(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164409
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241120BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241120BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20241120BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20241120BHJP
H01F 27/10 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
H01F27/28 K
H01F27/24 W
H01F30/10 M
H01F30/10 C
H01F30/10 A
H01F27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079860
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 佳
【テーマコード(参考)】
5E043
5E050
5H730
【Fターム(参考)】
5E043AA03
5E043AB02
5E043BA01
5E043BA03
5E050CA01
5E050JA01
5H730AA15
5H730AS17
5H730BB27
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE07
5H730EE08
5H730FG01
5H730ZZ07
5H730ZZ16
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減しつつ、小型化及び低コスト化した電力変換装置を得ること。
【解決手段】磁気回路を形成する鉄心と、鉄心に巻回された一次側コイルと、一次側コイルと磁気結合し、鉄心に巻回された二次側コイルと、二次側コイルに電気的に接続され、鉄心に巻回された平滑コイルと、を備え、鉄心は、第一鉄心と、第一鉄心と対向し、第一鉄心とは間隔を空けて配置された第二鉄心と、第一鉄心と第二鉄心の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚と、中央脚とは離間して第一鉄心と第二鉄心の対向したそれぞれ端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、一次側コイル及び二次側コイルは、第一の側脚に巻回され、平滑コイルは、第二の側脚に巻回され、中央脚に、一次側コイル、二次側コイル、及び平滑コイルの共通の磁路が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路を形成する鉄心と、
前記鉄心に巻回された一次側コイルと、
前記一次側コイルと磁気結合し、前記鉄心に巻回された二次側コイルと、
前記二次側コイルに電気的に接続され、前記鉄心に巻回された平滑コイルと、を備え、
前記鉄心は、第一鉄心と、前記第一鉄心と対向し、前記第一鉄心とは間隔を空けて配置された第二鉄心と、前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚と、前記中央脚とは離間して前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれ端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、
前記一次側コイル及び前記二次側コイルは、第一の前記側脚に巻回され、
前記平滑コイルは、第二の前記側脚に巻回され、
前記中央脚に、前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの共通の磁路が形成されている電力変換装置。
【請求項2】
磁気回路を形成する鉄心と、
前記鉄心に巻回された一次側コイルと、
前記一次側コイルと磁気結合し、前記鉄心に巻回された二次側コイルと、
前記二次側コイルに電気的に接続され、前記鉄心に巻回された平滑コイルと、を備え、
前記鉄心は、第一鉄心と、前記第一鉄心と対向し、前記第一鉄心とは間隔を空けて配置された第二鉄心と、前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚と、前記中央脚とは離間して前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれの端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、
前記一次側コイル及び前記二次側コイルは、第一の前記側脚に巻回され、
前記平滑コイルは、前記中央脚に巻回され、
第二の前記側脚に、前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの共通の磁路が形成されている電力変換装置。
【請求項3】
前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルのそれぞれは、平面上を湾曲した板状に形成されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
複数の半導体スイッチング素子を有し、直流電力と交流電力とを変換する電力変換回路をさらに備え、
前記一次側コイルは、前記電力変換回路の出力側に電気的に接続され、
前記電力変換回路は、前記複数の半導体スイッチング素子のオンオフデューティ比を変化させることにより出力電力を調整するハードスイッチング方式を用いた回路である請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記中央脚は、前記中央脚の部分に間隔を空けたギャップ部を有していない請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第二の側脚は、前記第二の側脚の部分に間隔を空けたギャップ部を有していない請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記中央脚の断面積は、前記複数の側脚の断面積の和よりも小さい請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第二の側脚の断面積は、前記第二の側脚を除く前記複数の側脚及び前記中央脚の断面積の和よりも小さい請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記中央脚は、隣接して配置された前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルのそれぞれと間隔を空けて配置され、
前記中央脚の側面は、前記中央脚の側面に対向した前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルのそれぞれの側面形状に沿った形状を有している請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第二の側脚は、隣接して配置された前記平滑コイルと間隔を空けて配置され、
前記第二の側脚の側面は、前記第二の側脚の側面に対向した前記平滑コイルの側面形状に沿った形状を有している請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記平滑コイルの磁束が鎖交する前記第一鉄心及び前記第二鉄心の一方又は双方の部分の厚みは、前記一次側コイル及び前記二次側コイルの磁束が鎖交する前記第一鉄心及び前記第二鉄心のそれぞれの厚みよりも厚い請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記鉄心は、フェライトからなる請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項13】
複数の整流素子を有し、前記二次側コイルに電気的に接続された整流回路をさらに備え、
前記複数の整流素子のそれぞれのアノード端子は、接地されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記二次側コイルと前記平滑コイルとは、並べて配置されて、一体化部により電気的及び機械的に結合された一体コイル部材とされている請求項13に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記二次側コイルの巻き数は、前記一次側コイルの巻き数よりも少ない請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの何れかが巻回され、前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの共通の磁路が形成されていない前記中央脚及び前記複数の側脚の何れかの部分は、間隔を空けたギャップ部を有し、
前記ギャップ部にスペーサ部材が挿入されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項17】
凹部を有した冷却器をさらに備え、
前記第二鉄心の前記第一鉄心とは反対側の部分は、前記凹部の底部と熱的に接続され、
前記一次側コイル又は前記二次側コイルと、前記平滑コイルとは、前記凹部の開口を取り囲む前記冷却器の部分と熱的に接続されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項18】
前記複数の側脚である第三の前記側脚、及び第四の前記側脚が設けられ、
前記第一の側脚、前記第二の側脚、前記第三の側脚、及び前記第四の側脚のそれぞれは、前記中央脚とは離間して、前記中央脚を取り囲んで配置され、
前記一次側コイル及び前記二次側コイルは、前記第三の側脚に巻回され、
前記平滑コイルは、前記第四の側脚に巻回されている請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車を取りまく環境規制及び技術の進歩により、さまざまな車格において電気自動車又はハイブリット自動車が開発され、普及が進んでいる。ハイブリッド自動車又は電気自動車のように、駆動源にモータが用いられている電動化車両には、複数の電力変換装置が搭載されている。電力変換装置は、入力電流を直流から交流、交流から直流、又は入力電圧を異なる電圧に変換する装置である。電力変換装置には、鉄心と巻線とを備えた複数の磁気部品が用いられている。電動化車両に搭載される電力変換装置として、具体的には、商用の交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリに充電する充電器、高電圧バッテリの直流電力を異なる電圧の直流電力に変換するDC/DCコンバータ、高電圧バッテリからの直流電力をモータへの交流電力に変換するインバータ等が挙げられる。
【0003】
DC/DCコンバータは、例えば、高電圧のリチウムイオンバッテリから低電圧の鉛バッテリを充電するために電動化車両に搭載されている。高電圧から周囲を保護するため、高電圧のリチウムイオンバッテリはシャーシ及び低電圧系統からは絶縁されている。DC/DCコンバータにおいても、一般的には絶縁トランスにより、高電圧の入力側と低電圧の出力側との絶縁が必要となる。DC/DCコンバータでは、直流の入力電圧を半導体素子等でスイッチングし、交流等の信号に変換して絶縁トランスの一次側に入力する。絶縁トランスの二次側の出力は、半導体素子等で整流し、平滑リアクトルにて平滑化した後、直流の出力電圧としてDC/DCコンバータから出力される。
【0004】
