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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164486
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】建築材料
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20241120BHJP
   E04C 2/28 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H05K9/00 M
E04C2/28
H05K9/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079990
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】591174368
【氏名又は名称】富山住友電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 正利
(72)【発明者】
【氏名】土田 斉
(72)【発明者】
【氏名】奥野 一樹
【テーマコード(参考)】
2E162
5E321
【Fターム(参考)】
2E162CA01
2E162CA16
2E162CA24
2E162CA27
2E162CB01
2E162CB15
2E162CB16
2E162GA02
5E321AA41
5E321BB41
5E321BB51
5E321BB53
5E321BB60
5E321GG05
5E321GG11
(57)【要約】
【課題】優れた電界遮蔽性能を有する建築材料を提供する。
【解決手段】建築材料は、三次元網目状構造の骨格を有する金属多孔体と、前記金属多孔体と一体化された第1無機材料と、を含む複合体を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元網目状構造の骨格を有する金属多孔体と、前記金属多孔体と一体化された第1無機材料と、を含む複合体を備える、建築材料。
【請求項2】
前記骨格は、ニッケル、鉄およびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の建築材料。
【請求項3】
前記第1無機材料は、石膏、ガラス材料、酸化アルミニウム、ゼオライト、セメントおよび光触媒からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【請求項4】
前記建築材料は、板状の外観を有し、
前記金属多孔体は、シート状の外観を有し、
前記複合体は、前記金属多孔体と、前記金属多孔体の気孔に充填された前記第1無機材料と、からなり、
前記建築材料は、第1層と、第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられる第3層と、を備え、
前記第1層および前記第2層は、第2無機材料からなり、
前記第3層は、前記複合体からなる、請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【請求項5】
前記第1層の平均厚さT1に対する、前記第2層の平均厚さT2の割合T2/T1は、1以上10以下である、請求項4に記載の建築材料。
【請求項6】
前記割合T2/T1は、1超である、請求項5に記載の建築材料。
【請求項7】
前記建築材料の平均厚さTAに対する、前記第3層の平均厚さT3の割合T3/TAは、0.08以上0.98以下である、請求項4に記載の建築材料。
【請求項8】
前記建築材料の平均厚さTAは、1mm以上5000mm以下である、請求項7に記載の建築材料。
【請求項9】
前記複合体の気孔率は、0.01%以上95%以下である、請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【請求項10】
前記建築材料の側面の少なくとも一部において、前記金属多孔体が露出している、請求項4に記載の建築材料。
【請求項11】
前記金属多孔体は、前記骨格の外表面により規定される複数の気孔を含み、
前記複数の気孔の平均気孔径は、10μm以上5000μm以下である、請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【請求項12】
前記金属多孔体の気孔率は、10%以上98%以下である、請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【請求項13】
前記金属多孔体の厚み1mm当たりの金属の目付量は、50g/m以上1000g/m以下である、請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【請求項14】
前記金属多孔体に電気的に接続された端子を備える、請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の用途の広がりとともに、電子機器の電波障害がより問題視されている。建築材料においても、建築物の内部に設置される電子機器の電波障害を抑制するための技術が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、石膏芯が導電性繊維を含有することを特徴とする電波吸収性石膏ボードが開示されている。特許文献1の石膏ボードは、電磁波の周波数が100MHz~200MHz以下の場合、石膏ボードの電波吸収性能が50dB~70dBである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-107479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器の精密化に伴い、建築材料においても、電界遮蔽性能の向上が望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、優れた電界遮蔽性能を有する建築材料を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の建築材料は、三次元網目状構造の骨格を有する金属多孔体と、前記金属多孔体と一体化された第1無機材料と、を含む複合体を備える、建築材料である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、優れた電界遮蔽性能を有する建築材料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、KEC法に用いられる測定系を模式的に示す図である。
