(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164390
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20241120BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241120BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20241120BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241120BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241120BHJP
【FI】
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 200
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079835
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川浦 智規
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002BA02
4D002BA12
4D002CA07
4D002DA31
4D002EA08
4D002GA02
4D002GB01
4D002GB03
4D002GB11
4D002GB20
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC01
4D020CC05
4D020CC09
4D020DA02
4D020DB01
4D020DB05
4D020DB06
4D020DB20
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC08
4G146JC28
4G146JD06
(57)【要約】
【課題】コストを削減しつつ、アミン水溶液に吸収されている二酸化炭素の量を推定できる二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収装置10aは、二酸化炭素放散塔12の内部に存在するアミン水溶液を二酸化炭素放散塔12に送給する第一電動ポンプ16の消費電力を計測する電力計18と、二酸化炭素放散塔12に流入するアミン水溶液の温度を計測する温度計と、電動ポンプの消費電力およびアミン水溶液の温度とアミン水溶液に含まれる二酸化炭素の量との関係が規定されたマップを備える制御装置22と、を備え、制御装置22は、電力計18により計測された第一電動ポンプ18の消費電力と温度計により計測されたアミン水溶液の温度をマップに当てはめることによりアミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有するガスに含まれる二酸化炭素がアミン水溶液に吸収されるように構成される二酸化炭素吸収塔と、
前記アミン水溶液に吸収されている二酸化炭素が前記アミン水溶液から放散されるように構成される二酸化炭素放散塔と、
前記二酸化炭素吸収塔と前記二酸化炭素放散塔とを接続している第一経路を通じて前記二酸化炭素吸収塔の内部に存在する前記アミン水溶液を前記二酸化炭素放散塔に送給する電動ポンプの消費電力、前記電動ポンプを流れる電流、または前記電動ポンプに印加される電圧を計測する計測器と、
前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液の温度を計測する第一温度計と、
前記消費電力および前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液の温度と、前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液に含まれる二酸化炭素の量と、の関係が規定されたマップを備え、前記計測器により計測された前記消費電力または前記計測器により計測された前記電流もしくは前記電圧から推定した前記消費電力と前記第一温度計により計測された前記アミン水溶液の温度を前記マップに当てはめることにより、前記アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する演算装置と、
を備える、
二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記二酸化炭素放散塔から前記二酸化炭素吸収塔に前記アミン水溶液を送給する第二経路を流れる前記アミン水溶液と前記第一経路を流れる前記アミン水溶液との間で熱交換されるように構成される熱交換器を備え、
前記第一温度計は、前記第一経路の前記熱交換器よりも前記二酸化炭素放散塔に近い側において前記アミン水溶液の温度を計測するように構成される、
二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記電動ポンプに流入する前記アミン水溶液の温度を計測する第二温度計を備え、
前記演算装置は、前記第二温度計により計測された前記アミン水溶液の温度に基づいて、前記計測により計測された前記消費電力または推定した前記消費電力を補正し、補正した前記消費電力を、前記マップに適用することにより、前記アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する、
二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項3に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記マップは、前記電動ポンプがあらかじめ規定された温度である前記アミン水溶液を前記二酸化炭素放散塔に送給するときの前記電動ポンプの前記消費電力および前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液の温度と、前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液に含まれる二酸化炭素の量と、の関係が規定されたマップであり、
前記演算装置は、前記計測器により計測された前記消費電力または前記計測器により計測された前記電流もしくは前記電圧から推定した前記消費電力を、前記第二温度計により計測された温度に基づいて、あらかじめ規定された温度の前記アミン水溶液を前記二酸化炭素放散塔に送給するときの消費電力に補正し、補正した前記消費電力を前記マップに適用することにより、前記アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する、
