(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164462
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電力変換システム、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241120BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079948
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 淳之
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA30
5H770GA11
5H770GA16
5H770HA03W
5H770HA03Z
5H770KA01W
5H770LA05W
(57)【要約】
【課題】低損失モードから共振抑制モードに切り替えるべき状況であるか否かの判定精度を高めることができる電力変換システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力変換システムにおいて、ダイオード60は、蓄電池10、高電位側経路LH1、低電位側経路LL1及び第1平滑コンデンサ22aを含む閉回路において、蓄電池10の正極側から蓄電池10の負極側へと向かう規定方向の電流流通を遮断するように設けられている。電力変換システムにおいて、短絡スイッチ61のソースは、ダイオード60のアノードに接続されており、短絡スイッチ61のドレインは、ダイオード60のカソードに接続されている。電力変換システムは、ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧を検出するダイオード電圧検出回路80と、ダイオード電圧検出回路80の検出値に基づいて、短絡スイッチ61をオン又はオフする第1制御装置40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源(10)の正極側に接続された電気経路である高電位側経路(LH1,LH2)と、
前記直流電源の負極側に接続された電気経路である低電位側経路(LL1,LL2)と、
前記高電位側経路に接続された高電位側端子(TH1,TH2)、及び前記低電位側経路に接続された低電位側端子(TL1,TL2)を有するインバータ(20,30)と、
前記高電位側経路及び前記低電位側経路を接続する平滑コンデンサ(22a,32a)と、
前記低電位側経路又は前記高電位側経路に設けられたダイオード(60,62)及び短絡スイッチ(61,63)と、
を備え、
前記ダイオードは、前記直流電源、前記高電位側経路、前記低電位側経路及び前記平滑コンデンサを含む閉回路において、前記直流電源の正極側から前記直流電源を介して前記直流電源の負極側へと向かう規定方向の電流流通を遮断するように設けられており、
前記短絡スイッチは、第1端子及び第2端子を有し、前記短絡スイッチがオンされている場合に前記第1端子及び前記第2端子の間の電流流通を許容し、前記短絡スイッチがオフされている場合に前記第2端子から前記第1端子への電流流通を遮断し、
前記短絡スイッチの前記第1端子は、前記ダイオードのアノードに接続されており、
前記短絡スイッチの前記第2端子は、前記ダイオードのカソードに接続されており、
前記ダイオードのアノード及びカソード間の電圧を検出する電圧検出回路(80)と、
前記電圧検出回路の検出値に基づいて、前記短絡スイッチをオン又はオフする制御装置(40)と、
を備える、電力変換システム。
【請求項2】
前記電圧検出回路は、前記ダイオードのアノード及びカソード間の電圧の実効値相当量、又は前記ダイオードのアノード及びカソード間の電圧の振幅相当量を検出するように構成されており、
前記制御装置は、
前記電圧検出回路の検出値が閾値(Vdth)を超えていると判定することを条件として、前記短絡スイッチをオフし、
前記電圧検出回路の検出値が前記閾値以下であると判定した場合に前記短絡スイッチをオンする、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記電圧検出回路は第1電圧検出回路であり、
前記閾値は第1閾値であり、
前記平滑コンデンサの端子電圧の実効値相当量又は前記平滑コンデンサの端子電圧の振幅相当量を検出するように構成された第2電圧検出回路(70)を備え、
前記制御装置は、
前記第1電圧検出回路の検出値が前記第1閾値を超えているとともに、前記第2電圧検出回路の検出値が第2閾値(Vcth)を超えていると判定した場合、前記短絡スイッチをオフし、
前記第1電圧検出回路の検出値が前記第1閾値以下であると判定した場合、又は前記第2電圧検出回路の検出値が前記第1閾値以下であると判定した場合、前記短絡スイッチをオンする、請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記電圧検出回路の検出値に基づいて、前記短絡スイッチにショート故障が発生しているか否かを判定する、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記インバータに電気的に接続された回転電機(21)を備え、
前記制御装置は、前記回転電機の回生駆動制御中において、前記第2電圧検出回路の検出値が過電圧閾値(Vlimit)を超えたと判定した場合、前記短絡スイッチをオンする、請求項3に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記ダイオードは、前記低電位側経路に設けられており、
前記ダイオードのカソード側が前記直流電源の負極側に接続されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記ダイオードは、前記高電位側経路に設けられており、
前記ダイオードのアノード側が前記直流電源の正極側に接続されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記インバータは複数である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換システム。
【請求項9】
