IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェアリーデバイセズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空調服及びスペーサ 図1
  • 特開-空調服及びスペーサ 図2
  • 特開-空調服及びスペーサ 図3
  • 特開-空調服及びスペーサ 図4
  • 特開-空調服及びスペーサ 図5
  • 特開-空調服及びスペーサ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164389
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】空調服及びスペーサ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079833
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】513190830
【氏名又は名称】Fairy Devices株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】村西 秀一
(72)【発明者】
【氏名】藤野 真人
(72)【発明者】
【氏名】竹崎 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】久池井 淳
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC03
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】空調服と首掛け型装置を装着した場合に、空調服の首回りの開口部の開放状態を維持しつつ、首掛け型装置の発熱対策も同時に実現する。
【解決手段】外気を衣服内に送り込むための送風機を備える空調服であって、衣服の首回りと装着者の首裏との間の通気性を確保するためのスペーサ30を更に備える。スペーサ30は、送風機からの空気が流入する一又は複数の給気口31と、この給気口31から流入した空気を衣服の首回りの開口部11を通じて外部へ排出する第1通気路33と、この給気口31から流入した空気を衣服の後身頃に設けられた孔部を通じて外部へ排出する第2通気路35を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を衣服(10)内に送り込むための送風機(20)を備える空調服(1)であって、
前記衣服の首回りと装着者の首裏との間の通気性を確保するためのスペーサ(30)を更に備え、
前記スペーサは、
前記送風機からの空気が流入する一又は複数の給気口(31)と、
前記給気口から流入した空気を前記衣服の首回りの開口部(11)を通じて外部へ排出する第1通気路(33)と、
前記給気口から流入した空気を前記衣服の後身頃に設けられた孔部(12)を通じて外部へ排出する第2通気路(35)を有する
空調服。
【請求項2】
前記孔部を覆うと共に上方が開口するようにして前記衣服の後身頃に設けられた袋部(40)をさらに備える
請求項1に記載の空調服。
【請求項3】
前記袋部は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な首掛け型装置(100)の一部を収納できるように構成されている
請求項2に記載の空調服。
【請求項4】
前記スペーサは、前記第2通気路の一部が前記孔部から突出した状態で、前記衣服の内側に固定されている
請求項1から請求項3のいずれかに記載の空調服。
【請求項5】
外気を衣服(10)内に送り込むための送風機(20)を備える空調服(1)に対して、前記衣服の首回りと装着者の首裏との間に取付可能なスペーサ(30)であって、
前記送風機からの空気を流入させるための一又は複数の給気口(31)と、
前記給気口から流入した空気を前記衣服の首回りの開口部(11)を通じて外部へ排出するための第1通気路(33)と、
前記給気口から流入した空気を前記衣服の後身頃に設けられた孔部(12)を通じて外部へ排出するための第2通気路(35)を有する
スペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性確保のためのスペーサを備える空調服に関する。また、本発明は、スペーサそれ自体に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
