(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164451
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】防災制御盤
(51)【国際特許分類】
G06F 3/16 20060101AFI20241120BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G06F3/16 620
G06F3/16 650
G08B17/00 L
G08B17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079929
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】進士 紗苗
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA06
5G405CA22
5G405CA27
5G405CA31
5G405FA01
5G405FA02
(57)【要約】
【課題】より迅速に所望の画面までたどり着くことができる防災制御盤を得る。
【解決手段】防災制御盤(1、2)は、複数の画面の中から選択された1画面を表示する表示部(10、20)と、表示部(10、20)に表示されている1画面に対する作業者の操作入力を受け付ける操作部(11、21)と、作業者の操作部に対する操作入力に従い、表示部に表示させる1画面を特定して表示画面を遷移させる表示制御を実行する制御部(15、25)と、作業者により発せられる音声を受け付ける収音部(16、26)とを備えており、制御部(15、25)は、収音部(16、26)によって受け付けられた音声に対応する指定画面を特定する音声処理を実行し、表示部(10、20)によって現在表示されている画面を、特定した指定画面に切り替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画面の中から選択された1画面を表示する表示部と、
前記表示部に表示されている1画面に対する作業者の操作入力を受け付ける操作部と、
前記作業者の前記操作部に対する前記操作入力に従い、前記表示部に表示させる前記1画面を特定して表示画面を遷移させる表示制御を実行する制御部と、
前記作業者により発せられる音声を受け付ける収音部と
を備えており、
前記制御部は、前記収音部によって受け付けられた音声に対応する指定画面を特定する音声処理を実行し、前記表示部によって現在表示されている画面を、特定した前記指定画面に切り替える、
防災制御盤。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部に設けられている音声入力ボタンが押下された状態で、前記音声処理を実行する、
請求項1に記載の防災制御盤。
【請求項3】
前記複数の画面は、階層化された画面構成を有しており、
前記制御部は、前記音声処理を実行することで、任意の階層における前記指定画面に切り替えることを許容する
請求項1または2に記載の防災制御盤。
【請求項4】
前記制御部は、前記階層化された画面構成のうち、処理の実行開始を確定させるボタンが配置された画面である実行開始画面までを、下位の画面切り替えの限度とし、当該実行開始画面よりも下位の指定画面には前記音声処理による切り替えを行わないように制御する、
請求項3に記載の防災制御盤。
【請求項5】
前記制御部は、前記収音部によって予め定められた特定音声が受け付けられた場合には、前記表示部によって現在表示されている画面を、画面遷移の起点となるホーム画面に切り替える、
請求項1または2に記載の防災制御盤。
【請求項6】
前記制御部は、
特定の画面から他の特定の画面への切り替えを不可とすることを設定した遷移不可テーブルを予め記憶しており、
前記表示部によって現在表示されている画面に関する識別情報、及び前記遷移不可テーブルに基づいて、前記指定画面に切り替えるか否かを判定する、
請求項1または2に記載の防災制御盤。
【請求項7】
前記制御部は、
前記複数の画面のそれぞれにダイレクトで遷移するための音声信号と、前記音声信号により遷移する指定画面とが対応付けられた画面遷移テーブルを予め記憶しており、
前記画面遷移テーブルを参照することで、前記収音部によって受け付けられた音声に対応する指定画面を特定することにより、前記音声処理を実行する、
請求項1または2に記載の防災制御盤。
【請求項8】
前記制御部は、
前記複数の画面のそれぞれにダイレクトで遷移するためのテキストである主要ワードと、前記主要ワードにより遷移する指定画面とが対応付けられた画面遷移テーブルを予め記憶しており、
前記収音部によって受け付けられた音声をテキスト変換し、当該変換後のテキストの中に、前記画面遷移テーブルに存在する主要ワードが含まれているか否か判定し、前記主要ワードが含まれている場合、当該主要ワードに対応する指定画面を、前記画面遷移テーブルから特定することにより、前記音声処理を実行する、
