部流路R1がオゾン発生器1の外部に設けられた流路であり、内部流路R2はオゾン発生器1内に設けられた流路である。
【0027】
冷媒である冷却水は冷媒供給設備22から外部流路R1を介してオゾン発生器1内の内部流路R2を流れた後、外部流路R1を介して冷媒供給設備22に出力される。すなわち、冷媒供給設備22から供給される冷却水は冷媒流路RC(外部流路R1+内部流路R2)を介して、冷媒供給設備22、オゾン発生器1及び冷媒供給設備22間を循環する。なお、図1では見かけ上、2つの冷媒供給設備22を図示しているが、実際には冷媒供給設備22は1つ設けられる。冷媒供給設備22はチラーとして機能する。
【0028】
冷媒流路RCの外部流路R1上に冷媒調整弁14、冷媒圧力計15、冷媒温度計16、冷媒流量計17及び冷媒開閉弁18が設けられる。したがって、冷媒流路RCによって、冷媒供給設備22から供給される冷却水が冷媒流量計17、オゾン発生器1、冷媒温度計16、冷媒圧力計15、冷媒調整弁14及び冷媒開閉弁18を介して冷媒供給設備22に戻る冷却水の循環経路が確保される。このように、冷媒流路RCは一部がオゾン発生器1の内部に設けられ、冷媒である冷却水を循環させている。
【0029】
図2はオゾン発生器1の内部構造を模式的に示す説明図である。同図に示すように、電極構成部11内に放電セルを構成する電極構成部11及び12が設けられる。電極構成部11は高圧側電極である金属電極11aと金属電極11aの下面上に設けられる誘電体層11bとにより構成される。電極構成部12は低圧側電極である金属電極12aと金属電極12aの上面上に設けられる誘電体層12bとにより構成される。なお、誘電体層11b及び12bのうち少なくとも一方を設ければ、誘電体バリア放電を発生するオゾン発生器1を構成することができる。
【0030】
高圧側の電極構成部11の誘電体層11bと低圧側の電極構成部12の誘電体層12bとの間において、金属電極11aと金属電極12aとが平面視して重複する領域が放電空間8となる。
【0031】
外部流路R1に繋がる内部流路R2はオゾン発生器1内に設けられ、金属電極11aの近傍を流れる電極近接流路R21と金属電極12aの近傍を流れる電極近接流路R22とを有している。したがって、電極近接流路R21に冷却水を流すことにより金属電極11aを含む電極構成部11を冷却することができ、電極近接流路R22に冷却水を流すことにより金属電極12aを含む電極構成部12を冷却することができる。
【0032】
図3は内部流路R2を含むオゾン発生器1内の電極構造を模式的に示す説明図である。同図に示すように、金属電極12a内に低圧側冷媒流路R22iを設け、低圧側冷媒流路R22iに冷却水を流している。なお、金属電極12aは基準電圧である接地電圧に設定されている。
【0033】
図3において、低圧側冷媒流路R22iが図2の電極近接流路R22の具体例となり、低圧側冷媒流路R22iに冷却水を流すことにより、直接的に金属電極12aを冷却することができる。
【0034】
図3に示すように、金属電極11aの上面上に絶縁板24が設けられ、絶縁板24上に冷却電極25が設けられる。絶縁板24及び冷却電極25は電極近接流路R22用の補助部材となる。そして、冷却電極25内に高圧側冷媒流路R21eを設け、高圧側冷媒流路R21eに冷却水を流している。なお、金属電極11aには、オゾン用電源2から付与される電源電力の高電圧HVが印加されている。
【0035】
図3において、高圧側冷媒流路R21eが図2の電極近接流路R21の具体例となり、高圧側冷媒流路R21eに冷却水を流すことにより、絶縁板24を介して間接的に金属電極11aを冷却することができる。
【0036】
このように、高圧側電極である金属電極11aを冷却電極25内に設けられた高圧側冷媒流路R21eによって冷却し、低圧側電極である金属電極12aの内部を流れる低圧側冷媒流路R22iによって金属電極12a自体を冷却している。
【0037】
このため、実施の形態1のオゾンガス発生装置100は、オゾン発生器1の動作に悪影響を与えることなく、冷媒流路RCに冷媒である冷却水を流すことによりオゾン発生器1を冷却することができる。
【0038】
電気制御部19は、オゾン用電源2、オゾンガス濃度計13、冷媒調整弁14、冷媒圧力計15、冷媒温度計16、冷媒流量計17、冷媒開閉弁18を一括して制御している。また、電気制御部19は、オゾン用電源2の電源電力を制御することにより、オゾン発生器1のオゾン生成処理を間接的に制御している。
【0039】