図2図2は、金属多孔体の電界遮蔽性能を示すグラフである。
図3図3は、金属多孔体の電界遮蔽性能を示すグラフである。
図4図4は、金属多孔体の磁界遮蔽性能を示すグラフである。
図5図5は、金属多孔体の磁界遮蔽性能を示すグラフである。
図6図6は、実施形態1に係る建築材料の断面を模式的に示す図である。
図7図7は、実施形態1に係る建築材料の断面の他の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、本開示の一態様に係る多孔体における骨格の部分断面の概略を示す概略部分断面図である。
図9図9は、図8のA-A線断面図である。
図10図10は、実施形態1の三次元網目状構造を有する金属多孔体におけるセル部の1つに着目した拡大模式図である。
図11図11は、セル部の形状の一態様を示す模式図である。
図12図12は、セル部の形状の他の態様を示す模式図である。
図13図13は、セル部の形状の他の態様を示す模式図である。
図14図14は、接合した2つのセル部の態様を示す模式図である。
図15図15は、接合した4つのセル部の態様を示す模式図である。
図16図16は、複数のセル部が接合することによって形成された三次元網目状構造の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の建築材料は、
三次元網目状構造の骨格を有する金属多孔体と、前記金属多孔体と一体化された第1無機材料と、を含む複合体を備える、建築材料である。
【0011】
本開示によれば、優れた電界遮蔽性能を有する建築材料を提供することが可能となる。
【0012】
(2)上記(1)において、前記骨格は、ニッケル、鉄およびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。これによると、金属多孔体は更に優れた電界遮蔽性能を有することができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)において、前記第1無機材料は、石膏、ガラス系材料、酸化アルミニウム、ゼオライト、セメントおよび光触媒からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。これによると、建築材料は、第1無機材料に由来する、優れた耐火性、遮音性、調湿機能、消臭機能、吸着能などの特性を有することができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記建築材料は、板状の外観を有し、
前記金属多孔体は、シート状の外観を有し、
前記複合体は、前記金属多孔体と、前記金属多孔体の気孔に充填された前記第1無機材料と、からなり、
前記建築材料は、第1層と、第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられる第3層と、を備え、
前記第1層および前記第2層は、第2無機材料からなり、
前記第3層は、前記複合体からなってもよい。
【0015】
これによると、建築材料は、優れた電界遮蔽性能とともに、優れた耐火性、遮音性、調湿機能、消臭機能、吸着能などの特性を有することができる。
【0016】
(5)上記(4)において、前記第1層の平均厚さT1に対する、前記第2層の平均厚さT2の割合T2/T1は、1以上10以下であってもよい。これによると、建築材料の遮音性が向上する。
【0017】
(6)上記(4)または(5)において、前記割合T2/T1は、1超であってもよい。これによると、建築材料の遮音性がより向上する。
【0018】
(7)上記(4)から(6)のいずれかにおいて、前記建築材料の平均厚さTAに対する、前記第3層の平均厚さT3の割合T3/TAは、0.08以上0.98以下であってもよい。これによると、建築材料の靭性が向上する。
【0019】
(8)上記(4)から(7)のいずれかにおいて、前記建築材料の平均厚さTAは、1mm以上5000mm以下であってもよい。これによると、建築材料の耐火性および遮音性が向上する。
【0020】
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記複合体の気孔率は、0.01%以上95%以下であってもよい。これによると、複合体の遮音性能が向上する。
【0021】
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記建築材料の側面の少なくとも一部において、前記金属多孔体が露出していてもよい。これによると、金属多孔体に端子を電気的に接続することができる。
【0022】
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、
前記金属多孔体は、前記骨格の外表面により規定される複数の気孔を含み、
前記複数の気孔の平均気孔径は、10μm以上5000μm以下であってもよい。
【0023】
これによると、金属多孔体は優れた曲げ性、電界遮蔽性能および強度を有することができる。
【0024】
(12)上記(1)から(11)のいずれかにおいて、前記金属多孔体の気孔率は、10%以上98%以下であってもよい。これによると、金属多孔体を軽量化でき、かつ、金属多孔体は、優れた電界遮蔽性能および強度を有することができる。
【0025】
(13)上記(1)から(12)のいずれかにおいて、前記金属多孔体の厚み1mm当たりの金属の目付量は、50g/m以上1000g/m以下であってもよい。これによると、金属多孔体を軽量化でき、かつ、金属多孔体は、優れた電界遮蔽性能および強度を有することができる。
【0026】