直流電源(10)の正極側に接続された電気経路である高電位側経路(LH1,LH2)と、
前記直流電源の負極側に接続された電気経路である低電位側経路(LL1,LL2)と、
前記高電位側経路に接続された高電位側端子(TH1,TH2)、及び前記低電位側経路に接続された低電位側端子(TL1,TL2)を有するインバータ(20,30)と、
前記高電位側経路及び前記低電位側経路を接続する平滑コンデンサ(22a,32a)と、
前記低電位側経路又は前記高電位側経路に設けられたダイオード(60,62)及び短絡スイッチ(61,63)と、
コンピュータ(41)と、
を備える電力変換システムに適用されるプログラムにおいて、
前記ダイオードは、前記直流電源、前記高電位側経路、前記低電位側経路及び前記平滑コンデンサを含む閉回路において、前記直流電源の正極側から前記直流電源を介して前記直流電源の負極側へと向かう規定方向の電流流通を遮断するように設けられており、
前記短絡スイッチは、第1端子及び第2端子を有し、前記短絡スイッチがオンされている場合に前記第1端子及び前記第2端子の間の電流流通を許容し、前記短絡スイッチがオフされている場合に前記第2端子から前記第1端子への電流流通を遮断し、
前記短絡スイッチの前記第1端子は、前記ダイオードのアノードに接続されており、
前記短絡スイッチの前記第2端子は、前記ダイオードのカソードに接続されており、
前記電力変換システムは、前記ダイオードのアノード及びカソード間の電圧の実効値相当量、又は前記ダイオードのアノード及びカソード間の電圧の振幅相当量を検出するように構成された電圧検出回路(80)を備え、
前記コンピュータに、
前記電圧検出回路の検出値が閾値(Vdth)を超えていると判定することを条件として、前記短絡スイッチをオフする処理と、
前記電圧検出回路の検出値が前記閾値以下であると判定した場合に前記短絡スイッチをオンする処理と、を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとしては、直流電源の正極側に接続された電気経路である高電位側経路と、直流電源の負極側に接続された電気経路である低電位側経路と、インバータと、平滑コンデンサとを備えるものが知られている。平滑コンデンサは、高電位側経路及び低電位側経路を接続する。
【0003】
インバータのスイッチング制御によって平滑コンデンサが充放電されることに起因して、高電位側経路及び低電位側経路に高調波電流が流れる。高調波電流が流れると、高電位側経路及び低電位側経路の間に電圧変動が生じる。電圧変動の周波数が、平滑コンデンサを含むLCフィルタの共振周波数近傍となると、LCフィルタの共振によって平滑コンデンサに流れる電流が増大する。この場合、LCフィルタの構成部品の信頼性が低下し得る。
【0004】
そこで、上記電圧変動を抑制する技術が知られている。この技術としては、例えば特許文献1に記載の技術が挙げられる。電圧変動を抑制するために、電力変換システムは、ダイオードを備えている。ダイオードは、直流電源、高電位側経路、低電位側経路及び平滑コンデンサを含む閉回路において、直流電源の正極側から直流電源を介して直流電源の負極側へと向かう規定方向の電流流通を遮断するように設けられている。
【0005】
電圧変動を抑制しつつ、電力変換システムにおける損失を低減するために、電力変換システムは、短絡スイッチ、リップル電圧検出回路及び制御装置を備えている。短絡スイッチは、ダイオードのアノード及びカソード間を短絡するように設けられている。リップル電圧検出回路は、平滑コンデンサの両端に印加される高周波のリップル電圧を検出する。
【0006】
制御装置は、検出されたリップル電圧に基づいて、短絡スイッチをオン又はオフする。詳しくは、制御装置は、リップル電圧が閾値を超えていると判定した場合、電圧変動の周波数がLCフィルタの共振周波数近傍の周波数であると判定し、短絡スイッチをオフする共振抑制モードに移行する。この場合、ダイオードによって電圧変動が抑制され、平滑コンデンサに流れる電流が抑制される。一方、制御装置は、リップル電圧が閾値を下回っていると判定した場合、電圧変動の周波数が共振周波数近傍の周波数ではないと判定し、短絡スイッチをオンする低損失モードに移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102020215777号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LCフィルタの共振周波数から離れた周波数領域においても、共振抑制モードによって平滑化コンデンサの電流抑制効果が得られる。ここで、リップル電圧の周波数が共振周波数から離れるほど、リップル電圧が小さくなる傾向がある。このため、リップル電圧の周波数が共振周波数から離れている周波数領域において、低損失モード及び共振抑制モードのうち一方のモードから他方のモードに切り替えるべき状況であるか否かの判定精度が低下し得る。
【0009】
本開示は、低損失モード及び共振抑制モードのうち一方のモードから他方のモードに切り替えるべき状況であるか否かの判定精度を高めることができる電力変換システム及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、直流電源の正極側に接続された電気経路である高電位側経路と、
前記直流電源の負極側に接続された電気経路である低電位側経路と、
前記高電位側経路に接続された高電位側端子、及び前記低電位側経路に接続された低電位側端子を有するインバータと、
前記高電位側経路及び前記低電位側経路を接続する平滑コンデンサと、
前記低電位側経路又は前記高電位側経路に設けられたダイオード及び短絡スイッチと、
を備え、
前記ダイオードは、前記直流電源、前記高電位側経路、前記低電位側経路及び前記平滑コンデンサを含む閉回路において、前記直流電源の正極側から前記直流電源を介して前記直流電源の負極側へと向かう規定方向の電流流通を遮断するように設けられており、
前記短絡スイッチは、第1端子及び第2端子を有し、前記短絡スイッチがオンされている場合に前記第1端子及び前記第2端子の間の電流流通を許容し、前記短絡スイッチがオフされている場合に前記第2端子から前記第1端子への電流流通を遮断し、
前記短絡スイッチの前記第1端子は、前記ダイオードのアノードに接続されており、
前記短絡スイッチの前記第2端子は、前記ダイオードのカソードに接続されており、
