(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164421
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】免震留具
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20241120BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20241120BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F16F15/02 L
E04H9/02 331D
F16F15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079882
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】523178123
【氏名又は名称】小坂 良伸
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】小坂 良伸
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB13
2E139AC19
2E139CA01
2E139CA07
2E139CA13
2E139CA18
2E139CB01
2E139CB04
2E139CB05
2E139CB07
2E139CC02
3J048AA03
3J048BC05
3J048BG02
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】揺れが小さくなると自然に定位置に戻る構造であり、横揺れ及び縦揺れに対して充分な緩衝力を有し、メンテナンスフリーな免震留具を提供する。
【解決手段】 円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面11が形成され、下面側の中心部にアンカーボルト1の嵌込筒部12が形成されたスリ鉢状受部材10と、該スリ鉢状受部材10に組み合う球体20と、該球体20を納める球体収納空間31を、中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部32を有し、球体収納空間31の外周縁から鍔部32の外周縁に向けて、鍔部32の厚みが減少する傾斜部32aが、鍔部32の下面側に形成され、さらに、鍔部32より上方に伸びる上方突出部分36を有する主軸部材30と、該主軸部材30の鍔部32に接触するドーナツ状の皿バネ40と、皿バネ接触部材50と、外筒60と、パッキン70と、中心部が主軸部材30と一体となる土台受部材80とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面が形成されたスリ鉢状受部材と、
該スリ鉢状受部材に組み合う球体と、
該球体を納める球体収納空間を、中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部を有し、球体収納空間の外周縁から鍔部の外周縁に向けて、鍔部の厚みが減少する傾斜部が、鍔部の下面側に形成され、さらに、鍔部より上方に伸びる上方突出部分を有する主軸部材と、
該主軸部材の鍔部の上方にスライド自在に位置するドーナツ状の弾性体と、
該ドーナツ状の弾性体をスライド自在に収納すると共に、前記スリ鉢状受部材と一体となる外筒と、
該外筒の上面側に位置し、円盤状で、中心部に前記主軸部材が通る中心孔を有し、上面側が土台との接触面となり、中心部が前記主軸部材と一体となる土台受部材とを有することを特徴とする、免震留具。
【請求項2】
円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面が形成されたスリ鉢状受部材と、
該スリ鉢状受部材に組み合う球体と、
該球体を納める球体収納空間を、中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部を有し、球体収納空間の外周縁から鍔部の外周縁に向けて、鍔部の厚みが減少する傾斜部が、鍔部の下面側に形成され、さらに、鍔部より上方に伸びる上方突出部分を有する主軸部材と、
該主軸部材の鍔部の上方にスライド自在に位置するドーナツ状の皿バネと、
該ドーナツ状の皿バネをスライド自在に収納すると共に、前記スリ鉢状受部材と一体となる外筒と、
