(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164402
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】乾式メタン発酵システム及び乾式メタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20241120BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20241120BHJP
【FI】
B09B3/65 ZAB
B09B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079850
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】522160376
【氏名又は名称】三芦商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513158139
【氏名又は名称】ユア・エネルギー開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】全 信九
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004AB01
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA18
4D004CA22
4D004CA32
4D004CA42
4D004CB04
4D004CB05
4D004CB31
4D004CC07
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA09
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、消費電力を低減させ、かつ発酵残渣を減容させた乾式メタン発酵システム及び乾式メタン発酵方法を提供することである。
【解決手段】本発明の乾式メタン発酵システム100は、有機物を乾燥させる3段階の工程を3つの乾燥装置で別々に行う3段階乾燥装置1を有し、有機物の水分量を70%以下に調整する水分量調整手段3を有する第1乾燥装置2と、水分量を70%以下に調整した前記有機物を膨張させる手段6及び加熱する手段7を有する、第2乾燥装置5と、膨張及び加熱した前記有機物を冷却する、第3乾燥装置8と、を備える、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を乾燥させる3段階の工程を3つの乾燥装置で別々に行う3段階乾燥装置を有し、当該3段階乾燥装置により乾燥させた前記有機物を用いてメタン発酵を行う乾式メタン発酵システムであって、
前記3段階乾燥装置は、
有機物の水分量を70%以下に調整する水分量調整手段を有する第1乾燥装置と、
水分量を70%以下に調整した前記有機物を膨張させる手段及び加熱する手段を有する第2乾燥装置と、
膨張及び加熱した前記有機物を冷却する第3乾燥装置と、を備える
ことを特徴とする乾式メタン発酵システム。
【請求項2】
前記3段階乾燥装置は、上から縦方向に、前記第1乾燥装置、前記第2乾燥装置、前記第3乾燥装置の順に3つの前記乾燥装置が連なる
ことを特徴とする請求項1に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項3】
前記水分量調整手段は、水性ガスを生成する水性ガス生成手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項4】
前記水性ガス生成手段は、粉炭を用いる
ことを特徴とする請求項3に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項5】
前記粉炭を、発酵残渣槽から、前記水性ガス生成手段へ供給する第1供給手段を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項6】
乾燥させた前記有機物を破砕し、複合微生物と混合する破砕混合機器を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項7】
前記複合微生物を、発酵残渣槽から、前記破砕混合機器へ供給する第2供給手段を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項8】
前記複合微生物と混合した前記有機物を発酵させて酸を生成する3段階の工程を、3つの槽で別々に行う3段階酸生成槽を有し、
前記3段階酸生成槽は、
前記複合微生物と混合した前記有機物を発酵させて低分子有機物を生成する第1槽と、
前記低分子有機物を発酵させて揮発性脂肪酸、水素及び二酸化炭素を生成する第2槽と、
未反応の前記低分子有機物及び前記揮発性脂肪酸を発酵させて水素、二酸化炭素及び酢酸を生成する第3槽と、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項9】
発酵させた前記有機物を更に発酵させ、メタンを生成するメタン発酵槽を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項10】
前記発酵残渣槽が、発酵残渣を保管する
ことを特徴とする請求項5又は請求項7に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項11】