電気自動車又はハイブリッド自動車に搭載される絶縁型DC/DCコンバータは、kWクラス以上となることが一般的である。そのため、絶縁トランスと平滑リアクトルは大型化し、発熱しやすくなっている。また、絶縁トランス及び平滑リアクトルなどの磁気部品を複数有した絶縁型DC/DCコンバータでは、それぞれの部品を固定するための固定部品が必要になるため、部品点数が多くなっていた。部品点数を削減した電力変換装置の構成が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、鉄心が中央脚と側脚とを有し、ギャップ部を設けた中央脚に平滑リアクトルの巻線が巻回され、側脚に絶縁トランスの巻線が巻回されている。絶縁トランスと平滑リアクトルとを一体化することで、電力変換装置を小型化し、電力変換装置の部品点数が削減されいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、電動化車両に用いられるDC/DCコンバータの二次側では、数100A前後以上の電流が必要なことが多い。そのため、絶縁トランス及び平滑リアクトルは、平板状の巻線を用いたプレーナ型とすることが一般的である。プレーナ型にすることで、巻線の断面積を拡大して損失を低減し、放熱性を向上させて、コイルの温度上昇を低減することができる。しかしながら、プレーナ型は、巻線部分の投影面積が大きくなる。プレーナ型で特許文献1の構成を形成した場合、隣接した中央脚及び側脚のそれぞれに平板状の巻線を配置することになるため、絶縁トランスと平滑リアクトルとを一体化した電力変換装置の投影面積が増大するので、電力変換装置が大型化するという課題があった。また、中央脚に設けた平滑リアクトルは、外鉄式の構成である。そのため、平滑リアクトルの巻線の露出部分が少なく、巻線の冷却が十分に行えないため、熱成立の制約により電力変換装置が大型化するという課題があった。また、鉄心の中央脚と一方の側脚との間、及び鉄心の中央脚と他方の側脚との間のそれぞれに2枚、合計4枚分の平板状の巻線が並ぶ領域を確保する必要があるため、鉄心が大型化するので、電力変換装置のコストが増加し、電力変換装置が大型化するという課題があった。
【0007】
また、絶縁トランスの一次側巻線が半導体スイッチング素子を有した電力変換回路に接続されている場合で、特に、電力変換回路が一次側の半導体スイッチング素子のオンオフデューティ比を変化させることにより出力電圧を調整するハードスイッチング方式の回路構成の場合には、一次側の半導体スイッチング素子がオンからオフに切り替わる際に発生する絶縁トランスの漏れインダクタンスと一次側の半導体スイッチング素子の共振による振動により、絶縁トランスの一次側巻線及び二次側巻線に高い周波数の電流が流れる。絶縁トランスに高い周波数の電流が流れるため、絶縁トランスの発熱量が増加するので、熱成立のために各巻線は大型化する。各巻線は大型化するので、大型化した各巻線が中央脚及び側脚に隣接して並ぶため、電力変換装置が大型化するという課題があった。
【0008】
また、絶縁トランスの漏れインダクタンスと一次側の半導体スイッチング素子の共振による振動により鉄心も発熱する。平板状の巻線が隣接しているため、その中心軸となる中央脚と側脚は離間しており、特に、低コスト化を目的として、鉄心の底面側のみが冷却器と熱的に接続された構成の場合には、中央脚及び側脚を介した鉄心の天面側と底面側の冷却パスの熱抵抗が大きくなる。鉄心の熱成立のために、鉄心が大型化するので、電力変換装置のコストが増加し、電力変換装置が大型化するという課題があった。
【0009】
そこで、本願は、部品点数を削減しつつ、小型化及び低コスト化した電力変換装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される電力変換装置は、磁気回路を形成する鉄心と、鉄心に巻回された一次側コイルと、一次側コイルと磁気結合し、鉄心に巻回された二次側コイルと、二次側コイルに電気的に接続され、鉄心に巻回された平滑コイルと、を備え、鉄心は、第一鉄心と、第一鉄心と対向し、第一鉄心とは間隔を空けて配置された第二鉄心と、第一鉄心と第二鉄心の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚と、中央脚とは離間して第一鉄心と第二鉄心の対向したそれぞれ端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、一次側コイル及び二次側コイルは、第一の側脚に巻回され、平滑コイルは、第二の側脚に巻回され、中央脚に、一次側コイル、二次側コイル、及び平滑コイルの共通の磁路が形成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される電力変換装置によれば、鉄心が、第一鉄心と、第一鉄心と対向し、第一鉄心とは間隔を空けて配置された第二鉄心と、第一鉄心と第二鉄心の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚と、中央脚とは離間して第一鉄心と第二鉄心の対向したそれぞれ端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、一次側コイル及び二次側コイルが、第一の側脚に巻回され、平滑コイルが、第二の側脚に巻回され、中央脚に、一次側コイル、二次側コイル、及び平滑コイルの共通の磁路が形成されているため、中央脚と第一の側脚の間には絶縁トランスの巻線のみとなり、中央脚と第二の側脚との間には平滑リアクトルの巻線のみとなるので、中央脚と第一の側脚との間、及び中央脚と第二の側脚との間のそれぞれに確保すべき巻線の領域を低減することができる。中央脚と第一の側脚との間、及び中央脚と第二の側脚との間のそれぞれに確保すべき巻線の領域が低減されるので、絶縁トランスと平滑リアクトルとを統合して部品点数を削減しつつ、鉄心を小型化及び低コスト化することができる。鉄心が小型化及び低コスト化されるので、電力変換装置を小型化及び低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力変換装置の磁気部品の構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る電力変換装置の回路の動作を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る電力変換装置の磁気部品に発生する磁束を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る電力変換装置の回路の動作を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る電力変換装置の回路の動作を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る電力変換装置の磁気部品に発生する磁束を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る電力変換装置の磁気部品の概略を示す分解斜視図である。
【
図9】実施の形態1に係る電力変換装置の磁気部品と冷却器の概略を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係る電力変換装置の回路の動作を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係る電力変換装置の回路の動作を示す図である。
【
図12】実施の形態1に係る電力変換装置の回路の動作波形を示す図である。
【
図13】実施の形態2に係る電力変換装置の要部の概略を示す平面図である。
【
図14】実施の形態3に係る電力変換装置の要部の概略を示す図である。
【
図15】実施の形態4に係る電力変換装置の磁気部品の概略を示す図である。
【
図16】実施の形態5に係る電力変換装置の要部の概略を示す図である。
【
図17】実施の形態6に係る電力変換装置の磁気部品の構成を示す図である。
【
図18】実施の形態6に係る電力変換装置の別の磁気部品の構成を示す図である。
【
図19】実施の形態7に係る電力変換装置の磁気部品の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願の実施の形態による電力変換装置を図に基づいて説明する。なお、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電力変換装置100の回路構成の例を示す図、
図2は電力変換装置100の磁気部品90である絶縁トランス3と平滑リアクトル5の構成を示す模式図、
図3、
図5、
図6、
図10、
図11は電力変換装置100の回路の動作を示す図で、回路に流れる電流の経路を示した図、
図4、
図7は電力変換装置100の磁気部品90に発生する磁束を示す図で、鉄心300における磁束の向きを示した図、
図8は電力変換装置100の磁気部品90の概略を示す分解斜視図、
図9は電力変換装置100の磁気部品90と冷却器401の概略を示す図、
図12は電力変換装置100の回路の動作波形を示す図である。電力変換装置100は、直流電源1の入力電圧Vinを絶縁トランス3で絶縁された二次側直流電圧に変換して、バッテリ等の負荷に出力電圧Voutを出力するDC/DCコンバータである。電力変換装置100はDC/DCコンバータに限るものではない。
【0015】
<電力変換装置100>
電力変換装置100の回路構成の例を、
図1により説明する。
図1において、左側が入力側、右側が出力側である。電力変換装置100の入力側には直流電源1が接続され、出力側には低電圧バッテリなどの負荷(図示せず)が接続される。本実施の形態では、
図1に示した絶縁トランス3及び平滑リアクトル5の具体的な構成を電力変換装置100として説明するが、電力変換装置100は、フルブリッジ回路2、整流回路4、平滑コンデンサ6を備えた構成であっても構わない。電力変換装置100は、直流電源1に接続され、複数の半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dを有し、入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するフルブリッジ回路2と、フルブリッジ回路2から出力された交流電力の電圧を変換して出力する、絶縁トランス3と、絶縁トランス3の出力を整流する整流ダイオード4a、4bを有した整流回路4と、絶縁トランス3の出力を平滑化する平滑リアクトル5及び平滑コンデンサ6と、を備える。絶縁トランス3の出力は、平滑リアクトル5及び平滑コンデンサ6を介して、負荷7へ出力電圧Voutとして出力される。
【0016】
フルブリッジ回路2は、複数の半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dを有する。本実施の形態では、フルブリッジ回路2は、4つの半導体スイッチング素子を有するが、半導体スイッチング素子の個数はこれに限るものではない。半導体スイッチング素子は、例えば、ソース・ドレイン間にダイオードが内蔵されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。なお、半導体スイッチング素子は、MOSFETに限るものではなく、ダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の自己消弧型半導体スイッチング素子でも構わない。半導体スイッチング素子は、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、もしくは窒化ガリウム(GaN)などの半導体材料からなる半導体基板に形成される。SiC、GaNなどからなるワイドバンドギャップ半導体を半導体スイッチング素子に用いても構わない。
【0017】
絶縁トランス3は、一次側コイル3a、及び二次側コイル3b、3cを有する。一次側コイル3aは、一次側コイル3aの端部に一次側端子31、32を有する。一次側端子31、32は、フルブリッジ回路2の出力側に接続される。二次側コイル3bは、二次側コイル3bの端部に、センタータップ端子34、二次側端子33を有する。二次側コイル3cは、二次側コイル3cの端部に、センタータップ端子34、二次側端子35を有する。センタータップ端子34は、平滑リアクトル5に接続される。
【0018】
