(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164422
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】発電設備制御システム、発電設備制御方法、および発電設備制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20241120BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241120BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241120BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 120
H02J3/32
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079883
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 雄
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 道彦
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064DA03
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】出力抑制指示に応じた出力抑制の実現および再生可能エネルギーの廃棄の抑制の両立を図る。
【解決手段】調整部15Cは、出力抑制情報を受付けた場合、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、PVPCS出力率、および、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画の少なくとも一方を調整する。発電設備制御部15Dは、調整されたPVPCS出力率である調整後PVPCS出力率および調整された充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終PVPCS出力率および最終充放電計画に基づいて、PVPCS22および蓄電池PCS24を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御部と、再生可能エネルギー電源と、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および電力系統へ向かって出力される電力の出力率を制御する出力率制御部と、を有する発電設備から前記電力系統へ出力される電力の出力抑制指示を表す出力抑制情報を受付ける受付部と、
前記出力抑制情報を受付けた場合、前記出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が前記蓄電池に充電されるように、前記出力率、および、電力取引市場の約定電力量によって表される発電計画に応じた前記蓄電池の充放電計画、の少なくとも一方を調整する調整部と、
調整された前記出力率である調整後出力率および調整された前記充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終出力率および最終充放電計画に基づいて、前記出力率制御部および前記蓄電池制御部を制御する発電設備制御部と、
を備える発電設備制御システム。
【請求項2】
前記調整部は、
前記充放電計画が前記蓄電池への充電を表し、前記発電計画によって表される前記約定電力量と前記充放電計画によってマイナスの値によって表される充電量との加算値が前記抑制出力量より大きい場合、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断し、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方を調整する、
請求項1に記載の発電設備制御システム。
【請求項3】
前記調整部は、
前記充放電計画が前記蓄電池への充放電無または放電を表し、前記発電計画によって表される前記約定電力量が前記抑制出力量より大きい場合、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断し、前記出力率および前記充放電計画、の少なくとも一方を調整する、
請求項1に記載の発電設備制御システム。
【請求項4】
前記調整部は、
前記発電計画によって表される前記約定電力量が売電を表す値であり、前記充放電計画によって表される充放電量が充電および放電を示さず、且つ、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合、
前記約定電力量から前記抑制出力量を減算した第1減算結果と前記蓄電池の充電余力との最小値である前記超過発電量の電力が前記蓄電池に充電されるように、前記充放電計画を調整した前記調整後充放電計画を演算し、
前記約定電力量から前記抑制出力量を減算し前記調整後充放電計画によって表される充放電量を加算した計算結果を前記約定電力量から減算した減算結果を、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および前記電力系統へ向かって出力される調整後出力量とする、前記調整後出力率を演算する、
請求項2または請求項3に記載の発電設備制御システム。
【請求項5】
前記調整部は、
前記発電計画によって表される前記約定電力量が売電を表さない値であり、前記充放電計画によって表される充放電量が充電を表し、且つ、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合、
前記充放電計画によって表される充放電量を前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および前記電力系統へ向かって出力される調整後出力量とする、前記調整後出力率を演算する、
請求項2または請求項3に記載の発電設備制御システム。
【請求項6】
前記調整部は、
前記発電計画によって表される前記約定電力量が売電を表す値であり、前記充放電計画によって表される充放電量が充電を示し、且つ、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合において、
前記抑制出力量が前記約定電力量以上である場合には、前記約定電力量から前記充放電計画によってマイナスの値によって表される充電量を減算した減算結果を、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および前記電力系統へ向かって出力される調整後出力量とする、前記調整後出力率を演算する、
請求項2または請求項3に記載の発電設備制御システム。
【請求項7】
前記調整部は、
前記発電計画によって表される前記約定電力量が売電を表す値であり、前記充放電計画によって表される充放電量が充電を示し、且つ、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合において、
前記出力抑制情報によって表される抑制出力量が前記約定電力量未満である場合には、前記約定電力量から前記出力抑制情報によって表される抑制出力量を減算した第1減算結果と前記蓄電池の充電余力との最小値と、前記充放電計画によって表される充放電量と、の加算値である前記超過発電量の電力が前記蓄電池に充電されるように、前記充放電計画を調整した前記調整後充放電計画を演算し、
前記充放電計画によって表される充放電量と前記約定電力量との第1加算値から、前記抑制出力量と前記調整後充放電計画によって表される充放電量との第2加算値を減算した第1減算結果と、前記充放電計画によって表される充放電量とを、前記約定電力量から減算した第2減算結果を、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および前記電力系統へ向かって出力される調整後出力量とする、前記調整後出力率を演算する、
請求項2または請求項3に記載の発電設備制御システム。
【請求項8】
前記調整部は、
前記発電計画によって表される前記約定電力量が売電を表す値であり、前記充放電計画によって表される充放電量が放電を示し、且つ、前記出力率および前記蓄電池の充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合、
前記約定電力量から前記抑制出力量を減算した減算結果を、前記充放電計画によって表される放電量から減算した値を前記調整後充放電計画として演算し、
前記調整後充放電計画が放電を表す場合、前記約定電力量から前記充放電計画によってプラスの値によって表される放電量を減算した減算結果に、前記調整後充放電計画によって表される充放電量を加算した加算結果を、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および前記電力系統へ向かって出力される調整後出力量とする、前記調整後出力率を演算し、
前記調整後充放電計画が充電を表す場合、前記約定電力量から前記充放電計画によってプラスの値によって表される放電量を減算した減算結果を前記調整後出力量とする、前記調整後出力率を演算する、
請求項2または請求項3に記載の発電設備制御システム。
【請求項9】
前記調整部は、
前記再生可能エネルギー電源による発電量の実績値に基づいて、前記充放電計画を更に調整する、
請求項1に記載の発電設備制御システム。
【請求項10】
前記調整部は、