二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記電動ポンプを流通する前記アミン水溶液の流量を計測する流量計を備え、
前記演算装置は、前記流量計により計測された前記流量に基づいて、前記計測器により計測された前記消費電力または前記計測器により計測された前記電流もしくは前記電圧から推定した前記消費電力を補正し、補正した前記消費電力を、前記マップに適用することにより、前記アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する、
二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
請求項5に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記マップは、前記電動ポンプがあらかじめ規定された流量の前記アミン水溶液を前記二酸化炭素放散塔に送給するときの前記電動ポンプの前記消費電力および前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液の温度と、前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液に含まれる二酸化炭素の量と、の関係が規定されたマップであり、
前記演算装置は、前記計測器により計測された前記消費電力または前記計測器により計測された前記電流もしくは前記電圧から推定した前記消費電力を、前記流量計により計測された前記流量に基づいて、あらかじめ規定された流量の前記アミン水溶液を前記二酸化炭素放散塔に送給するときの消費電力に補正し、補正した前記消費電力を前記マップに適用することにより、前記アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する、
二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記二酸化炭素放散塔から排出される二酸化炭素の流量を計測する二酸化炭素流量計を備え、
前記演算装置は、推定した前記アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量から前記二酸化炭素流量計により計測された二酸化炭素の量を減算することにより、前記二酸化炭素放散塔から流出する前記アミン水溶液に残留している二酸化炭素の量を推定する、
二酸化炭素回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アミン水溶液を使用して化石燃料の燃料排ガスなどに含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置が知られている。特許文献1および特許文献2に開示される二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素吸収塔に燃焼排ガスなどを導入するとともに、二酸化炭素吸収塔と二酸化炭素放散塔とにアミン水溶液を循環させるように構成される。そして、二酸化炭素吸収塔において燃料排ガスなどに含まれる二酸化炭素をアミン水溶液に吸収させ、二酸化炭素放散塔においてアミン水溶液から二酸化炭素を放散させるとともに、二酸化炭素放散塔において放散させた二酸化炭素を回収するように構成される。
【0003】
ところで、このような二酸化炭素回収装置において二酸化炭素の回収の効率を上げる(例えば、二酸化炭素回収装置の稼働に要するエネルギーに対する回収できる二酸化炭素の量の比を大きくする)ため、適切な運転条件で二酸化炭素回収装置を稼働させることが求められる。そしてそのためには、アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量をリアルタイムで継続的に把握する必要がある。
【0004】
前記特許文献1に開示される二酸化炭素回収装置は、アミン水溶液の温度と、アミン水溶液の電気伝導率または超音波伝搬速度とからアミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する。前記特許文献2に開示される二酸化炭素回収装置は、アミン水溶液の粘度、導電率および超音波伝搬速度のうちの少なくとも1つを計測し、その計測結果からアミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される構成によれば、アミン水溶液の循環系に、温度計のほかに電気導電率測定装置または超音波伝搬速度測定装置が配置されなければならない。同様に、特許文献2に開示される構成によれば、アミン水溶液の循環系に、粘度計、導電率および超音波伝播速度測定器の少なくとも1つが配置されなければならない。このため、二酸化炭素回収装置に設備コストの上昇を招くほか、アミン水溶液はいわゆる「アミン腐食」を引き起こすことがあるためこれらの機器のメンテナンスの手間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-1522731号公報
【特許文献1】特開2017-90120号公報
【発明の概要】
【0007】
(発明が解決しようとする課題)
上記実情に鑑み、本発明の目的の1つは、装置に要するコストおよびメンテナンスに要する手間を削減しつつ、または装置に要するコストの上昇およびメンテナンスの手間の増加を抑制しつつ、アミン水溶液に吸収されている二酸化炭素の量を推定できる二酸化炭素吸収装置を提供することである。
【0008】
(課題を解決するための手段)
前記目的を達成するため、本発明に係る二酸化炭素回収装置は、
二酸化炭素を含有するガスに含まれる二酸化炭素がアミン水溶液に吸収されるように構成される二酸化炭素吸収塔と、
前記アミン水溶液に吸収されている二酸化炭素が前記アミン水溶液から放散されるように構成される二酸化炭素放散塔と、
前記二酸化炭素吸収塔と前記二酸化炭素放散塔とを接続している第一経路を通じて前記二酸化炭素吸収塔の内部に存在する前記アミン水溶液を前記二酸化炭素放散塔に送給する電動ポンプの消費電力、前記電動ポンプを流れる電流、または前記電動ポンプに印加される電圧を計測する計測器と、
前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液の温度を計測する第一温度計と、
