IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特開2024-164491伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法
<>
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図1
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図2
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図3
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図4A
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図4B
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図4C
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図5
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図6
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図7
  • 特開-伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164491
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01F6/06 120
H01F6/06 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079998
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 学
(72)【発明者】
【氏名】和久田 毅
(57)【要約】
【課題】超電導線が巻回されたコイル巻線において、超電導線同士の間を流れる循環電流の抑制と超電導線の効率的な伝導冷却とを両立させて、安定的な磁場を短時間で形成することが可能な伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法を提供する。
【解決手段】伝導冷却型超電導コイル1は、超電導線10がボビン2に多層のソレノイド状に巻回されたコイル巻線3を有し、コイル巻線3は、軸方向に配列した超電導線10の列と、径方向に積層された超電導線10の層とを有し、超電導線10の列同士は、融点が300℃以下である低融点金属8によって電気的および熱的に接続されており、超電導線10の層同士は、絶縁材7によって電気的に絶縁されている。伝導冷却型超電導コイルの製造方法は、コイル巻線3を形成する工程と、コイル巻線3を熱処理して、低融点金属8を溶融および凝固させる工程を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線がボビンに多層のソレノイド状に巻回されたコイル巻線を有し、前記コイル巻線が冷凍機によって熱伝導で冷却される伝導冷却型超電導コイルであって、
前記コイル巻線は、前記ボビンの軸方向に配列した複数の前記超電導線の列と、前記ボビンの径方向に積層された複数の前記超電導線の層と、を有し、
前記超電導線の列同士は、融点が300℃以下である低融点金属によって電気的および熱的に接続されており、
前記超電導線の層同士は、絶縁材によって電気的に絶縁されている伝導冷却型超電導コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記超電導線の断面形状が、円形状または楕円形状である伝導冷却型超電導コイル。
【請求項3】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記超電導線の一部または全部が、絶縁層によって被覆されていない無絶縁線である伝導冷却型超電導コイル。
【請求項4】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記低融点金属は、錫、錫合金、インジウム、インジウム合金、鉛合金、または、金合金である伝導冷却型超電導コイル。
【請求項5】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記絶縁材は、樹脂フィルム、樹脂シート、ガラスファイバシート、または、ガラス編組クロスである伝導冷却型超電導コイル。
【請求項6】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記超電導線の層よりも前記ボビンの径方向の外側、且つ、前記絶縁材よりも前記ボビンの径方向の内側に、多数の貫通孔が形成された導電性の多孔金属材が配置されている伝導冷却型超電導コイル。
【請求項7】
請求項6に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記多孔金属材は、パンチングメタル、エキスパンドメタル、または、メッシュメタルである伝導冷却型超電導コイル。
【請求項8】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記超電導線および前記低融点金属の周囲に樹脂が充填されている伝導冷却型超電導コイル。
【請求項9】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記コイル巻線は、複数本の超電導線によって形成されており、
前記ボビンの径方向の内側に配置された超電導線と、前記超電導線に対してボビンの径方向の外側に配置された次層の超電導線とが、前記低融点金属によって電気的に接続されている伝導冷却型超電導コイル。
【請求項10】
請求項1に記載の伝導冷却型超電導コイルであって、
前記超電導線の層よりも前記ボビンの径方向の外側、且つ、前記絶縁材よりも前記ボビンの径方向の内側に、多孔が形成された導電性の多孔金属材が配置されており、
前記コイル巻線の前記ボビンの軸方向の一端よりも外側に、前記冷凍機によって冷却される冷却板が配置されており、
前記多孔金属材と前記冷却板とが、互いに接触して熱的に接続されている伝導冷却型超電導コイル。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の伝導冷却型超電導コイルを備えた超電導磁石装置。
【請求項12】
超電導線がボビンに多層のソレノイド状に巻回されたコイル巻線を有し、前記コイル巻線が冷凍機によって熱伝導で冷却される伝導冷却型超電導コイルの製造方法であって、
前記ボビンの周囲に前記超電導線をソレノイド状に巻回して、前記ボビンの軸方向に複数の前記超電導線の列が配列した前記超電導線の層を形成する工程と、
前記超電導線の周囲に融点が300℃以下である低融点金属を付着させる工程と、
前記低融点金属の外側に絶縁材を配置する工程と、
前記絶縁材の周囲に前記超電導線をソレノイド状に巻回して、前記ボビンの軸方向に複数の前記超電導線の列が配列した次層の前記超電導線の層を形成すると共に、前記低融点金属の付着、および、前記絶縁材の配置を行う処理を、1回または複数回にわたって行って前記コイル巻線を形成する工程と、
