(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164452
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】青果物包装用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20241120BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20241120BHJP
B65D 33/01 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B65D85/50 100
B65D30/02
B65D33/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079930
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】豊田 真
(72)【発明者】
【氏名】笠松 晴奈
(72)【発明者】
【氏名】小林 麗野
【テーマコード(参考)】
3E035
3E064
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA08
3E035BB02
3E035BB08
3E035BC01
3E035BC02
3E035BD04
3E064AB23
3E064BA01
3E064BA24
3E064BA60
3E064BB03
3E064BC04
3E064BC05
3E064BC20
3E064EA18
3E064FA01
3E064GA01
3E064HD08
3E064HE03
3E064HJ01
3E064HM01
3E064HN02
3E064HN04
3E064HN13
(57)【要約】
【課題】
本発明は、カビや痛みの発生の抑制に適した青果物収容用の袋を提供することを目的とする。また、本発明は、当該袋を、環境に配慮した素材から構成することも目的とする。また、本発明は、内容物を視認しやすいように当該袋を構成することも目的とする。
【解決手段】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成された第一領域と、紙シートから形成された第二領域と、を少なくとも有する青果物包装用袋を提供する。一実施態様において、前記紙シートは、樹脂層と紙層とを有する積層体である。例えば、前記紙シートは、樹脂層と紙層とを有する積層体であり、且つ、前記樹脂層が、前記ポリ乳酸系フィルムと接着されていてよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成された第一領域と、
紙シートから形成された第二領域と、
を少なくとも有する青果物包装用袋。
【請求項2】
前記紙シートは、樹脂層と紙層とを有する積層体である、請求項1に記載の青果物包装用袋。
【請求項3】
前記紙シートの坪量は100g/m2以下である、請求項1又は2に記載の青果物包装用袋。
【請求項4】
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムの密度は1.0g/cm3以上である、請求項1又は2に記載の青果物包装用袋。
【請求項5】
前記第一領域及び前記第二領域は、ヒートシールにより接着されている、請求項1又は2に記載の青果物包装用袋。
【請求項6】
前記紙シートは、樹脂層と紙層とを有する積層体であり、且つ、
前記樹脂層が、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムと接着されている、
請求項1又は2に記載の青果物包装用袋。
【請求項7】
前記青果物包装用袋は、その内部に収容される青果物にカビが発生することを防ぐために及び/又は傷みを防止するために用いられる、請求項1又は2に記載の青果物包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物包装用袋に関し、特には特定の樹脂フィルムを有する青果物包装用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品などの内容物を収容するための容器の構造に関して、これまでに様々な技術が提案されている。これらの技術のうちの一つとして、青果物包装用の袋に関する技術がある。当該袋は、例えば青果物の鮮度保持を目的とした技術が適用されていることがある。
【0003】
下記特許文献1には、「合成樹脂フィルムを備えた青果物鮮度保持容器であって、前記合成樹脂フィルムの、2℃、60%RHにおける透湿度(g/m2・day・atm)が、0.17以上、3.3以下である、青果物鮮度保持容器。」(請求項1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
青果物の良好な状態をより長い期間にわたって保持することが求められる。例えば、青果物の保存中にカビや痛みが生じることがあり、これらを防ぐことが望ましい。
【0006】
また、青果物は、しばしば袋に収容された状態で陳列される。当該袋は、環境に配慮した素材から構成されることが望ましい。
【0007】
本発明は、カビや痛みの発生の抑制に適した青果物収容用の袋を提供することを目的とする。また、本発明は、当該袋を、環境に配慮した素材から構成することも目的とする。また、本発明は、内容物を視認しやすいように当該袋を構成することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の構成を有する袋によって、上記課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1]ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成された第一領域と、
紙シートから形成された第二領域と、
を少なくとも有する青果物包装用袋。
[2]前記紙シートは、樹脂層と紙層とを有する積層体である、[1]に記載の青果物包装用袋。
[3]前記紙シートの坪量は100g/m2以下である、[1]又は[2]に記載の青果物包装用袋。
[4]前記ポリ乳酸系樹脂フィルムの密度は1.0g/cm3以上である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の青果物包装用袋。
[5]前記第一領域及び前記第二領域は、ヒートシールにより又は接着剤により接着されている、[1]~[4]のいずれか一つに記載の青果物包装用袋。
[6]前記紙シートは、樹脂層と紙層とを有する積層体であり、且つ、