前記消費電力および前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液の温度と、前記第一経路を通じて前記二酸化炭素放散塔に送給される前記アミン水溶液に含まれる二酸化炭素の量と、の関係が規定されたマップを備え、前記計測器により計測された前記消費電力または前記計測器により計測された前記電流もしくは前記電圧から推定した前記消費電力と前記第一温度計により計測された前記アミン水溶液の温度を前記マップに当てはめることにより、前記アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する演算装置と、
を備える。
【0009】
本発明に係る二酸化炭素回収装置は、アミン水溶液の温度およびアミン水溶液を送給するためのポンプの消費電力(具体的には、計測した消費電力または推定した消費電力)を二次元マップに適用することにより、アミン水溶液が吸収した二酸化炭素の量を推定する。このため、二酸化炭素回収装置が、アミン水溶液の温度を計測する温度計と、ポンプの消費電力を計測する計測器またはポンプの消費電力を推定するための電流もしくは電圧を計測する計測器とを備えることにより、アミン水溶液が吸収した二酸化炭素の量を推定できる。したがって、特許文献1や特許文献2に開示される二酸化炭素回収装置のような、電気導電率測定装置、超音波伝搬速度測定装置、粘度計、導電率計、および超音波伝播速度測定器などの測定装置(計測機器)は不要であるから、装置に要するコストの削減を図ることができる。また、電力、電流、または電圧を計測する計測器は、前記のような測定装置に比較して故障しにくく、かつ、計測器は腐食性を有するアミンに接触しないから、メンテナンスの手間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を示す模式図である。
【
図2A】
図2Aは、アミン水溶液の二酸化炭素含有率と第一ポンプの消費電力との関係を示すグラフである。
【
図2B】
図2Bは、アミン水溶液の二酸化炭素含有率と放散塔に流入するアミン水溶液の温度との関係を示すグラフである。
【
図3A】
図3Aは、第一ポンプの消費電力と放散塔に流入するアミン水溶液の温度とアミン水溶液の二酸化炭素含有率との関係を示すグラフである。
【
図3B】
図3Bは、第一ポンプの消費電力と放散塔に流入するアミン水溶液の温度とアミン水溶液の二酸化炭素含有率との関係を規定する二次元マップの模式図である。
【
図4】
図4は、第一の変形例に係る二酸化炭素回収装置の構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第二の変形例に係る二酸化炭素回収装置の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第三の変形例に係る二酸化炭素回収装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置10aの構成を示す模式図である。
図1に示すように、二酸化炭素回収装置10aは、二酸化炭素吸収塔11、二酸化炭素放散塔12(「二酸化炭素再生塔」と称されることもある)、第一経路13、第二経路14、熱交換器15、第一ポンプ16、第二ポンプ17、電力計18、第一温度計19、リボイラー20、凝集器21、および制御装置22を備える。図中の各矢印は、アミン水溶液の流れの方向を示す(なお、
図4~
図6も同様である)。なお、以下の説明では、二酸化炭素回収装置を「回収装置」と略し、二酸化炭素吸収塔を「吸収塔」と略し、二酸化炭素放散塔を「放散塔」と略すことがある。また、本実施形態に係る回収装置10aによる二酸化炭素の回収の対象であるガス(すなわち、二酸化炭素を含有するガス)を「対象ガス」と記すことがある。
【0012】
なお、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置10aに用いられるアミン水溶液に含まれるアミンの種類は特に限定されるものではなく、公知の二酸化炭素回収装置に適用される各種アミンが適用可能である。また、対象ガスの発生源および対象ガスの種類も特に限定されるものではない。例えば、対象ガスの発生源として浸炭炉などが適用でき、この場合の対象ガスには浸炭炉の燃焼排ガスが適用される。
【0013】
吸収塔11は、アミン水溶液と対象ガスとを気液接触させることにより、アミン水溶液に二酸化炭素を吸収させるように(換言すると、対象ガスから二酸化炭素が除去されるように)構成される。吸収塔11の内部には、対象ガスとアミン水溶液との気液接触を促進するための部材である上部充填材111および下部充填材112が配置される。上部充填材111は吸収塔11の頂部の近傍に配置され、下部充填材112はその下方に配置される。吸収塔11の底部(またはその近傍)であって下部充填材112の下方には、対象ガス導入経路23の一端が接続され、吸収塔11の頂部(またはその近傍)であって上部充填材111の上方には対象ガス排出経路24の一端が接続される。対象ガス導入経路23は、対象ガスを吸収塔11の内部に導入するための経路であり、その他端は対象ガスの発生源に接続される。対象ガス排出経路24は対象ガスを吸収塔11から排出するための経路であり、その他端は例えば大気開放される。吸収塔11の底部(またはその近傍)であって下部充填材112の下方には、後述する第一経路13の一端が接続され、吸収塔11の上部であって上部充填材111と下部充填材112との間には後述する第二経路14の一端が接続される。
【0014】
放散塔12は、アミン水溶液を加熱することにより、アミン水溶液から二酸化炭素が放散されるように構成される。放散塔12の内部には、アミン水溶液と水後述する水蒸気との気液接触を促進するための部材である上部充填材121および下部充填材122が配置される。なお、上部充填材121は頂部近傍に配置され、下部充填材122はその下方に配置される。放散塔12の上部であって上部充填材121と下部充填材122との間には第一経路13の他端が接続され、放散塔12の底部(またはその近傍)であって下部充填材122の下方には、第二経路14の他端が接続される。
【0015】
リボイラー20は、放散塔12の内部に溜まっているアミン水溶液を加熱することにより所定の温度(具体的には、放散塔12に送給されたアミン水溶液を、二酸化炭素を放散する反応が生じる温度に加熱できる温度)の水蒸気を発生させるように構成される。具体的には、リボイラー20は、第三経路25および第四経路26を介して放散塔12の底部に接続される。そして、リボイラー20は、第三経路25を通じて流入したアミン水溶液を加熱して水蒸気を発生させる。リボイラー20において発生した水蒸気は、第四経路26を介して放散塔12の内部に流入する。
【0016】