該外筒の上面に接触するドーナツ状の金属パッキンと、
該外筒の上面に接触する金属パッキンの上面側に位置し、円盤状で、中心部に前記主軸部材が通る中心孔を有し、上面側が土台との接触面となり、前記金属パッキンの上面と接触しつつ外筒の上方に位置し、中心部が前記主軸部材と一体となる土台受部材とを有することを特徴とする、免震留具。
【請求項3】
前記スリ鉢状受部材の中心部に、球体の直径を10とすると、3~5の直径の中心穴が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の免震留具。
【請求項4】
前記スリ鉢状受部材の中心部に、球体の直径を10とすると、3~5の直径の中心穴が形成されると共に、該中心穴から外部に通じる水抜通路が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の免震留具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震留具に関し、詳細には、住宅等の基礎と土台との間に設置する免震留具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の地震対策として、特許文献1には、地盤と建物を支える基礎と土台との間に免震空間部を設け、免震空間部の少なくとも三カ所に免震機能部を分散配置しており、免震機能部が下支持体と、下支持体に相対向する上支持体と、上下支持体間に介在する球体とから成り、下支持体に上向き皿状面を、上支持体に下向き皿状面を備え、球体が上向き皿状面と下向き皿状面とに当接していて、地震時に定位置から任意方向に転がり、地震の減少に伴い定位置に自然に戻る構造のものが記載されている。
【0003】
前記免震機能部は、地震エネルギーを緩衝し得るもので、特に横揺れに対して緩衝力を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものは、揺れが小さくなると自然に定位置へと戻る構造であり、横揺れに対しては緩衝力を有するが、縦揺れに対して充分な緩衝力を有していない。
【0006】
したがって、本発明の解決しようとする課題は、揺れが小さくなると自然に定位置に戻る構造であり、横揺れ及び縦揺れに対して充分な緩衝力を有する、免震留具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0008】
第1に、
円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面が形成され、下面側に突出部が形成されたスリ鉢状受部材と、
該スリ鉢状受部材に組み合う球体と、
該球体を納める球体収納空間を、中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部を有し、球体収納空間の外周縁から鍔部の外周縁に向けて、鍔部の厚みが減少する傾斜部が、鍔部の下面側に形成され、さらに、鍔部より上方に伸びる上方突出部分を有する主軸部材と、
該主軸部材の鍔部の上方にスライド自在に位置するドーナツ状の弾性体と、
該ドーナツ状の弾性体と接触する弾性体接触部材と、
該弾性体接触部材をスライド自在に収納することで、ドーナツ状の弾性体をスライド自在に収納することになると共に、前記スリ鉢状受部材と一体となる外筒と、
該外筒の上面側に位置し、円盤状で、中心部に前記主軸部材が通る中心孔を有し、上面側が土台との接触面となり、下面側には中心孔から外周側に向けて厚みが減少する勾配面を有し、中心部が前記主軸部材と溶接で一体となる土台受部材とを有することを特徴とする、免震留具。
【0009】
第2に、
円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面が形成され、下面側の中心部に突出部としてアンカーボルトの嵌込筒部が形成されたスリ鉢状受部材と、
該スリ鉢状受部材に組み合う球体と、
該球体を納める球体収納空間を、中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部を有し、球体収納空間の外周縁から鍔部の外周縁に向けて、鍔部の厚みが減少する傾斜部が、鍔部の下面側に形成され、さらに、鍔部より上方に伸びる上方突出部分を有する主軸部材と、
該主軸部材の鍔部の上方にスライド自在に位置するドーナツ状の皿バネと、
該皿バネと接触する皿バネ接触部材と、
該皿バネ接触部材をスライド自在に収納することで、ドーナツ状の皿バネをスライド自在に収納することになると共に、前記スリ鉢状受部材と一体となる外筒と、