前記出力抑制情報を受付けるごとに、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方を調整する、
請求項1に記載の発電設備制御システム。
【請求項11】
前記調整部は、
前記発電計画が更新されるごとに、前記出力率および前記充放電計画の少なくとも一方を調整する、
請求項1に記載の発電設備制御システム。
【請求項12】
前記調整部は、
送配電事業者システムまたは前記送配電事業者システムから前記発電設備を介して、前記出力抑制情報を受付ける、
請求項1に記載の発電設備制御システム。
【請求項13】
発電設備制御システムで実行される発電設備制御方法であって、
蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御部と、再生可能エネルギー電源と、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および電力系統へ向かって出力される電力の出力率を制御する出力率制御部と、を有する発電設備から前記電力系統へ出力される電力の出力抑制指示を表す出力抑制情報を受付けるステップと、
前記出力抑制情報を受付けた場合、前記出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が前記蓄電池に充電されるように、前記出力率、および、電力取引市場の約定電力量によって表される発電計画に応じた前記蓄電池の充放電計画、の少なくとも一方を調整するステップと、
調整された前記出力率である調整後出力率および調整された前記充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終出力率および最終充放電計画に基づいて、前記出力率制御部および前記蓄電池制御部を制御するステップと、
を含む発電設備制御方法。
【請求項14】
コンピュータに実行させるための発電設備制御プログラムであって、
蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御部と、再生可能エネルギー電源と、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および電力系統へ向かって出力される電力の出力率を制御する出力率制御部と、を有する発電設備から前記電力系統へ出力される電力の出力抑制指示を表す出力抑制情報を受付けるステップと、
前記出力抑制情報を受付けた場合、前記出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が前記蓄電池に充電されるように、前記出力率、および、電力取引市場の約定電力量によって表される発電計画に応じた前記蓄電池の充放電計画、の少なくとも一方を調整するステップと、
調整された前記出力率である調整後出力率および調整された前記充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終出力率および最終充放電計画に基づいて、前記出力率制御部および前記蓄電池制御部を制御するステップと、
を含む発電設備制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電設備制御システム、発電設備制御方法、および発電設備制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの普及が進むにつれ、電力系統に出力される電力の出力抑制量が増加傾向にある。例えば、送配電事業者から発電設備へネットワーク経由等のオンライン制御により出力抑制指示を表す出力抑制情報が送信される。発電設備側では、出力抑制指示によって表される制限期間帯は、出力抑制指示によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力を廃棄することとなる。また、発電設備に蓄電池が備えられている場合であっても、オンライン制御の場合、再生可能エネルギーの電力系統への出力率を制御するPCS(Power Conditioning System)が出力制限処理を行うため、蓄電池への充電が行われず、再生可能エネルギーが廃棄される場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、従来技術では、出力抑制指示に応じた出力抑制の実現および再生可能エネルギーの廃棄の抑制の両立を図ることは困難であった。
【0005】
本発明の課題は、出力抑制指示に応じた出力抑制の実現および再生可能エネルギーの廃棄の抑制の両立を図ることができる、発電設備制御システム、発電設備制御方法、および発電設備制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の発電設備制御システムは、蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御部と、再生可能エネルギー電源と、前記再生可能エネルギー電源から前記蓄電池および電力系統へ向かって出力される電力の出力率を制御する出力率制御部と、を有する発電設備から前記電力系統へ出力される電力の出力抑制指示を表す出力抑制情報を受付ける受付部と、前記出力抑制情報を受付けた場合、前記出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が前記蓄電池に充電されるように、前記出力率、および、電力取引市場の約定電力量によって表される発電計画に応じた前記蓄電池の充放電計画、の少なくとも一方を調整する調整部と、調整された前記出力率である調整後出力率および調整された前記充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終出力率および最終充放電計画に基づいて、前記出力率制御部および前記蓄電池制御部を制御する発電設備制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかる電力システムの概要の一例を示す図である。
【
図2】実施形態にかかる発電設備制御システムおよび発電設備20の機能的構成の一例を示す図である。
【
図3】発電設備制御システムで扱う情報の一例の説明図である。
【
図4】調整部による調整処理の具体例を示す図である。
【
図5】実施形態の発電設備制御システムで実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】出力抑制情報を受付けるタイミングの異なる様々なタイミングパタンの一例の説明図である。
【
図7】実施形態および変形例の発電設備制御システムの一例のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る発電設備制御システム、発電設備制御方法、および発電設備制御プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下において、時刻とは、時間の瞬間を指す場合と、単位時間のその時間幅を指す場合の2種類がある。単位時間は、例えば、30分単位である。
【0009】
図1は、本実施形態にかかる電力システム1の概要の一例を示す図である。
【0010】
電力システム1は、発電設備制御システム10と、1または複数の発電設備20と、を備える。本実施形態では、電力システム1が、複数の発電設備20を備える形態を想定して説明する。複数の発電設備20は、発電BG(バランシンググループ)4の一部を構成する。発電BG4は、発電所や蓄電池などを更に含んでいてよい。発電設備20から出力された電力は電力系統3へ供給される。
【0011】
発電設備制御システム10は、複数の発電設備20の各々に設けられたPV(Photovoltaics)21の発電計画の作成、蓄電池23の充放電計画の作成、および後述する調整処理等を行う。発電設備制御システム10は、複数の発電設備20の各々ごとに、発電計画の作成、充放電計画の作成、および後述する調整処理等を行う。
【0012】
発電設備制御システム10は、例えば、アグリゲータ2に設けられている。アグリゲータ2は、複数の発電設備20の各々の発電量を予測し、電力取引市場5での売電や、需要家との電力の直接取引等を行う。また、アグリゲータ2は、発電設備20の発電計画等に基づいて発電設備20の各々の発電量等を制御することにより、電力系統3の負荷平準化に貢献する。
【0013】
発電設備20は、PV21と、PVPCS(Photovoltaics Power Conditioning System)22と、蓄電池23と、蓄電池PCS(Power Conditioning System)24と、を備える。
【0014】
PV21は、太陽光発電装置であり、再生可能エネルギー電源の一例である。太陽光発電装置は、太陽光パネルを備える。太陽光パネルは、n型及びp型の単結晶シリコン等の半導体ウェハのセルを直列及び並列に設置したセルの集合体であり、光起電力効果により光エネルギーを電力に変換する。
【0015】
発電設備20は、再生可能エネルギー電源を備えた構成であればよい。このため、発電設備20は、PV21に替えて、地熱、風、水などの自然界に存在する環境や資源を利用した発電装置を備えた構成であってもよい。また、複数種類の再生可能エネルギー電源が混在していても良い。本実施形態では、発電設備20が、太陽光発電装置であるPV21を再生可能エネルギー電源として備えた構成を一例として説明する。
【0016】
PVPCS22は、PV21から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される電力の出力率を制御する出力率制御部である。本実施形態では、PVPCS22から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される電力の出力率を、PVPCS出力率と称して説明する場合がある。また、PVPCS22から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される電力の出力量を、PVPCS出力量と称して説明する場合がある。
