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特開2024-164465床面傾斜対処方法、および、床面傾斜対応システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164465
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】床面傾斜対処方法、および、床面傾斜対応システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
B66F9/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079953
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美濃部 敦
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333BA02
3F333BA08
3F333FA01
3F333FA02
3F333FA04
3F333FA11
3F333FD13
3F333FE04
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】無人フォークリフトが荷置きする際に停止する停止位置における床面の傾斜を自動で計測して、必要に応じて、当該停止位置における無人フォークリフトの走行中心をずらす。
【解決手段】傾斜対処方法2は、無人フォークリフトが停止位置にて多段ラックの1段目に荷置きする際に、当該停止位置での床面のラック左右方向の傾斜角度を、当該無人フォークリフトに設けられた傾斜計を用いて自動的に計測すること(S1)、停止位置において無人フォークリフトの走行中心をラック左右方向にずらす補正が必要かどうかを、計測結果を用いて判定すること(S2)、停止位置において補正が必要であると判定した場合、無人フォークリフトが当該停止位置にて多段ラックの2段目以上の段目に荷置きする際の当該停止位置における走行中心をずらすこと(S4)を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人フォークリフトが多段ラックに荷置きする際に停止する停止位置での床面の傾斜に対処するための床面傾斜対処方法であって、
前記無人フォークリフトが前記停止位置にて多段ラックのN段目(Nは1以上の自然数)に荷置きする際に、当該停止位置での前記床面のラック左右方向の傾斜角度を、当該無人フォークリフトに設けられた傾斜計を用いて自動的に計測すること、
前記停止位置において前記無人フォークリフトの走行中心を前記ラック左右方向にずらす補正が必要かどうかを、計測結果を用いて判定すること、
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、当該停止位置における前記走行中心のずらし方向を、前記ラック左右方向のどちらにするのかを決定すること、
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、前記無人フォークリフトが当該停止位置にて前記多段ラックのN+1段目以上の段目に荷置きする際の当該停止位置における前記走行中心を、決定した前記すらし方向にずらすこと、を備える、
床面傾斜対処方法。
【請求項2】
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、当該停止位置における前記走行中心のずらし量を、前記計測結果を用いて決定すること、をさらに備え、
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、前記無人フォークリフトが当該停止位置にて前記多段ラックのN+1段目以上の段目に荷置きする際の当該停止位置における前記走行中心を、決定した前記すらし方向に決定した前記ずらし量だけずらす、
請求項1に記載の床面傾斜対処方法。
【請求項3】
前記Nは、1または2である、
請求項1に記載の床面傾斜対処方法。
【請求項4】
前記Nは、1である、
請求項1に記載の床面傾斜対処方法。
【請求項5】
無人フォークリフトが多段ラックに荷置きする際に停止する停止位置での床面の傾斜に対処するための床面傾斜対処システムであって、
前記床面の傾斜角度を計測するために前記無人フォークリフトに設けられた傾斜計と、
前記無人フォークリフトが前記停止位置にて前記多段ラックのN段目(Nは1以上の自然数)に荷置きする際に、当該停止位置でのラック左右方向の前記傾斜角度を、前記傾斜計を用いて自動的に計測する計測実行部と、
前記停止位置において前記無人フォークリフトの走行中心を前記ラック左右方向にずらす補正が必要かどうかを、前記計測実行部の計測結果に基づいて判定する判定部と、
