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特開2024-164404電動ポンプ装置、制御装置、および補正方法
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  • 特開-電動ポンプ装置、制御装置、および補正方法 図1
  • 特開-電動ポンプ装置、制御装置、および補正方法 図2
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  • 特開-電動ポンプ装置、制御装置、および補正方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164404
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電動ポンプ装置、制御装置、および補正方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/08 20160101AFI20241120BHJP
【FI】
H02P6/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079852
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 一浩
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560AA10
5H560DB00
5H560EB01
5H560GG03
5H560TT15
5H560TT20
5H560XA04
(57)【要約】
【課題】マイコンの動作クロックを補正し正確な情報を上位コントローラへ送信する。
【解決手段】電動オイルポンプ16と、モータ15と、ドライバ回路11と、制御装置13と、を備える。制御装置13は、制御装置13の動作クロックを発生させるための発振器132と、上位コントローラ1からのCAN通信による通信情報を基に動作クロックの補正値を算出し、モータ15からの情報を補正値により補正し、ドライバ回路11へ送信する演算部131と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を循環させるポンプと、
前記ポンプを駆動させるモータと、
上位コントローラとCAN(Controller Area Network)通信により信号を授受するためのドライバ回路と、
前記モータへ駆動信号を送信するとともに、前記モータからの情報を前記ドライバ回路へ送信する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記制御装置の動作クロックを発生させるための発振器と、
前記上位コントローラからのCAN通信による通信情報を基に前記動作クロックの補正値を算出し、前記モータからの情報を前記補正値により補正し、前記ドライバ回路へ送信する演算部と、を含む、電動ポンプ装置。
【請求項2】
前記通信情報は、前記上位コントローラからCAN通信によって前記制御装置に定期的に送信される前記モータへの指令回転速度に関する情報であり、
前記演算部は、前記通信情報の通信間隔を基に前記補正値を算出する、請求項1に記載の電動ポンプ装置。
【請求項3】
前記通信情報は、前記上位コントローラからCAN通信によって前記制御装置に不定期で送信される前記モータへの指令回転速度に関する情報と、送信時の時間に関する情報とを含み、
前記演算部は、前記送信時の時間に関する情報を基に前記補正値を算出する、請求項1に記載の電動ポンプ装置。
【請求項4】
前記動作クロックからカウント値を取得するフリーランカウンタをさらに備え、
前記演算部は、第1タイミングで前記通信情報を受信したときの前記フリーランカウンタにより取得した第1カウント値と、前記第1タイミングより前の第2タイミングで前記通信情報を受信したときの前記フリーランカウンタにより取得した第2カウント値との差から前記補正値を演算する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動ポンプ装置。
【請求項5】
前記モータからの情報として前記モータの回転角を検出するセンサをさらに備え、
前記演算部は、前記モータの回転角から補正前の前記モータの回転速度を演算し、演算した前記モータの回転速度に前記補正値を乗算することにより前記モータの回転速度を補正する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動ポンプ装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記動作クロックから前記通信情報の通信間隔に対応する第3カウント値を事前に取得し、前記補正値を{1+(前記第1カウント値-前記第2カウント値)-前記第3カウント値}÷前記第3カウント値から算出する、請求項4に記載の電動ポンプ装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記第1タイミングにおける前記上位コントローラからの前記送信時の時間に関する情報と、前記第2タイミングにおける前記上位コントローラからの前記送信時の時間に関する情報との差分に対応する第4カウント値を取得し、前記補正値を{1+(前記第1カウント値-前記第2カウント値)-前記第4カウント値}÷(前記第4カウント値)から算出する、請求項4に記載の電動ポンプ装置。
【請求項8】