【0017】
PVPCS22は、PV21で発電された直流電力を交流電力に変換し、電力系統3へ供給する。また、PVPCS22は、後述する発電設備制御システム10による制御に応じて、PV21で発電された直流電力を蓄電池23へ供給する。
【0018】
蓄電池23は、電力の充電、および電力の放電を行う。詳細には、蓄電池25は、PV21で発電された電力により充電される。蓄電池23には、PV21で発電された電力がPVPCS22および蓄電池PCS24を介して供給され充電される。すなわち、発電設備20の蓄電池23は、PV21のみから充電される。
【0019】
蓄電池23は、例えば、陽極と負極とを交互に積層し電極間にセパレータを介在させたキャパシタ、リチウム電池等の蓄電池、および水の電気分解により水素を生成して貯蔵する水素電力貯蔵装置などである。
【0020】
蓄電池PCS24は、蓄電池23の充放電を制御する蓄電池制御部である。蓄電池23は、蓄電池PCS24の制御によって充電量および放電量が制御される。
【0021】
送配電事業者のシステム6は、電力系統3の需給バランスを保つために、出力抑制情報を発電設備20に対してオンライン制御により送信する。例えば、送配電事業者のシステム6は、発電設備20に対して直接または発電設備制御システム10を介して発電設備20へ出力抑制情報を送信する。
【0022】
出力抑制情報とは、発電設備20から電力系統3へ出力される電力の出力抑制指示を表す情報である。詳細には、出力抑制情報は、発電設備20からの出力を制限すべき制限期間における抑制出力率を表す情報である。
【0023】
抑制出力率は、単位時間ごとの出力上限を表す。抑制出力率は、例えば、発電設備20に設けられたPVPCS22の定格出力に対する出力上限の比率によって表される。具体的には、抑制出力率0%は、電力系統3への出力量がゼロであることを意味する。抑制出力率50%は、PVPCS22の定格出力の50%を出力上限とすることを意味する。なお、本実施形態では、抑制出力率は、PVPCS22の定格出力に対する出力上限の比率であるものとして説明する。しかし、抑制出力率は、発電計画に対する出力上限の比率等であってもよく、PVPCS22の定格出力に対する値に限定されない。
【0024】
本実施形態では、発電設備制御システム10は、複数の発電設備20の各々ごとに、発電計画の作成、充放電計画の作成、および、出力抑制情報に応じた充放電計画並びにPVPCS出力率の少なくとも一方の調整処理、等を実行する。
【0025】
発電設備制御システム10は、PC(Personal Computer)等であり、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)と、通信インタフェース(I/F)と、ディスプレイ等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置とを備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0026】
図2は、本実施形態にかかる発電設備制御システム10および発電設備20の機能的構成の一例を示す図である。
【0027】
発電設備20は、PV21と、PVPCS22と、蓄電池23と、蓄電池PCS24と、を備える。上述したように、PVPCS22は、PV21から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される電力の出力率であるPVPCS出力率を制御する。PVPCS22は、単位時間ごとのPVPCS出力率を制御する。蓄電池PCS24は、単位時間ごとの蓄電池23の充放電を制御する。単位時間とは、電力システム1で管理される管理時間である。本実施形態では、単位時間が30分である形態を一例として説明する。しかし、単位時間は、30分に限定されない。
【0028】
発電設備20のPVPCS22および蓄電池PCS24は、発電設備制御システム10による制御によってPV21および蓄電池23を制御する。詳細には、PVPCS22は、発電設備制御システム10から受付けた最終PVPCS出力率となるように、単位時間ごとのPVPCS出力率を制御する。蓄電池PCS24は、発電設備制御システム10から受付けた最終充放電計画に沿って、蓄電池23の充放電量を制御する。最終PVPCS出力率および最終充放電計画、並びにこれらの制御の詳細は後述する。
【0029】
発電設備20のPVPCS22および蓄電池PCS24は、単位時間ごとのPV21の発電量の実績値、蓄電池23の充電余力、等を発電設備制御システム10へ出力する。蓄電池23の充電余力とは、単位時間内に蓄電池23が充電可能な電力量(kWh)である。蓄電池23の充電余力は、蓄電池23の容量と、現在の充電残量と、蓄電池23の充電出力(kW)により定まる。
【0030】
次に、発電設備制御システム10について説明する。
【0031】
発電設備制御システム10は、PC(Personal Computer)等であり、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)と、通信インタフェース(I/F)と、ディスプレイ等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置とを備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。なお、発電設備制御システム10は、複数のPCまたは複数のCPUによって構成されていてもよい。
【0032】
発電設備制御システム10は、通信部11と、入力部12と、表示部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。通信部11、入力部12、表示部13、および記憶部14と、制御部15とは、バス等により通信可能に接続されている。
【0033】
通信部11は、発電設備20と通信する。また、通信部11は、電力取引市場5、送配電事業者のシステム6、広域機関、および外部に設けられた情報処理装置等とネットワークを介して通信する。
【0034】
入力部12は、ユーザによる操作入力を受付けるキーボード等の入力デバイスである。表示部13は、各種の情報を表示するディスプレイである。記憶部14は、各種の情報を記憶する。記憶部14は、例えば、HDDや、メモリ等である。
【0035】
制御部15は、情報処理を実行する演算部である。制御部15は、計画作成部15Aと、受付部15Bと、調整部15Cと、発電設備制御部15Dと、を備える。
【0036】
計画作成部15A、受付部15B、調整部15C、および発電設備制御部15Dの少なくとも1つは、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば、上記各部は、CPUなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0037】
計画作成部15Aは、発電設備20の発電計画および充放電計画を作成する。
【0038】
詳細には、計画作成部15Aは、PV21の発電量予測値を導出する。発電量予測値とは、単位時間ごとのPV21の発電量の予測値である。計画作成部15Aは、発電設備20から取得したPV21の発電量の実測値や、日照量等の気象情報等に基づいて、単位時間ごとの発電量予測値を導出する。なお、計画作成部15Aは、PV21の発電量の予測システム、入力部12、または記憶部14などから発電量予測値を取得することで、発電量予測値を導出してもよい。
【0039】
そして、計画作成部15Aは、PV21の単位時間ごとの発電量予測値および電力売電単価に基づいて、売電収益の予測値を最大化する発電計画および充放電計画を算出する。
【0040】
電力売電単価とは、PV21から出力される電力の単位時間ごとの売電単価である。電力売電単価は、電力取引市場5における取引価格予測値、および、契約により予め定められた取引価格の何れであってもよい。本実施形態では、電力売電単価が、単位時間ごとの取引価格予測値である形態を一例として説明する。計画作成部15Aは、例えば、電力取引市場5等から電力売電単価を取得することで、電力売電単価を導出すればよい。
【0041】
売電収益の予測値を最大化する充放電計画とは、電力売電単価の安い時間帯にPV21で発電された電力を蓄電池23へ充電し、その充電した電力を、電力売電単価の高い時間帯に電力系統3へ供給する充放電計画である。このような売電収益の予測値を最大化する充放電計画は、タイムシフト計画、等と称される場合がある。本実施形態では、計画作成部15Aは、翌日の24時間分の充放電計画を作成する形態を一例として説明する。計画作成部15Aは、発電量予測値および電力売電単価に基づいて、公知の方法により、PV21の売電収益の予測値を最大化する充放電計画を作成すればよい。
【0042】
充放電計画は、単位時間ごとの充電量または放電量を表したものである。充電量および放電量を総称して説明する場合、充放電量と称して説明する。本実施形態では、充放電計画には、充電量を表す場合にはマイナスの値によって表される電力量が示され、放電量を表す場合にはプラスの値によって表される電力量が示され、充放電無を表す場合には値「ゼロ」の電力量が示されるものとして説明する。
【0043】
