(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164411
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電機機器
(51)【国際特許分類】
H02K 3/12 20060101AFI20241120BHJP
H02K 3/22 20060101ALI20241120BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02K3/12
H02K3/22
H02K15/03 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079862
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立木 宏紀
【テーマコード(参考)】
5H603
5H622
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603AA11
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC05
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD21
5H603CE02
5H603CE07
5H603CE09
5H603CE13
5H603CE14
5H603EE01
5H622QB10
(57)【要約】
【課題】コイルと鉄心との間の熱伝導性を向上させると共に大型化を抑制する。
【解決手段】バックヨーク11およびティース12を有する電機子鉄心1とコイルとを有する電機機器であって、コイルはスロット13に配置された複数のスロット部21と、でティースを挟んで隣接するスロット部同士をそれぞれ接続するコイルエンド部とで構成されており、複数のスロット部の断面形状はスロットの断面を埋めるために多角形であり、少なくとも1つのスロット部の断面形状は他のスロット部と異なっており、断面形状が異なるスロット部と他のスロット部とを接続するコイルエンド部の周方向の断面形状は、接続するスロット部の断面形状に合わせて変化している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のバックヨークと前記バックヨークの内径側に周方向に等間隔で離間して配置された複数のティースとを有する電機子鉄心と、複数の前記ティースに巻き回されたコイルとを有する電機機器であって、
前記コイルは、複数の前記ティースの間の空間であるスロットに配置された複数のスロット部と、前記電機子鉄心の軸方向の両端で前記ティースを挟んで隣接する複数の前記スロット部同士をそれぞれ接続するコイルエンド部とで構成されており、
複数の前記スロット部の断面形状は前記スロットの断面を埋めるために多角形であり、少なくとも1つの前記スロット部の断面形状は他の前記スロット部の断面形状と異なっており、
断面形状が異なる前記スロット部と他の前記スロット部とを前記ティースを挟んで接続する前記コイルエンド部の周方向の断面形状は、接続する前記スロット部の断面形状に合わせて変化していることを特徴とする電機機器。
【請求項2】
前記コイルは、内部に冷媒を流通させる流路を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電機機器。
【請求項3】
前記流路の内部に支柱が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電機機器。
【請求項4】
前記コイルは、少なとも隣り合う2つの前記ティースに連続して巻き回された複数の分割コイルで構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電機機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電機機器に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルを有する電機機器において、小型で高出力は常に求められる課題である。鉄心にコイルを巻き回した電機機器においては、コイルに流れる電流を増加させることで高出力が得られる。例えば、固定子鉄心のティースに巻き回されるコイルの断面形状を四角形としてティース間に形成されたスロットに対するコイルの占積率を向上させた回転電機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このように構成された回転電機においては、コイルと固定子鉄心との密着性が向上し、コイルの発熱を固定子鉄心に効率よく伝導させることができる。その結果、この回転電機においてはコイルにより多くの電流が流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の回転電機においては、コイル同士の接合はスロットから突出した部分の溶接で行っているため、軸方向に大型化するという問題があった。