請求項1または2に記載の防災制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防災設備に対する設定、作動制御、内容確認などを行うための各画面を、作業者からの操作に応じて切り替え表示する防災制御盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災受信機、総合操作盤、消火設備制御盤などの防災制御盤は、各防災設備に対する設定、作動制御、内容確認などを行うための各画面を保持しており、作業者の操作に応じて画面の切り替え表示を行う。
【0003】
また、各画面は、ホーム画面を最上位とした階層構造によって構成されており、ホーム画面を起点として、階層順に表示される。
【0004】
ここで、各画面を階層順に表示する防災制御盤として、次のものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る防災制御盤は、表示領域に設定画面を表示しつつ、各画面によって構成される階層構造を、特定の箇所に図示する。また、防災制御盤は、現在表示されている設定画面の階層上の位置を、図示されている階層構造に明示する。これにより、現在表示されている設定画面が何階層目に該当するのか、また、設定作業が完了するまでの残りの画面数を作業者に知らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業者が設定を行う際、対象となる設定を行うための画面が配置された階層位置を知らないと、当該画面を探し出すのに時間を要することになる。また、対象となる設定を行うための画面が配置された階層位置をたとえ知っていても、深い階層に配置された画面である場合、たどり着くのに時間を要する。
【0007】
特許文献1においては、現在表示されている設定画面の階層位置を知ることはできるが、対象となる設定を行うための画面が配置された階層位置を知らない場合、上記と同じく、探し出すのに時間を要することになる。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、より迅速に所望の指定画面までたどり着くことができる防災制御盤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る防災制御盤は、複数の画面の中から選択された1画面を表示する表示部と、表示部に表示されている1画面に対する作業者の操作入力を受け付ける操作部と、作業者の操作部に対する操作入力に従い、表示部に表示させる1画面を特定して表示画面を遷移させる表示制御を実行する制御部と、作業者により発せられる音声を受け付ける収音部とを備えており、制御部は、収音部によって受け付けられた音声に対応する指定画面を特定する音声処理を実行し、表示部によって現在表示されている画面を、特定した指定画面に切り替える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、より迅速に所望の指定画面までたどり着くことができる防災制御盤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1における火災受信機及び操作盤を示す図である。
【
図2】
図1に示す火災受信機及び操作盤の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す火災受信機が表示する各画面の階層構造例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における、受信機の予備電源試験を開始するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における、受信機の予備電源試験を開始するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1における、アドレスを指定して防災設備の連動表を閲覧するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における、アドレスを指定して防災設備の連動表を閲覧するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1における、アドレスを指定して防災設備の連動表を閲覧するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1における、手動により特定の防火戸を起動制御するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1における、手動により特定の防火戸を起動制御するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1における、手動により特定の防火戸を起動制御するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1における、手動により特定の防火戸を起動制御するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1における、手動により特定の防火戸を起動制御するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【
