(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001644
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】断熱材支持具および断熱構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
E04B1/80 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100429
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】394014641
【氏名又は名称】カネカケンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596006536
【氏名又は名称】カネカフォームプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野口 白行
(72)【発明者】
【氏名】角 亘
(72)【発明者】
【氏名】中道 幹芳
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001EA09
2E001FA11
2E001GA12
2E001HA33
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD08
2E001HD09
2E001KA03
2E001LA09
2E001LA11
(57)【要約】
【課題】板状の断熱材に荷重が掛かっても板状の断熱材が目的とする位置より下方に変形することを防止する。
【解決手段】本発明の支持具(10)において、係止機構(50)は、脚板部(2)から折れ曲がって、支持板部(3)を一側面とする柱状の壁体を構成する折り曲げ片(40)を有し、折り曲げ片(40)の先端部(43)が上下方向において前記柱状の壁体の一部と当接することにより、支持板部(3)の下方への移動を係止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横架材の上面にて係止される上板部と、
前記上板部の側端部から下方へ折り曲げられた脚板部と、
断熱材の下面を支持する支持板部と、
前記脚板部から折れ曲がって、前記支持板部を一側面とする柱状の壁体を構成する折り曲げ片を有し、当該折り曲げ片の先端部が、上下方向において前記柱状の壁体の一部と当接するか、あるいは前記脚板部の一部と当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する係止機構と、を備えた、断熱材支持具。
【請求項2】
前記折り曲げ片は、
前記脚板部から折れ曲がって前記断熱材の下面に沿って延びた前記支持板部と、
前記支持板部の先端部から下方へ傾斜して折れ曲がって延びた第1の傾斜板部と、
前記第1の傾斜板部から上方へ折れ曲がって延びた第1の当接板部と、を有し、前記支持板部と前記第1の傾斜板部と前記第1の当接板部とにより、三角柱形状の壁体を構成し、
前記係止機構は、前記折り曲げ片における前記第1の当接板部の先端部が前記支持板部と下方から当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する、請求項1に記載の断熱材支持具。
【請求項3】
前記折り曲げ片は、
前記脚板部の下端部から上方へ傾斜して折れ曲がって延びた第2の傾斜板部と、
前記第2の傾斜板部の先端部から前記断熱材の下面に沿って折れ曲がって延びた前記支持板部と、
前記支持板部の先端部から下方へ折れ曲がって延びた第2の当接板部と、を有し、前記第2の傾斜板部と前記支持板部と前記第2の当接板部とにより、三角柱形状の壁体を構成し、
前記係止機構は、前記折り曲げ片における前記第2の当接板部の先端部が前記第2の傾斜板部と上方から当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する、請求項1に記載の断熱材支持具。
【請求項4】
前記折り曲げ片は、
前記脚板部の下端部から上方へ傾斜して折れ曲がって延びた第2の傾斜板部と、
前記第2の傾斜板部の先端部から前記断熱材の下面に沿って折れ曲がって延びた前記支持板部と、
前記支持板部の先端部から下方へ折れ曲がって延びた第2の当接板部と、を有し、前記第2の傾斜板部と前記支持板部と前記第2の当接板部とにより、三角柱形状の壁体を構成し、
前記係止機構は、前記折り曲げ片における前記第2の当接板部の先端部が前記脚板部と側方から当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する、請求項1に記載の断熱材支持具。
【請求項5】
前記折り曲げ片において前記柱状の壁体の一部と当接する先端部は、前記横架材に接触しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の断熱材支持具。
【請求項6】
前記脚板部の長さは、前記横架材の厚みとほぼ同じ、またはより大きい、請求項1~4の何れか1項に記載の断熱材支持具。
【請求項7】
前記支持板部は、前記断熱材を水平方向に支持するように、前記横架材と同一、または横架材の下面よりも下側に位置する、請求項1~4の何れか1項に記載の断熱材支持具。
【請求項8】
前記脚板部には、第1の切込みが具備され、この第1の切込みを立て起こして形成される第1の突き刺し片が、前記横架材の側面に食い込まれて装着される、請求項1~4の何れか1項に記載の断熱材支持具。
【請求項9】
前記上板部には、第2の切込みが具備され、この第2の切込みを立て起こして形成される第2の突き刺し片が、前記横架材の上面に食い込まれて装着される、請求項1~4の何れか1項に記載の断熱材支持具。
【請求項10】
前記脚板部を2つ備え、
当該2つの脚板部は、それぞれ、前記上板部の互いに対向する2つの側端部から折り曲がって形成されており、
前記上板部は、第3の切込みを有し、第3の切込みを介して分割可能になっている、請求項1~4の何れか1項に記載の断熱材支持具。
【請求項11】
前記脚板部と前記第2の傾斜板部とのなす角度は、15°~75°である、請求項3または4に記載の断熱材支持具。
【請求項12】
請求項1~4の何れか1項に記載の断熱材支持具と、
前記断熱材支持具により支持された断熱材と、を備えた、断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材支持具および断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築において、構造部材である根太または大引などの横架材間に断熱板を配置することが広く行われている。この場合、通常では、大引などの横架材に断熱材支持具を係止し、該断熱材支持具に板状の断熱材を保持させることにより、板状の断熱材が横架材間に配置される。
