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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164501
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】トランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20241120BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20241120BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01F27/32 130
H01F27/00 160
H01F30/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080013
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA06
5E044CB06
5E070AA11
5E070AB08
5E070BA08
5E070CB03
5E070CB13
5E070CB15
(57)【要約】
【課題】プリント基板に作られたトランスであって配線層の間の絶縁層の厚みを抑える。
【解決手段】本明細書が開示するトランスは、複数の配線層が積層されているプリント基板と、プリント基板を貫通しているコアを備える。隣り合う配線層の間に絶縁層が挟まれている。それぞれの配線層は、コアを囲むように配置された第1巻線パターンと第2巻線パターンを備える。配線層の積層方向にて隣り合う第1巻線パターンはそれらの間の絶縁層に設けられた第1ビアで接続されている。直列に接続された複数の第1巻線パターンはコアを囲む第1コイルを構成する。積層方向で隣り合う第2巻線パターンはそれらの間の絶縁層に設けられた第2ビアで接続されている。直列に接続された複数の第2巻線パターンはコアを囲む第2コイルを構成する。第1コイルと第2コイルの間の絶縁は第1/第2巻線パターン間の距離で担保され、絶縁層の厚みに影響されない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線層(110)が積層されているとともに、隣り合う前記配線層の間に絶縁層(129)が挟まれているプリント基板(100-400)と、
前記プリント基板を貫通しているコア(10)と、
を備えており、
それぞれの前記配線層(110)は、前記コア(10)を囲むように配置された第1巻線パターン(111)と第2巻線パターン(112)であって互いに絶縁されている第1巻線パターンと第2巻線パターンを備えており、
複数の前記配線層の積層方向において隣り合う前記第1巻線パターン(111)は前記絶縁層に設けられた第1ビア(121)で接続されているとともに、直列に接続された複数の前記第1巻線パターンは前記コアを囲む第1コイル(101)を構成し、
前記積層方向において隣り合う前記第2巻線パターン(112)は前記絶縁層に設けられた第2ビア(122)で接続されているとともに、直列に接続された複数の前記第2巻線パターンは前記コアを囲む第2コイル(102)を構成する、トランス(2、2a-2c)。
【請求項2】
前記積層方向において隣り合う前記第1巻線パターンの一方の一端(111b)と他方の他端(111a)が前記積層方向で重なっているとともに前記第1ビア(121)で接続されている、請求項1に記載のトランス(2、2a-2c)。
【請求項3】
それぞれの前記配線層は、前記コアを囲む第3巻線パターン(313)を備えており、
前記積層方向において隣り合う前記第3巻線パターンは前記絶縁層に設けられた第3ビアで接続されているとともに、直列に接続された複数の前記第3巻線パターンは前記コアを囲む第3コイル(303)を構成し、
それぞれの前記配線層において前記第2巻線パターン(312)と前記第3巻線パターン(313)が前記第1巻線パターン(311)を挟んでおり、
前記第2コイル(302)と前記第3コイル(303)が並列または直列に接続されている、
請求項1に記載のトランス(2b、2c)。
【請求項4】
前記プリント基板(200)は、前記第1巻線パターン(211)を備えているが前記第2巻線パターン(212)を備えていない複数のサブ配線層(230)を備えており、
複数の前記サブ配線層(230)は、前記積層方向にて均等に分散している、請求項1に記載のトランス(2a)。
【請求項5】
前記プリント基板(100)を支持するベース基板(20)をさらに備えており、
