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  • 特開-脱気機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164470
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】脱気機構
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
B01D19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079963
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】李 ヨン信
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
【テーマコード(参考)】
4D011
【Fターム(参考)】
4D011AA18
4D011AC01
4D011AD06
4D011BA16
(57)【要約】
【課題】脱気装置で除去しきれない気泡を、作動中の送液ポンプに侵入する前に除去する脱気機構を提供する。
【解決手段】脱気機構は、送液ポンプにより吸引され、脱気装置を通過した液体中に含有される気泡を除去する脱気機構であって、脱気装置から液体を送液する第一送液チューブと、第一送液チューブの下流に接続され、液体中の気泡の少なくとも一部を検知し排出する気泡検知排出部と、気泡の少なくとも一部が除去された液体を気泡検知排出部から送液ポンプへ送液する第二送液チューブと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液ポンプにより吸引され、脱気装置を通過した液体中に含有される気泡を除去する脱気機構であって、
前記脱気装置から液体を送液する第一送液チューブと、
前記第一送液チューブの下流に接続され、前記液体中の気泡の少なくとも一部を検知し排出する気泡検知排出部と、
前記気泡の少なくとも一部が除去された液体を気泡検知排出部から前記送液ポンプへ送液する第二送液チューブと、
を備える、脱気機構。
【請求項2】
前記気泡検知排出部は、前記第一送液チューブから流入する前記液体中に含有される気泡の少なくとも一部を検知する第一気泡センサを備える、請求項1に記載の脱気機構。
【請求項3】
前記気泡検知排出部は、前記第一気泡センサと連動し、気泡を含む液体の排出を制御する切換え弁を備える、請求項2に記載の脱気機構。
【請求項4】
前記気泡検知排出部は、前記切換え弁を通過し排出される液体中の気泡を検知する第二気泡センサを備え、
前記切換え弁は、第二気泡センサと連動して気泡を含む液体の排出を制御する、
請求項3に記載の脱気機構。
【請求項5】
前記気泡検知排出部から気泡を含む液体を排出する第三送液チューブをさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の脱気機構。
【請求項6】
前記第三送液チューブと接続され、気泡を含む液体の排出を促進する吸引ポンプをさらに備える、
請求項5に記載の脱気機構。
【請求項7】
前記第三送液チューブにおける気泡を含有する液体の流量は、前記第二送液チューブにおける前記気泡の少なくとも一部が除去された液体の流量の1/10以下である、
請求項5に記載の脱気機構。
【請求項8】
前記第一送液チューブに振動を加える振動機をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の脱気機構。
【請求項9】
前記脱気装置は、気体透過性の脱気チューブ又は気泡トラップを用いたものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の脱気機構。
【請求項10】
前記第一気泡センサは、光学式センサである、請求項2に記載の脱気機構。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載の脱気機構と、
送液される液体中に含まれる気泡の一部を除去し、前記脱気機構と接続された脱気装置と、
前記脱気機構と接続され、送液を駆動する送液ポンプと、