【0003】
しかし、上述の従来の断熱材支持具では、断熱材施工の際、断熱材支持具に負荷がかかる。そして、断熱材支持具の受け面が下がり、横架材と断熱材との間に段差が生じる場合がある。
【0004】
このような横架材と断熱材との間の段差の問題を解決する技術が提案されている。例えば特許文献1には、建物の基礎部の構造部材に引っ掛けられる係止片と、当該係止片の端部から下方へ折り曲げられた垂下片と、当該垂下片の下端部から折り曲げられ、板状の断熱材を支持する台座と、を備えた断熱材取り付け具が開示されている。当該断熱材取り付け具では、上記台座の端部から支持片が上記構造部材と接するように折り曲げられている。これにより、板状の断熱材が目的の位置よりも下方に配置されるのを防止している。
【0005】
また、特許文献2には、横架材の側端面に密着するように配置される垂直板部と、垂直板部の下面から水平方向に延出した、板状の断熱材を支持する下方水平板部と、を有する断熱材支持具が開示されている。当該断熱材支持具では、垂直板部の下側に、下方水平板部を含む断面略三角形状の壁体からなる補強部が設けられている。そして、上記補強部の上記壁体の一部が横架材の側端面に当接して板状の断熱材からの荷重を受けることによって、下方水平板部の垂れ下がりを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-261114号公報
【特許文献2】特開2009- 30406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、断熱材取り付け具の一部が構造部材と当接することにより、板状の断熱材が目的の位置よりも下方に配置されるのを防止している。それゆえ、構造部材と断熱材との段差を解消するために、構造部材の側面に断熱材取り付け具との当接箇所を設ける必要がある。このため、板状の断熱材および構造部材の設計自由度が低くなる。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術においても、断熱材支持具の補強部を構成する壁体の一部が横架材の側端面に当接して板状の断熱材からの荷重を受けることにより、下方水平板部の垂れ下がりを防止している。それゆえ、特許文献1に記載の技術と同様に、特許文献2に記載の技術においても、構造部材と断熱材との段差を解消するために、横架材の側面に断熱材支持具との当接箇所を設ける必要がある。このため、板状の断熱材および横架材の設計自由度が低くなる。
【0009】
よって、特許文献1および2に記載の技術と異なる機構を有する断熱材支持具の開発が求められる。
【0010】
本発明の一態様は、板状の断熱材に荷重が掛かっても板状の断熱材が目的とする位置より下方に変形することを防止し得る断熱材支持具を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、以下の構成を含むものである。
【0012】
<1>横架材の上面にて係止される上板部と、前記上板部の側端部から下方へ折り曲げられた脚板部と、断熱材の下面を支持する支持板部と、前記脚板部から折れ曲がって、前記支持板部を一側面とする柱状の壁体を構成する折り曲げ片を有し、当該折り曲げ片の先端部が上下方向において前記柱状の壁体の一部と当接するか、あるいは前記脚板部の一部と当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する係止機構と、を備えた、断熱材支持具。
【0013】
<2>前記折り曲げ片は、前記脚板部から折れ曲がって前記断熱材の下面に沿って延びた前記支持板部と、前記支持板部の先端部から下方へ傾斜して折れ曲がって延びた第1の傾斜板部と、前記第1の傾斜板部から上方へ折れ曲がって延びた第1の当接板部と、を有し、前記支持板部と前記第1の傾斜板部と前記第1の当接板部とにより、三角柱形状の壁体を構成し、前記係止機構は、前記折り曲げ片における前記第1の当接板部の先端部が前記支持板部と下方から当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する、<1>に記載の断熱材支持具。
【0014】
<3>前記折り曲げ片は、前記脚板部の下端部から上方へ傾斜して折れ曲がって延びた第2の傾斜板部と、前記第2の傾斜板部の先端部から前記断熱材の下面に沿って折れ曲がって延びた前記支持板部と、前記支持板部の先端部から下方へ折れ曲がって延びた第2の当接板部と、を有し、前記第2の傾斜板部と前記支持板部と前記第2の当接板部とにより、三角柱形状の壁体を構成し、前記係止機構は、前記折り曲げ片における前記第2の当接板部の先端部が前記第2の傾斜板部と上方から当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する、<1>に記載の断熱材支持具。
【0015】
<4>前記折り曲げ片は、前記脚板部の下端部から上方へ傾斜して折れ曲がって延びた第2の傾斜板部と、前記第2の傾斜板部の先端部から前記断熱材の下面に沿って折れ曲がって延びた前記支持板部と、前記支持板部の先端部から下方へ折れ曲がって延びた第2の当接板部と、を有し、前記第2の傾斜板部と前記支持板部と前記第2の当接板部とにより、三角柱形状の壁体を構成し、前記係止機構は、前記折り曲げ片における前記第2の当接板部の先端部が前記脚板部と側方から当接することにより、前記支持板部の下方への移動を係止する、<1>に記載の断熱材支持具。
【0016】
<5>前記折り曲げ片において前記柱状の壁体の一部と当接する先端部は、前記横架材に接触しない、<1>~<4>のいずれかに記載の断熱材支持具。
【0017】
<6>前記脚板部の長さは、前記横架材の厚みとほぼ同じ、またはより大きい、<1>~<4>の何れかに記載の断熱材支持具。
【0018】
<7>前記支持板部は、前記断熱材を水平方向に支持するように、前記横架材と同一、または横架材の下面よりも下側に位置する、<1>~<4>の何れかに記載の断熱材支持具。
【0019】
<8>前記脚板部には、第1の切込みが具備され、この第1の切込みを立て起こして形成される第1の突き刺し片が、前記横架材の側面に食い込まれて装着される、<1>~<4>の何れかに記載の断熱材支持具。
【0020】
<9>前記上板部には、第2の切込みが具備され、この第2の切込みを立て起こして形成される第2の突き刺し片が、前記横架材の上面に食い込まれて装着される、<1>~<4>の何れかに記載の断熱材支持具。
【0021】
<10>前記脚板部を2つ備え、当該2つの脚板部は、それぞれ、前記上板部の互いに対向する2つの側端部から折り曲がって形成されており、前記上板部は、第3の切込みを有し、第3の切込みを介して分割可能になっている、<1>~<4>の何れかに記載の断熱材支持具。