冷媒流量計17は外部流路R1を流れる冷却水の流量を測定して計測冷媒流量L17を得る。そして、冷媒流量計17は計測冷媒流量L17を示す流量信号S17を電気制御部19に出力する。
【0040】
冷媒圧力計15は外部流路R1を流れる冷却水の圧力を測定して計測冷媒圧力を得る。そして、冷媒圧力計15は計測冷媒圧力を示す圧力信号S15を電気制御部19に出力する。したがって、電気制御部19は、圧力信号S15に基づき外部流路R1を流れる冷却水の圧力を監視することができる。例えば、計測冷媒圧力が一定値以上にならないように、電気制御部19は外部流路R1の圧力管理を行うことができる。
【0041】
冷媒温度計16は外部流路R1を流れる冷却水の温度を測定して計測冷媒温度を得る。そして、冷媒温度計16は計測冷媒温度を示す温度信号S16を電気制御部19に出力する。したがって、電気制御部19は、温度信号S16に基づき外部流路R1を流れる冷却水の温度を監視することができる。
【0042】
前述したように、オゾン発生器1から出力されるオゾンガスの濃度であるオゾン濃度C1はオゾンガス濃度計13にて測定されている。したがって、オゾンガス濃度計13から、オゾン濃度C1を示す濃度信号S13が電気制御部19にフィードバックされることにより、オゾン用電源2からの電源電力を調整して後述する目標オゾン生成量GMとなるようにオゾンガスを安定して供給することができる。
【0043】
冷媒調整弁14は電気制御部19より制御信号SC14を受け、制御信号SC14の指示内容にしたがって弁の開閉度合を設定する。すなわち、冷媒調整弁14は、冷媒流路RCに含まれる外部流路R1に設けられ、開閉度合を変化させることにより、外部流路R1を流れる冷却水の流量を増減させている。
【0044】
冷媒開閉弁18は電気制御部19より制御信号SC18を受け、制御信号SC18の指示に従い弁を開/閉設定する弁の開閉動作を実行する。すなわち、冷媒開閉弁18は、冷媒流路RCに含まれる外部流路R1に設けられ、開閉動作を実行することにより、外部流路R1による冷却水の供給の有/無を設定している。したがって、冷媒開閉弁18が閉じた状態では、冷媒流路RCは使用不能となる。
【0045】
電気制御部19は、オゾン用電源2より電力情報S2を受ける。電力情報S2はオゾン用電源2からオゾン発生器1に供給される電源電力に関する情報を示している。電力情報S2として例えば電源電力の電圧値を示す高電圧HVが考えられる。
【0046】
図4はオゾン用電源2の内部構成の一例を示すブロック図である。以下、同図を参照して、オゾン用電源2の内部構成を説明する。
【0047】
オゾン用電源2は、商用交流電圧AC1φ~AC3φを整流するコンバータ2a、直流電圧をオゾン発生器1に最適な高周波に変換し、INV出力[kW]を得るインバータ2b、インバータ2bからのINV出力におけるINV電圧を、オゾン発生器1を生成するための放電を発生させる高電圧HVに昇圧させて最終的な電源電力[kW]を得る高電圧回路部2c及び電流センサ2dから構成されている。コンバータ2a、インバータ2b及び高電圧回路部2cの順で直列に接続され、コンバータ2a,インバータ2b間に電流センサ2dが介挿される。
【0048】
オゾン発生器1で発生するオゾンガス内容(ガス流量Q、オゾン濃度C)を制御するため、高電圧回路部2cの出力である電源電力がオゾン発生器1に印加される。電源電力は高周波な高電圧HV及び基準電圧LVを有している。オゾン用電源2から電源電力が付与されたオゾン発生器1は、原料ガス供給経路31より供給される、原料ガスである酸素ガスから放電現象によって所定のオゾン濃度Cのオゾンガスを生成させている。なお、基準電圧LVは例えば接地電圧に設定される。
【0049】
前述したように、オゾン用電源2は、高電圧HV等の電力情報S2を電気制御部19に出力する。このように、電気制御部19はオゾン用電源2より電力情報S2を受けている。
【0050】
図1に戻って、電気制御部19は上述した電力情報S2に加え、濃度信号S13、圧力信号S15、温度信号S16及び流量信号S17を受けている。
【0051】
電気制御部19は、設定電源電力値WP及び目標オゾン生成量GMを設定する初期設定処理と、オゾン発生器1のオゾン生成処理の実行期間中に、冷媒調整弁14の開閉度合を制御する冷媒流量調整処理を実行する。すなわち、電気制御部19は、冷媒調整弁である冷媒調整弁14の開閉度合を制御する冷媒流量調整処理を実行する制御部として機能している。
【0052】
初期設定処理は、オゾン発生器1における電源電力とオゾン生成量との関係を示す第1の計算式に基づき実行される。
【0053】
