IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 森村SOFCテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電気化学反応モジュール 図1
  • 特開-電気化学反応モジュール 図2
  • 特開-電気化学反応モジュール 図3
  • 特開-電気化学反応モジュール 図4
  • 特開-電気化学反応モジュール 図5
  • 特開-電気化学反応モジュール 図6
  • 特開-電気化学反応モジュール 図7
  • 特開-電気化学反応モジュール 図8
  • 特開-電気化学反応モジュール 図9
  • 特開-電気化学反応モジュール 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164480
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電気化学反応モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241120BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20241120BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241120BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241120BHJP
   C25B 9/67 20210101ALI20241120BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20241120BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241120BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/04014
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/67
C25B9/77
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079980
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 陽祐
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BB01
4K021BC05
4K021CA12
4K021DB04
4K021DC01
4K021DC03
5H126BB06
5H126EE11
5H127AA07
5H127AC15
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA37
5H127BB02
5H127BB19
5H127BB27
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】運転効率の低下を抑制する。
【解決手段】電気化学反応モジュールは、ハウジングと、単セルを複数備える電気化学反応セルスタックと、前記ハウジングの内部にガスを供給するための供給流路と、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとを連結し、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとの間でガスを流通させる連結流路と、前記ハウジングの内部に配され、ガスを加熱するための熱源と、を備え、前記複数の単セルが第1の方向に並んで配されており、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとが、前記第1の方向に対して角度をなす第2の方向に並んで配されており、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとに接続されて前記ハウジングを支持する1つまたは複数の支持部材をさらに備え、前記ハウジングの外面が、少なくとも1つの前記支持部材が接する第1領域と、前記第1領域よりも低温の第2領域と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの外部に配され、空気極と、電解質層と、燃料極とがこの順に重なっている単セルを複数備える電気化学反応セルスタックと、
前記ハウジングの内部にガスを供給するための供給流路と、
前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとを連結し、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとの間でガスを流通させる連結流路と、
前記ハウジングの内部に配され、ガスを加熱するための熱源と、
を備え、
前記複数の単セルが第1の方向に並んで配されており、
前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとが、前記第1の方向に対して角度をなす第2の方向に並んで配されている、
電気化学反応モジュールであって、
前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとに接続されて前記ハウジングを支持する1つまたは複数の支持部材をさらに備え、
前記ハウジングの外面が、
少なくとも1つの前記支持部材が接する第1領域と、
前記第1領域よりも低温の第2領域と、
を有する、
電気化学反応モジュール。
【請求項2】
前記ハウジングが複数の外面を有し、
前記複数の外面のうち一の外面が、前記第1領域と前記第2領域とを有する、
請求項1に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項3】
複数の前記支持部材を備える、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項4】
前記支持部材が絶縁性を有する、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項5】
前記電気化学反応セルスタックが、前記単セルから電気的に独立した独立部を備え、
前記支持部材が前記独立部に接している、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項6】
前記電気化学反応セルスタックが、複数の前記単セルを備える反応ブロックを備え、
前記独立部が、前記反応ブロックの外側に配されるエンドプレートであり、
前記反応ブロックと前記エンドプレートとの間に、絶縁性を有する絶縁部材が介在している、
請求項5に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項7】
前記電気化学反応セルスタックが、
前記反応ブロックの両側にそれぞれ前記絶縁部材を介して配された2つの前記エンドプレートを備え、
前記支持部材が、
前記ハウジングに接する基部と、
前記基部から延び、2つの前記エンドプレートのそれぞれに接する2つの脚部と、を備える、
請求項6に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項8】
前記複数の支持部材が、