図14】
図2に示す火災受信機の画面遷移に関する動作例を示すフローチャートである。
【
図15】
図2に示す画面遷移テーブルによって設定される対応関係の一例を示す図である。
【
図16】
図2に示す遷移不可テーブルによって設定される対応関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の防災制御盤の好適な態様につき、図面を用いて説明する。
本開示の実施の形態1に係る防災制御盤は、作業者から発せられる声を収音し、当該声を認識することにより、現在表示している画面から、作業者が所望する画面にダイレクトに切り替えることを技術的特徴としている。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1における火災受信機及び操作盤を示す図である。
【0014】
図1に示す火災受信機1及び操作盤2は、いずれも、防災システムにおける監視制御に使用される防災制御盤である。
【0015】
火災受信機1は、防災システムを構成する各防災設備をそれぞれ制御し、統制する防災制御盤である。ここで、防災設備とは、火災が発生したことを知らせる設備、及び災害発生時に被害を抑えるために作動する設備であり、例えば、火災感知器、防火戸、排煙設備、非常放送設備、地区音響装置、消火設備である。火災受信機1は、火災感知器から火災発生信号を受信すると、各防災設備を作動させる。
【0016】
操作盤2は、施設内の防災に関する情報を一元的に集約して表示する防災制御盤である。また、操作盤2は、作業者からの操作を受け付けて、当該操作の内容に応じた指令を、火災受信機1を介して各防災設備に送信する。これにより、作業者は、感知器等の警報動作を確認したり、現場状況に応じて、防火戸などの防災設備を遠隔制御したりすることができる。
【0017】
図2は、
図1に示す火災受信機1及び操作盤2の構成例を示すブロック図である。
【0018】
図2において、火災受信機1は、表示部10、操作部11、制御部15、収音部16、及び設備統制部17を備える。
【0019】
表示部10は、各種の情報を作業者に対して表示するディスプレイであり、後述するように、複数の画面の中から選択された1画面を表示する。
【0020】
操作部11は、作業者からの操作を受け付ける物理キー、または表示部10の表示画面に設けられているタッチパネルである。
【0021】
収音部16は、マイクロフォンを含み、作業者の発する音声を受け付けて収音する。
【0022】
制御部15は、演算処理部12、記憶部13、及び通信部14を備えており、火災受信機1の内部のハードウェアを統括的に制御する。
【0023】
演算処理部12は、中央演算処理装置、及び主記憶装置を含んでおり、記憶部13に記憶されているソフトウェアを演算実行する。
【0024】
記憶部13は、補助記憶装置を含んでおり、演算処理部12によって演算実行されるソフトウェアを記憶する。
【0025】
また、記憶部13には、画面遷移テーブル31、遷移不可テーブル32、複数の画面データ33、複数の音声認識用データ34が記憶されている。
【0026】
複数の画面データ33は、各防災設備に対する設定、作動制御、内容確認などを行うために、表示部10によって表示されるデータである。各画面データ33は、階層構造を構成し、作業者の操作に応じて階層順に表示される。各画面データ33の具体的な階層構造例、及び具体的な画面構成例については後述する。
【0027】
音声認識用データ34は、音声認識を行うためのデータであり、収音部16によって収音された音声の中に、特定の主要ワードが含まれているか否かを判定するためのデータである。
【0028】
なお、実施の形態1における音声認識用データ34は、具体的には、主要ワードを記したテキストデータであるものとする。
【0029】
画面遷移テーブル31は、画面データ33と、主要ワードとしての音声認識用データ34とを、予め対応付けるためのテーブルである。画面遷移テーブル31を設けることにより、火災受信機1は、収音部16によって収音された音声の中に、特定の主要ワードが含まれている場合、当該主要ワードに対応付けられた画面を特定することができる。
【0030】
すなわち、火災受信機1は、画面遷移テーブル31を用いることにより、収音部16によって受け付けられた音声に対応する指定画面を特定する音声処理を実行することができる。
【0031】
遷移不可テーブル32は、相互に異なる画面同士において一方から他方にダイレクトに遷移することができない関係を予め対応付けるためのテーブルである。詳細については後述するが、遷移不可テーブル32を設けることにより、火災受信機1は、特定の画面から他の特定の画面への切り替えを不可にすることができる。
【0032】