前記判定部が前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合に、前記停止位置における前記走行中心に関係する前記無人フォークリフトの指令値に対する補正値を、前記計測実行部の計測結果に基づいて決定する決定部と、
前記判定部が前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合に、前記指令値を前記決定部によって決定された前記補正値に補正して、当該停止位置において当該無人フォークリフトが前記多段ラックのN+1段目以上の段目に荷置きする際に、当該停止位置において当該無人フォークリフトの前記走行中心が前記ラック左右方向にずれるようにする補正部と、を備える、
床面傾斜対処システム。
【請求項6】
前記傾斜計は、前記無人フォークリフトの車体の左右方向の傾斜角度を計測するように、前記車体の内部に配置されている、
請求項5に記載の床面傾斜対処システム。
【請求項7】
前記判定部は、計測された前記傾斜角度が閾値を超えるときに警告を出力するように構成されている、
請求項5に記載の床面傾斜対処システム。
【請求項8】
前記Nは、1または2である、
請求項5に記載の床面傾斜対処システム。
【請求項9】
前記Nは、1である、
請求項5に記載の床面傾斜対処システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、無人フォークリフトが多段ラックに荷置きする際に停止する位置における床面の傾斜に対処するため方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無人フォークリフトは、LiDARといった光学センサを備え、周囲の物体との距離を計測することで、自己の位置を特定し、かつ、自己と荷物(パレット)との位置関係を特定し、それによって、自動で走行しかつ荷役作業する。例えば、無人フォークリフトは、所定の走行経路に沿って走行し、多段ラックの前に停止し、多段ラックに対して荷役作業する。
【0003】
無人フォークリフトが多段ラックに荷置きする際に停止する停止位置にて床面が左右に傾いていれば、荷物がラックの柱と接触したり、既に置かれている荷物と接触したりする危険性がある。
【0004】
特許文献1に開示された方法は、このような接触の危険性を回避するために、事前に、床面が左右方向に傾いているかを計測する。
【0005】
具体的には、この方法では、作業者が、まず、専用の床面計測治具(特許文献1の図2参照)を停止位置に設置して、当該停止位置における床面のラック左右方向の傾斜角度を治具の傾斜計にて計測する。作業者は、作業エリア内の全ての停止位置に対して同様の計測を行って、作業エリア内の全停止位置の計測値を取得する。そして、作業者は、計測値から、床面の傾斜角度が所定の閾値を超える停止位置を特定している。
【0006】
そして、方法は、傾斜角度が所定の閾値を超える停止位置において無人フォークリフトの走行中心が左右方向にずれるように、当該無人フォークリフトの指令値を補正する。これにより、無人フォークリフトがその停止位置においてラックに荷置きにする際に、荷物がラックの柱や既に載置されている隣の荷物から離れたところに載置される。こうして、荷物同士が接触することや、荷物がラックの柱と接触するといったことを回避することができる。
【0007】
このような特許文献1の方法は、上記のように、作業者が実際に停止位置に治具を設置して計測しなければならない。治具の設置位置がずれて正しい傾斜角度が計測できない可能性があるし、目視による判断のため間違いが発生することがあった。また、作業者が、このような計測を、無人フォーリフトの作業エリアの全停止位置の1つ1つに対して実施しなければならず、負担が大きい。計測人員を用意する必要があるためコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2023-7817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、無人フォークリフトが荷置きする際に停止する停止位置における床面の傾斜を自動で計測して、必要に応じて、当該停止位置における無人フォークリフトの走行中心をずらすことを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願では、無人フォークリフトが多段ラックに荷置きする際に停止する停止位置での床面の傾斜に対処するための床面傾斜対処方法が提供され、
前記方法は、
前記無人フォークリフトが前記停止位置にて多段ラックのN段目(Nは1以上の自然数)に荷置きする際に、当該停止位置での前記床面のラック左右方向の傾斜角度を、当該無人フォークリフトに設けられた傾斜計を用いて自動的に計測すること、