前記第1領域に接続される第1支持部材と、
前記第2領域に接続される第2支持部材と、
を備え、
前記第2支持部材が、熱応力を緩和する応力緩和部を備えている、
請求項3に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項9】
前記応力緩和部が、屈曲部または湾曲部である、
請求項8に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項10】
前記第2領域は、前記第1領域よりも50℃以上低温である、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項11】
前記第2領域が、前記供給流路に近接した領域である、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項12】
前記ハウジングが、
前記電気化学反応セルスタックに対向する対向壁と、
前記対向壁の一端から立ち上がる第1側壁と、
前記対向壁の他端から立ち上がる第2側壁と、
を備え、
前記供給流路が前記第1側壁よりも前記第2側壁に近い位置に配置され、
少なくとも1つの前記支持部材が、前記対向壁の外面に接しており、
前記第1領域が、前記対向壁の外面のうち前記第1側壁に隣り合う領域であり、
前記第2領域が、前記対向壁の外面のうち前記第2側壁に隣り合う領域である、
請求項11に記載の電気化学反応モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、電気化学反応モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックと、この燃料電池スタックから独立して設けられるハウジングの内部に配された燃焼器および改質器と、を備える燃料電池モジュールが知られている(特許文献1参照)。燃料電池スタックとハウジングとは、発電に使用されるガスが流通する配管により接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-82468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成の燃料電池モジュールでは、ハウジングの荷重が、配管や、配管とハウジングとの接続部分に集中する。その結果、配管が変形し、ハウジングがセルスタックに近づくように傾いてしまうことが懸念される。このような事態が生じると、燃料電池スタックからハウジングへの放熱量が大きくなり、発電効率(運転効率)が低下するおそれがある。
【0005】
このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックを備えるモジュールにも共通の問題である。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックを備えるモジュールにも共通の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本明細書によって開示される電気化学反応モジュールは、ハウジングと、前記ハウジングの外部に配され、空気極と、電解質層と、燃料極とがこの順に重なっている単セルを複数備える電気化学反応セルスタックと、前記ハウジングの内部にガスを供給するための供給流路と、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとを連結し、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとの間でガスを流通させる連結流路と、前記ハウジングの内部に配され、ガスを加熱するための熱源と、を備え、前記複数の単セルが第1の方向に並んで配されており、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとが、前記第1の方向に対して角度をなす第2の方向に並んで配されている、電気化学反応モジュールであって、前記ハウジングと前記電気化学反応セルスタックとに接続されて前記ハウジングを支持する1つまたは複数の支持部材をさらに備え、前記ハウジングの外面が、少なくとも1つの前記支持部材が接する第1領域と、前記第1領域よりも低温の第2領域と、を有する。
【0007】
上記の構成によれば、支持部材によって、ハウジングが電気化学反応セルスタックに近づくように傾くことが抑制され、ハウジングと電気化学反応セルスタックとの間に十分な距離が保たれる。これにより、電気化学反応セルスタックからのハウジングへの放熱が抑制される。また、少なくとも1つの支持部材が、相対的に高温の第1領域に接していることにより、支持部材を介する電気化学反応セルスタックからのハウジングへの放熱量を小さくできる。これらにより、運転効率の低下が抑制される。
【0008】
(2)上記(1)に記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記ハウジングが複数の外面を有し、前記複数の外面のうち一の外面が、前記第1領域と前記第2領域とを有していても構わない。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に記載の電気化学反応モジュールが、複数の前記支持部材を備えていても構わない。
【0010】
このような構成によれば、支持部材が1つである場合と比較して、ハウジングと電気化学反応セルスタックとの距離が確実に保たれる。これにより、運転効率の低下が効果的に抑制される。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記支持部材が絶縁性を有していても構わない。
【0012】
支持部材が絶縁性であることにより、単セルとハウジングとの短絡を回避できる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記電気化学反応セルスタックが、前記単セルから電気的に独立した独立部を備え、前記支持部材が前記独立部に接していても構わない。
【0014】
支持部材が独立部に接していることにより、単セルとハウジングとの短絡を回避できる。これにより、支持部材の材質の選択の幅が広がる。
【0015】
(6)上記(5)に記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記電気化学反応セルスタックが、複数の前記単セルを備える反応ブロックを備え、前記独立部が、前記反応ブロックの外側に配されるエンドプレートであり、前記反応ブロックと前記エンドプレートとの間に、絶縁性を有する絶縁部材が介在していても構わない。
【0016】
エンドプレートは、絶縁部材によって単セルを備える反応ブロックから絶縁されているので、単セルとハウジングとの短絡を回避できる。これにより、支持部材の材質の選択の幅が広がる。
【0017】
(7)上記(6)に記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記電気化学反応セルスタックが、前記反応ブロックの両側にそれぞれ前記絶縁部材を介して配された2つの前記エンドプレートを備え、前記支持部材が、前記ハウジングに接する基部と、前記基部から延び、2つの前記エンドプレートのそれぞれに接する2つの脚部と、を備えていても構わない。
【0018】