モータと、上位コントローラとCAN通信により信号を授受するためのドライバ回路と、前記モータへ駆動信号を送信するとともに、前記モータからの情報を前記ドライバ回路へ送信する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記制御装置の動作クロックを発生させるための発振器と、
前記上位コントローラからのCAN通信による通信情報を基に前記動作クロックの補正値を算出し、前記モータからの情報を前記補正値により補正し、前記ドライバ回路へ送信する演算部と、を含む、制御装置。
【請求項9】
モータと、上位コントローラとCAN通信により信号を授受するためのドライバ回路と、前記モータへ駆動信号を送信するとともに、前記モータからの情報を前記ドライバ回路へ送信する制御装置による補正方法であって、
前記補正方法は、
前記制御装置の動作クロックを取得するステップと、
前記上位コントローラからのCAN通信による通信情報を基に前記動作クロックの補正値を算出するステップと、
前記モータからの情報を前記補正値により補正するステップと、
補正された情報を前記ドライバ回路へ送信するステップと、を含む、補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ポンプ装置、制御装置、および補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、電動モータによって駆動される電動オイルポンプ装置が搭載されているものがあった。この電動オイルポンプ装置には、例えば、特許第5275071号公報(特許文献1)に記載されているように、小型、長寿命の観点からブラシレスモータが採用されている。
【0003】
特許文献1の電動オイルポンプ装置は、ブラシレスモータを駆動するための制御信号として上位コントローラとパルス信号により通信し、故障情報を予めマップ化されたパルス信号の周波数に基づいて出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5275071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電動オイルポンプ装置では、上位コントローラと通信する際に、電動オイルポンプ装置に搭載されているマイコンであるMDU(Motor Drive Unit)の動作クロックの精度が悪い場合、電動オイルポンプの回転数が上位コントローラへ正確に伝わらないことがある。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、マイコンの動作クロックを補正し正確な情報を上位コントローラへ送信することが可能な電動ポンプ装置、制御装置、および補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電動ポンプ装置は、媒体を循環させるポンプと、ポンプを駆動させるモータと、上位コントローラとCAN(Controller Area Network)通信により信号を授受するためのドライバ回路と、モータへ駆動信号を送信するとともに、モータからの情報を前記ドライバ回路へ送信する制御装置と、を備える。制御装置は、制御装置の動作クロックを発生させるための発振器と、上位コントローラからのCAN通信による通信情報を基に動作クロックの補正値を算出し、モータからの情報を補正値により補正し、ドライバ回路へ送信する演算部と、を含む。
【0008】
本開示の制御装置は、モータと、上位コントローラとCAN通信により信号を授受するためのドライバ回路と、モータへ駆動信号を送信するとともに、モータからの情報をドライバ回路へ送信する制御装置に関する。制御装置は、制御装置の動作クロックを発生させるための発振器と、上位コントローラからのCAN通信による通信情報を基に動作クロックの補正値を算出し、モータからの情報を補正値により補正し、ドライバ回路へ送信する演算部と、を含む。
【0009】
本開示の制御装置による補正方法は、モータと、上位コントローラとCAN通信により信号を授受するためのドライバ回路と、モータへ駆動信号を送信するとともに、モータからの情報をドライバ回路へ送信する方法に関する。方法は、制御装置の動作クロックを取得するステップと、上位コントローラからのCAN通信による通信情報を基に動作クロックの補正値を算出するステップと、モータからの情報を補正値により補正するステップと、補正された情報をドライバ回路へ送信するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、上位コントローラからのCAN通信による通信情報を用いてマイコンの動作クロックを補正し正確な情報を上位コントローラへ送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1のオイルポンプシステムの構成を概略的に示す図である。
図2】上位コントローラから電動オイルポンプ装置に送信される信号を示す図である。
図3】制御装置が実行する補正処理を示すフローチャートである。
図4】実施の形態2において、上位コントローラから電動オイルポンプ装置に送信される信号を示す図である。
図5】本開示に係る電動オイルポンプ装置の構造を簡略化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されている。
【0013】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1のオイルポンプシステム100の構成を概略的に示す図である。オイルポンプシステム100は、上位コントローラ1と、電動オイルポンプ装置2とを備える。