前記ダイオードのアノード及びカソード間の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路の検出値に基づいて、前記短絡スイッチをオン又はオフする制御装置と、
を備える。
【0011】
ダイオードのアノード及びカソード間の電圧は、ダイオードが導通状態になって順方向電流が流れている場合よりも、ダイオードが非導通状態になって電流流通を遮断している場合の方が大きくなる。このため、ダイオードのアノード及びカソード間の電圧は、短絡スイッチをオンする低損失モード、及び短絡スイッチをオフする共振抑制モードのうち、一方のモードから他方のモードに切り替えるべき状況であるか否かを把握できるパラメータとなる。
【0012】
そこで、本開示において、電圧検出回路は、ダイオードのアノード及びカソード間の電圧を検出し、制御装置は、電圧検出回路の検出値に基づいて、短絡スイッチをオン又はオフする。これにより、リップル電圧の周波数が共振周波数から離れている場合であっても、短絡スイッチをオンする低損失モード、短絡スイッチをオフする共振抑制モードのうち、一方のモードから他方のモードに切り替えるべき状況であるか否かの判定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換システムの全体構成図。
【
図3】平滑コンデンサのリップル電圧、平滑コンデンサに流れる電流、及びダイオードの両端電圧の周波数特性を示す図。
【
図4】短絡スイッチの制御処理の手順を示すフローチャート。
【
図6】短絡スイッチの制御処理の手順を示すフローチャート。
【
図8】短絡スイッチの制御処理の手順を示すフローチャート。
【
図10】第5実施形態に係る短絡スイッチのショート故障判定処理の手順を示すフローチャート。
【
図11】第6実施形態に係る回生駆動制御時における短絡スイッチの制御処理の手順を示すフローチャート。
【
図12】その他の実施形態に係る電力変換システムの全体構成図。
【
図13】その他の実施形態に係る短絡スイッチの制御処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0015】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る電力変換システムを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のシステムは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されている。
【0016】
図1に示すように、システムは、蓄電池10、第1インバータ20及び第2インバータ30を備えている。蓄電池10は、充放電可能な2次電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0017】
第1インバータ20及び第2インバータ30は、3相インバータであり、3相分の上,下アームスイッチの直列接続体を備えている。上,下アームスイッチは、例えばNチャネルMOSFET又はIGBTである。スイッチがMOSFETである場合、スイッチの高電位側端子はドレインであり、低電位側端子はソースである。スイッチがIGBTである場合、高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。
【0018】
第1インバータ20は、第1高電位側端子TH1及び第1低電位側端子TL1を備えている。第1高電位側端子TH1には、各相の上アームスイッチの高電位側端子が接続されている。第1低電位側端子TL1には、各相の下アームスイッチの低電位側端子が接続されている。
【0019】
第2インバータ30は、第2高電位側端子TH2及び第2低電位側端子TL2を備えている。第2高電位側端子TH2には、各相の上アームスイッチの高電位側端子が接続されている。第2低電位側端子TL2には、各相の下アームスイッチの低電位側端子が接続されている。
【0020】
蓄電池10には、第1インバータ20及び第2インバータ30が並列接続されている。蓄電池10の正極端子には、電気経路である第1高電位側経路LH1の第1端が接続されている。第1高電位側経路LH1の第2端には、第1インバータ20の第1高電位側端子TH1が接続されている。蓄電池10の負極端子には、電気経路である第1低電位側経路LL1の第1端が接続されている。第1低電位側経路LL1の第2端には、第1インバータ20の第1低電位側端子TL1が接続されている。
【0021】
第1高電位側経路LH1の途中部分には、電気経路である第2高電位側経路LH2の第1端が接続されている。第2高電位側経路LH2の第2端には、第2インバータ30の第2高電位側端子TH2が接続されている。第1低電位側経路LL1の途中部分には、電気経路である第2低電位側経路LL2の第1端が接続されている。第2低電位側経路LL2の第2端には、第2インバータ30の第2低電位側端子TL2が接続されている。
【0022】
システムは、第1回転電機21及び第2回転電機31を備えている。第1回転電機21及び第2回転電機31は、3相の回転電機であり、例えば同期機である。第1回転電機21及び第2回転電機31は、3相分の電機子巻線を備えている。第1回転電機21の電機子巻線には、第1インバータ20が電気的に接続され、第2回転電機31の電機子巻線には、第2インバータ30が電気的に接続されている。第1回転電機21は、車載主機であり、車両の走行動力源となる。このため、第1回転電機21のロータは、車両の駆動輪11と動力伝達可能になっている。第2回転電機31は、車載補機を駆動する。車載補機は、例えば、車載空調装置を構成する電動コンプレッサ、又は車載空調装置を構成するブロワファンである。
【0023】
システムは、第1フィルタ22及び第2フィルタ32を備えている。第1フィルタ22及び第2フィルタ32は、LCフィルタである。第1フィルタ22は、第1高,低電位側経路LH1,LL1において、第2高,低電位側経路LH2,LL2との接続部分よりも第1インバータ20側に設けられている。第2フィルタ32は、第2高,低電位側経路LH2,LL2に設けられている。
【0024】