画面遷移テーブル31及び遷移不可テーブル32の具体例については後述する。
【0033】
通信部14は、防災LAN(Local Area Network)を介して操作盤2との間でデータの送受信を行う。
【0034】
設備統制部17は、防災システムを構成する各防災設備を制御する機能部である。設備統制部17は、火災感知器からの信号を受信したり、各防災設備を作動させたりする。
【0035】
操作盤2は、表示部20、操作部21、制御部25、及び収音部26を備える。
【0036】
表示部20は、文字、記号、図形などを、GUI(Graphical User Interface)によって描画することができる高解像度のディスプレイである。実施の形態1においては、表示部20は、火災受信機1の表示部10よりも多くの情報を、作業者に提供することができる。
【0037】
操作部21は、マウス、トラックボールなどのポインティングデバイス、または表示部20の表示画面に設けられているタッチパネルである。加えて、操作部21には、メンテナンスの際に使用されるキーボードも構成上含まれる。
【0038】
収音部26は、火災受信機1の収音部16と同じ機能を有しており、作業者の発する音声を受け付けて収音する。
【0039】
制御部25は、火災受信機1の制御部15と同じ機能を有しており、演算処理部22、記憶部23、及び通信部24を備える。演算処理部22、記憶部23、及び通信部24についても、火災受信機1に備えられている演算処理部12、記憶部13、及び通信部14と同様の機能を備える。
【0040】
また、火災受信機1と同様に、記憶部23には、画面遷移テーブル31、遷移不可テーブル32、複数の画面データ33、複数の音声認識用データ34が記憶されている。
【0041】
引き続き、実施の形態1における画面の切り替え制御について説明する。なお、以降の説明では、一例として火災受信機1について説明するが、操作盤2についても同様の機能を備えている。
【0042】
図3は、
図1に示す火災受信機1が表示する各画面の階層構造例を示す図である。ここで、
図3の階層構造例に示す100、101、・・・などの符号は、後述する各画面の符号に一致している。
【0043】
実施の形態1において、表示部10によって表示される複数の画面は、階層化された画面構成を有しており、各画面は、
図3に示すように、「試験」、「保守」、「設定」、「遮断」、・・・などの大項目ごとに階層化され、管理される。
【0044】
このような大項目は、階層構造の最も上位に位置するメニュー画面100に含まれている。メニュー画面100は、画面遷移の基準となるホーム画面であり、ボタン操作によって行われる全ての画面遷移の起点となっている。
【0045】
続いて、実施の形態1における画面遷移について、具体的なケースを例示しながら説明する。
【0046】
図4及び
図5は、実施の形態1における、受信機の予備電源試験を開始するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【0047】
図4(A)において、作業者がメニュー画面100の中から、例えば「試験」ボタンを押下すると、火災受信機1は、
図4(B)に示すように、試験の内容を選択するためのサブメニュー画面101を表示する。
【0048】
そして、作業者がサブメニュー画面101の中から、例えば「予備電源試験」ボタンを押下すると、火災受信機1は、
図5(A)に示すように、予備電源試験の対象となる機器を選択するための詳細メニュー画面102を表示する。
【0049】
そして、作業者が詳細メニュー画面102の中から「受信機」ボタンを押下すると、火災受信機1は、
図5(B)に示すように、処理の実行開始を確定させるボタンが配置された実行開始画面103を表示する。
【0050】
ここで、実行開始画面103内の「実行」ボタンが作業者によって押下されると、火災受信機1は、受信機に対する予備電源試験を開始する。
【0051】
このように、作業者は、ボタンを操作することにより、
図3に示す階層の順に沿って各項目を選択していき、所望の実行開始画面103まで到達する。しかしながら、このようなボタン操作の場合、いずれの画面にどのような項目が存在するのかを予め知っておく必要があり、知らない場合は所望の指定画面までたどり着くのに時間を要することになる。
【0052】
これを解消するため、実施の形態1における火災受信機1には、音声に基づいて所望の指定画面にダイレクトで遷移することができる音声処理機能を備えている。このような音声処理機能を実行するために、実施の形態1における火災受信機1には、
図4、
図5に示すように、各画面上に音声入力ボタン150が設けられている。
【0053】
火災受信機1は、音声入力ボタン150が押下されると、収音部16による収音を開始して、音声入力を受け付ける。
【0054】
例えば、作業者は、
図4(A)のメニュー画面100を表示させた状態で、音声入力ボタン150を押しながら、「予備電源試験」との言葉を発する。
【0055】