前記ベース基板には、前記コアが嵌る孔(23)と、前記第1コイル(101)に接続される第1ランド(21)と、前記第2コイル(102)に接続される第2ランド(22)が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のトランス(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術はトランスに関する。特に、プリント基板の配線パターンを利用したトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の配線パターンを利用したトランスが知られている(特許文献1、2)。特許文献1、2のトランスでは、1個(または複数)の配線層のパターンをつないで一つのコイルが作られる。トランスは2個以上のコイルを含む。特許文献1、2のトランスでは、1個(または複数)の配線層が一つのコイルを構成し、別の1個(又は別の複数)の配線層が別のコイルを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-220515号公報
【特許文献2】特開2013-247155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント基板では、隣り合う配線層の間に絶縁層が挟まれている。トランスでは2つのコイルの間に相応の電圧差が生じる。1個のコイルが形成された配線層と別のコイルが形成された配線層の間の絶縁層には、コイル間の電圧差に耐え得る絶縁強度が求められる。コイル間の電圧差が大きいほど、絶縁層の厚みを大きくしなければならない。絶縁層の厚みが大きいと、トランスが形成されているプリント基板の厚みが増す。本明細書は、トランスが形成されたプリント基板の厚み増大を抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するトランスは、複数の配線層が積層されているプリント基板と、プリント基板を貫通しているコアを備える。プリント基板では、隣り合う配線層の間に絶縁層が挟まれている。それぞれの配線層は、コアを囲むように配置された第1巻線パターンと第2巻線パターンを備える。第1巻線パターンと第2巻線パターンは配線層において絶縁されている。配線層の積層方向にて隣り合う第1巻線パターンはそれらの間の絶縁層に設けられた第1ビアで接続されている。直列に接続された複数の第1巻線パターンはコアを囲む第1コイルを構成する。積層方向で隣り合う第2巻線パターンはそれらの間の絶縁層に設けられた第2ビアで接続されている。直列に接続された複数の第2巻線パターンはコアを囲む第2コイルを構成する。
【0006】
本明細書が開示するトランスでは、複数の配線層の第1巻線パターンが一つのコイル(第1コイル)を形成し、同じ配線層の第2巻線パターンが別のコイル(第2コイル)を形成する。2個のコイルは、それぞれの配線層にてパターン間距離で絶縁される。絶縁層の厚みは2個のコイルの間の絶縁には寄与しない。それゆえ、プリント基板の厚み増大を抑えることができる。
【0007】
また、本明細書が開示するトランスでは、配線層に平行な平面において、コアを中心に2個のコイルが同心円状に配置される。この構成は、漏れ磁束を小さくする。すなわち、この構成のトランスは電力伝達効率がよい。
【0008】
トランスは、3個のコイルを備えていることがある。本明細書が開示する技術は、3個のコイルを備えるトランスに適用できる。本明細書が開示するトランスの一態様では、それぞれの配線層が、コアを囲む第3巻線パターンを備える。積層方向で隣り合う第3巻線パターンはそれらの間の絶縁層に設けられた第3ビアで接続されている。直列に接続された複数の第3巻線パターンはコアを囲む第3コイルを構成する。それぞれの配線層において第2巻線パターンと第3巻線パターンが第1巻線パターンを挟んでいる。第2コイルと第3コイルは並列または直列に接続されている。並列または直列に接続された第2コイルと第3コイルは二次コイルに適しており、第1コイルは一次コイルに適している。3個のコイルが同心円に配置され、第1コイルが第2/第3コイルの間に位置する構成は、第1コイルから第2/第3コイルへの電力伝達効率がよい。
【0009】
2個のコイルは巻回数が異なる場合がある。巻回数を異ならせるには、第1巻線パターンを備えており第2巻線パターンは備えていない複数のサブ配線層をプリント基板の中に配置するとよい。第1巻線パターンで構成されるコイルの巻数が第2巻線パターンで構成されるコイルの巻数よりも多くなる。この場合、複数のサブ配線層が積層方向において均等に分散しているとよい。2個のコイルが積層方向でバランスよく配置される。この構成は2個のコイルがアンバランスに配置される場合と比較して電力伝達効率が良い。