前記樹脂層が、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムと接着されている、
[1]~[5]のいずれか一つに記載の青果物包装用袋。
[7]前記青果物包装用袋は、収容される青果物にカビが発生することを防ぐために及び/又は傷みを防止するために用いられる、[1]~[6]のいずれか一つに記載の青果物包装用袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、カビ及び痛みの発生を防ぐために適した青果物収容用の袋が提供される。さらに、本発明の袋は、環境に配慮した素材から構成することができる。例えばポリ乳酸系樹脂フィルムを利用することで石油資源の使用量を減らすことができ、さらに、これは生分解素材であるため、コンポストで堆肥化可能になる。また、紙シートについても、環境に配慮した素材である。さらに、当該袋は、内容物を視認しやすいように構成することができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載されたものに限定されず、本明細書内に記載された他の効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の青果物包装用袋の一例の模式図である。
【
図2】本発明の青果物包装用袋の一例の模式図である。
【
図3-1】本発明の青果物包装用袋の変形例の模式図である。
【
図3-2】本発明の青果物包装用袋の変形例の模式図である。
【
図3-3】本発明の青果物包装用袋の変形例の模式図である。
【
図4-1】実験において用いられた各試験例の写真である。
【
図4-2】実験において用いられた各試験例の写真である。
【
図4-3】実験において用いられた各試験例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0012】
本発明について、以下の順序で説明を行う。
1.第1の実施形態(青果物包装用袋)
1.1 構成例
1.2 第一領域
1.3 第二領域
1.4 底部
1.5 接着部
1.6 変形例
1.7 製造方法
2.実施例
【0013】
1.第1の実施形態(青果物包装用袋)
【0014】
1.1 構成例
本発明に従う青果物包装用袋を、
図1及び2を参照しながら説明する。
図1は、内容物(ミニトマト)が収容されている状態の当該袋の一例の模式図である。
図2は、内容物が収容されていない状態の当該袋の一例の模式図である。
【0015】
同図に示されるように、本発明に従う青果物包装用袋100は、第一領域101及び第二領域102を有する。さらに、当該青果物包装用袋100は、底部103を有してよい。
【0016】
第一領域101は、樹脂フィルムから形成されている。本発明の好ましい実施態様において、前記樹脂フィルムは、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成されていてよい。さらに、当該樹脂フィルムは、好ましくは内容物を視認できるように構成されてよく、例えば透明であってよい。
【0017】
第二領域102は、紙シートから形成されてよい。紙シートは、紙層を有するシート状構造物であり、例えば樹脂層と紙層とを有する積層体であってよく、又は、紙層だけを有してもよい。
前記積層体の前記樹脂層は、例えばラミネート層又はコーティング層であってよい。すなわち、前記紙シートは、ラミネート処理された紙又はコーティング処理された紙であってよい。
【0018】
第一領域101は、前記袋の1つの面111を形成するように設けられている。当該面は、当該袋に内容物を入れた状態において、1つの壁状部分を形成する面である。当該面は、本明細書内において「第一面」又は「第一壁部」とも呼ばれる。第一領域101(面111)は透明であるので、袋の内部に収容されたミニトマトを、当該第一領域101を通じて視認することができる。
【0019】
第二領域102は、前記袋の他の1つの面112を形成するように設けられている。当該面は、当該袋に内容物を入れた状態で当該袋を(例えばテーブルや台などの載置面に)置いた場合に、他の1つの壁状部分を形成する面である。当該面は、本明細書内において「第二面」又は「第二壁部」とも呼ばれる。
【0020】
底部103は、上記で述べた樹脂フィルムから形成されてもよく、又は、上記で述べた紙シートから形成されてもよく、又は、これら以外の材料(樹脂フィルム又は紙シート)から形成されてもよい。底部103は、いわゆるマチ(特には底マチ)として機能する。すなわち、本発明の袋は、いわゆる底ガゼットを有する袋であってよい。
また、底部103は、本発明に従う青果物包装用袋は、底部103を有さないものであってもよい。
また、本発明の袋は、側面にマチを有してもよい。当該側面のマチも、底部と同様に、上記で述べた樹脂フィルムから形成されてもよく、又は、上記で述べた紙シートから形成されてもよく、又は、これら以外の材料(樹脂フィルム又は紙シート)から形成されてもよい。
【0021】
第一領域101を形成するフィルムと第二領域102を形成する紙シートは、接着部104において接着されている。
【0022】
本発明の青果物包装用袋は、ポリ乳酸系樹脂フィルムと紙シートとを有することによって、特には前記フィルムが一つの第一壁部を形成し且つ前記紙シートが第二壁部を形成することによって、青果物にカビが発生することを防ぐという効果を発揮する。また、ポリ乳酸系樹脂フィルムと紙シートとの組合せによって、青果物に痛みが生じることを防ぐことができる。
好ましくは、前記第一領域及び前記第二領域は、袋内部に収容される青果物を挟んで対向するように設けられていてよい。例えば
図1に示されるように、第一領域101と第二領域102とは、内部のミニトマトを挟んで対向するように、袋の壁部を形成していてよい。このように2つの領域が設けられることも、カビ発生抑制のために貢献していると考えられる。
【0023】
図2に示されるように、袋100は、部分120において折り畳まれており、袋の開口部121(すなわち青果物を袋内部に導入するための開口部)は、同図に紙面奥側に存在している。前記第一領域と前記第二領域とが重なった状態で、当該袋の後ろ側に折りたたまれている。このように、袋100は、その一部において折り畳まれてよく、これにより、開口部からの内容物が出ることが防がれてよいが、後段で説明する
図3-1に示されるように、折り畳まれずに利用されてもよい。
なお、袋の後ろ側に折り畳まれる部分は、前記第一領域と前記第二領域とが重なった状態になくてもよい。例えば、前記第一領域だけが折り畳まれて、袋の蓋として機能させてもよい。この場合は、前記第一領域と前記第二領域とが重っておらず前記第一領域だけの部分が存在する。或いは、前記第二領域だけが折り畳まれて、袋の蓋として機能させてもよい。この場合においては、前記第一領域と前記第二領域とが重っておらず前記第二領域だけの部分が存在する。