整流回路4は、半導体素子からなる整流素子である整流ダイオード4a、4bを有する。二次側端子33、35のそれぞれは、整流ダイオード4a、4bのそれぞれのカソードに接続される。本実施の形態では、整流ダイオードを二つ有し、それぞれ一つのダイオードで示しているが、二つ以上を並列に接続したダイオードであっても構わない。また、整流素子として、MOSFET等の自己消弧型半導体スイッチング素子を用いても構わない。平滑リアクトル5は、平滑コイル5aを有する。平滑コイル5aは、平滑コイル5aの端部にリアクトル端子51、52を有する。リアクトル端子51はセンタータップ端子34に接続され、リアクトル端子52は平滑コンデンサ6及び負荷7と接続される。
【0019】
直流電源1は、例えば、電解コンデンサである。直流電源1の前段にAC/DCコンバータ等の電力変換器が接続された構成であっても構わない。また、一次側回路として、フルブリッジ回路2の例を示したが、ハーフブリッジ又はフォワードコンバータのような直流電圧を交流電圧に変換する回路であれば、他の回路構成であっても構わない。また、二次側回路として、センタータップ整流回路の例を示したが、フルブリッジ整流回路のように、交流電圧を整流できる回路であれば、他の回路構成であっても構わない。また、本実施の形態では、センタータップ整流回路は、整流ダイオード4a、4bのアノード端子が接地されている構成である。これに限るものではなく、絶縁トランス3の二次側端子33、35のそれぞれが整流ダイオード4a、4bのアノード端子のそれぞれに接続され、整流ダイオード4a、4bのカソード端子を平滑リアクトル5に接続し、絶縁トランス3のセンタータップ端子34を接地する構成としても構わない。
【0020】
<絶縁トランス3、平滑リアクトル5>
本願の要部である、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5が統合された構成について、
図2を用いて説明する。電力変換装置100は、磁気回路を形成する鉄心300と、鉄心300に巻回された一次側コイル3aと、一次側コイル3aと磁気結合し、鉄心300に巻回された二次側コイル3b、3cと、二次側コイル3b、3cに電気的に接続され、鉄心300に巻回された平滑コイル5aと、を備える。鉄心300に巻回された一次側コイル3a、及び二次側コイル3b、3cの部分から絶縁トランス3が形成され、鉄心300に巻回された平滑コイル5aの部分から平滑リアクトル5が形成される。
【0021】
鉄心300は、第一鉄心301と、第一鉄心301と対向し、第一鉄心301とは間隔を空けて配置された第二鉄心302と、第一鉄心301と第二鉄心302の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚312と、中央脚312とは離間して第一鉄心301と第二鉄心302の対向したそれぞれ端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有する。本実施の形態では、鉄心300は2つの側脚を有し、それぞれの側脚は、第一の側脚311、第二の側脚313である。側脚の数はこれに限るものではない。また本実施の形態では、鉄心300はE型に分割されており、分割面に対して2つの鉄心は対称な形状に形成されている。分割された2つのE型の鉄心を組み合わせることで、中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313が形成される。鉄心300はE型に分割されているがこれに限るものではなく、E型とI型に分割されていても構わない。鉄心300をE型とI型に分割した場合、E型の鉄心に中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313を設け、I型の鉄心にはこれらの脚部を設けず、I型の鉄心は棒状の形状に形成される。また本実施の形態では、第二の側脚313にギャップ部321を設けている。
【0022】
一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cは、第一の側脚311に巻回され、平滑コイル5aは、第二の側脚313に巻回され、中央脚312に、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aの共通の磁路が形成されている。
【0023】
このように構成することで、中央脚312と第一の側脚311との間には絶縁トランス3の巻線のみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間には平滑リアクトル5の巻線のみとなる。引用文献1に記載された構成では、中央脚と側脚との間には、絶縁トランスの巻線と平滑リアクトルの巻線の双方が設けられていた。中央脚312と第一の側脚311との間には絶縁トランス3の巻線のみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間には平滑リアクトル5の巻線のみとなるため、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間のそれぞれに確保すべき巻線の領域が低減されるので、絶縁トランス3と平滑リアクトル5とを統合して部品点数を削減しつつ、鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。鉄心300が小型化及び低コスト化されるので、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0024】
また、絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路を共有する鉄心の断面積は、絶縁トランス3が飽和しないための断面積と平滑リアクトル5が飽和しないための断面積が必要となるが、絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路を共有する鉄心は中央脚312のみであるため、磁路を共有するための鉄心の断面積の増加領域を最小限にし、鉄心300の体積を抑制して、鉄心300を低コスト化することができる。
【0025】
<DC/DCコンバータの動作>
図3から
図7を用いて、DC/DCコンバータの動作について説明する。
図3に示すように、最初に、半導体スイッチング素子2a、2dがオンする期間、半導体スイッチング素子2b、2cはオフし、直流電源1から半導体スイッチング素子2a、絶縁トランス3の一次側コイル3a、半導体スイッチング素子2dの順に電流が流れる。同時に二次側には、絶縁トランス3の二次側コイル3c、平滑リアクトル5、負荷7、整流ダイオード4bの順に電流が流れる。この動作時に、鉄心300に生じた磁束の向きを
図4により説明する。
図4では矢印で磁束の向き(磁束41、42、43、61、62、63)を示す。絶縁トランス3の磁束は、一次側コイル3aが巻回されている第一の側脚311(磁束41)から、第一鉄心301、中央脚312を通り(磁束42)、第二鉄心302を経由して(磁束43)、第一の側脚311に戻る。また、平滑リアクトル5の磁束は、平滑コイル5aが巻回されている第二の側脚313(磁束61)から、第一鉄心301、中央脚312を通り(磁束62)、第二鉄心302を経由して(磁束63)、第二の側脚313に戻る。
【0026】
次に、
図5に示すように、半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dがオフし、一次側には電流が流れず、二次側に、整流ダイオード4a、4b、絶縁トランス3の二次側コイル3b、3c、平滑リアクトル5、負荷7の順に電流が流れる。このとき、絶縁トランス3の一次側コイル3aには、電圧が印加されないため、絶縁トランス3の鉄心300に生じる磁束の向きは、
図4に示した磁束の向きと同じである。また、絶縁トランス3の二次側コイル3b、3cに電圧が印加されないため、平滑リアクトル5には、負荷7の電圧が印加され、平滑リアクトル5の鉄心300の磁束は漸減するものの、平滑コイル5aに流れる電流の方向は変わらないため、平滑リアクトル5の鉄心300に生じる磁束の向きは
図4に示した磁束の向きと同じである。
【0027】
次に、
図6に示すように、半導体スイッチング素子2b、2cがオンする期間、半導体スイッチング素子2a、2dはオフし、直流電源1から半導体スイッチング素子2c、絶縁トランス3の一次側コイル3a、半導体スイッチング素子2bの順に電流が流れる。同時に二次側には、絶縁トランス3の二次側コイル3b、平滑リアクトル5、負荷7、整流ダイオード4aの順に電流が流れる。この動作時に、鉄心300に生じた磁束の向きを
図7により説明する。
図7では矢印で磁束の向き(磁束44、45、46、64、65、66)を示す。絶縁トランス3の磁束は、一次側コイル3aが巻回されている第一の側脚311(磁束44)から、第二鉄心302、中央脚312を通り(磁束45)、第一鉄心301を経由して(磁束46)、第一の側脚311に戻る。また、平滑リアクトル5の磁束は、平滑コイル5aが巻回されている第二の側脚313(磁束64)から、第一鉄心301、中央脚312を通り(磁束65)、第二鉄心302を経由して(磁束66)、第二の側脚313に戻る。
【0028】
次に、
図5に示すように、半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dがオフし、一次側には電流が流れず、二次側に、整流ダイオード4a、4b、絶縁トランス3の二次側コイル3b、3c、平滑リアクトル5、負荷7の順に電流が流れる。このとき、絶縁トランス3の一次側コイル3aには、電圧が印加されないため、絶縁トランス3の鉄心300に生じる磁束の向きは、
図7に示した磁束の向きと同じである。また、絶縁トランス3の二次側コイル3b、3cに電圧が印加されないため、平滑リアクトル5には、負荷7の電圧が印加され、平滑リアクトル5の鉄心300の磁束は漸減するものの、平滑コイル5aに流れる電流の方向は変わらないため、平滑リアクトル5の鉄心300に生じる磁束の向きは
図7に示した磁束の向きと同じである。
【0029】
以上の通り、半導体スイッチング素子2a、2dを同時にオンオフし、半導体スイッチング素子2b、2cを同時にオンオフし、半導体スイッチング素子2a、2dがONもしくは半導体スイッチング素子2b、2cがONである期間と、半導体スイッチング素子2a~2dがOFFする期間の割合を調整することで、出力電圧Voutを調整することができる。
【0030】
<絶縁トランス3、平滑リアクトル5の構造>
図8を用いて、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5の具体的な構造について説明する。
図2と対応する箇所は同じ符号を用いる。第一鉄心301を図の上側に配置し、第二鉄心302を図の下側に配置している。第一鉄心301と第二鉄心302との間に、中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313が設けられる。本実施の形態では、中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313は、円柱状である。中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313の形状は円柱状に限るものではない。
【0031】
第一の側脚311には、第二鉄心302の側から順に、二次側コイル3c、一次側コイル3a1、二次側コイル3b、一次側コイル3a2が配置される。本実施の形態では、一次側コイル3a1、3a2はそれぞれ3ターン、二次側コイル3b、3cはそれぞれ1ターンが形成されている。各コイルのターン数は、これに限るものではない。一次側コイル3a1の内側端子36と、一次側コイル3a2の内側端子37とを接続することで、6ターンの一次側コイル3aが形成される。本実施の形態は、一次側コイル3aが6ターンの例であり、一次側コイル3aの投影面積の増加を抑制するために、一次側コイル3aを一次側コイル3a1,3a2に分割している。一次側コイル3aは、一次側端子31から一次側コイル3a1にて3ターンされ、一次側コイル3a1の巻回部の内側端子36にて、一次側コイル3a2の巻回部の内側端子37に接続され、一次側コイル3a2にて3ターンされ、一次側端子32に至る構成である。
