(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164425
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】プロテクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20241120BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20241120BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G11/00
B60R16/02 620A
B60R16/02 623T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079888
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
(72)【発明者】
【氏名】横山 真樹
(72)【発明者】
【氏名】久米 正起
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 慶恭
(72)【発明者】
【氏名】荒木 浩太
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DE03
5G357DE05
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
(57)【要約】
【課題】より適正に配索材の端部を仮固定することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】プロテクタ1は、車両に配索される配索材Wが挿通される開口部3が設けられた外壁11cを有し、当該外壁11cの内側に配索材Wが収容される収容空間部4が形成されたケース10と、ケース10の外壁11cに設けられ、開口部3からケース10の外側に引き出された配索材Wの端部Waを外壁11cに沿わせるように屈曲させた状態で仮保持する仮保持部20と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索される配索材が挿通される開口部が設けられた外壁を有し、当該外壁の内側に前記配索材が収容される収容空間部が形成されたケースと、
前記ケースの前記外壁に設けられ、前記開口部から前記ケースの外側に引き出された前記配索材の端部を前記外壁に沿わせるように屈曲させた状態で仮保持する仮保持部と、
を備えた、プロテクタ。
【請求項2】
前記外壁は、前記ケースの延在方向の一端部に設けられており、
前記仮保持部は、前記外壁から前記延在方向に沿って延びた底壁と、前記底壁の前記外壁とは反対側の端部から前記延在方向と交差する高さ方向に沿って延びた立壁と、前記立壁の前記底壁とは反対側の端部から前記延在方向に沿って前記外壁側に延びた爪部と、を有する、
請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記爪部には、前記延在方向の先端部に向かうにつれて前記高さ方向の前記底壁側に向かうように傾斜したテーパ面が設けられる、
請求項2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記爪部には、前記延在方向および前記高さ方向と交差する幅方向の一端部を前記延在方向に沿って切り欠くように形成された切欠部が設けられる、
請求項2または3に記載のプロテクタ。
【請求項5】
前記配索材の前記端部は、前記開口部から前記ケースの外側に引き出される第1部分と、前記第1部分と交差し前記仮保持部に仮保持される第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続し90°の角度で屈曲した屈曲部分と、を含む、
請求項1または2に記載のプロテクタ。
【請求項6】
導電性を有し、車両に配索される配索材と、
前記配索材を保護するプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは、
前記配索材が挿通される開口部が設けられた外壁を有し、当該外壁の内側に前記配索材が収容される収容空間部が形成されたケースと、
前記ケースの前記外壁に設けられ、前記開口部から前記ケースの外側に引き出された前記配索材の端部を前記外壁に沿わせるように屈曲させた状態で仮保持する仮保持部と、