水素資化性メタン生成菌によりメタンを生成する水素資化性発酵槽を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項12】
前記水素及び前記二酸化炭素を、前記第3槽から、前記水素資化性発酵槽へ供給する第3供給手段を有する
ことを特徴とする請求項11に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項13】
前記水素資化性メタン生成菌及び前記メタンを、前記水素資化性発酵槽から、前記メタン発酵槽へ供給する第4供給手段を有する
ことを特徴とする請求項12に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項14】
酢酸を生成し、更に酢酸資化性メタン生成菌によりメタンを生成する酢酸資化性発酵槽を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項15】
蒸気及び排水を、前記第2乾燥装置から、前記酢酸資化性発酵槽へ供給する第5供給手段を有する
ことを特徴とする請求項14に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項16】
前記酢酸資化性メタン生成菌、前記酢酸及び前記メタンを、前記酢酸資化性発酵槽から、メタン発酵槽へ供給する第6供給手段を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の乾式メタン発酵システム。
【請求項17】
第1乾燥装置により、有機物の水分量を70%以下に調整する水分量調整工程と、
第2乾燥装置により、水分量を70%以下に調整した前記有機物を膨張及び加熱する膨張加熱工程と、
第3乾燥装置により、膨張及び加熱した前記有機物を冷却する冷却工程と、を含む3段階の工程で有機物を乾燥させ、乾燥させた前記有機物を発酵させてメタンを生成する
ことを特徴とする乾式メタン発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式メタン発酵システム及び乾式メタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源を除いた生物由来の有機性資源のことを、「バイオマス」という。バイオマスは、具体的には、農林水産物、稲藁、もみがら、食品廃棄物、家畜排せつ物、木くずなどが挙げられる。
【0003】
中でも、食品廃棄物をはじめとする有機廃棄物の発生量は、近年増加傾向にあり、その多くは焼却処理されている。これにより、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量も増加傾向にあり、地球温暖化に大きく影響している。
そのため、有機廃棄物のバイオマスとしての再利用や再資源化が求められている。
【0004】
有機廃棄物をバイオマスとして再利用や再資源化する技術として、メタン発酵技術が知られている。メタン発酵技術は、汚水処理技術として古くから利用されているが、近年では、バイオマスからエネルギーを生産する技術として注目されている。
【0005】
メタン発酵技術には、湿式型と乾式型が挙げられる。
湿式型と乾式型を比較する。
なお、「TS濃度」とは、汚泥濃度のことである。
【0006】
【0007】
処理物の幅広さ、バイオガスの発生量の大きさ、排水処理の有無、建設コスト等を考慮すると、乾式型を用いることが好ましい。
しかし、その一方、乾式型では、消費電力が大きく、発酵残渣が多いという問題があった。
【0008】
特許文献1では、有機廃棄物の乾式メタン発酵で大量に発生する発酵残渣を、効率的に減容することができる乾式メタン発酵装置についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、乾式メタン発酵装置において、発酵残渣の減容は、求められる一方であり、更なる改良が求められている。また、乾式メタン発酵装置の消費電力が大きいという問題は依然として解決されていない。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、消費電力を低減させ、かつ発酵残渣を減容させた乾式メタン発酵システム及び乾式メタン発酵方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、乾式メタン発酵システムにおいて、有機物を乾燥させる3段階の工程を3つの乾燥装置で別々に行う3段階乾燥装置を有することにより、消費電力を低減でき、かつ発酵残渣を減容できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.有機物を乾燥させる3段階の工程を3つの乾燥装置で別々に行う3段階乾燥装置を有し、当該3段階乾燥装置により乾燥させた前記有機物を用いてメタン発酵を行う乾式メタン発酵システムであって、
前記3段階乾燥装置は、
有機物の水分量を70%以下に調整する水分量調整手段を有する第1乾燥装置と、
水分量を70%以下に調整した前記有機物を膨張させる手段及び加熱する手段を有する第2乾燥装置と、
膨張及び加熱した前記有機物を冷却する第3乾燥装置と、を備える
ことを特徴とする乾式メタン発酵システム。
【0013】
2.前記3段階乾燥装置は、上から縦方向に、前記第1乾燥装置、前記第2乾燥装置、前記第3乾燥装置の順に3つの前記乾燥装置が連なる
ことを特徴とする第1項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0014】
3.前記水分量調整手段は、水性ガスを生成する水性ガス生成手段を有する
ことを特徴とする第1項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0015】
