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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164493
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】インゴットの検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
H01L21/66 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080002
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】森 一輝
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106AA20
4M106BA04
4M106CB01
4M106DH12
4M106DH31
4M106DJ20
(57)【要約】
【課題】不純物濃度が異なる領域を精度よく特定することが可能なインゴットの検査方法を提供する。
【解決手段】インゴットの不純物濃度が異なる領域を特定するためのインゴットの検査方法であって、インゴットに含まれる複数の領域に対して順番にパルス発光する光源から所定波長の励起光を1パルス分照射することによって生じ、かつ、光子数が経時変化する蛍光を受光する受光ステップと、蛍光の光子数が漸減中の所定の期間において生じる蛍光の光子数を参照して、複数の領域のそれぞれを不純物濃度の高い領域又は低い領域に分類する分類ステップと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットの不純物濃度が異なる領域を特定するためのインゴットの検査方法であって、
該インゴットに含まれる複数の領域に対して順番にパルス発光する光源から所定波長の励起光を1パルス分照射することによって該複数の領域のいずれかから生じ、かつ、光子数が経時変化する蛍光を受光する受光ステップと、
該蛍光の光子数が漸減中の所定の期間において生じる該蛍光の光子数を参照して、該複数の領域のそれぞれを不純物濃度の高い領域又は低い領域に分類する分類ステップと、
を備えるインゴットの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットの不純物濃度が異なる領域を特定するためのインゴットの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのチップは、一般的に、円盤状のウエーハを用いて製造される。このウエーハは、例えば、ワイヤーソーを用いて円柱状の半導体インゴットから切り出されることによって製造される。ただし、このようにウエーハを製造すると、インゴットの大部分がカーフロス(切り代)として失われ、経済的ではないという問題がある。
【0003】
さらに、パワーデバイス用の材料として用いられる単結晶SiC(炭化シリコン)は硬度が高い。そのため、ワイヤーソーを用いて単結晶SiCインゴットからウエーハを切り出す場合には、切り出しに時間がかかってしまい生産性が低い。
【0004】
これらの問題を解決するために、ワイヤーソーを用いることなく、レーザービームを用いてインゴットからウエーハを切り出す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法においては、インゴットを透過する波長のレーザービームの集光点がインゴットの内部に位置付けられるようにインゴットにレーザービームを照射する。
【0005】
これにより、インゴットの内部に改質部と改質部から伸展するクラックとを含む剥離層が形成される。そして、剥離層が形成されたインゴットに超音波振動等によって外力を加えると、インゴットが剥離層において分離してウエーハが製造される。
【0006】
ところで、単結晶SiCインゴットには、一般的に、導電性を付与するために窒素等の不純物がドープされている。ただし、単結晶SiCインゴットにおいては、このような不純物が一様にドープされることなく、不純物濃度が異なる複数の領域が含まれることがある。
【0007】
例えば、単結晶SiCの成長過程において形成されるファセット領域と呼ばれる原子レベルで平坦な領域の不純物濃度は、その他の領域(非ファセット領域)よりも高い。そして、ファセット領域のように不純物濃度が高い領域は、非ファセット領域と比較して屈折率が高いとともにエネルギーの吸収率が高い。
【0008】
そのため、上述した方法によってファセット領域を含む単結晶SiCインゴットに剥離層を形成する場合、剥離層が形成される位置(高さ)が不均一になり、カーフロスが大きくなるという問題がある。
【0009】