計画作成部15Aは、発電量予測値と充放電計画から、単位時間ごとに売電する売電電力量を売り入札計画として決定する。計画作成部15Aは、決定した売り入札計画によって表される売電電力量の電力の売り入札を電力取引市場5に対して行う。電力取引市場5に対する入札により、電力取引市場5で約定された売電電力量である約定電力量が単位時間ごとに定まる。計画作成部15Aは、1日における単位時間ごとの約定電力量の群を、発電計画として作成する。すなわち、単位時間が30分である場合、計画作成部15Aは、1日分として48コマ分の単位時間ごとの約定電力量の群を、発電計画として作成する。
【0044】
また、計画作成部15Aは、約定電力量が売り入札計画によって表される売電電力量とは異なる電力量となった場合、約定電力量に応じて充放電計画を補正することで、充放電計画を作成する。このため、これらの処理により、計画作成部15Aは、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画、および発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画を作成する。
【0045】
受付部15Bは、発電設備20から電力系統3へ出力される電力の出力抑制指示を表す出力抑制情報を受付ける。上述したように、送配電事業者のシステム6は、出力抑制情報を発電設備20に対してオンライン制御により送信する。例えば、送配電事業者のシステム6は、発電設備20に対して直接または発電設備制御システム10を介して発電設備20へ、出力抑制情報を送信する。
【0046】
このため、受付部15Bは、送配電事業者のシステム6から直接、または送配電事業者のシステム6から発電設備20を介して、発電設備20に対する出力抑制情報を受付ける。なお、受付部15Bは、ユーザによる入力部12の操作指示によって入力された出力抑制情報を該入力部12から受付けてもよい。また、受付部15Bは、記憶部14に記憶されている出力抑制情報を読取ることで、出力抑制情報を受付けてもよい。
【0047】
調整部15Cは、受付部15Bで出力抑制情報を受付けた場合、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、PVPCS22のPVPCS出力率、および、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画、の少なくとも一方を調整する。
【0048】
図3は、発電設備制御システム10で扱う情報の一例の説明図である。
【0049】
計画作成部15Aは、単位時間ごとの発電量予測値を用いて、電力取引市場5による単位時間ごとの約定電力量の群からなる発電計画と、単位時間ごとの充電量、放電量、または充放電無を規定した充放電計画と、を作成する。また、受付部15Bは、単位時間ごとの抑制出力率を表す出力抑制情報を受付ける。
図3には、単位時間が30分であり、1日を48コマで構成した例を一例として示す。
【0050】
調整部15Cは、単位時間ごとに、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、PVPCS出力率および充放電計画、の少なくとも一方を調整する。ただし、超過発電量が発生しないと見込まれる場合には、調整は行わない。
【0051】
図3に示すように、充放電計画によって表される充放電量が「充電」を表す単位時間には、蓄電池23へ充電される充電量分を加算したPVPCS出力量に調整することが可能である。このため、調整部15Cは、充放電計画によって表される充放電量から逆算してPVPCS出力率を調整する。例えば、PVPCS22の定格出力が1000kWであり、充放電計画において500kW出力で充電を行う単位時間については、調整部15Cは、PVPCS出力率を出力抑制情報によって表される抑制出力率に拘わらず50%に調整可能である。
【0052】
【0053】
詳細には、まず、調整部15Cは、以下の判断処理により、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要の有無を判断する。
【0054】
PVPCS出力率を調整するとは、PVPCS22のPVPCS出力率を、出力抑制情報によって表される抑制出力率とは異なる値の調整後PVPCS出力率に調整することを意味する。詳細には、PVPCS出力率を調整するとは、PVPCS22から電力系統3および蓄電池23へ向かって出力される電力の出力率(PVPCS出力率)を、出力抑制情報によって表される発電設備20から電力系統3へ出力される電力の抑制出力率とは異なる値に調整することを意味する。
【0055】
充放電計画を調整するとは、充放電計画によって表される充放電量を該充放電計画とは異なる充放電量に調整することを意味する。
【0056】
調整部15Cは、充放電計画が蓄電池23への充電を表し、発電計画によって表される約定電力量と充放電計画によってマイナスの値によって表される充電量との加算値が出力抑制情報によって表される抑制出力量より大きい場合、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断する。
【0057】
抑制出力量とは、出力抑制情報によって表される抑制出力率に抑制された後のPVPCS22からの出力量であり、抑制出力率における単位時間の最大出力量(kWh)を表す。上述したように、抑制出力率は、例えば、発電設備20に設けられたPVPCS22の定格出力(kW)に対する出力上限の比率によって表される。このため、調整部15Cは、PVPCS22の定格出力(kW)を単位時間(30分)あたりの定格出力に換算し、更に、出力抑制情報に含まれる抑制出力率を乗算した乗算結果を抑制出力量として算出し、処理に用いればよい。詳細には、調整部15Cは、以下式(1)により抑制出力量を算出すればよい。
【0058】
抑制出力量=抑制出力率における単位時間(30分)の最大出力量(kWh)
=PVPCS22の定格出力(kW)×(抑制出力率(%)/100)/2
・・・式(1)
【0059】
そして、調整部15Cは、以下式(A)を満たす場合、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断する。
【0060】
充放電計画によって表される充放電量<0であり、充放電計画が蓄電池23への充電を表す場合において:
発電計画+充電量>抑制出力量 ・・・式(A)
【0061】
式(A)中の「発電計画」は、詳細には、発電計画によって表される約定電力量を表す。
【0062】
また、調整部15Cは、充放電計画が蓄電池23への充電無または放電を表し、発電計画によって表される約定電力量が、出力抑制情報によって表される抑制出力量より大きい場合、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断する。
【0063】
具体的には、調整部15Cは、以下式(B)を満たす場合、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断する。
【0064】
充放電計画によって表される充放電量≧0であり、充放電計画が蓄電池23への充放電無または放電を表す場合において:
発電計画によって表される約定電力量>抑制出力量 ・・・式(B)
【0065】
調整部15Cは、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合、PVPCS出力率および蓄電池23の充放電計画、の少なくとも一方を調整する調整処理を実行する。
【0066】
詳細には、調整部15Cは、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合、単位時間ごとの発電計画および充放電計画の状態に基づいて、個別の計算により、PVPCS出力率および蓄電池23の充放電計画、の少なくとも一方を調整する。本実施形態では、調整部15Cは、以下のパターン1-パターン4の各々のパターンによって表される単位時間ごとの発電計画および充放電計画の状態に基づいて、個別の計算により、PVPCS出力率および蓄電池23の充放電計画、の少なくとも一方を調整する調整処理を実行する。
【0067】
パターン1:
まず、パターン1について説明する。発電計画によって表される約定電力量が売電を表す値(0を超える値)であり、充放電計画によって表される充放電量が充電および放電を示さず、且つ、調整部15CがPVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合をパターン1として想定する。
【0068】
この場合、調整部15Cは、約定電力量から出力抑制情報によって表される抑制出力量を減算した第1減算結果と蓄電池23の充電余力との最小値(小さい方の値)である超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、充放電計画を調整した調整後充放電計画を演算する。
【0069】
また、調整部15Cは、約定電力量から抑制出力量を減算し調整後充放電計画によって表される充放電量を加算した計算結果を約定電力量から減算した減算結果を、PV21から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される調整後PVPCS出力量とする、調整後PVPCS出力率を演算する。
【0070】
すなわち、調整部15Cは、パターン1の場合、以下式(C)および式(D)により、調整後充放電計画および調整後PVPCS出力率を演算する。
【0071】
調整後充放電計画(kWh)=min(約定電力量-抑制出力量,充電余力)×-1
・・・式(C)
調整後PVPCS出力率=((約定電力量-(約定電力量-抑制出力量+調整後充放電計画によって表される充放電量))/(PVPCS22の定格出力/2))×100