図5はオゾン発生器1における電源電力とオゾン生成量との関係を示すグラフである。なお、電源電力の単位は[kW]であり、オゾン生成量の単位は[g/h]である。このように、オゾン生成量は単位時間(1h)当たりに生成されるオゾンガスの量(g)を示している。
【0054】
図5に示すように、オゾン生成量は電源電力に比例しており、電源電力と正の相関を有している。したがって、オゾン発生器1におけるオゾン生成量OGと電源電力SPとは以下の式(1)で表される。
【0055】
OG=α×SP…(1)
なお、式(1)において、「α」は定数である。
【0056】
したがって、オゾン発生器1から生成するオゾン生成量として目標オゾン生成量GMを設定した場合、OG=GMとして式(1)を解法して得られる電源電力SPを、設定電源電力値WPとして求めることができる。このように、式(1)が上述した第1の計算式となる。
【0057】
図6は電気制御部19が実行する初期設定処理の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図を参照して初期設定処理の処理内容を説明する。
【0058】
まず、ステップST1において、電気制御部19はオゾン発生器1から生成されるオゾンガスの目標オゾン生成量GMを設定する。例えば、図示しないキーボード等の入力装置を用いて、オゾンガス発生装置100の使用者が電気制御部19に所望の値を入力すると、所望の値が目標オゾン生成量GMとして設定される。
【0059】
次に、ステップST2において、設定電源電力値WPを設定する。具体的には、電気制御部19は、OG=GMとして上述した式(1)を適用することにより、設定電源電力値WPを求め、電気制御部19から設定電源電力値WPを指示する制御信号SC2をオゾン用電源2に出力する。
【0060】
すると、オゾン用電源2は制御信号SC2が指示する設定電源電力値WPの電源電力をオゾン発生器1に付与する。ステップST2の実行後、オゾン用電源2からオゾン発生器1に付与される電源電力は設定電源電力値WPに設定される。
【0061】
その後、ステップST3において、冷媒供給設備22から供給できる冷却水の最大流量を最大冷媒流量LXとして設定する。
【0062】
最大冷媒流量LXは、従来同様、オゾンガス発生装置100の最大出力、すなわち、オゾン発生器1に最大の電源電力が付与された際に必要な冷却水の流量に設定される。
【0063】
電気制御部19が実行する冷媒流量調整処理は、オゾン濃度C1及び電源電力のうち少なくとも一つである制御パラメータを用いて目標オゾン生成量GMに達するための必要冷媒流量L2を求め、冷媒流路RCを流れる冷却水の流量が必要冷媒流量L2になるように冷媒調整弁14の開閉度合を制御する処理となる。
【0064】
すなわち、冷媒流量調整処理は、冷媒流路RCを流れる冷却水の流量が必要冷媒流量L2になるように冷媒調整弁14の開閉度合を制御する処理となる。以下、電気制御部19が実行する冷媒流量調整処理について詳述する。
【0065】
図7はオゾン発生器1における電源電力とオゾン発生器1の冷却に必要な冷却水流量との関係を示すグラフである。なお、電源電力の単位は[kW]であり、冷却水流量の単位は[L/min]である。
【0066】
図7に示すように、必要とする冷却水流量は電源電力に比例しており、電源電力と正の相関を有している。したがって、オゾン発生器1の電源電力SPと冷媒流路RCに流すべき必要最小限の冷却水流量LRは以下の式(2)で表される。
【0067】
LR=β×SP×γ…(2)
なお、式(2)において、「β」は定数であり、「γ」は安全率であり、「γ」は一定値となる。
【0068】
したがって、オゾン用電源2の設定電源電力値WPを設定した場合、SP=WPとして式(2)を解法して得られる冷却水流量LRを、必要冷媒流量L2として求めることができる。式(2)が後述する第2の計算式となる。必要冷媒流量L2は設定電源電力値WPの電源電力を受けたオゾン発生器1がオゾン生成処理を実行する際に必要とする冷却水の必要最小限の流量となる。
【0069】
このように、冷媒流量調整処理は、電源電力SPと冷媒流路RCに流すべき冷媒流量との関係を示す第2の計算式(式(2))に基づき、冷媒流路RCに流すべき冷却水の流量を必要冷媒流量L2として求める処理を含んでいる。
【0070】
図8は実施の形態1の電気制御部19が実行する冷媒流量調整処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、実施の形態1と後述する実施の形態2との間で冷媒流量調整処理の内容が異なっており、必要冷媒流量L2に関し、実施の形態1で用いる必要冷媒流量L2を必要冷媒流量L21として説明する。以下、図8を参照して冷媒流量調整処理の処理内容を説明する。