(14)上記(1)から(13)のいずれかにおいて、前記金属多孔体に電気的に接続された端子を備えてもよい。金属多孔体に端子を通じて電流を流して金属多孔体を発熱させることにより、建築材料をヒータとして用いることができる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の建築材料の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0028】
本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0029】
本開示において、数値範囲下限及び上限として、それぞれ1つ以上の数値が記載されている場合は、下限に記載されている任意の1つの数値と、上限に記載されている任意の1つの数値との組み合わせも開示されているものとする。例えば、下限として、a1以上、b1以上、c1以上が記載され、上限としてa2以下、b2以下、c2以下が記載されている場合は、a1以上a2以下、a1以上b2以下、a1以上c2以下、b1以上a2以下、b1以上b2以下、b1以上c2以下、c1以上a2以下、c1以上b2以下、c1以上c2以下が開示されているものとする。
【0030】
[実施形態1:建築材料]
本開示の一実施形態(以下「実施形態1」とも記す。)に係る建築材料は、三次元網目状構造の骨格を有する金属多孔体と、前記金属多孔体と一体化された第1無機材料と、を含む複合体を備える、建築材料である。
【0031】
本開示の建築材料は、優れた電界遮蔽性能を有することができる。これは、建築材料に含まれる金属多孔体が、優れた電界遮蔽性能を有するためである。本開示の理解を深めるために、まず、金属多孔体の電磁波遮蔽性能について説明する。
【0032】
<金属多孔体の電磁波遮蔽性能>
金属多孔体の電磁波遮蔽性能について、図1図5を用いて説明する。図1は、電磁波遮蔽性能を評価するためのKEC法に用いられる測定系を模式的に示す図である。KEC法の測定システムでは、互いに対向する送信用アンテナ41と受信用アンテナ42との間に、測定試料43を挿入し、送信用アンテナ41から信号を発信し、受信用アンテナ42で信号を受信する。発信された信号量と、受信された信号量との差(dB)を測定する。本開示において、信号量の差がシールド効果を示す指標となる。
【0033】
図2および図3は金属多孔体の電界遮蔽性能を示すグラフである。図2および図3において、横軸は送信用のアンテナから発信される信号の周波数(MHz)を示し、縦軸はシールド効果(dB)を示す。図4および図5は金属多孔体の磁界遮蔽性能を示すグラフである。図4および図5において、横軸は送信用のアンテナから発信される信号の周波数(MHz)を示し、縦軸はシールド効果(dB)を示す。
【0034】
図2図5において、金属多孔体#4、金属多孔体#7、金属多孔体#8は、骨格の材質がニッケル(Ni)である、ニッケル製の金属多孔体(住友電気工業社製「セルメット」(商標))であり、平均厚さは、1.2mmである。金属多孔体#4の気孔の平均気孔径は0.85mmであり、金属多孔体の気孔率は98%である。金属多孔体#7の気孔の平均気孔径は0.51mmであり、金属多孔体の気孔率は98%である。金属多孔体#8の気孔の平均気孔径は0.45mmであり、金属多孔体の気孔率は98%である。銅板の厚さは0.4mmである。銅板は、建築材料に用いられる材料のうち、優れた電界遮蔽性能および磁界遮蔽性能を有する材料の一つである。したがって、図2図5において、金属多孔体のシールド効果が銅板のシールド効果に近いほど、金属多孔体の電界遮蔽性能および磁界遮蔽性能が高いことを示す。本開示において、電界遮蔽性能および磁界遮蔽性能を合わせて、電磁波遮蔽性能とも記す。
【0035】
図2および図3に示されるように、金属多孔体#4、金属多孔体#7および金属多孔体#8は、周波数0.0005MHz以上0.1MHz以下の低周波領域および0.1MHz超1000MHz以下の高周波領域において、銅板と同等の優れた電界遮蔽性能を有する。
【0036】
図4に示されるように、周波数0.0005MHz以上0.1MHz以下の低周波領域において、金属多孔体#4、金属多孔体#7および金属多孔体#8は、磁界遮蔽性能をほとんど示さない。しかし、図5に示されるように、周波数0.1MHz超の高周波領域において、金属多孔体#4、金属多孔体#7および金属多孔体#8は、磁界遮蔽性能を示す。特に、10MHz以上の高周波領域では、シールド効果が40dB以上であり、十分な磁界遮蔽性能を有する。
【0037】
図2および図3に示されるように、金属多孔体は、周波数0.0005MHz以上0.1MHz以下の低周波領域および0.1MHz超1000MHz以下の高周波領域において、優れた電界遮蔽性能を有する。実施形態1の建築材料は、金属多孔体を含むため、低周波領域および高周波領域において、優れた電界遮蔽性能を有することができる。
【0038】
図2および図3では、ニッケル製の金属多孔体の電界遮蔽性能が示されている。金属多孔体の骨格の材質が鉄またはコバルトであっても、金属多孔体は優れた電界遮蔽性能を有することが確認されている。金属多孔体の骨格がニッケル、鉄およびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合であっても、金属多孔体は優れた電界遮蔽性能を有することが確認されている。
【0039】
図5に示されるように、金属多孔体は、周波数0.1MHz超の高周波領域で磁界遮蔽性能を示す。特に、10MHz以上の高周波領域では、シールド効果が40dB以上であり、十分な磁界遮蔽性能を有する。実施形態1の建築材料は、金属多孔体を含むため、高周波領域において、優れた磁界遮蔽性能を有することができる。
【0040】
図5では、ニッケル製の金属多孔体の磁界遮蔽性能が示されている。金属多孔体の骨格の材質が鉄またはコバルトであっても、金属多孔体は優れた磁界遮蔽性能を有することが確認されている。金属多孔体の骨格がニッケル、鉄およびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合であっても、金属多孔体は優れた磁界遮蔽性能を有することが確認されている。
【0041】