【0022】
<11>前記脚板部と前記第2の傾斜板部とのなす角度は、15°~75°である、<3>または<4>に記載の断熱材支持具。
【0023】
<12><1>~<4>の何れかに記載の断熱材支持具と、前記断熱材支持具により支持された断熱材と、を備えた、断熱構造。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、板状の断熱材に荷重が掛かっても板状の断熱材が目的とする位置より下方に変形することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1に係る断熱材支持具の概略構成を示し、101は斜視図であり、102は断面図であり、103は101および102に示す構成の変形例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る断熱構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る断熱材支持具の概略構成を示し、301は斜視図であり、302は断面図である。
【
図4】401は本発明の実施形態2に係る断熱構造を示す断面図であり、402は、401に示す断熱構造の他の変形例を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態3に係る断熱材支持具の概略構成を示し、501は斜視図であり、502は断面図であり、503は501および502に示す構成の変形例を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態4に係る断熱材支持具の概略構成を示し、601は斜視図であり、602は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表わす「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0027】
本発明の実施形態に係る断熱材支持具(以下、単に支持具ともいう。)は、木造建築の断熱構造を形成する方法において、大引等の横架材間に板状の断熱材が挿入配置される際に、板状の断熱材を受け止め、係止するために使用される。
【0028】
ここでいう横架材とは、木造建築に用いられる横架材であって、その間に断熱材が配置される横架材であれば全てのものが対象となる。具体的には、横架材は、大引、根太、垂
木、野縁、野縁受け等の角材が挙げられる。従って、本実施形態に係る支持具は床下のみに限らず、屋根、天井などの断熱構造にも使用される。
【0029】
また、本実施形態に係る支持具または断熱構造の各種部材において、「上面」は、横架材における断熱材が挿入される入り口側の面を意味する。また、「下面」は、上記上面と反対側の面を意味する。さらに、「横架材の側面(側端面)」は、横架材において、断熱材を配置する空間に面した面を意味する。
【0030】
また、本実施形態に係る支持具または断熱構造において、「下方」は、横架材に対する断熱材の挿入方向を意味する。また、「上方」は、横架材に対する断熱材の挿入方向と反対方向を意味する。
【0031】
例えば、「横架材の上面」とは支持具が横架材に取り付けられる際に上板部が配置される側の面であり、同様に、「横架材の側面」とは支持具が横架材に取り付けられる際に脚板部が配置される側の面である。また、「支持板部の下方」とは支持板部の鉛直方向下側のことである。
【0032】
以下、横架材として代表的な大引を例として、本実施形態に係る断熱材支持具について説明する。本実施形態に係る断熱材支持具は、大引に限定されるものではなく、大引以外の前述の横架材にも適用することができ、例えば、大引を、垂木、野縁等にも適用できることはいうまでもない。
【0033】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る支持具10の概略構成を示し、
図1の101は斜視図であり、
図1の102は断面図である。
図2は、本実施形態に係る断熱構造100を示す断面図である。
【0034】
図1の101および102、並びに
図2に示すように、支持具10は、帯状の部材が折れ曲がって構成されている。支持具10は、上板部1と、脚板部2と、支持板部3と、折り曲げ片40を有する係止機構50と、を備えている。上板部1は、大引21の上面にて係止される。また、脚板部2は、上板部1の側端部から下方へ折り曲げられている。また、支持板部3は、断熱材22の下面を支持する。折り曲げ片40は、脚板部2の下端部から折れ曲がっており、支持板部3を一側面とする角柱状の壁体を構成する。なお、
図2に示された例では、断熱材22は、板状である。しかし、断熱材22の形状は、板状に限定されない。
【0035】
また、
図2に示すように、本実施形態に係る断熱構造100は、支持具10と、支持具10により支持された断熱材22と、を備えている。
【0036】
(上板部1、脚板部2、および支持板部3)
支持具10において、上板部1と脚板部2とは、L字を形成する。そして、脚板部2の下端部にて支持板部3が折れ曲がって延びている。上板部1、脚板部2、および支持板部3は互いに連結している。脚板部2は、大引21と断熱材22との間に挿入されている。支持具10は、脚板部2の上端および下端それぞれにおいて上板部1および支持板部3が互いに異なる方向に折れ曲がって延びたZ字状の構成であるともいえる。上板部1は、脚板部2の上端から大引21の上面に沿って延びており、支持板部3は、脚板部2の下端から断熱材22の下面に沿って延びている。以下、このような構成の支持具10をZ字状の支持具と称する場合がある。このようなZ字状の支持具10は、例えば、四隅に配された大引21の片側のみに板状の断熱材22が配置される場合に好適に用いられる。
【0037】
支持具10において、脚板部2は、上板部1に対して、内角θ1が90°の直角または90°を超える鈍角になるように帯状の部材を折り曲げることによって構成される。すなわち、上板部1と脚板部2とのなす角度である内角θ1は、90°の直角または90°を超える鈍角である。内角θ1が90°を超える鈍角の場合、当該折り曲げ部分から、脚板部2は、大引21の側面から離反するように傾斜して延びる。このような構成によれば、脚板部2は、当該脚板部2と上板部1との折り曲げ部分から弾性変形する。すなわち、脚板部2に大引21の側面へ向かう方向の力が掛かったとき、脚板部2には、その力に抗して、大引21の側面から遠ざかる方向の復元力が生じる。脚板部2は、板バネとしての機能を有する。
【0038】