【0071】
ステップST11において、オゾン用電源2から電力情報S2を受け、電力情報S2に基づき、オゾン用電源2からオゾン発生器1に供給されている電源電力である現電源電力W1を認識する。
【0072】
前述したように、電力情報S2は例えば高電圧HVを示している。電圧回路部2cを流れる電流値は予め認識できているため、高電圧HVに基づき電源電力を求めることができる。
【0073】
次に、ステップST12において、流量信号S17が示す計測冷媒流量L17が現冷媒流量L1として認識される。
【0074】
その後、ステップST13において、オゾン発生器1における電源電力SPと冷媒流路RCを流れる冷媒流量である冷却水流量との関係を示す第2の計算式(式(2))に現電源電力W1を適用して、現電源電力W1が設定された際に冷媒流路RCに流すべき冷却水の流量を必要冷媒流量L21として求める。
【0075】
具体的には、SP=W1として式(2)を解法して得られる冷却水流量LRが必要冷媒流量L21となる。この必要冷媒流量L21が第1の必要冷媒流量となり、必要冷媒流量L2に含まれる。
【0076】
最後に、ステップST14において、第1の必要冷媒流量である必要冷媒流量L21と現冷媒流量L1との差分値である差分流量ΔL1(第1の差分流量)に基づき、差分流量ΔL1が“0”になる冷媒調整弁14の開閉度合を求め、当該開閉度合を示す制御信号SC14を冷媒調整弁14に出力する。すると、冷媒調整弁14の開度調整がなされ、冷媒調整弁14は制御信号SC14が示す開閉度合に変化する。
【0077】
すなわち、ステップST14は、必要冷媒流量L21と現冷媒流量L1との差分流量ΔL1(第1の差分流量)に基づき、差分流量ΔL1(=L21-L1)が“0”になるように、冷媒調整弁14の開閉度合を変化させるステップとなる。
【0078】
実施の形態1のオゾンガス発生装置100の制御部である電気制御部19は、冷媒流路RCを流れる冷却水(冷媒)の流量が必要冷媒流量L21になるように上述した冷媒流量調整処理を実行している。
【0079】
このため、実施の形態1のオゾンガス発生装置100は、冷媒となる冷却水の使用量を無駄なく必要最小限に抑え、かつ、比較的高い生成量(目標オゾン生成量GM)のオゾンガスを安定性良く発生することができる。
【0080】
なぜなら、目標オゾン生成量GMが減少すると設定電源電力値WPも減少し、設定電源電力値WPに基づき必要冷媒流量L21を減少させることができるからである。
【0081】
さらに、実施の形態1のオゾンガス発生装置100は、電源電力を制御パラメータとした冷媒流量調整処理として、電力情報S2に基づく現電源電力W1を用いたステップST11~ST14を含む処理を実行している。
【0082】
したがって、実施の形態1のオゾンガス発生装置100は、電源電力を制御パラメータとして冷媒流量調整処理の実行に必要な情報を、電力情報S2、計測冷媒流量となる計測冷媒流量L17及び第2の計算式(式(2))に抑えることができる。
【0083】
(冷媒流量調整方法)
実施の形態1のオゾンガス発生装置100における冷媒流量調整方法として、上述した電気制御部19による冷媒流量調整処理が実行されている。
【0084】
すなわち、オゾンガス発生装置100における冷媒流量調整方法は以下のステップ(a)~(c)を備えている。
【0085】
ステップ(a)は、オゾン用電源2からの電力情報S2に基づき得られた電源電力を制御パラメータとするステップである。なお、ステップ(a)は図8で示したステップST11の処理内容を含んでいる。実施の形態1ではオゾン濃度C1及び電源電力のうち電源電力を制御パラメータとしている。
【0086】
ステップ(b)は、上記制御パラメータである電源電力を用いて目標オゾン生成量GMに達するための必要冷媒流量L2として必要冷媒流量L21を求めるステップである。なお、ステップ(b)は図8で示したステップST13の処理内容を含んでいる。
【0087】
ステップ(c)は、冷媒流路RCを流れる冷却水の流量が必要冷媒流量L21になるように冷媒調整弁14の開閉度合を制御するステップである。なお、ステップ(c)は図8で示したステップST12,ST14の処理内容を含んでいる。
【0088】
実施の形態1のオゾンガス発生装置100における冷媒流量調整方法は、上述したステップ(a)~(c)を実行することにより、冷媒となる冷却水の使用量を無駄なく必要最小限に抑え、かつ、比較的高い生成量のオゾンガスを安定性良く発生させることができる。