前記コイル巻線を熱処理して、前記低融点金属を溶融および凝固させて、前記超電導線の列同士を、前記低融点金属を介して電気的および熱的に接続する工程と、を含む伝導冷却型超電導コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル巻線が冷凍機によって熱伝導で冷却される伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導コイルは、常電導コイルと比較して、数十倍から数百倍の電流密度の電流を通電可能であり、強い磁場を発生させることができる。また、電気抵抗がゼロで通電可能であるため、エネルギ損失を微小に抑制できる。そのため、超電導コイルは、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)装置や、NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)装置や、加速器や、単結晶シリコンの引き上げ装置等に用いられている。
【0003】
従来の超電導コイルは、主に低温超電導体で形成されており、転移温度以下への冷却には、液体ヘリウム等の冷却材が使用されてきた。低温超電導体としては、転移温度が約10Kであるニオブチタン(NbTi)が代表的である。低温超電導体は、液体ヘリウムと冷凍機との併用によって、約4Kの極低温状態に維持されるのが一般的であった。
【0004】
しかし、近年では、従来から利用されてきた天然ガス田におけるヘリウムの枯渇や、社会情勢の不安定化に伴う新規のヘリウム供給源の開発遅延等を要因として、ヘリウムの不足や高騰が進行している。このような状況下、液体ヘリウムの使用量を削減するために、冷凍機のみで超電導状態を維持可能な高温超電導体の実用化や、高温超電導体を用いた超電導コイルの製品化が進められている。
【0005】
高温超電導体としては、REBaCuO等のREBCOや、BiSrCaCu10等のBSCCOや、YBaCu等のYBCOが知られている。また、低温超電導体よりも高温で転移する物質として、二ホウ化マグネシウム(MgB)が知られている。MgBは、転移温度が約39Kと高く、豊富に存在する元素を原料とするため、実用化や普及が期待されている。
【0006】
高温超電導体やMgBは、液体ヘリウムを使用しない運用が可能であるが、従来の低温超電導体と比較して、耐ひずみ特性が劣っているという欠点がある。一般に、超電導線に絶縁被覆を施す工程や、超電導線を曲げる工程等では、超電導体にひずみが生じ易い。高温超電導体やMgBを長尺に線材化する場合や、その線材を曲げてコイル化する場合、ひずみによる損傷を受けるため、全長にわたって所定の臨界電流密度等の超電導特性を得るのが困難である。
【0007】
また、高温超電導体やMgBは、従来の低温超電導体と比較して、局所的な常電導転移の現象であるホットスポットが発生し易いという特性がある。超電導体の比熱は、従来の約4Kと比較して、約15K以上の高温領域では10倍以上となる。高温超電導体やMgBが使用される高温領域では、温度変化を生じ難くなるため、何らかの擾乱によってクエンチが起こった場合に、常電導領域が伝播しなくなる。常電導転移が局所的にしか進まず、小さい常電導領域に超電導電流が流入することになる。局所的に過大なジュール熱を生じるため、超電導線が焼損するという問題がある。
【0008】
従来、ホットスポットの発生を回避するための対策として、無絶縁コイルが提案されている。無絶縁コイルは、外周面が絶縁層で被覆されていない無絶縁線によって形成される。また、コイル状に巻回された無絶縁線同士の間には、絶縁材が介装されず、安定化材等の常電導体が配置される。例えば、特許文献1には、超電導線材間に絶縁性部材が設けられていない無絶縁領域が設けられた超電導コイルが記載されている(段落0067~0072参照)。
【0009】
無絶縁コイルでは、隣接する超電導線同士が常電導体を介して導通している。そのため、一部の超電導線にクエンチが起こったとしても、超電導線を輸送される超電導電流を、常電導転移した領域を迂回して、周辺の超電導領域に逃がすことができる。常電導転移した領域に過大なジュール熱が生じるのを防止できるため、超電導線の焼損による断線や部材の焦げ付き等を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-025014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
無絶縁コイルを採用すると、ホットスポットによる問題を回避できる可能性がある。しかし、超電導コイルには、数百アンペアにも及ぶ大電流が流される場合がある。超電導コイルに大電流が流される場合、過大なジュール熱の発生を防ぐためには、超電導線同士の接触抵抗が極めて低い構造が必要である。
【0012】
従来、超電導線同士の接触抵抗が低い構造は、超電導線同士の接触面積が確保できる場合に限定されていた。平角線等のように断面が矩形状の超電導線を用いる場合のように、超電導線の側面同士が面接触できる場合でないと、超電導線同士の接触面積を十分に大きくとることができなかった。
【0013】
また、超電導線同士の接触面積を確保できる場合であっても、伝導冷却を行う場合には、超電導線同士の接触電気抵抗だけでなく、超電導線同士の接触熱抵抗を小さくする必要がある。接触熱抵抗を小さくするためには、超電導線の側面同士を、或る程度の面圧をかけて接触させる必要がある。しかし、高温超電導体やMgBを用いる場合、これらの耐ひずみ特性が劣るため、十分な面圧をかけることが困難であった。
【0014】
また、無絶縁コイルのように、超電導線同士の接触抵抗が低い構造を採用した場合、常電導転移した領域から超電導電流を逃がすことは可能になるが、超電導電流の掃引時に、超電導線同士の間を誘導電流が流れるという問題がある。超電導コイルに超電導電流が掃引されると、超電導線の母材等に誘導電流が生じる。誘導によって超電導線同士の間に流れる循環電流は、時定数が大きい特徴がある。そのため、定格電流値に到達した後に発生磁場が安定するまでの時間が長くなるという問題を生じる。また、循環電流によるジュール熱やエネルギ損失が問題となる。
【0015】
そこで、本発明は、超電導線が巻回されたコイル巻線において、超電導線同士の間を流れる循環電流の抑制と超電導線の効率的な伝導冷却とを両立させて、安定的な磁場を短時間で形成することが可能な伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために本発明に係る伝導冷却型超電導コイルは、超電導線がボビンに多層のソレノイド状に巻回されたコイル巻線を有し、前記コイル巻線が冷凍機によって熱伝導で冷却される伝導冷却型超電導コイルであって、前記コイル巻線は、前記ボビンの軸方向に配列した複数の前記超電導線の列と、前記ボビンの径方向に積層された複数の前記超電導線の層と、を有し、前記超電導線の列同士は、融点が300℃以下である低融点金属によって電気的および熱的に接続されており、前記超電導線の層同士は、絶縁材によって電気的に絶縁されている。また、超電導磁石装置は、前記の伝導冷却型超電導コイルを備える。
【0017】