このような構成によれば、支持部材が2つのエンドプレートに接しているため、支持部材が電気化学反応セルスタックの1箇所にしか接していない場合と比較して、ハウジングをより安定的に支えることができる。
【0019】
(8)上記(3)に記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記複数の支持部材が、前記第1領域に接続される第1支持部材と、前記第2領域に接続される第2支持部材と、
を備え、前記第2支持部材が、熱応力を緩和する応力緩和部を備えていても構わない。
【0020】
相対的に低温の第2領域に接続される第2支持部材には、第2領域と電気化学反応セルスタックとの温度差に起因して温度分布が生じ、相対的に高温の部分と低温の部分との熱膨張率の差によって熱応力が生じることがある。この熱応力によって第2支持部材に意図しない変形が生じると、ハウジングが電気化学反応セルスタックに近づくように傾くことが懸念される。第2支持部材が応力緩和部を備えていることにより、この熱応力が緩和されるから、第2支持部材に意図しない変形が生じ、ハウジングが電気化学反応セルスタックに近づくように傾くことが抑制される。これにより、運転効率の低下が抑制される。
【0021】
(9)上記(8)に記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記応力緩和部が、屈曲部または湾曲部であっても構わない。
【0022】
このような構成によれば、簡易な構成で応力を緩和できる。
【0023】
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の電気化学反応モジュールであって、前記第2領域は、前記第1領域よりも50℃以上低温であっても構わない。
【0024】
第2領域が、第1領域よりも50℃以上低温である場合に、上記構成を採用することが特に有効である。
【0025】
(11)上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記第2領域が、前記供給流路に近接した領域であっても構わない。
【0026】
供給流路は、熱源によって加熱される前の、常温のガスが流通する流路である。したがって、ハウジングにおいて、供給流路に近接した領域は、相対的に低温になりやすい領域(第2領域)である。少なくとも1つの支持部材が、低温の第2領域を避けて配されることによって、支持部材を介する電気化学反応セルスタックからのハウジングへの放熱量を小さくできる。これにより、運転効率の低下が抑制される。
【0027】
(12)上記(11)に記載の電気化学反応モジュールにおいて、前記ハウジングが、前記電気化学反応セルスタックに対向する対向壁と、前記対向壁の一端から立ち上がる第1側壁と、前記対向壁の他端から立ち上がる第2側壁と、を備え、前記供給流路が前記第1側壁よりも前記第2側壁に近い位置に配置され、少なくとも1つの前記支持部材が、前記対向壁の外面に接しており、前記第1領域が、前記対向壁の外面のうち前記第1側壁に隣り合う領域であり、前記第2領域が、前記対向壁の外面のうち前記第2側壁に隣り合う領域であっても構わない。
【発明の効果】
【0028】
本明細書によって開示される電気化学反応モジュールによれば、運転効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態1の燃料電池モジュールの構成ブロック図
図2】実施形態1の燃料電池モジュールの側面図
図3】実施形態1のハウジングの外箱、および支持部材を示す底面図
図4】実施形態1の燃料電池スタックの斜視図
図5】実施形態1の燃料電池スタックを図4のV-V線で切断して示す断面図
図6】実施形態1の燃料電池スタックを図4のVI-VI線で切断して示す断面図
図7】実施形態1の燃料電池スタックにおける隣り合う2つの電気化学反応単位を、図4のVII-VII線で切断して示す断面図
図8】実施形態1の燃料電池スタックにおける隣り合う2つの電気化学反応単位を、図4のV-V線で切断して示す断面図
図9】実施形態1の燃料電池スタックにおける隣り合う2つの電気化学反応単位を、図4のVI-VI線で切断して示す断面図
図10】実施形態2の燃料電池モジュールにおいて、支持部材とその周囲を拡大して示す部分拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
<実施形態1>
実施形態を、図1から図9を参照しつつ説明する。本実施形態の燃料電池モジュール10(電気化学反応モジュールの一例)は、図1図3に示すように、燃料電池スタック100(電気化学反応セルスタックの一例)と、燃料電池スタック100の外部に設けられる補助器400と、複数の支持部材500A、500Bと、複数の流路と、を備える。補助器400は、ハウジング410と、ハウジング410の内部に配される燃焼器420(熱源の一例)および改質器430と、蒸発器440と、を備える。支持部材500A、500Bは、ハウジング410と燃料電池スタック100とを接続し、ハウジング410を支持する。複数の流路は、ハウジング410に接続される空気供給配管451(供給流路の一例)と、ハウジング410と燃料電池スタック100とを繋ぐ複数の連結流路(酸化剤ガス供給配管452、酸化剤ガス排出配管453、燃料ガス供給配管463、燃料ガス排出配管464)と、を含む。なお、燃料電池スタック100および補助器400は、断熱材(図示せず)によって包囲されているとともに、燃料電池スタック100と補助器400との間にも断熱材(図示せず)が設けられている。これにより、燃料電池スタック100からの熱の放散が抑制されている。
【0032】
(燃料電池スタック100)
燃料電池スタック100は、固体酸化物を含む電解質層112を備える固体酸化物形の燃料電池に用いられる。
【0033】
燃料電池スタック100は、図4図9に示すように、発電ブロック101(反応ブロックの一例)と、第1ターミナルプレート240と、第2ターミナルプレート250と、2枚の絶縁板220(絶縁部材の一例)と、第1エンドプレート210(独立部の一例)と、第2エンドプレート270(独立部の一例)と、4つのガス通路部材280A、280Bと、を備える。第1エンドプレート210、一方の絶縁板220、第1ターミナルプレート240、発電ブロック101、第2ターミナルプレート250、他方の絶縁板220、および第2エンドプレート270は、ほぼ同じ大きさの矩形の外形を有しており、所定の配列方向(第1の方向:図5のZ軸に沿う方向)に、この順に重なって配置されている。第1エンドプレート210と発電ブロック101との間、および、第2エンドプレート270と発電ブロック101との間に、それぞれ絶縁板220が介在していることによって、第1エンドプレート210および第2エンドプレート270は、発電ブロック101から電気的に独立している。
【0034】
燃料電池スタック100は、図4に示すように、4つの角部付近に、それぞれ、第1エンドプレート210から第2エンドプレート270まで貫通するボルト孔BHを有している。各ボルト孔BHにはボルトBが挿入されている。各ボルトBの両端部にはナットNがねじ付けられている。これらのボルトBおよびナットNにより、第1エンドプレート210から第2エンドプレート270までの部材が一体に締結されている。図7に示すように、ボルトBの外径はボルト孔BHの内径よりも小さくなっており、これにより、ボルトBの外面とボルト孔BHの内面との間には空間が確保されている。図5および図6に示すように、4つのガス通路部材280A、280Bは第2エンドプレート270に接続されている。