そこで、単結晶SiCインゴットの不純物濃度が異なる領域を特定するインゴットの検査方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。具体的には、この方法においては、単結晶SiCインゴットの特定の領域に励起光を照射することで生じる蛍光の強度が所定値以下であれば、この特定の領域が、不純物濃度が高い領域、すなわち、ファセット領域であると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-111143号公報
【特許文献2】特開2020-77783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
インゴットの特定の領域に励起光を照射することで生じる蛍光の強度、すなわち、その光子数の総量は、当該特定の領域の不純物濃度のみならず、インゴットの個体差、具体的には、その製造に利用される装置及び/又は方法等の違いに起因する格子欠陥の多寡等に依存して変化することがある。そのため、インゴットの不純物濃度が異なる領域を上述した方法によって特定する場合には、その精度が低くなるおそれがある。
【0012】
この点に鑑み、本発明の目的は、不純物濃度が異なる領域を精度よく特定することが可能なインゴットの検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
インゴットに励起光が照射されると、インゴットから生じる蛍光の光子数が経時変化する。具体的には、この蛍光の光子数は、インゴットに励起光を照射した直後にピークを迎え、その後漸減するように変化する。このような蛍光の光子数の経時変化を注意深く観察することによって、本発明者らは本発明に想到した。
【0014】
具体期には、本発明者らは、インゴットに内在する格子欠陥の多寡は、経時変化する蛍光の光子数のピーク高さに大きく影響するのに対して、ピークを越えた後に生じる蛍光の光子数にはそれほど影響しないことを見出して本発明に想到した。すなわち、本発明者らは、このピークを越えた後に生じる蛍光の光子数は、インゴットの励起光が照射された領域に含まれる不純物濃度に大きく影響されることを見出して本発明に想到した。
【0015】
例えば、本発明によれば、インゴットの不純物濃度が異なる領域を特定するためのインゴットの検査方法であって、該インゴットに含まれる複数の領域に対して順番にパルス発光する光源から所定波長の励起光を1パルス分照射することによって生じ、かつ、光子数が経時変化する蛍光を受光する受光ステップと、該蛍光の光子数が漸減中の所定の期間において生じる該蛍光の光子数を参照して、該複数の領域のそれぞれを不純物濃度の高い領域又は低い領域に分類する分類ステップと、を備えるインゴットの検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、蛍光の光子数が漸減中の所定の期間において生じる蛍光の光子数を参照して、インゴットの励起光が照射された領域を不純物濃度の高い領域又は低い領域に分類する。
【0017】
すなわち、この分類は、その量がインゴットの励起光が照射される領域の不純物濃度に大きく影響される蛍光の光子数を参照して行われる。そのため、本発明においては、不純物濃度が異なる領域を精度よく特定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(A)は、インゴットの一例を模式的に示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)に示されるインゴットを模式的に示す上面図である。
図2図2は、検査装置の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、インゴットの不純物濃度が異なる領域を特定するインゴットの検査方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1(A)は、インゴットの一例を模式的に示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)に示されるインゴットを模式的に示す上面図である。
【0020】
図1(A)及び図1(B)に示されるインゴット11は、例えば、概ね平行な上面(表面)11a及び下面(裏面)11bを有する円柱状の単結晶SiCからなる。このインゴット11は、単結晶SiCのc軸11cが表面11a及び裏面11bの垂線11dに対して僅かに傾くようにエピタキシャル成長を利用して生成される。
【0021】
例えば、c軸11cと垂線11dとがなす角(オフ角)αは、1°~6°(代表的には4°)である。また、インゴット11の側面には、単結晶SiCの特定の結晶方位を示すための2つの平部、すなわち、一次オリエンテーションフラット13及び二次オリエンテーションフラット15が形成されている。
【0022】
一次オリエンテーションフラット13は、二次オリエンテーションフラット15よりも長い。また、二次オリエンテーションフラット15は、単結晶SiCのc面11eに平行な面と表面11a又は裏面11bとが交差する交差線に平行になるように形成されている。