また、本発明に係る伝導冷却型超電導コイルの製造方法は、超電導線がボビンに多層のソレノイド状に巻回されたコイル巻線を有し、前記コイル巻線が冷凍機によって熱伝導で冷却される伝導冷却型超電導コイルの製造方法であって、前記ボビンの周囲に前記超電導線をソレノイド状に巻回して、前記ボビンの軸方向に複数の前記超電導線の列が配列した前記超電導線の層を形成する工程と、前記超電導線の周囲に融点が300℃以下である低融点金属を付着させる工程と、前記低融点金属の外側に絶縁材を配置する工程と、前記絶縁材の周囲に前記超電導線をソレノイド状に巻回して、前記ボビンの軸方向に複数の前記超電導線の列が配列した次層の前記超電導線の層を形成すると共に、前記低融点金属の付着、および、前記絶縁材の配置を行う処理を、1回または複数回にわたって行って前記コイル巻線を形成する工程と、前記コイル巻線を熱処理して、前記低融点金属を溶融および凝固させて、前記超電導線の列同士を、前記低融点金属を介して電気的および熱的に接続する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、超電導線が巻回されたコイル巻線において、超電導線同士の間を流れる循環電流の抑制と超電導線の効率的な伝導冷却とを両立させて、安定的な磁場を短時間で形成することが可能な伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る超電導コイルを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る超電導コイルの要部の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る超電導コイルの製造方法の一例を示す図である。
図4A】超電導コイルに用いる多孔金属材の形態例を示す図である。
図4B】超電導コイルに用いる多孔金属材の形態例を示す図である。
図4C】超電導コイルに用いる多孔金属材の形態例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る超電導コイルの要部の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る超電導コイルの製造方法の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る超電導コイルの要部の一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る超電導コイルの接続部を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る伝導冷却型超電導コイル、超電導磁石装置および伝導冷却型超電導コイルの製造方法について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る超電導コイルを模式的に示す断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る超電導コイルの要部の一例を示す図である。図1には、本実施形態に係る伝導冷却型超電導コイルの断面のうち、コイルの中心軸に対する片側のみを図示している。図1の一点鎖線は、コイルおよびボビンの中心軸を示す。図1の矢印は、巻線の方向の一例を示す。図2には、図1の破線で囲まれたA領域が拡大して示されている。
【0022】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る超電導コイル1は、ボビン2と、超電導線10が巻回されたコイル巻線3と、冷却板4と、コイル絶縁材5と、多孔金属材6と、層間絶縁材7と、低融点金属層8と、樹脂層9と、を備えている。
【0023】
超電導コイル1は、超電導線10が巻回されたコイル巻線3が冷凍機によって熱伝導で冷却される伝導冷却型の超電導コイルである。超電導コイル1は、不図示のクライオスタットに格納されて、冷凍機が熱的に接続される。超電導コイル1は、冷凍機によってコイル巻線3を超電導転移温度以下に冷却し、コイル巻線3に超電導電流を流すことによって、超電導磁石装置として使用できる。
【0024】
超電導コイル1を用いた超電導磁石装置は、オープン型、トンネル型等のMRI装置や、NMR装置や、偏向磁石、収束磁石等を備えた加速器や、単結晶シリコン等の磁石式引き上げ装置等に備えることができる。超電導コイル1は、伝導冷却型であるため、液体ヘリウム等の冷却材を使用しない運用や、冷却材の使用量を削減した運用が可能である。
【0025】
なお、本明細書において、熱的に接続するとは、対象となる部材同士を、空間を実質的に挟むことなく直接的または間接的に接触させて、部材中の熱伝導や部材間の熱伝達による効率的な伝熱が可能な構造を形成することを意味する。部材同士を間接的に接触させる場合、対象となる部材同士の間には、熱伝導率が高い一つまたは複数の高熱伝導部材を挟むことができる。
【0026】
ボビン2は、コイル巻線3を保持するための筒である。ボビン2は、無酸素銅等の銅材料で形成できる。図1において、ボビン2は、円筒状の本体部と、本体部よりも大径のフランジ部とを備えている。フランジ部は、本体部の軸方向の一端側に設けられている。本体部の軸方向の他端側には、冷却板4が配置されている。
【0027】
コイル巻線3は、超電導線10がボビン2に多層のソレノイド状に巻回されることによって形成されている。超電導線10は、例えば、ボビン2の本体部の外周面に対して、整列巻きで巻回できる。超電導線10が巻回されたコイル巻線3は、ボビン2のフランジ部と冷却板4との間に挟まれるように配置されて、ボビン2のフランジ部や冷却板4と熱的に接続される。
【0028】
なお、図1の例では、超電導線10の層を8層記載している。超電導線10の直径を1ピッチとすると、図1では、奇数目の層(1層目・3層目・5層目・・・)と偶数目の層(2層目・4層目・6層目)の各層が同一のピッチ(同一の位相)で径方向に積層されているが、奇数目の層と偶数目の層のピッチ(位相)を1/2ピッチずらした整列巻きで積層してもよい。1/2ピッチずらした場合は、半径方向の寸法を小さくできる。
【0029】
冷却板4は、コイル巻線3と冷凍機との間を熱的に接続する。冷却板4は、無酸素銅等の銅材料や、アルミニウム材料等で形成できる。図1において、冷却板4は、ボビン2のフランジ部と同様に円板状に設けられている。冷却板4は、ボビン2のフランジ部と対向するように、ボビン2の本体部の軸方向の片側であって、コイル巻線3のボビン2の軸方向の一端よりも外側に設けられている。冷凍機は、冷却板4の外周面や上面等と熱的に接続できる。
【0030】
コイル絶縁材5は、コイル巻線3と他の部材とを電気的に絶縁するための絶縁材である。図1において、コイル絶縁材5は、コイル巻線3とボビン2のフランジ部との間、コイル巻線3とボビン2の本体部との間、および、コイル巻線3と冷却板4との間に、それぞれ、層状に介装されている。
【0031】
コイル絶縁材5は、電気抵抗率が高い絶縁材料によって部材間の伝熱を妨げない程度の厚さに形成される。コイル絶縁材5としては、樹脂フィルム、樹脂シート、ガラスファイバを成形したガラスファイバシート、ガラス編組を製織したガラスクロス等を用いることができる。樹脂としては、ポリイミド、耐熱性エポキシ樹脂等の絶縁樹脂を用いることができる。