【0010】
本明細書が開示するトランスは、プリント基板を支持するベース基板をさらに備えていてもよい。ベース基板には、コアが嵌る孔と、第1コイルに接続される第1ランドと、第2コイルに接続される第2ランドが設けられている。コアの一端をベース基板の孔に収めることで、空間効率が向上する。また、ランドを介してコイルとベース基板を電気的に接続することでも空間効率が向上する。
【0011】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施例のトランスの斜視図である。
図2】第1実施例のトランスの分解斜視図である。
図3】プリント基板の各層の平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿ったトランスの断面図である。
図5】第2実施例のトランスの断面図である。
図6】第3実施例のトランスにおける配線層の平面図である。
図7】第3実施例のトランスの回路図である。
図8】第4実施例のトランスにおける配線層の平面図である。
図9】第4実施例のトランスの回路図である。
図10】実施例のトランスのプリント基板の好適な製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)図1図4を参照して第1実施例のトランス2を説明する。図1は、トランス2の斜視図である。トランス2は、プリント基板100、コア10、ベース基板20を備える。図2に、トランス2の分解斜視図を示す。プリント基板100は7層構造である。図2では、プリント基板100の7層を分離して描いてある。
【0014】
コア10は上コア10aと下コア10bに分かれている。上コア10aと下コア10bがプリント基板100を挟んでいる。また、コア10は、プリント基板100を囲むリングコア12と、リングコア12の内側の2カ所に接続されている棒コア11を備えている。プリント基板100は貫通孔109を有しており、棒コア11が貫通孔109を通過している。
【0015】
プリント基板100とコア10のアセンブリはベース基板20に固定されている。ベース基板20は孔23を備えており、その孔23にコア10の下部が嵌る。
【0016】
プリント基板100に2個のコイル(第1コイル101と第2コイル102)が形成されている。プリント基板100において、第1コイル101と第2コイル102がどのように構成されているかを以下で説明する。
【0017】
プリント基板100は4個の配線層110a、110b、110c、110dと、3個の絶縁層120a、120b、120cを含んでいる。配線層110aから配線層110dに向けて、下から上へと積層されている。隣り合う配線層の110a、110bの間に絶縁層120aが挟まれている。隣り合う配線層の110b、110cの間に絶縁層120bが挟まれている。隣り合う配線層の110c、110dの間に絶縁層120cが挟まれている。「配線層」とは、エッチングなどにより絶縁基板の表面に形成された導体パターンの層である。配線層110a、110b、110c、110dのそれぞれに描かれている太線は、配線パターン(巻線パターン)を表している。配線層は、絶縁基板の上面と下面に設けられている。配線層は導体層、あるいは導体パターン層と呼ばれることがある。
【0018】
絶縁層120aと120cは、絶縁基板であり、絶縁層120bはプリプレグと呼ばれる絶縁材料で作られている。絶縁層120aの下面に第1配線層110aが形成されており、絶縁層120aの上面に第2配線層110bが形成されている。絶縁層120cの下面に第3配線層110cが形成されており、絶縁層120cの上面に第4配線層110dが形成されている。第2配線層110bと第3配線層110cの間に絶縁層120bが挟まれている。絶縁層120a、120cと、絶縁層120bは、材質は異なるが、同じ機能(隣り合う配線層の間の絶縁)を担う。
【0019】
以下では、第1-第4配線層110a、110b、110c、110dのいずれかを示す場合には配線層110と称し、第1-第3絶縁層120a、120b、120cのいずれかを示す場合には絶縁層120と称する場合がある。
【0020】
図3にプリント基板100の各層の平面図を示す。第1配線層110aが最も下に位置し、第4配線層110dが最も上に位置する。各配線層と各絶縁層には貫通孔109が、設けられており、先に述べたように、貫通孔109に棒コア11が嵌る。また、それぞれの絶縁層120には第1ビア121と第2ビア122が設けられている。また、プリント基板100には、基板全体を貫通する貫通ビア123、124が設けられている。
【0021】