該外筒の上面に接触するドーナツ状の金属パッキンと、
該外筒の上面に接触する金属パッキンの上面側に位置し、円盤状で、中心部に前記主軸部材が通る中心孔を有し、上面側が土台との接触面となり、下面側には中心孔から外周側に向けて厚みが減少する勾配面を有し、前記金属パッキンの上面と接触しつつ外筒の上方に位置し、中心部が前記主軸部材と一体となる土台受部材とを有することを特徴とする、免震留具。
【0010】
第3に、
前記スリ鉢状受部材の中心部に、球体の直径を10とすると、3~5の直径の中心穴が形成されていることを特徴とする、前記第1または第2に記載の免震留具。
【0011】
第4に、
前記スリ鉢状受部材の中心部に、球体の直径を10とすると、3~5の直径の中心穴が形成されると共に、該中心穴から外部に通じる水抜通路が形成されていることを特徴とする、前記第1または第2に記載の免震留具。
【0012】
第5に、
前記スリ鉢状受部材のスリ鉢状凹面が、中心から外周に向けて0.7~1.3センチメートルの距離で0.5~1.5ミリメートルの高さを有する第1勾配面を有し、第1勾配面に連続して0.7~1.3センチメートルの距離で2.5~3.5ミリメートルの高さを有する第2勾配面を有することを特徴とする、前記第1~第4のいずれか一つに記載の免震留具。
【0013】
第6に、
前記皿バネ接触部材の上面において、複数の同心円上の各位置に複数の突起体を等間隔で設けたことを特徴とする、前記第1~第5のいずれか一つに記載の免震留具。
【0014】
第7に、
前記スリ鉢状受部材のスリ鉢状凹面に、複数の同心円状の溝部を形成すると共に、ヤスリ加工を行うことを特徴とする、前記第1~第6のいずれか一つに記載の免震留具。
【0015】
第8に、
円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面が形成され、下面側の中心部に突出部としてアンカーボルトの嵌込筒部が形成されたスリ鉢状受部材と、
該スリ鉢状受部材に組み合う球体と、
該球体を納める球体収納空間を、中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部を有し、球体収納空間の外周縁から鍔部の外周縁に向けて、鍔部の厚みが減少する傾斜部が、鍔部の下面側に形成され、さらに、鍔部より上方に伸びる上方突出部分を有する主軸部材と、
該主軸部材の鍔部の上方にスライド自在に位置するドーナツ状の皿バネと、
該皿バネを収納するための、上部皿バネ接触部材と下部皿バネ接触部材との分割構造による皿バネ接触部材と、
該皿バネ接触部材をスライド自在に収納することで、ドーナツ状の皿バネをスライド自在に収納することになると共に、前記スリ鉢状受部材と一体となる外筒と、
該外筒の上面側に位置し、円盤状で、中心部に前記主軸部材が通る中心孔を有し、上面側が土台との接触面となり、下面側には中心孔から外周側に向けて厚みが減少する勾配面を有し、中心部が前記主軸部材と一体となる土台受部材とを有することを特徴とする、免震留具。
【0016】
第9に、
円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面が形成され、下面側の中心部に突出部としてアンカーボルトの嵌込筒部が形成されたスリ鉢状受部材と、
該スリ鉢状受部材に組み合う球体と、
該球体を納める球体収納空間を、中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部を有し、球体収納空間の外周縁から鍔部の外周縁に向けて、鍔部の厚みが減少する傾斜部が、鍔部の下面側に形成され、さらに、鍔部より上方に伸びる上方突出部分を有する主軸部材と、
該主軸部材の鍔部の上方にスライド自在に位置するドーナツ状の弾性体と、
該弾性体を収納するための、上面側弾性体接触部材と下面側弾性体接触部材との分割構造による弾性体接触部材と、
該弾性体接触部材をスライド自在に収納することで、ドーナツ状の弾性体をスライド自在に収納することになると共に、前記スリ鉢状受部材と一体となる外筒と、
該外筒の上面側に位置し、円盤状で、中心部に前記主軸部材が通る中心孔を有し、上面側が土台との接触面となり、下面側には中心孔から外周側に向けて厚みが減少する勾配面を有し、中心部が前記主軸部材と一体となる土台受部材とを有することを特徴とする、免震留具。
【0017】
第10に、
前記弾性体接触部材の外側面において、複数の同心円上の各位置に複数の突起体を等間隔で設けたことを特徴とする、前記第9に記載の免震留具。