【0005】
本願は、上述の課題を解決するためになされたもので、鉄心にコイルを巻き回した電機機器において、コイルと鉄心との間の熱伝導性を向上させると共に大型化を抑制することができる電機機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の電機機器は、円環状のバックヨークとバックヨークの内径側に周方向に等間隔で離間して配置された複数のティースとを有する電機子鉄心と、複数のティースに巻き回されたコイルとを有している。そして、コイルは、複数のティースの間の空間であるスロットに配置された複数のスロット部と、電機子鉄心の軸方向の両端でティースを挟んで隣接する複数のスロット部同士をそれぞれ接続するコイルエンド部とで構成されており、複数のスロット部の断面形状はスロットの断面を埋めるために多角形であり、少なくとも1つのスロット部の断面形状は他のスロット部の断面形状と異なっており、断面形状が異なるスロット部と他のスロット部とをティースを挟んで接続するコイルエンド部の周方向の断面形状は、接続するスロット部の断面形状に合わせて変化している。
【発明の効果】
【0007】
本願の電機機器においては、複数のスロット部の断面形状はスロットの断面を埋めるために多角形であり、少なくとも1つのスロット部の断面形状は他のスロット部の断面形状と異なっており、断面形状が異なるスロット部と他のスロット部とをティースを挟んで接続するコイルエンド部の周方向の断面形状は、接続するスロット部の断面形状に合わせて変化しているので、コイルと電機子鉄心との間の熱伝導性を向上させると共に大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る電機機器の断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る電機子鉄心の斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係る電機子の拡大断面図である。
【
図6】実施の形態1に係るコイルエンド部の拡大上面図である。
【
図7】実施の形態1におけるコイルの製造方法を説明する図である。
【
図8】実施の形態1におけるコイルに絶縁被膜を形成する方法を説明する図である。
【
図9】実施の形態1における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
【
図10】実施の形態1における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
【
図11】実施の形態2に係る電機機器の断面図である。
【
図12】実施の形態2に係る電機子の斜視図である。
【
図13】実施の形態2に係る分割コイルの斜視図である。
【
図14】実施の形態2に係る電機子の拡大断面図である。
【
図15】実施の形態2に係るコイルエンド部の拡大上面図である。
【
図16】実施の形態2における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
【
図17】実施の形態2における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
【
図18】実施の形態2における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
【
図19】実施の形態2における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
【
図20】実施の形態3に係る電機機器の断面図である。
【
図21】実施の形態3に係る電機子の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る電機機器について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電機機器の断面図である。本実施の形態の電機機器100は、回転電機のロータの磁石を着磁させるために用いられる着磁装置である。電機機器100は、電機子10と電機子10を覆う樹脂モールド4とで構成されている。電機子10は、内部に空間3を有する円筒形状の電機子鉄心1とコイル2とを有する。電機子鉄心1は、例えば積層された電磁鋼板で構成されている。ここで、円筒形状の電機子鉄心1の中心軸に平行な方向を軸方向、中心軸に直交する方向を径方向、中心軸を中心に回転する方向を周方向と定義する。また、軸方向に沿って電機子10から遠ざかる方向を外側と表現する。
【0011】