【0035】
発電ブロック101は、図5および図6に示すように、所定の配列方向(第1の方向:図5のZ軸に沿う方向)に並んで配置された複数(本実施形態では7つ)の電気化学反応単位101U(以下、「反応単位101U」と略記することがある)によって構成される。各電気化学反応単位101Uは、単セル110を備えている。
【0036】
燃料電池スタック100は、図2に示すように、複数の反応単位101Uが水平方向(図2のZ軸に沿う方向)に並ぶ姿勢で設置されている。燃料電池スタック100の上面100Fは、発電ブロック101、第1ターミナルプレート240、第2ターミナルプレート250、2枚の絶縁板220、第1エンドプレート210、および第2エンドプレート270の側面が連なって構成される面であり、反応単位101Uの配列方向(すなわち、複数の単セル110の配列方向)に沿って延びる面である。
【0037】
(電気化学反応単位101U)
図8および図9に示すように、電気化学反応単位101Uは、単セル110と、単セル用セパレータ120と、空気極フレーム130と、燃料極フレーム140と、空気極集電部材134と、燃料極集電部材144と、2つのインターコネクタ150と、を備える。一方のインターコネクタ150、空気極フレーム130、単セル用セパレータ120、燃料極フレーム140、他方のインターコネクタ150は、ほぼ同じ大きさの矩形の外形を有しており、この順に重なって配置されている。単セル110は単セル用セパレータ120に支持され、空気極集電部材134は単セル110と一方のインターコネクタ150との間に配され、燃料極集電部材144は単セル110と他方のインターコネクタ150との間に配されている。
【0038】
図8および図9に示すように、インターコネクタ150は、隣り合う2つの反応単位101Uに共有されている。但し、図5に示すように、複数の反応単位101Uのうち一端(図5の上端)に位置する反応単位101Uは、空気極フレーム130に隣り合うインターコネクタ150を備えておらず、空気極フレーム130に第1ターミナルプレート240が重なっている。また、複数の反応単位101Uのうち他端(図5の下端)に位置する反応単位101Uは、燃料極フレーム140に隣り合うインターコネクタ150を備えておらず、燃料極フレーム140に第2ターミナルプレート250が重なっている。
【0039】
(単セル110)
単セル110は、電解質層112と、空気極114と、燃料極116と、を備える。図8および図9に示すように、空気極114と、電解質層112と、燃料極116とが、この順に重なって配されている。本実施形態の単セル110は、燃料極116によって単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114)が支持される燃料極支持形の単セルである。
【0040】
電解質層112は、矩形の平板状の部材であって、空気極114が配された一面(図8の上面)と、燃料極116が配され、一面に平行な他面(図8の下面)と、を有する。電解質層112は、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含む層である。空気極114は、電解質層112より小さい矩形の外形を有する層であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含む。燃料極116は、電解質層112と略同じ大きさの矩形の外形を有する層であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等を含む。
【0041】
(単セル用セパレータ120)
単セル用セパレータ120は、図8および図9に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔121を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120における貫通孔121の周縁部は、電解質層112の一面(空気極114が配された面:図8の上面)の周縁部に、接合部124によって接合されている。接合部124は、例えばロウ材(Agロウ)により形成されている。
【0042】
(空気極フレーム130)
空気極フレーム130は、図8および図9に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔131を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、絶縁性を有するセラミックス(マイカ等)により形成されている。
【0043】
(燃料極フレーム140)
燃料極フレーム140は、図8および図9に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔141を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。
【0044】
(インターコネクタ150)
インターコネクタ150は、矩形の板状の部材であり、例えば、金属により形成されている。
【0045】
(空気極集電部材134、および、燃料極集電部材144)
空気極集電部材134は、空気極114とインターコネクタ150とを接続する四角柱状の部材であって、空気極114とインターコネクタ150との間に複数が配置されている。各空気極集電部材134は、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。
【0046】
燃料極集電部材144は、インターコネクタ150と燃料極116とを接続する部材であって、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等の導電性材料により形成されている。燃料極集電部材144は、図7に示すように、インターコネクタ対向部146と、インターコネクタ対向部146に平行な電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備え、全体としてU字状をなしている。電極対向部145は、燃料極116に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150に接触している。電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサ149が配置されている。
【0047】
上記したように、インターコネクタ150は、隣り合う2つの反応単位101Uに共有されている。より具体的には、図8および図9に示すように、1つのインターコネクタ150は、空気極集電部材134を介して、隣り合う2つの反応単位101Uのうち一方に備えられる単セル110の空気極114に電気的に接続されており、かつ、燃料極集電部材144を介して、隣り合う2つの反応単位101Uのうち他方に備えられる単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。これにより、隣り合う2つの反応単位101U間の電気的導通が確保されている。
【0048】