【0032】
二次側コイル3b、3cは、二次側端子33から二次側コイル3bにて1ターンされ、センタータップ端子34aにて、二次側コイル3cのセンタータップ端子34bに接続され、二次側コイル3cにて1ターンされ、二次側端子35に至る構成である。センタータップ端子34a、34bの接続は、センタータップ端子34a、34bの少なくとも一方が他方に近づく曲げ構造を有して双方を接続してもよいし、絶縁トランス3の外部に、例えば、バスバー等の別部材を設けて双方を接続しても構わない。なお、巻回部の内側端子36、37、及びセンタータップ端子34a、34bの接続は、例えば、TIG溶接、又はネジによる締結である。センタータップ端子34a、34bの接続により、
図1に示したセンタータップ端子34が形成される。
【0033】
第二の側脚313には、第二鉄心302の側から順に、平滑コイル5a2、平滑コイル5a1が配置される。本実施の形態では、平滑コイル5a1、5a2はそれぞれ1ターンが形成されている。各平滑コイルのターン数は、これに限るものではない。平滑コイル5a1の接続端子53aと、平滑コイル5a2の接続端子53bとを接続することで、2ターンの平滑コイル5aが形成される。本実施の形態は、平滑コイル5aが2ターンの例である。平滑コイル5aは、リアクトル端子51から平滑コイル5a1にて1ターンされ、接続端子53aにて、平滑コイル5a2の接続端子53bに接続され、平滑コイル5a2にて1ターンされ、リアクトル端子52に至る構成である。接続端子53a、53bの接続は、接続端子53a、53bの少なくとも一方が他方に近づく曲げ構造を有して双方を接続してもよいし、平滑リアクトル5の外部に、例えば、バスバー等の別部材を設けて双方を接続しても構わない。なお、接続端子53a、53bの接続は、例えば、TIG溶接、又はネジによる締結である。
【0034】
本実施の形態では、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aのそれぞれは、平面上を湾曲した板状に形成されている。絶縁トランス3及び平滑リアクトル5は、平板状のコイルを用いるプレーナ型である。プレーナ型にすることで、コイルの断面積を拡大して損失を低減し、放熱性を向上させて、コイルの温度上昇を低減することができる。コイルの温度上昇が低減するため、各コイルを小型化することができる。各コイルが小型化するため、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。また、中央脚312と第一の側脚311との間には絶縁トランス3のコイルのみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間には平滑リアクトル5のコイルのみとなる構成なため、コイル部分の投影面積が大きいプレーナ型にしても、電力変換装置100の大型化を抑制することができる。
【0035】
<冷却器401>
電力変換装置100が冷却器401を有した構成について説明する。
図9(a)は絶縁トランス3、平滑リアクトル5、及び冷却器401の側面図で、凹部401aの側壁の一部を取り除いて示した図、
図9(b)は絶縁トランス3、平滑リアクトル5、及び冷却器401の平面図である。
図9に示すように、電力変換装置100は、凹部401aを有した冷却器401をさらに備える。第二鉄心302の第一鉄心301とは反対側の部分は、凹部401aの底部と熱的に接続され、一次側コイル3a又は二次側コイル3b、3cと、平滑コイル5aとは、凹部401aの開口を取り囲む冷却器401の部分である冷却面401bと熱的に接続されている。冷却器401の冷却面401bとは反対側の面に、冷媒が流れる冷却構造を設けても構わない。冷媒は、例えば、冷却水である。冷却構造を設けることで、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5から発生する熱をさらに効率よく冷却することができる。本実施の形態では、二次側コイル3cが冷却器401の側に配置されているため、二次側コイル3cが冷却面401bと熱的に接続されている。本実施の形態では、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5は、鉄心300の底面と、二次側コイル3c及び平滑コイル5a2との2か所で冷却器401と熱的に接続されている。このように構成することで、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5を、2か所において冷却器401により効率よく冷却することができる。絶縁トランス3及び平滑リアクトル5が効率よく冷却されるので、電力変換装置100を小型化することができる。以下、小型化の詳細について説明する。
【0036】
本実施の形態では、一体化した絶縁トランス3と平滑リアクトル5が、冷却器401により底面の側から冷却される構成である。底面冷却は、冷却器401に発熱部品を載せるというシンプルな構成であることから、低コストに実現できる冷却方法である。第二鉄心302は、冷却部材413を介して冷却器401により冷却される。第一鉄心301は、中央脚312、第一の側脚311を介して第二鉄心302に伝熱し、冷却部材413を介して冷却器401により冷却される。一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cは、巻線の保持と巻線間の絶縁確保のために、例えば、樹脂部材(図示せず)により一体化されている。二次側コイル3cの冷却器401の側を樹脂部材から露出させ、二次側コイル3cの側から、冷却部材411を介して冷却器401により各コイルは冷却される。
【0037】
同様に、平滑コイル5a1、5a2は、巻線の保持と巻線間の絶縁確保のために、例えば、樹脂部材(図示せず)により一体化されている。平滑コイル5a2の冷却器401の側を樹脂部材から露出させ、平滑コイル5a2の側から、冷却部材412を介して冷却器401により平滑コイル5aは冷却される。第二鉄心302の底面と最下面の巻線(二次側コイル3c、平滑コイル5a2)との間は段差になる場合が多いため、本実施の形態では、冷却器401に第二鉄心302が入る凹部401aを設けている。冷却器401に凹部401aを設けた構成に限るものではなく、冷却器401から最下面の巻線(二次側コイル3c、平滑コイル5a2)の方向に突出した突き出し部を設け、突き出し部と最下面の巻線とを熱的に接続する構成でも構わない。
【0038】
第二鉄心302は、凹部401aの側壁に取り囲まれており、二次側コイル3c及び平滑コイル5a2は冷却器401の側の多くの部分で、冷却部材411、412を介して、冷却面401bと熱的に接続されている。そのため、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aは、鉄心300と重複しない箇所において、冷却器401の冷却面401bにより冷却されている。冷却部材411、412、413は、例えば、グリス又はギャップフィラーである。なお、冷却部材413を介して、鉄心300を冷却器401に確実に固定するために、例えば、第一の側脚311もしくは第二の側脚313の上部の第一鉄心301の部分において、バネ等により鉄心300を押圧して固定しても構わない。
【0039】
以上説明した通り、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5は内鉄式構成となる。そのため、
図9(b)に示すように、冷却面401bに垂直に見て、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cは、鉄心300と重複しない上下と右方向、平滑コイル5aは、鉄心300と重複しない上下と左方向が冷却可能である。一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aは周囲の多くの領域で冷却が可能なため、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aを小型化及び低コスト化することができる。また、各コイルを配置するために確保している、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間の領域が小さくなるため、さらに鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。また、第一鉄心301は、中央脚312と第一の側脚311を経由して冷却されるため、第一鉄心301の各部から、中央脚312及び第一の側脚311までの長さが短くなるので、熱抵抗が低減し、鉄心300をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0040】
本実施の形態では、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aとして、平板状の巻線を用いたプレーナ型の例を示した。プレーナ型において各コイルを効率的に冷却するためには、各コイルの冷却面積を確保できる投影面方向に各コイルを冷却する場合が多い。そのため、冷却能力を確保するために、冷却面401bに垂直に見て、各コイルの投影面積は大きくなる。また、中央脚312と第一の側脚311との間には絶縁トランス3の巻線のみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間には平滑リアクトル5の巻線のみとなる構成なため、プレーナ型の絶縁トランス3及び平滑リアクトル5においては、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間のそれぞれに確保すべき巻線の領域のうち支配的な投影面方向の長さを最小限とすることができるので、鉄心300の小型化及び低コスト化の効果を大きくすることができる。また、前述した通り、第一鉄心301は、中央脚312と第一の側脚311を経由して冷却されるため、プレーナ型の絶縁トランス3及び平滑リアクトル5においては、第一鉄心301の各部から、中央脚312及び第一の側脚311までの長さが熱抵抗において支配的となる。その支配的な長さを最小限とすることができるため、熱抵抗の低減効果が大きく、鉄心300をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0041】
また、冷却面401bに垂直に見て、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cは、鉄心300と重複しない上下と右方向、平滑コイル5aは、鉄心300と重複しない上下と左方向が冷却可能であるため、プレーナ型構成のコイルの冷却領域が大きくなり、効率的にコイルを冷却することができる。その結果、絶縁トランス3の一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aを小型化及び低コスト化することができる。また、コイルを配置するために確保している、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間の領域が小さくなるため、さらに鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。
【0042】
<フルブリッジ回路2>
以上では、本願の要部である絶縁トランス3と平滑リアクトル5の構造を中心に述べてきた。電力変換装置100は、
図1に示すように、複数の半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dを有し、直流電力と交流電力とを変換する電力変換回路であるフルブリッジ回路2を備える。一次側コイル3aは、フルブリッジ回路2の出力側に電気的に接続され、フルブリッジ回路2は、複数の半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dのオンオフデューティ比を変化させることにより出力電力を調整するハードスイッチング方式を用いた回路である。