火災受信機1は、作業者から発せられた「予備電源試験」の声を、収音部16を用いて収音すると、現在表示している画面から、当該「予備電源試験」に対応付けられている画面にダイレクトに切り替える。ここでは、火災受信機1は、メニュー画面100を表示させた状態から、
図5(A)に示す詳細メニュー画面102までダイレクトに表示画面を遷移させる。
【0056】
また、作業者は、
図4(A)のメニュー画面100を表示させた状態で、音声入力ボタン150を押しながら、例えば「受信機の予備電源試験」との言葉を発する。
【0057】
火災受信機1は、この言葉を受けて、当該「受信機の予備電源試験」に対応付けられている画面まで、ダイレクトに表示画面を遷移させる。ここでは、火災受信機1は、メニュー画面100を表示させた状態から、
図5(B)に示す実行開始画面103までダイレクトに表示画面を遷移させる。
【0058】
これにより、作業者は、たとえ各画面の階層構造、各画面の項目内容などを知らなくても、これから行う内容を発声することにより、所望の指定画面にダイレクトにたどり着くことができる。
【0059】
また、上記の例において、火災受信機1は、実行開始直前の画面である実行開始画面103までを音声処理機能による画面遷移の限度とし、実行までは行わない。このため、作業者は、最終的な実行の指示を、作業者自身の判断により行うことができる。
【0060】
引き続き、具体例として、各防災設備の連動表を閲覧するケース、及び、手動により特定の防災設備を起動制御するケースの2つのケースについて説明する。
【0061】
図6~
図8は、実施の形態1における、アドレスを指定して各防災設備の連動表を閲覧するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【0062】
ボタン操作によって連動表の閲覧画面を表示する場合、作業者は、
図6(A)に示すメニュー画面100から、まずは「保守」ボタンを押下し、次いで、
図6(B)に示すサブメニュー画面201から、「データリスト」ボタンを押下する。
【0063】
「データリスト」ボタンが押下されると、火災受信機1は、
図7(A)に示す詳細メニュー画面202に表示を切り替える。作業者は、詳細メニュー画面202の中から「連動表」ボタンを押下する。
【0064】
「連動表」ボタンが押下されると、火災受信機1は、
図7(B)に示すアドレス指定画面203に表示を切り替える。
【0065】
作業者は、アドレス指定画面203内に表示されるテンキーを操作することで、所望する火災感知器のアドレスを入力し、「実行」ボタンを押下する。
【0066】
火災受信機1は、この「実行」ボタンの押下を受け付けると、
図8に示す連動表閲覧画面204に表示を切り替える。
【0067】
上記の一連のボタン操作により、作業者は、アドレスを指定して、特定の連動表を閲覧することができる。しかしながら、このような一連の操作の場合、作業者は、連動表閲覧画面204にたどり着くまでに様々な選択を行う必要がある。
【0068】
特に、
図6(B)に示すサブメニュー画面201においては、各種の選択項目があるため、連動表閲覧画面204が「データリスト」の中にあることを知らないと、当該画面までたどり着くことができない。
【0069】
一方、実施の形態1における音声処理機能を活用できる場合、作業者は、
図6(A)に示すメニュー画面100から、音声入力ボタン150を押下して、例えば「データリスト」と発声する。これにより、作業者は、
図7(A)に示す詳細メニュー画面202までダイレクトに画面を遷移させることができる。
【0070】
また、作業者は、
図6(A)に示すメニュー画面100から、音声入力ボタン150を押下して、例えば「連動表」と発声する。これにより、作業者は、
図7(B)のアドレス指定画面203までダイレクトに画面を遷移させることができる。
【0071】
また、作業者は、
図6(A)に示すメニュー画面100から、音声入力ボタン150を押下して、例えば「アドレス1の001の連動表」と発声する。これにより、
図8に示す連動表閲覧画面204までダイレクトに画面を遷移させることができる。
【0072】
なお、上記の
図4及び
図5を用いて説明したケースの場合、実行開始直前の画面である実行開始画面103までを音声処理機能による画面遷移の限度とした。これに対し、
図6~
図8のケースは、設定内容の閲覧のみを行うケースであり、防災設備に対して実行指示、設定変更などの変化を加えるものではない。このように確認用の閲覧のみである場合、火災受信機1は、最終結果である連動表閲覧画面204までダイレクトに画面を遷移させることを可能としている。
【0073】
図9~
図13は、実施の形態1における、手動により特定の防火戸を起動制御するまでの画面遷移の一例を示す図である。
【0074】
ボタン操作によって特定の防火戸を起動制御する場合、作業者は、
図9(A)に示すメニュー画面100から、まずは「手動制御」ボタンを押下し、次いで、
図9(B)に示す詳細メニュー画面302から、「棟階区番入力」ボタンを押下する。
【0075】