それぞれの配線層110には、第1巻線パターン111と第2巻線パターン112が備えられている。第1巻線パターン111と第2巻線パターン112は各配線層110において絶縁されている。第1巻線パターン111と第2巻線パターン112のそれぞれは貫通孔109(すなわち棒コア11)を囲むように配置されている。
【0022】
説明の便宜上、第1巻線パターン111の一端を始点111aと称し、他端を終点111bと称する。理解を助けるために、図3では始点111aをグレーハッチング付きの丸で示し、終点111bを黒丸で示してある。各配線層110において、第1巻線パターン111は始点111aから終点111bに向けて、貫通孔109(棒コア11)を時計回りに囲んでいる。複数の配線層110の積層方向にて隣り合う第1巻線パターン111はそれらの間の絶縁層120設けられた第1ビア121で接続されている。下側の配線層110の第1巻線パターン111の終点111bの直上に上側の配線層110の第1巻線パターン111の始点111aが位置する。下側の配線層110の第1巻線パターン111の終点111bが第1ビア121により上側の配線層110の第1巻線パターン111の始点111aに接続される。
【0023】
第1配線層110aから第4配線層110dまで、複数の第1巻線パターンが順次に直列に接続される。複数の第1巻線パターン111は、棒コア11を右回りに巻く第1コイル101を形成する。
【0024】
4つの配線層110の第2巻線パターン112も同様であり、複数の第2巻線パターン112が順次に直列に接続され、棒コア11を右回りに巻く第2コイル102を形成する。なお、積層方向で隣り合う第2巻線パターン112は、それらの間の絶縁層120の第2ビア122で接続される。
【0025】
第1コイル101と第2コイル102が1個の棒コア11を囲んでいる。例えば第1コイル101に交流を流すと棒コア11に発生する磁界を介して第2コイル102に交流が発生する。すなわち、第1コイル101(複数の第1巻線パターン111)と第2コイル102(複数の第2巻線パターン112)とコア10がトランスを構成する。
【0026】
第1コイル101と第2コイル102は同じ複数の配線層110に作られている。従って、第1コイル101と第2コイル102の間の絶縁は、第1巻線パターン111と第2巻線パターン112の間の距離Wで確保される。隣り合う配線層110の間の絶縁層120の厚みは第1コイル101と第2コイル102の間の絶縁性能に影響しない。絶縁層は、コイルの隣り合う巻線間の絶縁を確保する。コイルの隣り合う巻線間の電圧差は小さいので、絶縁層120に求められる絶縁性能は低い。すなわち、トランス2は、厚い絶縁層が不要であるため、プリント基板100の厚みを抑えることができる。絶縁層120の厚みは、第1巻線パターン111と第2巻線パターン112の間の距離W(図3参照)よりも短くできる。
【0027】
図3のIV-IV線の断面に相当するトランス2の断面を図4に示す。図4は、各配線層110の第1巻線パターン111の始点111aと終点111bを通る断面を示している。
【0028】
先に述べたように、第1配線層110aの第1巻線パターン111の終点111bの直上に第2配線層110bの第1巻線パターン111の始点111aが位置している。終点111bと始点111aは、それらの間の絶縁層120aの第1ビア121で接続される。第2配線層110bの第1巻線パターン111の終点111bの直上に第3配線層110cの第1巻線パターン111の始点111aが位置している。第2配線層110bと第3配線層110cの第1巻線パターン111は、それらの間の絶縁層120bに設けられた第1ビア121で接続される。第3配線層110cの第1巻線パターン111の終点111bの直上に第4配線層110dの第1巻線パターン111の始点111aが位置している。第3配線層110cと第4配線層110dの第1巻線パターン111は、それらの間の絶縁層120cに設けられた第1ビア121で接続される。図4から理解されるように、一つの配線層(例えば第1配線層110a)の始点111aの位置は、他の配線層(例えば第2配線層110b)の始点111aの位置と異なっている場合がある。終点111bについても同様である。
【0029】
プリント基板100はベース基板20の上に固定される。ベース基板20の上面には第1ランド21a、21bが設けられている。最下層の第1配線層110aの第1巻線パターン111の始点111aが、第1コイル101の始点に相当する。第1コイル101の始点(最下層の第1配線層110aの始点111a)は、ベース基板20の第1ランド21aに接続される。
【0030】