また、前記袋は、部分120で袋100(特には面111及び面112)が後ろ側に折り畳まれた際に、折り畳まれた部分と第二領域102(面112)とが接着できるように構成されてよく、特には前記折り畳まれた部分と前記第二領域の上部とが接着できるように構成されてよい。当該接着により、折り畳まれた状態が維持される。例えば、第二領域102(面112)(特には第二領域の上部)に、接着領域が設けられていてよい。前記接着領域には、接着剤が積層されていてよい。当該接着剤として、当技術分野で既知の材料が利用されてよい。前記接着領域は、さらに、剥離材(例えば剥離可能テープ)によってカバーされていてよい。そして、当該剥離材を剥がすことによって、前記接着領域が露出するように構成されてよい。
【0024】
図1に示されるように、袋100は、複数のミニトマトTを包装している。本発明の青果物包装用袋によって包装される青果物は、ミニトマトに限られない。本発明の包装用袋は、例えば1種以上の野菜若しくは果物又はこれらの両方を包装するために用いられてよい。
【0025】
前記野菜として、例えば以下を挙げることができる:
果菜類、例えばトマト、ミニトマト、きゅうり、かぼちゃ、及びなすなど;
根菜類、例えばだいこん、にんじん、ごぼう、及び馬鈴薯など;
葉茎菜類、例えばはくさい、キャベツ、ねぎ、及びたまねぎなど;
香辛野菜類、例えばショウガ、シソ、ミョウガなど;及び、
キノコ類、例えばシイタケ、しめじ、マイタケ、及び松茸など。
前記果実として、例えば以下を挙げることができる:
柑橘類、例えばみかん、グレープフルーツ、及びレモンなど;
仁果類、例えばリンゴ、ナシ、及びカキなど;
核果類、例えばモモ及びうめなど;
しょう果類、例えばぶどう及びいちじくなど;
ベリー類、例えばイチゴ及びブルーベリー;及び、
熱帯果実類、例えばバナナ、キウイフルーツ、マンゴー、及びパイナップルなど。
前記包装用袋は、以上のいずれか1種又は2種以上の野菜及び/又は果実を包装するために用いられてよい。このように、本発明の袋は、その内部に収容される青果物にカビが発生することを防ぐために用いられてよい。
本発明の包装用袋は、カビ発生抑制が特に重要である果菜類の包装のために適しており、特にはトマト又はミニトマトの包装のために適している。
また、本発明の包装用袋は、カビ発生抑制のために有用であり、特にはヘタ部分に生じるカビの発生抑制のために特に有用である。すなわち、本発明の包装用袋は、ヘタを有した状態で販売される野菜及び/又は果実の包装のために適している。
また、本発明の包装用袋は、傷みの防止のために用いられてもよい。すなわち、本発明の包装用袋は、青果物に傷みが生じるのを防ぐためにも適しており、特には傷み発生抑制が特に重要である果菜類の包装のために適しており、特にはトマト又はミニトマトの包装のために適している。前記傷みは、例えば外部から視認できる青果物表面の傷みであってよく、特には可食部における傷みであってよい。例えばトマト及びミニトマトなどの果菜類などの青果物に関しては、当該傷みは、果皮に生じる傷みであってよく、ヘタ部分における異常(例えば乾燥及び黄化など)は包含されなくてよい。当該傷みは、例えば青果物表面の異常又は凹みなどであってよく、正常な表面と区別して視認できる傷みであってよい。当該痛みのより具体的な例として、例えば、青果物表面(特には可食部表面)のしわしわな状態若しくはひび割れ、又は、青果物表面(特には可食部表面)から内部の汁が出る、などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0026】
1.2 第一領域
前記第一領域の樹脂フィルムは、ポリ乳酸系樹脂フィルムである。前記フィルムを形成する前記ポリ乳酸系樹脂は、乳酸をモノマーとして製造された樹脂であってよく、特には樹脂中の乳酸由来成分の含有割合が、当該樹脂質量に対して例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらにより好ましくは95質量%以上である樹脂であってよい。当該含有割合は100質量%であってもよい。当該モノマーは、例えばL-乳酸又はD-乳酸であり、これらの両方が当該モノマーとして用いられてもよい。
【0027】
前記フィルムを形成するポリ乳酸系樹脂の密度は、例えば1.0g/cm3以上であってよく、好ましくは1.1g/cm3以上、より好ましくは1.2g/cm3以上であってよい。
前記密度は、例えば1.5g/cm3以下、好ましくは1.4g/cm3以下、より好ましくは1.3g/cm3以下であってよい。
前記密度は、水中置換法により測定される。当該水中置換法は、JIS K 7112A法に従うものである。
このような密度を有するポリ乳酸系樹脂が、前記袋内の青果物におけるカビ発生抑制効果を高めるために貢献していると考えられる。
【0028】
前記フィルムを形成するポリ乳酸系樹脂の融点は、例えば150℃以上、好ましくは155℃以上、より好ましくは160℃以上であってよい。
前記融点は、例えば180℃以下、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下であってよく、さらには168℃以下であってもよい。
前記融点は、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry、DSC)によって測定される。
【0029】
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、MD方向における引張強度TMDが、例えば80MPa以上であり、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは120MPa以上であってよい。
前記引張強度TMDは、例えば200MPa以下、好ましくは180MPa以下、より好ましくは160MPa以下であってよい。
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、TD方向における引張強度TTDが、例えば80MPa以上であり、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは120MPa以上であってよい。
前記引張強度TTDは、例えば200MPa以下、好ましくは180MPa以下、より好ましくは160MPa以下であってよい。
これら引張強度は、ASTM D882に従い測定されてよい。
【0030】