上記板バネとしての機能により、次の効果を奏する。隣り合う大引21の両側面の所定位置に複数の支持具10を装着した状態で、大引21の間に断熱材22を装入すると、脚板部2が大引21の側面に向けて揺動し、後退する。そして、これにより、複数の支持具10は、断熱材22を受け入れると共に、支持板部3により断熱材22を支持する。この際、脚板部2は、弾性変形により、断熱材22の側面に向け弾発付勢されるため、両側の支持具10により断熱材22が挟持される。これにより、断熱材22の幅寸法が隣り合う大引21の間隔寸法よりやや小さい場合においても、断熱材22を前記大引21の間隔の中心部で位置決めすることができ、さらに、断熱材22が位置ずれしないように保持することができる。
【0039】
内角θ1は、脚板部2に生じる復元力等に応じて適宜設定される。内角θ1は、例えば80°~100°であり、好ましくは90°~95°である。内角θ1が上記数値範囲内であれば、大引21等の横架材へ敷設する際、支持具10の横架材に対する位置決め及び固定が安定するとともに、脚板部2に適切な復元力が生じ、支持具10によって断熱材22を安定的に保持できる。
【0040】
また、
図2に示す使用状態では、支持具10は、(1)上板部1が大引21の上面に係止されるか、若しくは、(2)脚板部2が大引21の側面に係止される、または、(3)上板部1が大引21の上面に係止され、かつ脚板部2が大引21の側面に係止される。ここでいう「係止」とは、支持具10を大引21に設置したときに上板部1が大引21の上面に留まり、かつ、さらに支持板部3上に断熱材22を設置したときに支持具10が大引21から脱落しない状態を意味する。なお、当該「係止」の状態は、支持具10を大引21に設置したときに、上板部1を介して支持具10が大引21上に載置されているだけの状態だけでなく、例えば、次の状態をも包含する。すなわち、当該「係止」の状態は、支持具10が大引21に嵌合して固定されている状態、または、支持具10が大引21に対して強固に固定された状態をも包含する。
【0041】
支持具10を大引21に対して強固に固定するためには、釘、爪、接着剤等を用いて、支持具10を大引21に取り付ければよい。また、支持具10は、上板部1と脚板部2との両方により、大引21に係止されていることが好ましい。
【0042】
また、支持具10は、上板部1のみにより、または脚板部2のみにより、大引21に係止されていてもよい。ここで「上板部1のみにより係止される」状態とは、上板部1のみが大引21に接触しており、脚板部2が大引21に接触していない状態をいう。また、「脚板部2のみにより係止される」状態とは、脚板部2のみが大引21に接触しており、上板部1が大引21に接触していない状態をいう。このような状態において、大引21に接触していない上板部1または脚板部2は、支持具10を大引21に設置する際の位置決め程度の役割しか果たさない。なお、上記「接触」には、「固定」および/または「接着」も含まれる。
【0043】
支持板部3は、脚板部2から折れ曲がって延びる片である。
図1および
図2に示された構成では、支持板部3は、脚板部2の下端部から折れ曲がっている。支持板部3は、脚板部2の途中から折れ曲がっていてもよいが、好ましくは、支持板部3は、脚板部2の下端部から折れ曲がっている。支持板部3は、脚板部2の下端部から、断熱材22の配置空間へ向かって延びる。支持板部3の上面に断熱材22が載置されることになる。なお、実使用では、大引21に対して少なくとも2つの支持具10を互いに対向するように係止し、互いに対向する2つの支持板部3の上に断熱材22を押し込んで載置する。そして、断熱材22の上に板材を載置することにより、家屋の断熱構造を容易に施工できる。
【0044】
ここで、支持板部3について、「断熱材22の配置空間へ向かって延びる」とは、脚板部2において、上板部1が延びる方向と反対方向に延びるともいえる。断熱材22を載置する前であり、かつ支持具10が大引21に係止された状態において、脚板部2と支持板部3とのなす角度θ2は、75°~90°であることが好ましい。
【0045】
大引21に係止される上板部1の長さは、大引21の幅寸法と略等しく、大引21の幅に対して+0mm~+2mmの範囲内であることが好ましく、+0mm~+1mmの範囲内であることがより好ましい。
【0046】
また、脚板部2の長さは、脚板部2の上端部から、支持板部3の断熱材支持面と脚板部2とが交わる位置までの長さとして規定される。
図1の101および102に示される構成では、当該長さは、脚板部2において、上端部から下端部までの長さとして規定される。脚板部2の長さは、断熱材22の厚みと略等しく、断熱材22の厚みに対して-2mm~0mmの範囲内であることが好ましく、-1mm~0mmの範囲内であることがより好ましい。
【0047】
また、支持板部3の長さは、断熱材22の重量等を考慮して、適宜設定可能である。
【0048】
支持具10の厚み、すなわち支持具10を構成する帯状部材の厚みは、0.1mm~2.0mmが好ましく、0.2mm~0.8mmがより好ましく、0.25mm~0.4mmがさらに好ましい。当該厚みが上記数値範囲内であることにより、断熱構造に占める支持具10の体積の割合が小さくなるため、断熱構造に対して断熱欠損を発生させる虞を低減でき、より優れた断熱構造を実現できる。
【0049】
(係止機構50)
支持具10においては、断熱材22に荷重が掛かったときに、断熱材22の受面である支持板部3が下方へ移動し支持具10が変形する虞がある。下方への主な移動として、支持板部3は、脚板部2と支持板部3との折れ曲がり部分から下方へ折れ曲がって変形する。そして、このような支持板部3の移動により、断熱材22が下方に沈み込み、大引21と断熱材22との間に段差が生じる。このような段差を解消するために、本実施形態に係る支持具10は、支持板部3の下方への移動を係止する係止機構50を備えている。係止機構50は、折り曲げ片40において、先端部43が上下方向において支持板部3を一側面とする角柱状の壁体の一部と当接することにより、支持板部3の下方への移動を係止している。
【0050】
支持具10によれば、折り曲げ片40の先端部43が上記角柱状の壁体に当接することにより、支持板部3の下方への移動が係止される。それゆえ、板状の断熱材22に荷重が掛かっても断熱材22が目的とする位置より下方に変形するのを防止できる。さらに、支持具10によれば、支持板部3の下方への移動を係止するために、係止機構50は、折り曲げ片40の先端部43が、大引21の側面ではなく、支持具10の構成部材の一部である折り曲げ片40に当接する。それゆえ、大引21と断熱材22との段差を解消するため
に、大引21の側面に支持具10との当接箇所を設ける必要がない。このため、支持具10によれば、大引21および板状の断熱材22の設計自由度が高くなる。
【0051】
図1の101および102、並びに