4.前記水性ガス生成手段は、粉炭を用いる
ことを特徴とする第3項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0016】
5.前記粉炭を、発酵残渣槽から、前記水性ガス生成手段へ供給する第1供給手段を有する
ことを特徴とする第4項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0017】
6.乾燥させた前記有機物を破砕し、複合微生物と混合する破砕混合機器を有する
ことを特徴とする第1項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0018】
7.前記複合微生物を、発酵残渣槽から、前記破砕混合機器へ供給する第2供給手段を有する
ことを特徴とする第6項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0019】
8.前記複合微生物と混合した前記有機物を発酵させて酸を生成する3段階の工程を、3つの槽で別々に行う3段階酸生成槽を有し、
前記3段階酸生成槽は、
前記複合微生物と混合した前記有機物を発酵させて低分子有機物を生成する第1槽と、
前記低分子有機物を発酵させて揮発性脂肪酸、水素及び二酸化炭素を生成する第2槽と、
未反応の前記低分子有機物及び前記揮発性脂肪酸を発酵させて水素、二酸化炭素及び酢酸を生成する第3槽と、を含む、
ことを特徴とする第6項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0020】
9.発酵させた前記有機物を更に発酵させ、メタンを生成するメタン発酵槽を有する
ことを特徴とする第8項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0021】
10.前記発酵残渣槽が、発酵残渣を保管する
ことを特徴とする第5項又は第7項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0022】
11.水素資化性メタン生成菌によりメタンを生成する水素資化性発酵槽を有する
ことを特徴とする第9項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0023】
12.前記水素及び前記二酸化炭素を、前記第3槽から、前記水素資化性発酵槽へ供給する第3供給手段を有する
ことを特徴とする第11項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0024】
13.前記水素資化性メタン生成菌及び前記メタンを、前記水素資化性発酵槽から、前記メタン発酵槽へ供給する第4供給手段を有する
ことを特徴とする第12項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0025】
14.酢酸を生成し、更に酢酸資化性メタン生成菌によりメタンを生成する酢酸資化性発酵槽を有する
ことを特徴とする第1項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0026】
15.蒸気及び排水を、前記第2乾燥装置から、前記酢酸資化性発酵槽へ供給する第5供給手段を有する
ことを特徴とする第14項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0027】
16.前記酢酸資化性メタン生成菌、前記酢酸及び前記メタンを、前記酢酸資化性発酵槽から、メタン発酵槽へ供給する第6供給手段を有する
ことを特徴とする第15項に記載の乾式メタン発酵システム。
【0028】
17.第1乾燥装置により、有機物の水分量を70%以下に調整する水分量調整工程と、
第2乾燥装置により、水分量を70%以下に調整した前記有機物を膨張及び加熱する膨張加熱工程と、
第3乾燥装置により、膨張及び加熱した前記有機物を冷却する冷却工程と、を含む3段階の工程で有機物を乾燥させ、乾燥させた前記有機物を発酵させてメタンを生成する
ことを特徴とする乾式メタン発酵方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明の上記手段により、消費電力を低減させ、かつ発酵残渣を減容させた乾式メタン発酵システム及び乾式メタン発酵方法を提供することができる。
【0030】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。なお、詳細については後述する。
【0031】
通常、廃棄物としての有機物は、水分を多く含んでおり、乾式型でのメタン発酵を行う場合には、乾燥させて水分量を調整する必要がある。
本実施形態の乾式メタン発酵システムは、乾燥装置として、3段階乾燥装置を有する。3段階乾燥装置は、3段階のうちの、まず1段階で、150~160℃の範囲内の温度で有機物の水分を70%以下に乾燥させて乾燥を行う。次に、乾燥させた有機物を、2段階で圧力をかけて膨張させ、酵素作用を受けやすい状態にすることができるので、メタンの生成量を向上できると考えられる。また、最終的に得られる発酵残渣を、乾燥時の燃料として再利用できる。その結果、消費電力を低減でき、かつ発酵残渣を減容できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態の乾式メタン発酵システムのフローを説明するための図
【
図2】本実施形態の乾式メタン発酵システムのシステム構成を説明するための図
【