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、当該フィルムの前記MD方向における引張強度TMDとTD方向における引張強度TTDとの比(TMD/TTD)が、例えば0.5~1.5であってよく、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.9~1.1であってよい。
【0031】
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムの厚みは、例えば10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であってよい。
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムの厚みは、例えば100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下であってよく、さらにより好ましくは50μm以下であってもよい。
ポリ乳酸系樹脂フィルムがこのような厚みを有することも、前記袋内の青果物におけるカビ発生抑制効果を高めるために貢献していると考えられる。
【0032】
前記ポリ乳酸系樹脂は、当技術分野で既知の製造方法を用いて得られてよく、例えば、乳酸を直接重合することにより得られてよく、又は、ラクチドの開環重合により得られてもよい。
【0033】
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、その一方の面又は両方の面が、ヒートシール層を有していてもよい。
前記袋は、ヒートシール層を有する面が、後述の紙シート層と接するように構成されていてよい。
前記ヒートシール層は、当該層に熱を付与した状態で他の層(例えば紙シート層)と接触させることで、当該他の層と貼り合わせることができる層を意味する。
【0034】
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムのヘイズは、例えば5%以下であってよく、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、さらにより好ましくは2%以下であってよく、さらには1.5%以下であってもよい。
前記ヘイズの下限値は特に限定されなくてよいが、例えば0.1%以上、0.2%以上、又は0.5%以上であってよい。
前記ヘイズは、ASTM D1003に従い測定される。
前記このような数値範囲内にあることによって、袋に収容される内容物を確認しやすくなる。すなわち、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、透明フィルムであってよい。
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムがこのように透明である場合において、前記第二の面が紙シートにより形成されていることで、内容物をより視認しやすくなる。第一の面に加えて第二の面も透明なフィルムである場合には、第一の面及び第二の面の両方を光が透過するので、当該袋の奥に存在する物の種類によっては、ユーザが内容物を視認しにくい場合がある。
【0035】
好ましい実施態様において、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、孔を有さないフィルムであってよく、すなわち有孔加工されていないフィルムであってよい。カビ発生を防ぐために、袋を形成する樹脂フィルムは有孔加工されることがあるが、当該有孔加工は、内部に収容される青果物の視認性に影響を与える場合がある。また、有孔加工が行われた領域には、印刷処理は行われないことが多い。これは、例えば印刷処理の後に有孔加工を行うことが考えられるところ、この場合において、印刷により施与されたインクが当該有孔加工によって焦げてしまい、生じた焦げカスが袋内部に入り込む恐れがあるためである。すなわち、有孔加工が行われる領域に印刷処理を行うことは望ましくない。また、当該有孔加工は、液もれを引き起こす可能性もある。本発明の青果物包装用袋の前記第一領域は、有孔加工されていないフィルムにより形成されてよく、これにより、内容物の視認性を向上させつつ、且つ、カビ発生を抑制することができる。
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、特に好ましくは、前記第一面の全面にわたって孔を有さないものであってよい。
本明細書内において、孔は、当技術分野において有孔加工のために一般的に用いられる微細な略円形の孔に加え、他の形状の孔も包含する。当該他の形状の孔は、例えば多角形の孔(四角形又は三角形などの孔)及び線状の孔(ミシン目のための孔)を包含する。このような他の形状の孔も、前記略円形の孔と同様にカビ発生抑制の観点から採用されうるが、前記略円形の孔と同様に視認性に影響を及ぼし、印刷処理に伴う問題もあり、また、液もれの問題も生じうる。前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、このような孔を有さないものであってよい。
【0036】
いくつかの実施態様においては、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムは、有孔加工されていてもよく、例えば、前記第一領域のうちの一部に有孔加工されていてもよい。当該有孔加工は、好ましくは、前記第一領域のうちの、内容物の視認性に影響を及ぼさない且つ/又は液漏れの問題を引き起こさない領域に、施されてよい。例えば、前記第一領域のうちの上側の一部分又は前記第一領域のうちの側方の一部分又は前記第一領域のうちの下側の一部分などに、前記有孔加工は施されていてもよい。すなわち、前記第一領域のうち、中央部分の周辺部分に、前記有孔加工は施されていてもよい。
【0037】
本発明において用いられるポリ乳酸系樹脂フィルムとして、市販入手可能なポリ乳酸系樹脂フィルムが用いられてよく、又は、当技術分野で既知の製法を用いて製造されたポリ乳酸系樹脂フィルムが用いられてもよい。
【0038】
1.3 第二領域
第二領域102は、紙シートから形成されてよい。紙シートは、紙材料を主成分として有するシート状構造物であり、例えば、樹脂層と紙層とを有する積層体であってもよく、又は、紙層のみを有するものであってもよい。
【0039】
(樹脂層と紙層とを有する積層体)
前記紙シートは、好ましくは樹脂層と紙層とを有する積層体である。前記樹脂層は、コーティング層又はラミネート層であってよい。前記樹脂層の樹脂は、好ましくはポリ乳酸系樹脂である。ポリ乳酸系樹脂層と紙層との積層体である紙シートは、上記で述べたポリ乳酸系樹脂フィルムとの組合せにおいて、特に優れたカビ抑制作用を発揮する。
【0040】