【0032】
図1および図2において、超電導線10は、丸線として設けられている。丸線としては、断面形状が円形状の線材を用いてもよいし、断面形状が楕円形状の線材を用いてもよい。丸線は、任意の真円度や、任意の偏平率に設けることができる。コイル巻線3は、全長の主要部が丸線に設けられることが好ましいが、一部が丸線以外の断面形状に設けられてもよい。
【0033】
一般に、丸線は、超電導線同士が隣接したときに、超電導線の側面同士が線接触する形状である。そのため、丸線は、側面同士が面接触する平角線やテープ線等と比較して、超電導線同士の接触電気抵抗や接触熱抵抗が大きい超電導線となる。超電導線同士の間を循環する循環電流は抑制されるが、超電導線同士の間における伝熱性や、部分的にクエンチが起こった場合に超電導電流を逃がす観点からは不利となる。
【0034】
これに対し、本実施形態に係る超電導コイル1では、低融点金属を用いることによって超電導線同士の接触電気抵抗や接触熱抵抗が小さくなるため、丸線の超電導線10を採用できる。超電導線10が丸線であると、製造工数や製造コストを削減できる点や、異方性が低減する点や、押し出しや引き抜き等の伸線加工による製造が可能になる点で有利な場合がある。
【0035】
図1に示すように、コイル巻線3は、超電導線10が多層のソレノイド状に巻回されることによって、ボビン2の軸方向に配列した複数の超電導線10の列と、ボビン2の径方向に積層された複数の超電導線10の層と、を有している。超電導線10の各列は、ボビン2の径方向に沿って延びている。超電導線10の各層は、ボビン2の軸方向に沿って延びている。図1においては、計12列で計8層のコイル巻線3が形成されている。
【0036】
超電導線10は、図1に矢印で示されるように、次の手順で巻回できる。はじめに、超電導線10を、ボビン2の軸方向の上端から下端に向けて、ボビン2の周囲にソレノイド状に巻回する。ボビン2の軸方向の下端に到達すると、巻き径を拡大して、下端の超電導線10の周囲に巻回する。その後、逆向きに折り返し、ボビン2の軸方向の下端から上端に向けて、既に巻回されている前層の超電導線10の周囲にソレノイド状に巻回する。
【0037】
同様に、ボビン2の軸方向の上端に到達すると、巻き径を拡大して、上端の超電導線10の周囲に巻回する。その後、逆向きに折り返し、ボビン2の軸方向の上端から下端に向けて、既に巻回されている前層の超電導線の周囲にソレノイド状に巻回する。このような巻回を繰り返すことによって、超電導線10が多層のソレノイド状に巻回されたコイル巻線3を形成できる。
【0038】
なお、超電導線10は、ボビン2の軸方向の一端側および他端側のうち、いずれの末端から超電導線10を巻き始めてもよい。また、コイル巻線3は、長尺の1本の超電導線10によって形成されているが、コイル巻線3は、1本の超電導線10で形成されてもよいし、複数本の超電導線10で形成されてもよい。コイル巻線3は、任意の列数や任意の層数に設けることができる。また、コイル巻線3は、層毎に列数が変更されてもよい。
【0039】
図2に示すように、コイル巻線3は、多孔金属材6と、層間絶縁材7と、低融点金属層8と、樹脂層9とが、超電導線10に対して複合化されることによって形成されている。多孔金属材6および層間絶縁材7は、超電導線10の層同士の間に配置されている。低融点金属層8および樹脂層9は、層間絶縁材7と多孔金属材6とに挟まれた各層において、超電導線10の周囲の空間に充填されている。
【0040】
超電導線10は、超電導フィラメント11と、母材12とによって形成されている。図2において、超電導線10は、複数の超電導フィラメント11を備えた多芯線構造に設けられている。多芯線構造によると、冗長化による安定化や交流損失の低減が図られる。但し、超電導線10は、単芯線構造に設けられてもよい。超電導フィラメント11は、周囲を母材12によって覆われる限り、任意の本数や任意の配置に設けることができる。
【0041】
超電導フィラメント11は、所定の転移温度以下で超電導転移可能な超電導体によって形成される。超電導フィラメント11には、超電導転移可能な超電導体と共に、磁束ピン止めのための不純物等が含まれてもよい。超電導フィラメント11の材料としては、二ホウ化マグネシウム(MgB)や、REBCO、BSCCO、YBCO等の高温超電導体を用いることができる。
【0042】
母材12は、良導体である常電導体で形成される。母材12は、超電導線10を支持するマトリクスを形成するだけでなく、安定化材、バッファ材、バリア材等の機能を有してもよい。母材12の材料としては、銅、アルミニウム、鉄、ニオブ、銀、ニッケルや、これらの合金等を用いることができる。母材12が良導体であると、クエンチが起こったときに、超電導フィラメント11を流れる超電導電流を、周囲の超電導フィラメント11や周囲の超電導線10に容易に逃がすことができる。
【0043】
図2に示すように、超電導線10は、外周面が絶縁層によって被覆されていない無絶縁線として設けられている。従来の超電導線は、外周面にエナメル等の絶縁材料が塗布されており、外周面が絶縁層によって被覆されて絶縁された構造に設けられている。これに対し、超電導線10が無絶縁線であると、超電導線10同士の接触電気抵抗が小さくなるため、クエンチが起こったときに、超電導フィラメント11を流れる超電導電流を周囲に逃がすことができる。
【0044】
なお、図1および図2においては、コイル巻線3を形成する超電導線10の全部が、無絶縁線として設けられているが、コイル巻線3を形成する超電導線10の一部のみが、無絶縁線として設けられてもよい。外周面が絶縁層によって被覆されていない超電導線10は、ホットスポットが発生し易い領域等のように、コイル巻線3の一部のみに配置することもできる。
【0045】
ホットスポットが発生し易い領域としては、コイル巻線3のうち、曲げ半径が小さいボビン2の径方向の内側の領域や、磁束が集中し易い点で、超電導線10が次層に移行するボビン2の軸方向の一端側または他端側の領域等が挙げられる。一部のみを無絶縁線とすると、ホットスポットの発生を効率的に抑制しつつ、超電導線10同士の間を循環する循環電流による損失を低減できる。
【0046】
一般に、MgBや高温超電導体は、従来の超電導体よりも高い温度で超電導転移するため、従来の超電導体よりも比熱が大きい状態で用いられる。比熱が大きいと、超電導体にひずみ等の擾乱が加わってクエンチが起こったときに、常電導転移によって生じた常電導領域が周囲に伝搬し難くなり、ホットスポットが発生し易くなる。
【0047】
ホットスポットは、超電導体の一部が局所的に常電導転移を起こして、超電導領域中に局所的な常電導領域を生じる現象である。超電導線にホットスポットが発生すると、局所的に生じた常電導領域に超電導電流が流入して、大きなジュール熱が生じる。局所的に過大なジュール熱が発生するため、超電導線が焼損して、断線や周囲の部材の焼き付き等が起こるという問題がある。
【0048】
超電導線の側面同士の接触電気抵抗が小さければ、常電導領域に流入した超電導電流を逃がすことができるため、ホットスポットによる問題を防止できる。しかし、超電導線が無絶縁線であっても、超電導線が丸線である場合には、超電導線の側面同士の接触面積が確保され難いため、側面同士の接触電気抵抗を十分に小さくすることが困難であり、数百アンペアにも及ぶ超電導電流を、常電導領域を迂回させて周囲の超電導領域に逃がすことができない。