図2は、本実施の形態に係る電機子の斜視図である。電機子10は、電機子鉄心1とコイル2とを有する。電機子鉄心1は、円筒形状のバックヨーク11と、バックヨーク11の内径側に周方向に等間隔で配置された複数のティース12とで構成されている。コイル2は、複数のティース12の間の空間であるスロット13を利用してティース12に巻き回されている。コイル2はすべてのティース12に連続して巻き回されており、その両端はコイル2に電流を流すためのコイル端末23となっている。
【0012】
本実施の形態の電機機器である着磁装置は、電機子10の内部の空間3に回転電機のロータを配置し、コイル2のコイル端末23からコイル2に瞬間的に大電流を流すことでロータ内部の磁石を着磁させることができる。
【0013】
図3は、本実施の形態に係る電機子鉄心の斜視図である。電機子鉄心1は、バックヨーク11と複数のティース12とで構成されている。バックヨーク11と複数のティース12とは分割されて構成されている。複数のティース12は、バックヨーク11の内径側または軸方向側からバックヨーク11に締結できるように構成されている。スロット13は、複数のティース12の間の空間である。
【0014】
図4は、本実施の形態に係るコイルの斜視図である。コイル2は、絶縁被膜が施された銅、銅合金、アルミニウムなどの長尺状の導体を複数巻き回して構成されている。コイル2は、電機子鉄心1のスロット13に配置されるスロット部21と、軸方向外側の両端で隣接するスロット部21同士を接続するコイルエンド部22とで構成されている。コイル2の両端部はコイル端末23である。
【0015】
図5は、本実施の形態に係る電機子の拡大断面図である。
図5は、軸方向に直交する方向の断面図である。
図5に示すように、コイル2のスロット部21の断面形状は、スロット13の空間に対するスロット部21の占積率を大きくするために多角形となっている。本実施の形態の電機子においては、スロット13に配置された複数のスロット部21の断面形状はスロット13の断面を埋めるために多角形であり、少なくとも1つのスロット部21の断面形状は他のスロット部21の断面形状と異なっている。言い換えると、本実施の形態の電機子においては、スロット部21の断面形状を多角形として、絶縁材料を含むスロット部21の断面積の総和をスロット13の断面積に対して80%以上としている。すなわち、スロット部21に対するスロット部21の占積率を80%以上としている。スロット部21に対するスロット部21の占積率を80%以上とすることで、コイル2と電機子鉄心1との間の熱伝導性を向上させることができる。そのため、コイル2に流れる電流によって発生する熱を効率よくコイル2から電機子鉄心1へ伝えることができる。
【0016】
図6は、本実施の形態に係るコイルエンド部の拡大上面図である。
図6は、軸方向の外側からコイルエンド部を見た図である。コイルエンド部22には、ティースを挟んで隣接するスロット部21同士が径方向にずれたスロット部21同士を接続するクロス側と、ティースを挟んで隣接するスロット部21同士が径方向に平行なスロット部21同士を接続する反クロス側とがある。
図4で説明すると、
図4の上側のコイルエンド部22がクロス側、下側のコイルエンド部22が反クロス側となる。
図6(a)はクロス側のコイルエンド部22の拡大上面図であり、
図6(b)は反クロス側のコイルエンド部22の拡大上面図である。
図5に示すように、径方向にずれて隣接するスロット部21同士の断面形状は異なっている。そのため、
図6(a)に示すクロス側のコイルエンド部22の断面形状は、異なる断面形状のスロット部21同士を接続するために緩やかに変化している。これに対して、径方向に平行な隣接するスロット部21同士の断面形状は同じである。そのため、
図6(b)に示す反クロス側のコイルエンド部22の断面形状は、接続するスロット部21同士の断面形状と同じである。
【0017】
次に、本実施の形態に係る電機機器の製造方法について説明する。
図7は、本実施の形態におけるコイルの製造方法を説明する図である。本実施の形態におけるコイルは、積層造形法と呼ばれる方法で製造することができる。
図7に示す製造方法は、その一例である。
【0018】
図7に示すように、タンク31に満たされた導体粉末32に電子銃33から電子ビーム34が照射される。電子ビーム34は、コイルの形状に沿って走査される。電子ビーム34が照射された導体粉末32は、一旦溶解した後に凝固する。このような積層造形法でコイルを造形することができる。
【0019】
図7に示す製造方法は一例であり、例えばノズルから導体粉末をコイルの形状に沿って噴出させ、噴出させた導体粉末をレーザ光で溶融して積層する方法でコイルを造形してもよい。導体粉末を用いる場合、導体粉末に熱可塑性樹脂を混合してもよい。また、アーク溶接で金属を積層する方法でコイルを造形してもよい。
【0020】
図8は、本実施の形態におけるコイルに絶縁被膜を形成する方法を説明する図である。本実施の形態における絶縁被膜の形成方法は、電着塗装と呼ばれる方法である。
図8に示すように、絶縁被膜の原料となる水溶性の塗料42が満たされたタンク41の中に、陽極43と陰極としてのコイル2とを配置する。陽極43とコイル2との間に直流電流を流すことでコイル2の表面に絶縁被膜を形成する。なお、