図2図5では、金属多孔体の骨格の組成がニッケル100%、金属多孔体の厚み1mm当たりの金属の目付量がで315g/m、金属多孔体の平均気孔径が0.85mm、0.51mmまたは0.45mmであるが、実施形態1の建築材料に含まれる金属多孔体の骨格の組成および平均気孔径はこれらに限定されない。金属多孔体の骨格の組成および平均気孔径の詳細については後述する。
【0042】
<建築材料>
≪建築材料の構造≫
実施形態1の建築材料は、三次元網目状構造の骨格を有する金属多孔体と、金属多孔体と一体化された第1無機材料と、を含む複合体を備える。本開示において、金属多孔体と一体化された第1無機材料とは、金属多孔体と第1無機材料とが物理的に接して、固定されている状態を意味する。複合体は、金属多孔体と、金属多孔体と一体化された第1無機材料と、からなることができる。複合体は、本開示の効果を損なわない限り、金属多孔体および第1無機材料とともに、他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、有機系バインダーが挙げられる。
【0043】
実施形態1の建築材料の形状は、特に制限されず、建築材料として用いることのできる形状であればよい。建築材料は、例えば、板状の外観を有してもよい。板状とは、互いに対向する第1主面および第2主面を含む形状であればよい。第1主面および第2主面は、それぞれ平面でもよいし、曲面でもよいし、凹凸を有していてもよい。建築材料は、平板であっても、湾曲した板状であってもよい。
【0044】
図6に示されるように、実施形態1の建築材料50は板状の外観を有し、第1層1と、第2層2と、第1層1と第2層2との間に設けられる第3層3と、を備えてもよい。第1層1および第2層2は、第2無機材料からなり、第3層3は、複合体からなってもよい。
【0045】
図7に示されるように、実施形態1の建築材料50は、第1層1、第2層2および第3層3に加えて、更に、第1層1の第3層3と反対側の主面に設けられる第4層4、および、第2層2の第3層3と反対側の主面に設けられる第5層5の一方または両方を含んでもよい。第4層4および第5層5は、例えば、化粧板、石膏ボード用原紙、壁紙または保護フィルムとすることができる。
【0046】
複合体は、複数の金属多孔体を含んでいてもよい。複合体において、複数の金属多孔体は、各金属多孔体の主面同士が対向するように積層されていてもよい。これによると、複合体の平均厚さを大きくすることができ、建築材料の電磁波遮蔽性能が向上する。複数の金属多孔体は、各端部同士を重複させてプレスして接続されていてもよい。これによると、複合体の主面を大きくすることができる。
【0047】
実施形態1の建築材料において、第1層の平均厚さT1に対する、第2層の平均厚さT2の割合T2/T1は、1以上10以下でもよい。これによると、建築材料の遮音性が向上する。割合T2/T1の下限は、曲げ強度向上の観点から、1超でもよく、1.2以上でもよく、1.75以上でもよく、2.0以上でもよく、2.5以上でもよく、3.0以上でもよく、4.5以上でもよい。割合T2/T1の上限は、靭性向上の観点から、10以下でもよい。割合T2/T1は、1.2以上10以下でもよく、2.0以上10以下でもよい。
【0048】
実施形態1の建築材料において、建築材料の平均厚さTAに対する、第3層の平均厚さT3の割合T3/TAは、0.08以上0.98以下でもよい。これによると、建築材料の靭性が向上する。割合T3/TAの下限は、0.25以上でもよく、0.50以上でもよい。割合T3/TAの上限は、0.98以下でもよい。割合T3/TAは、0.10以上0.98以下でもよく、0.25以上0.98以下でもよく、0.50以上0.98以下でもよい。
【0049】
実施形態1の建築材料の平均厚さTAは、建築材料の用途によって適宜設定することができる。建築材料の平均厚さTAの下限は、耐火性および遮音性向上の観点から、1mm以上でもよく、9.5mm以上でもよく、12mm以上でもよく、12.5mm以上でもよく、15mm以上でもよく、21mm以上でもよい。建築材料の平均厚さTAの上限は、5000mm以下でもよい。建築材料の平均厚さTAは、1mm以上5000mm以下でもよく、9.5mm以上5000mm以下でもよい。
【0050】
実施形態1の建築材料において、第3層の平均厚さT3は、建築材料の用途によって適宜設定することができる。第3層の平均厚さT3の下限は、電磁波遮蔽性能向上の観点から、0.02mm以上でもよく、0.5mm以上でもよく、1.0mm以上でもよく、1.2mm以上でもよく、3.0mm以上でもよく、6.0mm以上でもよい。第3層の平均厚さT3の上限は、100mm以下でもよく、4mm以下でもよい。第3層の平均厚さT3は、0.02mm以上100mm以下でもよく、0.5mm以上500mm以下でもよく、1.0mm以上100mm以下でもよい。
【0051】
本開示において、建築材料の平均厚さは、以下の手順で測定される。建築材料を主面の法線に沿って切断して、断面を露出させる。断面を観察し、建築材料の厚さを測定する。厚さの測定は、任意に設定された3箇所で行う。3箇所の厚さの平均を算出する。本開示において、3箇所の厚さの平均が、建築材料の平均厚さに該当する。第1層の平均厚さ、第2層の平均厚さ、第3層の平均厚さおよび後述の金属多孔体の平均厚さも、同様の方法で測定される。
【0052】
実施形態1の建築材料の側面の少なくとも一部において、金属多孔体が露出してもよい。これによると、金属多孔体に端子を電気的に接続することができる。実施形態1の建築材料は、金属多孔体に電気的に接続された端子を備えてもよい。金属多孔体に端子を通じて電流を流して金属多孔体を発熱させることにより、建築材料をヒータとして用いることができる。
【0053】
≪複合体の気孔率≫
実施形態1の建築材料において、複合体の気孔率は、0.01%以上95%以下でもよく、1%以上90%以下でもよく、50%以上80%以下でもよい。複合体の気孔率が0.01%以上であることにより、複合体中に気孔が存在し、複合体の遮音性能が向上する。よって、該複合体を含む建築材料の遮音性能も向上する。
【0054】
本開示において、複合体の気孔とは、複合体において、金属多孔体の気孔のうち、第1無機材料が充填されていない気孔を意味する。本開示において、複合体の気孔率は次式で定義される。