図3】水性ガスと既存燃料を併用したバーナーの構成を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本実施形態の乾式メタン発酵システム100は、縦軸3段階乾燥装置1、破砕混合機器10、3段階酸生成槽11、水素資化性発酵槽15、酢酸資化性発酵槽16、メタン発酵槽17、発酵残渣槽18を備える。
【0034】
縦軸3段階乾燥装置1は、有機物を3段階の工程で乾燥させる。縦軸3段階乾燥装置1は、上から順に1段階目の第1乾燥装置2、2段階目の第2乾燥装置5、3段階目の第3乾燥装置8を備える。
第1乾燥装置2は、有機物の水分量を70%以下に調整する水分量調整手段3を備える。水分量調整手段3は、水性ガスを生成する水性ガス生成手段4を備える。
第2乾燥装置5は、水分量を70%以下に調整した有機物を膨張する手段及び加熱する手段を備える。
第3乾燥装置8は、膨張及び加熱した有機物を冷却する冷却手段を備える。
【0035】
破砕混合機器10は、乾燥させた有機物を破砕し、複合微生物と混合する。
【0036】
3段階酸生成槽11は、複合微生物と混合した有機物を、3段階の工程で発酵させて、酸を生成する。3段階酸生成槽11は、上から順に、1段階目の第1槽12、2段階目の第2槽13、3段階目の第3槽14を備える。第1槽12は、複合微生物と混合した有機物を発酵させて、低分子有機物を生成する。第2槽13は、低分子有機物を発酵させて、揮発性脂肪酸、水素及び二酸化炭素を生成する。第3槽14は、未反応の前記低分子有機物及び前記揮発性脂肪酸を発酵させて、水素、二酸化炭素及び酢酸を生成する。
【0037】
水素資化性発酵槽15は、水素資化性メタン生成菌により、水素及び二酸化炭素からメタンを生成する。
酢酸資化性発酵槽16は、揮発性脂肪酸から酢酸を生成し、更に酢酸資化性メタン生成菌によりメタンを生成する。
メタン発酵槽17は、発酵させた有機物を更に発酵させ、メタンを生成する。
発酵残渣槽18は、発酵残渣を保管する。
【0038】
以下、本発明を実施するための形態及び態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0039】
以下、本実施形態の乾式メタン発酵システムと、当該システムを用いて乾式メタン発酵を行う方法について説明する。
【0040】
1.乾式メタン発酵システム及び乾式メタン発酵方法の概要
本実施形態の乾式メタン発酵システム100は、有機物を3段階の工程で乾燥させる縦軸3段階乾燥装置1を有する。
本実施形態の乾式メタン発酵方法は、有機物を3段階の工程で乾燥させ、前記有機物を発酵してメタンを生成する。
【0041】
本実施形態の乾式メタン発酵システム100は、有機物を十分に乾燥でき、酵素作用を受けやすい状態にすることができるため、メタンの生成量を向上できる。また、最終的に得られる発酵残渣を、乾燥時の燃料として再利用できる。その結果、消費電力を低減でき、かつ発酵残渣を減容できる。
【0042】
有機物は、大別して、蛋白質、脂質及び炭水化物に分類できる。これらの高分子成分は、加水分解微生物群によって、それぞれ、構成単位のアミノ酸、グリセリンと脂肪酸、及びグルコースに低分子化される。その後、微生物反応が進行し、各種脂肪酸を経由して酢酸と水素に分解される。
【0043】
そして、酢酸は、下記(式1)で表される反応で、酢酸資化性メタン発酵菌により、メタン(CH4)と二酸化炭素(CO2)に分解される。
また、水素は、下記(式2)で表される反応で、水素資化性メタン発酵菌により、二酸化炭素(CO2)と反応する。そして、メタン(CH4)と水(H2O)が生成される。
なお、有機物の分解によって生成したCH4及びCO2を含むガスを、「バイオガス」と称する。
【0044】
(式1) CH3COOH→CH4+CO2
(式2) 4H2+CO2→CH4+2H2O
【0045】
メタン発酵には、約55℃で分解速度が速まる高温メタン発酵と、約35℃で分解速度が速まる中温メタン発酵との二種類がある。高温メタン発酵は、中温メタン発酵に比べて有機物の分解速度が速いため、中温メタン発酵の約2~4倍のバイオガスを回収できる。また、高温による病原性細菌の死滅効果も期待できる。ただし、高温メタン発酵は、装置の維持に多大な熱エネルギーを要する。
【0046】
また、メタン発酵後に排出される発酵残渣は、無機態及び有機態の窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)などの肥料成分を含む。そのため、発酵残渣を、作物栽培の肥料として利用できる。
【0047】
有機物を微生物により分解するメタン発酵の各反応工程を示す。
(反応1)
タンパク質、脂質及び炭水化物で構成される高分子有機物が、それぞれ、アミノ酸、脂肪酸、糖類などの低分子有機物に、加水分解される。
(反応2)
低分子有機物が、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸などの有機酸に分解される。
(反応3)
有機酸が、水素、二酸化炭素及び酢酸に分解される。
(反応4)
メタン生成古細菌が、水素、二酸化炭素及び酢酸をエネルギー源として利用し、メタンを生成する。
【0048】
なお、メタン発酵槽中の微生物群集は、有機物を分解する細菌群集と、メタンを生成するメタン生成古細菌群からなる。
【0049】
出発物質である有機物は、特に制限されないが、家庭用生ゴミ、下水汚泥、家畜糞尿などの廃棄物であることが好ましい。これらは、主成分が異なる有機物の集合体であり、成分組成や発酵環境条件が、その時々によって大きく変わる。そして、発酵速度、バイオガス生成量、ガス組成などの発酵特性に大きく影響する。
【0050】