但し、上述したように、複数の反応単位101Uのうち一端(図5の上端)に位置する反応単位101Uは、空気極114側のインターコネクタ150を備えていない。この反応単位101Uに備えられる空気極114は、空気極集電部材134を介して第1ターミナルプレート240に接続されている。また、複数の反応単位101Uのうち他端(図5の下端)に位置する反応単位101Uは、燃料極116側のインターコネクタ150を備えていない。この反応単位101Uに備えられる燃料極116は、燃料極集電部材144を介して第2ターミナルプレート250に接続されている。
【0049】
(空気室313および燃料室323)
図8および図9に示すように、単セル用セパレータ120および単セル110と、空気極フレーム130と、インターコネクタ150と、で区画される空間は、空気極114に面し、酸化剤ガスOGが流通する空気室313となっている。空気極フレーム130は、空気室313を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とインターコネクタ150との間をシールし、空気室313から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
【0050】
また、単セル用セパレータ120および単セル110と、燃料極フレーム140と、インターコネクタ150と、で区画される空間は、燃料極116に面し、燃料ガスFGが流通する燃料室323となっている。燃料極フレーム140は、燃料室323を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とインターコネクタ150との間をシールし、燃料室323から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
【0051】
単セル用セパレータ120により、空気室313と燃料室323とが区画され、単セル110の周辺において空気極114側から燃料極116側、または燃料極116側から空気極114側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。また、インターコネクタ150により、隣り合う反応単位101U間のガスのリークが抑制される。
【0052】
(第1エンドプレート210)
第1エンドプレート210は、例えばステンレス等の導電材料により形成されており、全体として矩形の平板状をなしている。
【0053】
(第2エンドプレート270)
第2エンドプレート270は、例えばステンレス等の導電材料により形成されており、全体として矩形の平板状をなしている。
【0054】
(第1ターミナルプレート240)
第1ターミナルプレート240は、矩形の板状の部材であり、例えばステンレス等の導電性材料により形成されている。第1ターミナルプレート240は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能する。
【0055】
(第2ターミナルプレート250)
第2ターミナルプレート250は、矩形の板状の部材であり、例えばステンレス等の導電性材料により形成されている。第2ターミナルプレート250は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0056】
(絶縁板220)
絶縁板220は、矩形の板状の部材であり、例えばマイカ、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等の絶縁性材料により形成されている。
【0057】
図5および図6に示すように、一方の絶縁板220は、第1エンドプレート210と第1ターミナルプレート240との間に挟み込まれており、他方の絶縁板220は、第2エンドプレート270と第2ターミナルプレート250との間に挟み込まれている。また、上述したように、ボルトBの外面とボルト孔BHの内面との間には空間が確保されている。これにより、第1エンドプレート210および第2エンドプレート270と、2つの絶縁板220に挟まれた部材(第1ターミナルプレート240、発電ブロック101、および第2ターミナルプレート250)とが絶縁されている。つまり、第1エンドプレート210および第2エンドプレート270は、単セル110から電気的に独立している。
【0058】
(マニホールド311、312、321、322)
図4図6に示すように、燃料電池スタック100は、発電ブロック101から第2エンドプレート270まで貫通する4つの孔を有している。4つの孔は、それぞれ、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322である。
【0059】
図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311は、燃料電池スタック100の外部から導入された酸化剤ガスOGを各反応単位101Uの空気室313に供給するガス流路である。酸化剤ガス排出マニホールド312は、各反応単位101Uの空気室313から排出された酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である。酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0060】
図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド321は、燃料電池スタック100の外部から導入された燃料ガスFGを各反応単位101Uの燃料室323に供給するガス流路である。燃料ガス排出マニホールド322は、各反応単位101Uの燃料室323から排出された燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である。
【0061】
(ガス通路部材280A、280B)
4つのガス通路部材280A、280Bのうち2つは、図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312にそれぞれ接続されるガス通路部材280Aである。2つのガス通路部材280Aは、それぞれ、絶縁シートSを介して第2エンドプレート270に接続されている。各ガス通路部材280Aは、筒状の部材であって、その内部空間は、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312にそれぞれ連通している。
【0062】
4つのガス通路部材280A、280Bのうち他の2つは、図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322にそれぞれ接続されるガス通路部材280Bである。2つのガス通路部材280Bは、それぞれ、絶縁シートSを介して第2エンドプレート270に接続されている。各ガス通路部材280Bは、筒状の部材であって、その内部空間は、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322にそれぞれ連通している。
【0063】
(補助器400)
補助器400は、原燃料ガスRFGを改質することによって得られる燃料ガスFG、および、酸化剤ガスOGとしての空気を燃料電池スタック100に供給するための装置であって、図2に示すように、燃料電池スタック100の上方に配されている。補助器400は、図1および図2に示すように、ハウジング410と、ハウジング410の内部に配される燃焼器420および改質器430と、ハウジング410の上方に配される蒸発器440と、を備える。
【0064】