【0014】
本開示においては、オイルを循環させる電動ポンプ装置の一例として電動オイルポンプ装置2について開示する。特に、電動オイルポンプ装置2は、上位コントローラ1からの指令回転速度に応じて、モータを回転させ、変速機にオイルを供給するための車載向け自動変速機用である。
【0015】
なお、電動オイルポンプ装置2は、車載向け自動変速機用に限定されず、また循環させる媒体もオイルに限定されない。循環させる媒体は、水、空気などであってもよく、媒体を循環させる電動ポンプ装置であれば本開示を適用することができる。
【0016】
上位コントローラ1は、例えばECU(Electronic Control Unit)またはPLC(Programmable Logic Controller)である。電動オイルポンプ装置2と上位コントローラ1とは、例えば、シリアル伝送形式の信号線により接続されている。上位コントローラ1と電動オイルポンプ装置2とは、CAN(Controller Area Network)通信により接続されている。
【0017】
図1に示すように、電動オイルポンプ装置2は、ドライバ回路11と、制御装置13と、インバータ14と、モータ15と、電動オイルポンプ16と、回転角センサ12とを備える。
【0018】
ドライバ回路11は、上位コントローラ1と制御装置13との間でCAN通信による信号を授受するための通信回路である。ドライバ回路11は、上位コントローラ1からのCAN通信による制御指令を制御装置13へ送信する。制御指令は、例えば、モータ15を駆動させるべき目標の回転速度(以下では、指令回転速度と称する。)を含む。ドライバ回路11は、制御装置13からの回転速度情報を上位コントローラ1へ送信する。回転速度情報は、モータ15が実際に回転している回転速度(以下では、実回転速度と称する。)の情報を含む。上位コントローラ1へ送信する情報として、モータ15、電動オイルポンプ16の故障情報等のその他の情報を含むようにしてもよい。
【0019】
制御装置13は、演算部131と、発振器132と、フリーランカウンタ133とを含む。演算部131は、ドライバ回路11を介して得られた制御指令に基づいてモータ15を駆動させるための演算処理を行なう。発振器132は、制御装置13であるマイコンの動作クロックを発生させる。発振器132は、動作クロックに±5%の誤差が発生する可能性がある。演算部131は、動作クロックの誤差を補正する処理を行なう。フリーランカウンタ133は、一定の周期でカウントアップするカウンタである。
【0020】
インバータ14は、直流電源(図示省略)から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ15に出力する。これにより、モータ15が駆動される。本実施の形態において、モータ15は、多相のブラシレスモータである。インバータ14は、モータ15のコイルの各相に応じた複数のスイッチング素子を有する。電動オイルポンプ16は、モータ15により駆動される。電動オイルポンプ16が駆動することにより、オイルが循環する。
【0021】
回転角センサ12は、モータ15の回転角を検出し、制御装置13へ出力する。制御装置13は、回転角センサ12により検出された回転角の変化速度からモータの回転速度を演算する。
【0022】
図2は、上位コントローラ1から電動オイルポンプ装置2へ送信される信号を示す図である。図2に示すように、上位コントローラ1からは、10ms毎にCAN通信により指定回転速度に関する情報が電動オイルポンプ装置2へ送信される。
【0023】
制御装置13は、事前に発振器132の動作クロックから10msのタイマカウントに対応するカウント値を演算しておく。制御装置13は、初回の指令回転速度を受信した後、2回目以降の指令回転速度の受信時のタイマカウントに対応するカウント値を取得する。指令回転速度の受信時のタイマカウントに対応するカウント値は、フリーランカウンタ133のカウント値を参照して取得する。
【0024】
次に、制御装置13が実行する補正処理について説明する。補正処理の演算は、演算部131において実行される。図3は、制御装置13が実行する補正処理を示すフローチャートである。図3の処理は、制御装置13の制御におけるメインルーチンから、サブルーチンとして繰返し呼び出されて実行される。
【0025】
制御装置13は、まず、マイコンの動作クロックから10msのタイマカウントに対応するカウント値を事前に取得する(ステップS1)。制御装置13は、例えば、発振器132から10MHzの動作クロックを発生させる場合、10msの間にカウント数が1000となるフリーランカウンタ133を用いてカウント値1000を取得する。
【0026】
次いで、制御装置13は、上位コントローラ1から送信されるCAN通信による指令回転速度を受信する(ステップS2)。制御装置13は、指令回転速度の受信時のタイマカウントに対応するカウント値を取得する(ステップS3)。指令回転速度の受信時のタイマカウントに対応するカウント値は、フリーランカウンタ133の値を参照して取得する。ステップS1からステップS3は、制御装置13が実行する受信処理である。
【0027】
次いで、制御装置13は、今回のタイマカウントに対応するカウント値から前回のタイマカウントに対応するカウント値を減算することにより10msのタイマカウントに対応するカウント値を算出する(ステップS4)。制御装置13は、例えば、ステップS4の処理により10msのタイマカウントに対応するカウント値を1050として算出する。