図2を参照して、係止機構50(折り曲げ片40)の具体的構成をさらに詳述する。これら図に示すように、折り曲げ片40は、支持板部3と、傾斜板部41(第1の傾斜板部)と、当接板部42(第1の当接板部)と、を有している。支持板部3は、上述のように、脚板部2から折れ曲がって断熱材22の下面に沿って延びている。また、傾斜板部41は、支持板部3の先端部から下方へ傾斜して折れ曲がって延びている。当接板部42は、傾斜板部41から上方へ折れ曲がって延びている。折り曲げ片40は、支持板部3と傾斜板部41と当接板部42とにより、三角柱形状の壁体を構成している。そして、当該三角柱形状の壁体は、大引21の側面に沿って延びている。なお、
図1の101および102に示すように、当接板部42は、傾斜板部41に対して鉛直上方(重力方向と反対方向)に延びている。それゆえ、上記壁体の形状は、直角三角形を底面とする三角柱である。ここで、支持板部3と傾斜板部41とは連結している。また、傾斜板部41と当接板部42とは連結している。その一方で、当接板部42と支持板部3とは連結していない。当接板部42の先端部43は、支持板部3に当接できる程度に、支持板部3と離間している。
【0052】
係止機構50は、折り曲げ片40における当接板部42の先端部43が支持板部3と下方から当接することにより、支持板部3の下方への移動を係止する。具体的には、
図2に示す断熱構造100において、断熱材22に対して下方の荷重が掛かると、支持板部3は、断熱材22からの荷重を受けて、脚板部2と支持板部3との折れ曲がり部分Aから下方へ折れ曲がる。この支持板部3の折れ曲がりに伴い、折り曲げ片40により構成される三角柱形状が変形する。そして、この変形により、当接板部42が鉛直上方へ移動し、折れ曲がり部分Aに対して下方から当接する。この当接により、支持板部3に対して上方への反力が発生し、当該反力により支持板部3の下方への移動が阻止される。その結果、断熱材22に荷重が掛かっても、支持具10により、大引21との段差なく断熱材22を支持することができる。
【0053】
なお、
図1の101および102に示す構成では、折り曲げ片40は、支持板部3を一側面とする三角柱形状の壁体を構成している。しかし、折り曲げ片40が構成する壁体の形状は、上述した効果を奏する限り、柱状であればよい。当該壁体の形状は、好ましくは、角柱である。
【0054】
図2に示す構成では、先端部43が当接する箇所は、脚板部2と支持板部3との折れ曲がり部分Aである。本実施形態においては、このような折れ曲がり部分Aも支持板部3の構成の一部である。また、本実施形態に係る支持具10は、先端部43が当接する箇所が支持板部3であればよく、
図1の101および102に示す構成に限定されない。
【0055】
支持具10の変形例として、例えば
図1の103に示す支持具10’が挙げられる。支持具10’において、折り曲げ片40’は、支持板部3と、傾斜板部41’(第1の傾斜板部)と、当接板部42’(第1の当接板部)と、を有している。そして、折り曲げ片40’は、支持板部3と傾斜板部41’と当接板部42’とにより、三角柱形状の壁体を構成している。そして、支持具10’では、折り曲げ片40’における当接板部42’の先端部43’が支持板部3と下方から当接することにより、支持板部3の下方への移動が係止されている。先端部43’は、支持板部3において、脚板部2と支持板部3との折れ曲がり部分と傾斜板部41’と支持板部3との折れ曲がり部分との間の部分に当接する。このような構成であっても、支持板部3と先端部43’との当接により支持板部3に対して上方への反力が発生し、当該反力により支持板部3の下方への移動が阻止される。
【0056】
また、
図2に示すように、支持具10によれば、折り曲げ片40において3角柱状の壁体の一部と当接する先端部43は、大引21に接触していない。このように、支持板部3を係止する折り曲げ片40が大引21と接触せずに、大引21よりも下側に設けられているので、大引21と略同一の厚み分、断熱材22を施工することができ、断熱構造100の断熱性能を向上させることができる。従来の施工方法では、大引等の横架材と断熱材との段差を解消するために、横架材の側面に断熱材支持具との当接箇所を設ける必要があったため、板状の断熱材の厚みに制約があった。例えば、横架材の厚み-15mmまでの厚みの断熱材しか施工できなかった。支持具10によれば、断熱材22の厚みに対してこのような制約がなく、大引21と略同一厚みの断熱材22を施工できる。
【0057】
また、断熱材22の厚みを大きくする観点では、脚板部2の長さは、大引21の厚みとほぼ同じ、またはより大きいことが好ましい。これにより、断熱構造100の断熱性能を向上させることができる。
【0058】
また、支持具10によれば、支持板部3は、断熱材22を水平方向に支持するように、大引21の下面よりも下側に位置することが好ましい。これにより、断熱構造100の断熱性能を向上しつつ、断熱材22を安定して大引21間に配置することができる。
【0059】
また、支持具10または10’において、先端部43または43’と支持板部3との距離は、上述した効果を奏する限り、特に限定されない。支持板部3の下方への移動をより強固に係止する観点では、好ましくは、先端部43または43’と支持板部3とは、略接している。具体的には、上下方向において、先端部43または43’と支持板部3との距離が、0.5mm~3.0mmであることが好ましく、1.0mm~2.0mmであることがより好ましい。
【0060】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
図3は、本実施形態に係る支持具10Aの概略構成を示し、
図3の301は斜視図であり、
図3の302は断面図である。
図4の401は、本実施形態に係る断熱構造100Aを示す断面図であり、
図4の402は、
図4の401に示す断熱構造100Aの他の変形例を示す断面図である。
【0062】
図3の301および302、並びに
図4の401に示すように、本実施形態に係る支持具10Aは、係止機構50Aの構成が実施形態1と異なる。また、
図4の401に示すように、支持具10Aにおいて、脚板部2の長さは、大引21の厚みよりも大きくなっている。すなわち、脚板部2は、大引21の下面から下方へ延長した延長板部5を有している。
【0063】
係止機構50Aにおいて、折り曲げ片40Aは、傾斜板部41A(第2の傾斜板部)と、支持板部3と、当接板部42A(第2の当接板部)と、を有している。傾斜板部41Aは、脚板部2の下端部から上方へ傾斜して折れ曲がって延びている。より具体的には、傾斜板部41Aは、延長板部5の下端部から、断熱材22へ近づくように、上方へ傾斜して折れ曲がって延びている。支持板部3は、傾斜板部41Aの先端部から断熱材22の下面に沿って脚板部2側へ折れ曲がって延びている。支持板部3は、脚板部2の延長板部5に接触しておらず、該延長板部5に接触する直前まで延びている。当接板部42Aは、支持板部3の先端部から下方へ折れ曲がって延びている。折り曲げ片40Aは、傾斜板部41Aと支持板部3と当接板部42Aとにより、三角柱形状の壁体を構成している。なお、図