従来から、外気を衣服内に送り込むための送風機を備えた空調服が知られている(例えば特許文献1)。この空調服は、送風機によって衣服内に常に空気が取り込まれるとともに、この取り込まれた空気が衣服の首回りや腕周りの開口部から排出されることから、衣服内に熱や湿気が籠もりにくくなる。このため、空調服を装着することで高温の環境下でも快適に過ごすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-307354号公報
【特許文献2】特許第6786139号公報
【特許文献3】特許第6719140号公報
【特許文献4】特開2021-155907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願出願人は、いわゆるウェアラブルデバイスの一種として、ユーザの首元に装着される首掛け型装置を提案している(特許文献2,特許文献3)。本願出願人が提案する首掛け型装置は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備えており、各腕部にマイクや、カメラ、各種センサなどが搭載されたものである。
【0005】
高温の環境下においてこのような首掛け型装置を利用して作業を行う際には、前述したような空調服を装着することがある。この空調服は送風機によって衣服内に取り込まれた空気を首回りの開口部から排出することで衣服内に熱及び湿気が籠もることを抑制しているが、装着者が首掛け型装置を装着した場合、この装置によって衣服の首回りの開口部が塞がれてしまい、空気流による熱及び湿気の排出作用が機能しなくなるという問題がある。
【0006】
また、首掛け型装置は、バッテリーや制御装置を備えるものであるため、その使用中に発熱することがある。首掛け型装置の発熱対策としては送風することが有効であるため、空調服の送風機から送り出された空気を首掛け型装置に当てるということが検討される。しかし、衣服の首回りの空気の流路に首掛け型装置を配置すると、前述したように空気の排気口がこの装置によって塞がれてしまい、装置から発生した熱が効率的に外部に排熱されなくなり、却って衣服内に熱が蓄積されることになるという問題が生じる。
【0007】
なお、空調服内における空気の流通を確保するために、通気性のよいスペーサを衣服の適所に配置することも従来から知られている(例えば特許文献4)。しかしながら、一般的なスペーサは、衣服内の通気性の確保のみを目的したものであり、首掛け型装置の発熱対策については全く検討されていない。
【0008】
そこで、本発明は、空調服と首掛け型装置を装着した場合に、空調服の首回りの開口部の開放状態を維持しつつ、首掛け型装置の発熱対策も同時に実現できる技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、従来技術が抱える課題の解決手段について鋭意検討した結果、空調服の首回りにスペーサを配置するとともに、このスペーサに、首回りの開口部から空気を排出するための第1通気路と、衣服の後身頃を貫通して首掛け型装置に向かって空気を排出するための第2通気路とを設けることで、この第2通気路から排出された空気を首掛け型装置に当てることができる知見を得た。そして、本発明者は上記知見に基づけば、首回りの開口部の開放状態の維持と首掛け型装置の発熱対策とを同時に実現できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
本発明の第1の側面は、空調服1に関する。空調服1は、基本的に衣服10と送風機20を備え、送風機20によって外気が衣服10の内部に送り込まれる構造となっている。衣服10は、ユーザの上半身に装着される上着であって、装着者の頭部を出すために首回りの開口部11を有している。衣服10の形態としては特に制限されず、空調服1用として一般的に用いられている衣服を全て採用できる。例えば、衣服10は、左右の前身頃をボタンやファスナーで留めるタイプのジャケットやシャツ、ベストであってもよいし、このようなボタンやファスナーが設けられていないティーシャツやポロシャツであってもよい。また、衣服10は、襟付き/襟なし、フード付き/フードなし、長袖/半袖のいずれであってもよい。送風機20についても、特に制限されず、空調服1用として一般的に用いられている小型の送風機を採用できる。送風機20の数は一つであってもよいし複数であってもよい。
【0011】