また、微生物の組成に偏りがあると、反応工程で生成するアンモニアや有機酸の組成比の均衡が崩れ、メタン生成古細菌の生育を阻害することが知られている。そのため、メタン発酵の装置又は施設を建設する際には、一般的に、発酵特性と環境条件を決定するためのバッチ式実験を行う。バッチ式実験では、出発物質である発酵対象物の最適負荷量、環境条件などを検証し、発酵速度、バイオガス生成量、ガス組成、阻害要因を把握する必要がある。
【0051】
2.乾式メタン発酵システム及び乾式メタン発酵方法の構成
本実施形態の乾式メタン発酵システム100は、有機物を3段階の工程で乾燥させる縦軸3段階乾燥装置1を必須で有する。その他の槽、機器等については、必要に応じて有することが好ましい。
【0052】
本実施形態の乾式メタン発酵方法は、有機物を3段階の工程で乾燥させ、有機物を発酵してメタンを生成する。つまり、下記一連の装置等で実施される工程のうち、縦軸3段階乾燥装置で実施される工程を必須で有する。その他の工程については、必要に応じて有することが好ましい。
【0053】
A)縦軸3段階乾燥装置
B)破砕混合機器
C)3段階酸生成槽
D)メタン発酵槽
E)発酵残渣槽
F)水素資化性発酵槽
G)酢酸資化性発酵槽
【0054】
図1は、本実施形態の乾式メタン発酵システムのフローを説明するための図である。実線の矢印は、出発物質である有機物由来の成分の流れを表す。
本実施形態では、
図1における縦軸3段階乾燥装置1を必須で有する。
【0055】
上記反応1~3は、C)3段階酸生成槽にて生じると考えられる。上記反応4は、メタン発酵槽にて生じると考えられる。
【0056】
図2は、本実施形態の乾式メタン発酵システムのシステム構成を説明するための図である。
廃棄物としての有機物は、縦軸3段階乾燥装置1の上部から投入される。乾燥された有機物は、破砕混合機器10に供給される。有機物は破砕され、複合微生物と混合される。複合微生物と混合された有機物は、3段階酸生成槽11の上部から投入される。発酵させた有機物は、メタン発酵槽17に供給される。そして、メタン発酵槽17で生成したメタンを回収する。メタン発酵槽17に残留した発酵残渣は、発酵残渣槽18で保管する。
加えて、縦軸3段階乾燥装置1の第2乾燥装置5から、蒸気及び排水を取り出し、酢酸資化性発酵槽16へ供給する。酢酸資化性発酵槽16で生成した酢酸及びメタン、培養した酢酸資化性メタン生成菌をメタン発酵槽17に供給する。また、3段階酸生成槽11の第3槽14から、水素及び二酸化炭素を取り出し、水素資化性発酵槽15へ供給する。水素資化性発酵槽15で生成したメタン、培養した水素資化性メタン生成菌を、メタン発酵槽17に供給する。
【0057】
以下、上記装置等の詳細及び実施される工程の一例について説明する。なお、本発明は、これに制限されない。また、「乾式メタン発酵システム」を、単に「システム」ともいう。
【0058】
A)縦軸3段階乾燥装置
本実施形態のシステム100は、乾燥装置として縦軸3段階乾燥装置1を有する。縦軸3段階乾燥装置1では、有機物への圧力及び温度を3段階で変化させることにより、有機物を十分に乾燥させることができる。また、有機物を、酵素作用を受けやすい状態にできる。
【0059】
乾式型では、有機物における水分量が、70%以下であることが好ましい。そのため、有機物における水分量が70%超である場合には、乾燥装置で有機物を乾燥させ、水分量を調整する。
【0060】
(1)第1乾燥装置
第1乾燥装置2は、有機物の水分量を70%以下に調整する水分量調整手段3を有する。水分量を調整する方法及び手段は、特に制限されず、例えば圧力、遠心力、熱等を加えることにより、水分を除去できる。
例えば、水分量が80~90%程度の有機物1.5トンを、水分量が70%以下になるまで乾燥させる。乾燥後の水分量は、65~70%の範囲内であることが好ましい。乾燥温度は、120~160℃の範囲内であることが好ましく、160℃程度であることがより好ましい。乾燥時間は、30~60分の範囲内であることが好ましい。
【0061】
エネルギー源は、特に制限されないが、エネルギー源として、下記の方法で生成される水性ガスを用いることが好ましい。すなわち、水分量調整手段3は、水性ガス生成手段4を有することが好ましい。なお、水性ガス生成手段4の一例について説明するが、これに制限されない。
【0062】
酸素の供給が遮断又は制限され、かつ水分がある環境下で、粉炭を加熱することにより、下記式(X)に示す水蒸気改質反応が生じる。加熱温度によっては、この反応と共に下記式(Y)に示す水性ガスシフト反応も生じる。すなわち、粉炭を加熱することにより、二酸化炭素CO2、一酸化炭素CO、及び水素H2が生成される。
【0063】
C+H2O→CO+H2 ・・・(X)
CO+H2O→CO2+H2 ・・・(Y)
【0064】
例えば、水に粉炭を混合させた粉炭スラリーを準備する。粉炭の含有量は、特に制限されないが、水の全質量に対して、3質量%程度であることが好ましい。この粉炭スラリーを、燃焼機器であるバーナーで加熱する。なお、必要に応じて、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、Feなどの遷移金属系触媒が挙げられる。触媒として、鉄鉱石を用いてもよい。
【0065】
例えば、粉体スラリーを、1000℃などの高温で加熱すると、水蒸気改質反応は進行するが、その後の水性ガスシフト反応は進行しづらい。その結果、主に、一酸化炭素COと水素H2が生成される。
【0066】
また、粉体スラリーを、500℃などの低温で加熱すると、水蒸気改質反応の後、水性ガスシフト反応が進行しやすい。その結果、主に、二酸化炭素CO2と水素H2が生成される。