第1フィルタ22は、受動素子としての第1平滑コンデンサ22aと、第1インダクタ22bとを備えている。第1平滑コンデンサ22aは、例えばフィルムコンデンサである。第1平滑コンデンサ22aは、第1高電位側経路LH1と第1低電位側経路LL1とを接続している。第1インダクタ22bは、受動素子としてのインダクタであってもよいし、第1高電位側経路LH1の配線インダクタであってもよい。
【0025】
第2フィルタ32は、受動素子としての第2平滑コンデンサ32aと、第2インダクタ32bとを備えている。第2平滑コンデンサ32aは、例えばフィルムコンデンサである。第2平滑コンデンサ32aは、第2高電位側経路LH2と第2低電位側経路LL2とを接続している。第2インダクタ32bは、受動素子としてのインダクタであってもよいし、第2高電位側経路LH2の配線インダクタであってもよい。
【0026】
システムは、ダイオード60及び短絡スイッチ61を備えている。ダイオード60は、受動素子であり、第1低電位側経路LL1において、第2低電位側経路LL2との接続部分よりも蓄電池10側に設けられている。ダイオード60のカソードは、蓄電池10の負極側に接続されている。これにより、蓄電池10、第1高電位側経路LH1の一部分、第1平滑コンデンサ22a及び第1低電位側経路LL1の一部分を含む第1閉回路において、蓄電池10の正極側から蓄電池10の内部を介して負極側へと向かう規定方向の電流の流通を遮断するようにダイオード60が設けられている。
【0027】
短絡スイッチ61は、システムの制御モードを、後述する共振抑制モード又は低損失モードに切り替えるためのスイッチであり、ダイオード60に並列接続されている。本実施形態の短絡スイッチ61は、NチャネルMOSFETである。短絡スイッチ61は、第1端子であるソース、第2端子であるドレイン、及びゲートを備えている。短絡スイッチ61のソースは、ダイオード60のアノードに接続されている。短絡スイッチ61のドレインは、ダイオード60のカソードに接続されている。
【0028】
短絡スイッチ61がオンされている場合、ソース及びドレインの間の電流流通が許容され、制御モードが低損失モードになる。一方、短絡スイッチ61がオフされている場合、ドレインからソースへの電流流通が遮断され、制御モードが共振抑制モードになる。
【0029】
システムは、第1制御装置40及び第2制御装置50を備えている。第1制御装置40は、第1マイコン41を主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、第1インバータ20のスイッチング制御を行う。第2制御装置50は、第2マイコン51を主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、第2インバータ30のスイッチング制御を行う。第1制御装置40及び第2制御装置50は、相互通信が可能になっている。
【0030】
第1マイコン41及び第2マイコン51は、CPU(Central Processing Unit)を備えている。第1マイコン41及び第2マイコン51が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、第1マイコン41及び第2マイコン51がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、第1マイコン41及び第2マイコン51は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する
図4等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムを構成するインストラクションのセットが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0031】
第1制御装置40は、力行駆動制御を行う。力行駆動制御は、蓄電池10から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を第1回転電機21の電機子巻線に供給するための第1インバータ20のスイッチング制御である。力行駆動制御が行われる場合、第1回転電機21は電動機として機能する。これにより、第1回転電機21のロータから駆動輪11へと駆動トルクが付与され、車両が走行する。
【0032】
第1制御装置40は、回生駆動制御を行う。回生駆動制御は、第1回転電機21で発電された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を蓄電池10に供給するための第1インバータ20のスイッチング制御である。回生駆動制御が行われる場合、第1回転電機21は発電機として機能する。
【0033】
第2制御装置50は、蓄電池10から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を第2回転電機31の電機子巻線に供給するために、第2インバータ30のスイッチング制御を行う。これにより、車載補機が駆動される。
【0034】
ところで、第1インバータ20のスイッチング制御によって第1平滑コンデンサ22aが充放電されることに起因して、第1高電位側経路LH1及び第1低電位側経路LL1に高調波電流が流れる。高調波電流が流れることにより、各経路LH1,LL1間に電圧変動が生じる。なお、上記電圧変動の周波数は、例えば、第1インバータ20の各スイッチの1スイッチング周波数の2倍の周波数となる。
【0035】
各経路LH1,LL1間の電圧変動が生じる状況下、上記電圧変動の周波数が第1フィルタ22の共振周波数近傍になると、第1フィルタ22に流れる電流が増大する。この場合、第1平滑コンデンサ22aに流れる電流の実効値が第1平滑コンデンサ22aの定格電流を超えたり、第1インダクタ22bに流れる電流の実効値が第1インダクタ22bの定格電流を超えたりすることにより、第1平滑コンデンサ22a及び第1インダクタ22bの信頼性が低下し得る。第2インバータ30のスイッチング制御によっても同様に、第2高電位側経路LH2及び第2低電位側経路LL2に高調波電流が流れ、各経路LH2,LL2間に電圧変動が生じる。
【0036】
上記電圧変動に起因する問題は、共通の蓄電池10に複数のインバータ20,30が並列接続されている構成において顕著となる。
【0037】