放散塔12の頂部(またはその近傍)であって上部充填材121の上方には、二酸化炭素排出経路27の一端が接続される。二酸化炭素排出経路27上には凝集器21(冷却器および気液分離器)が配置される。凝集器21は、放散塔12から排出された水蒸気と二酸化炭素との混合気から水蒸気を分離するように構成される。凝集器21は還流経路28により放散塔12に接続される。還流経路28は、凝集器21において発生した凝集水が放散塔12の上部充填材121の上方に還流するように構成される。
【0017】
第一経路13は、アミン水溶液を吸収塔11から放散塔12に送給するための経路である。第一経路13の一端は吸収塔11の底部に接続され、第一経路13の他端は放散塔12の上部に接続される。第一経路13上には、第一ポンプ16および第一温度計19が設けられる。第一ポンプ16は、動作することにより、吸収塔11の底部に溜まっているアミン水溶液を、第一経路13を通じて放散塔12に送給する。第一ポンプ16には、公知の電動ポンプが適用される。第一ポンプ16には電力計18が接続される。電力計18は、本発明の計測器の例である。電力計18は、第一ポンプ16の消費電力を計測できる。第一温度計19は、放散塔12に流入するアミン水溶液の温度を計測できるように構成される。具体的には、第一温度計19は、後述する熱交換器15において加熱された後であって放散塔12において加熱される前のアミン水溶液の温度を計測できる。例えば、第一温度計19は、第一経路13の前記他端近傍に設けられ、第一経路13を流通するアミン水溶液の温度を計測できる。
【0018】
第二経路14は、アミン水溶液を放散塔12から吸収塔11に送給するための経路である。第二経路14の一端は吸収塔11の上部に接続され、第二経路14の他端は放散塔12の底部に接続される。第二経路14上には第二ポンプ17が設けられる。第二ポンプ17は、動作することによって、放散塔12の底部に溜まっているアミン水溶液を、第二経路14を通じて吸収塔11に送給する。第二ポンプ17には、公知の電動ポンプが適用できる。
【0019】
熱交換器15は、第一経路13および第二経路14のそれぞれの中間部に配置される。そして、熱交換器15は、第一経路13を流通するアミン水溶液と第二経路14を流通するアミン水溶液との間で熱交換されるように構成される。具体的には、熱交換器15は、第一経路13を流れるアミン水溶液を加熱し、第二経路14を流れるアミン水溶液を冷却するように構成される。
【0020】
制御装置22は、本発明の演算装置の例である。制御装置22は、第一ポンプ16、第二ポンプ17、およびリボイラー20に接続されており、これらを制御できるように構成される。また、制御装置22は、電力計18および第一温度計19に接続されており、電力計18により計測される第一ポンプ16の消費電力および第一経路13から放散塔12に流入するアミン水溶液の温度をリアルタイムで継続的に取得できる。
【0021】
制御装置22は、CPU、RAM、ROM、およびI/Fを備えるコンピュータを含む装置である。コンピュータのROMには、回収装置10aを制御するためのコンピュータプログラムおよび後述する二次元マップがあらかじめ格納されている。そして、コンピュータのCPUは、ROMに格納されているコンピュータプログラムを読み出し、RAMに展開して(RAMをワークエリアとして用いて)実行する。これにより、回収装置10aが制御される。また、制御装置22は、後述するアミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定する際に、前記二次元マップをROMから読み出して使用する。
【0022】
なお、吸収塔11、放散塔12、第一経路13、第二経路14、リボイラー20、凝集器21、熱交換器15、電力計18、および第一温度計19の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の各種の構成が適用できる。
【0023】
また、上記説明では、計測器として電力計18が適用され、制御装置22は電力計18により計測された電力を取得できる構成を示したが、このような構成に限定されない。例えば、第一ポンプ16がインバータにより制御される構成であれば、インバータの制御指示値と、制御方式(電流制御、電圧制御)に応じて、駆動力および電力が算出可能である。具体的には、電圧型電流制御方式のPWM方式のインバータは直流を交流に変換しており直流部の電圧が一定であるため、この直流部の電圧(制御指示値)と電流の計測値との積により、電力が推定可能である。またPAM方式のように振幅電圧を制御する構成であれば、制御指示値から振幅電圧値が算出できる。このため、電圧の制御指示値と電流の計測値との積より消費電力を推定できる。
【0024】
PWM方式インバータによって第一ポンプ16を制御する場合、インバータからの出力電圧を計測すると、第一ポンプ16を含む系全体の電気抵抗から電流値を演算できる。具体的には、出力電圧と電流とは
V-v=(r+jωL)×i
V:直流電圧(インバータ内部電圧)
v:出力電圧(計測される電圧)(ベクトル)
r:系全体の電気抵抗
L:容量(インダクタンス)
i:電流(ベクトル)
j:虚数単位
の関係にある。なお、系全体の電気抵抗は固定値である。このため、第一ポンプ16に印加される電圧(インバータからの出力電圧)の計測値を用いて、消費電力(インバータの出力電力)を推定できる。
【0025】
このため、計測器として、電力計18に代えて、第一ポンプ16を流れる電流(第一ポンプ16を駆動させるための電流)を計測できる電流計、または、第一ポンプ16に印加される電圧を計測できる電圧計が適用されてもよい。これらの場合、制御装置22は、電流計により計測された電流値、または電圧計により計測された電圧値を、リアルタイムで取得できる。そして、制御装置22は、取得した電流値または電圧値を用いて、第一ポンプ16の消費電力をリアルタイムで推定する。
【0026】
次に、本実施形態に係る回収装置10aの動作について説明する。
【0027】
外部の対象ガスの発生源から対象ガス導入経路23を通じて吸収塔11の内部に流入した対象ガスは、吸収塔11の内部を底部から頂部に向かって移動する。また、第二経路14を通じて吸収塔11の内部に流入したアミン水溶液は、吸収塔11の内部を頂部から底部に向かって流下する。そして、吸収塔11の内部に配置される下部充填材112においてアミン水溶液と対象ガスとが気液接触(向流接触)し、これにより対象ガスに含まれる二酸化炭素がアミン水溶液に吸収される。すなわち、対象ガスから二酸化炭素が除去(分離)される。
【0028】