・・・式(D)
【0072】
パターン1の場合、出力抑制指示によって表される抑制出力率にPVPCS出力率を単に一致させるだけの制御が行われると、抑制出力量を超過した超過発電量の電力が廃棄される可能性が生じる。
【0073】
そこで、調整部15Cは、上記式(C)および式(D)を用いて、調整後充放電計画および調整後PVPCS出力率を演算する。これらの演算により、調整部15Cは、出力抑制指示によって表される電力系統3への抑制出力率を満たしつつ、廃棄される超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように充放電計画を調整した調整後充放電計画を生成する。また、調整部15Cは、充電余力が十分であれば、発電計画によって表される約定電力量の出力が維持されるように、PVPCS出力率を調整した調整後PVPCS出力率を演算する。但し、充電余力によっては、超過発電量の電力を全て蓄電池23へ充電することが出来ないため、この場合には、調整部15Cは、と調整後PVPCS出力率を更に下げるように調整すればよい。
【0074】
パターン2:
次に、パターン2について説明する。発電計画によって表される約定電力量が売電を表さない値(すなわち0以下)であり、充放電計画によって表される充放電量が充電を表し、且つ、調整部15CがPVPCS出力率および蓄電池23の充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合を、パターン2として想定する。
【0075】
この場合、調整部15Cは、充放電計画によって表される充放電量を、PV21から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される調整後PVPCS出力量とする、調整後PVPCS出力率を演算する。また、この場合、調整部15Cは、充放電計画については調整を行わない。調整後PVPCS出力量とは、調整後のPVPCS出力量である。
【0076】
すなわち、調整部15Cは、パターン2の場合、充放電計画は調整せず、以下式(E)により、調整後PVPCS出力率を演算する。
【0077】
調整後PVPCS出力率=(充放電計画によって表される充放電量/(PVPCS22の定格出力/2))×100×-1 ・・・式(E)
【0078】
パターン2の場合、出力抑制指示によって表される抑制出力率にPVPCS出力率を単に一致させるだけの制御が行われると、約定電力量によって表される発電計画に応じた売買収益を最大化する充放電計画に沿った充放電制御が実行できなくなる可能性が生じる。
【0079】
そこで、調整部15Cは、上記式(E)を用いて、調整後PVPCS出力率を演算する。これらの演算により、調整部15Cは、出力抑制指示によって表される電力系統3への抑制出力率を満たしつつ、充放電計画に沿った充放電制御が実行可能となるように、PVPCS出力率を調整した調整後PVPCS出力率を演算する。
【0080】
パターン3:
次に、パターン3について説明する。発電計画によって表される約定電力量が売電を表す値(0を超える値)であり、充放電計画によって表される充放電量が充電を示し、且つ、調整部15CがPVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合を、パターン3として想定する。
【0081】
パターン3の場合において、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力量が約定電力量以上である場合には、約定電力量から充放電計画によってマイナスの値によって表される充電量を減算した減算結果を、PV21から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される調整後PVPCS出力量とする、調整後PVPCS出力率を演算する。
【0082】
すなわち、調整部15Cは、パターン3において、出力抑制情報によって表される抑制出力量が約定電力量以上である場合には、充放電計画は調整せず、以下式(F)により、調整後PVPCS出力率を演算する。
【0083】
抑制出力量≧約定電力量である場合、
調整後PVPCS出力率=(約定電力量-充放電計画によって表される充電量)/(PVPCS22の定格出力/2))×100 ・・・式(F)
【0084】
一方、パターン3の場合において、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力量が約定電力量未満である場合には、約定電力量から出力抑制情報によって表される抑制出力量を減算した第1減算結果と蓄電池23の充電余力との最小値(小さい方の値)と、充放電計画によって表される充放電量と、の加算値である超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、充放電計画を調整した調整後充放電計画を演算する。
【0085】
また、調整部15Cは、充放電計画によって表される充放電量と約定電力量との第1加算値から、抑制出力量と調整後充放電計画によって表される充放電量との第2加算値を減算した第1減算結果と、充放電計画によって表される充放電量とを、約定電力量から減算した第2減算結果を調整後PVPCS出力量とする、調整後PVPCS出力率を演算する。
【0086】
すなわち、調整部15Cは、パターン3において、出力抑制情報によって表される抑制出力量が約定電力量未満である場合には、以下式(G)および式(H)により、調整後充放電計画および調整後PVPCS出力率を演算する。
【0087】
抑制出力量<約定電力量である場合、
調整後充放電計画(kWh)=充放電計画によって表される充放電量+min((約定電力量-抑制出力量),充電余力) ・・・式(G)
調整後PVPCS出力率=(約定電力量-充放電計画によって表される充放電量-(充放電計画によって表される充放電量+約定電力量-抑制出力量+調整後充放電計画によって表される充放電量))/(PVPCS22の定格出力/2))×100
・・・式(H)
【0088】
パターン3の場合、出力抑制指示によって表される抑制出力率にPVPCS出力率を単に一致させるだけの制御が行われると、約定電力量によって表される発電計画に応じた売買収益を最大化する充放電計画に沿った充放電制御が実行できなくなる可能性が生じる。
【0089】
そこで、調整部15Cは、抑制出力量≧約定電力量である場合には式(F)を用いて調整後PVPCS出力率を演算し、抑制出力量<約定電力量である場合には式(G)および式(H)を用いて調整後充放電計画および調整後PVPCS出力率を演算する。
【0090】
これらの演算により、調整部15Cは、出力抑制指示によって表される電力系統3への抑制出力率を満たしつつ、廃棄される超過発電量の電力が蓄電池23に充電され、且つ充放電計画に沿った充放電制御が実行可能となるように、PVPCS出力率を調整した調整後PVPCS出力率および調整後充放電計画を演算する。また、調整部15Cは、充電余力が十分であれば、発電計画によって表される約定電力量の出力が維持されるように、PVPCS出力率を調整した調整後PVPCS出力率を演算する。但し、充電余力によっては、超過発電量の電力を全て蓄電池23へ充電することが出来ないため、この場合には、調整部15Cは、調整後PVPCS出力率を更に下げるように調整すればよい。
【0091】
パターン4:
次に、パターン4について説明する。発電計画によって表される約定電力量が売電を表す値(0を超える値)であり、充放電計画によって表される充放電量が放電を示し、且つ、調整部15CがPVPCS出力率および蓄電池23の充放電計画の少なくとも一方の調整の必要有と判断した場合を、パターン4として想定する。
【0092】
この場合、調整部15Cは、約定電力量から抑制出力量を減算した減算結果を、充放電計画によって表される放電量から減算した値を、調整後充放電計画として演算する。
【0093】
そして、調整部15Cは、調整後充放電計画が放電を表す場合、約定電力量から充放電計画によってプラスの値によって表される放電量を減算した減算結果に調整後充放電計画によって表される充放電量を加算した加算結果を調整後PVPCS出力量とする、調整後PVPCS出力率を演算する。
【0094】
また、調整部15Cは、調整後充放電計画が充電を表す場合、約定電力量から充放電計画によってプラスの値によって表される放電量を減算した減算結果を調整後PVPCS出力量とする、調整後PVPCS出力率を演算する。
【0095】
すなわち、調整部15Cは、パターン4の場合には、以下式(I)により、調整後充放電計画を演算する。また、調整部15Cは、以下式(J)または(K)により調整後出力率を演算する。
【0096】
調整後充放電計画(kWh)=充放電計画によって表される充放電量-(約定電力量-抑制出力量) ・・・式(I)
【0097】
式(I)によって表される調整後充放電計画が放電を示す場合:
調整後PVPCS出力率=((約定電力量-充放電計画によって表される充放電量+調整後充放電計画によって表される充放電量)/PVPCS22の定格出力)×100×2
・・・式(J)
【0098】
式(I)によって表される調整後充放電計画が充電を示す場合:
調整後PVPCS出力率=((約定電力量-充放電計画によって表される充放電量)/PVPCS22の定格出力)×100×2 ・・・式(K)
【0099】
上記式中、“約定電力量-充放電計画によって表される充放電量”は、PV21の発電量を意味する。また、上記式(J)および式(K)によって表される分数の分子である“約定電力量-充放電計画によって表される充放電量+調整後充放電計画によって表される充放電量”および“約定電力量-充放電計画によって表される充放電量”は、調整後PVPCS出力量を表す。