3の301および302に示すように、当接板部42Aは、支持板部3に対して鉛直下方(重力方向)に延びている。それゆえ、上記壁体の形状は、直角三角形を底面とする三角柱である。ここで、傾斜板部41Aと支持板部3とは連結している。また、支持板部3と当接板部42Aとは連結している。その一方で、当接板部42Aと傾斜板部41Aとは連結していない。当接板部42Aの先端部43Aは、傾斜板部41Aと当接できる程度に、傾斜板部41Aと離間している。
【0064】
係止機構50Aは、折り曲げ片40Aにおける当接板部42Aの先端部43Aが傾斜板部41と上方から当接することにより、支持板部3の下方への移動を係止する。具体的には、
図4の401に示す断熱構造100Aにおいて、断熱材22に対して下方の荷重が掛かると、支持板部3は、断熱材22からの荷重を受けて、傾斜板部41Aと支持板部3との折れ曲がり部分から下方へ折れ曲がる。この支持板部3の折れ曲がりに伴い、折り曲げ片40Aにより構成される三角柱形状が変形する。そして、この変形により、当接板部42Aが鉛直方向へ移動し、傾斜板部41Aに対し上方から当接する。この当接により、支持板部3の下方への移動が阻止される。その結果、断熱材22に荷重が掛かっても、支持具10Aにより、大引21との段差なく断熱材22を支持することができる。
【0065】
また、
図4の401に示すように、支持具10Aによれば、折り曲げ片40Aにおいて3角柱状の壁体の一部と当接する先端部43Aは、大引21に接触していない。このように、支持板部3を係止する折り曲げ片40Aが大引21と接触せずに、大引21よりも下側に設けられているので、大引21と略同一の厚み分、断熱材22を施工することができ、断熱構造100Aの断熱性能を向上させることができる。
【0066】
図4の402に示す断熱構造100Bにおいては、折り曲げ片40Aの構成は、
図4の401に示す構成と同じであるので、説明を省略する。
図4の402に示す構成では、係止機構50Bの動作が
図4の401に示す構成と異なる。本実施形態において、先端部43Aは、傾斜板部41Aと支持板部3と当接板部42Aとにより構成された3角柱形状の壁体の一部と当接するか、あるいは脚板部2の一部と当接していればよい。
図4の402に示す構成では、係止機構50Bは、先端部43Aが脚板部2の一部と当接する構成となっている。
【0067】
係止機構50Bは、折り曲げ片40Aにおける当接板部42Aの先端部43Aが脚板部2の延長板部5と側方から当接することにより、支持板部3の下方への移動を係止する。具体的には、
図4に示す断熱構造100Bにおいて、断熱材22に対して下方の荷重が掛かると、支持板部3は、断熱材22からの荷重を受けて、傾斜板部41Aと支持板部3との折れ曲がり部分から下方へ折れ曲がる。この支持板部3の折れ曲がりに伴い、折り曲げ片40Aにより構成される三角柱形状が変形する。そして、この変形により、当接板部42Aが脚板部2側へ移動し、脚板部2の延長板部5に対して側方から当接する。この当接により、支持板部3の下方への移動が阻止される。その結果、断熱材22に荷重が掛かっても、支持具10Aにより、大引21との段差なく断熱材22を支持することができる。
【0068】
図4の402に示す支持具10Aによれば、支持板部3の下方への移動を係止するために、係止機構50Bは、折り曲げ片40Aの先端部43Aが、大引21の側面ではなく、支持具10Aの構成部材の一部である脚板部2の延長板部5に当接する。それゆえ、大引21と断熱材22との段差を解消するために、大引21の側面に支持具10Aとの当接箇所を設ける必要がない。このため、支持具10Aによれば、大引21および板状の断熱材22の設計自由度が高くなる。
【0069】
さらに、
図4の402に示す支持具10Aによれば、折り曲げ片40Aにおいて脚板部2の延長板部5と当接する先端部43Aは、大引21に接触していない。このように、支
持板部3を係止する折り曲げ片40Aが大引21と接触せずに、大引21よりも下側に設けられているので、大引21と略同一の厚み分、断熱材22を施工することができ、断熱構造100Aの断熱性能を向上させることができる。
【0070】
また、脚板部2(延長板部5)と傾斜板部41Aとのなす角度αは、上記3角柱形状を形成できる限り、特に限定されないが、15°~75°であることが好ましく、45°であることがより好ましい。また、傾斜板部41Aと支持板部3とのなす角度βは、上記3角柱形状を形成できる限り、特に限定されないが、具体的には、90°-角度αであり、45°であることが好ましい。角度αおよびβが上記数値範囲であることにより、断熱材22を安定して大引21間に配置することができる。
【0071】
特に、角度αおよびβが45°である場合、折り曲げ片40Aが構成する上記壁体の形状は、直角二等辺三角形を底面とする三角柱である。すなわち、支持板部3と当接板部42とがほぼ同じ寸法となっている。このような角度αおよびβが45°である折り曲げ片40Aは、(a)構造強度保持の点、(b)断熱材22を支持具10Aに確実に係止できる点、および(c)支持具10Aとして用いる材料使用量の適正化の点で好ましい。しかし、当接板部42Aと支持板部3とは、断熱材22の重さ、施工するスペース等を考慮し、互いに異なる長さであってもよい。
【0072】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
図5は、本実施形態に係る支持具10Bの概略構成を示し、
図5の501は斜視図であり、
図5の502は断面図であり、
図5の503は、
図5の501および502に示す構成の変形例を示す断面図である。
図5の501および502に示すように、本実施形態に係る支持具10Bは、脚板部2を2つ備えている点で実施形態1と異なる。
【0074】
図5の501および502に示すように、支持具10Bは、2つの脚板部2を備えている。2つの脚板部2は、上板部1Bの互いに対向する2つの側壁部から折れ曲がって形成されている。換言すれば、上板部1Bは、2つの脚板部2の間に挟まれて連結している。支持具10Bは、上板部1Bおよび2つの脚板部2により(上下反転した)U字形状を形成する。以下、このような形状の支持具をU字状の支持具と称する場合がある。そして、このようなU字形状の支持具10Bにおいて、2つの脚板部2それぞれの下端部に、支持板部3が水平に折れ曲がって延びている。2つの脚板部2それぞれの下端部に設けられた2つの支持板部3は、互いに反対方向に延びている。
【0075】