を備える、送液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体中に含まれる気泡を、送液中に除去するための脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロー合成や液体クロマトグラフィー等の送液を必要とする機構では、化学反応や測定の精度を高めるために、より安定な送液性能の実現が求められている。送液の駆動力には、例えばプランジャーポンプによる吸引が用いられるが、その際、液体中に含まれる気泡がポンプに侵入すると脈動が発生し、送液流量が著しく不安定になる。また、脈動が発生しない場合でも、流路中での液体混合による化学反応を用いるフロー合成では、液体中に気泡が介在することによって所望の化学反応が正常に行われないという不具合が生じ得る。さらに、液体クロマトグラフィーにおいても、気泡が介在することで液中の化学種を同定、または、化学種の量を計測するための精度の低下が起こり得る。
【0003】
上記のような不良を抑制するために、これまで様々な脱気装置が考案されている。例えば、気体透過性チューブを内部に備えた脱気装置は広く用いられており、装置内を陰圧に保つことで、チューブを通過する液体から気泡が排出される機構となっている。
【0004】
ただし、気泡がより排出されるためには、チューブに液体が留まっている時間が長いほど効果的であるため、チューブを長くする、もしくは、流量を小さくするといった制限が設けられる。
【0005】
上記の課題を改善するために、例えば、特許文献1では、それまでの脱気装置において一般的に用いられる気体透過性の脱気チューブだけでは除去できない気泡について、気泡トラップを導入することで、気泡を捕獲し除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6646499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された脱気装置を利用する場合、薬液種や温度、流量等の条件次第では除去しきれない気泡が残存し得ることに加えて、脱気装置よりも下流側で発生する気泡については除去することができない。また、そのように除去できない気泡については送液ポンプを停止させ、シリンジで吸い出す等、手動で除去する必要がある。
【0008】
したがって、本開示では脱気装置で除去しきれない気泡を、作動中の送液ポンプに侵入する前に除去する脱気機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る脱気機構は、送液ポンプにより吸引され、脱気装置を通過した液体中に含有される気泡を除去する脱気機構であって、脱気装置から液体を送液する第一送液チューブと、第一送液チューブの下流に接続され、液体中の気泡の少なくとも一部を検知し排出する気泡検知排出部と、気泡の少なくとも一部が除去された液体を気泡検知排出部から送液ポンプへ送液する第二送液チューブと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る脱気機構によれば、送液ポンプを作動させながら、脱気装置で除去しきれない気泡と、脱気装置よりも下流の領域で発生する気泡とを除去することで、例えば、プランジャーポンプ等への気泡侵入による脈動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態1に係る脱気機構を備える送液装置の構成及び動作過程を示す概略図である。
図2】本実施の形態1に係る脱気機構の気泡検知排出部の構成を示す概略図である。
図3】実施例及び比較例の実施結果を示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様に係る脱気機構は、送液ポンプにより吸引され、脱気装置を通過した液体中に含有される気泡を除去する脱気機構であって、脱気装置から液体を送液する第一送液チューブと、第一送液チューブの下流に接続され、液体中の気泡の少なくとも一部を検知し排出する気泡検知排出部と、気泡の少なくとも一部が除去された液体を気泡検知排出部から送液ポンプへ送液する第二送液チューブと、を備える。
【0013】
第2の態様に係る脱気機構は、上記第1の態様において、気泡検知排出部は、第一送液チューブから流入する液体中に含有される気泡の少なくとも一部を検知する第一気泡センサを備えてもよい。
【0014】