【0028】
次いで、制御装置13は、ステップS4で演算した10msのタイマカウントに対応するカウント値と、ステップS1において事前に算出した10msのタイマカウントに対応するカウント値とから補正値を取得する(ステップS5)。具体的に、制御装置13は、補正値=1+(10msタイマカウント-事前10msタイマカウント)÷事前10msタイマカウントとして補正値を算出する。制御装置13は、例えば、タイマカウントに対応するカウント値を用いた補正値の演算として1+(1050-1000)÷1000=1.05として補正値1.05を取得する。
【0029】
次いで、制御装置13は、回転角センサ12が検出するモータ15の回転角の変化速度からモータ15の回転速度を算出する(ステップS6)。ステップS6で算出する回転速度(実回転速度)は、誤差の可能性のある動作クロックを基に算出しているため補正が必要である。
【0030】
制御装置13は、ステップS6で演算した回転速度にステップS5で取得した補正値を乗算し、上位コントローラ1へ送信する送信回転速度を算出する(ステップS7)。ステップS7の処理により、回転速度の誤差が補正される。送信回転速度は、モータ15の回転速度を制御するための情報である。ステップS4からステップS7は、制御装置13の演算部131が実行する演算処理である。
【0031】
次いで、制御装置13は、ドライバ回路11にステップS7で算出した送信回転速度を送信し(ステップS8)、処理をサブルーチンからメインルーチンへ戻す。ドライバ回路11は、受信した送信回転速度を上位コントローラ1へ送信する。これにより、補正された送信回転速度に関する情報をドライバ回路11から上位コントローラ1へ送信することができる。ステップS8の処理は、制御装置13が実行する出力処理である。
【0032】
上位コントローラ1は、クロックの精度が高い。このため、上位コントローラ1から電動オイルポンプ装置2へ送信されるCAN通信による信号は、高い精度の通信間隔で送信される。本実施の形態の電動オイルポンプ装置2は、上位コントローラ1からCAN通信によって送信される指令回転速度を受信した際のタイマカウントに対応するカウント値を用いて補正値を算出し、算出した補正値を回転速度に乗算することによって、送信回転速度を算出する。
【0033】
このように、電動オイルポンプ装置2は、上位コントローラ1のCAN通信による情報を用いてマイコンの動作クロックを補正し誤差の少ない正確な情報を上位コントローラ1へ送信することができる。これによって、電動オイルポンプ装置2は、上位コントローラ1との間において指令回転速度と実回転速度との間における回転速度の誤差を少なくした制御を実行することが可能となる。このため、電動オイルポンプ装置2は、装置の振動、騒音を低減させ、応答性を向上させることができる。
【0034】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2において、上位コントローラ1から電動オイルポンプ装置2に送信される信号を示す図である。実施の形態2では、実施の形態1と異なりCAN通信の信号が不定期に送信される。ここで、実施の形態2の上位コントローラ1側には、電動オイルポンプ装置2のフリーランカウンタ133と同様の動作をするフリーランカウンタが設けられている。上位コントローラ1は、指定回転速度の送信時に送信時のフリーランカウンタのタイマカウントに対応するカウント値を取得する。
【0035】
図4に示すように、上位コントローラ1からは、CAN通信により指定回転速度に関する情報とともに送信時のタイマカウントに対応するカウント値に関する情報が送信される。制御装置13は、初回の指令回転速度とタイマカウントに対応するカウント値とを受信した後、2回目以降の指令回転速度の受信時のタイマカウントに対応するカウント値を取得する。指令回転速度の受信時のタイマカウントに対応するカウント値は、フリーランカウンタ133の値を参照して取得する。
【0036】
制御装置13は、上位コントローラ1から送信される送信時のタイマカウントに対応するカウント値を正とし、受信時のタイマカウントに対応するカウント値との誤差を補正する。具体的に、制御装置13は、正しい値として上位コントローラ1から送信される今回の送信時のタイマカウントに対応するカウント値から前回の送信時のタイマカウントに対応するカウント値を減算し、送信時のタイマカウントのカウント値の差分を算出する。
【0037】
制御装置13は、誤差のある値として電動オイルポンプ装置2側の動作クロックに基に算出される今回の受信時のタイマカウントに対応するカウント値から前回の受信時のタイマカウントに対応するカウント値を減算し、受信時のタイマカウントに対応するカウント値の差分を算出する。
【0038】
制御装置13は、補正値=1+(受信時タイマカウントに対応するカウント値の差分-送信時のタイマカウントのカウント値の差分)÷(送信時のタイマカウントのカウント値の差分)として補正値を算出する。このようにすれば、実施の形態1と同様に補正値を算出することができる。
【0039】
<電動オイルポンプ装置>
前述の電動オイルポンプ装置2の構造を簡略化して説明する。図5は、本開示に係る電動オイルポンプ装置2の構造を簡略化した図である。本開示に係る電動オイルポンプ装置2は、電動オイルポンプ16と、モータ15と、制御装置13と、回転角センサ12とが図5に示すように配置される。電動オイルポンプ16は、オイルを圧送する回転式ポンプである。モータ15は、電動オイルポンプ16を駆動する。制御装置13は、基板に実装される制御回路を含み、モータ15の駆動を制御する。回転角センサ12は、モータ15におけるロータの回転角を検出する。回転角センサ12の検出値は、制御装置13の制御回路に入力される。