また、空調服1は、スペーサ30をさらに備える。スペーサ30は、少なくとも衣服10の首回りと装着者の首裏との間の通気性を確保するために用いられる。このため、このスペーサ30は、衣服10の首回りのうち、装着者の首裏に相当する位置に配置される。スペーサ30は、衣服10に着脱不能に固定されていてもよいし、面ファスナー(メカニカルファスニングテープ)によって着脱自在に取り付けられていてもよい。また、スペーサ30は衣服10には係合されず、単に配置されているだけでもよい。このスペーサ30は、一又は複数の給気口31と、第1通気路33と、第2通気路35を有する。一又は複数の給気口31には、それぞれ送風機20から衣服10内に送り込まれた空気が流入する。第1通気路33は、この給気口31から流入した空気を、衣服10の首回りの開口部11を通じて外部へ排出するための通気路であり、第1排気口32を有している。また、第2通気路35は、この給気口31から流入した空気を、衣服10の後身頃に設けられた孔部12を通じて外部へ排出するための通気路であり、第2排気口34を有している。第1通気路33と第2通気路35は、一つに限らず、それぞれ複数設けることができる。また、第1通気路33と第2通気路35は、それぞれ別々の給気口31に接続されており、それぞれ別々の給気口31から空気が流入する構造であってもよい。また、第1通気路33と第2通気路35は、同じ一つの給気口31から空気が流入し、途中で互いに分岐した構造であってもよい。
【0012】
上記構成のように、本発明ではスペーサ30に2つの通気路33,35を設けることとている。第1通気路33は、空気を衣服10の首回りの開口部11を通じて外部へ排出するものであることから、この首回りの開口部11の開放状態を維持する役割を担う。また、第2通気路35は、空気を衣服10の後身頃に設けられた孔部12を通じて外部へ排出する。このため、この第2通気路35が有する第2排気口34の先に首掛け型装置100の発熱部位を置いておくことで、この首掛け型装置100の排熱を促進することができる。これにより、首回りの開口部11の開放状態の維持と首掛け型装置100の発熱対策を同時に実現できる。
【0013】
本発明に係る空調服1は、袋部40をさらに備えることが好ましい。袋部40は、衣服10の孔部12を覆うと共に、その上方が開口するようにして、衣服10の後身頃に設けられている。特に、この袋部40は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な首掛け型装置100の一部を収納できるように構成されている好ましい。袋部40は、衣服10の孔部12を覆うものであることから、スペーサ30の第2通気路35を通じて排出された空気がこの袋部40内に吹き込まれることとなる。また、この袋部40は、その上部が開口となっていることから、その内部に吹き込まれた空気を順次排出できる。このため、この袋部40内に首掛け型装置100の一部(特に発熱部位)が収納されていれば、首掛け型装置100から生じた熱を効率的に排出することが可能となる。これにより、首掛け型装置100の発熱効率を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る空調服1において、スペーサ30は、第2通気路35の一部(端部)が衣服10の孔部12から突出した状態で、衣服10の内側に固定されていることが好ましい。ここにいう「固定」には、着脱不能の固定状態だけでなく、着脱可能な固定状態が含まれる。このように、第2通気路35の一部を衣服10の孔部12から突出させた状態で固定することで、この突出している一部に、首掛け型装置100を載せることも可能となる。これにより、首掛け型装置100を安定して装着者の首元に配置することができる。
【0015】
本発明の第2の側面は、スペーサ30に関する。本発明に係るスペーサ30は、外気を衣服10内に送り込むための送風機20を備える空調服1に対して、衣服10の首回りと装着者の首裏との間に取付可能に構成されている。本発明に係るスペーサ30は、送風機20からの空気を流入させるための一又は複数の給気口31と、この給気口31から流入した空気を衣服10の首回りの開口部11を通じて外部へ排出するための第1通気路33と、この給気口31から流入した空気を衣服10の後身頃に設けられた孔部12を通じて外部へ排出するための第2通気路35を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空調服と首掛け型装置を装着した場合に、空調服の首回りの開口部の開放状態を維持しつつ、首掛け型装置の発熱対策も同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る空調服の一実施形態を示した正面図であり、首掛け型装置を併せて示している。
図2図2は、本発明に係る空調服の一実施形態を示した背面図である。
図3図3は、本発明に係るスペーサの一実施形態を示した正面図である。
図4図4は、本発明に係るスペーサの一実施形態を示した背面図である。
図5図5は、首掛け型装置の一例を示している。