第3の態様に係る脱気機構は、上記第2の態様において、気泡検知排出部は、第一気泡センサと連動し、気泡を含む液体の排出を制御する切換え弁を備えてもよい。
【0015】
第4の態様に係る脱気機構は、上記第3の態様において、気泡検知排出部は、切換え弁を通過し排出される液体中の気泡を検知する第二気泡センサを備え、切換え弁は、第二気泡センサと連動して気泡を含む液体の排出を制御してもよい。
【0016】
第5の態様に係る脱気機構は、上記第1から第4のいずれかの態様において、気泡検知排出部から気泡を含む液体を排出する第三送液チューブをさらに備えてもよい。
【0017】
第6の態様に係る脱気機構は、上記第5の態様において、第三送液チューブと接続され、気泡を含む液体の排出を促進する吸引ポンプをさらに備えてもよい。
【0018】
第7の態様に係る脱気機構は、上記第5又は第6の態様において、第三送液チューブにおける気泡を含有する液体の流量は、第二送液チューブにおける気泡の少なくとも一部が除去された液体の流量の1/10以下であってもよい。
【0019】
第8の態様に係る脱気機構は、上記第1から第7のいずれかの態様において、第一送液チューブに振動を加える振動機をさらに備えてもよい。
【0020】
第9の態様に係る脱気機構は、上記第1から第8のいずれかの態様において、脱気装置は、気体透過性の脱気チューブ又は気泡トラップを用いたものであってもよい。
【0021】
第10の態様に係る脱気機構は、上記第2から第4のいずれかの態様において、第一気泡センサは、光学式センサであってもよい。
【0022】
第11の態様に係る送液装置は、上記第1から第10のいずれかの態様に係る脱気機構と、送液される液体中に含まれる気泡の一部を除去し、脱気機構と接続された脱気装置と、脱気機構と接続され、送液を駆動する送液ポンプと、を備える。
【0023】
以下、本開示の実施の形態に係る脱気機構を、添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
<送液装置>
図1は、本実施の形態1に係る脱気機構1を備える送液装置200の構成および動作過程を示す概略図である。
送液装置200は、脱気機構1と、脱気装置2と、送液ポンプ3と、を備える。脱気装置2は、送液される液体中に含まれる気泡の一部を除去し、脱気機構1の上流側に接続されている。送液ポンプ3は、脱気機構1の下流側に接続され、送液装置200における送液を駆動する。
【0025】
<脱気機構>
脱気機構1は、送液ポンプ3により吸引され、脱気装置1を通過した液体中に含有される気泡を除去する。脱気機構1は、第一送液チューブ10と、気泡検知排出部20と、第二送液チューブ30と、を備える。第一送液チューブ10によって、上流側の脱気装置2から液体を送液する。気泡検知排出部20は、第一送液チューブ10の下流に接続され、液体中の気泡の少なくとも一部を検知し排出する。第二送液チューブ30によって、気泡の少なくとも一部が除去された液体を気泡検知排出部20から下流側の送液ポンプ3へ送液する。
この脱気機構1より最上流には薬液瓶4が設置され、第四送液チューブ40を介して脱気装置2へと液体が送液される。脱気機構1は、脱気装置2より下流に続く各機器を通して気泡を除去する。ここで、脱気装置2は、従来より開示または導入されているものを使用してもよい。なお、図中の各送液チューブ10、100内の丸記号は、気泡を表現しており、矢印は気泡の移動過程を示している。
【0026】
まず、脱気装置2には、下流に液体を導く第一送液チューブ10が接続される。脱気装置2は、従来知られたものを用いることができ、例えば、気体透過性の脱気チューブ又は気泡トラップを用いたものであってもよい。気体透過性の脱気チューブを用いた脱気装置では、装置内を陰圧にすることで気体を除去する。また、気泡トラップを用いた脱気装置では、例えば、気体透過性の壁を有してもよい。
第一送液チューブ10の下流には、液体中に含まれる気泡の少なくとも一部を検知し排出する気泡検知排出部20が接続されており、該気泡検知排出部20からは、少なくとも二方向の下流に送液チューブ30、100が接続されている。
気泡検知排出部20の一つめの下流には、気泡の少なくとも一部が除去された液体が送液される第二送液チューブ30が接続され、第二送液チューブ30の下流には、送液を駆動するための送液ポンプ3が接続される。なお、送液ポンプ3の下流には第五送液チューブ50が接続され、さらに下流へと送液が続いていく。