を有する、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤハーネスのプロテクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、車両に配索される配索材が挿通される開口部が設けられた外壁を有し、当該外壁の内側に配索材が収容される収容空間部が形成されたケースを備えた、プロテクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のプロテクタでは、例えば、開口部からケースの外側に引き出された配索材の端部をオプションテープや結束バンド等で仮固定する必要があり、この点で作業に手間が生じてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、より適正に配索材の端部を仮固定することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプロテクタは、車両に配索される配索材が挿通される開口部が設けられた外壁を有し、当該外壁の内側に前記配索材が収容される収容空間部が形成されたケースと、前記ケースの前記外壁に設けられ、前記開口部から前記ケースの外側に引き出された前記配索材の端部を前記外壁に沿わせるように屈曲させた状態で仮保持する仮保持部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るプロテクタおよびワイヤハーネスは、ケースの外壁には、開口部からケースの外側に引き出された配索材の端部を外壁に沿わせるように屈曲させた状態で仮保持する仮保持部が設けられる。この構成により、プロテクタおよびワイヤハーネスは、例えば、仮保持部に配索材の端部を引っ掛けることによって、比較的容易に配索材の端部をケースに対して仮固定することができる。この結果、プロテクタおよびワイヤハーネスは、より適正に配索材の端部を仮固定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプロテクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプロテクタの例示的な分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプロテクタの仮保持部の近傍の例示的な平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るプロテクタの仮保持部の例示的な平面図であって、配索材の端部が取り外された状態の図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るプロテクタの仮保持部の例示的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロテクタ1が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図である。
図1に示される本実施形態のプロテクタ1は、車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ40等で配索材Wを各機器に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、配索材Wを保護するプロテクタ1と、を備えている。プロテクタ1は、例えば、車両に搭載された不図示のスライドシートやスライドドア等に配索される配索材Wの一部を余長部分として内部に収容して保護するものである。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブや、グロメット、電気接続箱、固定具、コネクタなど種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「延在方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、延在方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。延在方向Xは、典型的には、プロテクタ1の延在方向(長手方向)、プロテクタ1に対する配索材Wの引き出し方向(挿通方向)等に相当し、車両前後方向に沿う。幅方向Yは、典型的には、プロテクタ1の幅方向(横幅方向)に相当し、車両幅方向に沿う。高さ方向Zは、典型的には、プロテクタ1の厚さ方向、プロテクタ1における後述するベース11とカバー12との積層方向等に相当し、車両上下方向(鉛直方向)に沿う。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、プロテクタ1が車両に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
配索材Wは、例えば、車両において、スライドシートに設けられた電装品に対して電力を供給するものである。配索材Wは、例えば、複数の電線が束ねられた電線束と、当該電線束を覆う筒状の外装材としてのコルゲートチューブと、を含んで構成される。配索材Wは、電線束にコルゲートチューブが装着された装着状態において、相対的に高い柔軟性、良好な屈曲性を有する。本実施形態の配索材Wは、電線束にコルゲートチューブが装着された装着状態において、外力を加えていない自然の状態(略直線状態)から、外力を加えて屈曲させた屈曲状態にすると、屈曲された部分が弾性変形し屈曲部分に弾性反力が生じて元の状態に戻ろうとするものである。