図6図6は、空調服と首掛け型装置を同時に装着した状態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0019】
[1.空調服]
まず、図1から図4を参照して、本発明に係る空調服1及びスペーサ30の一実施形態について説明する。図1及び図2に示されるように、本発明に係る空調服1は、一般的な空調服と同様に、衣服10及び送風機20を備える。
【0020】
図示した例において、衣服10は、左右の前身頃をファスナーで留めるタイプの上着(ジャケット)であり、長袖の襟付きとなっている。この衣服10は、ナイロンやポリエステルなどの防風性に優れた素材で形成されている。また、衣服10の胴回りには伸縮性のゴムなどが配されており、衣服10の装着時において、この胴回り部分は装着者の胴部に密着する。このため、衣服10は、首周り及び袖周りの開口部を除き、外部からの空気が衣服10内部に侵入しにくく、反対に衣服10内部からの空気が外部へ漏洩しにくい構造となっている。なお、衣服10の形状は、図示したものに限らず、空調服として機能するものであれば、どのようなタイプのものでも採用できる。
【0021】
また、図示した例において、送風機20は、衣服10の後身頃に設けられており、外部の空気を取り込んで、衣服10内部へと送り込むように構成されている。送風機20は、一般的に、バッテリーと、このバッテリーから供給される電力で駆動するモータと、このモータの回転軸(シャフト)に取り付けられたファンを含む。送風機20としては、一般的な空調服に用いられる小型の送風機であれば、公知のものを採用できる。なお、図2において送風機20は一機のみ図示されているが、この送風機20は、衣服10の後身頃の反対側にもう一機設けられている(不図示)。送風機20の数は、このように2機以上であることが好ましいが、1機のみであってもよいし、3機以上であってもよい。各送風機20により、外部の空気が衣服10の内部へと送り込まれる。前述のとおり、衣服10は防風性を備えたものであることから、各送風機20によって衣服10の内部に取り込まれた空気は、衣服10の生地部分から漏洩することはなく、首周り及び袖周りの開口部のみから外部へと排出される。その際に、衣服10内部に溜まった熱や湿気が空気と共に外部へと排出されることとなる。
【0022】
図1及び図2に示されるように、空調服1は、さらに、スペーサ30を備える。スペーサ30は、衣服10の首周りの開口部11の周囲に配置される。より具体的には、衣服10の首周りのうち、装着者の首裏に相当する位置に配置される。スペーサ30は、この位置に着脱不能に固定されていてもよいし、面ファスナー等によって着脱可能に取り付けられていてもよい。スペーサ30は、通気路を有しており、送風機20によって衣服10の内部へと送り込まれた空気が首周りの開口部11から効率的に排出されるように空気の流路を維持する。また、図2に示されるように、スペーサ30の通気路の一部は、衣服10の後身頃に形成された孔部12を通じて、衣服10を貫通するように構成されている。このため、スペーサ30は、この衣服10の孔部12を通じて、衣服10の内部へと送り込まれた空気を衣服10の後身頃側へと排出する機能を持つ。詳しくは後述するように、このスペーサ30から排出された空気を首掛け型装置100に当てることにより、首掛け型装置100の放熱を促進することができる。
【0023】
図3及び図4は、本発明の一実施形態に係るスペーサ30を抽出して示している。これらの図に示されるように、スペーサ30は、基本的に、第1通気路33と第2通気路35によって構成されている。本実施形態において、第1通気路33と第2通気路35は、それぞれ複数設けられており、図示した例では、第1通気路33は左右それぞれ2本ずつ(合計4本)設けられ、第2通気路35は、第1通気路33の間の中央部分に2本設けられている。第1及び第2通気路33,35は、それぞれ中空筒状に構成されており、一端から流入した空気を他端から排出する。各通気路33,35を形成する素材は特に限定されないが、軽量で一定の剛性を有するプラスチック材料を用いればよい。また、図示した例では、スペーサ30はテープ等の結束部材36を含み、この結束部材36によって各通気路33,35を結束している。ただし、スペーサ30は、このような結束部材36に依らず、各通気路33,35を接着剤等で接合することとしてもよいし、各通気路33,35を一体成型することとしてもよい。
【0024】
各第1通気路33は、衣服10内部の空気を首周りの開口部11から排出するための流路を形成している。このため、第1通気路33は、直線状あるいは緩やかな曲線状で形成することが好ましい。また、図3に示されるように、各第1通気路33は、一端部に送風機20からの空気が流入する給気口31を有し、他端部にこの給気口31から流入した空気を衣服10の首回りの開口部11を通じて外部へ排出するための第1排気口32を有している。