複合体の気孔率[%]=(複合体の気孔の体積[cm]/複合体の体積[cm])×100
上記式において、複合体の体積とは、複合体の外観形状の体積である。
【0055】
複合体の気孔の体積および複合体の体積の測定方法は、以下の通りである。複合体の外縁からの距離が2mm以上の領域内で、X線CTにより複合体の三次元データを取得し、三次元データに基づき複合体の気孔の体積および複合体の体積を求める。X線CTの測定領域全体の体積が上記式における複合体の体積に該当する。X線CTの測定領域の大きさは、2mm以上とする。測定領域の大きさは、測定対象の大きさに応じて適宜設定することができる。
【0056】
得られた複合体の気孔の体積および複合体の体積を上記式に代入することにより、複合体の気孔率(以下「第1気孔率」とも記す。)を算出する。1つの測定対象である複合体に対して、互いに重複しない3箇所の測定領域を設定する。3箇所の測定領域のそれぞれにおいて、複合体の気孔の体積および複合体の体積を求め、複合体の第1気孔率を算出する。3箇所の測定領域の複合体の第1気孔率の平均を算出する。本開示において、3箇所の測定領域の複合体の第1気孔率の平均が、複合体の気孔率に該当する。
【0057】
≪建築材料の用途≫
実施形態1の建築材料は、壁材、床材、天井材などに用いることができる。
【0058】
<金属多孔体>
≪金属多孔体の構造≫
実施形態1の建築材料において、金属多孔体は三次元網目状構造の骨格を有する。本開示において、三次元網目状構造とは、構成する固体成分が立体的に網目状に広がっている構造を意味する。ここで、固体成分とは金属である。
【0059】
図8に示されるように、骨格は、気孔部14を有する三次元網目状構造を有する。ここで三次元網目状構造の詳細については、後述する。骨格12は、金属元素を含む骨格本体11(以下、「骨格本体11」と記載する場合がある。)、およびこの骨格本体11に囲まれた中空の内部13からなる。骨格12は、後述する支柱部およびノード部を形成している。このように骨格12は、中空であってもよい。これによると、金属多孔体は、電磁波遮蔽性能ともに、遮音性能も有する。
【0060】
図9に示されるように、骨格12は、その長手方向に直交する断面の形状が三角形であってもよい。しかし骨格12の断面形状は、これに限定されるべきではない。骨格12の断面形状は、四角形、六角形などの三角形以外の多角形であってもよい。さらに、骨格12の断面形状が円形であってもよい。ここで、本実施形態において三角形、四角形及び六角形などの多角形、並びに円形等の形状は、幾何学的な形状に限られない。例えば、本実施形態において「三角形」は、略三角形を含む概念である。他の形状についても同様である。
【0061】
骨格12は、骨格本体11に囲まれた内部13が中空の筒形状を有し、長手方向に直交する断面が三角形またはその他の多角形、あるいは円形であってもよい。骨格12が筒形状であると、骨格本体11は筒の内側面をなす内壁、および筒の外側面をなす外壁を有している。骨格12は、骨格本体11に囲まれた内部13が中空であることにより、多孔体を非常に軽量とすることができる。ただし骨格は、中空であることに限定されず、中実であってもよい。この場合、多孔体の強度を向上することができる。
【0062】
以下では、三次元網目状構造の理解を容易にするため、三次元網目状構造の構成単位をセル部20と表現して説明する。図10は、実施形態1における金属多孔体の三次元網目状構造を構成する1つのセル部の拡大模式図である。図16に示されるように、三次元網目状構造30は、複数のセル部が接合することによって形成されている。
【0063】
図10および図11に示されるように、三次元網目状構造の構成単位であるセル部20は、複数の支柱部7と複数の支柱部7を繋ぐノード部6とから構成される。したがって、三次元網目状構造は、複数の支柱部7と複数の支柱部7を繋ぐノード部6とから構成されると表現することができる。以下では、支柱部7とノード部6とを分けて説明するが、両者の明確な境界はなく、複数の支柱部7と複数のノード部6とが一体となって三次元網目状構造を構成している。以下では、支柱部7とノード部6とから構成される三次元網目状構造を骨格とも記す。以下では、理解を容易にするため、図10のセル部の形状を、図11に示される正十二面体と見做して説明する。
【0064】
複数の支柱部7および複数のノード部6は、平面状の多角形構造体であるフレーム部10を形成する。ここで、平面状の多角形とは、平面的に見た場合に多角形であることを意味する。図11では平面状の多角形構造体は正五角形であるが、平面状の多角形構造体の形状は正五角形に限定されない。平面状の多角形構造体は、三角形、四角形、六角形等、他の多角形であってもよい。フレーム部10は、複数の支柱部7と複数のノード部6とにより平面状の多角形状の孔を形成する。
【0065】
複数のフレーム部10が組み合わされて、立体状の多面体構造体であるセル部20を形成する。1個の支柱部7および1個のノード部6は、複数のフレーム部10で共有されている。ノード部6の形状は、頂点を有するようなシャープエッジの形状であってもよいし、頂点が面取りされているような平面状であってもよいし、頂点にアールが付与されたような曲面状であってもよい。図11では、立体状の多面体構造体は、十二面体であるが、立方体、二十面体(図12)、切頂二十面体(図13)等、他の多面体であってもよい。セル部20は、複数のフレーム部10のそれぞれによって規定される仮想平面Aにより囲まれた立体状の空間を形成する。
【0066】
図14図15および図16に示されるように、複数のセル部20が組み合わせられることによって三次元網目状構造30が形成される。フレーム部10は複数のセル部20で共有されている。フレーム部10は2つのセル部20で共有されていてもよい。三次元網目状構造30は、複数のフレーム部10からなると表現することもできる。三次元網目状構造30は、複数のセル部20からなると表現することもできる。実施形態1において、金属多孔体は、三次元網目状構造30を有することから、連通気孔を有することができる。
【0067】