気泡検知排出部20の二つめの下流には、排出される気泡を含有する液体を送液する第三送液チューブ100が接続され、第三送液チューブ100の下流には、排出される気泡を含有する液体を吸引する駆動力となる吸引ポンプ110が接続される。
【0027】
なお、気泡を含有する液体の第三送液チューブ100への排出による第二送液チューブ30における液体の流量低減を可能な限り抑制し、第二送液チューブ30より下流へ安定した流量を送液することが求められる。このために、吸引ポンプ110の出力は、第三送液チューブ100における液体の流量が、第二送液チューブ30における液体の流量の1/10以下であることが好ましい。このとき、吸引ポンプ110を送液ポンプ3と連動させ、送液ポンプ3による流量を自動で認識して吸引ポンプ110による流量を制御してもよい。
【0028】
また、第一送液チューブ10には振動機120を接触させてもよい。振動機120の振動により、小さい気泡を合体させることで、後述する気泡センサによる気泡の検知精度が向上する。また、気泡の合体により気泡の検知頻度が低減されることで、第二送液チューブ30への液体流量低減の頻度が抑制される。
【0029】
<気泡検知排出部>
図2は、本実施の形態1に係る脱気機構1の気泡検知排出部20の構成を示す概略図である。
気泡検知排出部20は、第一気泡センサ21と、流路22と、切換え弁23と、第二気泡センサ24と、を備える。
第一気泡センサ21は、上流に接続された第一送液チューブ10から流入する液体に対して、液体中に含有される気泡の少なくとも一部を検知する。第一気泡センサ21は、例えば、液体の透過光の強度変化から気泡を検出する光学式センサであってもよい。あるいは、液体中を伝導する超音波の強度変化から気泡を検出する超音波センサであってもよい。また、送液チューブを介した液体の静電容量の変化から気泡を検出する静電容量センサであってもよい。
【0030】
第一気泡センサ21の下流には流路22が接続され、流路22は、上流の第一気泡センサ21への流路と少なくとも2つの下流への流路とを有するもので、例えば三叉流路であってもよい。さらに、4方以上の分岐を有するものであってもよい。該流路22の一つめの下流には第二送液チューブ30が接続される。流路22の二つめの下流には、第一気泡センサ21と連動する切換え弁23が接続され、例えば、第一気泡センサ21が気泡を検知すると切換え弁23が開き、気泡を含む液体を吸引ポンプ110側の第三送液チューブ100へ排出する。
【0031】
また、切換え弁23は、下流に接続された第二気泡センサ24とも連動する。第二気泡センサ24が排出される気泡を検知すると、第三送液チューブ100への不必要な液体流出を止めるために、切換え弁23が閉じる。
【0032】
なお、吸引ポンプ110は、第一気泡センサ21及び第二気泡センサ24、または、切換え弁23と連動してもよく、例えば、切換え弁23が開いている場合は吸引を行い、切換え弁23が閉じている場合は吸引を行わないように制御してもよい。
【0033】
上記実施の形態1に係る脱気機構の送液チューブや流路22、切換え弁23の材料としては、金属や樹脂等を用いてもよく、例えば、SUS316LやPP、PFA、PTFE、ETFE、PEEK、PPS等が挙げられる。また、気泡センサとしては光学式センサ等の利用が考えられ、通過する気泡の体積が大きいほど、その検知精度は向上する。
【0034】
(実施例)
以下に、本開示の実施例を記す。
薬液瓶4としてふっ化ナトリウム(800mM)を満たしたボトルを用意し、送液ポンプ3としてダブルプランジャーポンプ(設定流量5mL/min)を用いて送液した。脱気装置2として気体透過性チューブを備え、気体透過性チューブの周囲を100hPaの真空度に保つ溶媒脱気装置を用いた。吸引ポンプ110としてシリンジポンプ(設定流量0.5mL/min)を用いた。第一送液チューブ10、第二送液チューブ30、第三送液チューブ100、第四送液チューブ40、第五送液チューブ50としてPFA材質のチューブを用いた。
【0035】