図8に示す絶縁被膜の形成方法は一例であり、粉体塗装など他の方法で絶縁被膜を形成してもよい。
【0021】
図9および
図10は、本実施の形態における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
図9に示すように、積層造形法で製造されたコイル2にティース12を径方向の内側から挿入する。次に、
図10に示すように、バックヨーク11を軸方向から挿入して、ティース12とバックヨーク11とを締結する。最後に、図示していないが、コイル2全体を樹脂モールド4で覆うことで電機機器が完成する。
【0022】
このように構成された電機機器においては、複数のスロット部の断面形状をスロットの断面を埋めるために多角形にすることで、コイルと電機子鉄心との間の熱伝導性を向上させることができる。そのため、コイルに流れる電流によって発生する熱を効率よくコイルから電機子鉄心へ伝えることができる。
【0023】
また、本実施の形態の電機機器においては、積層造形法でコイルを製造しているので、スロット部同士の接合をスロットから突出した部分で溶接する必要がない。その結果、本実施の形態の電機機器においては、コイルエンド部が軸方向外側へ拡大することを抑制することができる。
【0024】
さらに、本実施の形態の電機機器においては、積層造形法でコイルを製造しているので、少なくとも1つのスロット部の断面形状を他のスロット部の断面形状と異なるように構成すことができると共に、断面形状が異なるスロット部と他のスロット部とをティースを挟んで接続するコイルエンド部の周方向の断面形状を接続するスロット部の断面形状に合わせて変化させることができる。
【0025】
なお、本実施の形態の電機機器において、電機機器を冷却するために樹脂モールドの内部に水冷のための水路を設けてもよい。また、本実施の形態においては、電機機器を組み立てるときに、コイルにティースを挿入した後にバックヨークを挿入している。別の組み立て方法として、コイルの外周部にバックヨークを配置した後にティースを径方向の内側から挿入してもよい。
【0026】
本実施の形態においては、電機機器を着磁装置として説明した。本実施の形態で説明したコイルは、着磁装置以外に回転電機の電機子のコイルに用いることができる。回転電機の回転子としては、内部に永久磁石を備えた永久磁石型回転子、軸方向に延びる回転子導体を軸方向の両端部の短絡リングで短絡したかご型回転子、絶縁被膜が施された導体線を回転子鉄心のスロットに装着した巻線型回転子などを用いることができる。
【0027】
実施の形態2.
図11は、実施の形態2に係る電機機器の断面図である。本実施の形態の電機機器は、実施の形態1で説明した着磁装置と同様の構造である。ただし、コイルの構造が異なっている。
図11に示すように、本実施の形態の電機機器100のコイル2は、内部に流路24が形成されている。流路24は、コイル2を貫通している。この流路24は、コイル2を冷却するための冷媒を流すために形成されている。
【0028】
図12は、本実施の形態に係る電機子の斜視図である。電機子10は、電機子鉄心1とコイル2とを有する。電機子鉄心1は、円筒形状のバックヨーク11と、バックヨーク11の内径側に周方向に等間隔に配置された複数のティース12とで構成されている。コイル2は、複数のティース12の間の空間であるスロット13を利用してティース12に巻き回されている。本実施の形態のコイル2は、ティースを挟んで隣り合う2つのティース12に連続して巻き回された複数の分割コイル20で構成されている。
図12に示す電機子10においては、コイル2は、5個の分割コイル20で構成されている。分割コイル20は隣り合う2つのティース12に連続して巻き回されており、その両端は分割コイル20に電流を流すためのコイル端末23となっている。また、このコイル端末23は、流路24に冷媒を供給するための供給口でもある。
【0029】
図13は、本実施の形態に係る分割コイルの斜視図である。分割コイル20は、絶縁被膜が施された銅、銅合金、アルミニウムなどの長尺状の中空導体を複数巻き回して構成されている。分割コイル20は内部に流路24が形成されている。分割コイル20は、電機子鉄心1のスロット13に配置されるスロット部21と、軸方向外側の両端で隣接するスロット部21同士を接続するコイルエンド部22とで構成されている。分割コイル20の両端部はコイル端末23である。
【0030】
図14は、本実施の形態に係る電機子の拡大断面図である。
図14は、軸方向に直交する方向の断面図である。