【0049】
その一方で、超電導線の側面同士の接触面積を確保して、側面同士の接触電気抵抗を小さくすると、発生磁場の緩和時間の長期化やエネルギ損失が問題となる。超電導線同士の接触電気抵抗が小さいと、超電導電流の掃引時に、超電導線の母材等に誘導電流が生じて、超電導線同士の間を循環する循環電流が発生し易くなる。循環電流は、時定数が大きい特徴がある。そのため、定格電流値に到達した後に発生磁場が安定するまでの緩和時間が長くなり、安定的な運転の開始までに数時間かかるという問題がある。また、循環電流によるジュール熱やエネルギ損失が問題となる。
【0050】
また、超電導線10の側面同士の接触面積を確保して、側面同士の接触電気抵抗を小さくしたとしても、側面同士の接触熱抵抗が十分に小さくならない場合がある。コイル巻線3を伝導冷却する場合、側面同士の接触熱抵抗を小さくする必要がある。しかし、接触熱抵抗を小さくするためには、或る程度の面圧をかけた接触が必要になる。MgBや高温超電導体を用いる場合、これらの耐ひずみ特性が劣るため、適切な面圧を確保できないという問題がある。
【0051】
そこで、超電導コイル1では、超電導線10の列同士の間に、低融点金属を充填して低融点金属層8を設けるものとする。超電導線10の列同士の間に低融点金属を充填すると、隣接する超電導線10同士を低融点金属と共に一体化させて、超電導線10同士や超電導線10と周辺の部材とを電気的および熱的に接続できる。そのため、超電導線10同士の接触電気抵抗および接触熱抵抗を従来よりも低減できる。
【0052】
低融点金属層8を設けると、超電導線10同士の接触電気抵抗が低減するため、クエンチが起こったときに、コイル巻線3を流れる超電導電流を、常電導領域を迂回させて周囲の超電導領域に逃がすことが可能になる。超電導電流を逃がす伝導パスが形成されるため、ホットスポットの発生が抑制されて、超電導電流が常電導領域を流れることによる過大なジュール熱の発生が防止される。そのため、超電導線10の焼損を回避できる。また、超電導線10同士の接触熱抵抗が低減するため、超電導線10のひずみを抑制しつつ、コイル巻線3を効率的に伝導冷却できる。
【0053】
また、低融点金属層8を設ける場合、超電導線10同士の間を循環する循環電流が発生し易くなるが、循環電流による発生磁場の緩和時間の長期化や、循環電流によるジュール熱やエネルギ損失については、超電導線10の層同士の間に層間絶縁材7を配置することによって抑制できる。低融点金属層8および層間絶縁材7によって、ホットスポットへの対策と、循環電流への対策とを両立させることができる。
【0054】
多孔金属材6は、超電導線10の列同士や超電導線10の列と冷却板4とを熱的に接続する。多孔金属材6は、超電導線10の層同士の間に、ボビン2の軸方向に沿って層状に配置される。多孔金属材6は、超電導線10の各層同士の間において、内側の超電導線10の層よりもボビン2の径方向の外側、且つ、層間絶縁材7よりもボビン2の径方向の内側に配置される。
【0055】
多孔金属材6は、シート状に設けられており、主面を厚さ方向に貫通する多数の貫通孔が形成されている。多孔金属材6は、電気伝導率が高い導電材料によって導電性に形成される。多孔金属材6としては、パンチングメタル、エキスパンドメタル、メッシュメタル等を用いることができる。多孔金属材6の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0056】
多孔金属材6は、冷却板4やボビン2のフランジ部と互いに接触して熱的に接続されることが好ましい。多孔金属材6と冷却板4やボビン2のフランジ部とは、所定以上の面圧をかけて接触した状態とされることが好ましい。多孔金属材6と周辺の部材との間に圧縮する方向に面圧をかけると共に、多孔金属材6として電気伝導率が高い導電材料を用いると、多孔金属材6による熱伝導を利用した超電導線10の効率的な冷却が可能になる。
【0057】
多孔金属材6を設けると、超電導線10の列同士や超電導線10の列と冷却板4とが熱的に接続されるため、超電導線10を効率的に伝導冷却できる。また、クエンチが起こったときに、超電導線10にシュール熱が生じたとしても、冷却板4に向けて効率的に放熱できるため、超電導コイル1の温度上昇を抑制できる。また、多孔金属材6は、低融点金属層8の形成時に溶融状態の低融点金属を保持する機能がある。
【0058】
層間絶縁材7は、超電導線10の層同士を電気的に絶縁する。層間絶縁材7によると、超電導線10の層同士の間を循環する循環電流を抑制できる。層間絶縁材7は、超電導線10の層同士の間に、ボビン2の軸方向に沿って層状に配置される。層間絶縁材7は、超電導線10の各層同士の間において、多孔金属材6よりもボビン2の径方向の外側、且つ、外側の超電導線10の層よりもボビン2の径方向の内側に配置される。
【0059】
層間絶縁材7は、電気抵抗率が高い絶縁材料によって形成される。層間絶縁材7としては、樹脂フィルム、樹脂シート、ガラスファイバを成形したガラスファイバシート、ガラス編組を製織したガラスクロス等を用いることができる。樹脂としては、ポリイミド、耐熱性エポキシ樹脂等の絶縁樹脂を用いることができる。
【0060】
層間絶縁材7を設けると、超電導線10の層同士が電気的に絶縁されるため、伝導パスの断面積を縮小させて、超電導線10の層同士の間における電気抵抗を増加させることができる。そのため、超電導線10同士の間を循環する循環電流の時定数を小さくすることができる。よって、定格電流値に到達した後に発生磁場が安定するまでの緩和時間を短縮して、超電導コイル1を短時間で始動できる。また、クエンチ時の超電導電流を逃がす伝導パスを形成しつつ、循環電流によるジュール熱やエネルギ損失を抑制できる。
【0061】
低融点金属層8は、超電導線10の列同士や超電導線10の列と周辺の部材とを電気的および熱的に接続する。低融点金属層8は、融点が300℃以下である低融点金属によって形成される。低融点金属層8は、超電導線10の巻回中に、低融点金属を超電導線10の層の周囲に付着させた後、低融点金属を溶融させて超電導線10の周囲の空間に充填してから、溶融した低融点金属を凝固させることによって形成される。
【0062】
図2において、低融点金属層8は、超電導線10の各層同士の間において、超電導線10の外周面よりもボビン2の径方向の外側、且つ、多孔金属材6よりもボビン2の径方向の内側に配置されている。図2に示すような低融点金属層8は、低融点金属を含むソルダーペースト等の流動体材料を、超電導線10の各層の外側面のみに塗布することによって形成できる。
【0063】
低融点金属層8は、図2に示すように、超電導線10の周囲の空間に充填されて、少なくとも超電導線10の列同士の間におけるボビン2の径方向の外側に形成される。超電導線10の列同士の間に低融点金属を充填すると、超電導線10の層同士を層間絶縁材7によって絶縁しつつ、超電導線10の列同士を低融点金属層8によって電気的および熱的に接続できる。同じ列を構成する超電導線10の近くの区間同士が、電気的および熱的に接続されるため、ホットスポットへの対策と、循環電流への対策とを効率的に両立できる。