なお、図1では、燃料極側のガス(原燃料ガスRFG、燃料ガスFG、および燃料オフガスFOG)の流れを一点鎖線で示し、空気極側のガス(酸化剤ガスOG、および酸化剤オフガスOOG)の流れを実線で示し、燃焼器420によって生成される排ガスEGの流れを破線で示している。
【0065】
(ハウジング410)
ハウジング410は、図1に示すように、外箱411と、外箱411よりも一回り小さく、外箱411の内側に配された内箱412と、を備える二重の容器である。外箱411および内箱412は、例えば金属製であって、密閉された箱型の容器である。内箱412の内部に改質器430と燃焼器420とが収容されている。外箱411と内箱412との間の空間は、空気流路413となっており、空気流路413の内部には、伝熱用フィン414が配されている。外箱411には、空気流路413の内部に酸化剤ガスOG(空気)を供給する空気供給配管451と、ガス通路部材280Aを介して酸化剤ガス供給マニホールド311に連通し、空気流路413の内部を通過した酸化剤ガスOGを燃料電池スタック100に供給する酸化剤ガス供給配管452と、が接続されている。内箱412には、燃焼器420によって生成される排ガスEGを蒸発器440に送り出すための排ガス中継配管481が接続されている。
【0066】
ハウジング410は、図2に示すように、燃料電池スタック100の上方に(つまり、上面100Fに対向して)配されている。すなわち、ハウジング410と燃料電池スタック100とは、複数の単セル110の並び方向(第1の方向:図2のZ軸に沿う方向)に対して垂直な方向(第2の方向:図2のX軸に沿う方向)に並んで配されている。
【0067】
図2および図3に示すように、外箱411は、燃料電池スタック100の上面100Fに対向する対向壁411Aと、対向壁411Aの一端から立ち上がる第1側壁411B(図3の右側の側壁)と、対向壁411Aの他端から立ち上がる第2側壁411C(図3の左側の側壁)と、を備えている。図3に示すように、空気供給配管451は、第1側壁411Bよりも第2側壁411Cに近い位置に配置されている。
【0068】
(蒸発器440)
蒸発器440は、改質水RWを蒸発させて水蒸気を生成し、この水蒸気を原燃料ガスRFGと混合して改質器430に供給するための装置である。蒸発器440には、改質水RWを内部に導入するための改質水供給配管471と、原燃料ガスRFGを内部に導入するための原燃料ガス供給配管461と、改質器430の内部空間に連通し、蒸発器440から改質器430へ混合ガスを供給するための混合ガス供給配管462と、改質水RWの加熱に利用された後の排ガスEGを外部に排出するための排ガス排出配管482と、が接続されている。
【0069】
(改質器430)
改質器430は、蒸発器440から供給された、水蒸気と混合された原燃料ガスRFGを改質して、水素リッチな燃料ガスFGを生成するための装置である。改質器430の内部には、改質反応を促進させる触媒が配置されていてもよい。改質器430には、ガス通路部材280Bを介して燃料ガス供給マニホールド321と連通し、燃料電池スタック100に燃料ガスFGを供給する燃料ガス供給配管463が接続されている。
【0070】
(燃焼器420)
燃焼器420は、燃料電池スタック100による発電反応に使用されずに排出された燃料オフガスFOGと酸化剤オフガスOOGとを混合して燃焼させ、排ガスEGを生成させるとともに、改質器430および燃料電池スタック100を加熱するための装置である。燃焼器420の内部には、酸化剤オフガスOOGおよび燃料オフガスFOGの燃焼を促進させる触媒が配置されていてもよい。燃焼器420には、ガス通路部材280Aを介して酸化剤ガス排出マニホールド312に連通する酸化剤ガス排出配管453と、ガス通路部材280Bを介して燃料ガス排出マニホールド322と連通する燃料ガス排出配管464と、が接続されている。
【0071】
(支持部材500A、500B)
支持部材500A、500Bは、ハウジング410の外箱411と燃料電池スタック100とに接続され、ハウジング410を支持するための部材であって、金属(例えばステンレス)製の板状の部材である。
【0072】
図3に示すように、対向壁411Aの外面411AFにおいて、第1側壁411Bに隣り合う領域は、第1領域Ar1であり、第2側壁411Cに隣り合う領域は、第2領域Ar2である。2つの支持部材500A、500Bのうち一方は、第1領域Ar1に接続される第1支持部材500Aであり、他方は、第2領域Ar2に接続される第2支持部材500Bである。
【0073】
図2に示すように、第1支持部材500Aは、対向壁411Aの外面411AFに接する平板状の基部501と、基部501から燃料電池スタック100に向かって延びる2つの脚部502と、を備えている。基部501は、燃料電池スタック100の幅(第1エンドプレート210の外面から、第2エンドプレート270の外面までの距離)と概ね等しい長さを有しており、第1エンドプレート210および第2エンドプレート270に対して垂直な向きで配されている。2つの脚部502のうち一方は、第1エンドプレート210に接しており、他方は、第2エンドプレート270に接している。第2支持部材500Bについても同様である。
【0074】
(燃料電池モジュール10の動作)
図1に示すように、空気供給配管451を通って空気流路413内に供給された酸化剤ガスOGは、燃焼器420から発生する燃焼熱によって加熱されつつ空気流路413内を流れ、酸化剤ガス供給配管452を通って酸化剤ガス供給マニホールド311に供給される。また、蒸発器440に、原燃料ガス供給配管461を通って原燃料ガスRFG(例えば都市ガス)が供給されると共に、改質水供給配管471を通って改質水RWが供給される。蒸発器440の内部では、改質水RWが蒸発することにより水蒸気が生成され、この水蒸気が原燃料ガスRFGと混合される。水蒸気と混合された原燃料ガスRFGは、混合ガス供給配管462を通って改質器430に供給され、改質器430において水蒸気改質され、その結果、水素リッチな燃料ガスFGが生成される。生成された燃料ガスFGは、燃料ガス供給配管463を通って燃料ガス供給マニホールド321に供給される。
【0075】
図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311に供給された酸化剤ガスOGは、各反応単位101Uが有する空気室313に供給される。図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド321に供給された燃料ガスFGは、各反応単位101Uが有する燃料室323に供給される。
【0076】
各反応単位101Uの空気室313に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室323に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。上記したように、インターコネクタ150は、隣り合う2つの反応単位101Uに共有されており、インターコネクタ150によって隣り合う2つの反応単位101U間の導通が確保されている。つまり、燃料電池スタック100に含まれる複数の反応単位101Uは、電気的に直列に接続されている。また、複数の反応単位101Uのうち一端(図5の上端)に位置する反応単位101Uには、第1ターミナルプレート240が電気的に接続されており、他端(図5の下端)に位置する反応単位101Uには、第2ターミナルプレート250が電気的に接続されている。これにより、燃料電池スタック100の出力端子として機能する第2ターミナルプレート250から、各反応単位101Uにおいて生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0077】