【0018】
第11に、
前記水抜通路に通じる水抜溝が形成されており、該水抜溝の天井面が中心から外部に向けて下向き勾配となる傾斜面であることを特徴とする、前記第4に記載の免震留具。
【0019】
ここで、弾性体としては、皿バネの他に、20年以上、好ましくは50年以上の耐久性を確保可能な軟体の物性を有するものであればよく、特殊な防振ゴム、減衰ゴム、バネ入りゴム等を採用することができる。
【0020】
前記主軸部材における鍔部より上方に伸びる上方突出部分については、土台受部材と組み合う部分から上部の外周にネジ山を形成して長軸として形成することができる他に、土台受部材と組み合う部分より上部の外周にねじ山を形成せずに短円柱状の短軸として形成することができる。
【0021】
前記主軸部材における鍔部より上方に伸びる上方突出部分を長軸として、土台受部材と組み合う部分から上部の外周にネジ山を形成したものは、先端部分を土台に形成された貫通孔を通ってナットで固定できる。
【0022】
前記主軸部材における鍔部より上方に伸びる上方突出部分を短軸として、土台受部材と組み合う部分より上部の外周にねじ山を形成しないものは、短軸部分を土台の下面側から形成した短円柱状の凹状部に組み合わせることで固定できる。
【0023】
前記スリ鉢状受部材の下面側に形成された突出部は、基礎の上面側に形成された短円柱状の凹状部に組み合わせるものであり、突出部としてアンカーボルトの嵌込筒部が形成されている場合には、凹状部の中央部から伸びるアンカーボルトに嵌込筒部をねじ込むことで、基礎に形成された凹状部に組み合わせることを可能とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0025】
本発明の免震留具は、スリ鉢状凹面が形成されたスリ鉢状受部材と、球体と、主軸部材と、弾性体とを組み合わせた構造なので、揺れが小さくなると自然に定位置へと戻ることが可能であり、横揺れ及び縦揺れに対して充分な緩衝力を有するものである。
【0026】
特に、下面側に外側に向けて厚みが減少する勾配面を有する土台受部材と、弾性体を組み合わせているので、縦揺れを弾性体で対応すると共に、横揺れに対しても、弾性体と土台受部材との間で作用する縦方向の動きに変換することで対応することができる。
【0027】
ここで、例えば、弾性体として皿バネの種類、厚み、枚数、取り付け向きや組み合わせを調整することで、揺れに対する緩衝力を調整することができる。
【0028】
また、ドーナツ状のパッキンを有するものは、防水効果を高めることができるので、メンテナンスフリーで、降雨や床上浸水等の水害対応も可能となる。
【0029】
さらに、スリ鉢状受部材の中心部に中心穴が形成されたものは、中心穴に球体が嵌まり込むことで、定位置が固定されると共に、風等による微小な横揺れの際には球体が動かないようにすることができる。
【0030】
そして、スリ鉢状受部材の中心部に、中心穴と水抜通路が形成されたものは、万が一、水分が内部に侵入しても排出されるので、水分による悪影響を避けることが可能となる。
【0031】
加えて、スリ鉢状受部材のスリ鉢状凹面に、第1勾配面と第2勾配面とを有するものは、小さな揺れの際には第1勾配面で対応し、揺れが大きくなった際にはブレーキ効果が大きい第2勾配面で対応することができる。
【0032】
その上、弾性体接触部材の外側面等の接触面において、突起体を設けたものは、接触面積を減少させることで、固着防止を図ることができるので、いつ発生するか不明な地震の際でも、安定した摩擦状態を提供することができる。
【0033】
さらにまた、スリ鉢状受部材のスリ鉢状凹面に溝部を形成してヤスリ加工を行ったものは、球体をスムーズに動作させることが可能となる。
【0034】
弾性体として、皿バネを採用したものは、ゴム等と比較すると耐久性に優れており、ステンレス等の防サビ対応金属の皿バネとすることで、メンテナンスフリーとなり半永久的に作動し、簡単な構造で作業性に優れ、安価で提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の免震留具の実施例1について、一部を切断して示す説明図である。
【
図2A】本発明の免震留具の実施例1について、主軸部材を含む部品の斜視図である。
【
図2B】本発明の免震留具の実施例1について、皿バネ接触部材を含む部品の斜視図である。
【
図2C】本発明の免震留具の実施例1について、土台受部材を含む部品の斜視図である。
【
図2D】本発明の免震留具の実施例1について、皿バネ接触部材の一部の斜視図である。