【0064】
低融点金属層8は、融点が300℃以下であり、且つ、電気伝導率が高い良導体である低融点金属によって形成できる。融点が300℃以下であると、比較的低い温度で溶融させて、超電導線10の周囲の空間に充填できる。そのため、周囲の部材に対して隙間なく電気的および熱的に接続できると共に、周囲の部材、特にコイル絶縁材5や層間絶縁材7について、高温による熱分解や焦げ付きを回避できる。また、MgBを用いる場合に、500℃以上の高温で起こる意図しないMgBの生成反応を回避できる。
【0065】
低融点金属8の材料としては、錫、インジウムや、錫、インジウム、鉛、金、銀、銅、ニッケル、アンチモン、ビスマスのうちの一種以上を含む錫合金、インジウム合金、鉛合金、金合金等の多元合金を用いることができる。合金の具体例としては、錫-鉛合金、錫-アンチモン合金、錫-ビスマス合金、錫-銅合金、錫-インジウム合金、錫-銀合金、錫-金合金、鉛-銀合金、錫-鉛-アンチモン合金、錫-鉛-ビスマス合金、錫-鉛-銅合金、錫-鉛-銀合金、錫-銀-銅合金、金-鉛合金等が挙げられる。
【0066】
樹脂層9は、超電導線10同士や超電導線10と周辺の部材とを熱的に接続する。樹脂層9は、エポキシ樹脂等の樹脂材料によって形成される。樹脂層9は、低融点金属層8が形成された超電導コイル1を樹脂に含浸させて、樹脂を超電導線10および低融点金属層8の周囲の空間に充填してから、樹脂を硬化させることによって形成できる。熱硬化性樹脂を充填することによって、熱処理による硬化が可能である。
【0067】
樹脂層9は、図2において、超電導線10の各層同士の間において、層間絶縁材7よりもボビン2の径方向の外側、且つ、超電導線10の外周面よりもボビン2の径方向の内側に配置されている。樹脂層9は、超電導線10の周囲の空間に加え、ボビン2と他の部材との隙間や、冷却板4と他の部材との隙間等、超電導コイル1の内部の空隙に充填することができる。
【0068】
樹脂層9を設けると、超電導線10の周囲の空間に樹脂が充填されて、コイル巻線3の内部の空隙が低減するため、コイル巻線3の伝熱性を向上できる。また、樹脂層9によって超電導線10が固定されるため、クエンチの要因となる超電導線10のひずみを低減できる。また、電気抵抗率が高い樹脂を用いることによって、超電導線10同士の間を循環する循環電流を抑制できる。
【0069】
このような超電導コイル1によると、超電導線10の列同士が低融点金属によって電気的および熱的に接続されると共に、超電導線10の層同士が絶縁材によって電気的に絶縁されるため、ホットスポットの発生を抑制すると共に、超電導線同士の間を循環する循環電流を抑制できる。そのため、ホットスポットによる超電導線10の焼損を防止すると共に、循環電流による発生磁場の緩和時間の長期化や、循環電流によるジュール熱やエネルギ損失を低減できる。また、低融点金属や多孔金属材によって、ボビン2の軸方向における除熱性を向上できる。また、超電導線10の列同士の接触電気抵抗や接触熱抵抗が低減するため、超電導線10として丸線を採用することが可能になる。
【0070】
よって、このような超電導コイル1によると、超電導線が巻回されたコイル巻線において、超電導線の断面形状にかかわらず、超電導線同士の間を流れる循環電流の抑制と超電導線の効率的な伝導冷却とを両立させて、超電導線の焼損が起こり難く、安定的な磁場を短時間で形成することが可能な伝導冷却型超電導コイルを提供できる。
【0071】
図3は、本発明の実施形態に係る超電導コイルの製造方法の一例を示す図である。
図3に示すように、図1および図2に示される超電導コイル1は、低融点金属層8を形成する低融点金属を含むソルダーペーストと、多孔金属材6である金属シートと、層間絶縁材7となる絶縁材とを用いて、低融点金属を熱処理で溶融させて空間に充填する方法によって製造できる。
【0072】
超電導コイル1を形成する際には、はじめに、ボビン2の周囲に超電導線10をソレノイド状に巻回して、超電導線10の一つの層を形成する(ステップS10)。ボビン2の周囲にボビン2の軸方向に沿って超電導線10を巻回することによって、超電導線10の一つの層が巻線される。
【0073】
続いて、超電導線10の層の表面に、融点が300℃以下である低融点金属を付着させる(ステップS11)。低融点金属を付着させる処理は、低融点金属を含むソルダーペーストを塗布することによって行うことができる。低融点金属は、超電導線10の層のボビン2の径方向の外側の表面に少なくとも塗布される。
【0074】
ソルダーペーストとしては、粒子状等の低融点金属と、任意の種類のフラックスとを含み、スラリー状ないしクリーム状である半流動体材料を用いることができる。フラックスとしては、ロジンや、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂材料や、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム材料等、各種の材料を用いることができる。フラックスは、任意の種類の溶媒や活性剤を含有してもよい。
【0075】
続いて、超電導線10に付着させた低融点金属の周囲に、多孔金属材6である金属シートを配置する(ステップS12)。多孔金属材6としては、可撓性を有するシート材や、予め湾曲状ないし筒状に成形された板材等を用いることができる。このような多孔金属材6を、超電導線10に付着した低融点金属の外側の表面を覆うように配置ないし巻回できる。
【0076】
多孔金属材6を配置すると、低融点金属を溶融させたとき、低融点金属を多孔によって保持できる。ボビン2を縦置きした場合、超電導線10の周囲に付着させた低融点金属が、重力によって流下する虞がある。これに対し、低融点金属を覆うように多孔金属材6を配置すると、ボビン2を縦置きした場合であっても、ペーストを表面張力等によって貫通孔内や貫通孔の周辺に保持できる。
【0077】
続いて、多孔金属材6である金属シートの周囲に、層間絶縁材7となる絶縁材を配置する(ステップS13)。層間絶縁材7としては、可撓性を有するフィルム材、シート材等を用いることができる。このような層間絶縁材7を、多孔金属材6のボビン2の径方向の外側の表面を覆うように配置ないし巻回できる。
【0078】
続いて、ボビン2に巻回された超電導線10の層数が、既定の層数に到達したか否かを判定する(ステップS14)。ボビン2に巻回するべき超電導線10の層数は、超電導線10の列数や、超電導線10の電流密度の上限や、要求される発生磁場の強度等に応じて、予め任意の数値に設定できる。
【0079】
判定の結果、既定の層数に到達していないとき(ステップS14;NO)、工程をステップS10に戻す。以降の工程では、既に巻回されている超電導線10の層の外側に配置された絶縁材の周囲に、超電導線10をソレノイド状に巻回して、次層の超電導線10の層を形成する。そして、ステップS11~14を繰り返す。
【0080】
一方、判定の結果、既定の層数に到達しているとき(ステップS14;YES)、工程をステップS15に進める。既定の層数に到達したことが判定されるまで、次層の超電導線10の層を形成する処理や、低融点金属を付着させる処理、金属シートを配置する処理、および、絶縁材を配置する処理を、1回または複数回にわたって行い、ボビン2の周囲にコイル巻線3を形成する。