【0023】
さらに、インゴット11には、導電性を付与するために窒素等の不純物がドープされている。また、インゴット11には、原子レベルで平坦な領域であるファセット領域11fとファセット領域11f以外の領域である非ファセット領域11gとが含まれる。
【0024】
そして、ファセット領域11fの不純物濃度は、非ファセット領域11gの不純物濃度よりも高い。なお、図1(B)においては、ファセット領域11fと非ファセット領域11gとの境界が点線で示されているが、この境界線は、仮想線であり、実際のインゴット11には存在しない。
【0025】
なお、インゴット11の材料は、SiCに限定されず、LiTaO(タンタル酸リチウム:LT)又はGaN(窒化ガリウム)であってもよい。また、インゴット11の側面には、一次オリエンテーションフラット13及び二次オリエンテーションフラット15の一方又は双方が設けられなくてもよい。
【0026】
図2は、インゴット11の不純物濃度が異なる領域を特定することが可能な検査装置の一例を模式的に示す図である。なお、図2においては、検査装置の構成要素の一部がブロックで示されている。図2に示される検査装置2は、インゴット11が置かれる概ね水平な上面(保持面)4aを有する円盤状のチャックテーブル4を有する。
【0027】
チャックテーブル4は、水平方向移動機構(不図示)に連結されている。この水平方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、水平方向移動機構を動作させると、保持面4aに概ね平行な方向(水平方向)に沿ってチャックテーブル4が移動する。
【0028】
また、チャックテーブル4は、回転機構(不図示)に連結されている。この回転機構は、例えば、プーリ及びモータ等を有する。そして、回転機構を動作させると、保持面4aに概ね直交する方向(鉛直方向)に沿い、かつ、保持面4aの中心を通る直線Lを回転軸としてチャックテーブル4が回転する。
【0029】
また、チャックテーブル4は、吸引機構(不図示)に連結されている。この吸引機構は、例えば、エジェクタ等を有する。そして、吸引機構を動作させると、保持面4a近傍の空間に吸引力が作用する。そのため、チャックテーブル4の保持面4aにインゴット11が置かれた状態で吸引機構を動作させると、インゴット11がチャックテーブル4側に吸引されて保持される。
【0030】
チャックテーブル4の上方には、検査ユニット6が設けられている。この検査ユニット6は、パルス発光する光源8を有する。この光源8は、発光ダイオード(LED)を有し、インゴット11に吸収される所定波長(例えば、375nm)の励起光Aをミラー10に向けて照射する。
【0031】
そして、ミラー10に照射された励起光Aは、ミラー10から直下に向かうように反射されて集光レンズ12に到る。さらに、集光レンズ12に到った励起光Aは、集光レンズ12の直下において集光点を形成するように集光される。
【0032】
また、検査ユニット6は、内側に反射面14aを有する円環状の楕円鏡14を有する。なお、図2においては、楕円鏡14の断面が示されている。この反射面14aは、鉛直方向に沿って延在する長軸と水平方向に沿って延在する短軸とを有する楕円14bを、当該長軸を中心に回転させた回転楕円体の曲面の一部に相当する。
【0033】
楕円鏡14は、2つの焦点F1,F2を有し、その一方(例えば、焦点F1)から生じた光を他方(例えば、焦点F2)に集光する。なお、集光レンズ12は、その焦点が焦点F1に概ね一致するように設計される。すなわち、励起光Aが集光される集光点は、焦点F1と重なる。
【0034】
また、検査ユニット6は、受光部16を有する。この受光部16は、その受光面16aの中心が楕円鏡14の焦点F2と一致するように設けられている。そして、受光部16は、受光した光の光子数の経時変化を示す電気信号を出力する。
【0035】
また、楕円鏡14の焦点F1と焦点F2との間の光路には、励起光Aよりも長い所定範囲の波長の光を透過させ、かつ、それ以外の波長の光を遮断するバンドパスフィルタ18が設けられている。そして、焦点F1で生じ、かつ、楕円鏡14によって反射された光は、バンドパスフィルタ18を通って焦点F2に到る。
【0036】
なお、バンドパスフィルタ18は、例えば、510nm~550nm、代表的には約530nmの可視光を透過させ、かつ、それ以外の波長の光を遮断する可視光フィルタである。あるいは、バンドパスフィルタ18は、例えば、750nm以上の波長の赤外線(IR)を透過させ、かつ、それ以外の波長の光を遮断するIRフィルタであってもよい。
【0037】
さらに、検査ユニット6は、鉛直方向移動機構(不図示)に連結されている。この鉛直方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、鉛直方向移動機構を動作させると、鉛直方向に沿って検査ユニット6が移動する。