【
図2E】本発明の免震留具の実施例1について、球体とスリ鉢状受部材の一部の斜視図である。
【
図3A】本発明の免震留具の実施例1について、第1動作の説明図である。
【
図3B】本発明の免震留具の実施例1について、第2動作の説明図である。
【
図3C】本発明の免震留具の実施例1について、第3動作の説明図である。
【
図3D】本発明の免震留具の実施例1について、第4動作の説明図である。
【
図4】本発明の免震留具の実施例2の要部を拡大した説明図である。
【
図5】本発明の免震留具の実施例3について、一部を切断して示す説明図である。
【
図6】本発明の免震留具の実施例4について、一部を切断して示す説明図である。
【
図7】本発明の免震留具の実施例5について、一部を切断して示す説明図である。
【
図8】本発明の免震留具の実施例6の要部の説明図である。
【
図9】本発明の免震留具の実施例7の要部の説明図である。
【
図10】本発明の免震留具の実施例8について、一部を切断して示す説明図である。
【
図11】本発明の免震留具の実施例9について、一部を切断して示す説明図である。
【
図12】本発明の免震留具の実施例10について、一部を切断して示す説明図である。
【
図13】本発明の免震留具の実施例11について、一部を切断して示す説明図である。
【
図14】本発明の免震留具の実施例12の要部の説明図である。
【
図15】本発明の免震留具の実施例13について、一部を切断して示す説明図である。
【
図16】本発明の免震留具の実施例14の要部の説明図である。
【
図17】本発明の免震留具の実施例15の要部の説明図である。
【
図18】本発明の免震留具の実施例16の要部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ここで、添付図面において同一の部材には同一符号を付しており、また重複した説明は省略されている。
【0037】
また、添付図面において、同一部材について多少の変形例や、ネジ山等の一部を省略して示す場合もある。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【実施例0038】
図1または
図2A~
図2Cに示すとおり、本実施例の免震留具は、スリ鉢状受部材10と、直径が1センチメートルの鉄の球体20と、主軸部材30と、弾性体としての皿バネ40と、弾性体接触部材としての皿バネ接触部材50と、外筒60と、パッキン70と、土台受部材80とから構成されている。
【0039】
なお、
図1中、符号1は、図示は省略する基礎に埋め込まれたM12規格のアンカーボルトの先端部分を示している。
【0040】
[スリ鉢状受部材]
【0041】
スリ鉢状受部材10は、円盤状で、上面側にスリ鉢状凹面11が形成され、下面側の中心部にはアンカーボルト1の嵌込筒部12が一体となって形成され、略T型断面形状を有するものである。
【0042】
スリ鉢状凹面11は、中心から外周に向けて1センチメートルの距離で1ミリメートルの高さを有する第1勾配面11aを有し、第1勾配面11aに連続して1センチメートルの距離で3ミリメートルの高さを有する第2勾配面11bを有している。
【0043】
このような勾配の程度が途中で異なる勾配面は、雲形定規等の曲線定規を用いることで、形成することができる。
【0044】
スリ鉢状凹面11には、
図2Eに示すように、複数の同心円状の溝部11cが形成され、該溝部11cには、ヤスリ加工処理が行われている。
【0045】
図1に示すとおり、スリ鉢状受部材10の中心部には、直径4ミリメートルの中心穴13が形成されている。
【0046】
中心穴13には、外部に向かい斜下方向に通じる直径1ミリメートルの水抜通路14が、90度の間隔を保ち、4箇所形成されている(図示は省略)。
【0047】
嵌込筒部12は、M12規格のアンカーボルト1と組み合うために、内面にネジ山12aが形成されている。
【0048】
[球体]
【0049】
球体20は、耐荷重が約5トンの鉄球で、下側がスリ鉢状受部材10のスリ鉢状凹面11に接触して組み合うものであり、上側は主軸部材30に接している。
【0050】
[主軸部材]
【0051】
主軸部材30は、球体20を納める球体収納空間31を中心軸の下端側に有すると共に、中心軸の周囲に鍔部32を有し、さらに、該鍔部32より上方に伸びる上方突出部分36を有している。
【0052】
本実施例における上方突出部分36は、土台受部材80と組み合う部分から上部の外周にネジ山が形成され、長軸の棒状部を有するものとして形成されている。