各反応単位101Uの空気室313から酸化剤ガス排出マニホールド312に排出された酸化剤オフガスOOGは、ガス通路部材280A、および酸化剤ガス排出配管453を通って燃焼器420に供給される。また、各反応単位101Uの燃料室323から燃料ガス排出マニホールド322に排出された燃料オフガスFOGは、ガス通路部材280Bおよび燃料ガス排出配管464を通って燃焼器420に供給される。酸化剤オフガスOOGおよび燃料オフガスFOGは、燃焼器420の内部で混合されて燃焼し、この時に発生する熱は、空気流路413を通過する酸化剤ガスOGと、改質器430と、燃料電池スタック100と、の加熱に利用される。また、燃焼によって生成される高温の排ガスEGは、排ガス中継配管481を通って蒸発器440へ供給され、改質水RWを加熱して水蒸気を生成させるために利用される。
【0078】
ここで、燃料電池スタック100の表面温度(約600-700℃)と比較して、ハウジング410に備えられる外箱411の表面温度(約400-500℃)は、相対的に低い。このため、燃料電池スタック100からハウジング410への放熱により燃料電池スタック100の発電効率が低下することが懸念される。これを抑制するために、ハウジング410と燃料電池スタック100との間には十分な距離が保たれることが好ましい。しかし、ハウジング410と燃料電池スタック100とを接続する連結流路(酸化剤ガス供給配管452、酸化剤ガス排出配管453、燃料ガス供給配管463、燃料ガス排出配管464)が変形し、ハウジング410が燃料電池スタック100に近づくように傾いてしまうと、ハウジング410と燃料電池スタック100との間に、放熱抑制のための十分な距離が保たれなくなるおそれがある。
【0079】
本実施形態では、支持部材500A、500Bによって、ハウジング410が燃料電池スタック100に近づくように傾くことが抑制され、ハウジング410と燃料電池スタック100との間に十分な距離が保たれる。これにより、燃料電池スタック100からハウジング410への放熱が抑制される。このような構成は、ハウジング410が燃料電池スタック100の上方に配されており、ハウジング410が自重によって下方に傾く可能性がある場合に、特に有効である。
【0080】
また、空気供給配管451は、燃焼器420によって加熱される前の、常温の酸化剤ガスOG(空気)が流通する流路である。したがって、外箱411の外面において、空気供給配管451に近い領域は、他の領域と比較して相対的に低温になりやすい。
【0081】
本実施形態では、図3に示すように、空気供給配管451が、ハウジング410の一端(第2側壁411C側)に近い位置に配置されている。このため、図3に示すように、支持部材500A、500Bが接する対向壁411Aの外面411AFにおいて、第2側壁411Cに隣り合う領域が、相対的に低温の第2領域Ar2となり、その反対側の第1側壁411Bに隣り合う領域が、相対的に高温の第1領域Ar1となる。第1支持部材500Aが、相対的に高温の第1領域Ar1に接していることにより、全ての支持部材が相対的に低温の第2領域Ar2に接している場合と比較して、支持部材500A、500Bを介する燃料電池スタック100からのハウジング410への放熱量を小さくすることができる。なお、上述のハウジング410(外箱411)の外面の温度は、燃料電池モジュール10が運転され、単セル110での反応が生じている際の温度である。
【0082】
また、燃料電池スタック100が、単セル110から電気的に独立したエンドプレート210、270を備え、支持部材500A、500Bがこれらのエンドプレート210、270に接している。これにより、支持部材500A、500Bが導電性を有する部材であったとしても、単セル110とハウジング410との短絡を回避できるため、支持部材500A、500Bとして、例えば剛性を有する金属部材等を選択することができる。また、支持部材500A、500Bのそれぞれが、2つのエンドプレート210、270に接しているため、支持部材が燃料電池スタック100の1箇所にしか接していない場合と比較して、ハウジング410をより安定的に支えることができる。
【0083】
(作用効果)
以上のように本実施形態の燃料電池モジュール10は、ハウジング410と、ハウジング410の外部に配され、空気極114と、電解質層112と、燃料極116とがこの順に重なっている単セル110を複数備える燃料電池スタック100と、ハウジング410の内部にガスを供給するための空気供給配管451と、ハウジング410と燃料電池スタック100とを連結し、ハウジング410と燃料電池スタック100との間でガスを流通させる酸化剤ガス供給配管452、酸化剤ガス排出配管453、燃料ガス供給配管463、および燃料ガス排出配管464と、ハウジング410の内部に配され、ガスを加熱するための燃焼器420と、を備える。複数の単セル110が第1の方向に並んで配されており、ハウジング410と燃料電池スタック100とが、第1の方向に対して角度をなす第2の方向に並んで配されている。燃料電池モジュール10は、ハウジング410と燃料電池スタック100とに接続されてハウジング410を支持する複数の支持部材500A、500Bをさらに備える。ハウジング410の外面411AFが、第1支持部材500Aが接する第1領域Ar1と、第1領域Ar1よりも低温の第2領域Ar2と、を有する。
【0084】
上記の構成によれば、支持部材500A、500Bによって、ハウジング410が燃料電池スタック100に近づくように傾くことが抑制され、ハウジング410と燃料電池スタック100との間に十分な距離が保たれる。これにより、燃料電池スタック100からのハウジング410への放熱が抑制される。また、少なくとも1つの支持部材500Aが、相対的に高温の第1領域Ar1に接していることにより、支持部材500A、500Bを介する燃料電池スタック100からのハウジング410への放熱量を小さくできる。これらにより、発電効率の低下が抑制される。
【0085】
第2領域Ar2が第1領域Ar1よりも50℃以上低温である場合に、上記の構成が特に有効である。
【0086】
また、燃料電池モジュール10が、複数の支持部材500A、500Bを備える。このような構成によれば、支持部材が1つである場合と比較して、ハウジング410と燃料電池スタック100との距離が確実に保たれる。これにより、発電効率の低下が効果的に抑制される。
【0087】
また、燃料電池スタック100が、複数の単セル110を備える発電ブロック101と、この発電ブロック101の外側に配されるエンドプレート210、270を備える。発電ブロック101とエンドプレート210、270との間に、絶縁性を有する絶縁板220が介在しており、これにより、エンドプレート210、270は単セル110から電気的に独立している。そして、支持部材500A、500Bがエンドプレート210、270に接している。
【0088】