前記停止位置において前記無人フォークリフトの走行中心を前記ラック左右方向にずらす補正が必要かどうかを、計測結果を用いて判定すること、
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、当該停止位置における前記走行中心のずらし方向を、前記ラック左右方向のどちらにするのかを決定すること、
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、前記無人フォークリフトが当該停止位置にて前記多段ラックのN+1段目以上の段目に荷置きする際の当該停止位置における前記走行中心を、決定した前記ずらし方向にずらすこと、を備える。
【0011】
前記方法は、
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、当該停止位置における前記走行中心のずらし量を、前記計測結果を用いて決定すること、をさらに備え、
前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合、前記無人フォークリフトが当該停止位置にて前記多段ラックのN+1段目以上の段目に荷置きする際の当該停止位置における前記走行中心を、決定した前記ずらし方向に決定した前記ずらし量だけずらしてよい。
【0012】
本願によれば、さらに、無人フォークリフトが多段ラックに荷置きする際に停止する停止位置での床面の傾斜に対処するための床面傾斜対処システムであって、
前記システムは、
前記床面の傾斜角度を計測するために前記無人フォークリフトに設けられた傾斜計と、
前記無人フォークリフトが前記停止位置にて前記多段ラックのN段目(Nは1以上の自然数)に荷置きする際に、当該停止位置でのラック左右方向の前記傾斜角度を、前記傾斜計を用いて自動的に計測する計測実行部と、
前記停止位置において前記無人フォークリフトの走行中心を前記ラック左右方向にずらす補正が必要かどうかを、前記計測実行部の計測結果に基づいて判定する判定部と、
前記判定部が前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合に、前記停止位置における前記走行中心に関係する前記無人フォークリフトの指令値に対する補正値を、前記計測実行部の計測結果に基づいて決定する決定部と、
前記判定部が前記停止位置において前記補正が必要であると判定した場合に、前記指令値を前記決定部によって決定された前記補正値に補正して、当該停止位置において当該無人フォークリフトが前記多段ラックのN+1段目以上の段目に荷置きする際に、当該停止位置において当該無人フォークリフトの前記走行中心が前記ラック左右方向にずれるようにする補正部と、を備える。
【0013】
前記傾斜計は、前記無人フォークリフトの車体の左右方向の傾斜角度を計測するように、前記車体の内部に配置されてよい。また、前記判定部は、計測された前記傾斜角度が閾値を超えるときに警告を出力するように構成されてよい。
【0014】
上記において、好ましくは、N=1または2であり、さらに好ましくはN=1である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aは、例示の多段ラックRの正面図であり、図1Bは、図1Aの側面図である。
図2図2Aは、例示の無人フォークリフトの概略側面図であり、図2Bは、図2Aの平面図である。
図3図3は、床面の傾斜に起因する荷物の接触の危険性を例示する。
図4図4は、床面の傾斜に起因する荷物の接触の危険性を例示する。
図5図5は、例示の床面傾斜対処方法のフローを示す図である。
図6図6は、例示の床面傾斜対処システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本願の例示的な実施形態が説明される。なお、図面に示される構成要素は、必ずしも正確な寸法や比率ではなく、その機能または動作を表すにすぎない。
【0017】
[多段ラック]
図1A図1Bは、無人フォークリフトの作業エリアに設けられた例示の多段ラックを概略的に示す。この例示の多段ラックR(以下、単にラックR)は、四段二連のラックである。すなわち、各段に、荷物Wを載置する領域(以下、載置領域)がラック左右方向Y(以下、単に方向Y)に2つ規定されている。そして、各連に、載置領域が上下方向Z(単に、方向Z)に4つ規定されている。なお、方向Xは、ラック奥行方向である。そして、連毎に、無人フォークリフト1が停止してラックRに対して荷置きする際に停止する停止位置P1,P2が規定されている。実際の作業エリアには、このような多段ラックRが複数設けられているので、多数の停止位置(P1,P2,・・・)が規定されている。なお、図示された荷物Wは、実際の荷物と当該荷物が載置されたパレットをまとめて示したものである。
【0018】
[無人フォークリフト]