前記紙シートの坪量は、例えば100g/m2以下であり、好ましくは90g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下であってよい。
前記坪量は、例えば30g/m2以上、好ましくは40g/m2以上、より好ましくは50g/m2以上であってよい。
前記坪量は、JIS P 8124に従い測定される。
このような坪量を有する紙シート(特には上記で述べた積層体である紙シート)は、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムとの組合せにおいて、カビ抑制作用を発揮すると考えられる。
【0041】
(紙層)
前記紙シートは、紙層のみによって構成されてもよい。当該紙層の坪量は、好ましくは20g/m2以上であり、より好ましくは30g/m2以上であり、さらにより好ましくは40g/m2以上であってよい。
前記紙層の坪量は、好ましくは100g/m2以下であり、より好ましくは90g/m2以下であり、さらにより好ましくは80g/m2以下であってよい。
このような坪量を有する紙層は、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムとの組合せにおいて、カビ抑制作用を発揮すると考えられる。
【0042】
前記紙層は、例えば包装用袋分野において利用される紙であってよい。そのような紙として、例えばクラフト紙を挙げることができるがこれに限定されない。当該クラフト紙のより具体的な例として、晒クラフト紙、半晒クラフト紙、未晒クラフト紙、及び片艶晒クラフト紙を挙げることができ、これらのいずれかであってよい。前記紙は、機能性を有してよく、例えば、前記紙は、耐油性若しくは耐水性を有してよく、いわゆる耐油紙又は耐水紙であってもよい。前記紙は、耐油性及び耐水性の両方を有してもよく、いわゆる耐水耐油紙であってもよい。
【0043】
前記耐油紙とは、耐油性を有する紙を意味し、例えば耐油剤を有する紙であってよい。前記耐油紙は、例えば耐油剤を紙構成成分として含有することによって耐油性が付与された紙であってよく、又は、耐油剤層をコーティングされた紙であってもよい。すなわち、前記耐油紙は、例えば内添法耐油紙又は外添法耐油紙であってよい。前記内添法耐油紙は、耐油紙の製造において繊維を膠着させる際に、耐油剤を添加させることによって紙に耐油性を持たせるものである。外添法耐油紙とは、製造された紙の表面の例えば一方に耐油剤を被覆させることによって紙に耐油性を持たせるものである。
前記耐水紙とは、耐水性を有する紙を意味し、特には耐水剤を有する紙であってよい。前記耐水紙は、例えば耐水剤を紙構成成分として含有することによって耐水性が付与された紙であってよく、又は、耐水剤層をコーティングされた紙であってもよい。
【0044】
前記紙層の透気抵抗度は、好ましくは3sec以上であり、より好ましくは5sec以上であり、さらにより好ましくは10sec以上であってよい。
前記紙層の透気抵抗度は、好ましくは300sec以下であり、より好ましくは100sec以下であり、さらにより好ましくは60sec以下であってよい。
前記透気抵抗度は、通気性の指標であり、JIS P 8117:2009(紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度度試験方法(中間領域)-ガーレー法)3.1ISO透気度)に従い測定される。
このような透気抵抗度を有する紙層は、カビ抑制の観点から好ましい。
【0045】
本発明において用いられる紙シートして、市販入手可能な紙シートが用いられてよく、又は、当技術分野で既知の製法を用いて製造された紙シートが用いられてもよい。
【0046】
1.4 底部
底部103は、上記で述べたポリ乳酸系樹脂フィルムから形成されてよく、又は、上記で述べた紙シートから形成されてもよい。また、これら以外の材料から形成されてもよい。
製造効率の観点から、好ましくは、前記第一領域又は前記第二領域と連続的に形成されてよく、すなわち、前記第一領域を形成する材料又は前記第二領域を形成する材料によって、前記底部が形成されてよい。
【0047】
一実施態様において、前記底部は、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成されてよい。これにより、前記第一領域及び前記底部を、一つながりのフィルムで作成することができ、且つ、底部を通じて水などの液体が落ちることを防ぐことができる。
【0048】
他の実施態様において、前記底部は、紙シートから形成されてよい。これにより、前記第二領域及び前記底部を、一つながりの材料で作成することができる。
さらにこの実施態様において、好ましくは、前記紙シートは、樹脂層と紙層との積層体であってよい。この場合、当該樹脂層を有することによって、紙層への液体の染み出しを防ぐことができ、さらに、底部を通じて水などの液体が落ちることを防ぐことができる。
【0049】
1.5 接着部
【0050】
接着部104において、前記第一領域は前記第二領域と接着されている。当該接着は、例えばヒートシールによる接着であってよい。前記第一領域のポリ乳酸系樹脂フィルムが、接着剤として機能しうる。いくつかの実施態様において、ポリ乳酸系樹脂フィルムが、その表面にヒートシール層を有するものであってよく、当該ヒートシール層が、前記ヒートシールによる接着のための接着剤として機能しうる。また、当該接着は、接着剤による接着であってもよく、この場合において、ヒートシールのための加熱処理は実行されなくてもよい。また、当該接着は、前記接着部に接着剤が施与された状態でのヒートシールによる接着であってもよい。
【0051】
例えば前記第一領域の材料であるポリ乳酸系樹脂フィルムと前記第二領域の材料である樹脂層と紙層との積層体とが用いられる場合において、前記ポリ乳酸系樹脂フィルムと前記樹脂層とが接触するように、前記接着は行われてよい。当該接着部において、紙層が外側に存在し、樹脂層がポリ乳酸系樹脂フィルムと接着するように内側に存在してよい。
【0052】
前記接着剤は、例えばEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)系の接着剤であってよく、より特にはEVA系のヒートシール材であってよい。接着剤の種類は、当業者により適宜選択されてよい。
【0053】
1.6 変形例
【0054】
(1)1つの面が2以上の領域を有する例
上記
図1に示される袋は、1つの面が1つの材料によって形成されているという構成を有する。本発明の包装用袋は、この構成に限定されない。例えば、本発明の包装用袋は、その袋の1つの面が、複数の材料によって形成されていてもよい。例えば、当該袋の1つの面が、ポリ乳酸系樹脂フィルム及び紙シートによって形成されてもよい。このような構成の例を、以下で