【0013】
プロテクタ1は、例えば、配索材Wを収容するケース10と、配索材Wの端部Waを仮保持する仮保持部20と、を備えている。配索材Wは、ケース10の内部に設けられた収容空間部4(
図2参照)に一部が収容された状態で、当該配索材Wの一部が、スライドシートのスライド方向のうち一方のスライド移動に伴ってケース10の内側に導入され、スライド方向のうち他方のスライド移動に伴って、ケース10の外側に引き出される。配索材Wは、一方の端部が、スライドシートに設けられた電装品に電気的に接続され、他方の端部Waが、車両に搭載されたバッテリ等に電気的に接続される。
【0014】
ケース10は、延在方向Xに沿って延在し、延在方向Xの一端部10aに一対の開口部2、3が設けられている。開口部2、3は、ケース10の内部に配索材Wの一部が収容された収容状態において、それぞれに配索材Wが挿通される。ケース10は、スライドシートのスライド方向のうち、一方のスライド移動に伴って、配索材Wが一方の開口部2から導入され、スライド方向のうち、他方のスライド移動に伴って、配索材Wが当該開口部2から引き出される。配索材Wは、ケース10の内部に一部が収容された収容状態で、一方の端部について、開口部2を介したケース10の内外への出し入れが可能に構成されている。
【0015】
一方、配索材Wは、ケース10の内部に一部が収容された収容状態で、他方の端部Waについて、開口部3を介したケース10の内外への出し入れが規制されている。ここでは、例えば、ケース10の内部における開口部3の近傍位置に、配索材W(コルゲートチューブ)の外周面に形成される環状凹部と係合する凸部15(
図2参照)が設けられている。この凸部15と配索材Wの環状凹部との係合によって、配索材Wは、他方の端部Waについて、ケース10に対する移動が制限され、開口部3を介したケース10の内外への出し入れが規制される。プロテクタ1は、例えば、ケース10の高さ方向Zが鉛直方向(車両上下方向)に沿う横置きの状態で設置され、延在方向Xの他端部10bに設けられた取付片部13がボルト等の締結部材によって車体に締結される。
【0016】
図2は、プロテクタ1の分解斜視図である。
図2に示されるように、プロテクタ1のケース10は、例えば、ベース11と、カバー12と、を含んで構成される。ベース11およびカバー12は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂等によって形成される。カバー12は、ベース11に対して高さ方向Zの一方側に積層された状態で組付けられる。ベース11とカバー12とは、互いに別体で形成され、後述する係止機構30によるスナップフィットによって互いに一体化される。ケース10は、ベース11とカバー12とが相互に組み付けられることで、全体として略直方体状に形成される。
【0017】
ベース11は、例えば、ベース側底壁11aと、ベース側底壁11aの周縁部に設けられたベース側周壁11bと、を有している。ベース側底壁11aおよびベース側周壁11bは、ケース10の内部空間部としての収容空間部4を区画するための構造体である。収容空間部4は、配索材Wが収容される空間部である。ベース側底壁11aは、例えば、平板状に形成され、延在方向Xに沿って延在している。ベース側底壁11aの外面には、高さ方向Zに沿って突出した複数のビードが設けられうる。複数のビードは、ベース11を補強するためのものであり、例えば、延在方向Xおよび幅方向Yに沿って延びた格子状に形成される。
【0018】
ベース側周壁11bは、ベース側底壁11aの周縁部から高さ方向Zの一方側に突出している。ベース側周壁11bは、例えば、幅方向Yの一方側に位置されるベース側第1周壁11b1と、幅方向Yの他方側に位置されるベース側第2周壁11b2と、延在方向Xの他端部10b側に位置されるベース側第3周壁11b3と、を含んで構成される。ベース側第1周壁11b1およびベース側第2周壁11b2は、延在方向Xに沿って直線状に延在している。ベース側第3周壁11b3は、ベース側第1周壁11b1およびベース側第2周壁11b2の延在方向Xの他端部10bと接続され、延在方向Xの他方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。
【0019】