図14に示すように、コイル2のスロット部21の断面形状は、スロット13の空間に対するスロット部21の占積率を大きくするために多角形となっている。本実施の形態の電機子においては、スロット部21の断面形状を多角形としてスロット部21の断面積の総和をスロット13の断面積に対して80%以上としている。すなわち、スロット部21に対するスロット部21の占積率を80%以上としている。スロット部21に対するスロット部21の占積率を80%以上とすることで、コイル2と電機子鉄心1との間の熱伝導性を向上させることができる。そのため、コイル2に流れる電流によって発生する熱を効率よくコイル2から電機子鉄心1へ伝えることができる。また、スロット部21の内部には流路24が形成されている。この流路24に冷媒を流すことでコイル2を冷却することができる。
【0031】
図15は、本実施の形態に係るコイルエンド部の拡大上面図である。
図15は、軸方向の外側からコイルエンド部を見た図である。
図15(a)はクロス側のコイルエンド部22の拡大上面図であり、
図15(b)は反クロス側のコイルエンド部22の拡大上面図である。
図14に示すように、径方向にずれて隣接するスロット部21同士の断面形状は異なっている。そのため、
図15(a)に示すクロス側のコイルエンド部22の断面形状は、異なる断面形状のスロット部21同士を接続するために緩やかに変化している。これに対して、径方向に平行な隣接するスロット部21同士の断面形状は同じである。そのため、
図15(b)に示す反クロス側のコイルエンド部22の断面形状は、接続するスロット部21同士の断面形状と同じである。また、
図15(a)に示すように、クロス側のコイルエンド部22の端部はコイル端末23となっており、コイル端末23には流路24が形成されている。
【0032】
次に、本実施の形態に係る電機機器の製造方法について説明する。
本実施の形態における分割コイルは、実施の形態1のコイルと同様に、積層造形法と呼ばれる方法で製造することができる。実施の形態1の
図7に示す製造方法は、その一例である。
【0033】
図7に示すような製造方法で分割コイル20を製造した場合、分割コイル20の流路24の内部に導体粉末が残留する。そのため、この導体粉末を取り除く必要がある。実施の形態1のコイルのように電機子のコイル全体が一体構造で構成されている場合、流路に残留した導体粉末の除去が困難になる場合がある。本実施の形態においては、電機子のコイルを分割コイルで構成することで、流路に残留した導体粉末を容易に除去することができる。
【0034】
本実施の形態における分割コイルに絶縁被膜を形成する方法も、実施の形態1と同様に、電着塗装、粉体塗装などの方法を用いることができる。
【0035】
図16から
図19は、本実施の形態における電機機器の組み立て方法を説明する図である。
図16に示すように、積層造形法で製造された分割コイル20にティース12を径方向の内側から挿入する。次に、
図17に示すように、バックヨーク11を軸方向から挿入して、ティース12とバックヨーク11とを締結する。次に、
図18に示すように、コイル2全体を樹脂モールド4で覆う。このとき、分割コイル20のコイル端末23は、樹脂モールド4から露出させる。最後に、
図19に示すように、電流を導入するためのコイル端末23以外の隣接するコイル端末23同士をU字型のパイプ25で接続する。
【0036】
このように構成された電機機器においては、複数のスロット部の断面形状をスロットの断面を埋めるために多角形にすることで、コイルと電機子鉄心との間の熱伝導性を向上させることができる。そのため、コイルに流れる電流によって発生する熱を効率よくコイルから電機子鉄心へ伝えることができる。
【0037】
また、本実施の形態の電機機器においては、積層造形法でコイルを製造しているので、スロット部同士の接合をスロットから突出した部分で溶接する必要がない。その結果、本実施の形態の電機機器においては、コイルエンド部が軸方向外側へ拡大することを抑制することができる。
【0038】
また、本実施の形態の電機機器においては、積層造形法でコイルを製造しているので、少なくとも1つのスロット部の断面形状を他のスロット部の断面形状と異なるように構成すことができると共に、断面形状が異なるスロット部と他のスロット部とをティースを挟んで接続するコイルエンド部の周方向の断面形状を接続するスロット部の断面形状に合わせて変化させることができる。
【0039】
さらに、本実施の形態の電機機器においては、コイルに流路が形成されており、この流路に冷媒を流すことでコイルを冷却することができる。その結果、本実施の形態の電機機器においては、コイルにより多くの電流を流すことができる。
【0040】
本実施の形態の電機機器を着磁装置として用いる場合、コイルには瞬間的に大電流が流れる。そのため、コイルの温度は瞬間的に200℃以上になる。この着磁装置においては、コイルの流路に冷媒を流すことで高温になったコイルを冷却する時間を短縮することができる。その結果、着磁装置としてのタクトタイムを短縮することができる。なお、コイルに流す電流は瞬間的な大電流であるため、表皮効果によってその電流はコイルの表面近傍を流れる。そのため、コイルに流路を設けた場合でも、コイルに流れる電流を減らす必要なない。
【0041】
実施の形態3.