実施形態1において、金属多孔体は、フレーム部により形成される平面状の多角形状の孔と、セル部により形成される立体状の空間とから構成される三次元網目状構造を有している。実施形態1における金属多孔体は、平面状の孔のみを有するパンチングメタルおよび焼き網等の二次元網目状構造体とは明確に区別できる。実施形態1における金属多孔体は、複数の支柱部と複数のノード部とが一体となって三次元網目状構造を形成している。そのため、構成単位である繊維同士が絡み合わされて形成された金属メッシュや不織布等のような構造体とは明確に区別できる。
【0068】
実施形態1において、三次元網目状構造は、上述の構造に限定されない。例えば、セル部20は、大きさ、平面的形状がそれぞれ異なる複数のフレーム部10によって形成されていてもよい。三次元網目状構造は、大きさ、立体的形状がそれぞれ異なる複数のセル部20によって形成されていてもよい。三次元網目状構造は、平面多角形状の孔が形成されていないフレーム部10を一部に含んでいてもよいし、立体状の空間が形成されておらず、内部が中実であるセル部20を一部に含んでいてもよい。
【0069】
≪金属多孔体の骨格の組成≫
実施形態1において、金属多孔体の骨格は、ニッケル、鉄およびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。図2図5では、金属多孔体の骨格の組成がニッケル100%、金属多孔体の厚み1mm当たりの金属の目付量が315g/mの場合の電磁波遮蔽性能を示している。金属多孔体の骨格がニッケル、鉄およびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合も、金属多孔体の電磁波遮蔽性能は、図2図5と同様の傾向を示す。すなわち、金属多孔体の骨格がニッケル、鉄およびコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合、金属多孔体は、周波数0.0005MHz以上0.1MHz以下の低周波領域および0.1MHz超1000MHz以下の高周波領域において、優れた電界遮蔽性能を有する。また、該金属多孔体は、周波数0.1MHz超の高周波領域で磁界遮蔽性能を示す。特に、10MHz以上の高周波領域では、十分な磁界遮蔽性能を有する。
【0070】
金属多孔体の骨格の組成としては、ニッケルまたはニッケル合金(ニッケルと、例えば錫、クロム、タングステン、鉄、モリブデン等との合金、スーパーマロイ(Fe-79%Ni-5%Mo))、ステンレス鋼、銅、銅合金(銅と、例えばFe、Ni、Si、Mn等との合金)等が挙げられる。
【0071】
金属多孔体の骨格は、ニッケル、ニッケル-クロム、ニッケル-コバルト、ニッケル-スズ、鉄およびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むことができる。金属多孔体の骨格は、ニッケル、ニッケル-クロム、ニッケル-コバルト、ニッケル-スズ、鉄およびモリブデンからなる群より選ばれる1種の金属からなることができる。本開示の効果を損なわない限りにおいて、金属多孔体の骨格は、上記金属に加えて、不純物を含むことができる。不純物としては、例えば、酸化物、窒化物、硫化物、塩化物、炭化物などを含む化合物や炭素が挙げられる。
【0072】
金属多孔体の骨格の組成は、ICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導結合プラズマ分析法)で測定される。
【0073】
≪金属多孔体の気孔率≫
実施形態1において、金属多孔体の気孔率は、10%以上98%以下でもよく、10%以上95%以下でもよく、50%以上90%以下でもよい。金属多孔体の気孔率が10%以上であることにより、金属多孔体を非常に軽量なものとすることができる。金属多孔体の気孔率が98%以下であることにより、金属多孔体の電磁波遮蔽性能がより向上する。さらに、金属多孔体の強度を十分なものとすることができる。
【0074】
本開示において、金属多孔体の気孔とは、金属多孔体が第1無機材料と一体化されていない状態での金属多孔体の気孔に該当する。本開示において、金属多孔体の気孔率は次式で定義される。
金属多孔体の気孔率[%]=(金属多孔体の気孔の体積[cm]/金属多孔体の体積[cm])×100
上記式において、金属多孔体の体積とは、金属多孔体の外観形状の体積である。
【0075】
金属多孔体の気孔の体積および金属多孔体の体積の測定方法は、以下の通りである。金属多孔体の外縁からの距離が2mm以上の領域内で、X線CTにより金属多孔体の三次元データを取得し、三次元データに基づき金属多孔体の気孔の体積および金属多孔体の体積を求める。X線CTの測定領域全体の体積が上記式における金属多孔体の体積に該当する。X線CTの測定領域の大きさは、2mm以上とする。測定領域の大きさは、測定対象の大きさに応じて適宜設定することができる。
【0076】
得られた金属多孔体の気孔の体積および金属多孔体の体積を上記式に代入することにより、金属多孔体の気孔率(以下「第2気孔率」とも記す。)を算出する。1つの測定対象である金属多孔体に対して、互いに重複しない3箇所の測定領域を設定する。3箇所の測定領域のそれぞれにおいて、金属多孔体の気孔の体積および金属多孔体の体積を求め、金属多孔体の第2気孔率を算出する。3箇所の測定領域の金属多孔体の第2気孔率の平均を算出する。本開示において、3箇所の測定領域の金属多孔体の第2気孔率の平均が、金属多孔体の気孔率に該当する。
【0077】
≪金属多孔体の平均気孔径≫
実施形態1において、金属多孔体は、骨格の外表面により規定される複数の気孔を含み、複数の気孔の平均気孔径(以下「金属多孔体の気孔の平均気孔径」とも記す。)は、10μm以上5000μm以下でもよく、50μm以上1000μm以下でもよく、100μm以上500μm以下でもよい。本開示において、金属多孔体の気孔の気孔径とは、骨格の外表面により規定される立体状の空間の孔径を意味する。例えば、図11に示されるように、セル部20が十二面体の場合は、正十二面体の外接球C1の直径が、金属多孔体の気孔の気孔径に該当する。本開示において、金属多孔体の気孔の気孔径は、金属多孔体が第1無機材料と一体化されていない状態での金属多孔体の気孔の気孔径に該当する。したがって、金属多孔体の気孔に第1無機材料が充填されていても、充填されている第1無機材料により気孔の大きさが減少せず、充填されている部分も金属多孔体の気孔であると見做す。