【0089】
(電力情報S2について)
なお、実施の形態1では電力情報S2として電源電力が算出可能な高電圧HVを例に挙げたが、INV電圧を電力情報S2として用い、INV電圧からINV出力[kW]を求めるようにしても良い。
【0090】
図4で示したインバータ2bを流れる電流値は予め認識できているため、INV電圧に基づきINV出力を求めることができる。
【0091】
オゾン発生器1におけるINV出力とオゾン生成量との関係は、電源電力とオゾン生成量との関係と同様、図5のグラフや式(1)で示す関係と等価な関係となる。
【0092】
オゾン発生器1におけるINV出力とオゾン発生器1の冷却に必要な冷却水流量との関係は、電源電力と冷却水との関係と同様、図7のグラフや式(2)で示す関係と等価な関係となる。
【0093】
したがって、電源電力をINV出力に変更しても、上述した初期設定処理や冷媒流量調整処理と実質的に同様な処理が行える。
【0094】
なお、実施の形態1では、電力情報S2として高電圧HVやINV電圧を例に挙げたが、電源電力やINV出力を算出可能な全ての情報が電力情報S2に含まれる。
【0095】
<実施の形態2>
実施の形態2のオゾンガス発生装置100Bの構成は、図1図4で示した実施の形態1であるオゾンガス発生装置100の構成と同様である。冷媒流量調整処理の内容が実施の形態1と異なる。
【0096】
図9は、実施の形態2のオゾンガス発生装置100B内の電気制御部19が実行する冷媒流量調整処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、実施の形態2の冷媒流量調整処理では、必要冷媒流量L2を必要冷媒流量L22として説明する。以下、図9を参照して実施の形態2の冷媒流量調整処理の処理内容を説明する。
【0097】
まず、ステップST21において、オゾンガス濃度計13から得られる濃度信号S13が示すオゾン濃度C1が認識される。
【0098】
次に、ステップST22において、オゾン濃度C1に基づき現オゾン生成量G1が算出される。具体的には、現オゾン生成量G1(g/h)はオゾン濃度C1(g/m)に原料ガスとなる酸素ガスの流量O1(L/min)を乗算することにより算出される。具体的には、現オゾン生成量G1は演算式{G1=C1・O1・60(時間)/1000}を用いて求めることができる。なお、「1000」は単位合わせ用の定数である。
【0099】
なお、酸素ガスの流量は予め認識したり、原料ガス供給経路31に流量コントローラ(MFC(Mass Flow Controller))を設け、MFCで検出される流量を電気制御部19に送信したりすることができる。
【0100】
次に、ステップST23において、流量信号S17が示す計測冷媒流量L17が現冷媒流量L1として認識される。
【0101】
続いて、ステップST24において、現オゾン生成量G1に基づき推定電源電力W2が算出される。具体的には、OG=G1として式(1)(第1の計算式)を解法して得られる電源電力SPを、推定電源電力W2として求めることができる。
【0102】
その後、ステップST25において、オゾン発生器1における電源電力SPと冷媒流路RCを流れる冷媒流量である冷却水流量との関係を示す第2の計算式(式(2))に推定電源電力W2を適用して、推定電源電力W2が設定された際に冷媒流路RCに流すべき冷却水の流量を必要冷媒流量L22として求める。
【0103】
具体的には、SP=W2として式(2)を解法して得られる冷却水流量LRが必要冷媒流量L22となる。この必要冷媒流量L22が第2の必要冷媒流量となり、理想流量である必要冷媒流量L2に含まれる。
【0104】
最後に、ステップST26において、第2の必要冷媒流量である必要冷媒流量L22と現冷媒流量L1との差分値である差分流量ΔL2(第2の差分流量)に基づき、差分流量ΔL2が“0”になる冷媒調整弁14の開閉度合を求め、当該開閉度合を示す制御信号SC14を冷媒調整弁14に出力する。すると、冷媒調整弁14の開度調整がなされ、冷媒調整弁14は制御信号SC14が示す開閉度合に変化する。
【0105】
すなわち、ステップST26は、必要冷媒流量L22と現冷媒流量L1との差分流量ΔL2(第2の差分流量)に基づき、差分流量ΔL2(=L22-L1)が“0”になるように、冷媒調整弁14の開閉度合を変化させるステップとなる。
【0106】