「棟階区番入力」ボタンが押下されると、火災受信機1は、
図10(A)に示す対象設備選択画面303に画面を切り替える。ここで作業者は、対象設備選択画面303の中から、制御対象の防災設備として、「防火戸」ボタンを押下する。
【0076】
次いで、作業者は、
図10(B)、
図11(A)、
図11(B)に示す指定画面304~306を介して、制御対象の防火戸が設けられている「棟」、「階」及び「区」を指定する。そして、作業者は、
図12(A)に示す指定画面307を介して、制御対象の防火戸を識別するための「番」を入力する。この操作により、作業者は、制御の対象となる防火戸を特定することができる。
【0077】
その後、作業者は、
図12(B)に示す選択画面308を介して、特定された防火戸を起動させるのか復帰させるのかを選択する。
【0078】
そして、最後に、作業者は、
図13に示す実行開始画面309内の「実行」ボタンを押下する。これにより、特定の防火戸を起動させることができる。
【0079】
この
図9~
図13を用いて説明したケースは、防火戸を作動させる場面、すなわち、実際に火災が発生している状況下で行われるケースである。このため、迅速な対応が求められるが、ボタン操作により行う場合、上記のように様々な操作を行う必要がなる。
【0080】
一方、実施の形態1における音声入力の場合、作業者は、
図9(A)に示すメニュー画面100から、音声入力ボタン150を押下して、例えば「防火戸の起動制御」と発声する。これにより、作業者は、
図10(B)に示す対象設備選択画面304までダイレクトに画面を遷移させることができる。
【0081】
また、作業者は、
図9(A)に示すメニュー画面100から、音声入力ボタン150を押下して、例えば「A棟の防火戸を起動制御」と発声する。これにより、作業者は、
図11(A)に示す指定画面305までダイレクトに画面を遷移させることができる。
【0082】
以下同様に、作業者は、
図9(A)に示すメニュー画面100から、例えば「A棟の7階の防火戸を起動制御」、「A棟の7階2区の防火戸を起動制御」、または「A棟の7階2区の1番の防火戸を起動制御」と発声する。これにより、作業者は、各発声音に対応した画面、ここでは、
図11(B)の指定画面306、
図12(A)の指定画面307、または
図13の実行開始画面309に、ダイレクトに表示画面を遷移させることができる。
【0083】
実施の形態1においては、このように、作業者が具体的な内容を声に出して発声し、その音声に対して音声処理を実行することにより、画面遷移に関する一連の操作を行うことができる。このため、不慣れな作業者にとっても、容易に所望の指定画面までたどり着くことができる。また、作業者は、音声入力を行うことにより、ボタン操作よりも迅速に対応することができる。
【0084】
上記の例では、メニュー画面100を起点として、より深い階層の画面に遷移させる態様を説明した。これに対し、火災受信機1は、現在の階層にかかわらず、階層を跨いで任意の階層の指定画面に切り替えることができる。すなわち、制御部10は、音声処理を実行することで、任意の階層における指定画面に切り替えることを許容する。
【0085】
例えば、作業者は、
図8に示す連動表閲覧画面204から、音声入力ボタン150を押下して「受信機の予備電源試験」と発声する。これにより、作業者は、
図5(B)に示す予備電源試験の実行開始画面103までダイレクトに表示させることができる。
【0086】
また、例えば「メニュー画面に移動」、「ホームに移動」など、作業者が「メニュー」「ホーム」などの特定のワードを含めて声に出すことにより、火災受信機1は、
図4(A)、
図6(A)、及び
図9(A)に示すメニュー画面100に表示を戻すことができる。
【0087】
図14は、
図2に示す火災受信機1の音声処理機能に基づく画面遷移に関する動作例を示すフローチャートである。なお、
図14のフローチャートは、繰り返し実行される。
【0088】
制御部15は、ステップS101において、音声入力ボタン150が操作されたか否かを判定する。音声入力ボタン150が操作されていない場合、制御部15は、
図14のフローチャートを終了する。
【0089】
制御部15は、音声入力ボタン150が操作されたと判定した場合、ステップS102において、収音部16をオンにして、作業者の発する声を収音する。
【0090】
制御部15は、ステップS103において、収音された音について解析を行う。
【0091】
制御部15は、例えば、既存の音声認識技術を用いて、収音部16によって収音された作業者の声をテキストに変換する。そして、制御部15は、変換したテキストに対して形態素解析を施すことにより、テキストを最小単位に細分化し、テキスト内の主要ワードを抽出する。
【0092】
制御部15は、ステップS104において、画面遷移テーブル31を参照し、音声に対応した画面IDを取得する。
【0093】
図15は、
図2に示す画面遷移テーブル31によって設定される対応関係の一例を示す図である。画面遷移テーブル31には、画面IDと、音声認識用データ34そのものである主要ワードのテキストとが対応付けられている。