【0025】
一方で、各第2通気路35は、衣服10内部の空気を後身頃の孔部12から排出するための流路を形成している。このため、第2通気路35は、直角かそれに近い角度(例えば60~120度)で屈曲又は湾曲した折線状又は曲線状となっていることが好ましい。言い換えると、前述したとおり、第1通気路33はほぼ一直線状となっているのに対して、第2通気路35の一部分は、この第1通気路33とほぼ平行な直線状となり、残りの部分はこの第1通気路33がなす直線に対して直角かそれに近い角度(例えば60~120度)で傾斜した直線状となる。これにより、第2通気路35は、第1通気路33とは異なる方向に向けて空気を排出する機能を担う。すなわち、図4に示されるように、各第1通気路33は、一端部に送風機20からの空気が流入する給気口31を有し、他端部にこの給気口31から流入した空気を衣服10の後身頃の孔部12を通じて外部へ排出するための第2排気口34を有している。
【0026】
なお、図3及び図4に示したスペーサ30の例では、各通気路33,35がそれぞれ給気口31と排気口32,34を有する構成となっているが、各通気路33,35の給気口31を共通化することも可能である。つまり、一つの給気口31から流入した空気を各通気路33,35に分岐させ、各通気路33,35の排気口32,34から排出するようにスペーサ30を構成することしてもよい。
【0027】
図2に戻り、空調服1の説明を続ける。図2に示されるように、空調服1は、さらに袋部40を備える。この袋部40は、前述したスペーサ30の第2通気路35を通じて空気が排出される衣服10の孔部12を覆う。また、袋部40は、その上部を開口した状態で衣服10の後身頃に取り付けられている。この袋部40は、衣服10の生地と同様に、ナイロンやポリエステル等の防風性に優れた生地で形成すればよい。このため、この袋部40は、スペーサ30の第2通気路35から排出された空気が吹き込まれた後、その上部の開口から空気を放出する。この空調服1の袋部40には、後述する首掛け型装置100の本体部130の収納することができる。首掛け型装置100の本体部130にはバッテリーやプロセッサ等が搭載されていることから、首掛け型装置100を駆動したときに本体部130から熱が発生する。このような首掛け型装置100の発熱部位を空調服1の袋部40内に収納することで、袋部40を流通する空気によって首掛け型装置100から発生した熱を効率的に排出できる。
【0028】
[2.首掛け型装置]
続いて、図5を参照して、前述した空調服1と同時に装着することができる首掛け型装置100の例について説明する。この首掛け型装置100については、特許文献1(特許第6786139号公報)及び特許文献2(特許第6719140号公報)に記載された構成を参照できる。この首掛け型装置100は、複数の集音部(マイク)を備えていることから、装着者又はその対話者の発した音声を録音することができる。また、この首掛け型装置100は、撮像部(カメラ)を備えていることから、ユーザに装着された状態でその前方の風景を撮像することができる。以下では、主に首掛け型装置100のハードウェアについて説明する。
【0029】
例えば図5に示されるように、首掛け型装置100を構成する筐体は、左腕部110、右腕部120、及び本体部130を備える。左腕部110と右腕部120は、本体部130の左端と右端から前方に向かって延出しており、首掛け型装置100は、平面視したときに装置全体として略U字をなす構造となっている。首掛け型装置100を装着する際には、本体部130を装着者の首裏に配置し、左腕部110と右腕部120を装着者の首横から胸部側に向かって垂らすようにして、装置全体を首元に引っ掛ければよい。首掛け型装置100の筐体内には、各種の電子部品が格納されている。
【0030】
左腕部110と右腕部120には、それぞれ複数の集音部(マイク)140が設けられている。各集音部140としては、ダイナミックマイクやコンデンサマイク、MEMS(Micro-Electrical-Mechanical Systems)マイクなど、公知のマイクロフォンを採用すればよい。集音部140は、主に装着者とその対話者の音声を取得することを目的として配置されている。図5に示されるように、左腕部110と右腕部120のそれぞれに2箇所又は3箇所の集音部140を設けることが好ましい。ただし、左腕部110と右腕部120の集音部140の数はこれに限られず、例えば1~4個の範囲でそれぞれ選択することが可能である。これらの集音部140によって取得した音信号は、本体部130内に設けられた制御部(メインCPU)へ伝達されて所定の解析処理が行われる。また、本体部130には、このような制御部を含む電子回路やバッテリーなどの制御系が内装されている。