【0100】
パターン4の場合、出力抑制指示によって表される抑制出力率にPVPCS出力率を単に一致させるだけの制御が行われると、約定電力量によって表される発電計画に応じた売買収益を最大化する充放電計画に沿った充放電制御が実行できなくなる可能性が生じる。
【0101】
そこで、調整部15Cは、上記式(I)を用いて調整後充放電計画を演算し、式(I)の演算結果に応じて、式(J)または式(K)を用いて調整後PVPCS出力率を演算する。これらの演算により、調整部15Cは、出力抑制指示によって表される電力系統3への抑制出力率を満たしつつ、廃棄される超過発電量の電力が蓄電池23に充電され、且つ充放電計画に沿った充放電制御が実行可能となるように、PVPCS出力率を調整した調整後PVPCS出力率および調整後充放電計画を演算する。
【0102】
このように、調整部15Cは、パターン1-パターン4の各々のパターンによって表される単位時間ごとの発電計画および充放電計画の状態に基づいて、個別の計算により、PVPCS出力率および蓄電池23の充放電計画、の少なくとも一方を単位時間ごとに調整する調整処理を実行する。
【0103】
そして、調整部15Cは、調整後PVPCS出力率および調整後充放電計画を、それぞれ、最終PVPCS出力率および最終充放電計画の各々として発電設備制御部15Dへ出力する。
【0104】
なお、調整部15Cは、パターン1-パターン4において、充放電計画を調整しない場合には、充放電計画を最終充放電計画として発電設備制御部15Dへ出力すればよい。
【0105】
また、調整部15Cは、発電計画および充放電計画の状態が、パターン1-パターン4のパターンによって表される状態ではない場合には、PVPCS出力率および充放電計画を調整せず、出力抑制情報によって表される抑制出力率および充放電計画をそのまま最終PVPCS出力率および最終充放電計画の各々として、発電設備制御部15Dへ出力すればよい。発電計画および充放電計画の状態が、パターン1-パターン4のパターンによって表される状態ではない場合とは、例えば、約定電力量がゼロであり売電計画が無く、且つ、充放電計画によって表される充放電量がゼロである、すなわち、充放電計画が無い場合、等である。
【0106】
調整部15Cによる調整処理の具体例を説明する。
【0107】
図4は、調整部15Cによる調整処理の具体例を示す図である。
図4には、発電計画および充放電計画の状態として、売電無・充放電無、売電有・充放電無、売電無・充電有、売電有・充電有、売電有・放電有、の5種類の状態を示す。
図4には、これらの各種類の状態について、約定電力量、充放電計画によって表される充放電量、出力抑制情報によって表される抑制出力率、に応じて演算された、最終充放電計画および最終PVPCS出力率を示す。なお、
図4には、PVPCS22の定格出力が1000kWhである場合を一例として示す。
【0108】
また、
図4には、状態A~状態Mの各々について、出力抑制情報によって表される抑制出力率を調整した調整後PVPCS出力率を最終PVPCS出力率とした場合、または充放電計画によって表される充放電量を調整した調整後充放電計画を最終充放電計画とした場合には、調整有無を「有」とし、何れの調整も行わなかった場合には調整有無として「無」を示す。
【0109】
図4に示すように、状態Aの場合、売電無および充放電無であるため、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率を調整せずにそのまま最終PVPCS出力率として演算し、充放電計画によって表される充放電量を調整せずにそのまま最終充放電計画として演算する。
【0110】
状態Bの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率60%をそのまま最終PVPCS出力率とすると、300kWhしか放電(売電)出来ない。また、PV21が約定発電量である400kWh発電した場合、100kWhを廃棄することとなる。このため、調整部15Cは、上記調整処理を行うことによって、超過発電量である100kWhを蓄電池23へ充電するように充放電量を調整した調整充放電計画を、最終充放電計画として演算する。また、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率60%とは異なる値である調整後PVPCS出力率80%を、最終PVPCS出力率として演算する。
【0111】
状態Cの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率60%であっても、PVPCS22は200kWh分のPVPCS出力が可能であるため、調整部15Cは調整処理を行わない。すなわち、状態Cの場合、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率をそのまま最終PVPCS出力率として演算し、充放電計画をそのまま最終充放電計画として演算する。
【0112】
状態Dの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率20%であると、100kWhしか蓄電池23へ充電出来ない。このため、調整部15Cは、上記調整処理を行うことによって、出力抑制情報によって表される抑制出力率20%とは異なる値である調整後PVPCS出力率60%を、最終PVPCS出力率として演算する。最終PVPCS出力率を60%とすることで、蓄電池23へ充放電計画に沿った300kWhの電力を充電可能となる。
【0113】
状態Eの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率80%であるため、400kWhの電力を蓄電池23へ充電することができる。PVPCS22は200kWh分のPVPCS出力が可能であるため、調整部15Cは調整処理を行わない。すなわち、状態Eの場合、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率をそのまま最終PVPCS出力率として演算し、充放電計画をそのまま最終充放電計画として演算する。
【0114】
状態Fの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率50%であると、PVPCS出力量は最大250kWhとなるため、約定電力量は確保できる。また、残り100kWhを蓄電池23へ充電することも可能である。このため、調整部15Cは、上記調整処理によって、出力抑制情報によって表される抑制出力率50%とは異なる値である調整後PVPCS出力率60%を、最終PVPCS出力率として演算する。これにより、調整部15Cは、PVPCS出力量を300kWhに調整する。また、この場合、調整部15Cは、充放電化計画については調整を行わない。
【0115】
状態Gの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率20%をそのまま最終PVPCS出力率とすると、PVPCS出力量は最大100kWhとなるため、約定電力量200kWhの売電が出来なくなる。このため、調整部15Cは、上記調整処理を行うことによって、出力抑制情報によって表される抑制出力率20%とは異なる値である調整後PVPCS出力率60%を、最終PVPCS出力率として演算する。また、調整部15Cは、上記調整処理を行うことによって、超過発電量である200kWhを蓄電池23へ充電するように充放電量を調整した調整充放電計画を、最終充放電計画として演算する。
【0116】
状態Hの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率80%であるため、400kWhの電力を蓄電池23へ充電することができることから、PVPCS22は200kWh分のPVPCS出力が可能であるため、調整部15Cは調整処理を行わない。すなわち、状態Hの場合、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率をそのまま最終PVPCS出力率として演算し、充放電計画をそのまま最終充放電計画として演算する。
【0117】
状態Iの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率30%をそのまま最終PVPCS出力率とすると、PVPCS出力量は最大150kWhとなるため、充放電計画によって表される300kWの放電が出来なくなる。このため、調整部15Cは、上記調整処理を行うことによって、150kWhは放電せずに蓄電池23に残し、150kWh放電するように充放電量を調整した調整充放電計画を、最終充放電計画として導出する。
【0118】
状態Jの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率90%であるため、PVPCS出力量は最大450kWhとなる。このため、この場合、調整部15Cは調整処理を行わない。すなわち、状態Jの場合、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率をそのまま最終PVPCS出力率として演算し、充放電計画をそのまま最終充放電計画として演算する。
【0119】
状態Kの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率40%をそのまま最終PVPCS出力率とすると、PVPCS出力量は最大200kWhとなる。この場合、PV21の発電量は150kWh、蓄電池23の放電量が150kWhであることから、蓄電池23は50kWh放電可能となる。このため、調整部15Cは、上記調整処理を行うことによって、50kWhを蓄電池23から放電するように充放電量を調整した調整充放電計画を、最終充放電計画として演算する。