図2A図2Bは、例示の無人フォークリフト1を示す。無人フォークリフト1は、車体10、走行輪11、走行装置12、荷役装置13、および、フォーク14を備える。走行装置12は、走行輪11を駆動し、それにより車体10を走行させる。荷役装置13は、マスト装置やリーチ装置等で構成されている。左右一対のフォーク14は、荷物Wのパレットに差し込まれ、荷物Wを支持するためのものである。荷役装置13は、この左右一対のフォーク14を、上下方向Fzに移動させ、また、前後方向Fxに移動させることができる。
【0019】
無人フォークリフト1は、さらに、光学センサ15、および、動作制御部16を備える。光学センサ15は、LiDAR等であり、周囲との物体の距離を計測する。動作制御部16は、例えば、記憶媒体に記憶されたプログラムを、CPUが実行することによって実現される。動作制御部16は、光学センサ15の計測に基づいて、無人フォークリフト1の位置や、無人フォークリフト1と荷物W(パレット)との位置関係を特定し、これに基づいて、走行装置12および荷役装置13を制御する。動作制御部16によって、無人フォークリフト1は、所定の動作プログラムに従って、作業エリア内を走行経路に沿って走行することができ、かつ、ラックRに対して荷役作業をすることができる。
【0020】
具体的には、無人フォークリフト1は、所定の走行経路に沿って走行し、ラックR前の停止位置でラックRと向かい合うように(すなわち、方向Xと方向Fxとが、方向Yと方向Fyとが、実質的に合うように)停止し、その停止位置にてラックRの任意の段目の載置位置に荷物Wを置くことができる。なお、図1Bは、無人フォークリフト1がフォーク14を荷物Wのパレットに差し込んでフォーク14で荷物Wを支持している状態で停止位置P2(図1A)に停止し、これから、フォーク14を動かしてラックRの二段目の載置位置に荷物Wを置き始める様子を示す。
【0021】
[床面の傾きの影響]
図3は、床面が、停止位置P1にて左下がりに傾斜し、停止位置P2にて右下がりに傾斜している例を示す。この状態のとき、停止位置P1のz軸が左側に傾き、停止位置P2のz軸が右側に傾く。無人フォークリフト1が、停止位置P1にてラックRに実際に荷置きすると、荷物Wを、点線で示される目標載置位置Qよりも左側に載置してしまう。無人フォークリフト1が、停止位置P2にてラックRに実際に荷置きすると、荷物Wを目標載置位置Qよりも右側に載置してしまう。したがって、無人フォークリフト1が、停止位置P1および停止位置P2にてラックRに荷置きする際に、荷物Wが、領域Tで示される通り、ラックRの柱に接触する危険性がある。
【0022】
例えば、図3において荷物WとラックRとの接触を回避するためには、停止位置P1において無人フォークリフト1の走行中心(走行ライン)が右側にずれるように(補正後の走行中心C参照)、無人フォークリフト1の指令値を補正して、それにより、無人フォークリフト1がラックRの柱から離れたところに荷物Wを置くようにすればよい。そして、停止位置P2においては走行中心を左側にずらせばよい。
【0023】
図4は、床面が、停止位置P1にて右下がりに傾斜し、停止位置P2にて左下がりに傾斜している例を示す。この状態のとき、停止位置P1のz軸が右側に傾き、停止位置P2のz軸が左側に傾く。無人フォークリフト1が、停止位置P1にてラックRに実際に荷置きすると、荷物Wを目標載置位置Qよりも右側に載置し、停止位置P2にてラックRに実際に荷置きすると、荷物Wを目標載置位置Qよりも左側に載置する。したがって、無人フォークリフト1が、停止位置P1または停止位置P2にて荷置きをすると、荷物Wが、領域Tで示される通り、隣の載置空間に既に置かれた荷物Wと接触する危険性がある。
【0024】
例えば、図4において荷物W同士の接触を回避するためには、停止位置P1において無人フォークリフト1の走行中心が左側にずれるように、無人フォークリフト1の指令値を補正して(補正後の走行中心C参照)、それにより、無人フォークリフト1が、既に置かれた停止位置P2側の荷物Wから離れたところに荷物を置くようにすればよい。そして、停止位置P2においては走行中心を右側にずらせばよい。
【0025】
[傾斜対処方法およびシステム]
以下、このような床面の傾斜に対して走行中心をずらすための例示の傾斜対処方法2(図5)(以下、単に方法2)および傾斜対処システム3(図6)(以下、単にシステム3)が説明される。
【0026】
方法2は、ステップS1~S4を備える。システム3は、傾斜計30、計測実行部31、判定部32、決定部33、および、補正部34を備える。システム3の機能部31~34は、例えば、記憶媒体に記憶されたプログラムを、CPUが実行することによって実現される。
【0027】
ステップS1は、無人フォークリフト1が停止位置においてラックRの一段目に荷置きする際に、その停止位置にて方向Yにおける床面の傾斜角度を、無人フォークリフト1に設けられた傾斜計30にて自動的に計測する。