【0043】
本実施の形態では、上述したように、半導体スイッチング素子2a、2dを同時にオンオフし、半導体スイッチング素子2b、2cを同時にオンオフし、オン期間とオフ期間の割合を調整することで、出力電圧Voutを調整するハードスイッチング方式を用いた例を示した。ハードスイッチング方式を用いた場合の効果を
図10から
図12を参照して説明する。
図10及び
図11は、半導体スイッチング素子2a~2dがオフしているときの詳細な回路の動作を示した図である。
図3、
図5、
図6を用いた先の説明では省略したが、半導体スイッチング素子2a、2dがオンからオフに変化した際に、絶縁トランス3の漏れインダクタンス3dが絶縁トランス3の一次側コイル3aに流れる電流を流し続けようとする。そのため、
図10に示すように、漏れインダクタンス3d、一次側コイル3a、半導体スイッチング素子2dの寄生容量20d、半導体スイッチング素子2bの寄生容量20b、絶縁トランス3の漏れインダクタンス3dの順に電流が流れる。また、漏れインダクタンス3d、一次側コイル3a、半導体スイッチング素子2cの寄生容量20c、半導体スイッチング素子2aの寄生容量20a、漏れインダクタンス3dの順に電流が流れる。このとき、寄生容量20a、20dは充電され、寄生容量20b、20cは放電される。
【0044】
そして、寄生容量20a、20dが入力電圧Vinまで充電され、寄生容量20b、20cが0Vまで放電され、かつ漏れインダクタンス3dの電流が無くなると、寄生容量20a、20dが放電する。その際、
図11に示すように、電流は、寄生容量20d、一次側コイル3a、漏れインダクタンス3d、寄生容量20b、寄生容量20dの経路と、寄生容量20a、寄生容量20c、一次側コイル3a、漏れインダクタンス3d、寄生容量20aの経路で流れる。このとき、寄生容量20b、20cは充電される。寄生容量20b、20cがほぼ入力電圧Vinまで充電され、寄生容量20a、20dがほぼ0Vまで放電され、かつ漏れインダクタンス3dの電流がゼロになると、寄生容量20b、20cが放電し、再び
図10の電流経路となる。このように、
図10、
図11に示した回路の動作が繰り返される。
【0045】
図12を用いて、上述した回路の動作時の各部の波形について説明する。
図12において、横軸は時間、縦軸はそれぞれの波形の振幅である。t0以前は半導体スイッチング素子2a、2dがオン、かつ、半導体スイッチング素子2b、2cがオフであり、t0にて、半導体スイッチング素子2a、2dがオフとなる。t0~t1にて、上述した
図10、
図11の回路の動作を繰り返す。t1~t2は半導体スイッチング素子2b、2cがオン、かつ、半導体スイッチング素子2a、2dがオフの期間であり、t2にて、半導体スイッチング素子2b、2cがオフとなる。t2では、漏れインダクタンス3dにはt1と反対方向の電流が流れているため、
図11の回路の動作となる。寄生容量20b、20cが入力電圧Vinまで充電され、寄生容量20a、20dが0Vまで放電され、かつ漏れインダクタンス3dの電流が無くなると、
図10の回路の動作となる。t2~t3は、t0~t1と同様の回路の動作となる。なお、簡単のため、t0~t1、t2~t3の振動の振幅は同じとしたが、
図10及び
図11の電流経路にある抵抗成分にてエネルギーが消費されるため、実際には振幅は徐々に小さくなる。
【0046】
このとき、t0~t1、t2~t3の間で発生する振動により、絶縁トランス3の鉄心300の各部(第一の側脚311、第一鉄心301、中央脚312、第二鉄心302に形成される磁束の経路)及び、絶縁トランス3の一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cが発熱する。本実施の形態では、第一の側脚311に一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cを巻回し、第二の側脚313に平滑コイル5aを巻回し、中央脚312にて絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路が共有されている。そのため、中央脚312と第一の側脚311との間は絶縁トランス3のコイルのみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間は平滑リアクトル5のコイルのみとなるので、中央脚312と各側脚の間に確保すべきコイルの領域の投影面方向の長さを最小限とすることができる。したがって、上述したように、安価な底面冷却を用いる場合に、第一鉄心301は、中央脚312と第一の側脚311を経由して冷却されるため、絶縁トランス3においては、第一鉄心301の各部から、中央脚312及び第一の側脚311までの長さを最小限とすることができる。そのため、鉄心300の熱抵抗が低減し、鉄心300の損失が大きいハードスイッチング方式において、鉄心300の小型化及び低コスト化の効果を大きくすることができる。
【0047】
また、中央脚312において絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路を共有することで、中央脚312の断面積は、絶縁トランス3が飽和しないための断面積(第一の側脚311の断面積)と平滑リアクトル5が飽和しないための断面積(第二の側脚313の断面積)が必要となり、絶縁トランス3の断面積より大きくなる。したがって、中央脚312の熱抵抗が小さくなるため、絶縁トランス3においては、第一鉄心301の各部から冷却器401に至る熱抵抗が小さくなる。そのため、鉄心300の損失が大きいハードスイッチング方式において、鉄心300の熱成立に起因する追加コスト(鉄心の大型化又は冷却部材の追加等)を抑制することができる。
【0048】
また、第一の側脚311に一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cを巻回し、第二の側脚313に平滑コイル5aを巻回し、中央脚312にて絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路が共有されている構成なため、ハードスイッチング方式による振動電流が流れる一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cから、平滑コイル5aが物理的に離れているので、平滑コイル5aが一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cから放射されるノイズを受けにくくなり、電力変換装置100から出力されるノイズを低減することができる。そのため、電力変換装置100の出力に必要なノイズフィルタを小型化及び低コスト化することができる。また、中央脚312が一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cと平滑コイル5aとの間に位置するため、中央脚312がシールドになるので、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cから平滑コイル5aへのノイズ結合をさらに抑制することができる。
【0049】
また、ハードスイッチング方式による振動電流が流れる一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cから、平滑コイル5aが物理的に離れるため、振動電流により発熱量が増加する一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cからの平滑コイル5aへの熱干渉が低減されるので、平滑コイル5aを小型化及び低コスト化することができる。
【0050】
<鉄心300の構成>
鉄心300の構成の詳細について説明する。本実施の形態では、中央脚312は、中央脚312の部分に間隔を空けたギャップ部を有していない。本実施の形態では、第一の側脚311に一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cを巻回し、第二の側脚313に平滑コイル5aを巻回し、中央脚312にて絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路が共有されている構成なため、コイルが巻回されず磁路が共有されるのみの中央脚312にギャップ部を設ける必要がないので、中央脚312に隣接した一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aに中央脚312のギャップ部からの漏洩磁束による渦電流が発生することがない。各コイルにおいて渦電流の発生が抑制されるため、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aにおける損失を抑制することができる。
【0051】
本実施の形態では、中央脚312の断面積は、複数の側脚である、第一の側脚311及び第二の側脚313のそれぞれの断面積の和よりも小さい。例えば、鉄心300にフェライトを用いた場合、平滑リアクトル5は印加される電圧の変化が比較的小さいため、損失は小さい。一方、大電流に対しインダクタンス値を確保する必要があるため、直流重畳特性により第二の側脚313の断面積は制約される。また、絶縁トランス3は、比較的大きい入力電圧が正負で印加されるため、損失は大きい。そのため、熱成立により、第一の側脚311の断面積は制約される。したがって、中央脚312の断面積は、平滑リアクトル5の直流重畳特性に必要な平滑リアクトル5の断面積、もしくは絶縁トランス3の熱成立に必要な絶縁トランス3の断面積まで低減することが可能となる。これにより、鉄心300の大型化が抑制されるので、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、
図8に示すように、中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313のそれぞれが円柱形状であり、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、平滑コイル5aが円形状である例を示したが、これに限るものではない。中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313の形状を通常のEEコアのような四角柱形状としても構わない。その場合、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aは、直角状に湾曲した部分を有した四角形状となり、第一の側脚311及び第二の側脚313に巻回される。このように構成することで、中央脚312と、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aとは、直線で相互に沿う形状となるため無駄な空間がなくなるため、鉄心300の大型化が抑制されるので、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0053】
本実施の形態では、鉄心300は、フェライトからなる。フェライトは、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5に共通して使用される材料であるため、同一材料にて絶縁トランス3及び平滑リアクトル5を作製することができる。同一材料にて絶縁トランス3及び平滑リアクトル5が作製されるので、鉄心300を低コスト化することができる。上述したように、平滑リアクトル5は損失が小さく、直流重畳特性により第二の側脚313の断面積が制約される。また、絶縁トランス3は、比較的大きい入力電圧が正負で印加されるため、損失が大きく、熱成立により第一の側脚311の断面積が制約される。そのため、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5の鉄心300をフェライトにより一体化した際の、中央脚312の断面積の低減効果が大きいので、鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。