また、ベース11の延在方向Xの一端部10aには、外壁11cが設けられている。外壁11cは、ベース11におけるベース側第3周壁11b3とは反対側の周壁である。また、外壁11cは、例えば、後述する配索材Wが引き回される配線引き回し部14の側壁を構成している。外壁11cは、延在方向Xと直交する方向に沿って延びており、ケース10の延在方向Xの一端部10aを構成している。外壁11cには、配索材Wの他方の端部Waが挿通される開口部3が設けられている。また、外壁11cには、配索材Wの他方の端部Waを仮保持する後述する仮保持部20が着脱可能に取り付けられる。
【0020】
カバー12は、ベース11に組み付けられ、当該ベース11における収容空間部4を覆う(塞ぐ)ものである。カバー12は、例えば、カバー側底壁12aと、カバー側底壁12aの周縁部に設けられたカバー側周壁12bと、を有している。カバー側底壁12aおよびカバー側周壁12bは、ケース10の内部空間部としての上述した収容空間部4を区画するための構造体である。カバー側底壁12aは、例えば、平板状に形成され、ベース側底壁11aと対向するように延在方向Xに沿って延在している。カバー側底壁12aの外面には、高さ方向Zに沿って突出した複数のビード12cが設けられている。複数のビード12cは、カバー12を補強するためのものであり、例えば、延在方向Xおよび幅方向Yに沿って延びた格子状に形成される。
【0021】
カバー側周壁12bは、カバー側底壁12aの周縁部から高さ方向Zの他方側に突出している。カバー側周壁12bは、例えば、幅方向Yの一方側に位置されるカバー側第1周壁12b1と、幅方向Yの他方側に位置されるカバー側第2周壁12b2と、延在方向Xの他端部10b側に位置されるカバー側第3周壁12b3と、を含んで構成される。カバー側第1周壁12b1およびカバー側第2周壁12b2は、延在方向Xに沿って直線状に延在している。カバー側第1周壁12b1は、ベース側第1周壁11b1の内側に重ねられ、カバー側第2周壁12b2は、ベース側第2周壁11b2の内側に重ねられる。
【0022】
カバー側第3周壁12b3は、カバー側第1周壁12b1およびカバー側第2周壁12b2と接続され、延在方向Xの他方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。カバー側第3周壁12b3は、ベース側第3周壁11b3の内側に重ねられる。また、カバー12の延在方向Xの他端部10bには、取付片部13が設けられている。取付片部13は、カバー側第3周壁12b3から延在方向Xの他方側に突出している。取付片部13には、上述したプロテクタ1と車体とを締結するボルト等の締結部材が高さ方向Zに貫通する取付穴13aが設けられている。
【0023】
また、カバー12の延在方向Xの一端部10aには、配索材Wが引き回される配線引き回し部14が設けられている。配線引き回し部14は、例えば、カバー12側の第1ガイド部分14aと、ベース11側の第2ガイド部分14bと、の組み合わせによって構成される。第1ガイド部分14aは、カバー側第1周壁12b1の延在方向Xの一端部と接続され、延在方向Xの一方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。第1ガイド部分14aは、高さ方向Zの他方側(ベース11側)に向けて開放される略U字状の断面を有しており、ベース11側の第2ガイド部分14bと高さ方向Zに重ねられ、当該第2ガイド部分14bと共に配索材Wが挿通される内部空間部を構成している。
【0024】
第2ガイド部分14bには、第1ガイド部分14aと係合される凹部14b1が設けられている。凹部14b1は、ベース側第1周壁11b1の延在方向Xの一端部と接続され、延在方向Xの一方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。凹部14b1は、高さ方向Zの一方側(カバー12側)に向けて開放される略U字状の断面を有しており、カバー12側の第1ガイド部分14aと高さ方向Zに係合される。これにより、配線引き回し部14には、凹部14b1の底部と第1ガイド部分14aの天壁14a1との間に配索材Wが挿通される内部空間部が形成される。開口部2は、配線引き回し部14における収容空間部4とは反対側の開放端部に設けられており、配索材Wの一方の端部が挿通される。
【0025】
また、第2ガイド部分14bには、凹部14b1よりも高さ方向Zの他方側(カバー12とは反対側)に配索材Wの他方の端部Waが挿通される挿通空間部14b2が設けられている。挿通空間部14b2は、凹部14b1の底部内を幅方向Yおよび延在方向Xに沿って延びており、上述した外壁11cに設けられた開口部3と収容空間部4とを連通している。配索材Wの他方の端部Waは、収容空間部4から挿通空間部14b2内を通り、当該挿通空間部14b2を経由して開口部3からケース10の外側に引き出される。挿通空間部14b2は、配線引き回し部14の上述した内部空間部に対して高さ方向Zにずれており、当該内部空間部と交差している。
【0026】