【0028】
ステップS1を実施するために、傾斜計30および計測実行部31が用いられる。傾斜計30は、具体的には、図2Aの通り、車体10の内部に設けられており、車体10の左右方向Fyの傾斜角度を計測するように配置されている。傾斜計30は、その計測値の正負によって、傾斜が右下がりであるか、左下がりであるかを計測できる。
【0029】
計測実行部31は、無人フォークリフト1による停止位置でのラックRの一段目の荷置き作業中に、傾斜計30を用いて、無人フォークリフト1の車体10の左右方向Fyの傾斜角度を計測し、それにより、その停止位置での方向Yにおける床面の傾斜角度を計測する。
【0030】
上述の通り、動作制御部16は、光学センサ15を用いて、無人フォークリフト1の位置を特定し、無人フォークリフト1を走行させている。したがって、計測実行部31は、無人フォークリフト1が停止位置にあることを認識できる。ここで、無人フォークリフト1は、図1Bの通り、その左右方向Fyがラック左右方向Yと合うように停止位置に停止する。したがって、無人フォークリフト1が停止位置に停止しているときに傾斜計30が示す傾斜角度は、その停止位置における床面の方向Yの傾斜角度に相当する。したがって、計測実行部31は、これを利用することで、当該停止位置での床面の傾斜角度の自動計測を可能にしている。
【0031】
このように、ステップS1は、無人フォークリフト1に、停止位置にてラックRの一段目に実際に荷置させ、その際に、その停止位置での床面の方向Yの傾斜角度を、傾斜計30を用いて自動的に計測する。
【0032】
この床面の方向Yの傾斜角度の自動計測が、各停止位置(P1,P2・・・・)に対して同様に行われ、各停止位置(P1,P2・・・・)の傾斜角度が得られる。
【0033】
ステップS2は、ステップS1によって得られた計測結果を利用して、停止位置において走行中心をずらす補正が必要かどうかを判定する。
【0034】
ステップS2を実施するために判定部32が用いられてよい。判定部32は、停止位置の傾斜角度(その絶対値)が、所定の閾値(例えば特許文献1のように0.1度)を超えているかを判定する。
【0035】
判定部32は、計測された傾斜角度が所定の閾値を超えていないとき、その停止位置において補正が必要ではないと判定してよい。
【0036】
判定部32は、計測された傾斜角度が所定の閾値を超えているとき、警告を出力してよい。そして、無人フォークリフト1の表示装置17(図2A)や、作業エリアの作業者の表示装置(図示略)が、警告の出力を受けたときに、その警告を表示してよい。これにより、作業者は、その停止位置では、床面が閾値を超えて傾斜していることを知ることができる。
【0037】
判定部32は、停止位置にて傾斜角度が所定の閾値を超えているとき、その停止位置において補正が必要であると判定してよい。また、判定部32は、例えば特許文献1のように互いに隣り合う2つの停止位置P1,P2での傾斜角度が閾値を超え、かつ、2つ停止位置P1,P2において所定の傾きパターン(例えば、図4のように2つの停止位置P1,P2のz軸が逆V字状になるパターン)が検出されたとき、停止位置P1,P2のそれぞれにおいて補正が必要であると判定してもよい。
【0038】
全ての停止位置(P1,P2・・・・)に対して補正が必要か否かの判定が行われる。ステップS2及び判定部32による判定方法は、上記の例示に限らず、様々な方法が採用されてよい。以下、走行中心の補正が必要であると判定した停止位置を補正必要位置と称することがある。
【0039】
ステップS3は、ステップS2で停止位置において走行中心の補正が必要であると判定した場合、その停止位置における無人フォークリフト1の走行中心のずらし方向を方向Yのどちらに(左側および右側のどちらに)移動させるかを決定する。
【0040】
傾斜計30は、前述の通り傾斜の方向も示すのである。したがって、ステップS3は、ステップS1における計測実行部31による計測結果を利用し、補正必要位置において、床面が左下がりのときには走行中心を右側にずらすと決定し、床面が右下がりのときは走行中心を左側に移動させると決定する。
【0041】
また、ステップS3は、計測結果に基づいて、補正必要位置における走行中心のずらし量を決定する。床面の傾斜角度が大きいほどz軸の傾きが大きくなるので、ステップS3は、傾斜角度(その絶対値)が大きいほど、ずらし量を大きくしてよい。また、荷物Wの実際の載置位置の目標載置位置QからのずれはラックRの段数が高くなるにつれて大きくなる傾向がある。そのため、ステップS3は、同じ補正必要位置においてラックRの段数が高いほど走行中心のずらし量を大きくしてよい。例えば、ステップS3は、同じ補正必要位置において、ラックRの二段目の荷置き時のずらし量を右に10mm、三段目の荷置き時のずらし量を右側に20mm、4段目の荷置き時のずらし量を右側に30mmとしてもよい。そうではなく、ステップS3は、同じ補正必要位置において、二段目以上の段目に対するずらし量を段目にかかわらず一律に右側に20mmと決定してもよい。ステップS3は、計測結果に加えてラックの構造情報を用いて、荷物の衝突を回避するために必要なずらし量を決定してもよい。