【0120】
状態Lの場合、調整部15Cは調整処理を行わない。すなわち、状態Jの場合、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率をそのまま最終PVPCS出力率として演算し、充放電計画をそのまま最終充放電計画として演算する。
【0121】
状態Mの場合、出力抑制情報によって表される抑制出力率20%をそのまま最終PVPCS出力率とすると、充放電計画によって表される放電量150kWhの内、100kWhしか放電出来ない。PV21は150kWh発電見込みであるため、調整部15Cは、上記調整処理によって、50kWhを蓄電池23へ充電するように充放電量を調整した調整充放電計画を、最終充放電計画として演算する。また、調整部15Cは、上記調整処理を行うことによって、出力抑制情報によって表される抑制出力率20%とは異なる値である調整後PVPCS出力率30%を、最終PVPCS出力率として演算する。
【0122】
図2に戻り説明を続ける。次に、発電設備制御部15Dについて説明する。
【0123】
発電設備制御部15Dは、調整されたPVPCS出力率である調整後PVPCS出力率および調整された充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終PVPCS出力率および最終充放電計画に基づいて、発電設備20の蓄電池PCS24およびPVPCS22を制御する。
【0124】
すなわち、発電設備制御部15Dは、調整部15Cによって充放電計画の調整処理が行われた場合には調整後充放電計画を最終充放電計画とし、充放電計画の調整処理が行われなかった場合には該充放電計画を最終充放電計画として、蓄電池PCS24を制御する。
【0125】
詳細には、発電設備制御部15Dは、単位時間ごとに演算された最終充放電計画を蓄電池PCS24へ出力する。最終充放電計画を受付けた蓄電池PCS24は、最終充放電計画によって表される充放電量となるように蓄電池23の充放電を制御する。
【0126】
また、発電設備制御部15Dは、調整部15CによってPVPCS出力率の調整処理が行われた場合には調整後PVPCS出力率を最終PVPCS出力率とし、PVPCS出力率の調整処理が行われなかった場合には出力抑制情報によって表される抑制出力率を最終PVPCS出力率として、PVPCS22を制御する。
【0127】
詳細には、発電設備制御部15Dは、単位時間ごとに演算された最終PVPCS出力率をPVPCS22へ出力する。最終PVPCS出力率を受付けたPVPCS22は、受付けた最終PVPCS出力率となるように、PVPCS出力率を制御する。
【0128】
このため、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた充放電計画およびPVPCS出力率の少なくとも一方が調整される。そして、調整後PVPCS出力率および調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終PVPCS出力率および最終充放電計画に基づいて、PVPCS22および蓄電池PCS24が制御される。
【0129】
次に、本実施形態の発電設備制御システム10で実行される情報処理の流れの一例を説明する。
【0130】
図5は、本実施形態の発電設備制御システム10で実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0131】
計画作成部15Aが、発電設備20の発電計画および充放電計画を作成する(ステップS100)。計画作成部15Aは、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画、および発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画を作成する。
【0132】
受付部15Bは、発電設備20から電力系統3へ出力される電力の出力抑制指示を表す出力抑制情報を受付ける(ステップS102)。
【0133】
調整部15Cは、ステップS102で受付けた出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、ステップS100で作成した発電計画および充放電計画に基づいて、PVPCS出力率および充放電計画、の少なくとも一方を調整する調整処理を実行する(ステップS104)。
【0134】
発電設備制御部15Dは、ステップS104で調整されたPVPCS出力率である調整後PVPCS出力率および調整された充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終PVPCS出力率および最終充放電計画に基づいて、発電設備20の蓄電池PCS24およびPVPCS22を制御する(ステップS106)。そして、本ルーチンを終了する。
【0135】
以上説明したように、本実施形態の発電設備制御システム10は、受付部15Bと、調整部15Cと、発電設備制御部15Dと、を有する。受付部15Bは、蓄電池23と、蓄電池23の充放電を制御する蓄電池PCS24(蓄電池制御部)と、PV21(再生可能エネルギー電源)と、PV21から蓄電池23および電力系統3へ向かって出力される電力のPVPCS出力率(出力率)を制御するPVPCS22(出力率制御部)と、を有する発電設備20から電力系統3へ出力される電力の出力抑制指示を表す出力抑制情報を受付ける。調整部15Cは、出力抑制情報を受付けた場合、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、PVPCS出力率、および、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画の少なくとも一方を調整する。発電設備制御部15Dは、調整されたPVPCS出力率である調整後PVPCS出力率および調整された充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終PVPCS出力率(最終出力率)および最終充放電計画に基づいて、PVPCS22および蓄電池PCS24およびを制御する。
【0136】
このため、例えば、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力率が40%である場合、最終PVPCS出力率を100%とし、該最終PVPCS出力率の60%を蓄電池23に充電させ、40%を電力系統3へ出力させるように、PVPCS出力率、および、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画の少なくとも一方を調整することができる。
【0137】
ここで、従来技術では、出力抑制指示によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が廃棄される場合があった。また、発電設備に蓄電池が備えられている場合であっても、オンライン制御の場合、再生可能エネルギーの電力系統への出力率を制御するPCSが出力制限処理を行うため、蓄電池23への充電が行われず、再生可能エネルギーが廃棄される場合があった。
【0138】
一方、本実施形態の発電設備制御システム10では、調整部15Cは、出力抑制情報を受付けた場合、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように、PVPCS出力率、および、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画の少なくとも一方を調整する。発電設備制御部15Dは、調整されたPVPCS出力率である調整後PVPCS出力率および調整された充放電計画である調整後充放電計画の少なくとも一方を含む最終PVPCS出力率および最終充放電計画に基づいて、蓄電池PCS24およびPVPCS22を制御する。
【0139】
このため、本実施形態の発電設備制御システム10では、出力抑制指示に応じた電力系統3へ抑制出力率を実現しつつ、該抑制出力率によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23へ充電されるように制御することができる。
【0140】
従って、本実施形態の発電設備制御システム10は、出力抑制指示に応じた出力抑制の実現および再生可能エネルギーの廃棄の抑制の両立を図ることができる。
【0141】
また、本実施形態の発電設備制御システム10は、PVPCS出力率、および、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画の少なくとも一方を調整する。このため、本実施形態の発電設備制御システム10は、約定電力量を考慮しつつ、蓄電池PCS24およびPVPCS22を制御することができる。
【0142】
よって、本実施形態の発電設備制御システム10は、上記効果に加えて、出力抑制時のインバランス増加を抑制することができる。
【0143】
(変形例1)
なお、上記実施形態では、計画作成部15Aは、翌日の24時間分の充放電計画を作成し、充放電計画の作成後のタイミングで出力抑制情報を受付け、調整処理を実行する形態を一例として説明した。しかし、出力抑制情報を受付けるタイミングは、限定されない。
【0144】
図6は、出力抑制情報を受付けるタイミングの異なる様々なタイミングパタンの一例の説明図である。
【0145】