【0031】
また、左腕部110には、操作部150が設けられている。操作部150は、装着者による操作の入力を受け付ける。操作部150としては、公知のスイッチ回路又はタッチパネルなどを採用することができる。操作部150は、例えば音声入力の開始又は停止を指示する操作や、装置の電源のON又はOFFを指示する操作、スピーカの音量の上げ下げを指示する操作、その他首掛け型装置100の機能の実現に必要な操作を受け付ける。
【0032】
左腕部110には、さらに撮像部160が設けられている。具体的には、左腕部110の先端面に撮像部160が設けられており、この撮像部160によって装着者の正面側の静止画像や動画像を撮影することができる。撮像部160としては一般的なデジタルカメラを採用すればよい。撮像部160は、例えば、撮影レンズ、メカシャッター、シャッタードライバ、CCDイメージセンサユニットなどの光電変換素子、光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、及びICメモリで構成される。また、撮像部160は、撮影レンズから被写体までの距離を測定するオートフォーカスセンサ(AFセンサ)と、このAFセンサが検出した距離に応じて撮影レンズの焦点距離を調整するための機構とを備えることが好ましい。また、撮像部160は、いわゆる広角レンズを備えるものであることが好ましい。撮像部160によって取得された画像は、本体部130内の制御部に伝達され、画像データとして記憶される。また、撮像部160によって取得された画像をインターネットでサーバ装置へ送信することとしてもよい。
【0033】
右腕部120には、さらに非接触型のセンサ部170が設けられている。センサ部170は、主に首掛け型装置100の正面側における装着者の手の動きを検知することを目的として、右腕部120の先端面に配置されている。センサ部170の検知情報は、撮像部160の起動や、撮影の開始、停止など、主に撮像部160の制御に利用される。例えば、センサ部170は、装着者の手などの物体がそのセンサ部170に近接したことを検知して撮像部160を制御することとしてもよいし、あるいはセンサ部170の検知範囲内で装着者が所定のジェスチャーを行ったことを検知して撮像部160を制御することとしてもよい。センサ部170の例は、近接センサ又はジェスチャーセンサである。近接センサは、例えば装着者の手指が所定範囲まで近接したことを検知する。近接センサとしては、光学式、超音波式、磁気式、静電容量式、又は温感式などの公知のものを採用できる。ジェスチャーセンサは、例えば装着者の手指の動作や形を検知する。ジェスチャーセンサの例は光学式センサであり、赤外発光LEDから対象物に向けて光を照射し、その反射光の変化を受光素子で捉えることで対象物の動作や形を検出する。また、センサ部170での検知情報を、撮像部160、集音部140、及び/又は制御部(メインCPU)の起動に利用することも可能である。なお、本実施形態において、左腕部110の先端面に撮像部160を配置し、右腕部120の先端面にセンサ部170を配置することとしているが、撮像部160とセンサ部170の位置を入れ替えることも可能である。
【0034】
上記した左腕部110と右腕部120は、装着者の首裏に当接する位置に設けられた本体部130によって連結されている。この本体部130には、プロセッサやバッテリーなどの電子部品が内装されている。例えば、本体部130には、回路基板やCPU等の制御装置、メモリやストレージ等の記憶装置、通信装置、各種のセンサ装置が内装される。本体部130を構成する筐体は、図5に示されるように、ほぼ平坦な形状となっており、平面状(板状)の回路基板やバッテリーを格納することができる。また、本体部130は、左腕部110及び右腕部120よりも下方に向かって延出する下垂部131を有する。本体部130に下垂部131を設けることで、制御系回路を内装するための空間を確保している。また、本体部130には制御系回路が集中して搭載されている。このため、首掛け型装置100の全重量を100%とした場合に、本体部130の重量は40~80%又は50%~70%を占める。このような重量の大きい本体部130を装着者の首裏に配置することで、装着時における安定性が向上する。また、装着者の体幹に近い位置に重量の大きい本体部130を配置することで、装置全体の重量が装着者に与える負荷を軽減できる。
【0035】