【0053】
鍔部32の上面側は、平滑面で、皿バネ40がスライド接触する。
【0054】
鍔部32の裏面側には、球体収納空間31の外周下端縁から鍔部32の外周縁に向けて、鍔部32の厚みが減少する傾斜部32aが形成されている。
【0055】
主軸部材30の長軸の棒状部には、図示は省略するが、土台にナットで固定するために、本実施例ではM12規格のナットと組み合うネジ山が形成されている。
【0056】
主軸部材30の上方突出部分36における土台受部材80と組み合う部分より下側は、ネジ山形成部分の直径よりも太い基部33が形成されている。
【0057】
ここで、該基部33の外周には、ネジ山は形成されていない。
【0058】
その結果、基部33の上端側には、段差部34が形成されている。
【0059】
この段差部34の形成位置は、主軸部材30に後述の土台受部材80を組み合わせた際に、後述のパッキン70の厚みを考慮し、パッキン70を適度に押しつぶして変形させる間隔を保持する位置、及び、後述の皿バネ40の弾性力を考慮して調整されている。
【0060】
[皿バネ]
【0061】
皿バネ(ベルビルスプリング)40は、主軸部材30の鍔部32の平滑面に接触するドーナツ状のものであり、中心に孔を有する円盤状の板を円錐状にしたものである。
【0062】
本実施例では、単体荷重が限界値7397Nである皿バネ40が2枚用いられているが、図面ではタワミ等は省略して平板状のものとして図示されている。
【0063】
ここで、皿バネ40の種類、厚み、枚数、取り付け向きや組み合わせを調整することで、揺れに対する緩衝力を調整することができる。
【0064】
[皿バネ接触部材]
【0065】
皿バネ接触部材50は、中央に開口部を有する円形板51と、円筒状の周囲側壁52とを有し、下面側が開放しており、皿バネ40を収納するものであり、たわみ調整を可能とし、ストッパーの役割を果たすものである(
図3C、
図3D参照)。
【0066】
すなわち、皿バネ40に限界以上の荷重が生じた際に、周囲側壁52が鍔部32に接触することでストッパーの役割を果たしている(
図3D参照)。
【0067】
皿バネ接触部材50の上面である円形板51の表面には、
図2Eに示すように、複数の同心円上の各位置に、複数の突起体51aが等間隔で設けられている。
【0068】
該突起体51aにより、固着を防ぐことが可能となり、メンテナンスフリーな減震効果を期待することができる。
【0069】
[外筒]
【0070】
外筒60は、中央に開口部を有する円形板61と、円筒状の周囲側壁62とを有し、下面側が開放しており、皿バネ接触部材50を収納するものである。
【0071】
ここで、
図2Eに示すように、円形板51の表面に突起体51aを設ける変わりに、図示は省略するが、該円形板51の表面と接触する円形板61の下面側に、複数の突起体を設けることもできる。
【0072】
周囲側壁62の内面下端部は、円盤状のスリ鉢状受部材10の外周面と溶接処理によって一体となって構成されている。
【0073】
円形板61の内周側の上端角部は、内側に削れるような傾斜部61aを有している。
【0074】
該傾斜部61aは、地震の際に、主軸部材30と共に土台受部材80が動いても、該土台受部材80の位置がスリ鉢状凹面11によって上昇するので、土台受部材80の勾配面80aと接触することはない。
【0075】
[パッキン]
【0076】
パッキン70は、外筒60の上面となる円形板61の表面に接触するドーナツ状のものである。
【0077】
材質は、鉛や錫等の金属が用いられ、締め込んだ際に形状を記憶しておくことができ、揺れが収まった時にもとの定位置になり、水の侵入を防ぐことができるので、定期的なメンテナンスを不要としている。
【0078】
なお、50年以上の耐久性を有する特殊なゴムをパッキンとして採用することもできる。
【0079】
[土台受部材]
【0080】
土台受部材80は、円盤状で、中心部に、主軸部材30の上方突出部分36の段差部34より上部のネジ山形成部分と組み合うネジ山が形成された、中心孔81を有し、土台(図示は省略)との接触面となる上面側が平滑面である。
【0081】
下面側には、中心孔81から外周側に向けて厚みが減少する勾配面80aを有している。
【0082】
組み立てた際には、土台受部材80は、下面側の勾配面80aの形成部分より外周部分がパッキン70の上面と接触しつつ、外筒60の上方側に位置する。
【0083】