【0067】
生成されたガスには、二酸化炭素CO2、一酸化炭素CO、及び水素H2が含まれる。この生成されたガスから、一酸化炭素と、水素と、残部とに分離することが好ましい。分離工程では、例えば、ゼオライト吸着などの物理吸着方法による分離方法を用いることが好ましい。得られた一酸化炭素及び水素は、第1乾燥装置のエネルギー源として用いることができる。なお、一酸化炭素と水素のうち、水素のみをエネルギー源とすることが好ましい。水素を用いることにより、二酸化炭素CO2が発生しないため、二酸化炭素の削減効果が大きい。
【0068】
粉炭を用いることにより、石油燃料の使用量を削減できる。
粉炭は、特に制限されないが、後述する発酵残渣を用いることが好ましい。発酵残渣は、必要に応じて、炭化処理することが好ましい。発酵残渣を用いることにより、カーボンニュートラルとすることができる。また、発酵残渣を用いることにより、燃料にかかるコストを30~40%削減できる。
【0069】
その他、水性ガスと既存燃料を併用したバーナーを用いてもよい。
具体的には、LPG、LNG等のガス燃料や、軽油、灯油、重油等の液体燃料を使用するボイラーに、HHOガスとこれらの既存燃料を、それぞれ独立した噴射口から供給する。そして、同時に噴射着火させ、それぞれの燃料が燃焼した状態で混合させ、それぞれのガスの炎同士を混合させる。
【0070】
図3は、水性ガスと既存燃料を併用したバーナーの構成を説明するための図である。バーナー30は、1次ガス入力栓20、2次ガス入力栓21、逆火防止装置22、1次ガス調整用バルブ23、2次ガス調整用バルブ24、及びノズル25を備える。
【0071】
1次ガス入力栓20にHHOガスを、2次ガス入力栓21にLPG(液化石油ガス)を接続する。そして、1次ガス調整用バルブ23、2次ガス調整用バルブ24、をそれぞれ調整し、供給するガス量を、約50%ずつとする。HHOガスとLPGを混合燃焼させると、勢いのある炎となり、炎の先端部の温度は、600~800℃の範囲内まで上昇する。これは、LPG単独燃焼時に対し、2倍以上の温度であり、煤の発生などの不完全燃焼が生じない温度である。また、この方法では、LPG特有の臭いも発生しづらい。
【0072】
(2)第2乾燥装置
第2乾燥装置5は、水分量を70%以下に調整した有機物を膨張させる膨張手段6、及び加熱する加熱手段7を有する。また、システム100は、蒸気及び排水を、第2乾燥装置5から、酢酸資化性発酵槽16へ供給する第5供給手段を有することが好ましい。
【0073】
有機物を膨張させる方法及び手段は、例えば、減圧や加熱であるが、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。また、有機物を加熱する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。
本実施形態においては、装置内を減圧して、有機物を膨張させながら加熱することが好ましい。加熱方法は、第1乾燥装置の加熱方法を引き続き用いることが好ましい。
【0074】
水分量を70%以下に調整した有機物を、膨張させることが好ましい。有機物は、膨張することにより分解されやすくなる。特に、植物には、難分解性であるセルロースが豊富に含まれており、早い段階でセルロースを分解することにより、酢酸の生成効率を上げることができる。
【0075】
膨張圧力は、0.3~0.5MPaの範囲内であることが好ましく、0.5MPa程度であることがより好ましい。膨張時間は、40~60分の範囲内であることが好ましく、60分程度であることがより好ましい。
【0076】
一般的に、天然のデンプンの粒子は、そのままでは酵素作用を受けにくい。詳しくは、デンプンの粒子は、その分子が規則正しく配列して形成されており、水に不溶である。そのため、この状態では、酵素とデンプン分子とが結合しづらく、酵素作用を受けにくい。そこで、このデンプンの粒子を、水と共に加熱して糊化させ、ゲル状にすることが好ましい。糊化したデンプンの粒子は、規則性を失い、デンプンの分子の中に水が入り込んだ状態であるため、デンプンの分子の中に、酵素も入り込みやすくなる。
【0077】
そのため、水分量を70%以下に調整した有機物を、膨張させた後、加熱することにより、酵素作用を受けやすくすることができる。
加熱温度は、140~160℃の範囲内であることが好ましく、160℃程度であることがより好ましい。加熱時間は、40~60分の範囲内であることが好ましく、60分程度であることがより好ましい。
【0078】
第2乾燥装置5において、有機物の膨張と加熱は、同時に行うことが好ましい。
【0079】
有機物を膨張させ、加熱した後、蒸気及び排水を、第2乾燥装置5から、後述する酢酸資化性発酵槽16へ供給することが好ましい。蒸気及び排水の量は、特に制限されないが、例えば、蒸気と排水の合計量は200L程度であることが好ましい。
【0080】
(3)第3乾燥装置
第3乾燥装置8は、膨張及び加熱した有機物を冷却する。冷却手段9を有していてもよい。
有機物を冷却する方法及び手段は、例えば、外気による冷却が挙げられるが、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。
【0081】
膨張及び加熱した有機物は、冷却することが好ましい。膨張及び加熱した有機物を、次の破砕混合機器での操作に適した温度に、素早く冷却することが好ましい。また、素早く冷却することにより、有機物が更に膨張し、分解されやすい。
【0082】
冷却後の有機物の温度は、60~80℃の範囲内であることが好ましく、60℃程度であることがより好ましい。