なお、アミン水溶液が二酸化炭素を吸収する反応(アミンが二酸化炭素と結合する反応)は、例えば40~50℃の温度範囲において発生するため、対象ガス導入経路23を通じて吸収塔11の内部に流入する対象ガスは、対象ガス導入経路23上に配置される調温装置(具体的には冷却器)などにより前記反応の発生に適した温度に調整される。また、第二経路14から流入するアミン水溶液も、熱交換器15を通過する際に前記反応の発生に適した温度に調整される。
【0029】
二酸化炭素が除去された対象ガス(オフガスと称されることもある)は、上部充填材111を通過し、対象ガス排出経路24を通じて吸収塔11の外部に排出される。なお、二酸化炭素が除去された対象ガスは、上部充填材111を通過する間に冷却される。このため、対象ガスに含まれる水蒸気は凝集されて除去される。
【0030】
二酸化炭素を吸収したアミン水溶液は、吸収塔11の底部に溜まる。吸収塔11の底部に溜まったアミン水溶液は、第一ポンプ16の動作により、第一経路13を通じて熱交換器15を経由して放散塔12に送給される。前記のとおり、第一ポンプ16には電力計18が接続されており、この電力計18により第一ポンプ16の消費電力がリアルタイムで継続的に計測される。制御装置22は、電力計18による第一ポンプ16の消費電力の計測値をリアルタイムで継続的に取得する。なお、第一ポンプ16に電力計18に代えて電流計または電圧計が接続される場合には、制御装置22は、電流計により計測される電流(第一ポンプ16を流れる電流)、または電圧計により計測される電圧(第一ポンプ16に印加される電圧)をリアルタイムで継続的に取得し、取得した電流または電圧の計測値を用いて一ポンプ16の消費電力をリアルタイムで推定する。
【0031】
第一経路13を通じて吸収塔11から放散塔12に送給されるアミン水溶液は、熱交換器15において第二経路14を流通するアミン水溶液と熱交換することにより加熱され(予熱され、ということもできる)、その後、放散塔12の上部からその内部に流入する。なお、第一経路13の他端(またはその近傍)には第一温度計19が配置される。この第一温度計19により、第一経路13から放散塔12の内部に流入するアミン水溶液の温度が計測される。なお、この第一温度計19により計測されるアミン水溶液の温度は、熱交換器15により加熱された後であって放散塔12の内部で加熱されるよりも前の温度である。制御装置22は、第一温度計19によるアミン水溶液の温度の計測値を、リアルタイムで継続的に取得する。
【0032】
放散塔12に流入したアミン水溶液は、下部充填材122を通過して放散塔12の底部に溜まる。放散塔12の底部に溜まったアミン水溶液の一部は、第三経路25を通じてリボイラーに流入し、リボイラー20により加熱される。リボイラー20において発生した水蒸気は、第四経路26を通じて放散塔12の内部に流入し、その後、放散塔12の底部から下部充填材122を通過して上昇する。そして、水蒸気は、下部充填材122において頂部から流下するアミン水溶液と向流接触(気液接触)する。これにより、頂部から流下するアミン水溶液が加熱され、アミン水溶液から二酸化炭素が放散される。なお、制御装置22は、放散塔12の内部温度が一定になるように(内部温度が経時的に変動しないように)リボイラー20を制御する。
【0033】
アミン水溶液の加熱により発生した水蒸気およびアミン水溶液から放散された二酸化炭素の混合気は、放散塔12の上部充填材121を通過し、放散塔12の頂部に接続されている二酸化炭素排出経路27を通じて放散塔12の外部に流出する。そして、二酸化炭素排出経路27上に配置される凝集器21において、この混合気から水蒸気が除去される。凝集器21において発生した凝集水は、還流経路28を通じて放散塔12の上部充填材121に送給される。これにより、凝縮水は上部充填材121を通過する混合気の冷却に用いられる。
【0034】
放散塔12の底部に溜まったアミン水溶液は、第二ポンプ17の動作により、第二経路14を通じて吸収塔11に向けて送給される。第二経路14を流通するアミン水溶液は、熱交換器15において第一経路13を流通するアミン水溶液と熱交換する。これにより、第二経路14を放散塔12から吸収塔11に向けて送給されるアミン水溶液は冷却される。そして、熱交換器15を通過したアミン水溶液は、吸収塔11の上部からその内部に送給される。吸収塔11の内部に送給されたアミン水溶液は、吸収塔11の内部を流下し、その間に対象ガスに含まれる二酸化炭素を吸収する。
【0035】
このように、アミン水溶液は、吸収塔11、第一経路13、放散塔12、第二経路14、の順に循環する。そして、アミン水溶液は、循環している間に、吸収塔11において対象ガスに含まれる二酸化炭素を吸収し、放散塔12において吸収した二酸化炭素を放散する、という反応を繰り返す。
【0036】
次に、制御装置22によるアミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量を推定する方法、および回収装置10aの各部の制御について説明する。なお、本実施形態では、制御装置22は、「アミン水溶液に吸収された二酸化炭素の量」として「アミン水溶液の二酸化炭素含有率」を推定する。「アミン水溶液の二酸化炭素含有率」は、「アミン水溶液が吸収できる二酸化炭素の最大量」に対する「アミン水溶液が含有している(アミン水溶液に吸収された)二酸化炭素の量」を示す値(比率)である。
【0037】
前記のとおり、制御装置22は、放散塔12の内部温度が一定に保持されるようにリボイラー20を制御する。この理由は、放散塔12においてアミン水溶液から効率よく二酸化炭素を放散させるためには、吸収塔11の内部温度が一定に保持されることが好ましいためである。「効率よく二酸化炭素を分離する」は、「リボイラー20によりアミン水溶液に与える熱量(換言すると、リボイラー20による消費エネルギー)」に対する「アミン水溶液から分離される二酸化炭素の量(換言すると、回収装置10aにより回収される二酸化炭素の量)」の値(比率)を大きくすることを意味する。なお、放散塔12の内部温度が一定に保持されるため、放散塔12から第二経路14を通じて流出するアミン水溶液の温度も一定に(経時的に変動しないように)保持される。
【0038】
また、本実施形態において、制御装置22は、第一ポンプ16の動作により吸収塔11から放散塔12へ送給されるアミン水溶液の流量、および第二ポンプ17の動作により放散塔12から吸収塔11へ送給されるアミン水溶液の流量が、「あらかじめ規定された一定の流量」に保持されるように(換言すると、単位時間当たりの流量が変動しないように)、第一ポンプ16および第二ポンプ17を制御する。なお、この「あらかじめ規定された一定の流量」は、第一ポンプ16および第二ポンプ17によるアミン水溶液の送給量の目標値である、ということもできる。
【0039】