【0038】
加えて、検査装置2は、上述した構成要素を制御するためのコントローラ(不図示)を備える。このコントローラは、プロセッサとメモリとを有する。そして、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を含む。また、メモリは、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリと、SSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリと、を含む。
【0039】
そして、メモリは、プロセッサにおいて用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する。例えば、メモリは、インゴット11の不純物濃度が異なる領域を特定するために利用されるデータを記憶する。また、プロセッサは、メモリに記憶された各種のプログラムを読みだして実行し、検査装置2の構成要素を制御する。例えば、プロセッサは、インゴット11の不純物濃度が異なる領域を特定するインゴットの検査方法を実施するように検査装置2の構成要素を制御する。
【0040】
図3は、この検査方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この検査方法においては、まず、インゴット11に含まれる複数の領域に対して順番に光源8から励起光Aを1パルス分照射することによって生じ、かつ、光子数が経時変化する蛍光Bを受光する(受光ステップS1)。
【0041】
具体的には、この受光ステップS1においては、まず、インゴット11の表面11aが上を向くようにチャックテーブル4の保持面4aにインゴット11を置く。次いで、インゴット11がチャックテーブル4側に吸引されて保持されるように、プロセッサが吸引機構を動作させる。
【0042】
次いで、楕円鏡14の焦点F1がインゴット11の表面11aと同じ高さに位置付けられるように、プロセッサが鉛直方向移動機構を動作させて検査ユニット6を移動させる。次いで、この焦点F1をインゴット11に含まれる複数の領域のいずれかに位置付けるように、プロセッサが水平方向移動機構及び/又は回転機構を動作させてチャックテーブル4を移動及び/又は回転させる。
【0043】
次いで、光源8から1パルス分の励起光Aを照射させるように、プロセッサが光源8を動作させる。これにより、励起光Aがミラー10及び集光レンズ12を介してインゴット11に含まれる複数の領域のいずれかに照射される。そして、この領域に励起光Aが照射されると、この領域において励起光Aが吸収されて蛍光Bが生じる。
【0044】
なお、励起光Aの波長が375nmであれば、インゴット11の表面11aから深さ10μm程度まで励起光Aが侵入する。そして、インゴット11の励起光Aが侵入した領域から蛍光Bが生じる。また、この蛍光Bの光子数は、インゴット11に励起光Aを照射した直後にピークを迎え、その後漸減するように経時変化する。
【0045】
さらに、この蛍光Bは、楕円鏡14の反射面によって反射された後、バンドパスフィルタ18を通過して受光部16に到達する。そのため、蛍光Bのうち所定範囲の波長以外の光はバンドパスフィルタ18によって遮断され、受光部16においては蛍光Bのうち所定範囲の波長の光のみが受光される。
【0046】
これにより、蛍光Bのうち所定範囲の波長の光の光子数の経時変化を示すデータ(経時変化データ)が受光部16から出力される。そして、経時変化データはプロセッサに入力され、プロセッサは経時変化データをメモリに記憶させる。
【0047】
さらに、インゴット11に含まれる複数の領域の全てに励起光Aが照射されるまで上述した動作が繰り返される。具体的には、インゴット11の複数の領域のうち未だ励起光Aが照射されていない領域に焦点F1を位置付けるためのチャックテーブル4の移動及び/又は回転と、光源8からの1パルス分の励起光Aの照射と、が交互に繰り返される。
【0048】
これにより、インゴット11に含まれる複数の領域から生じた蛍光Bのうち所定範囲の波長の光の光子数の経時変化をそれぞれ示す複数の経時変化データが受光部16から順番に出力される。そして、複数の経時変化データはプロセッサに入力され、プロセッサは複数の経時変化データをメモリに記憶させる。以上によって、受光ステップS1が完了する。
【0049】
受光ステップS1の後には、蛍光Bの光子数が漸減中の所定の期間において生じる蛍光Bの光子数を参照して、複数の領域のそれぞれを不純物濃度の高い領域又は低い領域に分類する(分類ステップS2)。
【0050】
具体的には、この分類ステップS2においては、まず、インゴット11に励起光Aを照射してから、経時変化する蛍光Bの光子数がピークから漸減してピークのn(nは、例えば、1/10以下1/1000以上の値、代表的には1/100)倍程度になるまでの期間(不算入期間)をプロセッサが特定する。
【0051】