【0054】
<整流回路4の構成>
本実施の形態では、電力変換装置100は、
図1に示すように、複数の整流素子である整流ダイオード4a、4bを有し、二次側コイル3b、3cに電気的に接続された整流回路4を備える。整流ダイオード4a、4bのそれぞれのアノード端子は、接地されている。そのため、二次側コイル3b、3cが、センタータップ端子34を介して、平滑コイル5aに直接接続されるので、二次側コイル3b、3cと平滑コイル5aに、磁気部品90の外部と接続するための端子を設ける必要がなく、磁気部品90内で二次側コイル3b、3cと平滑コイル5aとを接続することができる。磁気部品90内で二次側コイル3b、3cと平滑コイル5aとが接続されるので、接続端子を設けるスペースが不要となり、磁気部品90を小型化することができる。また、接続端子を設ける必要が無いので、接続端子に必要な部品コスト、及び接続に必要な加工費が不要になるため、電力変換装置100を低コスト化することができる。
【0055】
<一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cの構成>
本実施の形態では、二次側コイル3b、3cの巻き数は、一次側コイル3aの巻き数よりも少ない。本実施の形態では、一次側コイル3aが6ターン、二次側コイル3b、3cのそれぞれが1ターンの例を示したが、二次側コイル3b、3cの巻き数が少なくなるほど、二次側コイル3b、3cの電流が大きくなり、コイルの熱成立のために、二次側コイル3b、3cの投影面積が大きくなる。本実施の形態では、中央脚312と第一の側脚311の間には絶縁トランス3の巻線のみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間には平滑リアクトル5の巻線のみとなる構成なため、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間のそれぞれに確保すべきコイルの領域が低減されるので、二次側コイル3b、3cの投影面積が大きくなっても、鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。上述したように、安価な底面冷却を用いる場合、第一鉄心301は、中央脚312と第一の側脚311を経由して冷却されるため、絶縁トランス3においては、第一鉄心301の各部から、中央脚312及び第一の側脚311までの長さを最小限とすることができるため、熱抵抗の低減効果が大きく、鉄心300をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0056】
また、上述したように、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cは、冷却面401bに垂直に見て、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cは、鉄心300と重複しない上下と右方向、平滑コイル5aは、鉄心300と重複しない上下と左方向が冷却可能である。そのため、コイルの冷却領域が大きくなり、効率的に各コイルを冷却することができる。各コイルを効率的に冷却できるので、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aを小型化することができ、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。また、各コイルを配置するために確保している、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間の領域が小さくなるため、鉄心300をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0057】
以上のように、実施の形態1による電力変換装置100において、鉄心300が、第一鉄心301と、第一鉄心301と対向し、第一鉄心301とは間隔を空けて配置された第二鉄心302と、第一鉄心301と第二鉄心302の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚312と、中央脚312とは離間して第一鉄心301と第二鉄心302の対向したそれぞれ端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cが、第一の側脚311に巻回され、平滑コイル5aが、第二の側脚313に巻回され、中央脚312に、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aの共通の磁路が形成されているため、中央脚312と第一の側脚311との間には絶縁トランス3の巻線のみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間には平滑リアクトル5の巻線のみとなるので、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間のそれぞれに確保すべき巻線の領域を低減することができる。中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313との間のそれぞれに確保すべき巻線の領域が低減されるので、絶縁トランス3と平滑リアクトル5とを統合して部品点数を削減しつつ、鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。鉄心300が小型化及び低コスト化されるので、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0058】
一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aのそれぞれが、平面上を湾曲した板状に形成されている場合、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5が、平板状のコイルを用いるプレーナ型であるため、コイルの断面積を拡大して損失を低減し、放熱性を向上させて、コイルの温度上昇を低減することができる。コイルの温度上昇が低減するため、各コイルを小型化することができる。各コイルが小型化するため、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。また、中央脚312と第一の側脚311との間には絶縁トランス3のコイルのみとなり、中央脚312と第二の側脚313との間には平滑リアクトル5のコイルのみとなる構成なため、コイル部分の投影面積が大きいプレーナ型にしても、電力変換装置100の大型化を抑制することができる。
【0059】
電力変換装置100が、複数の半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dを有し、直流電力と交流電力とを変換する電力変換回路であるフルブリッジ回路2を備え、一次側コイル3aがフルブリッジ回路2の出力側に電気的に接続され、フルブリッジ回路2が複数の半導体スイッチング素子2a、2b、2c、2dのオンオフデューティ比を変化させることにより出力電力を調整するハードスイッチング方式を用いた回路である場合、本願は鉄心300が小型化されているため、鉄心300の損失が大きいハードスイッチング方式においても鉄心300の熱抵抗が低減されるので、鉄心300の小型化及び低コスト化の効果を大きくすることができる。
【0060】
中央脚312が、中央脚312の部分に間隔を空けたギャップ部を有していない場合、本願は第一の側脚311に一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cを巻回し、第二の側脚313に平滑コイル5aを巻回し、中央脚312にて絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路が共有されている構成なため、コイルが巻回されず磁路が共有されるのみの中央脚312にギャップ部を設ける必要がないので、中央脚312に隣接した一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aに中央脚312のギャップ部からの漏洩磁束による渦電流が発生することがない。各コイルにおいて渦電流の発生が抑制されるため、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aにおける損失を抑制することができる。
【0061】
中央脚312の断面積が、複数の側脚である、第一の側脚311及び第二の側脚313のそれぞれの断面積の和よりも小さい場合、本願の構成は中央脚312の断面積は、平滑リアクトル5の直流重畳特性に必要な平滑リアクトル5の断面積、もしくは絶縁トランス3の熱成立に必要な絶縁トランス3断面積まで低減することが可能なので、鉄心300の大型化が抑制されるので、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0062】
鉄心300が、フェライトからなる場合、フェライトは、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5に共通して使用される材料であるため、同一材料にて絶縁トランス3及び平滑リアクトル5を作製することができる。同一材料にて絶縁トランス3及び平滑リアクトル5が作製されるので、鉄心300を低コスト化することができる。
【0063】
電力変換装置100が、複数の整流素子である整流ダイオード4a、4bを有し、二次側コイル3b、3cに電気的に接続された整流回路4を備え、整流ダイオード4a、4bのそれぞれのアノード端子が接地されている場合、二次側コイル3b、3cが、センタータップ端子34を介して、平滑コイル5aに直接接続されるので、二次側コイル3b、3cと平滑コイル5aに、磁気部品90の外部と接続するための端子を設ける必要がなく、磁気部品90内で二次側コイル3b、3cと平滑コイル5aとを接続することができる。磁気部品90内で二次側コイル3b、3cと平滑コイル5aとが接続されるので、接続端子を設けるスペースが不要となり、磁気部品90を小型化することができる。また、接続端子を設ける必要が無いので、接続端子に必要な部品コスト、及び接続に必要な加工費が不要になるため、電力変換装置100を低コスト化することができる。
【0064】
二次側コイル3b、3cの巻き数が、一次側コイル3aの巻き数よりも少ない場合、二次側コイル3b、3cの巻き数が少なくなるほど、二次側コイル3b、3cの電流が大きくなり、コイルの熱成立のために、二次側コイル3b、3cの投影面積が大きくなるものの、本願の構成では、中央脚312と第一の側脚311との間、及び中央脚312と第二の側脚313の間のそれぞれに確保すべきコイルの領域が低減されるので、二次側コイル3b、3cの投影面積が大きくなっても、鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。
【0065】
電力変換装置100が、凹部401aを有した冷却器401を備え、第二鉄心302の第一鉄心301とは反対側の部分が、凹部401aの底部と熱的に接続され、一次側コイル3a又は二次側コイル3b、3cと、平滑コイル5aとは、凹部401aの開口を取り囲む冷却器401の部分である冷却面401bと熱的に接続されている場合、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5が、鉄心300の底面と、一次側コイル3a又は二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5a2との2か所で冷却器401と熱的に接続されるため、絶縁トランス3及び平滑リアクトル5を、2か所において冷却器401により効率よく冷却することができる。絶縁トランス3及び平滑リアクトル5が効率よく冷却されるので、電力変換装置100を小型化することができる。
【0066】
実施の形態2.