なお、配線引き回し部14の内部空間部には、例えば、複数の配索材Wを引き回し可能な二つのレーンが設けられている。本実施形態では、二つのレーンの一方側に配索材Wが引き回されている場合が例示されるが、この例には限定されず、例えば、二つのレーンの他方側や両側に配索材Wが引き回されてもよい。また、本実施形態では、後述する仮保持部20によって一つの配索材Wの他方の端部Waが仮保持される場合が例示されるが、この例には限定されず、例えば、仮保持部20によって二つの配索材Wの他方の端部Waが仮保持されてもよい。
【0027】
収容空間部4は、ケース10内に形成され、一対の開口部2、3を介して外部と連通している。収容空間部4に配索された配索材Wは、高さ方向Zから見た場合に、幅方向Yの両側に直線状態にある第1直線部W2および第2直線部W3がそれぞれ配置され、幅方向Yの中央側に第1直線部W2および第2直線部W3を連結しかつ折返し状態にある折返し部W1が配置される。折返し部W1は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、延在方向Xの一方側から他方側にU字状に折り返された部分である。第1直線部W2は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、折返し部W1の一端部と接続されベース側第1周壁11b1と対向するように延在方向Xに沿って延在する部分である。第2直線部W3は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、折返し部W1の他端部と接続されベース側第2周壁11b2と対向するように延在方向Xに沿って延在する部分である。
【0028】
折返し部W1は、例えば、スライドシートのスライド移動に伴い、延在方向Xに沿って移動する。具体的には、折返し部W1は、スライドシートのスライド移動に伴って開口部2から出し入れされた場合に、配線引き回し部14と近接する第1位置P1と、ベース側第3周壁11b3と近接する第2位置P2と、の間で延在方向Xに沿って移動可能である。配索材Wは、スライドシートのスライド移動に伴い、収容空間部4内で第1位置P1と第2位置P2との間で摺動する。このため、収容空間部4内で摺動する配索材Wの外周面には、摺動を円滑に行わせるためのグリス等が塗布されている。
【0029】
係止機構30は、例えば、カバー12側に設けられた係止部31と、ベース11側に設けられた被係止部32と、を有している。係止部31は、例えば、カバー側第1周壁12b1およびカバー側第2周壁12b2の外面に爪状に形成される。ここでは、カバー側第1周壁12b1およびカバー側第2周壁12b2には、延在方向Xに互いに間隔をあけて複数の係止部31が設けられている。被係止部32は、例えば、ベース側第1周壁11b1およびベース側第2周壁11b2を幅方向Yに貫通する開口部として形成される。ここでは、被係止部32は、カバー12側の複数の係止部31と対応する位置に設けられており、当該係止部31が挿入および係止される。被係止部32は、係止部31と高さ方向Zに対向する被係止面を有し、当該被係止面と係止部31とが係止されることで、カバー12のベース11に対する高さ方向Zの一方側への移動(抜け)が制限される。
【0030】
図3は、プロテクタ1の仮保持部20の近傍の平面図である。
図2、3に示されるように、仮保持部20は、例えば、底壁21と、立壁22と、爪部23と、取付部27(
図2参照)と、を含んで構成される。底壁21は、仮保持部20のうち外壁11cから延在方向Xおよび幅方向Yに沿って延びた部分である。ここでは、底壁21は、高さ方向Zから見た場合に、幅方向Yが長辺方向となる矩形の板状に形成される。底壁21は、仮保持部20に仮保持される配索材Wの他方の端部Waを高さ方向Zの他方側から支持する。
【0031】
また、底壁21には、爪部23と高さ方向Zに重なる位置に開口部26(
図3参照)が設けられている。開口部26は、例えば、爪部23の成型時の型抜き用の開口部分として機能する。すなわち、開口部26は、爪部23の成型時に金型が高さ方向Zに沿って挿入(挿通)される部分である。開口部26は、例えば、高さ方向Zから見た場合に、爪部23よりも一回り大きな開口部分として形成され、爪部23を高さ方向Zの他方側に露出させている。
【0032】
立壁22は、仮保持部20のうち底壁21の外壁11cとは反対側の端部から高さ方向Zに沿って延びた部分である。立壁22は、外壁11cと延在方向Xに間隔をあけて対向している。ここでは、立壁22は、底壁21の幅方向Yの略中央部に部分的に設けられている。すなわち、立壁22の幅方向Yに沿った横幅は、底壁21の幅方向Yに沿った横幅よりも狭い。立壁22は、仮保持部20に仮保持される配索材Wの他方の端部Waを延在方向Xの一方側から支持する。
【0033】