実施の形態2のオゾンガス発生装置100Bの制御部である電気制御部19は、冷媒流路RCを流れる冷却水(冷媒)の流量が必要冷媒流量L22になるように上述した冷媒流量調整処理を実行している。
【0107】
このため、実施の形態2のオゾンガス発生装置100は、冷却水の使用量を無駄なく必要最小限に抑え、かつ、比較的高いオゾン生成量のオゾンガスを安定性良く発生することができる。
【0108】
なぜなら、現オゾン生成量G1が減少すると推定電源電力W2も減少し、推定電源電力W2に基づき必要冷媒流量L22を減少させることができるからである。
【0109】
さらに、実施の形態2のオゾンガス発生装置100Bは、オゾン濃度C1を制御パラメータとした冷媒流量調整処理として、オゾンガス濃度計13から得られた濃度信号S13(オゾン濃度C1を指示)を用いたステップST21~ST26を含む処理を実行している。
【0110】
したがって、実施の形態2のオゾンガス発生装置100Bは、オゾン濃度C1を制御パラメータとした冷媒流量調整処理の実行に必要な情報を、オゾン濃度C1、計測冷媒流量L17並びに第1及び第2の計算式(式(1)及び式(2))に抑えることができる。
【0111】
(冷媒流量調整方法)
実施の形態2のオゾンガス発生装置100Bにおける冷媒流量調整方法として、上述した電気制御部19による冷媒流量調整処理が実行されている。
【0112】
すなわち、オゾンガス発生装置100Bにおける調整方法は以下のステップ(a)~(c)を備えている。
【0113】
ステップ(a)は、オゾンガス濃度計13より得られる濃度信号S13が示すオゾン濃度C1を制御パラメータとするステップである。なお、ステップ(a)は図9で示したステップST21の処理内容を含んでいる。実施の形態2ではオゾン濃度C1及び電源電力のうちオゾン濃度C1を制御パラメータとしている。
【0114】
ステップ(b)は、上記制御パラメータであるオゾン濃度C1を用いて目標オゾン生成量GMに達するための必要冷媒流量L2として必要冷媒流量L22を求めるステップである。なお、ステップ(b)は図9で示したステップST22,ST24,ST25の処理内容を含んでいる。
【0115】
ステップ(c)は、冷媒流路RCを流れる冷却水の流量が必要冷媒流量L22になるように冷媒調整弁である冷媒調整弁14の開閉度合を制御するステップである。なお、ステップ(c)は図9で示したステップST23,ST26の処理内容を含んでいる。
【0116】
実施の形態2のオゾンガス発生装置100Bにおける冷媒流量調整方法は、上述したステップ(a)~(c)を実行することにより、冷媒となる冷却水の使用量を無駄なく必要最小限に抑え、かつ、比較的高い生成量のオゾンガスを安定性良く発生させることができる。
【0117】
<実施の形態3>
図10は本開示の実施の形態3であるオゾンガス発生装置100Cの構成を示すブロック図である。
【0118】
実施の形態3のオゾンガス発生装置100Cは、図1図4で示した実施の形態1であるオゾンガス発生装置100の構成と同様であり、新たに必要流量表示器41を設けた点及び電気制御部19を電気制御部19Bに置き換えた点が実施の形態1と主要な変更点となる。
【0119】
以下、実施の形態3のオゾンガス発生装置100Cに関し、実施の形態1と同様な構成要素は同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態3の特徴箇所について説明する。
【0120】
制御部である電気制御部19Bは、必要冷媒流量L2(必要冷媒流量L21,L22)を示す冷媒表示信号SD41を必要流量表示器41に出力している。
【0121】
必要流量表示器41は、冷媒表示信号SD41を受け、冷媒表示信号SD41が示す必要冷媒流量L2を、視覚認識可能に表示する。
【0122】
上述したように、実施の形態3のオゾンガス発生装置100Cは、必要流量表示器41を備えている。このため、オゾンガス発生装置100Cの使用者は、必要流量表示器41を参照することにより、必要冷媒流量L2の変化を速やかに認識することができる。
【0123】
また、必要流量表示器41を参照して必要冷媒流量L2を定期的に確認することにより、オゾンガス発生装置100Cの劣化による流量変更への対応を事前に実施することができる。
【0124】
<実施の形態4>
図11は本開示の実施の形態4であるオゾンガス発生装置100Dの構成を示すブロック図である。
【0125】
実施の形態4のオゾンガス発生装置100Dは、図1図4で示した実施の形態1であるオゾンガス発生装置100の構成と同様であり、新たに積算流量表示器42を設けた点が実施の形態1との主要変更点となる。