【0078】
金属多孔体の気孔の平均気孔径が100μm以上であることにより、金属多孔体の曲げ性を高めることができる。金属多孔体の気孔の平均気孔径が500μm以下であることにより、金属多孔体の電磁波遮蔽性能がより向上する。さらに、金属多孔体の強度を十分なものとすることができる。
【0079】
金属多孔体の気孔の平均気孔径の測定方法は以下の通りである。
金属多孔体の外縁からの距離が2mm以上の領域内で、X線CTにより金属多孔体の三次元データを取得する。X線CTの測定領域の大きさは、2mm以上とする。測定領域の大きさは、測定対象の大きさに応じて適宜設定することができる。三次元データに基づき、測定領域内の全ての金属多孔体の気孔径を求める。ここで、金属多孔体の気孔径とは、気孔の等体積球相当径を意味する。気孔の一部が測定視野の外側に位置する場合、該気孔は測定から除外する。測定領域内のすべての気孔の平均気孔径の平均(以下「第1平均気孔径」とも記す。)を算出する。
【0080】
1つの測定対象である複合体に対して、互いに重複しない3箇所の測定領域を設定する。3箇所の測定領域のそれぞれにおいて、第1平均気孔径を算出する。本開示において、3箇所の測定領域の金属多孔体の第1平均気孔径の平均が、金属多孔体の平均気孔径に該当する。
【0081】
上記の測定を、金属多孔体に設定された任意の3つの測定領域で行う。3つの測定領域のそれぞれにおいて気孔の第1平均気孔径を算出し、これらの平均である平均気孔径を算出する。本開示において、平均気孔径が金属多孔体の気孔の平均気孔径に該当する。
【0082】
同一の金属多孔体で測定する限り、3つの測定領域の位置を任意に選択して、測定を複数回行っても、測定結果にほとんどばらつきがないことが確認されている。
【0083】
≪金属多孔体の目付量≫
実施形態1において、金属多孔体の厚み1mm当たりの金属の目付量(以下「金属多孔体の目付量」とも記す。)は、50g/m以上1000g/m以下でもよく、100g/m以上500g/m以下でもよく、150g/m以上400g/m以下でもよい。金属多孔体の目付量が50g/m以上であると、金属多孔体の電磁波遮蔽性能がより向上する。さらに、金属多孔体の強度を十分なものとすることができる。金属多孔体の目付量が1000g/m以下であると、金属多孔体を非常に軽量なものとすることができる。
【0084】
本開示において、目付量とは、シート状の金属多孔体の主面の見かけ上の単位面積当たりの質量をいうものとする。目付量は次式で求めることができる。
目付量(g/m)=M(g)/S(m
M:金属多孔体の質量[g]
S:金属多孔体の外観の主面の面積[m
【0085】
≪金属多孔体の形状≫
実施形態1において、金属多孔体はシート状の外観を有することができる。これによると、金属多孔体は柔軟性を有し、様々な形状の建築材料に用いることができる。
【0086】
実施形態1において、金属多孔体の平均厚さは、建築材料の用途によって適宜設定することができる。金属多孔体の平均厚さの下限は、電磁波遮蔽性能の向上の観点から、0.02mm以上でもよく、0.5mm以上でもよく、3mm以上でもよい。金属多孔体の平均厚さの上限は特に制限されないが、例えば100mm以下でもよく、4mm以下でもよい。
【0087】
<無機材料>
≪第1無機材料≫
実施形態1の建築材料において、第1無機材料は金属多孔体と一体化されている。第1無機材料の材質は特に制限されず、例えば、従来の建築材料に用いられている材質を、従来の配合で用いることができる。例えば、第1無機材料は、石膏、ガラス系材料、酸化アルミニウム、ゼオライト、セメントおよび光触媒からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0088】
石膏は2分子の結晶水を有する硫酸カルシウム(CaSO・2HO)であり、二水石膏とも呼ばれる。石膏は耐火性および遮音性に優れる。よって、第1無機材料として石膏を含む建築材料は、優れた耐火性および遮音性を有することができる。
【0089】
第1無機材料の石膏の含有率は、建築材料の用途によって適宜設定することができる。第1無機材料の石膏の含有率は、例えば、1質量%以上99質量%以下でもよく、10質量%以上90質量%以下でもよく、20質量%以上80質量%以下でもよい。
【0090】
ガラス系材料としては、シラスが挙げられる。シラスは、日本で採れる火山噴出物である。シラスは、例えば、酸化ケイ素(SiO)を70質量%以上含む。シラスは、酸化ケイ素に加えて、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ナトリウム(NaO)および酸化カリウム(KO)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0091】
シラスは、耐火性および遮音性に優れる。よって、第1無機材料としてシラスを含む建築材料は、優れた耐火性および遮音性を有することができる。シラスは、更に、調湿機能および消臭機能にも優れる。よって、第1無機材料としてシラスを含む建築材料は、優れた調湿機能および消臭機能を有することができる。シラスは、コンクリートやモルタルに含まれていてもよい。
【0092】
第1無機材料のシラスの含有率は、建築材料の用途によって適宜設定することができる。第1無機材料のシラスの含有率は、例えば、1質量%以上99質量%以下でもよく、10質量%以上90質量%以下でもよく、20質量%以上80質量%以下でもよい。
【0093】
酸化アルミニウム(Al)は、耐火性に優れる。よって、第1無機材料として酸化アルミニウムを含む建築材料は、優れた耐火性を有することができる。
【0094】
第1無機材料の酸化アルミニウムの含有率は、建築材料の用途によって適宜設定することができる。第1無機材料の酸化アルミニウムの含有率は、例えば、1質量%以上99質量%以下でもよく、10質量%以上90質量%以下でもよく、20質量%以上80質量%以下でもよい。
【0095】