【0094】
制御部15は、収音した音声の中に、例えば「予備電源試験」の用語が含まれている場合、画面遷移テーブル31を参照することで、詳細メニュー画面102の画面IDである「102」を取得する。
【0095】
すなわち、制御部15は、変換後のテキストの中に、画面遷移テーブル31に存在する主要ワードが含まれているか否か判定する。そして、制御部15は、主要ワードが含まれている場合、当該主要ワードに対応する指定画面のIDを、画面遷移テーブル31から特定する。
【0096】
なお、
図15の「予備電源試験」及び「予備電源用試験」のように、同じ内容を指し示すワードについては、同じ画面IDを対応付けておく。これにより、「予備電源試験」及び「予備電源用試験」のいずれであっても、同じ画面IDが取得される。このため、言葉の揺らぎを火災受信機1の装置側で吸収することができる。
【0097】
また、言葉の揺らぎを吸収する他の例として、2つ以上のワードの組み合わせにより画面IDを特定できるようにしもてよい。例えば、
図15に示すように「予備電源」+「試験」を詳細メニュー画面102に対応付けて登録しておくと、制御部15は、「試験、予備電源」との音声に対しても、詳細メニュー画面102の画面IDを取得することができる。
【0098】
また、2つ以上のワードを組み合わせる場合、優先ワードを決めておくことで、同じワードを用いた異なる画面IDを取得することも可能になる。例えば「試験」を優先ワードとし、「試験、A棟」との音声が検知された場合、制御部15は、「試験」のワードを優先してサブメニュー画面101の画面IDを取得する。
【0099】
図14のフローチャートの説明に戻る。制御部15は、ステップS104において、音声の検出不備などの理由により、音声に対応した画面IDを正しく取得できなかった場合、
図14のフローチャートの処理を終了する。
【0100】
一方、制御部15は、音声に対応した画面IDを取得できた場合、処理をステップS105に進める。
【0101】
制御部15は、ステップS105において、現在表示されている画面から、取得した画面IDに対応した画面に遷移できるか否かを、遷移不可テーブル32に基づいて判定する。
【0102】
図16は、
図2に示す遷移不可テーブル32によって設定される対応関係の一例を示す図である。
【0103】
火災受信機1は、上記のとおり、階層を跨いだ画面遷移を行うことができる。これに対し、火災受信機1は、遷移を抑止したい画面同士を遷移不可テーブル32に登録することで、特定の画面から他の特定の画面への遷移を抑止することができる。
【0104】
図16の例においては、現在の画面が
図5(A)に示す詳細メニュー画面102である場合、
図6(B)に示すサブメニュー画面201、及び
図9(B)に示す詳細メニュー画面302への画面遷移は実行されない。また、現在の画面が
図7(A)に示す詳細メニュー画面202である場合、
図4(B)に示すサブメニュー画面101への画面遷移は実行されない。
【0105】
なお、
図16の例は、あくまで一例であり、遷移不可テーブル32内のデータは、利用の用途に応じて任意に設定される。また、遷移を抑止したい画面同士の対応関係を遷移不可テーブル32として設定しておく代わりに、遷移が可能な画面同士の対応関係を遷移可能テーブルとして設定しておき、遷移可否の判定に用いることも可能である。
【0106】
図14のフローチャートの説明に戻る。制御部15は、ステップS105において、ステップS104で取得した画面IDの画面には遷移できないと判定した場合、ステップS110において、遷移不可である旨を作業者に通知する。そして、制御部15は、
図14のフローチャートの処理を終了する。
【0107】
なお、ステップS110において、制御部15は、遷移不可である旨の通知とともに、全ての画面に遷移可能なメニュー画面100を表示させてもよい。これにより、制御部15は、次の音声入力では任意の画面へ遷移させることができる。
【0108】
一方、制御部15は、ステップS104で取得した画面IDの画面に遷移可能であると判定する場合、ステップS106において、該当する画面データ33を、記憶部13から取得する。そして、制御部15は、取得した画面データ33を表示部10に表示する。
【0109】
なお、実施の形態1における音声認識用データ34は、主要ワードを記したテキストデータであるとしたが、主要ワードを声に発することにより得られる音声信号のデータであってもよい。このような音声信号のデータの種類として、例えば録音データ、または音声の特徴点を抽出した数値データを採用することができる。
【0110】
また、この場合、画面遷移テーブル31には、画面IDと、音声信号のデータを一意に特定するための識別データとが対応付けられる。そして、制御部15は、収音部16によって収音された作業者の声の中に、特定の音声信号が含まれているか否かを、画面遷移テーブル31に基づいて判定する。
【0111】