実施の形態2に係る電力変換装置100について説明する。
図13は実施の形態2に係る電力変換装置100の要部の概略を示す平面図で、磁気部品90から第一鉄心301を取り除いて示した図である。
図13では、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aのそれぞれは、簡単のため、外形のみを示す円盤形状としている。実施の形態2に係る電力変換装置100は、中央脚312の構成が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0067】
実施の形態1では、中央脚312が円柱形状である例を示した。中央脚312は、隣接して配置された一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aのそれぞれと間隔を空けて配置される。本実施の形態では、中央脚312の側面は、中央脚312の側面に対向した一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aのそれぞれの側面形状に沿った形状を有している。一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aが円盤形状なため、中央脚312は、中心がくびれた形状となっている。
【0068】
中央脚312を円柱形状に設けた場合、中央脚312と一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cとの間、及び中央脚312と平滑コイル5aとの間に無駄なスペースが存在していた。このように構成することで、無駄なスペースを縮小できるため、一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cと、平滑コイル5aとの間の距離(
図13の距離L1)を短くすることができる。距離L1が短くなるため、第一の側脚311と第二の側脚313との間の距離も短くなるので、鉄心300を小型化することができる。鉄心300が小型化されるので、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0069】
実施の形態3.
実施の形態3に係る電力変換装置100について説明する。
図14は実施の形態3に係る電力変換装置100の磁気部品90の概略を示す図で、
図14(a)は凹部401aの側壁の一部を取り除いて、絶縁トランス3、平滑リアクトル5、及び冷却器401を示した側面図、
図14(b)は絶縁トランス3、平滑リアクトル5、及び冷却器401の平面図である。実施の形態3に係る電力変換装置100は、鉄心300の構成が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0070】
平滑コイル5aの磁束が鎖交する第一鉄心301及び第二鉄心302の一方又は双方の部分の厚みは、一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cの磁束が鎖交する第一鉄心301及び第二鉄心302のそれぞれの厚みよりも厚い。
図14(a)に示した磁気部品90の構成では、第一鉄心301及び第二鉄心302の双方の部分の厚みが、一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cの磁束が鎖交する第一鉄心301及び第二鉄心302のそれぞれの厚みよりも厚く構成されている。
【0071】
絶縁トランス3は、一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cが配置されるため、平滑リアクトル5よりもコイル全体の厚さが厚くなる傾向がある。そのため、平滑コイル5aと第一鉄心301との間、及び平滑コイル5aと第二鉄心302との間に無駄なスペースが存在していた。この無駄なスペースが埋まるように第一鉄心301及び第二鉄心302の厚さを増やすことで、
図14(b)に示すように、冷却面401bに垂直に見て、第一鉄心301及び第二鉄心302の短手方向の大きさを削減し、絶縁トランス3と平滑リアクトル5の投影面積を削減することができる。これは、冷却面401bに垂直に見て、第一鉄心301及び第二鉄心302の短手方向の大きさが平滑リアクトル5の断面積の制約により決定されている際に、より効果的である。
【0072】
実施の形態4.
実施の形態4に係る電力変換装置100について説明する。
図15は実施の形態4に係る電力変換装置100の磁気部品90の概略を示す図で、磁気部品90から第一鉄心301を取り除いて、二次側コイル3bと平滑コイル5a1を示した図である。実施の形態4に係る電力変換装置100は、二次側コイル3bと平滑コイル5a1が一体化された構成になっている。
【0073】
二次側コイル3bと平滑コイル5a1とは、並べて配置されて、一体化部8aにより電気的及び機械的に結合された一体コイル部材8とされている。一体化部8aは、センタータップ端子34aとリアクトル端子51とが結合された部分である。本実施の形態では、中央脚312、第一の側脚311、及び第二の側脚313の形状は、四角柱形状である。一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aは、直角状に湾曲した部分を有した四角形状である。
【0074】
このように構成することで、一体コイル部材8が、例えば、1枚の板金部品から形成されるため、コイルとなる部品の点数が減るので、二次側コイル3bと平滑コイル5a1との接続のための加工費が不要になり、磁気部品90を低コスト化することができる。また、磁気部品90において、接続のために必要な領域が不要になるので、磁気部品90を小型化することができる。
【0075】
実施の形態5.
実施の形態5に係る電力変換装置100について説明する。
図16は実施の形態5に係る電力変換装置100の磁気部品90の概略を示す図で、凹部401aの側壁の一部を取り除いて、絶縁トランス3、平滑リアクトル5、及び冷却器401を示した側面図である。実施の形態5に係る電力変換装置100は、鉄心300の構成が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0076】
一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aの何れかが巻回され、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aの共通の磁路が形成されていない中央脚312及び複数の側脚の何れかの部分は、間隔を空けたギャップ部321を有し、ギャップ部321にスペーサ部材320が挿入されている。本実施の形態では、平滑コイル5aが巻回された第二の側脚313にギャップ部321が設けられ、ギャップ部321にスペーサ部材320が挿入されている。スペーサ部材320は、例えば、樹脂部材により作製されている。
【0077】
実施の形態1の
図9に示した例では、平滑コイル5aが巻回された第二の側脚313はギャップ部321を有し、ギャップ部321はスペーサ部材320を設けない空間である。
図16に示すように、ギャップ部321にスペーサ部材320を挿入することで、鉄心300の冷却器401への固定において、第二の側脚313を第一鉄心301の上部から固定することができる。第二の側脚313が第一鉄心301の上部から固定されるので、第二の側脚313のギャップ部321の耐振性を向上させることができる。
【0078】
実施の形態6.
実施の形態6に係る電力変換装置100について説明する。
図17は実施の形態6に係る電力変換装置100の磁気部品90である絶縁トランス3と平滑リアクトル5の構成を示す模式図である。実施の形態6に係る電力変換装置100は、鉄心300におけるコイルを巻回する部分が実施の形態1とは異なる構成になっている。
【0079】
本実施の形態では、一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cは、第一の側脚311に巻回され、平滑コイル5aは、中央脚312に巻回され、第二の側脚313に、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aの共通の磁路が形成されている。このように構成することで、中央脚312と第二の側脚313との間は平滑リアクトル5のコイルのみとなるため、中央脚312と第二の側脚313と間に確保すべきコイルの領域を低減することができる。コイルの領域が低減されるので、絶縁トランス3と平滑リアクトル5を統合して部品点数を削減しつつ、鉄心300を小型化及び低コスト化することができる。
【0080】
本実施の形態では、第二の側脚313の断面積は、第二の側脚313を除く複数の側脚及び中央脚312の断面積の和よりも小さい。絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路を共有する鉄心300の部分の断面積は、絶縁トランス3が飽和しないための断面積と平滑リアクトル5が飽和しないための断面積が必要となる。絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路を共有する第二の側脚313は、平滑リアクトル5のコイルのみとなる中央脚312から左方向にあるため、磁路を共有する第二の側脚313の断面積の増加領域を削減することができる。第二の側脚313の断面積の増加が削減されるため、鉄心300の体積の増加が抑制されるので、鉄心300を低コスト化することができる。
【0081】
第二の側脚313は、第二の側脚313の部分に間隔を空けたギャップ部を有していない。本実施の形態では、第一の側脚311に一次側コイル3a、二次側コイル3b、3cを巻回し、中央脚312に平滑コイル5aを巻回し、第二の側脚313にて絶縁トランス3と平滑リアクトル5の磁路が共有されている構成なため、コイルが巻回されず磁路が共有されるのみの第二の側脚313にギャップ部を設ける必要がないので、第二の側脚313に隣接した平滑コイル5aに第二の側脚313のギャップ部からの漏洩磁束による渦電流が発生することがない。平滑コイル5aにおいて渦電流の発生が抑制されるため、平滑コイル5aにおける損失を抑制することができる。また、鉄心300の冷却器401への固定において、鉄心300の両端にあたる第一の側脚311と第二の側脚313を第一鉄心301の上部から固定することができるため、鉄心300の耐振性を向上させることができる。また、鉄心300の中央脚312から左方向の各部から、第二の側脚313までの長さが短くなるため、鉄心300の熱抵抗が低減するので、鉄心300をさらに小型化及び低コスト化することができる。
【0082】
本実施の形態に係る別の磁気部品90の構成について説明する。
図18は実施の形態6に係る電力変換装置100の別の磁気部品90の一部の構成を示す平面図で、磁気部品90から第一鉄心301を取り除いて示した図である。
図18では、平滑コイル5aは、簡単のため、外形のみを示す円盤形状としている。第二の側脚313は、隣接して配置された平滑コイル5aと間隔を空けて配置され、第二の側脚313の側面は、第二の側脚313の側面に対向した平滑コイル5aの側面形状に沿った形状を有している。
【0083】
このように構成することで、第二の側脚313と平滑コイル5aとの間の無駄なスペースを縮小できるため、第二の側脚313の端部と、平滑コイル5aとの間の距離(
図18の距離L2)を短くすることができる。距離L2が短くなるため、第一の側脚311と第二の側脚313との間の距離も短くなるので、鉄心300を小型化することができる。鉄心300が小型化されるので、電力変換装置100を小型化及び低コスト化することができる。
【0084】
実施の形態7.