そして、2つの支持板部3それぞれについて、支持板部3を一側面とする3角柱形状の壁体を構成するように、折り曲げ片40が設けられている。折り曲げ片40の具体的構成は、実施形態1に係る支持具10の折り曲げ片40と同一であるので、説明を省略する。
図5の502に示すように、支持具10Bにおいて、2つの折り曲げ片40は、仮想線Xを軸として、互いに線対称になるように設けられている。
【0076】
本実施形態に係る支持具10Bは、例えば大引の両側に板状の断熱材が配置されている場合に好適に用いられる。この場合、支持具10Bは、2つの脚板部2によって大引を挟持でき、かつ、これら2つの脚板部2が大引に係止されるように構成される。
【0077】
支持具10Bは、実施形態1に係る支持具10と別々に製造し得る。しかし、本実施形態に係る支持具10Bから支持具10を製造することが可能である。より具体的には、図
5の501および502に示すように、支持具10Bでは、上板部1Bは、薄肉部からなる切込み11(第3の切込み)を有する。切込み11の薄肉部は、例えばV字溝である。そして、切込み11を介して、上板部1Bは、ピース1aおよび1cに分割可能になっている。切込み11は、上板部1を上下方向に貫通するスリットである。
【0078】
このように切込み11が形成されていることにより、必要に応じて、施工現場においてU字状の上板部1Bを分割し、2つのZ字状の支持具を製造することができる。そして、分割したZ字状の支持具は、大引の四隅に配置するのに使用することができる。また、一種類の支持具10Bを製造するだけでよいので、支持具の生産性も優れたものとなる。なお、切込み11は、例えばV字溝等の薄肉部に限定されず、上板部1を分割可能な構造であればよい。例えば、切込み11は、例えば上板部1を上下に貫通するスリット状構造であってもよい。
【0079】
また、
図5の503に示すように、支持具10Cは、2つの支持板部3それぞれについて、支持板部3を一側面とする3角柱形状の壁体を構成するように、折り曲げ片40Aが形成されていてもよい。折り曲げ片40Aの具体的構成は、実施形態2と同一であるので、説明を省略する。支持具10Cにおいて、2つの折り曲げ片40Aは、仮想線Yを軸として、互いに線対称になるように設けられている。
【0080】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0081】
図6は、本実施形態に係る支持具10Dの概略構成を示し、
図6の601は斜視図であり、
図6の602は断面図である。
図6の601および602に示すように、支持具10Dは、上板部1Bおよび脚板部2それぞれに突き刺し片12bおよび22bが形成されている点が上記実施形態3と異なる。なお、突き刺し片12bおよび22bは、実施形態1および2に係る支持具に対しても適用可能であることはいうまでもない。
【0082】
図6の601および602に示すように、支持具10Dおいて、脚板部2には切込み22a(第1の切込み)が具備されている。そして、突き刺し片22b(第1の突き刺し片)は、切込み22aを立て起こして形成される。突き刺し片22bは、切込み22aを大引の側面へ向けて立て起こしたものであり、先端が尖鋭部になっている。突き刺し片22bは、大引の側面に食い込ませて装着される。突き刺し片22bは、2つの脚板部2それぞれに、互いに平行になるように2つ設けられている。
【0083】
この構成によれば、支持具10Dを大引に取り付けるに際し、大引の側壁部に対して突き刺し片22bを打ち込むことによって、大引に支持具10Dを強固に固定することができる。それゆえ、施工中に、支持具10Dは大引から外れにくくなるので、作業効率を高めることができる。
【0084】
なお、切込み22aおよび突き刺し片22bは、
図6の601および602に示す構成に限定されない。例えば、2つの突き刺し片22bが形成されるように切込み22aが形成されていてもよい(例えば菱形の切込み22a等)。そして、一方の突き刺し片22bは、大引の側面に対し下方へ切込み22aを立て起こしたものであり、他方の突き刺し片22bは、大引の他の側面に対して下方へ切込み22aを立て起こしたものである。
【0085】
また、支持具10Dにおいては、上板部1には切込み12a(第2の切込み)が具備されている。そして、突き刺し片12b(第2の突き刺し片)は、切込み12aを立て起こ
して形成される。突き刺し片12bは、切込み12aを大引の上面へ向けて略垂直に立て起こしたものであり、先端が尖鋭部になっている。突き刺し片12bは、大引の上面に食い込ませて装着される。
【0086】
この構成によれば、支持具10Dを大引に取り付けるに際し、大引の上面に対して突き刺し片12bを打ち込むことによって、大引に支持具10Dを強固に固定することができる。それゆえ、施工中に、支持具10Dは大引から外れにくくなるので、作業効率を高めることができる。
【0087】
さらに、幅方向に沿った断面が湾曲して形成されている大引に対しても、大引の上面に対して突き刺し片12bを打ち込むことによって、大引に支持具10Dを強固に固定することができる。そして、打ち込み後に、大引から支持具10Dが脱落し難くなる。
【0088】
なお、突き刺し片12bは、上板部1の切込み11の外側に形成されていることが好ましい。上板部1において、突き刺し片12bは、切込み11の外側に2つずつ、合計4つ形成されていることが好ましい。これにより、大引に支持具10Dをより確実に固定することができる。例えば、切込み11を介してU字状の支持具10Dを分割し2つのZ字状の支持具としたとき、2つのZ字状の支持具それぞれに突き刺し片12bが形成されていることになる。それゆえ、これら2つのZ字状の支持具を、より確実に大引に固定することができる。
【0089】
なお、支持具10Dによる施工においては、突き刺し片12bのみを大引の上面に打ち込み大引に対して上板部1のみを固定してもよいし、突き刺し片22bのみを大引の側面に打ち込み大引に対して脚板部2のみを固定してもよい。すなわち、突き刺し片12bおよび22bの少なくとも一方が大引に打ち込まれていればよく、突き刺し片12bおよび22bの両方が大引に打ち込まれることが好ましい。
【0090】
なお、本実施形態に係るU字状の支持具は、
図6の601および602に示すような突き刺し片12bおよび22bを備えた構成に限定されない。U字状の支持具は、大引の上面から嵌め込まれ、かつ、2つの脚板部により大引を挟持する構成であってもよい。この場合、U字形状の支持具が確実に大引を挟持できるように、上板部と脚板部とのなす角度は、80°~100°であることが好ましく、90°~95°であることがより好ましい。
【0091】
〔実施形態5;実施形態1~4に係る支持具に適用し得る変形例〕
実施形態1~3においては、折り曲げ片は、三角柱形状の壁体を構成している。しかし、折り曲げ片は、これに限定されず、脚板部の下端部から折れ曲がっており、支持板部を一側面とする角柱状の壁体を構成していればよい。