【0126】
以下、実施の形態4のオゾンガス発生装置100Dに関し、実施の形態1と同様な構成要素は同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態4の特徴箇所について説明する。
【0127】
実施の形態1~実施の形態3と同様、冷媒流量計17は、計測冷媒流量L17を示す流量信号S17を出力している。実施の形態4では、流量信号S17は電気制御部19に加え、積算流量表示器42にも出力される。
【0128】
積算流量表示器42は、流量信号S17を時々刻々と受け、流量信号S17が示す計測冷媒流量L17を順次積算して積算冷媒流量を求め、視覚認識可能に積算冷媒流量を表示する。すなわち、積算流量表示器42は計測冷媒流量L17の積算機能と積算冷媒流量の表示機能とを有している。なお、計測冷媒流量L17の積算機能を電気制御部19に持たせる変形例も考えられる。この場合、積算冷媒流量に関する情報は電気制御部19から積算流量表示器42に伝達されることになる。
【0129】
なお、積算冷媒流量の積算期間として例えば1日や1ヶ月等が考えられる。1ヶ月を積算期間とする場合、例えば、「1ヶ月の冷却水使用量(2022/11/21~2022/12/21):○○L(リットル)」等を積算流量表示器42上に表示する表示態様が考えられる。
【0130】
上述したように、実施の形態4のオゾンガス発生装置100Dは積算流量表示器42を備えている。このため、オゾンガス発生装置100Dの使用者は、積算流量表示器42を参照することにより、積算冷媒流量を正確かつ速やかに認識することができる。
【0131】
例えば、積算冷媒流量から環境への影響の確認することができる。すなわち、積算冷媒流量から現在の用力の使用状況を確認することができ、その結果、環境への貢献度を継続的に確認することができる。
【0132】
また、放電セルを構成する電極構成部11及び12は劣化が進むと印加する高電圧HVを上昇させる必要があり、高電圧HVの上昇に伴い電源電力(INV出力)が増大することになる結果、必要冷媒流量も増加する。
【0133】
したがって、積算冷媒流量を参照することにより、間接的にオゾンガス発生装置100Dの劣化状況を確認することができ、積算冷媒流量をオーバーホール(O/H)の実施時期の目安として活用することができる。
【0134】
<実施の形態5>
図12は本開示の実施の形態5であるオゾンガス発生装置100Eの構成を示すブロック図である。
【0135】
実施の形態5のオゾンガス発生装置100Eは、図1図4で示した実施の形態1であるオゾンガス発生装置100の構成と同様であり、新たに流量異常表示器43を設けた点及び電気制御部19を電気制御部19Cに置き換えた点が実施の形態1との主な変更点となる。
【0136】
以下、実施の形態5のオゾンガス発生装置100Eに関し、実施の形態1と同様な構成要素は同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態5の特徴箇所について説明する。
【0137】
制御部である電気制御部19Cは、必要冷媒流量L2(必要冷媒流量L21,L22)と現冷媒流量L1との差が基準流量差ΔSLより大きい場合、冷媒流量異常低下を示す警告信号SXを出力する流量異常警告処理をさらに実行している。
【0138】
基準流量差ΔSLは冷媒流量調整処理の実行後において、冷媒調整弁14による流量増加機能が発揮できていないことが認識可能な閾値として有意な値に設定される。
【0139】
流量異常表示器43は、警告信号SXを受け、警告信号SXが冷媒流量異常低下を示す時、視覚認識可能に「流量異常警告」を表示する。
【0140】
図13は電気制御部19Cによる流量異常警告処理の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図を参照して流量異常警告処理の処理内容を説明する。なお、電気制御部19Cが出力する警告信号SXは通常時は正常状態を示している。
【0141】
まず、ステップST31において、冷媒流量調整処理が実行される。冷媒流量調整処理は、図8で示した実施の形態1の処理手順で行っても、図9で示した実施の形態2の処理手順で行っても良い。冷媒流量調整処理の実行により必要冷媒流量L2(L21,L22)が認識される。
【0142】
ステップST31の終了から所定期間経過後、ステップST32において、流量信号S17を再び受信し、流量信号S17が示す計測冷媒流量L17を現冷媒流量L1Bとして再認識する。
【0143】