土台受部材80の中心孔81を、主軸部材30のネジ山形成部分に組み合わせ、段差部34に当たる位置まで回し込むことで精密な組み立てが可能となり、最後に嵌合部分を溶接処理することで、土台受部材80と主軸部材30とが一体となり、水の侵入を防ぐことが可能となる。
【0084】
次に、
図1、
図3A~
図3Dを参照しながら、本実施例にかかる免震留具の作用について説明する。
【0085】
【0086】
平時及び微小な揺れの際は、
図1に示すように、主軸部材30の球体収納空間31に収納された球体20の最下端部が、中心孔13に入り込みむと共に、皿バネ40を格納する皿バネ接触部材50が主軸部材30の周囲に均等に位置した状態で、下側の皿バネ40の下方側が主軸部材30の鍔部32の上面に接した状態となり、適度な緩衝力によって球体20が定位置に保持されている。
【0087】
【0088】
揺れが少し強まると、球体20が中心孔13から飛び出し、スリ鉢状凹面11の第1勾配面11aの所に位置する。
【0089】
この際、主軸部材30も右側に移動し、皿バネ接触部材50との距離が近くなる。
【0090】
【0091】
さらに揺れが強くなると、球体20はスリ鉢状凹面11の外周方向に向けて更に移動する。
【0092】
この際、主軸部材30の基部33は、皿バネ接触部材50と接触する。
【0093】
【0094】
第2動作より揺れが強くなると、球体20はスリ鉢状凹面11の第2勾配面11bに進み、外周方向に向けて更に移動する。
【0095】
この際、主軸部材30は、皿バネ接触部材50と共に外周方向に移動する。
【0096】
皿バネ接触部材50内部では、収納されている皿バネ40に力がかかることで、横方向の揺れも縦方向に作用する力として対応することが可能となる。
【0097】
【0098】
第3動作より揺れが強くなると、球体20はスリ鉢状凹面11の外周方向に向けて更に移動する。
【0099】
この際、主軸部材30は、皿バネ接触部材50と共に外周方向に移動し、皿バネ接触部材50の周囲側壁52の外周面が、外筒60の周囲側壁62の内周面に当たり、限界位置となる。
【0100】
[収束時]
【0101】
揺れが弱くなるにつれて、第4動作、第3動作、第2動作、第1動作へと変化し、揺れが無くなれば平時の状態の所定位置に戻る。
【0102】
ここで、球体20は、スリ鉢状凹面11を低い方に向かって自然に移動するが、皿バネ40の緩衝力も加わるので、よりスムーズに動作することができる。
【0103】
本実施例の免震留具は、スリ鉢状凹面11が形成されたスリ鉢状受部材10と、球体20と、主軸部材30と、皿バネ40とを組み合わせた構造なので、揺れが小さくなると自然に定位置へと戻ることが可能であり、横揺れ及び縦揺れに対して充分な緩衝力を有するものである。
【0104】
特に、
図1に示すように、外側に向けて厚みが減少することで形成される勾配面80aを下面側に有する土台受部材80と、皿バネ40を組み合わせることで、より効果的に、縦揺れを皿バネ40で対応すると共に、横揺れに対しても、皿バネ40と土台受部材80との間で作用する縦方向の動きに変換することで対応することができる。
【0105】
ここで、皿バネ40の種類、厚さ、枚数、取り付け向きや組み合わせを調整することで、揺れに対する緩衝力を調整することができる。
【0106】
また、ドーナツ状の鉛や錫等の金属によるパッキン70によって、降雨や水害等における防水効果を高めることができる。
【0107】
さらに、スリ鉢状受部材10の中心部に中心穴13が形成されたものは、中心穴13に球体20が嵌まり込むことで、定位置が固定されると共に、微小な横揺れの際には球体20が動かないようにすることができる。
【0108】
そして、スリ鉢状受部材10の中心部に、中心穴13と水抜通路14が形成されたものは、万が一、水分が内部に侵入しても排出されるので、水分による悪影響を避けることが可能となる。
【0109】
加えて、スリ鉢状受部材10のスリ鉢状凹面11に、勾配の程度が途中で異なる第1勾配面11aと第2勾配面11bとを有するものは、揺れの程度に応じて段階的に対応可能であり、例えば、小さな揺れの際には第1勾配面11aで対応し、揺れが大きくなった際にはブレーキ効果が大きい第2勾配面11bで対応することができる。
【0110】
その上、皿バネ接触部材50の上面において、突起体51aを設けたものは、外筒60との接触面積を減少させることで、固着防止を図ることができる。
【0111】
さらにまた、スリ鉢状受部材10のスリ鉢状凹面11に溝部11cを形成してヤスリ加工を行ったものは、球体20をスムーズに動作させることが可能となる。