ゼオライトは、粘土鉱物の一種であり、アルカリまたはアルカリ土類金属を含む含水アルミノケイ酸塩である。ゼオライトは、優れた吸着能を有する。よって、第1無機材料としてゼオライトを含む建築材料は、優れた吸着能を有することができる。
【0096】
第1無機材料のゼオライトの含有率は、建築材料の用途によって適宜設定することができる。第1無機材料のゼオライトの含有率は、例えば、1質量%以上99質量%以下でもよく、10質量%以上90質量%以下でもよく、20質量%以上80質量%以下でもよい。
【0097】
本開示において、建築材料における第1無機材料の組成は、ICP分析法で測定される。
【0098】
≪第2無機材料≫
図6および図7に示されるように、実施形態1の建築材料が第1層1および第2層2を含む場合、第1層1および第2層2は、第2無機材料からなることができる。第2無機材料は、石膏、シラス、酸化アルミニウムおよびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。第1無機材料と第2無機材料とは、同一の材質であってもよいし、異なっていてもよい。
【0099】
<建築材料の製造方法>
実施形態1の建築材料の製造方法の一例について説明する。まず、金属多孔体および無機材料粉末を準備する。金属多孔体は、従来公知の金属多孔体を用いることができる。無機材料粉末としては、例えば、石膏、ガラス系材料、酸化アルミニウム、ゼオライト、セメントおよび光触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種の粉末(以下「無機材料粉末」とも記す。)を準備する。
【0100】
無機材料粉末に水を加えてスラリーとする。水を加えて成形しにくい材料の場合は、有機バインダーを加えてもよい。成形型に金属多孔体を配置し、スラリーを投入し、スラリーを固化する。これにより、金属多孔体と無機材料とが一体化された複合体を備える建築材料が得られる。成形型に予めスラリーを所定の厚さとなるように投入し、その上に金属多孔体を配置し、更にスラリーを成形型に投入してもよい。これによると、建築材料における第1層および第3層の厚さを調整することができる。
【0101】
無機材料粉末が石膏を含む場合は、成形型として、石膏ボード原紙を用いる。石膏ボード原紙の上に金属多孔体を載せた状態で、石膏ボード原紙上にスラリーを投入し、スラリーを固化する。これにより、金属多孔体と無機材料とが一体化された複合体を備える建築材料が得られる。
【実施例0102】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0103】
[建築材料の作製]
<試料1-1>
試料1-1として、平均厚さ12mmの石膏ボードを準備した。
【0104】
<試料1-2~試料1-8、試料2-1~試料2-7>
金属多孔体として、ニッケル(Ni)製の三次元網目状構造を有する金属多孔体(住友電気工業社製「セルメット」(商標))を準備した。金属多孔体の気孔の平均気孔径は0.45mmであり、金属多孔体の気孔率は98%である。各試料で用いられた金属多孔体の平均厚さT3は、表1および表2の「第3層」の「平均厚さT3」欄に記載の通りである。
【0105】
石膏粉末100質量部に水80質量部を加えてスラリーを得た。成形型に各試料の金属多孔体を配置し、スラリーを投入し、スラリーを固化した。これにより、金属多孔体と無機材料とが一体化された複合体を備える各試料の建築材料を得た。各試料の建築材料の第1層の平均厚さT1、第2層の平均厚さT2、第3層の平均厚さT3および建築材料の平均厚さTAは、表1および表2に示されるとおりである。
【0106】
<試料1-9>
ニッケル(Ni)製の三次元網目状構造を有する金属多孔体に代えて、金属メッシュを用いた以外は、試料1-8と同一の手順で建築材料を作製した。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
[評価]
<電界遮蔽性能>
各試料の建築材料について、KEC法により電界遮蔽性能を測定した。各試料の「電界遮蔽性能」を、厚さ0.5mmの銅板を用いて、同一のKEC法を行って得られた銅板の電界遮蔽性能と比較した。結果を表1および表2の「電界遮蔽性能」欄に示す。「電界遮蔽性能」欄のA~Cは、以下を意味する。
A:銅板の電界遮蔽性能の80%以上の電界遮蔽性能を示す。
B:銅板の電界遮蔽性能の50%以上80%未満の電界遮蔽性能を示す。
C:銅板の電界遮蔽性能の30%以上50%未満の電界遮蔽性能を示す。
D:銅板の電界遮蔽性能の30%未満の電界遮蔽性能を示す、または、電界遮蔽性能を示さない。
【0110】
<遮音性能評価>
各試料の建築材料について、JIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に準拠して、遮音性能を評価した。試料1-1の遮音性能を基準として、各試料の遮音性能を評価した。結果を表1および表2の「遮音性能」欄に示す。「遮音性能」欄のA~Eは、以下を意味する。
A:試料1-1に比べて、8dB以上の低減
B:試料1-1に比べて、7dB以上8dB未満の低減
C:試料1-1に比べて、6dB以上7dB未満の低減
D:試料1-1に比べて、4dB以上6dB未満の低減
E:試料1-1に比べて、3dB以上4dB未満の低減
【0111】
<考察>
試料1-2~試料1-8、試料2-1~試料2-7の建築材料は実施例に該当する。これらの建築材料は、試料1-1の建築材料よりも電界遮蔽性能が高く、かつ、防音性能も優れていることが確認された。
【0112】
試料1-9は、試料1-2~試料1-8、試料2-1~試料2-7に比べて、防音性能が劣っていることが確認された。
【0113】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
1 第1層
2 第2層
3 第3層
4 第4層
5 第5層
6 ノード部
7 支柱部
10 フレーム部
11 骨格本体
12 骨格
13 内部
14 気孔部
20 セル部
30 三次元網目状構造
41 送信用アンテナ
42 受信用アンテナ
43 測定試料
50 建築材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16