【0042】
システム3は、上述のステップS3を実施するために決定部33を用いる。決定部33は、計測実行部31による計測結果を用いて、走行中心に関係する無人フォークリフト1の指令値に対しての補正値であって、上記ずらし量およびずらし方向に対応する補正値を演算により決定する。
【0043】
全ての補正必要位置に対して同様のことが行われる。ステップS3及び決定部33によるずらし量、ずらし方向、補正値の決定方法は上記の例示に限定されるものではなく、様々な方法が採用されてよい。
【0044】
ステップS4は、停止位置において走行中心をずらす補正が必要であると判定した場合において、無人フォークリフト1がその停止位置にてラックRの二段目以上の段目に荷置きする際のその停止位置における走行中心を、ステップS3にて決定したずらし方向およびずらし量にずらす。
【0045】
ステップS4を実施するために補正部34が用いられる。補正部34は、補正必要位置における二段目以上の段目の荷置き時の無人フォークリフトの指令値を、決定部33によって決定された補正値に補正する。これにより、無人フォークリフト1の動作制御部16は、補正後の指令値で走行装置12を制御して無人フォークリフト1を走行させることになる。したがって、無人フォークリフト1が二段目以上の段目にて荷置き作業をするために補正必要位置に停止する際に、その補正必要位置において、走行中心がステップS3にて決定されたずらし方向およびずらし量でずれる(図3図4の補正後の走行中心C参照)。
【0046】
例えば、ステップS1~S3において、停止位置P1が補正必要位置ではないと判定されて、停止位置P2が補正必要位置であると判定されて、停止位置P2におけるずらし量およびずらし方向(停止位置における指令値に対する補正値)が決定されたとする。この場合、方法2は、無人フォークリフト1が停止位置P1にて二段目以上の段目に荷置きする際に停止位置P1における走行中心をずらさない。すなわち、方法2は、走行中心の補正を行わない。
【0047】
一方、方法2は、無人フォークリフト1が停止位置P2にて停止して二段目、三段目および四段目に荷置きする際の停止位置P2における走行中心を、荷物Wの接触の危険性を回避する方法にずらず。こうして、必要に応じて、ラックRの二段目以上の段目に対してのみ走行中心をずらす補正が行われる。
【0048】
以上の通り、実施形態は、無人フォークリフト1に設けられた傾斜計30によって、無人フォークリフト1による停止位置でのラックRの一段目に対する荷置き作業中にその停止位置における床面の方向Yの傾斜角度を自動で計測し、そして、ラックRの二段目以上の段目に対する荷置き時にのみ必要に応じて停止位置における走行中心を左右にずらして荷物W同士や荷物WとラックRとの接触を回避している。
【0049】
このように、実施形態は、特許文献1に開示されているような無人フォークリフトのホイールベースを模した専用の計測治具や、当該治具を用いた人による計測作業の必要性をなくしている。治具を用いた人による計測は、治具の設置位置がずれることが多く、また、目視による判断があるため、計測値が正確な床面の傾斜角度を反映していないことが多い。これに対して、実施形態は、実際に作業エリアで作業する無人フォークリフト1に、停止位置にて作業させている最中に、床面の傾斜角度の計測を自動で行うので、計測値が正確である。さらに、実施形態は、計測人員を用意する必要がないことにより、コスト削減にもなる。
【0050】
なお、実施形態のようにラックRの一段目に限らず、ラックRや他の荷物Wとの接触の危険性が比較的低い段数、例えばラックRの二段目の荷置き作業中に停止位置での床面の方向Yの傾斜角度を計測し、必要に応じてその停止位置の三段目以上の段目のみ荷置きの際の走行中心をずらしてよい。
【0051】
システム3の機能部31~34は、無人フォークリフト1に設けられてよいし、その一部または全部が、当該無人フォークリフト1と無線によって通信可能な装置(例えば、作業エリアを管理するサーバ装置など)に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 無人フォークリフト
10 車体
2 傾斜対処方法
3 傾斜対処システム
30 傾斜計
31 計測実行部
32 判定部
33 決定部
34 補正部
R 多段ラック
W 荷物
Y ラック左右方向
Fy 無人フォークリフトの左右方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6