支持部材500A、500Bが、単セル110から電気的に独立したエンドプレート210、270に接していることにより、支持部材500A、500Bが導電性を有する部材であったとしても、単セル110とハウジング410との短絡を回避できる。これにより、支持部材500A、500Bの材質の選択の幅が広がる。
【0089】
また、燃料電池スタック100が、発電ブロック101の両側にそれぞれ絶縁板200を介して配された2つのエンドプレート210、270を備え、支持部材500A、500Bが、ハウジング410に接する基部501と、基部501から延び、2つのエンドプレート210、270のそれぞれに接する2つの脚部502と、を備える。
【0090】
このような構成によれば、支持部材500A、500Bが2つのエンドプレート210、270に接しているため、支持部材500A、500Bが燃料電池スタック100の1箇所にしか接していない場合と比較して、ハウジング410をより安定的に支えることができる。
【0091】
また、第2領域Ar2が、空気供給配管451に近接した領域である。より具体的には、ハウジング410が、燃料電池スタック100に対向する対向壁411Aと、対向壁411Aの一端から立ち上がる第1側壁411Bと、対向壁411Aの他端から立ち上がる第2側壁411Cと、を備え、空気供給配管451が第1側壁411Bよりも第2側壁411Cに近い位置に配置され、少なくとも1つの支持部材500Aが、対向壁411Aの外面411AFに接しており、第1領域Ar1が、対向壁411Aの外面411AFのうち第1側壁411Bに隣り合う領域であり、第2領域Ar2が、対向壁411Aの外面411AFのうち第2側壁411Cに隣り合う領域である。
【0092】
空気供給配管451は、燃焼器420によって加熱される前の、常温のガスが流通する流路である。したがって、ハウジング410において、空気供給配管451に近接した領域は、相対的に低温になりやすい領域(第2領域Ar2)である。少なくとも1つの支持部材500Aが、低温の第2領域Ar2を避けて配されることによって、支持部材500A、500Bを介する燃料電池スタック100からのハウジング410への放熱量を小さくできる。これにより、発電効率の低下が抑制される。
【0093】
<実施形態2>
実施形態2を、図10を参照しつつ説明する。本実施形態の燃料電池モジュールは、2つの支持部材(第1支持部材500A、および第2支持部材510)を備え、第2支持部材510の形状が実施形態1と異なる。
【0094】
第2支持部材510は、対向壁411Aの外面411AFに接する平板状の基部501と、基部501から燃料電池スタック100に向かって延びる2つの屈曲部511(応力緩和部の一例)と、を備えている。2つの屈曲部511のうち一方は、第1エンドプレート210に接しており、他方は、第2エンドプレート270に接している。
【0095】
2つの屈曲部511は、基部501に対して角度をなして延びる連結部512と、連結部512の先端から連結部512に対して角度をなして延びる先端部513と、を備えている。一方の屈曲部511は第1エンドプレート210に接しており、他方の屈曲部511は第2エンドプレート270に接している。第1支持部材500Aは第1領域Ar1に接続されており、第2支持部材510は第2領域Ar2に接続されている。
【0096】
その他の構成は実施形態1と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
相対的に低温の第2領域Ar2に接続される第2支持部材510には、第2領域Ar2と燃料電池スタック100との温度差に起因して温度分布が生じ、相対的に高温の部分と低温の部分との熱膨張率の差によって応力が生じることがある。この熱応力によって第2支持部材510に意図しない変形が生じると、ハウジング410が燃料電池スタック100に近づくように傾くことが懸念される。
【0098】
本実施形態では、第2支持部材510が屈曲部511を備えているので、屈曲部511が、屈曲角度が変化するように変形することより、発生した応力が緩和される。これにより、第2支持部材510に意図しない変形が生じ、ハウジング410が燃料電池スタック100に近づくように傾くことが抑制され、発電効率の低下が抑制される。
【0099】
また、屈曲部511が屈曲された形状を有することにより、簡易な構成で応力を緩和できる。
【0100】
<他の実施形態>
(1)電気化学反応モジュールは、支持部材を1つのみ備えていても構わない。その場合は、その1つの支持部材が第1領域に接していればよい。電気化学反応モジュールが2つ以上の支持部材を備えている場合には、少なくとも1つの支持部材が第1領域に接していればよく、2つ以上の支持部材が第1領域に接していてもよく、全ての支持部材が第1領域に接していても構わない。
(2)支持部材が接するハウジングの外面は、電気化学セルスタックに対向する対向壁の外面でなくてもよく、例えば対向壁に対して角度をなす側壁の外面であっても構わない。
(3)電気化学反応モジュールが複数の支持部材を備えている場合には、1つの支持部材と他の支持部材とが、ハウジングの複数の外面のうち互いに異なる外面に接していても構わない。
(4)支持部材は絶縁性であってもよく、例えば、アルミナ等のセラミック部材であっても構わない。
(5)支持部材は、電気化学反応モジュールのうちエンドプレート以外の部位に接続されていても構わない。
(6)ハウジングと電気化学反応スタックの並び方向(第2の方向)は、単セルの並び方向(第1の方向)に対して垂直でなくても構わない。例えば、ハウジングの位置が電気化学反応スタックの真上からずれていても構わない。
(7)第2領域は、ハウジングの外面において第1領域が存在する面とは異なる面に存在していても構わない。
(8)応力緩和部は、応力を緩和できる形状であれば屈曲部でなくてもよく、例えば湾曲された湾曲部でも構わない。
(9)支持部材において、応力緩和部が設けられる位置は任意であり、例えば基部に設けられていても構わない。
(10)上記の構成は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池に用いられるセルスタック、あるいは、固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位を単セルとして備える電解セルスタックにも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
10:燃料電池モジュール(電気化学反応モジュール) 100:燃料電池スタック(電気化学反応セルスタック) 101:発電ブロック(反応ブロック) 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 210:第1エンドプレート(独立部) 220:絶縁板(絶縁部材) 270:第2エンドプレート(独立部) 410:ハウジング 411AF:外面(一の外面) 411A:対向壁 411B:第1側壁 411C:第2側壁 420:燃焼器(熱源) 451:空気供給配管(供給流路) 452:酸化剤ガス供給配管(連結流路) 453:酸化剤ガス排出配管(連結流路) 463:燃料ガス供給配管(連結流路) 464:燃料ガス排出配管(連結流路) 500A:第1支持部材(支持部材) 500B、510:第2支持部材(支持部材) 501:基部 502:脚部 511:屈曲部(応力緩和部) Ar1:第1領域 Ar2:第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10