最上層の第4配線層110dの第1巻線パターン111の終点111bが、第1コイル101の終点に相当する。第4配線層110dの終点111bの直下には、プリント基板100の上から下まで貫通する貫通ビア123が位置している。第1コイル101の終点(最上層の第4配線層110dの終点111b)は、貫通ビア123を介してベース基板20の第1ランド21bに接続される。第1ランド21a(21b)は、ビア24a(24b)を介してベース基板20の下面に配置された導電パターン25a(25b)に接続されている。導電パターン25a、25bは、不図示の回路につながっている。不図示の回路がトランス2を利用する。
【0031】
第1コイル101の始点/終点と同様に、第2コイル102の始点と終点は、ベース基板20に設けられた第2ランド22a、22b(図2、3参照)に接続されている。第2コイル102の始点は最下層の第1配線層110aに位置しており、第2ランド22aに直接に接続される。第2コイル102の終点は最上層の第4配線層110dに位置しており、プリント基板100を貫通する貫通ビア124を介して第2ランド22bに接続される。
【0032】
図1、2に戻り、トランス2の別の利点を説明する。コア10の下部は、ベース基板20の孔23に嵌る。ベース基板20の上面にはランド21a、21b(22a、22b)が設けられており、これらのランドが第1コイル101(第2コイル102)に接続される。ベース基板20には、トランスを利用する回路が実装される。ベース基板20の上記構造により、トランスと回路をコンパクトにまとめることができる。
【0033】
(第2実施例)図5に、第2実施例のトランス2aの断面図を示す。図2は、トランス2aのプリント基板200の断面図である。トランス2aはコア10を有する。コア10は、プリント基板200を貫通する棒コア11と、プリント基板200を囲むリングコア12を含む。棒コア11の両端は、リングコア12の内周面に接続されている。コア10は、第1実施例のトランス2のコア10と同じである。
【0034】
プリント基板200は、4個の配線層210a-210d、3個のサブ配線層230a-230c、6個の絶縁層220を備える。それらの層は積層されている。隣り合う配線層の間に一つの絶縁層が挟まれている。
【0035】
配線層210a-210dは、第1実施例の配線層110a-110dと同じであり、各配線層は第1巻線パターン211と第2巻線パターン212を備えている。サブ配線層230a-230cは、第1巻線パターン211は備えるが第2巻線パターンは備えない。複数のサブ配線層230a-230cは、積層方向において均等に配置されている。
【0036】
積層方向で隣り合う第1巻線パターン211は接続されており、直列に接続された複数の第1巻線パターン211は第1コイルを構成する。積層方向で隣り合う第2巻線パターン212も接続されており、直列に接続された複数の第2巻線パターン212は第2コイルを構成する。図5から明らかなとおり、第1巻線パターン211の数は第2巻線パターン212の数よりも多くなる。すなわち、第1コイルの巻回数が第2コイルの巻回数よりも多い。また、サブ配線層230はプリント基板200において均等に分布している。それゆえ、2個のコイル(第1コイルと第2コイル)は積層方向でバランスよく対向する。そのような構造により、2個のコイルの間の漏れ磁束が抑えられ、一方のコイルから他方のコイルへの電力伝達効率が向上する。
【0037】
(第3実施例)図6、7を参照して第3実施例のトランス2bを説明する。図6はトランス2bのプリント基板300の配線層310a-310cの平面図である。配線層310a-310cは、間に絶縁層を挟みつつ積層されている。絶縁層の図示は省略した。第1配線層310aが最下層であり、第3配線層310cが最上層である。配線層310a-310cは貫通孔309を備えており、貫通孔309に不図示のコアが挿通される。
【0038】
配線層310b、310cのそれぞれには、貫通孔309(コア)を囲むように第1巻線パターン311、第2巻線パターン312、第3巻線パターン313が備えられている。第1実施例の場合と同様に、第1巻線パターン311の始点311aをハッチング付きの丸で示し、終点311bを黒丸で示してある。第2巻線パターン312の始点312aと終点312bも同様である。第3巻線パターン313の始点313aと終点313bも同様である。
【0039】