また、本体部130の内側(装着者側)には近接センサ180が設けられている。近接センサ180は、物体の接近を検出するためのものであり、首掛け型装置100が装着者の首元に装着されると、その首元の接近を検出することとなる。このため、近接センサ180が物体の近接を検出している状態にあるときに、集音部140、撮像部160、及びセンサ部170などの機器をオン(駆動状態)とし、近接センサ180が物体の近接を検出していない状態にあるときには、これらの機器をオフ(スリープ状態)、もしくは起動できない状態とすればよい。これにより、バッテリーの電力消費を効率的に抑えることができる。なお、近接センサ180としては公知のものを用いることができるが、光学式のものが用いられる場合には、近接センサ180の検出光を透過するために、本体部筐体に検出光を透過する透過部を設けるとよい。近接センサ180としては、光学式、超音波式、磁気式、静電容量式、又は温感式などの公知のものを採用できる。
【0036】
また、図3に示されているように、本体部130の外側(装着者の反対側)には放音部190(スピーカ)が設けられている。放音部190は、本体部130の外側に向かって音を出力するように配置されている。
【0037】
なお、首掛け型装置100の構造的特徴として、例えば図5に示されているように、首掛け型装置100は、ディスプレイやモニタなどの表示装置を有していない。このため、ユーザは、放音部190から出力される音声ガイドなどを参照し、前述した操作部150や非接触型のセンサ部170を利用して各ハードウェア要素のオン・オフ等の操作を行うこととなる。
【0038】
[3.空調服と首掛け型装置の装着状態]
図6は、前述した空調服1と首掛け型装置100を同時に装着した場合における特徴的な部分を模式的に表した断面図である。図6に示されるように、衣服10の後身頃(例えば襟付きの衣服10である場合には襟元付近)に、衣服10の生地を内部から外部へと貫通する孔部12が形成されている。また、この孔部12は、衣服10の後身頃に取り付けられた袋部40によって覆われている。そして、この孔部12には、スペーサ30の第2通気路35の第2排気口34側の端部が差し込まれる。このように、第2通気路35を孔部12に差し込んだ状態で、スペーサ30は衣服10の内面側に固定されている。従って、送風機20から送り出された空気は、スペーサ30の第2通気路35を介して袋部40へと一旦導入された後に外部へと排出される。また、この固定状態において、スペーサ30の第1通気路33は、衣服10の内面に沿って上方に向かって延びるように配置され、第1通気路33の第1排気口32は衣服10の首周りの開口部11に向けられている。このため、送風機20から送り出された空気は、スペーサ30の第1通気路33を介して首周りの開口部11から外部へと排出される。このようにして、本実施形態に係る空調服1では、衣服10、送風機20、スペーサ30、及び袋部40が一体的に機能する。
【0039】
また、図6に示されるように、空調服1を装着した状態で首掛け型装置100を重ねて装着する場合には、首掛け型装置100の本体部130、特に下垂部131を衣服10の後身頃側に設けられた袋部40に収納すると良い。さらに、この首掛け型装置100の本体部130は、袋部40内に突出しているスペーサ30の第2通気路35上に載せるようにすることが好ましい。つまり、第2通気路35は、首掛け型装置100の本体部130を載せることができる程度に袋部40内に突出した部位(例えば3~15cm)を有していることが好ましい。首掛け型装置100の本体部130を袋部40内に収納したときに、この本体部130が第2通気路35の第2排気口34を塞いでしまうことが懸念されるが、図6に示したように、本体部130を第2通気路35上に載せられるように構成することで、このような懸念を解消することができる。また、袋部40内にはスペーサ30の第2通気路35を介して空気が常時流入しているため、この袋部40の内部に、首掛け型装置100のうち最も発熱が懸念される本体部130を収納しておくことで、本体部130から生じた熱を効率的に排出することができる。
【0040】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0041】
1…空調服 10…衣服
11…首周りの開口部 12…孔部
20…送風機 30…スペーサ
31…給気口 32…第1排気口
33…第1通気路 34…第2排気口
35…第2通気路 36…結束部材
40…袋部 100…首掛け型装置
110…左腕部 120…右腕部
130…本体部 131…下垂部
140…集音部 150…操作部
160…撮像部 170…センサ部
180…近接センサ 190…放音部
図1
図2
図3
図4
図5
図6