実施の形態7に係る電力変換装置100について説明する。
図19は実施の形態7に係る電力変換装置100の磁気部品90である絶縁トランス3と平滑リアクトル5の構成を示す平面図で、磁気部品90から第一鉄心301を取り除いて示した図である。
図19では、一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aのそれぞれは、簡単のため、外形のみを示す円盤形状としている。実施の形態7に係る電力変換装置100は、実施の形態1の構成に加えて、鉄心300がさらに複数の側脚を有した構成になっている。
【0085】
本実施の形態では、第一の側脚311、第二の側脚313に加えて、複数の側脚である第三の側脚314、及び第四の側脚315がさらに設けられ、第一の側脚311、第二の側脚313、第三の側脚314、及び第四の側脚315のそれぞれは、中央脚312とは離間して、中央脚312を取り囲んで配置される。図において、第二鉄心302の外形は矩形状に形成され、第一の側脚311、第二の側脚313、第三の側脚314、及び第四の側脚315のそれぞれは、第二鉄心302の角部に設けられる。第二鉄心302の外形、及び各側脚の配置はこれに限るものではない。一次側コイル3a及び二次側コイル3b、3cは、第三の側脚314に巻回され、平滑コイル5aは、第四の側脚315に巻回されている。
【0086】
一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、及び平滑コイル5aは、分割して、2つの側脚に巻回される。例えば、第一の側脚311及び第三の側脚314に一次側コイル3a、及び二次側コイル3b、3cが並列の関係で配置され、第二の側脚313及び第四の側脚315に平滑コイル5aが並列の関係で配置される。コイルの接続はこれに限るものではなく、第一の側脚311及び第三の側脚314に一次側コイル3a、及び二次側コイル3b、3cを直列の関係で配置し、第二の側脚313及び第四の側脚315に平滑コイル5aを直列の関係で配置しても構わない。4つの側脚への一次側コイル3a、二次側コイル3b、3c、平滑コイル5aの分割方法は、任意で構わない。
【0087】
このように構成することで、各コイルが分割して配置されるので、各コイル及び鉄心300の高さを低くすることができる。電力変換装置100の配置において、高さに制限がある場合でも、電力変換装置100を容易に設置することができる。
【0088】
また本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、又は複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、又は様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0089】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0090】
(付記1)
磁気回路を形成する鉄心と、
前記鉄心に巻回された一次側コイルと、
前記一次側コイルと磁気結合し、前記鉄心に巻回された二次側コイルと、
前記二次側コイルに電気的に接続され、前記鉄心に巻回された平滑コイルと、を備え、
前記鉄心は、第一鉄心と、前記第一鉄心と対向し、前記第一鉄心とは間隔を空けて配置された第二鉄心と、前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚と、前記中央脚とは離間して前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれ端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、
前記一次側コイル及び前記二次側コイルは、第一の前記側脚に巻回され、
前記平滑コイルは、第二の前記側脚に巻回され、
前記中央脚に、前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの共通の磁路が形成されている電力変換装置。
(付記2)
磁気回路を形成する鉄心と、
前記鉄心に巻回された一次側コイルと、
前記一次側コイルと磁気結合し、前記鉄心に巻回された二次側コイルと、
前記二次側コイルに電気的に接続され、前記鉄心に巻回された平滑コイルと、を備え、
前記鉄心は、第一鉄心と、前記第一鉄心と対向し、前記第一鉄心とは間隔を空けて配置された第二鉄心と、前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれの中央部分の間を接続した中央脚と、前記中央脚とは離間して前記第一鉄心と前記第二鉄心の対向したそれぞれの端部の部分の間を接続した複数の側脚と、を有し、
前記一次側コイル及び前記二次側コイルは、第一の前記側脚に巻回され、
前記平滑コイルは、前記中央脚に巻回され、
第二の前記側脚に、前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの共通の磁路が形成されている電力変換装置。
(付記3)
前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルのそれぞれは、平面上を湾曲した板状に形成されている付記1又は2に記載の電力変換装置。
(付記4)
複数の半導体スイッチング素子を有し、直流電力と交流電力とを変換する電力変換回路をさらに備え、
前記一次側コイルは、前記電力変換回路の出力側に電気的に接続され、
前記電力変換回路は、前記複数の半導体スイッチング素子のオンオフデューティ比を変化させることにより出力電力を調整するハードスイッチング方式を用いた回路である付記1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記5)
前記中央脚は、前記中央脚の部分に間隔を空けたギャップ部を有していない付記1又は3に記載の電力変換装置。
(付記6)
前記第二の側脚は、前記第二の側脚の部分に間隔を空けたギャップ部を有していない付記2又は3に記載の電力変換装置。
(付記7)
前記中央脚の断面積は、前記複数の側脚の断面積の和よりも小さい付記1又は3に記載の電力変換装置。
(付記8)
前記第二の側脚の断面積は、前記第二の側脚を除く前記複数の側脚及び前記中央脚の断面積の和よりも小さい付記2又は3に記載の電力変換装置。
(付記9)
前記中央脚は、隣接して配置された前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルのそれぞれと間隔を空けて配置され、
前記中央脚の側面は、前記中央脚の側面に対向した前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルのそれぞれの側面形状に沿った形状を有している付記1又は3に記載の電力変換装置。
(付記10)
前記第二の側脚は、隣接して配置された前記平滑コイルと間隔を空けて配置され、
前記第二の側脚の側面は、前記第二の側脚の側面に対向した前記平滑コイルの側面形状に沿った形状を有している付記2又は3に記載の電力変換装置。
(付記11)
前記平滑コイルの磁束が鎖交する前記第一鉄心及び前記第二鉄心の一方又は双方の部分の厚みは、前記一次側コイル及び前記二次側コイルの磁束が鎖交する前記第一鉄心及び前記第二鉄心のそれぞれの厚みよりも厚い付記1から10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記12)
前記鉄心は、フェライトからなる付記1から11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記13)
複数の整流素子を有し、前記二次側コイルに電気的に接続された整流回路をさらに備え、
前記複数の整流素子のそれぞれのアノード端子は、接地されている付記1から12のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記14)
前記二次側コイルと前記平滑コイルとは、並べて配置されて、一体化部により電気的及び機械的に結合された一体コイル部材とされている付記13に記載の電力変換装置。
(付記15)
前記二次側コイルの巻き数は、前記一次側コイルの巻き数よりも少ない付記1から14のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記16)
前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの何れかが巻回され、前記一次側コイル、前記二次側コイル、及び前記平滑コイルの共通の磁路が形成されていない前記中央脚及び前記複数の側脚の何れかの部分は、間隔を空けたギャップ部を有し、
前記ギャップ部にスペーサ部材が挿入されている付記1から15のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記17)
凹部を有した冷却器をさらに備え、
前記第二鉄心の前記第一鉄心とは反対側の部分は、前記凹部の底部と熱的に接続され、
前記一次側コイル又は前記二次側コイルと、前記平滑コイルとは、前記凹部の開口を取り囲む前記冷却器の部分と熱的に接続されている付記1から16のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記18)
前記複数の側脚である第三の前記側脚、及び第四の前記側脚が設けられ、
前記第一の側脚、前記第二の側脚、前記第三の側脚、及び前記第四の側脚のそれぞれは、前記中央脚とは離間して、前記中央脚を取り囲んで配置され、
前記一次側コイル及び前記二次側コイルは、前記第三の側脚に巻回され、
前記平滑コイルは、前記第四の側脚に巻回されている付記1又は3に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0091】
1 直流電源、 2 フルブリッジ回路、2a、2b、2c、2d 半導体スイッチング素子、3 絶縁トランス、3a、3a1、3a2 一次側コイル、3b、3c 二次側コイル、3d 漏れインダクタンス、4 整流回路、4a、4b 整流ダイオード、5 平滑リアクトル、5a、5a1、5a2 平滑コイル、6 平滑コンデンサ、7 負荷、8 一体コイル部材、8a 一体化部、20a、20b、20c、20d 寄生容量、31、32 一次側端子、33、35 二次側端子、34、34a、34b センタータップ端子、36、37 内側端子、51、52 リアクトル端子、53a、53b 接続端子、41、42、43、44、45、46、61、62、63、64、65、66 磁束、90 磁気部品、100 電力変換装置、300 鉄心、301 第一鉄心、302 第二鉄心、312 中央脚、311 第一の側脚、313 第二の側脚、314 第三の側脚、315 第四の側脚、320 スペーサ部材、321 ギャップ部、401 冷却器、401a 凹部、401b 冷却面、411、412、413 冷却部材