この問題に対処すべく、ダイオード60が設けられている。これにより、上記第1閉回路に流れる高調波電流を低減させることができる。また、蓄電池10、第1高電位側経路LH1の一部、第2高電位側経路LH2の一部、第2平滑コンデンサ32a、第2低電位側経路LL2の一部及び第1低電位側経路LL1の一部を含む第2閉回路において、この閉回路に流れる高調波電流を低減できる。
【0038】
第1制御装置40は、制御モードを共振抑制モード又は低損失モードに切り替えるための構成として、コンデンサ電圧検出回路70(「第2電圧検出回路」に相当)と、ダイオード電圧検出回路80(「第1電圧検出回路」に相当)とを備えている。
【0039】
図2を用いて、コンデンサ電圧検出回路70及びダイオード電圧検出回路80について説明する。
【0040】
コンデンサ電圧検出回路70は、第1平滑コンデンサ22aの端子電圧の実効値相当量を検出する回路である。端子電圧には、リップル電圧が含まれ、リップル電圧は、第1平滑コンデンサ22aの端子電圧に含まれる交流成分である。コンデンサ電圧検出回路70は、第1分圧抵抗体71及び第2分圧抵抗体72を備えている。第1分圧抵抗体71の第1端には、第1平滑コンデンサ22aの高電位側端子が接続されている。第1分圧抵抗体71の第2端には、第2分圧抵抗体72の第1端が接続されている。第2分圧抵抗体72の第2端には、第1平滑コンデンサ22aの低電位側端子が接続されている。つまり、第1分圧抵抗体71及び第2分圧抵抗体72の直列接続体は、第1平滑コンデンサ22aに並列接続されている。
【0041】
コンデンサ電圧検出回路70は、第1コンデンサ73、整流ダイオード74、第2コンデンサ75及び抵抗体76を備えている。第1コンデンサ73の第1端には、第1分圧抵抗体71及び第2分圧抵抗体72の接続点が接続されている。第1コンデンサ73及び第2分圧抵抗体72により、各分圧抵抗体71,72で分圧された電圧の直流成分をカットするハイパスフィルタ回路が構成されている。
【0042】
第1コンデンサ73の第2端には、整流ダイオード74のアノードが接続され、整流ダイオード74のカソードには、第2コンデンサ75の第1端及び抵抗体76の第1端が接続されている。第2コンデンサ75の第2端及び抵抗体76の第2端には、第1平滑コンデンサ22aの低電位側端子が接続されている。整流ダイオード74により、直流成分がカットされた電圧が整流され、第2コンデンサ75により、整流された電圧が平滑化される。第2コンデンサ75の静電容量及び抵抗体76の抵抗値から定まる時定数の調整により、第2コンデンサ75の端子電圧は、第1平滑コンデンサ22aの端子電圧の実効値相当量となる。第2コンデンサ75の端子電圧は、第1マイコン41が備えるADコンバータ42に入力される。
【0043】
ダイオード電圧検出回路80は、ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧の実効値相当量を検出する回路である。本実施形態のダイオード電圧検出回路80は、コンデンサ電圧検出回路70と同様の構成であり、第1分圧抵抗体81、第2分圧抵抗体82、第1コンデンサ83、整流ダイオード84、第2コンデンサ85及び抵抗体86を備えている。第1分圧抵抗体81の第1端には、ダイオード60のカソードが接続されており、第1分圧抵抗体81の第2端には、第2分圧抵抗体82の第1端が接続されている。第2分圧抵抗体82の第2端には、ダイオード60のアノードが接続されている。つまり、第1分圧抵抗体81及び第2分圧抵抗体82の直列接続体は、ダイオード60に並列接続されている。
【0044】
第2コンデンサ85の静電容量及び抵抗体86の抵抗値から定まる時定数の調整により、第2コンデンサ85の端子電圧は、ダイオード60のカソード及びアノード間の電圧の実効値相当量となる。第2コンデンサ85の端子電圧は、ADコンバータ42に入力される。
【0045】
図3は、各経路LH1,LL1間に生じる電圧変動の周波数をスイープさせた場合における第1平滑コンデンサ22aの電圧変動量Vpp、第1平滑コンデンサ22aに流れる電流実効値、及びダイオード60の両端電圧の周波数特性の計算結果を示す。電圧変動量Vppは、ピークピーク値(Peak-to-peak value)である。ダイオード60の両端電圧は、ダイオード60が非導通状態の場合の値である。周波数特性は、低損失モードが実行される場合と、共振抑制モードが実行される場合とについて示されている。
【0046】
電圧変動量及び電流実効値は、第1フィルタ22の共振周波数frzから離れるほど小さくなる。ここで、共振周波数frzよりも低周波領域であって、単位周波数変化量あたりの電圧変動量及び電流実効値の変化量が小さい周波数領域にある第1,第2周波数f1,f2(f2>f1)に着目して説明する。
【0047】
図3に示す例では、低損失モードにおいて、第1周波数f1では、第1フィルタ22が僅かに共振しているため、第1平滑コンデンサ22aの電圧変動量Vppとして第1電圧値V1(例えば0.26V)が検出される。低損失モードにおいて、第2周波数f2では、共振度合いが第1周波数f1の場合よりも大きく、第1平滑コンデンサ22aの電圧変動量Vppとして第1電圧値V1よりも大きい第2電圧値V2(例えば0.65V)が検出される。
【0048】
第1周波数f1において、低損失モードから共振抑制モードに切り替えたとしても、第1平滑コンデンサ22aに流れる電流実効値はわずか(例えば数%)しか低減できない。これに対し、第2周波数f2において、低損失モードから共振抑制モードに切り替えると、第1平滑コンデンサ22aに流れる電流実効値は、第1周波数f1の場合よりも大きく(例えば20%)低減される。このため、低損失モード及び共振抑制モードのうち、一方のモードから他方のモードへの切替閾値であるコンデンサ電圧閾値Vcthは、第1電圧値V1と第2電圧値V2との間の値に設定されることが望ましい。
【0049】
ただし、第1周波数f1から第2周波数f2までの周波数領域においては、第1平滑コンデンサ22aの電圧変動量Vppが小さい。電圧変動量Vppが小さいことと、例えばコンデンサ電圧検出回路70の温度特性に起因した電圧検出値の温度依存性とにより、低損失モード及び共振抑制モードのうち一方のモードから他方のモードに切り替えるべき状況であるか否かの判定精度が低下し得る。
【0050】