各配線層において、巻線パターン311、312、313は相互に絶縁されている。積層方向において隣り合う第1巻線パターン311は接続されており、直列に接続された複数の第1巻線パターン311は、貫通孔309(コア)を囲む第1コイル301を構成する。積層方向において隣り合う第2巻線パターン312は接続されており、直列に接続された複数の第2巻線パターン312は、貫通孔309(コア)を囲む第2コイル302を構成する。積層方向において隣り合う第3巻線パターン313は接続されており、直列に接続された複数の第3巻線パターン313は、貫通孔309(コア)を囲む第3コイル303を構成する。各配線層310において、第2巻線パターン312と第3巻線パターン313は、第1巻線パターン311を挟んでいる。すなわち、第2コイル302と第3コイル303の間に第1コイル301が位置する。
【0040】
符号321、322、323は、プリント基板300を上から下まで貫通する貫通ビアを示している。最下層の第1配線層310aには、端子341、342、343が設けられている。端子341は、第2配線層310bの第1巻線パターン311の始点311aに接続されている。第1貫通ビア321の上端は、最上層の第3配線層310cにて、第1巻線パターン311の終点311bに接続されている。すなわち、端子341と第1貫通ビア321は、第1コイル301の始点と終点に相当する。
【0041】
端子342は、第2配線層310bの第2巻線パターン312の始点312aに接続されている。第2貫通ビア322の上端は、最上層の第3配線層310cにて、第2巻線パターン312の終点312bに接続されている。すなわち、端子342と第2貫通ビア322は、第2コイル302の始点と終点に相当する。端子343は、配線層310bの第3巻線パターン313の始点313aに接続されている。第3貫通ビア323の上端は、最上層の第3配線層310cにて、第3巻線パターン313の終点313bに接続されている。すなわち、端子343と第3貫通ビア323は、第3コイル303の始点と終点に相当する。
【0042】
最下層の第1配線層310aにて、第2貫通ビア322と端子343が接続されている。すなわち、第2コイル302と第3コイル303が直列に接続される。図7に、トランス2bの回路図を示す。第2コイル302と第3コイル303が直列に接続され、第1コイル301は、第2コイル302及び第3コイル303からは絶縁される。図7に示すように、第1コイル301は一次側のコイルに好適であり、第2コイル302と第3コイル303は二次コイルに好適である。そして、図6に示したように、第1コイル301の内側と外側にそれぞれ第2コイル302と第3コイル303が隣接する。第1コイル301から第2コイル302と第3コイル303のそれぞれへ均等に電力が伝送される。このトランス2bは、一次コイル(第1コイル301)から二次コイル(第2コイル302と第3コイル303)への電力伝達効率が良い。
【0043】
(第4実施例)図8、9を参照して第3実施例のトランス2cを説明する。図8はトランス2cのプリント基板300の配線層310a-310cの平面図である。第4実施例のトランス2cは、第2コイル302と第3コイル303の接続関係が第3実施例のトランス2bと異なるが、それ以外の構成はトランス2bの構成と同じである。すなわち、第2貫通ビア322と第3貫通ビア323と端子342、343の接続関係が第3実施例のトランス2bと異なる。図8に示されているように、第2貫通ビア322と第3貫通ビア323が接続され、端子342と端子343が接続されている。前述したように、端子342は第2コイル302の始点に相当し、端子343は第3コイル303の始点に相当する。また、第2貫通ビア322は第2コイル302の終点に相当し、第3貫通ビア323は第3コイル303の終点に相当する。すなわち、第4実施例のトランス2cでは、第2コイル302と第3コイル303が並列に接続されている。図9に、トランス2cの回路図を示す。第3実施例のトランス2bと同様に、第4実施例のトランス2cでも、第1コイル301の内側と外側にそれぞれ第2コイル302と第3コイル303が隣接する。第1コイル301から第2コイル302と第3コイル303のそれぞれへ均等に電力が伝送される。このトランス2cも、一次コイル(第1コイル301)から二次コイル(第2コイル302と第3コイル303)への電力伝達効率が良い。
【0044】
(製造方法)図10を参照しつつ実施例のトランスのプリント基板の好適な製造方法を説明する。図10のプリント基板400は、8層の配線層410a-410hを備えている。隣り合う配線層の間には絶縁層420(または絶縁層421または絶縁層422)が挟まれている。図10では、配線層をハッチング付きの矩形で表し、巻線パターンの図示は省略した。
【0045】
まず、4個の絶縁層420のそれぞれの上面に、巻線パターンが作られた配線層410a、410c、410e、410gを形成し、それぞれの下面に、巻線パターンが作られた配線層410b、410d、410f、410hを形成する(図10(A))。4個の絶縁層420は絶縁基板である。