第一気泡センサ21、第二気泡センサ24として光学式センサを用い、切換え弁23として1-2方切換弁と逆流防止弁を併用した。また、流路22としてPEEK材質の3方ジョイントを用いた。ここで、1-2方切換弁は、上流に接続された送液チューブ等の一方の流路と、二方の下流の内、一方の流路のみを接続するものであり、弁の回転によりその接続流路を切換えることができる。本実施例においては、上流に第一送液チューブ10を、下流の一方には第三送液チューブ100を、下流のもう一方には逆流防止弁を接続した。これにより、第一気泡センサ21が気泡を検知せず、第二送液チューブ30側へのみ液体が流れる場合には、第一送液チューブ10と逆流防止弁が接続された状態にし、第三送液チューブ100および流路外への液体流出を抑制した(切換え弁23の閉状態)。そして、第一気泡センサ21が気泡を検知すると、1-2方切換弁を回転させることで、第一送液チューブと第三送液チューブが接続し、第三送液チューブへの液体流出を可能とした(切換え弁23の開状態)。
【0036】
振動機120として超音波発生装置を用い、送液中は出力55W、周波数33kHzで振動を加え続けた。
【0037】
送液性能を定量化するために、第二送液チューブ30が位置する気泡検知排出部20の下流、且つ、ダブルプランジャーポンプの上流に流量計を設置した。
【0038】
(比較例)
装置の配置およびダブルプランジャーポンプの設定流量は実施例と同様にした。
比較例においては、シリンジポンプと1-2方切換弁を作動させず、ダブルプランジャーポンプ側へのみ液体が送液されるようにした。
【0039】
本実施例に用いたダブルプランジャーポンプは、二つのシリンジを備えた構造を有しており、シリンジのピストン運動によって液体の吸引を駆動する。また、それぞれのシリンジが互い違いの方向にピストン運動をすることで、絶え間なく送液が行われる。しかし、気泡が侵入すると、ピストン運動は侵入した気泡を圧縮または膨張させるだけで、液体の吸引が正常に行われなくなる。そのため、気泡が侵入した場合には、設定流量に比べて実際に送液される流量は低い値となる。また、気泡のサイズが小さい等の理由により不十分ながらも液体の吸引が続く場合でも、二つのシリンジ間で吸引力に差が生まれ、脈打つような送液である脈動が発生する。そのため気泡の侵入は、設定流量に対する送液される流量の低下、あるいは、送液される流量の変動という形で判別することができる。また、気泡の侵入が抑制された場合は、気泡侵入時に比べて設定流量に近い値での送液および小さな流量変動値として反映される。
【0040】
以上のことから、実施例および比較例それぞれの流量を測定し、その平均値と標準偏差を求めることで送液の性能について評価した。なお、実施例および比較例共に送液時間は20minとした。
【0041】
図3は、実施例及び比較例の実施結果を示す表1である。実施結果について、表1を用いて説明する。
比較例ではダブルプランジャーポンプの設定流量が5mL/minであるのにたいして、平均流量が4.22mL/minとなった。これはポンプ内のピストン運動部分に気泡が侵入することで液体の吸引が阻害され、設定した流量通りに送液されなかったことを示唆している。対して、実施例においては平均流量が4.92mL/minとなり、比較例よりも安定に設定した流量が送液されたことを示している。
【0042】
さらに、流量標準偏差に着目すると、流量標準偏差が比較例では0.61mL/minであるのに対して実施例では0.02mL/minとなった。つまり、実施例では比較例よりも流量の振れ幅が小さく、脈動が低減されたと判断できる。
【0043】
以上のことから、本開示の実施の形態に係る脱気機構により、送液の安定性向上を実現できたことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示に係る脱気機構によれば、送液ポンプを作動させながら、脱気装置で除去しきれない気泡と、脱気装置よりも下流側で発生する気泡とを除去することが可能となり、例えばプランジャーポンプへの気泡侵入による脈動を抑制することができるため、フロー合成や液体クロマトグラフィーへの適用が可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 脱気機構
2 脱気装置
3 送液ポンプ
4 薬液瓶
10 第一送液チューブ
20 気泡検知排出部
21 第一気泡センサ
22 流路
23 切換え弁
24 第二気泡センサ
30 第二送液チューブ
40 第四送液チューブ
50 第五送液チューブ
100 第三送液チューブ
110 吸引ポンプ
120 振動機
200 送液装置
図1
図2
図3