このような火災受信機1または操作盤2を例にして説明した防災制御盤の特徴を整理すると、以下のような構成を有し、効果を実現できることとなる。
【0112】
実施の形態1における防災制御盤は、複数の画面の中から選択された1画面を表示する表示部10と、表示部10に表示されている1画面に対する作業者の操作入力を受け付ける操作部11とを備える。
【0113】
また、防災制御盤は、作業者の操作部に対する操作入力に従い、表示部10に表示させる1画面を特定して表示画面を遷移させる表示制御を実行する制御部15と、作業者により発せられる音声を受け付ける収音部16とを備える。
【0114】
制御部15は、収音部16によって受け付けられた音声に対応する指定画面を特定する音声処理を実行し、表示部10によって現在表示されている画面を、特定した指定画面に切り替える。
【0115】
このため、より迅速に所望の指定画面までダイレクトにたどり着くことができる防災制御盤を得ることができる。
【0116】
また、制御部15は、操作部11に設けられている音声入力ボタン150が押下された状態で、音声処理を実行する。
【0117】
このため、作業者による操作があった場合に音声処理が実行されるため、作業者の意に反する音声処理の実行を抑止することができる。
【0118】
また、複数の画面は、階層化された画面構成を有しており、制御部15は、音声処理を実行することで、任意の階層における指定画面に切り替えることを許容する。
【0119】
このため、現在の画面の階層を問わず、任意の画面へダイレクトに遷移させることができ、利便性を向上させることができる。
【0120】
また、ある階層の画面までは、音声処理による画面遷移を行い、以降は操作部11を用いて入力するなどの混在操作を行うことができる。
【0121】
また、制御部15は、階層化された画面構成のうち、処理の実行開始を確定させるボタンが配置された画面である実行開始画面までを、音声処理機能による下位の画面切り替えの限度とし、当該実行開始画面よりも下位の指定画面には音声処理による切り替えを行わないように制御する。
【0122】
このため、作業者の判断により、最終的な実行指示を行うことができる。
【0123】
また、制御部15は、収音部16によって予め定められた特定音声が受け付けられた場合には、表示部10によって現在表示されている画面を、画面遷移の起点となるメニュー画面100に切り替える。
【0124】
このため、多数の画面を経由して入力を進めた後においても、起点となるメニュー画面100に迅速に戻ることができる。
【0125】
また、制御部15は、特定の画面から他の特定の画面への切り替えを禁止することを設定した遷移不可テーブル32を予め記憶している。制御部15は、表示部10によって現在表示されている画面に関する識別情報、及び遷移不可テーブル32に基づいて、指定画面に切り替えるか否かを判定する。
【0126】
このため、一部の画面切り替えについて抑止することができる。
【0127】
また、制御部15は、複数の画面のそれぞれにダイレクトで遷移するための音声信号と、音声信号により遷移する指定画面とが対応付けられた画面遷移テーブル31を予め記憶している。制御部15は、画面遷移テーブル31を参照し、収音部16によって受け付けられた音声に対応する指定画面を特定することにより、音声処理を実行する。
【0128】
このため、画面遷移テーブル31内のデータの差し替えを行うことにより、例えば、作業者の実際の声に基づいた音声信号を登録することが可能になり、使用する施設に応じた細かい調整を行うことができる。
【0129】
また、制御部は、複数の画面のそれぞれにダイレクトで遷移するためのテキストである主要ワードと、主要ワードにより遷移する指定画面とが対応付けられた画面遷移テーブル31を予め記憶している。制御部15は、収音部16によって受け付けられた音声をテキスト変換し、当該変換後のテキストの中に、画面遷移テーブル31に存在する主要ワードが含まれているか否か判定する。そして、制御部15は、主要ワードが含まれている場合、当該主要ワードに対応する指定画面を、画面遷移テーブル31から特定することにより、音声処理を実行する。
【0130】
このように、防災制御盤は、音声をテキストに変換し、テキストベースで解析することにより、例えば形態素解析を用いて変換後のテキストを細分化することができる。このため、防災制御盤は、精度良く主要ワードを特定することができる。
【0131】
また、防災制御盤は、変換後のテキストを細分化することにより、例えば「A棟の7階にある防火戸を起動制御」の文章と、「起動制御!防火戸!A棟!7階!」の文章を、同じ内容であると見極めることができる。
【符号の説明】
【0132】
1 火災受信機(防災制御盤)、2 操作盤(防災制御盤)、10、20 表示部、11、21 操作部、15、25 制御部、16、26 収音部、31 画面遷移テーブル、32 遷移不可テーブル、33 画面データ、34 音声認識用データ(音声信号)、100 メニュー画面(ホーム画面)、103、309 実行開始画面、150 音声入力ボタン。