【0083】
B)破砕混合機器
本実施形態のシステム100は、乾燥させた前記有機物を破砕し、複合微生物と混合する破砕混合機器10を有する。複合微生物は、酸生成菌、酢酸資化性メタン生成菌及び水素資化性メタン生成菌を含む。
なお、「破砕混合機器」とは、有機物を破砕し、有機物と複合微生物を混合する機器のことをいう。破砕と混合を同時に一括で行う機器であってもよいし、破砕する機器と混合する機器の組み合わせであってもよい。
【0084】
有機物を破砕する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。また、有機物と複合微生物を混合する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。破砕と混合は、同時に行ってもよいし、分けて行ってもよい。分けて行う場合は、有機物を破砕した後、有機物と複合微生物を混合することが好ましい。
【0085】
例えば、乾燥させた有機物1.3トンに、複合微生物を含むパウダー状のMP(種菌)を入れて混合する。MPの添加量は、特に制限されないが、乾燥させた有機物の全質量に対して、10~40質量%の範囲内であることが好ましく、30質量%程度であることがより好ましい。なお、この場合、30質量%のMPの体積は、約0.45m3である。また、MPは、複合微生物と、おがくずを混合させたものであり、そのC/N比(炭素と窒素の比率)は、30以下であることが好ましい。MPの添加量は、MPのC/N比に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0086】
MPの入手経路は、特に制限されないが、再利用の観点から、MPを戻し菌として、発酵残渣槽18から破砕混合機器10へ供給することが好ましい。出発物質である有機物を投入して最初の20日間は、MPをその都度添加するため、MPは、合計9トン必要である。その後は、発酵残渣からの戻し菌を用いることができる。
【0087】
C)3段階酸生成槽
本実施形態のシステム100は、酸生成槽を有する。発酵は、3段階の工程で行うことが好ましく、システムは、3段階酸生成槽11を有することが好ましい。
【0088】
3段階酸生成槽11では、三日間の滞留時間をもって、加水分解反応、酸の生成反応、及び酸の分解反応が生じる。酸の生成は、必ずしも第2槽13又は第3槽14で生じる必要はなく、第1槽12で生じてもよい。同様に、水素、二酸化炭素及び酢酸の生成は、必ずしも第3槽14で生じる必要はなく、第1槽12又は第2槽13で生じてもよい。ただし、槽内の圧力、温度、pH等の条件や、酵素の添加を、各槽で変えることにより、水素、二酸化炭素及び酢酸を効率よく生成できる。
【0089】
(1)第1槽
第1槽12は、複合微生物と混合した有機物を発酵させて、低分子有機物を生成する槽である。
【0090】
複合微生物(種菌)と有機物を、上記破砕混合機器10で混合しながら、第1槽12に入れる。槽内では、上記反応1が生じ、高分子有機物が、加水分解細菌(酵素)により、低分子有機物に、加水分解される。詳しくは、タンパク質は、アミノ酸に分解される。デンプンやセルロースなどの炭水化物は、糖類に分解される。脂質は、グリセロールと脂肪酸に分解される。
【0091】
有機物を加水分解する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。
【0092】
(2)第2槽
第2槽13は、低分子有機物を発酵させて、揮発性脂肪酸、水素及び二酸化炭素を生成する槽である。
【0093】
第2槽13内では、上記反応2が生じ、低分子有機物が、揮発性脂肪酸に分解される。詳しくは、アミノ酸は、スティックランド反応により、アンモニア及び揮発性脂肪酸に分解される。糖類は、ピルビン酸を経て、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸などの揮発性脂肪酸に分解される。
低分子有機物を発酵させて、揮発性脂肪酸を生成する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。
そして、上記反応3が生じ、揮発性脂肪酸が、水素、二酸化炭素及び酢酸に分解される。
揮発性脂肪酸を発酵させて、水素、二酸化炭素及び酢酸を生成する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。
【0094】
(3)第3槽
第3槽14は、未反応の低分子有機物及び揮発性脂肪酸を発酵させて、水素、二酸化炭素及び酢酸を生成する槽である。また、システム100は、水素及び二酸化炭素を、第3槽14から、水素資化性発酵槽15へ供給する第3供給手段を有することが好ましい。
【0095】
低分子有機物が分解されて揮発性脂肪酸が生成すると、それに応じて水素が蓄積するため、揮発性脂肪酸の分解反応が進行しづらくなる。そのため、生成した揮発性脂肪酸を第3槽14に移すことが好ましい。具体的には、第2槽13において、ある程度発酵が進行した有機物を、第3槽14に移し、引き続き、発酵を進行させることが好ましい。
したがって、第3槽14内では、引き続き、上記反応2及び3が生じ、未反応の低分子有機物及び有機酸が、水素、二酸化炭素及び酢酸に分解される。
【0096】
そして、生成された水素及び二酸化炭素を、第3槽14から、水素資化性発酵槽15へ供給することが好ましい。
【0097】
D)メタン発酵槽
本実施形態のシステム100は、発酵させた有機物を更に発酵させ、メタンを生成するメタン発酵槽17を有する。
【0098】