図20は、実施の形態3に係る電機機器の断面図である。本実施の形態の電機機器は、実施の形態2で説明した電機機器と同様の構造である。ただし、コイルの構造が異なっている。
図20に示すように、本実施の形態の電機機器100においては、コイル2の内部の流路24に支柱26が形成されている。
【0042】
図21は、本実施の形態に係る電機子の拡大断面図である。
図21は、軸方向に直交する方向の断面図である。
図21に示すように、コイル2のスロット部21の断面形状は、スロット13の空間に対するスロット部21の占積率を大きくするために多角形となっている。本実施の形態の電機子においては、スロット部21の断面形状を多角形としてスロット部21の断面積の総和をスロット13の断面積に対して80%以上としている。すなわち、スロット部21に対するスロット部21の占積率を80%以上としている。スロット部21に対するスロット部21の占積率を80%以上とすることで、コイル2と電機子鉄心1との間の熱伝導性を向上させることができる。そのため、コイル2に流れる電流によって発生する熱を効率よくコイル2から電機子鉄心1へ伝えることができる。また、スロット部21の内部には流路24が形成されている。この流路24に冷媒を流すことでコイル2を冷却することができる。さらに、流路24の内部には支柱26が形成されている。なお、本実施の形態の電機機器の製造方法は、実施の形態2の電機機器の製造方法と同様であるので、説明は省略する。
【0043】
このように構成された電機機器においては、複数のスロット部の断面形状をスロットの断面を埋めるために多角形にすることで、コイルと電機子鉄心との間の熱伝導性を向上させることができる。そのため、コイルに流れる電流によって発生する熱を効率よくコイルから電機子鉄心へ伝えることができる。
【0044】
また、本実施の形態の電機機器においては、積層造形法でコイルを製造しているので、スロット部同士の接合をスロットから突出した部分で溶接する必要がない。その結果、本実施の形態の電機機器においては、コイルエンド部が軸方向外側へ拡大することを抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態の電機機器においては、積層造形法でコイルを製造しているので、少なくとも1つのスロット部の断面形状を他のスロット部の断面形状と異なるように構成すことができると共に、断面形状が異なるスロット部と他のスロット部とをティースを挟んで接続するコイルエンド部の周方向の断面形状を接続するスロット部の断面形状に合わせて変化させることができる。
【0046】
本実施の形態の電機機器においては、コイルに流路が形成されており、この流路に冷媒を流すことでコイルを冷却することができる。その結果、本実施の形態の電機機器においては、コイルにより多くの電流を流すことができる。
【0047】
さらに、本実施の形態の電機機器においては、コイルの流路に支柱が形成されておりこの支柱が冷却フィンの役割を果たすので、冷媒による冷却効果がさらに向上する。その結果、本実施の形態の電機機器においては、コイルにより多くの電流を流すことができる。また、本実施の形態の電機機器を着磁装置として用いる場合、着磁装置としてのタクトタイムをさらに短縮することができる。
【0048】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独でまたは様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0049】
1 電機子鉄心、2 コイル、3 空間、4 樹脂モールド、10 電機子、11 バックヨーク、12 ティース、13 スロット、20 分割コイル、21 スロット部、22 コイルエンド部、23 コイル端末、24 流路、25 パイプ、26 支柱、100 電機機器。