図3-1を参照しながら説明する。
【0055】
図3-1に示される本発明の包装用袋200は、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成される第一領域201、及び、紙シートから形成される第二領域202を有する。当該包装用袋は、さらに底部203及び接着部204を有する。当該包装用袋は、さらに、第一領域201に隣接する第三領域205及び第四領域206を有し、第一領域201、第三領域205、及び第四領域206の3つの領域が袋の一面211を形成している。また、当該包装用袋は、内部に青果物が収容されてよい。
【0056】
第一領域201の材料は、
図1及び2に示される包装用袋100の第一領域101の材料と同じであってよく、その説明が本変形例についても当てはまる。第二領域202の材料は、
図1及び2に示される包装用袋100の第二領域102の材料と同じであってよく、その説明が本変形例についても当てはまる。
【0057】
第一領域201は、上記のとおり、第三領域205及び第四領域206と一緒になって、前記袋の1つの面211を形成している。すなわち、第一領域201、第三領域205、及び第四領域206の三要素により、当該袋を(例えばテーブルや台などの載置面に)置いた場合に、1つの壁状部分を形成する面(第一壁部)が形成されている。
第一領域201は、ポリ乳酸系樹脂フィルムにより形成されており、透明である。
そのため、第一領域201を介して、当該包装用袋の内部に収容されている青果物を視認することができる。
一方で、第三領域205及び第四領域206は透明でなく、これら領域を通じて当該包装用袋の内部を見ることはできない。第三領域205は、第二領域202を形成する紙シートと同じ材料で形成されてよく、又は、他の材料(例えば他種の紙シート)で形成されてもよい。第四領域206も、第二領域202を形成する紙シートと同じ材料で形成されてよく、又は、他の材料(例えば他種の紙シート)で形成されてもよい。
このように、本発明に従う袋の1つの面が、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成される第一領域に加え、他の材料(特には透明でない材料)から形成される他の1以上の領域を有してもよい。
【0058】
第二領域202は、前記袋の他の1つの面212を形成するように設けられている。第二領域202は、当該袋を載置面に置いた場合に、他の1つの壁状部分を形成する面(第二壁部)を形成している。
同図に示される当該他の1つの面は、第二領域202のみを有し、すなわち、第二領域を形成する紙シートのみから形成されているが、当該他の1つの面は、さらに他の材料から形成される領域を有してもよい。
【0059】
第四領域206は、底部203とつながっている。また、底部203と第二領域202もつながっている。これらつながっている3つの領域は、同じ材料で形成されてよく、特には前記第二領域を形成する紙シートにより形成されてよい。これにより、これら3つの領域を1つの紙シートにより形成することができ、製造効率が良い。
【0060】
第三領域205には、穴207が設けられている。穴207は、当該包装用袋を持つための取っ手部として利用できるサイズを有する。また、同様のサイズを有する穴が、第二領域202にも設けられている。これら2つの穴は、一緒になって、取っ手部として機能する。
なお、
図1及び2に示される袋100においても、このような取っ手部として機能する穴が、第一領域101及び第二領102に設けられてもよい。
【0061】
(2)チャック部を有する例
本発明に従う袋は、袋の開口部(内容物を内部に導入するための口)を封することができるように構成されたチャック部を有してもよい。当該チャック部を有する袋の例を、
図3-2を参照して説明する。
【0062】
図3-2に示される本発明の包装用袋300は、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成される第一領域301、及び、紙シートから形成される第二領域302を有する。第一領域301が、当該袋の一つの面311を形成し、且つ、第二領域302が、当該袋の他の一つの面312を形成している。当該包装用袋は、さらに底部303及び接着部304を有する。当該包装用袋の内部には、他の例と同様に青果物が収容されてよい。
【0063】
包装用袋300は、さらに、第一領域301と第二領域302とを互いにくっつけた状態で封するためのチャック部305を有している。すなわち、包装用袋300は、いわゆるチャック付き袋として構成されている。これにより、包装用袋300の開口部が閉じた状態を形成しやすくなる。
【0064】
なお、第一領域301の材料は、
図1及び2に示される包装用袋100の第一領域101の材料と同じであってよく、その説明が本変形例についても当てはまる。第二領域302の材料は、
図1及び2に示される包装用袋100の第二領域102の材料と同じであってよく、その説明が本変形例についても当てはまる。
【0065】
(3)開封のための切込が設けられている例
上記
図3-1に示される袋は、内容物が収容された状態で消費者へ販売される際に、同図に示されるように袋の上部が開口していてよい。
本発明の袋は、袋の上部が封されていてもよい。封される袋の例を、以下で
図3-3を参照しながら説明する。
【0066】
図3-3に示される本発明の包装用袋400は、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成される第一領域401、及び、紙シートから形成される第二領域402を有する。当該包装用袋は、さらに底部403及び接着部404を有する。当該包装用袋は、さらに、第一領域401に隣接する第三領域405及び第四領域406を有し、第一領域401、第三領域405、及び第四領域406の3つの領域が袋の一面411を形成している。
【0067】
第一領域401の材料は、
図1及び2に示される包装用袋100の第一領域101の材料と同じであってよく、その説明が本変形例についても当てはまる。第二領域402の材料は、
図1及び2に示される包装用袋100の第二領域102の材料と同じであってよく、その説明が本変形例についても当てはまる。
【0068】
第一領域401は、上記のとおり、第三領域405及び第四領域406と一緒になって、前記袋の1つの面411を形成している。すなわち、第一領域401、第三領域405、及び第四領域406の三要素により、当該袋を(例えばテーブルや台などの載置面に)置いた場合に、1つの壁状部分を形成する面411(第一壁部)が形成されている。
第一領域401は、ポリ乳酸系樹脂フィルムにより形成されており、透明である。