例えば、タイミングパタンAに示すように、前日の朝8時等に計画作成部15Aが翌日(当日)の24時間分(48コマ分)の発電計画および充放電計画を作成する。発電計画および充放電計画は、上述したように、発電量予測値の導出、タイムシフト運転計画である充放電計画の作成、売り入札計画であるスポット入札計画の作成に基づいたスポット市場等の電力取引市場5への売り入札によって決定した約定電力量、に応じて作成される。そして、スポット市場がクローズした後に、該前日に受付部15Bが出力抑制情報を受付けた場合を想定する。この場合、上記実施形態で説明したように、調整部15Cは、該前日に作成された発電計画、充放電計画、および受付けた出力抑制情報に基づいて、上述した調整処理を行う。
【0146】
また、例えば、タイミングパタンBに示すように、当日に出力抑制情報を受付けた場合を想定する。この場合についても、上記タイミングパタンAと同様に、調整部15Cは、前日に作成された発電計画、充放電計画、および受付けた出力抑制情報に基づいて、上述した調整処理を行えばよい。但し、調整部15Cは、出力抑制情報を受付けたタイミングより後の単位時間の時間帯の各々についてのみ、上述した調整処理を実行することとなる。
【0147】
また、例えば、タイミングパタンCに示すように、計画作成部15Aが翌日の24時間分の発電計画および充放電計画を作成する前に、受付部15Bが出力抑制情報を受付けてもよい。この場合、調整部15Cが、出力抑制情報を考慮して、翌日の24時間分の発電計画および充放電計画を作成すればよい。すなわち、タイミングパタンCの場合、調整部15Cは、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量の電力が蓄電池23に充電されるように調整した、PVPCS出力率、および、電力取引市場5の約定電力量によって表される発電計画に応じた蓄電池23の充放電計画を作成すればよい。
【0148】
(変形例2)
なお、上述したように、計画作成部15Aは、発電量予測値に基づいて充放電計画を作成する。しかし、PV21の実際の発電量の実測値が発電量予測値とは異なる値となる場合がある。
【0149】
そこで、調整部15Cは、PV21による発電量の実績値に基づいて、計画作成部15Aによって作成された充放電計画を更に調整してもよい。
【0150】
詳細には、調整部15Cは、上記実施形態で説明した調整処理に加えて、以下の処理を実行すればよい。
【0151】
発電量予測値より実績値が大きい場合には、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量が想定より増えることとなる。このため、この場合、調整部15Cは、実績値をリアルタイムでモニタリングし、実績値が発電量予測値より大きい場合には、該実績値と該発電量予測値との差分の電力量分、蓄電池23の充電量を増やすように、充放電計画を更に調整すればよい。
【0152】
また、発電量予測値より実績値が小さい場合には、出力抑制情報によって表される抑制出力量を超過した超過発電量が想定より減ることとなる。このため、この場合、調整部15Cは、実績値をリアルタイムでモニタリングし、実績値が発電量予測値より小さい場合には、充放電計画の更なる調整は行わないように制御すればよい。
【0153】
(変形例3)
上記実施形態では、受付部15Bが、出力抑制情報を前日に1回受付ける場合を想定して説明した。しかし、受付部15Bは、出力抑制情報を複数回受付けてもよい。この場合、調整部15Cは、出力抑制情報を受付けるごとに、PVPCS出力率、および充放電計画、の少なくとも一方を調整する上記調整処理を実行すればよい。
(変形例4)
上記実施形態では、計画作成部15Aは、発電量予測値に基づいて翌日の24時間分の発電計画および充放電計画を作成する場合を説明した。しかし、発電量予測値は、実需給断面に近づくにつれて、その精度が向上する傾向にある。そのため、実需給断面に近くなるほど、計画作成部15Aは、精度の高い発電計画および充放電計画を立てられる可能性がある。
【0154】
よって、計画作成部15Aは、前日の時点で発電量予測値に基づいて発電計画および充放電計画を作成しておいて、当日に改めて1または複数回、最新の発電量予測値を用いて発電計画および充放電計画を作成することで更新してもよい。そして、調整部15Cは、発電計画が更新されるごとに、PVPCS出力率および充放電計画の少なくとも一方を調整する上記調整処理を実行すればよい。
【0155】
計画作成部15Aが発電計画および充放電計画を更新することで、上記実施形態の効果に加えて、廃棄されるPV21の電力を更に抑制し、蓄電池23に充電させることが可能となる。
【0156】
(変形例5)
上記実施形態では、1つの発電設備20が1つのPV21および1つの蓄電池23を備える形態を一例として説明した(
図1および
図2参照)。しかし、1つの発電設備20が、複数のPV21および複数の蓄電池23を備えた構成であってもよい。この場合、発電設備20に設けられた1つのPVPCS22が、複数のPV21をまとめて1つのPV21とみなして上記制御を行えばよい。また、発電設備20に設けられた1つの蓄電池PCS24が複数の蓄電池23をまとめて1つの蓄電池23とみなして上記制御を行えばよい。同様に、発電設備制御システム10は、発電設備20に設けられた複数のPV21を1つのPV21とみなし、複数の蓄電池23を1つの蓄電池23とみなして、上記実施形態と同様の処理を実行すればよい。
【0157】
例えば、上記調整処理時に用いる充電余力には、複数の蓄電池23の充電余力の合計値を用いればよい。そして、発電設備制御部15Dおよび蓄電池PCS24は、複数の蓄電池23に充放電計画を割り振って制御すればよい。この割り振りは、複数の蓄電池23の各々の出力や容量等を用いて按分すればよい。
【0158】
(変形例6)
上記実施形態では、電力取引市場5が前日の午前10時までに締め切られるスポット市場である場合を想定して説明した。しかし、電力取引市場5は、当日も売買可能な時間前市場であってもよい。電力取引市場5が時間前市場である場合、当日の約定によって約定電力量を表す発電計画が更新される。
【0159】
このため、調整部15Cは、発電計画が更新されるごとに、PVPCS出力率、および、充放電計画、の少なくとも一方を調整する上記調整処理を再実行すればよい。
【0160】
(変形例7)
上記実施形態では、計画作成部15Aは、タイムシフト計画として充放電計画を生成する形態を一例として説明した。しかし、計画作成部15Aは、インバランスを減らすように蓄電池23を充放電制御するためのインバランス回避運転に対応した充放電計画を生成してもよい。
【0161】
この場合、調整部15Cは、充放電計画によって表される充電量については上記実施形態と同様の調整処理を実行すればよい。また、調整部15Cは、充放電計画によって表される放電量については、約定電力量との合計値が出力抑制情報によって表される抑制出力率を超えないように調整すればよい。
【0162】
(変形例8)
上記実施形態の発電設備制御システム10は、発電設備20の代理の発電設備に対しても上記と同様の制御を行うことで、オンライン代理制御に対応することも可能である。
【0163】
次に、上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10のハードウェア構成の一例を説明する。
【0164】
図7は、上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10の一例のハードウェア構成図である。
【0165】
上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、および通信I/F84等がバス85により相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0166】
CPU81は、上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10を制御する演算装置である。ROM82は、CPU81による各種処理を実現するプログラム等を記憶する。ここではCPUを用いて説明しているが、発電設備制御システム10を制御する演算装置として、GPU(Graphics Processing Unit)を用いてもよい。RAM83は、CPU81による各種処理に必要なデータを記憶する。通信I/F84は、データを送受信するためのインターフェースである。
【0167】
上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10では、CPU81が、ROM82からプログラムをRAM83上に読み出して実行することにより、上記各機能がコンピュータ上で実現される。
【0168】
なお、上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、HDD(ハードディスクドライブ)に記憶されていてもよい。また、上記実施形態の発電設備制御システム10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、ROM82に予め組み込まれて提供されていてもよい。
【0169】
また、上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、上記実施形態および変形例の発電設備制御システム10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0170】
なお、上記には、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0171】
10…発電設備制御システム、15B…受付部、15C…調整部、15D…発電設備制御部、20…発電設備、21…PV、22…PVPCS、23…蓄電池、24…蓄電池PCS