【0040】
[付記]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0041】
(第1項)本開示は、電動ポンプ装置に関する。電動オイルポンプ装置2は、図1に示すように、媒体を循環させる電動オイルポンプ16と、電動オイルポンプ16を駆動させるモータ15と、上位コントローラ1とCAN(Controller Area Network)通信により信号を授受するためのドライバ回路11と、モータ15へ駆動信号を送信するとともに、モータ15からの情報をドライバ回路11へ送信する制御装置13と、を備える。制御装置13は、制御装置13の動作クロックを発生させるための発振器132と、上位コントローラ1からのCAN通信による通信情報を基に動作クロックの補正値を算出し、モータ15からの情報を補正値により補正し、ドライバ回路11へ送信する演算部131と、を含む。
【0042】
(第2項)第1項に記載の電動ポンプ装置の通信情報は、図2に示すように、上位コントローラ1からCAN通信によって制御装置13に定期的に送信されるモータ15への指令回転速度に関する情報である。演算部131は、通信情報の通信間隔を基に補正値を算出する。
【0043】
(第3項)第1項に記載の電動ポンプ装置の通信情報は、図4に示すように、上位コントローラ1からCAN通信によって制御装置13に不定期で送信されるモータへの指令回転速度に関する情報と、送信時の時間に関する情報とを含む。演算部131は、送信時の時間に関する情報を基に補正値を算出する。
【0044】
(第4項)第1項から第3項に記載の電動ポンプ装置は、図1に示すように、動作クロックからカウント値を取得するフリーランカウンタ133をさらに備える。演算部131は、第1タイミングで通信情報を受信したときのフリーランカウンタ133により取得した第1カウント値と、第1タイミングより前の第2タイミングで通信情報を受信したときのフリーランカウンタ133により取得した第2カウント値との差から補正値を演算する。
【0045】
(第5項)第1項から第4項に記載の電動ポンプ装置は、図1に示すように、モータ15からの情報としてモータ15の回転角を検出する回転角センサ12をさらに備える。演算部131は、モータ15の回転角からモータ15の回転速度を演算し、演算したモータ15の回転速度に補正値を乗算することによりモータ15の回転速度を補正する。
【0046】
(第6項)第4項に記載の電動ポンプ装置は、演算部131が、動作クロックから通信情報の通信間隔に対応する第3カウント値を事前に取得し、補正値を{1+(第1カウント値-第2カウント値)-第3カウント値}÷第3カウント値から算出する。
【0047】
(第7項)第4項に記載の電動ポンプ装置は、演算部131が、第1タイミングにおける上位コントローラ1からの送信時の時間に関する情報と、第2タイミングにおける上位コントローラ1からの送信時の時間に関する情報との差分に対応する第4カウント値を取得し、補正値を{1+(第1カウント値-第2カウント値)-第4カウント値}÷(第4カウント値)から算出する。
【0048】
(第8項)本開示は、モータ15と、上位コントローラ1とCAN通信により信号を授受するためのドライバ回路11と、モータ15へ駆動信号を送信するとともに、モータ15からの情報をドライバ回路11へ送信する制御装置13に関する。制御装置13は、制御装置13の動作クロックを発生させるための発振器132と、上位コントローラ1からのCAN通信による通信情報を基に動作クロックの補正値を算出し、モータ15からの情報を補正値により補正し、ドライバ回路11へ送信する演算部131と、を含む。
【0049】
(第9項)本開示は、モータ15と、上位コントローラとCAN通信により信号を授受するためのドライバ回路11と、モータ15へ駆動信号を送信するとともに、モータ15からの情報をドライバ回路11へ送信する制御装置13による補正方法に関する。方法は、制御装置13の動作クロックを取得するステップと、上位コントローラ1からのCAN通信による通信情報を基に動作クロックの補正値を算出するステップと、モータ15からの情報を補正値により補正するステップと、補正された情報をドライバ回路11へ送信するステップと、を含む。
【0050】
以上説明した実施の形態の電動オイルポンプ装置2、制御装置13、および補正方法によれば、マイコンの動作クロックを補正し正確な情報を上位コントローラ1へ送信することができる。
【0051】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 上位コントローラ、2 電動オイルポンプ装置、11 ドライバ回路、12 回転角センサ、13 制御装置、14 インバータ、15 モータ、16 電動オイルポンプ、17 インナロータ、18 アウタロータ、21 電子部品、22 実装面、23 コネクタ、30 ハウジング、31 ハウジング本体、32 第一蓋部、33 第二蓋部、34 ポンプ収容部、35 モータ収容部、36 コントローラ収容部、37 ポンプ室、38 吸入ポート、39 吐出ポート、41 取り付け部、51 吸入管路、52 吐出管路、53 吸入口、54 吐出口、61 ステータ、62 ロータ、63 出力軸、73 サブ基板、100 オイルポンプシステム、131 演算部、132 発振器、133 フリーランカウンタ。
図1
図2
図3
図4
図5