なお、この不算入期間の特定に利用される倍率の値、すなわち、nの値は、予めメモリに記憶されている。また、この不算入期間は、1つの経時変化データを参照してプロセッサが特定してもよいし、複数の経時変化データを参照して、例えば、平均的な期間としてプロセッサが特定してもよい。
【0052】
次いで、複数の経時変化データを参照して、不算入期間経過後から所定の期間においてインゴット11に含まれる複数の領域からそれぞれ生じる蛍光Bのうち所定範囲の波長の光の光子数をプロセッサが算出する。なお、この所定の期間は、例えば、予めメモリに記憶されている。
【0053】
あるいは、この所定の期間は、1又は複数の経時変化データを参照してプロセッサによって特定されてもよい。具体的には、プロセッサは、不算入期間から蛍光Bの光子数のピークのm(mは、例えば、1/100以下1/10000以上の値、代表的には1/1000)倍程度になるまでの期間を当該所定の期間として特定してもよい。
【0054】
そして、インゴット11に含まれる複数の領域のいずれかと、不算入期間経過後から所定の期間において複数の領域のいずれかから生じた蛍光Bのうち所定範囲の波長の光の光子数と、がそれぞれにおいて紐付けられた複数のデータ(複数の蛍光データ)をプロセッサがメモリに記憶させる。
【0055】
次いで、複数の蛍光データを参照して、インゴット11に含まれる複数の領域のそれぞれをプロセッサが不純物濃度の高い領域又は低い領域に分類する。例えば、プロセッサは、複数の蛍光データを参照して、予めメモリに閾値として記憶されている光子数よりも少ない光子数に紐付けられている領域を不純物濃度の高い領域に分類し、また、それよりも多い光子数に紐付けられている領域を不純物濃度の低い領域に分類する。
【0056】
あるいは、プロセッサは、複数の蛍光データのそれぞれに含まれる光子数を比較して、相対的に少ない光子数に紐付けられている領域を不純物濃度の高い領域に分類し、また、相対的に多い光子数に紐付けられている領域を不純物濃度の低い領域に分類してもよい。
【0057】
図3に示されるインゴットの検査方法においては、蛍光Bの光子数が漸減中の所定の期間において生じる蛍光Bのうち所定範囲の波長の光の光子数を参照して、インゴット11の励起光Aが照射された領域を不純物濃度の高い領域又は低い領域に分類する。
【0058】
すなわち、この分類は、その量がインゴット11の励起光Aが照射される領域の不純物濃度に大きく影響される蛍光Bの光子数を参照して行われる。そのため、この方法においては、不純物濃度が異なる領域を精度よく特定することが可能である。
【0059】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、上述した方法においては、蛍光Bのうち所定範囲の波長の光のみが受光部16において受光されていたが、本発明の方法においては、蛍光Bの全てが受光部16において受光されてもよい。この場合、検査装置2においては、バンドパスフィルタ18が設けられなくてもよい。
【0060】
また、上述した方法においては、上記の不算入期間及び上記の所定の期間の双方において蛍光Bのうち所定範囲の波長の光が受光部16において受光されていたが、本発明においては、上記の所定の期間のみにおいて蛍光Bのうち所定範囲の波長の光が受光部16において受光されてもよい。この場合、検査装置2においては、上記の不算入期間において蛍光Bを遮断するとともに上記の所定の期間において蛍光Bを透過させる遮光フィルタが楕円鏡14の焦点F1と焦点F2との間の光路に設けられてもよい。
【0061】
また、本発明の方法においては、受光ステップS1と分類ステップS2とが並行して行われてもよい。すなわち、本発明の方法においては、インゴット11に含まれる複数の領域の全てに対する励起光Aの照射が完了する前に、既に励起光Aが照射された領域の不純物領域の高い領域又は低い領域への分類が随時行われてもよい。
【0062】
また、本発明の方法においては、それぞれにおける不純物濃度が異なる3つ以上の領域にインゴット11に含まれる複数の領域のそれぞれが分類されてもよい。このような分類は、例えば、予めメモリに記憶され、かつ、それぞれの値が異なる2つ以上の光子数の閾値のそれぞれと、複数の蛍光データのそれぞれに含まれる光子数と、をプロセッサが比較することによって行われる。
【0063】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0064】
2 :検査装置
4 :チャックテーブル
6 :検査ユニット
8 :光源
10:ミラー
11:インゴット
(11a:上面(表面)、11b:下面(裏面)、11c:c軸)
(11d:垂線、11e:c面)
(11f:ファセット領域、11g:非ファセット領域)
12:集光レンズ
13:一次オリエンテーションフラット
14:楕円鏡(14a:反射面)
15:二次オリエンテーションフラット
16:受光部(16a:受光面)
18:バンドパスフィルタ
図1
図2
図3