そのため、第一領域401を介して、当該包装用袋の内部に収容されている青果物を視認することができる。
一方で、第三領域405及び第四領域406は透明でなく、これら領域を通じて当該包装用袋の内部を見ることはできない。第三領域405は、第二領域402を形成する紙シートと同じ材料で形成されてよく、又は、他の材料(例えば他種の紙シート)で形成されてもよい。第四領域406も、第二領域402を形成する紙シートと同じ材料で形成されてよく、又は、他の材料(例えば他種の紙シート)で形成されてもよい。
このように、本発明に従う袋の1つの面が、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成される第一領域に加え、他の材料(特には透明でない材料)から形成される他の1以上の領域を有してもよい。
【0069】
第二領域402は、前記袋の他の1つの面412を形成するように設けられている。第二領域402は、当該袋を載置面に置いた場合に、他の1つの壁状部分を形成する面(第二壁部)を形成している。
同図に示される当該他の1つの面は、第二領域402のみを有し、すなわち、第二領域を形成する紙シートのみから形成されているが、当該他の1つの面は、さらに他の材料から形成される領域を有してもよい。
【0070】
底部403は、同図においては、ポリ乳酸系樹脂フィルムから形成されており、当該底部を通じて内部を視認可能と構成されているが、紙シートなどの他の材料で形成されてもよい。
【0071】
袋400は、さらに、袋の開口部(内容物を内部に導入するための口)を封することができるように構成されたチャック部407を有する。チャック部407は、切込408を利用してユーザが当該袋を開封したことによって生じる袋を封するために用いられてよい。
なお、この例においては、袋はその上端部分409において封した状態で販売され、消費者が切込408を利用して当該袋を開封する。そして、当該開封後に、当該チャック部407を利用して、再度封することができる。
【0072】
1.7 製造方法
【0073】
本発明に従う包装用袋は、当技術分野で既知の製造方法によって製造することができる。前記袋は、例えばポリ乳酸系樹脂フィルムと紙シートとを重ねた状態で所定の領域をヒートシールすることによって形成されてよい。前記ポリ乳酸系樹脂フィルムと前記紙シートは、所望の形状の袋が形成されるように予め裁断されていてよく、又は、ヒートシール後に裁断されてもよい。また、当該ヒートシールされる領域は、当業者により適宜選択されてよい。
【0074】
2.実施例
【0075】
以下で、本発明に従う袋の実施例について説明するが、本発明の袋は、実施例に記載されたものに限定されない。
【0076】
2.1 実験1(鮮度保持効果に関する評価)
【0077】
(1)実験目的
本実験は、種々の材料の組合せから形成された袋を用意し、各袋の鮮度保持効果(特にはカビ発生抑制作用)を評価するために行われた。
【0078】
(2)実験概要
上記目的の為に、以下表1に示される7種類の袋を用意し、ミニトマトを用いて各袋の特性を比較した。
【0079】
(3)使用された袋
図1に示される形状を有する7種の袋を用意した。当該7種の袋は、同図に示されるように、載置した場合に壁状部分となる第一面及び第二面を有し、さらに、底部を有する。底部の材料は、第一面の材料と同じである。当該7種の袋は、これら2つの面を形成する材料が、以下表1に示されるように異なること以外は、同じである。
【0080】
【0081】
同表に示されるフィルム及び紙の詳細は以下のとおりである。
OPPフィルム:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(防曇処理されたポリオレフィン系樹脂フィルム、厚み40μm)
PPラミネート紙:ポリオレフィン系樹脂フィルム層と紙層との積層体(ポリオレフィン系樹脂フィルムがラミネートされた紙である。当該紙:片艶晒クラフト紙、坪量50g/m2;当該ポリオレフィン系樹脂フィルム 、厚み15μm)
PLAフィルム:二軸延伸ポリ乳酸系樹脂フィルム(ポリ乳酸樹脂含有割合100質量%、厚み40μm)
PLAコート紙:PLA樹脂層と紙層との積層体(PLA樹脂によりコーティングされた晒クラフト紙、坪量67g/m2)
紙:耐油紙(耐油剤を含有する晒クラフト紙、坪量50g/m2)
有孔OPPフィルム:孔を有さない前記OPPフィルムに、剣山(京都花明かり 202小角(ゴム付き))を用いて孔を形成したフィルム。当該フィルムは、40mm×60mmの領域当たり200の孔を有する。すなわち、当該剣山は、40mm×60mmの領域当たり200の針を有する。
有孔PLAフィルム:孔を有さない前記PLAフィルムに、剣山(京都花明かり 202小角(ゴム付き))を用いて、有孔OPPフィルムと同様に孔を形成したフィルム。
【0082】
(4)実験内容
図4-1~
図4-3に示されるように、各袋に複数のミニトマトを収容し、7日間の放置後に、各袋内のミニトマトの状態を評価した。
図4-1~
図4-3には、1日後及び7日後における各試験例の写真である。また、具体的な実験条件、実験操作、及び評価基準は以下のとおりである。評価結果は、上記表1に示されている。
【0083】
<実験条件>
測定期間:7日間
測定温度:約25℃
測定湿度:約75%
各袋に収容されたミニトマト重量:150g程度
ミニトマト:サカタ種苗のキャロルスター、袋に収容される2日前に収穫された新鮮なもの
【0084】
<実験操作>
(1)各袋の重量を測り、その重量を予め除いておく。
(2)各袋に150g程度の重量のミニトマトを入れ、袋に封をする。
(3)袋に入れた状態について、外観を撮影及び確認する。
(4)(3)の確認後、各袋を段ボール中に入れ、ガムテープで段ボールに封をする。
(5)(4)の封をした日を0日とし、1日目~7日目の毎日、外観の撮影及び確認を行い、ミニトマトのカビの発生の有無及びミニトマトにおける傷みの有無を確認し、評価した。
【0085】
<カビ発生の有無に関する評価基準>
AA:いずれのミニトマトにもカビが発生していない
A:1つ以上のミニトマトにカビが発生している
【0086】
<傷みの有無に関する評価基準>
AAA:いずれのミニトマトにも傷みがない
AA:1つのミニトマトに傷みがある
A:2つ以上のミニトマトに傷みがある
【0087】
表1中のカビに関する評価結果に示されるとおり、試験例1(OPPフィルムとPPラミネート紙の組合せ)及び試験例2(OPPフィルムとOPPフィルムの組合せ)に関して、7日目にカビが確認され、その評価結果はEであった。
また、PLAフィルムは、OPPフィルムよりも通気性に優れているので、試験例3(PLAフィルムとPLAフィルムの組合せ)は、カビ発生を防ぐためには有用であると予想されていた。しかしながら、試験例3についても、7日目にカビが確認され、その評価結果はEであった。