この問題に対処すべく、本実施形態では、モードの切り替え状況の判定に、ダイオード電圧検出回路80の電圧検出値が用いられる。ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧は、ダイオード60が導通状態になって順方向電流が流れている場合よりも、ダイオード60が非導通状態になって電流流通を遮断している場合の方が大きくなる。
図3に示す例では、第1周波数f1から第2周波数f2までの周波数領域において、単位周波数変化量あたりの第1平滑コンデンサ22aの電圧変動量Vppの変化量よりも、単位周波数変化量あたりのダイオード60の端子電圧の変化量の方が大きい傾向にある。このため、ダイオード電圧検出回路80の電圧検出値は、短絡スイッチ61をオンする低損失モード、及び短絡スイッチ61をオフする共振抑制モードのうち、一方のモードから他方のモードに切り替えるべき状況であるか否かを把握するパラメータに適している。
【0051】
図4に、第1制御装置40により実行される短絡スイッチ61の制御処理のフローチャートを示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0052】
ステップS10では、コンデンサ電圧検出回路70を構成する第2コンデンサ75の端子電圧であるコンデンサ電圧検出値Vcrを、ADコンバータ42を介して取得する。
【0053】
ステップS11では、取得したコンデンサ電圧検出値Vcrがコンデンサ電圧閾値Vcth(「第2閾値」に相当)を超えているか否かを判定する。
【0054】
ステップS11においてコンデンサ電圧検出値Vcrがコンデンサ電圧閾値Vcth以下であると判定した場合には、ステップS12に進み、短絡スイッチ61をオンする低損失モードを実行する。
【0055】
一方、コンデンサ電圧検出値Vcrがコンデンサ電圧閾値Vcthを超えていると判定した場合には、ステップS13に進み、短絡スイッチ61をオフする共振抑制モードを実行する。
【0056】
ステップS14では、ダイオード電圧検出回路80を構成する第2コンデンサ85の端子電圧であるダイオード電圧検出値Vdrを、ADコンバータ42を介して取得する。
【0057】
ステップS15では、取得したダイオード電圧検出値Vdrがダイオード電圧閾値Vdth(「第1閾値」に相当)を超えているか否かを判定する。
【0058】
ダイオード電圧検出値Vdrがダイオード電圧閾値Vdth以下であると判定した場合には、ステップS12に進み、共振抑制モードを解除して低損失モードを実行する。
【0059】
一方、ダイオード電圧検出値Vdrがダイオード電圧閾値Vdthを超えていると判定した場合、又はステップS12の処理が完了した場合には、次の制御周期におけるステップS10の処理に移行する。
【0060】
以上詳述したように、本実施形態では、低損失モード及び共振抑制モードのうち一方のモードから他方のモードに切り替えるべき状況であるか否かの判定に、ダイオード電圧検出値Vdrが用いられる。これにより、第1平滑コンデンサ22aの両端に印加されるリップル電圧の周波数が共振周波数frzから離れている場合であっても、モード切り替え状況の判定精度を高めることができる。したがって、第1平滑コンデンサ22aに流れる電流が増大する状況であるにもかかわらず、共振抑制モードに移行できなかったり、第1平滑コンデンサ22aに流れる電流が小さい状況であるにもかかわらず、低損失モードに移行できなかったりする事態の発生を抑制できる。
【0061】
第1制御装置40は、ダイオード電圧検出値Vdrとして、ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧の実効値相当量の値を取得する。ダイオード60の上記実効値相当量は、制御モードを共振抑制モードとすべき状況において、基本的にはダイオード電圧閾値Vdthを超える。これにより、各経路LH1,LL1の電圧変動の周波数で短絡スイッチ61が頻繁にオンオフされる事態の発生を抑制できる。これにより、電力変換システムにおけるスイッチング損失を低減したり、ノイズの発生を抑制したりすることができる。
【0062】
図4のステップS15の条件とともに、ステップS11の条件が用いられることにより、モード切り替え状況の判定精度を高めることができる。
【0063】
<第1実施形態の変形例>
・
図4の処理において、ステップS10,S11の処理が無くてもよい。
【0064】
・コンデンサ電圧検出回路70は、第1平滑コンデンサ22aの両端に印加されるリップル電圧の振幅相当量を検出するように構成されていてもよい。この構成は、例えば、
図2に示すコンデンサ電圧検出回路70のうち、抵抗体76が除去された回路構成とすることにより実現できる。
【0065】
また、ダイオード電圧検出回路80は、ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧の振幅相当量を検出するように構成されていてもよい。この構成は、例えば、
図2に示すダイオード電圧検出回路80のうち、抵抗体86が除去された回路構成とすることにより実現できる。
【0066】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図5に示すように、コンデンサ電圧検出回路70及びダイオード電圧検出回路80の構成が変更されている。
【0067】
コンデンサ電圧検出回路70は、コンパレータ77及び基準電源78を備えている。コンパレータ77の非反転入力端子には、第2コンデンサ75の端子電圧が入力され、コンパレータ77の反転入力端子には、基準電源78の直流電圧が入力される。基準電源78の直流電圧は、コンデンサ電圧閾値Vcthである。コンパレータ77の出力信号Sgcは、ADコンバータ42に入力される。
【0068】
第2コンデンサ75の端子電圧がコンデンサ電圧閾値Vcthを超える場合、コンパレータ77の出力信号SgcはHとなる。一方、第2コンデンサ75の端子電圧がコンデンサ電圧閾値Vcthを下回る場合、コンパレータ77の出力信号SgcはLとなる。
【0069】
ダイオード電圧検出回路80は、コンパレータ87及び基準電源88を備えている。コンパレータ87の非反転入力端子には、第2コンデンサ85の端子電圧が入力され、コンパレータ87の反転入力端子には、基準電源88の直流電圧が入力される。基準電源88の直流電圧は、ダイオード電圧閾値Vdthである。コンパレータ87の出力信号Sgdは、ADコンバータ42に入力される。