爪部23は、仮保持部20のうち立壁22の底壁21とは反対側の端部から延在方向Xに沿って外壁11c側に延びた部分である。爪部23は、底壁21と高さ方向Zに間隔をあけて対向している。爪部23の幅方向Yに沿った横幅は、立壁22の幅方向Yに沿った横幅と略同じである。爪部23には、後述するテーパ面24(
図5参照)や、切欠部25(
図4参照)等が設けられている。爪部23は、仮保持部20に仮保持される配索材Wの他方の端部Waを高さ方向Zの一方側から支持する。
【0034】
取付部27(
図2参照)は、仮保持部20のうち底壁21の立壁22とは反対側(外壁11c)の端部に設けられ、ケース10(ベース11)に着脱可能に取り付けられる部分である。ここでは、取付部27は、高さ方向Zから見た場合に、略矩形のブロック状に形成される。取付部27の幅方向Yに沿った横幅は、底壁21の幅方向Yに沿った横幅よりも狭い。また、取付部27は、底壁21よりも高さ方向Zの一方側に突出している。取付部27は、例えば、外壁11cと隣接する配線引き回し部14の底壁に設けられた凹部と高さ方向Zに係合される。
【0035】
配索材Wの他方の端部Waは、例えば、第1部分Wa1(
図3参照)と、第2部分Wa2と、屈曲部分Wa3と、を含んで構成される。第1部分Wa1は、配索材Wの他方の端部Waのうち開口部3からケース10の外側に引き出される部分である。ここでは、第1部分Wa1は、開口部3から外壁11cと交差する延在方向Xに沿って延びている。第2部分Wa2は、配索材Wの他方の端部Waのうち第1部分Wa1と交差し仮保持部20に仮保持される部分である。ここでは、第2部分Wa2は、外壁11cに沿うように幅方向Yに沿って延びている。第2部分Wa2の幅方向Yの一端部(屈曲部分Wa3とは反対側の端部)には、バッテリ等と電気的に接続されるコネクタ40が設けられている。
【0036】
屈曲部分Wa3は、配索材Wの他方の端部Waのうち第1部分Wa1と第2部分Wa2とを接続する部分である。本実施形態では、屈曲部分Wa3は、第1部分Wa1と第2部分Wa2とを接続するように90°の角度で屈曲している。ここで、配索材Wの他方の端部Waは、外力を加えていない自然の状態(略直線状態)から、外力を加えて屈曲させた屈曲状態にすると、屈曲された部分が弾性変形し屈曲部分Wa3に弾性反力が生じて元の状態に戻ろうとするものである。したがって、本実施形態では、屈曲部分Wa3の弾性反力によって第2部分Wa2が立壁22側に押し付けられ、配索材Wの他方の端部Waを仮保持部20内により強固に仮固定することができる。
【0037】
図4は、プロテクタ1の仮保持部20の平面図であって、配索材Wの端部Waが取り外された状態の図であり、
図5は、プロテクタ1の仮保持部20の側面図である。
図4、5に示されるように、本実施形態では、爪部23には、幅方向Yの一端部23bに切欠部25が設けられている。切欠部25は、爪部23の幅方向Yの一端部23bを延在方向Xに沿って切り欠くように形成される。ここでは、切欠部25は、例えば、高さ方向Zから見た場合に、略三角形状に形成され、爪部23の幅方向Yの一端部23bにおける延在方向Xの基端部側と爪部23の幅方向Yの他端部における延在方向Xの先端部23a側とを対角方向(傾斜方向)に切り欠いている。
【0038】
また、本実施形態では、爪部23の延在方向Xに沿った長さL1(
図5参照)は、爪部23の先端部23aと外壁11cとの間の延在方向Xに沿った長さL2よりも僅かに大きく形成される。また、配索材Wの第2部分Wa2の直径は、爪部23の延在方向Xに沿った長さL1と略同じに構成される。そして、配索材Wの第2部分Wa2は、仮保持部20に対して爪部23の先端部23aと外壁11cとの間の空間から圧入によって取り付けられる。
【0039】
したがって、仮に、爪部23に上述した切欠部25が設けられていない場合、仮保持部20から配索材Wの第2部分Wa2を取り外す作業に手間が生じてしまう虞がある。その点、本実施形態では、爪部23の幅方向Yの一端部23bに切欠部25が設けられているため、爪部23の一端部23b側から配索材Wの第2部分Wa2をより容易に、より円滑に、あるいはより適正に取り外すことができる。
【0040】
また、本実施形態では、爪部23の先端部23aには、テーパ面24が設けられている。テーパ面24は、爪部23の外面に設けられ、延在方向Xの先端部23a(他方側)に向かうにつれて高さ方向Zの底壁21側(他方側)に向かうように傾斜している。すなわち、爪部23は、テーパ面24によって延在方向Xの先端部23aに向かうにつれて高さ方向Zに沿った幅が徐々に狭くなっている。本実施形態では、このようなテーパ面24によるガイド機能によって配索材Wの第2部分Wa2の仮保持部20内への挿入性が高められている。
【0041】