図7は、折り曲げ片40Bの変形例を備えた支持具10Eの概略構成を示す断面図である。なお、材料の費用面等を考慮した場合、三角柱形状が好ましい。
【0092】
図7に示すように、支持具10Eは、係止機構50Cに備えられた折り曲げ片40Bが四角柱形状の壁体を構成する点が実施形態1~3と異なる。より具体的には、折り曲げ片40Bは、支持板部3と、垂直板部44と、水平板部45と、当接板部46と、を有している。支持板部3は、脚板部2から折れ曲がって断熱材の下面に沿って延びている。また、垂直板部44は、支持板部3の先端部から支持板部3に対して垂直下方へ折れ曲がって延びている。水平板部45は、垂直板部44の先端部から垂直板部44に対して垂直方向に脚板部2側へ折れ曲がって延びている。当接板部46は、水平板部45の先端部から水平板部45に対して垂直上方へ折れ曲がって延びている。折り曲げ片40Bは、支持板部3と垂直板部44と水平板部45と当接板部46とにより、四角柱形状の壁体を構成して
いる。ここで、支持板部3と垂直板部44とは連結している。また、垂直板部44と水平板部45とは連結している。さらに、水平板部45と当接板部46とは連結している。その一方で、当接板部46と支持板部3とは連結していない。当接板部46の先端部43Bは、支持板部3に当接できる程度に、支持板部3と離間している。
【0093】
断熱材に対して下方の荷重が掛かると、係止機構50Cは、折り曲げ片40Bにおける当接板部46の先端部43Bが支持板部3と下方から当接することにより、支持板部3の下方への移動を係止する。それゆえ、断熱材に荷重が掛かっても、支持具10Eにより、大引との段差なく断熱材を支持することができる。
【0094】
(実施形態1~5に係る支持具について)
実施形態1~5に係る支持具は、帯状の板部材が折り曲げられた形状のものであることが好ましい。これにより、支持具を構成する板部材から外側へ突起物が存在しなくなる。それゆえ、大引を挟んで支持具を並べて配置することにより、多数の支持具を隙間なく並べて保管したり、運搬したりすることができるので、支持具の取り扱いが非常に効率的にある。
【0095】
また、実施形態1~5に係る支持具は、Z字状およびU字状に関わらず、金属板の抜き加工および折り曲げ加工により形成することが好ましい。このような加工によって支持具を形成することにより、材料の無駄がなく、効率よく支持具を製造することができる。
【0096】
このように形成された支持具を用いた施工方法の好ましい形態では、まず、互いに平行に設置された大引間に、適切な間隔でU字状の支持具を設置する。このとき、例えば実施形態4に係る支持具を用いた場合、U字状の支持具に大引の上面が挿入されるようにU字状の支持具を設置し、位置決めした後、脚板部それぞれに形成された突き刺し片を大引の側面に打ち込むことによって、脚板部を大引の側面に固定することが好ましい。
【0097】
このように大引に対して適切な間隔でU字状の支持具を設置した後、支持具の支持板部上に板状の断熱材を設置する。そして、その後、大引上に、床下地材、フローリング等の板材を設置する。
【0098】
なお、実施形態1~5に係る支持具の材料は、上述した効果を奏する限り、特に限定されない。当該支持具の材料は、金属板、合成樹脂等であってもよい。当該支持具の材料が金属板である場合、当該支持具は、金属の鋳造および溶接等により製造され得る。また、当該支持具の材料が合成樹脂である場合、当該支持具は、合成樹脂の射出成形、合成樹脂シートの熱成形加工等の方法によって、製造され得る。生産性、剛性、さらには厚みを薄くできるという観点から、実施形態1~5に係る支持具は、金属板から形成されることが最も好ましい。
【0099】
また、支持具を備えた断熱構造に使用される板状の断熱材は、特に限定されず、例えば、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱材、ガラス繊維または合成繊維からなる板状の真空断熱材などが挙げられる。上記断熱材の中でも、軽量で剛性が大きく、耐水性、耐圧性に優れ、断熱性能が高く、加工により厚みが容易に変更可能である点で、断熱材は、合成樹脂系発泡体からなる板状の断熱材であることが好ましい。断熱材に好適な合成樹脂系発泡体として、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、ポリプロピレン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、フェノール系樹脂発泡体等の独立気泡を有する合成樹脂発泡体が挙げられる。
【0100】
これらの合成樹脂発泡体の中でも、上記合成樹脂発泡体のより好ましい形態は、高い断熱性および低い吸水性の点から、特に、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、また
はポリプロピレン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂押出発泡成形体である。当該より好ましい形態では、上記合成樹脂発泡体は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体であってもよい。当該より好ましい形態では、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、またはポリプロピレン系樹脂は、リサイクル性が高い。
【0101】
また、「板状」とは、基本となる形状が直方体形状であることを意味する。「板状」には、直方体形状を基本としつつ、角部に丸みがある形状、角部が面取りされた形状もその範疇に含まれる。また、断熱材の表面に凹凸が形成されていてもよい。また、板状の断熱材としては、厚みが15mm~300mm、長さが600mm~4000mm、幅が200mm~2000mmのものが好適に用いられる。
【0102】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1、1B 上板部
2 脚板部
3 支持板部
10、10’、10A、10B、10C、10D、10E 支持具(断熱材支持具)
11 切込み(第3の切込み)
12a 切込み(第2の切込み)
12b 突き刺し片(第2の突き刺し片)
22a 切込み(第1の切込み)
22b 突き刺し片(第1の突き刺し片)
21 大引(横架材)
22 断熱材
40、40’、40A、40B 折り曲げ片
41、41’ 傾斜板部(第1の傾斜板部)
41A 傾斜板部(第2の傾斜板部)
42、42’ 当接板部(第1の当接板部)
42A 当接板部(第2の当接板部)
43、43’、43A 先端部
50、50A、50B、50C 係止機構
100、100A、100B 断熱構造