【0070】
第2コンデンサ85の端子電圧がダイオード電圧閾値Vdthを超える場合、コンパレータ87の出力信号SgdはHとなる。一方、第2コンデンサ85の端子電圧がダイオード電圧閾値Vdthを下回る場合、コンパレータ87の出力信号SgdはLとなる。
【0071】
図6に、第1制御装置40により実行される短絡スイッチ61の制御処理のフローチャートを示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0072】
ステップS16では、コンデンサ電圧検出回路70を構成するコンパレータ77の出力信号Sgcを取得する。
【0073】
ステップS17では、取得した出力信号Sgcの論理がHであるか否かを判定する。論理がLであると判定した場合には、ステップS12に進み、論理がHであると判定した場合には、ステップS13に進む。
【0074】
ステップS18では、ダイオード電圧検出回路80を構成するコンパレータ87の出力信号Sgdを取得する。
【0075】
ステップS19では、取得した出力信号Sgdの論理がHであるか否かを判定する。論理がLであると判定した場合には、ステップS12に進む。
【0076】
一方、ステップS19において肯定判定した場合、又はステップS12の処理が完了した場合には、次の制御周期におけるステップS10の処理に移行する。
【0077】
コンデンサ電圧検出回路70を構成する基準電源78の出力電圧は、僅かながらではあるが何らかの要因によって適正な値からずれ得る。この場合であっても、ステップS19の条件が設けられる本実施形態によれば、モード切り替え状況の判定精度を高めることができる。
【0078】
<第2実施形態の変形例>
図6の処理において、ステップS16,S17の処理が無くてもよい。
【0079】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図7に示すように、コンデンサ電圧検出回路70及びダイオード電圧検出回路80の構成が変更されている。
【0080】
コンデンサ電圧検出回路70は、第1分圧抵抗体71及び第2分圧抵抗体72を備える抵抗分圧回路である。第2分圧抵抗体72の端子電圧はADコンバータ42に入力される。
【0081】
ダイオード電圧検出回路80は、第1分圧抵抗体81及び第2分圧抵抗体82を備える抵抗分圧回路である。第2分圧抵抗体82の端子電圧はADコンバータ42に入力される。
【0082】
図8に、第1制御装置40により実行される短絡スイッチ61の制御処理のフローチャートを示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0083】
ステップS20では、コンデンサ電圧検出回路70を構成する第2分圧抵抗体72の端子電圧Vckを、ADコンバータ42を介して取得する。取得した端子電圧Vckは、第1制御装置40が備えるメモリに記憶される。
【0084】
ステップS21では、記憶された複数の端子電圧Vckに基づいて、第1平滑コンデンサ22aの両端に印加されるリップル電圧の実効値相当量Vcrmsを算出する。
【0085】
ステップS22では、算出した実効値相当量Vcrmsがコンデンサ電圧閾値Vcthを超えているか否かを判定する。実効値相当量Vcrmsがコンデンサ電圧閾値Vcth以下であると判定した場合には、ステップS12に進む。一方、実効値相当量Vcrmsがコンデンサ電圧閾値Vcthを超えていると判定した場合には、ステップS13に進む。
【0086】
ステップS23では、ダイオード電圧検出回路80を構成する第2分圧抵抗体82の端子電圧Vdkを、ADコンバータ42を介して取得する。取得した端子電圧Vdkは、第1制御装置40が備えるメモリに記憶される。
【0087】
ステップS24では、記憶された複数の端子電圧Vdkに基づいて、ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧の実効値相当量Vdrmsを算出する。
【0088】
ステップS25では、算出した実効値相当量Vdrmsがダイオード電圧閾値Vdthを超えているか否かを判定する。実効値相当量Vdrmsがダイオード電圧閾値Vdth以下であると判定した場合には、ステップS12に進む。
【0089】
一方、ステップS25において肯定判定した場合、又はステップS12の処理が完了した場合には、次の制御周期におけるステップS10の処理に移行する。
【0090】
以上説明した本実施形態によっても、モード切り替え状況の判定精度を高めることができる。
【0091】
<第3実施形態の変形例>
図8の処理において、ステップS20~S22の処理が無くてもよい。
【0092】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図9に示すように、コンデンサ電圧検出回路70及びダイオード電圧検出回路80の構成が変更されている。
【0093】
コンデンサ電圧検出回路70は、オフセット回路79を備えている。オフセット回路79は、第2コンデンサ75の端子電圧を第1オフセット量だけオフセットさせた電圧値を出力する。オフセットさせるのは、コンデンサ電圧検出回路70の電圧検出値を、ADコンバータ42に入力可能な電圧範囲に合わせるためである。
【0094】
ダイオード電圧検出回路80は、コンデンサ電圧検出回路70と同様にオフセット回路89を備えている。オフセット回路89は、第2コンデンサ85の端子電圧を第2オフセット量だけオフセットさせた電圧値を出力する。オフセットさせるのは、上記と同様に、ダイオード電圧検出回路80の電圧検出値を、ADコンバータ42に入力可能な電圧範囲に合わせるためである。
【0095】
各オフセット回路79,89から出力された電圧値は、ADコンバータ42に入力される。第1制御装置40は、先の
図8の処理を行う。
図8の処理からの変更点について説明すると、ステップS20では、オフセット回路79の出力電圧値Vckを、ADコンバータ42を介して取得し、メモリに記憶する。ステップS21では、記憶された複数の電圧値Vckに基づいて、第1平滑コンデンサ22aの両端に印加されるリップル電圧の実効値相当量Vcrmsを算出する。
【0096】