ここでの、「発酵させた有機物」とは、上記第3槽14で発酵した後、最終的に得られるもののことをいう。また、水素及び二酸化炭素を水素資化性発酵槽15へ供給する場合、「発酵させた有機物」とは、上記第3槽14で発酵した後、最終的に得られるもののうち、水素及び二酸化炭素を除いたもののことをいう。
【0099】
発酵させた有機物には、上記第3槽14で生成した酢酸が含まれる。また、発酵させた有機物には、分解が全く進行しなかった有機物や、分解が途中までしか進行しなかった中間生成物も含まれる。
発酵させた有機物は、混合しながらメタン発酵槽17へ供給することが好ましく、供給時に破砕混合機器10を用いてもよい。
【0100】
また、水素資化性メタン生成菌及びメタンを、水素資化性発酵槽15から、メタン発酵槽17へ供給することが好ましい。水素資化性メタン生成菌をメタン発酵槽17へ供給することにより、メタンの生成反応がより進行する。
【0101】
さらに、酢酸資化性メタン生成菌、酢酸及びメタンを、酢酸資化性発酵槽16から、メタン発酵槽17へ供給することが好ましい。メタン発酵槽17に含まれる酢酸の量が増加し、メタンの生成量が増加する。また、酢酸資化性メタン生成菌をメタン発酵槽17へ供給することにより、メタンの生成反応がより進行する。
【0102】
メタンを生成する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0103】
出発物質としての有機物を、1日当たり1.5トンずつ、本実施形態のシステム100に投入すると仮定する。メタン発酵槽17は、14~20日の範囲内で満杯になる大きさであることが好ましい。なお、発酵が進行すると、メタン発酵槽17には、発酵残渣が生成する。発酵残渣は、メタン発酵槽17に供給した、すなわち発酵させた有機物の、全質量に対して、40質量%程度にまで減少する。
【0104】
E)発酵残渣槽
本実施形態のシステム100は、発酵残渣を保管する発酵残渣槽18を有する。また、システム100は、粉炭を、発酵残渣槽18から、水性ガス生成手段4へ供給する第1供給手段を有することが好ましい。さらに、システム100は、複合微生物を、発酵残渣槽18から、破砕混合機器10へ供給する第2供給手段を有することが好ましい。
【0105】
上記メタン発酵槽17で生成した発酵残渣を、発酵残渣槽18で保管する。発酵残渣は、堆肥、粉炭又は複合微生物の戻し菌として再利用できる。発酵残渣の30質量%を、戻し菌として利用することが好ましく、発酵残渣の10質量%を、粉炭材料又は完熟堆肥として利用することが好ましい。発酵残渣を再利用することにより、発酵残渣を減容できる。
【0106】
発酵残渣を保管し、さらに、堆肥、粉炭又は複合微生物の戻し菌として処理する方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。なお、戻し菌としての処理は、嫌気性処理を行う。
【0107】
F)水素資化性発酵槽
本実施形態のシステム100は、水素資化性メタン生成菌によりメタンを生成する水素資化性発酵槽15を有する。また、システム100は、水素資化性メタン生成菌及びメタンを、水素資化性発酵槽15から、メタン発酵槽17へ供給する第4供給手段を有することが好ましい。
【0108】
水素資化性発酵槽15には、上記第3槽14で生成された水素及び二酸化炭素が供給される。水素資化性メタン生成菌は、水素資化性発酵槽15内で、水素、二酸化炭素、その他の栄養分により、培養され、メタンが生成する。培養方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。
【0109】
水素資化性発酵槽15は、3MPa程度の槽内の圧力に耐えられることが好ましい。また、槽内の温度を60℃前後で保つことが好ましい。
【0110】
G)酢酸資化性発酵槽
本実施形態のシステム100は、酢酸を生成し、更に酢酸資化性メタン生成菌によりメタンを生成する酢酸資化性発酵槽16を有する。また、システム100は、酢酸を、酢酸資化性発酵槽16から、メタン発酵槽17へ供給する第6供給手段を有することが好ましい。
【0111】
酢酸資化性発酵槽16には、上記第2乾燥装置5で生じた蒸気及び排水が供給される。蒸気及び排水に含まれる有機物は、酢酸資化性発酵槽16内で、酢酸等に分解される。酢酸への分解方法及び手段は、特に制限されず、従来公知の方法及び手段を用いることができる。酢酸資化性メタン生成菌は、酢酸資化性発酵槽16内で、培養される。また、一部の酢酸からメタンを生成する。
【0112】
酢酸資化性発酵槽16は、1日当たりに投入される出発物質としての有機物の量に対して、15~20倍の範囲内の容量を有することが好ましい。また、槽内の温度を30℃前後で保つことが好ましい。さらに、嫌気性処理をすることが好ましく、槽内を撹拌機で撹拌することが好ましい。
【0113】
以上より、本実施形態の乾式メタン発酵システム100は、有機物を3段階の工程で乾燥させる縦軸3段階乾燥装置1を有することにより、消費電力を低減でき、かつ発酵残渣を減容できることがわかる。
また、本実施形態の乾式メタン発酵方法は、有機物を3段階の工程で乾燥させ、有機物を発酵してメタンを生成することにより、消費電力を低減でき、かつ発酵残渣を減容できることがわかる。
【符号の説明】
【0114】
1 縦軸3段階乾燥装置
2 第1乾燥装置
3 水分量調整手段
4 水性ガス生成手段
5 第2乾燥装置
6 膨張手段
7 加熱手段
8 第3乾燥装置
9 冷却手段
10 破砕混合機器
11 3段階酸生成槽
12 第1槽
13 第2槽
14 第3槽
15 水素資化性発酵槽
16 酢酸資化性発酵槽
17 メタン発酵槽
18 発酵残渣槽
100 乾式メタン発酵システム