放散塔12におけるアミン水溶液中から二酸化炭素が放散される反応(アミンから二酸化炭素が分離する反応)は吸熱反応である。このため、放散塔12に流入するアミン水溶液の二酸化炭素含有率が経時的に変動すると、放散塔12の内部温度を一定に保持するために放散塔12においてアミン水溶液に与えなければならない熱量も経時的に変動する。本実施形態では、制御装置22は、放散塔12の内部温度を一定に保持するために、アミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定し、推定結果に基づいてリボイラー20の出力(リボイラー20がアミン水溶液に与える熱量)を制御する。
【0040】
次に、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定方法について説明する。
図2Aは、アミン水溶液の二酸化炭素含有率と第一ポンプ16の消費電力との関係を模式的に示すグラフである。アミン水溶液の粘度は、アミン水溶液の二酸化炭素含有率が高くなるにしたがって高くなる。そして、アミン水溶液の粘度が高くなると、第一ポンプ16に掛かる負荷が高くなる。このため、前記のとおり吸収塔11から放散塔12に送給されるアミン水溶液の流量が「あらかじめ規定された一定の流量」に保持されるように第一ポンプ16を動作させると、
図2Aに示すように、第一ポンプ16の消費電力はアミン水溶液の二酸化炭素含有率に応じて変動する。具体的には、アミン水溶液の二酸化炭素含有率が高くなるにしたがって、第一ポンプ16の消費電力が大きくなる。
【0041】
図2Bは、アミン水溶液の二酸化炭素含有率と放散塔12に流入するアミン水溶液の温度(放散塔12において加熱される直前の温度)との関係を模式的に示すグラフである。アミン水溶液中のアミンが二酸化炭素と結合すると、アミンの分子量が大きくなるため、アミン水溶液の比熱が大きくなる。前記のとおり、放散塔12から第二経路14を通じて流出するアミン水溶液の温度は一定に保持される。また、放散塔12から第二経路14を通じて吸収塔11に送給されるアミン水溶液の量、および吸収塔11から第一経路13を通じて放散塔12に送給されるアミン水溶液の量は「あらかじめ規定された一定の流量」である。このため、熱交換器15において、第一経路13を流れるアミン水溶液が第二経路14を流れるアミン水溶液から受ける熱量は略一定である。したがって、
図2Bに示すように、吸収塔11においてアミン水溶液が吸収した二酸化炭素の吸収量が多くなるにしたがって(すなわち、吸収塔11から流出するアミン水溶液の二酸化炭素含有率が高くなるにしたがって)、放散塔12に流入するアミン水溶液の温度は低くなる。
【0042】
図3Aは、第一ポンプ16の消費電力と、放散塔12に流入するアミン水溶液の温度と、アミン水溶液の二酸化炭素含有率との関係を模式的に示すグラフである。このグラフに含まれる各曲線は、「アミン水溶液の二酸化炭素含有率」が同じである点どうしを結んだ曲線である。このようなグラフを用いることにより、第一ポンプ16の消費電力と放散塔12に流入するアミン水溶液の温度とから、放散塔12に流入するアミン水溶液の二酸化炭素含有率を推測できる。なお、
図3Aに示すグラフにおける第一ポンプ16の消費電力は、前記の「あらかじめ規定された一定の流量」のアミン水溶液を送給する場合の消費電力である。
【0043】
図3Bは、
図3Aに示すグラフに対応する二次元マップを示す図である。この二次元マップの各マス目には、「あらかじめ規定された一定の流量のアミン水溶液を送給する場合の第一ポンプ16の消費電力」および「放散塔12に流入するアミン水溶液の温度」ごとの「アミン水溶液の二酸化炭素含有率」を示す数値が格納されている。制御装置22のコンピュータのROMには、この二次元マップが、コンピュータ読み取り可能な形式であらかじめ格納されている。制御装置22は、電力計18から取得した「第一ポンプ16の消費電力」の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値を用いて推定した推定値)と第一温度計19から取得した「放散塔12に流入するアミン水溶液の温度」の計測値とをこの二次元マップに適用することにより、アミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定する。
【0044】
そして、制御装置22は、推定したアミン水溶液の二酸化炭素含有率に基づいてリボイラー20を制御する。例えば、制御装置22は、推定したアミン水溶液の二酸化炭素含有率からアミン水溶液の比熱を演算し、演算した比熱と放散塔12に流入するアミン水溶液の単位時間当たりの流量から、リボイラー20によってアミン水溶液に与える単位時間当たりの熱量を演算する。そして、制御装置22は、演算された熱量を発するようにリボイラー20を制御する。なお、制御装置22は、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定、および推定したアミン水溶液の二酸化炭素含有率に基づくリボイラー20の制御を、継続的に実行する。
【0045】
本実施形態によれば、第一温度計19と計測器である電力計18(または電流計もしくは電圧計)のみによってアミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定できる。このため、回収装置10aに要するコストの削減を図ることができる。例えば、特開2017-20120号公報に記載の構成では、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定のために、粘度計、超音波伝搬速度計測器、および導電率計などの計測装置が必要になるとともに、アミン水溶液をこれらの計測装置に導くための設備も必要になる。このため、回収装置のコストが増加する。また、アミンは炭素鋼やステンレス鋼を腐食させるため、これらの計測装置や設備が装置に付加されると、これらの計測装置や設備のメンテナンスの手間も増加する。
【0046】
これに対して、本実施形態によれば、回収装置10aが第一温度計19と計測器(電力計18、電流計、または電圧計)を備えればアミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定できるから、回収装置10aの部品点数の増加を抑制できる。また、計測器としての電力計18、電流計、または電圧計は、故障等が少ない計測機器であり、粘度計、超音波伝搬速度計測器、および導電率計に比較して低価格である。また、計測器はアミン水溶液の循環系の外部に設置され、アミンによる腐食が生じないため、メンテナンスに要する手間が少ない。
【0047】