ステップS23では、オフセット回路89の出力電圧値Vdkを、ADコンバータ42を介して取得し、メモリに記憶する。ステップS24では、記憶された複数の電圧値Vdkに基づいて、ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧の実効値相当量Vdrmsを算出する。
【0097】
以上説明した本実施形態によっても、モード切り替え状況の判定精度を高めることができる。
【0098】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ダイオード電圧検出回路80の検出値に基づいて、短絡スイッチ61にショート故障が発生しているか否かを判定する。
図10に、第1制御装置40により実行される故障判定処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0099】
ステップS30では、短絡スイッチ61をオフする指令を出力する。詳しくは、短絡スイッチ61のゲート電圧を、短絡スイッチ61のスレッショルド電圧Vth未満の値(例えば、0V)にする指令を出力する。
【0100】
ステップS31では、第1インバータ20のスイッチング制御により蓄電池10と第2インバータ30との間の電力伝達が行われている場合において、ダイオード電圧検出回路80を構成する第2分圧抵抗体82の端子電圧Vdkを、ADコンバータ42を介して取得する。
【0101】
ステップS32では、取得した端子電圧Vdkに基づいて、短絡スイッチ61にショート故障が発生しているか否かを判定する。詳しくは、端子電圧Vdkが故障閾値Vfthを下回ると判定した場合、短絡スイッチ61にショート故障が発生していると判定する。故障閾値Vfthは、短絡スイッチ61がオフされている場合における、ダイオード60のアノード及びカソード間の電圧(詳しくは、順方向電圧降下量Vf)を、各分圧抵抗体81,82により分圧した値である。
【0102】
以上説明した本実施形態によれば、ダイオード電圧検出回路80の検出値に基づいて、短絡スイッチ61にショート故障が発生していることを判定できる。
【0103】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、回生駆動制御が行われている場合において、第1平滑コンデンサ22aの端子電圧が過度に高くなるとき、短絡スイッチ61がオンされる。
図11に、第1制御装置40により実行される短絡スイッチ61の制御処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0104】
ステップS40では、回生駆動制御が行われているか否かを判定する。
【0105】
ステップS40において肯定判定した場合には、ステップS41に進み、コンデンサ電圧検出回路70を構成する第2分圧抵抗体72の端子電圧Vckを、ADコンバータ42を介して取得する。
【0106】
ステップS42では、取得した端子電圧Vckに基づいて、第1平滑コンデンサ22aの端子電圧Vcを算出する。そして、算出した端子電圧Vcが過電圧閾値Vlimitを超えているか否かを判定する。過電圧閾値Vlimitは、第1平滑コンデンサ22aの信頼性を維持可能な上限電圧、又はこの上限電圧よりも低い値に設定されている。
【0107】
ステップS42において肯定判定した場合には、ステップS43に進み、短絡スイッチ61をオンする。
【0108】
以上説明した本実施形態によれば、回生駆動制御が行われている場合において、共振抑制モードが実行されることに伴い第1平滑コンデンサ22aが故障する事態の発生を抑制できる。
【0109】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0110】
・
図12に示すように、第1高電位側経路LH1のうち第2高電位側経路LH2との接続部分よりも蓄電池10側にダイオード62及び短絡スイッチ63が設けられていてもよい。ダイオード62のアノードは、蓄電池10の正極側に接続されている。
【0111】
・
図13に示すように、第1制御装置40により実行される短絡スイッチ61の制御処理が変更されていてもよい。ステップS10,S11の後、ステップS26において、コンデンサ電圧検出値Vcrがコンデンサ電圧閾値Vcthを超えているとの第1条件、及びダイオード電圧検出値Vdrがダイオード電圧閾値Vdthを超えているとの第2条件の双方が成立しているか否かを判定する。第1,第2条件の双方が成立していると判定した場合には、ステップS13に進み、第1,第2条件の少なくとも1つが成立していないと判定した場合には、ステップS12に進む。
【0112】
・インバータは、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0113】
・ダイオード60(又はダイオード62)は、電子部品である受動素子に限らず、短絡スイッチ61(又は短絡スイッチ63)のボディダイオードであってもよい。この場合、例えば、受動素子としてのダイオードは短絡スイッチに並列接続されていなくてよい。
【0114】
・短絡スイッチは、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、第1のIGBT及び第2のIGBTの並列接続体であってもよい。詳しくは、第1のIGBTのコレクタに第2のIGBTのエミッタが接続され、上記並列接続体にダイオードが並列接続されている。
【0115】
・第1フィルタ22及び第2フィルタ32としては、コンデンサ及びインダクタの1段構成のものに限らず、例えば、多段構成のもの、又はπ型の構成のものであってもよい。
【0116】
・直流電源としては、蓄電池10に限らず、例えば、大容量の電気二重層キャパシタ、又は蓄電池及び電気二重層キャパシタの双方を備えるものであってもよい。
【0117】
・電力変換装置が搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、電力変換装置の搭載先は、移動体に限らず、定置式の装置であってもよい。
【0118】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10…蓄電池、20…第1インバータ、30…第2インバータ、40…第1制御装置、60…ダイオード、61…短絡スイッチ、80…ダイオード電圧検出回路。