【0081】
続いて、ボビン2およびコイル巻線3を熱処理する(ステップS15)。熱処理することによって、低融点金属を溶融させて、超電導線10の列同士や超電導線10の列と周辺の部材との間に低融点金属を充填させる。その後、強制冷却または自然放冷によって低融点金属を凝固させて低融点金属層8を形成する。
【0082】
コイル巻線3の熱処理は、低融点金属の融点以上で行う。熱処理の温度は、300℃以下であることが好ましく、絶縁材等の周辺の部材の耐熱温度以下であることが好ましい。熱処理の温度を抑制すると、一般的な樹脂材料による絶縁材を用いる場合に、コイル絶縁材5や層間絶縁材7の熱分解や焦げ付きを回避できる。
【0083】
続いて、ボビン2およびコイル巻線3を樹脂に含浸させる(ステップS16)。樹脂の含浸は、例えば、VIP(Vacuum Infusion Process)によって行うことができる。ボビン2に巻回されたコイル巻線3を樹脂に含浸させながら、雰囲気を真空引きすると、超電導線10の周辺の空隙が脱気されると共に、空隙に樹脂が浸透する。浸透させた熱硬化性樹脂等を硬化させると、樹脂層9が形成された超電導コイル1が得られる。
【0084】
このような製造方法によると、低融点金属を含むソルダーペーストを用いるため、ペーストの粘度によって、低融点金属を均一性高く付着させることができる。厚さの均一性が高い低融点金属層8を容易に形成できるため、超電導線10の列同士の間における接触電気抵抗や接触熱抵抗を安定的に低減できる。また、多孔金属材6である金属シートを用いるため、重力にしたがって流下する可能性があるソルダーペーストを、表面張力等によって貫通孔内や貫通孔の周辺に保持できる。ボビン2の置く向きにかかわらず、厚さの均一性が高い低融点金属層8を形成できるため、超電導線10の列同士の間における接触電気抵抗や接触熱抵抗をより確実に低減できる。また、層間絶縁材7となるフィルム材、シート材等の絶縁材を用いるため、超電導線10の層同士をより確実に絶縁できる。
【0085】
図4A図4Bおよび図4Cは、本発明の実施形態に係る超電導コイルに用いる多孔金属材の形態例を示す図である。図4A図4Bおよび図4Cには、多孔金属材6の主面を拡大して模式的に示している。図4Aは、パンチングメタルの一例を示す。図4Bは、エキスパンドメタルの一例を示す。図4Cは、メッシュメタルの一例を示す。
【0086】
図4Aに示すように、多孔金属材6としてのパンチングメタル6Aは、多数の貫通孔が孔あけ加工された形状に設けられる。また、図4Bに示すように、多孔金属材6としてのエキスパンドメタル6Bは、金属板に多数の平行な切れ目を千鳥状に加工して、切れ目を開く方向に延伸された形状に設けられる。また、図4Cに示すように、多孔金属材6としてのメッシュメタル6Cは、金属線を格子状に形成した形状に設けられる。
【0087】
多孔金属材6は、多数の貫通孔が形成された適宜の形態に設けることができるが、両端間の電気抵抗が小さい点で、メタルファイバシート等と比較して、パンチングメタル、エキスパンドメタル、メッシュメタル等を用いることが好ましい。多孔金属材6は、ソルダーペーストの保持や、伝導パスの形成が可能な限り、適宜の厚さや、貫通孔の大きさ、貫通孔の個数に設けることができる。多孔金属材6の厚さは、例えば、0.5mm以上2mm以下に設けることができる。
【0088】
図5は、本発明の実施形態に係る超電導コイルの要部の一例を拡大して示す図である。図5には、図1の破線で囲まれたA領域であって、図2とは異なる形態が示されている。
図5に示すように、本実施形態に係る超電導コイル1は、超電導線10の周囲の空間に低融点金属層8のみが充填された形態に設けることもできる。
【0089】
図5において、低融点金属層8は、超電導線10の各層同士の間において、層間絶縁材7よりもボビン2の径方向の外側、且つ、超電導線10の外周面よりもボビン2の径方向の内側、および、超電導線10の外周面よりもボビン2の径方向の外側、且つ、多孔金属材6よりもボビン2の径方向の内側の両方に配置されている。
【0090】
このような形態において、超電導線10の各層同士の間には、樹脂層9が形成されてもよいし、樹脂層9が形成されなくてもよい。例えば、超電導線10の各層同士の間には、低融点金属層8のみを充填し、得られたボビン2およびコイル巻線3を樹脂に含浸させて、ボビン2と他の部材との隙間や、冷却板4と他の部材との隙間等のみに、樹脂層9を形成してもよい。
【0091】
このような形態によると、超電導線10の周囲の接触電気抵抗や接触熱抵抗を、低融点金属層8による伝導パスによって低減できる。低融点金属で形成される低融点金属層8であると、樹脂で形成される樹脂層9と比較して、高い熱伝導率や電気伝導率が得られ易くなる。また、ボビン2およびコイル巻線3を樹脂に含浸させる処理を省略したり、樹脂に含浸させる処理を短縮したりすることが可能になる。樹脂層9は、低融点金属層8と比較して、耐放射線性に劣るため、加速器の用途等で有利になる。
【0092】
図6は、本発明の実施形態に係る超電導コイルの製造方法の一例を示す図である。
図6に示すように、図5に示される超電導コイル1は、低融点金属層8を形成する低融点金属を含むソルダーペーストを、超電導線10の各層の両側面に塗布することによって製造できる。
【0093】
超電導コイル1を形成する際には、前記のステップS10と同様に、ボビン2の周囲に超電導線10をソレノイド状に巻回して、超電導線10の一つの層を形成する(ステップS20)。
【0094】
続いて、超電導線10の層の表面に、融点が300℃以下である低融点金属を付着させる(ステップS11)。低融点金属を付着させる処理は、低融点金属を含むソルダーペーストを塗布することによって行うことができる。低融点金属は、超電導線10の層のボビン2の径方向の両側の表面に塗布される。
【0095】
例えば、第1層については、超電導線10の層のボビン2の径方向の外側の表面に加え、ボビン2の外周面や、その外側に巻回される超電導線10の内側の表面に、低融点金属を塗布できる。第2層以降については、超電導線10の層のボビン2の径方向の外側の表面に加え、既に配置されている絶縁材の外周面や、その外側に巻回される超電導線10の内側の表面に、低融点金属を塗布できる。
【0096】
続いて、前記のステップS12~S15と同様に、多孔金属材6である金属シートの配置(ステップS22)、層間絶縁材7となる絶縁材の配置(ステップS23)、既定の層数に到達したか否かの判定(ステップS24)、ボビン2およびコイル巻線3の熱処理(ステップS25)を行う。熱処理によって低融点金属を溶融させてから凝固させると、低融点金属層8が形成された超電導コイル1が得られる。
【0097】
このような製造方法において、熱処理(ステップS25)の後には、ボビン2およびコイル巻線3を樹脂に含浸させる処理を省略することができる。或いは、必要に応じて、処理の時間を短縮する等して、樹脂に含浸させる処理を実施することもできる。
【0098】
このような製造方法によると、低融点金属層8が超電導線10の層のボビン2の径方向の両側に形成されるため、超電導線10の周囲の接触電気抵抗や接触熱抵抗を低減しつつ、樹脂に含浸させる処理を省略したり、短縮したりすることができる。そのため、超電導コイル1の製造工程を簡易化できる。また、熱処理と低融点金属の濡れ性とによって、十分な脱気を行うことなく、ボイドが低減された超電導コイル1を短時間に製造することが可能になる。