以上のように、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、ケース10の外壁11cには、開口部3からケース10の外側に引き出された配索材Wの端部Waを外壁11cに沿わせるように屈曲させた状態で仮保持する仮保持部20が設けられる。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、仮保持部20に配索材Wの端部Waを引っ掛けることによって、比較的容易に配索材Wの端部Waをケース10に対して仮固定することができる。この結果、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、より適正に配索材Wの端部Waを仮固定することができる。
【0042】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、仮保持部20は、外壁11cからケース10の延在方向Xに沿って延びた底壁21と、底壁21の外壁11cとは反対側の端部から高さ方向Zに沿って延びた立壁22と、立壁22の底壁21とは反対側の端部から延在方向Xに沿って外壁11c側に延びた爪部23と、を有する。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、底壁21と立壁22と爪部23とを有したフック状の仮保持部20によって、配索材Wの端部Waを引っ掛けて仮固定する構成を比較的容易に得ることができる。
【0043】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、爪部23には、延在方向Xの先端部23aに向かうにつれて高さ方向Zの底壁21側に向かうように傾斜したテーパ面24が設けられる。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、テーパ面24によるガイド機能によって配索材Wの端部Waの爪部23内への挿入性が向上し、ひいては配索材Wの端部Waを仮保持部20に引っ掛ける作業の作業性を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、爪部23には、幅方向Yの一端部23bを延在方向Xに沿って切り欠くように形成された切欠部25が設けられる。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、切欠部25によって爪部23における配索材Wの端部Waと高さ方向Zに対向する面積(領域)が減少し、これにより爪部23の一端部23b側から配索材Wの端部Waをより容易に、より円滑に、あるいはより適正に取り外すことができる。
【0045】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、配索材Wの端部Waは、開口部3からケース10の外側に引き出される第1部分Wa1と、第1部分Wa1と交差し仮保持部20に仮保持される第2部分Wa2と、第1部分Wa1と第2部分Wa2とを接続し90°の角度で屈曲した屈曲部分Wa3と、を含む。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、90°の角度で屈曲した屈曲部分Wa3の弾性反力(立壁22側に押し付けられる力)を利用して配索材Wの端部Waを仮保持部20内により強固に仮固定することができたり、配索材Wの端部Waをケース10に対してよりコンパクトに収納できたりする。
【0046】
なお、本実施形態では、ケース10における延在方向Xの一端部10aの外壁11cに開口部3が設けられた場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、ケース10におけるベース側底壁11aや、カバー側底壁12a、ベース側周壁11b、カバー側周壁12b等の外壁に開口部3が設けられてもよい。また、本実施形態では、仮保持部20は、ケース10と別体で形成された場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、ケース10と一体で形成されてもよい。また、本実施形態では、プロテクタ1は、ケース10の高さ方向Zが鉛直方向(車両上下方向)に沿う横置きの状態で設置された場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、ケース10の幅方向Yが鉛直方向(車両上下方向)に沿う縦置きの状態で設置されてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 プロテクタ
3 開口部
4 収容空間部
10 ケース
10a 一端部
11c 外壁
20 仮保持部
21 底壁
22 立壁
23 爪部
23a 先端部
23b 一端部
24 テーパ面
25 切欠部
W 配索材
Wa 端部
Wa1 第1部分
Wa2 第2部分
Wa3 屈曲部分
WH ワイヤハーネス
X 延在方向
Y 幅方向
Z 高さ方向