また、本実施形態のように、アミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定し、推定結果に基づいてリボイラー20を制御する構成であると、吸収塔12の内部温度の計測結果を用いるフィードバック制御に比較して、吸収塔12の内部温度を安定させる(経時的な変動を小さくできる)ことができる。したがって、放散塔12においてアミン水溶液から効率よく二酸化炭素を放散させることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、第一ポンプ16および第二ポンプ17によるアミン水溶液の流量は、あらかじめ規定された一定の流量に保持される。このような構成によれば、第一ポンプ16の消費電力の変動から「アミン水溶液の二酸化炭素含有率の変動によるアミン水溶液の粘度の変動」以外の要因を排除できる。例えば、アミン水溶液の流量が変動しないため、「流量の変動に起因する消費電力の変動」が生じない。
【0049】
また、放散塔12から流出するアミン水溶液の流量およびアミン水溶液の温度は経時的に変化しないように保持される。このため、吸収塔11および第一経路13を通過して放散塔12に戻ってくるアミン水溶液の温度が、アミン水溶液の比熱(すなわちアミン水溶液の二酸化炭素含有率)以外の要因から受ける影響は小さい。したがって、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の精度を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態のように、第一ポンプ16の消費電力とアミン水溶液の温度の2つのパラメータからアミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定する構成であると、いずれか1つのパラメータを用いてアミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定する構成に比較して、推定の精度の向上を図ることができる。
【0051】
(第一の変形例)
第一の変形例に係る回収装置10bは、吸収塔11から流出するアミン水溶液の温度が経時的に変動する場合であっても、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の精度を高める(または精度の低下を防止もしくは抑制する)ことができる例である。なお、第一の変形例では、アミン水溶液の流量は一定である。具体的には、第一ポンプ16および第二ポンプ17によるアミン水溶液の送給量は、「あらかじめ規定された一定の流量」である。
図4は、第一の変形例に係る回収装置10bの構成を示す図である。なお、前記実施形態と共通の構成には、前記実施形態と同じ符号を付して示し、説明を省略することがある。
図4に示すように、第一の変形例に係る回収装置10bは、第二温度計29を備える。それ以外は前記実施形態に係る回収装置10aと共通の構成が適用される。
【0052】
アミン水溶液の温度が変動すると、温度の変動に応じて粘度も変動する。このため、アミン水溶液の温度が変動すると、アミン水溶液の二酸化炭素含有率が変動していなくても、第一ポンプ16の消費電力が変動する。そこで、アミン水溶液の温度が変動する場合、制御装置22は、電力計から取得した第一ポンプ16の消費電力の計測値(または推定値)を、アミン水溶液の温度に応じて補正する。すなわち、制御装置22は、電力計から取得した第一ポンプ16の消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値により推定した推定値)からアミン水溶液の温度の影響が除去される(吸収される)ように、消費電力の計測値(または推定値)を補正する。これにより、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の際に、アミン水溶液の温度の変動の影響を除去する。
【0053】
第二温度計29は、第一経路13の吸収塔11に近い側の端部またはその近傍に配置され、吸収塔11から排出されるアミン水溶液の温度(熱交換器15において加熱される前の温度)を計測できるように構成される。制御装置22は、この第二温度計29によるアミン水溶液の温度の計測値をリアルタイムで継続的に取得できる。
【0054】
電力計18から取得した第一ポンプ16の消費電力は、「アミン水溶液の温度が『第二温度計29により計測された温度』であるときの消費電力」である。制御装置22は、電力計18から取得した消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値により推定した推定値)を、「アミン水溶液の温度が『あらかじめ規定されて温度』であるときの消費電力」に補正する(変換する、ということもできる)。なお、アミン水溶液の二酸化炭素含有率が一定である場合の第一ポンプ16の消費電力とアミン水溶液の温度との関係は、あらかじめ制御装置22のROMに格納されている。また、二次元マップには、「アミン水溶液の温度があらかじめ規定された温度であるときの第一ポンプ16の消費電力」と「アミン水溶液の温度」とに対応したアミン水溶液の二酸化炭素含有率の値が規定されている。そして、制御装置22は、この関係を用いて第一ポンプ16の消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値により推定した推定値)を補正し、補正した計測値と第一温度計19から取得した温度の計測値とを二次元マップに当てはめることにより、アミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定する。
【0055】
このような構成によれば、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の際に、アミン水溶液の温度の変動による粘度の変動の影響を除去または低減できる。したがって、吸収塔11から流出するアミン水溶液の温度が変動する場合であっても、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推測の精度を高めることができる(または、推定の精度の低下を防止もしくは抑制できる)。
【0056】
(第二の変形例)
第二の変形例に係る回収装置10cは、第一経路13を流通するアミン水溶液の流量(換言すると、第一ポンプ16によるアミン水溶液の送給量)が経時的に変動する場合であっても、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の精度を高めることができる(または、推定の精度の低下を防止もしくは抑制できる)例である。