一方で、試験例4(PLAフィルムとPLAコート紙の組合せ)及び試験例5(PLAフィルムと紙の組合せ)については、7日目においてカビの発生が観察されず、その評価結果はAであった。
これらの結果より、PLAフィルムと紙シート(紙層と樹脂層との積層体又は紙自体)との組合せは、カビ発生を防ぐために非常に有用であることが分かる。
また、PLAフィルムだけではカビ発生を防ぐことはできないことから、PLAフィルムを紙シートと組み合わせることが、カビ発生を防ぐために重要であることも分かる。
これらの結果より、本発明の包装用袋は、青果物を包装するために適していること、特には青果物におけるカビ発生を抑制するために適していることが分かる。例えば、本発明の袋は、青果物を収容した後、例えば1日間以上、好ましくは2日間以上、さらには3日間以上、4日間以上、又は5日間以上にわたって、当該青果物におけるカビ発生を抑制するために用いられてよい。すなわち、例えば1日間以上、好ましくは2日間以上、さらには3日間以上、4日間以上、又は5日間以上にわたって、前記袋に当該青果物は収容されていてよい。前記袋に、当該青果物が収容される時間の上限は特に設定されなくてよいが、例えば30日間以内又は20日間以内程度であってよい。
【0088】
また、表1中の傷みに関する評価結果に示されるとおり、試験例4(PLAフィルムとPLAコート紙の組合せ)については7日目において傷みは観察されなかった一方で、試験例5(PLAフィルムと紙の組合せ)については7日目に傷みが観察された。
これらの結果より、PLAフィルムとPLAコート紙(紙層とPLA樹脂層との積層体)との組合せは、PLAフィルムと紙との組合せと比べて、痛み発生を防ぐためにより適していることも分かる。
【0089】
なお、試験例4(PLAフィルムとPLAコート紙の組合せ)と試験例5(PLAフィルムと紙の組合せ)とを比較すると、7日目において、試験例5のほうが、各ミニトマトのヘタ部分の乾燥及び黄化が、試験例4よりも進行していることが観察された。
これらの結果より、PLAフィルムとPLAコート紙(紙層とPLA樹脂層との積層体)との組合せが、PLAフィルムと紙との組合せと比べて、ヘタ部分の乾燥及び黄化を防ぐために有用であると考えられる。
ミニトマトのヘタ部分などの青果物の緑色部分は、しばしばユーザが商品を選択する際に、新鮮であるかどうかを判断するための尺度として利用されることがある。そのため、このヘタ部分が乾燥していないこと及び黄化が進んでいないことにより、青果物が新鮮であることが示される。
【0090】
また、試験例6(有孔OPPフィルムのみの袋)と試験例7(有孔PLAフィルムのみの袋)はいずれも、カビ発生抑制及び傷み抑制の評価結果がAであり優れていた。
試験例4及び5の袋は、これら有孔フィルムを用いた袋と同程度に、カビ発生を抑制し且つ傷みを抑制した。すなわち、PLAフィルムと紙シートとの組み合わせにより、有孔フィルムの袋と同程度に優れた袋が得られる。
有孔フィルムは、カビ発生抑制及び傷み抑制の点で優れているものの、内容物の視認性が低下する、フィルム表面への印刷処理の適用は望ましくない、及び、内部の液体や汁(特には内容物に由来する汁、例えば果汁など)が孔を通じて外に出る、という問題を有する。本発明の袋は、これらの問題を解消しつつ、カビ発生抑制及び傷み抑制という効果を発揮することができる。
【0091】
2.2 実験2(接着強度に関する評価)
【0092】
上記で述べたように、本発明に従う袋は、ポリ乳酸系樹脂フィルムと紙シートとが接着された接着部を有するように構成されてよい。当該接着部の接着手法について以下のとおりに検討した。
【0093】
(測定例1)
上記実験1の試験例5において用いられたPLAフィルム及び耐油紙を用意した。これらを、卓上シーラー機で熱接着し、そして、当該接着により得られた積層体の接着強度を測定した。当該接着強度として、15mm幅の接着部分を180°開いて引っ張ったときにシールが剥がれる又はフィルムが切れる時の力が測定された。当該測定は、卓上型引張圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ、フォーステスターシリーズMCT-1150)を用いて行われた。当該測定において、単位N/15mmが測定され、すなわち、15mm幅のシール部分を180°開いて引っ張ったときにシールが剥がれる又はフィルムが切れる時の力が測定された。測定された接着強度は、2.47Nであった。当該接着強度は、ミニトマトなどの青果物を収容した状態で持ち運ぶ際において接着が解消されないようにするために許容される強度である。
すなわち、本発明において、前記第一領域(ポリ乳酸系樹脂フィルム)及び前記第二領域(紙シート、特には耐油紙)は接着されており、当該接着の接着強度は、例えば2N以上であり、特には2.2N以上、より特には2.4N以上であってよい。
【0094】
(測定例2)
次に、前記耐油紙にEVA系ヒートシール材を塗布し、当該塗布面を介して前記接着を行ったこと以外は、前記測定例1と同様にして、接着強度を測定した。測定された接着強度は、3.38Nであった。
【0095】
測定例1及び2の結果より、ヒートシール材を用いることによって、ポリ乳酸系樹脂フィルムと紙シート(特には耐油紙)との間の接着強度を高めることができることが分かる。
すなわち、本発明において、前記第一領域(ポリ乳酸系樹脂フィルム)及び前記第二領域(紙シート、特には耐油紙)は接着されており、当該接着の接着強度は、例えば2.5N以上であり、特には2.8N以上、より特には3.0N以上であってよい。
また、前記EVA系ヒートシール材はポリプロピレン用の接着剤であるが、そのようなヒートシール材が紙シートとポリ乳酸系樹脂フィルムとの接着のために有用であることも分かる。
【0096】
上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値はあくまでも例に過ぎず、これと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値が用いられてもよい。
【0097】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0098】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階における数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階における数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。