その後、ステップST33において、必要冷媒流量L2とステップST32で新たに読み込んだ現冷媒流量L1Bとの差が基準流量差ΔSL(>0)を超えているかが検証される。すなわち、{(L2-L1B)>ΔSL}の成立の有無が検証される。
【0144】
冷媒供給設備22から供給される冷却水の最大冷媒流量LXが必要冷媒流量L2以上の通常時、ステップST31の冷媒流量調整処理の実行後は冷媒調整弁14の開度調整により、外部流路R1を流れる冷却水の流量は必要冷媒流量L2に近づくように調整される。このため、冷媒流量調整処理が正常に機能している場合、必ず{(L2-L1B)≒0<ΔSL}が成立する。
【0145】
一方、最大冷媒流量LXが必要冷媒流量L2を下回る冷媒流量異常低下時においては、冷媒流量調整処理の実行によっても、外部流路R1を流れる冷却水流量が必要冷媒流量L2に達することはない。
【0146】
したがって、基準流量差ΔSLを閾値として適切な値に設定することにより、ステップST33における{(L2-L1B)>ΔSL}の成立の有無により、上記冷媒流量異常低下の有無を的確に認識することができる。
【0147】
最大冷媒流量LXが必要冷媒流量L2を下回る冷媒流量異常低下時として例えば、冷却水供給設備22にフィルタ詰まり等の不具合が発生して最大冷媒流量LXが想定流量を大きく下回るケースが考えられる。この場合、異常に低下している最大冷媒流量LXが必要冷媒流量L2を下回り、{(L2-L1B)>ΔSL}が成立すると冷媒流量異常低下が発生することになる。
【0148】
ステップST33において、{(L2-L1B)>ΔSL}が成立する場合(YES)は、ステップST34に移行し、{(L2-L1B)>ΔSL}が成立しない場合(NO)は、処理を終了する。すなわち、ステップST33がNOの場合、上記冷媒流量異常低下は発生していないと判定される。
【0149】
ステップST33でYESの場合に実行されるステップST34において、溶媒(冷却水)の用量不足が警告される。具体的には、電気制御部19Cから冷媒流量異常低下を示す警告信号SXが出力され、流量異常表示器43が視覚認識可能に冷媒流量異常低下状態を表示する。
【0150】
その結果、オゾンガス発生装置100Eの使用者は、流量異常表示器43を参照することにより、冷媒流量異常低下状態であることを速やかに認識することができる。
【0151】
なお、実施の形態5では、冷媒流量異常低下の警告装置として流量異常表示器43を示したが、視覚認識可能な出力装置に限定されない。
【0152】
例えば、警告信号SXが冷媒流量異常低下を示す場合に聴覚認識可能な音声出力装置を警告装置として用いても良い。また、電気制御部19Cにブザー等の音声出力機能を設け、電気制御部19C自体に警告出力機能を持たせても良い。
【0153】
上述したように、実施の形態5のオゾンガス発生装置100Eは冷媒流量異常低下を示す警告信号SXを出力可能な電気制御部19Cと警告信号SXを受ける流量異常表示器43とを備えている。このため、オゾンガス発生装置100Eの使用者は、流量異常表示器43を参照することにより、冷媒供給設備22から供給される冷却水の最大冷媒流量LXが不十分な上記冷媒流量異常低下であることを速やかに認識することができる。
【0154】
すなわち、実施の形態5のオゾンガス発生装置100Eは、電気制御部19Cからの上記冷媒流量異常低下を示す警告信号SXに基づく警報を発することができるため、用力の不足を周知させることができる。
【0155】
<その他>
上述した実施の形態では、冷媒として冷却水を用いたがこれに限定されず、メタノール,エタノール等のアルコール系循環液を含む他の冷媒を用いることができることは勿論である。
【0156】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0157】
1 オゾン発生器
2 オゾン用電源
2b インバータ
2c 高電圧回路部
8 放電空間
11,12 電極構成部
11a,12a 金属電極
11b,12b 誘電体層
13 オゾンガス濃度計
14 冷媒調整弁
17 冷媒流量計
19,19B,19C 電気制御部
20 酸素供給設備
21 オゾン供給先
22 冷媒供給設備
25 冷却電極
41 必要流量表示器
42 積算流量表示器
43 流量異常表示器
100,100B~100E オゾンガス発生装置
R1 外部流路
R2 内部流路
R21,R22 電極近接流路
RC 冷媒流路
図1
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