図5は、第二の変形例に係る回収装置10cの構成を示す図である。なお、前記実施形態と共通の構成には、前記実施形態と同じ符号を付して示し、説明を省略することがある。
図5に示すように、第二の変形例に係る回収装置10cは、流量計30を備える。それ以外は前記実施形態に係る回収装置10aと共通の構成が適用される。
【0057】
アミン水溶液の流量(送給量)が変動すると、第一ポンプ16の消費電力も変動する。そこで、アミン水溶液の流量が変動する場合、制御装置22は、電力計18から取得した第一ポンプ16の消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値を用いて推定した推定値)をアミン水溶液の流量に応じて補正する。すなわち、制御装置22は、第一ポンプ16の消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値を用いて推定した推定値)からアミン水溶液の流量の変動による変動が除去されるように(アミン水溶液の流量の変動による第一ポンプ16の消費電力の変動が吸収されるように)、消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値を用いて推定した推定値)を補正する。これにより、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の際に、アミン水溶液の流量の変動の影響を除去または低減する。
【0058】
流量計30は、第一経路13上に配置され、吸収塔11から放散塔12に流入するアミン水溶液の単位時間当たりの流量をリアルタイムで継続的に計測できる。制御装置22は、流量の計測値を流量計30からリアルタイムで継続的に取得できる。そして、制御装置22は、流量計30によるアミン水溶液の単位時間当たりの流量の計測値を用いて、第一ポンプ16の消費電力の計測値を補正する。
【0059】
電力計18から取得した第一ポンプ16の消費電力は、「アミン水溶液の流量が『流量計30により取得された流量』であるときの消費電力」である。制御装置22は、電力計18から取得した第一ポンプ16の消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値を用いて推定した推定値)を、「あらかじめ規定された流量である場合の第一ポンプ16の消費電力」に補正する。(変換する、ということもできる。なお、アミン水溶液の二酸化炭素含有率が一定である場合の第一ポンプ16の消費電力とアミン水溶液の流量との関係は、あらかじめ制御装置22のROMに格納されている。また、二次元マップには、「あらかじめ規定された流量である場合の第一ポンプ16の消費電力」と「放散塔12に流入するアミン水溶液の温度」に対応した二酸化炭素含有率の値が規定されている。制御装置22は、この関係を用いて第一ポンプ16の消費電力の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値を用いて推定した推定値)を補正する。そして、制御装置22は、補正した第一ポンプ16の消費電力の計測値と、第一温度計19から取得したアミン水溶液の温度の計測値(または、電流計から取得した電流の計測値もしくは電圧計から取得した電圧の計測値により推定した推定値)とを前記二次元マップに適用することにより、アミン水溶液の二酸化炭素含有率を推定する。
【0060】
このように、第二の変形例によれば、第一経路13を流通するアミン水溶液の流量が経時的に変動する場合であっても、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の際にこの変動による影響を除去または低減できる。したがって、第一経路13を流通するアミン水溶液の流量が経時的に変動する場合であっても、アミン水溶液の二酸化炭素含有率の推定の精度を高めることができる(または、推定の精度の低下を防止もしくは抑制できる)。
【0061】
(第三の変形例)
第三の変形例は、アミン水溶液の二酸化炭素含有率を安定させることができる例である。
図6は、第三の変形例に係る回収装置10dの構成を示す模式図である。なお、前記実施形態と共通の構成には、前記実施形態と同じ符号を付して示し、説明を省略することがある。第三の変形例に係る回収装置10dは、第二の変形例に係る回収装置10cの流量計30と、二酸化炭素流量計31とを備える。それ以外は前記実施形態に係る回収装置10aと共通の構成が適用される。
【0062】
回収装置10dにおいて二酸化炭素の回収の効率を高めるためには、放散塔12においてアミン水溶液が吸収している二酸化炭素の全量を放散させるのではなく、アミン水溶液にある程度の二酸化炭素を残留させることが好ましい。制御装置22は、リボイラー20を制御することにより(具体的には、例えばリボイラー20によりアミン水溶液に与える熱量を制御することにより)、放散塔12においてアミン水溶液に残留する二酸化炭素の量(すなわちアミン水溶液の二酸化炭素含有率)を調整できる。
【0063】
二酸化炭素流量計31は、二酸化炭素排出経路27上であって凝集器21よりも二酸化炭素の流れの方向の下流側に配置される。そして、二酸化炭素流量計31は、放散塔12から排出される二酸化炭素の単位時間当たりの流量を計測できる。制御装置22は、二酸化炭素流量計31による二酸化炭素の流量の計測値を取得できる。
【0064】
制御装置22は、二次元マップを用いて推定したアミン水溶液の二酸化炭素含有率と流量計30から取得したアミン水溶液の流量の計測値とから、アミン水溶液に吸収されている二酸化炭素の量を推定する。そして、制御装置22は、推定した「アミン水溶液に吸収されている二酸化炭素の量」から「二酸化炭素流量計31から取得した二酸化炭素の流量」を減算することにより、放散塔12から流出するアミン水溶液に残留している二酸化炭素の量(アミン水溶液の二酸化炭素含有率)を推定できる。そして、制御装置22は、推定した「放散塔12から流出するアミン水溶液の二酸化炭素含有率」が所定の値になるように、リボイラー20を制御する。
【0065】
このような構成によれば、前記の二次元マップを用いて推定したアミン水溶液の二酸化炭素含有率を用いて「放散塔12から流出するアミン水溶液の二酸化炭素含有率」を推定するため、推定の精度の向上を図ることができる。このため、放散塔12から流出するアミン水溶液の二酸化炭素含有率を安定させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10a,10b,10c,10d…二酸化炭素回収装置、11…二酸化炭素吸収塔、12…二酸化炭素放散塔、13…第一経路、15…熱交換器、16…第一ポンプ、18…電力計、19…第一温度計、22…制御装置、29…第二温度計、30…流量計