【0099】
なお、超電導線10の各層同士の間において、層間絶縁材7よりもボビン2の径方向の外側、且つ、超電導線10の外周面よりもボビン2の径方向の内側には、図2では樹脂層9が配置されており、図5では低融点金属層8が配置されているが、この空間を樹脂や低融点金属が充填されていない空隙とすることもできる。片側の低融点金属層8によって、超電導線10の列同士の間における接触熱抵抗が低減するため、空隙であっても良好な伝熱性が得られる場合がある。このような場合、ボビン2およびコイル巻線3を樹脂に含浸させる処理と共に、低融点金属の両側への塗布も省略できる。
【0100】
図7は、本発明の実施形態に係る超電導コイルの要部の一例を示す図である。図7には、図1の破線で囲まれたA領域であって、図2とは異なる形態が示されている。
図7に示すように、本実施形態に係る超電導コイル1は、コイル巻線3を複数本の超電導線10によって形成し、その超電導線10同士を、低融点金属層8を介して接合した形態に設けることもできる。
【0101】
図7において、コイル巻線3は、複数本の超電導線10を互いに直列的に接続することによって形成されている。コイル巻線3を構成する超電導線10同士は、独立的な半田を用いることなく、低融点金属で形成された低融点金属層8のみを介して、超電導線10の側面同士で接続されている。
【0102】
コイル巻線3を複数本の超電導線10によって形成する場合、超電導線10同士を接続する接続部には、ボビン2の径方向の内側に配置された超電導線10と、その超電導線10に対してボビン2の径方向の外側に配置された次層の超電導線10とが、低融点金属によって電気的に接続されている構造を形成できる。
【0103】
一般に、大型の超電導コイルは、1本の超電導線で製造することが難しいため、複数本の超電導線を半田付けで直列的に連結して製造されている。超電導線同士を連結する接続部では、電気抵抗によってジュール熱が生じ易くなる。そのため、超電導線同士を20~100mm程度にわたってオーバーラップさせて、超電導線の側面同士を半田付けするのが一般的である。
【0104】
しかし、従来のように、オーバーラップさせた超電導線の側面同士を半田付けする方法では、適切な半田付けを行うために、コイル巻線の他の区間とは異なる構造や空間を確保する必要があった。従来は、超電導線の周囲が空隙であり、一部の領域のみに半田が形成される。そのため、超電導線の側面同士が密着するように配置される接続部と、接続部以外の区間とで、巻回された超電導線同士の間隔や、超電導線の周囲の空間の大きさが異なっていた。
【0105】
これに対し、低融点金属層8を介して接続すると、超電導線10の周囲の空間に充填される低融点金属層8が超電導線10の側面同士を連結できるため、従来の半田付けとは異なり、他の区間から連続した構造や空間である接続部を形成できる。超電導線10同士の間隔や、超電導線10の周囲の空間の大きさを、過度に変えることなく、複数本の超電導線10同士を連結できるため、接触抵抗の増大や、クエンチの要因となる超電導線10のひずみや、発熱を生じる摩擦を抑制できる。
【0106】
図7に示すように、複数本の超電導線10同士を接続する接続部は、超電導線10の層同士の間に設けることが好ましい。接続部が超電導線10の層同士の間であると、超電導線10の層のボビン2の径方向の外側の表面に塗布される低融点金属によって、別の超電導線10の側面を連結できる。低融点金属層8の形成と超電導線10同士の連結とを兼ねることができるため、連続的で位置ずれが小さいコイル巻線3を形成できる。
【0107】
また、複数本の超電導線10同士を連結する接続部は、ボビン2の軸方向の一端側および他端側のうち、いずれかの末端に設けることが好ましい。図7においては、接続部がボビン2の上端に設けられている。図7に示すように、ボビン2の軸方向の末端では、多孔金属材6や層間絶縁材7のボビン2の軸方向の長さを短くして、介在する多孔金属材6や層間絶縁材7を除くことによって、超電導線10の側面同士を容易に接触させることができる。
【0108】
図8は、本発明の実施形態に係る超電導コイルの接続部を示す展開図である。図8には、図7に示される複数本の超電導線10同士を連結する接続部をコイル状から展開し、展開図の一部を抜き出して示す。図8において、符号10Aは、ボビン2の径方向の内側に位置する超電導線10を示す。符号10Bは、ボビン2の径方向の外側に位置する超電導線10を示す。符号OLは、内側に位置する超電導線10Aと外側に位置する超電導線10Bとのオーバーラップを示す。
【0109】
図8に示すように、内側に位置する超電導線10Aと外側に位置する超電導線10Bとを連結する接続部は、ボビン2の軸方向の上端等に設けることが好ましい。図8には、主に超電導線10Aの一つの層と、この層に接続される超電導線10Bと、周囲に充填された低融点金属層8の一部を図示している。
【0110】
内側に位置する超電導線10Aと、外側に位置する超電導線10Bとは、層間の移動を兼ねるように超電導線10Aと超電導線10Bとが部分的に並行するオーバーラップOLにおいて、側面同士を低融点金属層8と一体化させることによって接続できる。オーバーラップOLにおいて、超電導線10Aの側面と超電導線10Bの側面とは、低融点金属層8のみを介して電気的に接続できる。
【0111】
オーバーラップOLでは、低融点金属層8は、超電導線10の各層同士の間において、層間絶縁材7よりもボビン2の径方向の外側、且つ、超電導線10の外周面よりもボビン2の径方向の内側、および、超電導線10の外周面よりもボビン2の径方向の外側、且つ、多孔金属材6よりもボビン2の径方向の内側の両方に配置される。オーバーラップOLにおける低融点金属層8の厚さは、コイル巻線3の他の区間における低融点金属層8の厚さと同等であることが好ましい。
【0112】
低融点金属層8を介した複数本の超電導線10同士の連結は、オーバーラップOLにおける超電導線10Aや超電導線10Bの側面に、低融点金属を含むソルダーペースト等を塗布して低融点金属を付着させた後、コイル巻線3を熱処理して低融点金属を溶融および凝固させることによって行うことができる。低融点金属層8を介した連結を行う場合、超電導線10同士の半田付けは省略することができる。
【0113】
このような接続法によると、超電導線10同士の間隔や、超電導線10の周囲の空間の大きさを、過度に変える必要がないのに加え、ボビン2や冷却板4についても追加的な加工を省略できる。コイル巻線3の内部において、超電導線10同士を接続するための空間を、容易に確保することができるため、複数本の超電導線10同士を連結して大型の超電導コイル1の製造効率を向上できる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0115】
1 超電導コイル
2 ボビン
3 コイル巻線
4 冷却板
5 コイル絶縁材
6 多孔金属材
7 層間絶縁材
8 低融点金属層
9 樹脂層
10 超電導線
11 超電導フィラメント
12 母材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8