【0046】
続いて、各絶縁層に、上下の配線層の巻線パターンを接続するビア431を形成する(図10(B))。次に、配線層410a、410bが形成された絶縁層420と、配線層410c、410dが形成された絶縁層420を、間に別の絶縁層421を挟んで圧着する(図10(C))。同様に、配線層410e、410fが形成された絶縁層420と、配線層410g、410hが形成された絶縁層420を、間に別の絶縁層421を挟んで圧着する(図10(C))。絶縁層421は、プリプレグと呼ばれる絶縁材料で作られている。
【0047】
次に、配線層410cと配線層410dの巻線パターンを接続するビア432aを形成する(図10(D))。ビア432aは、配線層410a-410dを貫通する。ただし、配線層410a、410dには、ビア432aを避けて巻線パターンが形成されている。配線層410b、410cには、巻線パターンの端がビア432aと接触するように巻線パターンが形成されている。配線層410eから配線層410hまでの積層体にも同様にビア432bを形成する。ビア432bは、配線層410f、410gの巻線パターンを接続する。配線層410e、410hには、ビア432bを避けるように巻線パターンが形成されている。
【0048】
続いて、配線層410a-410dの積層体と、配線層410e-410hの積層体を、間に絶縁層422を挟んで圧着する(図10(E))。最後に、配線層410aから配線層410hまでプリント基板400を貫通するビア433を形成する。ただし、配線層410d、410eには、巻線パターンの端がビア433に接触するように巻線パターンが形成されている。配線層410a-410c、410f-410hには、ビア433を避けるように巻線パターンが形成されている。
【0049】
上記の工程の結果、配線層410a、410bの巻線パターンは最短のビア431で接続され、配線層410b、410cの巻線パターンはビア432aで接続される。配線層410c、410dの巻線パターンは別のビア431で接続される。配線層410d、410eの巻線パターンは最長のビア433で接続される。配線層410e-410hの巻線パターンも同様に接続される。こうして、8層の配線層410a-410hの巻線パターンが直列に接続される。最短のビア431は、他のビア(ビア432a、432b、433)よりも細い方が望ましい。最長のビア433は、他のビア(ビア431、432a、432b)よりも太いことが望ましい。ただし、ビアの太さは、他の要因で決めてもよい。配線層の積層方向にて、できるだけ多くのビアが重なるように、ビアの位置を定めるとよい。
【0050】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。それぞれの配線層の巻線パターンは、コアを一巡するように形成されてもよいし、コアを複数回囲むように形成されてもよい。あるいは、巻線パターンは、コアの一部を囲むように形成されてもよい。複数の配線層の巻線パターンは形状がわずかに異なる。隣り合う巻線パターンの一方の始点と他方の終点は積層方向で重なるように配置される。しかし、残りの終点と始点は積層方向で重ならないように配置される。
【0051】
複数の第1巻線パターンは、コアを一方向に回るように直列に接続される。別言すれば、複数の第1巻線パターンは、コアを周回するように直列に接続され、第1コイルを構成する。複数の第2(第3)巻線パターンも同様に接続される。
【0052】
前述したように、2個のコイルの間の絶縁は、巻線パターン間の距離で担保され、絶縁層の厚みに依存しない。絶縁層の厚みは、配線層における第1巻線パターンと第2巻線パターンの間の距離Wよりも短くてよい。
【0053】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
2、2a、2b、2c:トランス 10:コア 11:棒コア 12:リングコア 20:ベース基板 21a、21b、22a、22b:ランド 23:孔 100、200、300、400:プリント基板 101、301:第1コイル 102、302:第2コイル 109、309:貫通孔 110、110a-110d、210a-210d:配線層 111、211:第1巻線パターン 112、212:第2巻線パターン 120、120a-120c、220、420、421、422:絶縁層 121、122、123、124:ビア 230a-230c:サブ配線層 303:第3コイル 310、310a-310c、410a-410h:配線層 311、312、313:巻線パターン 321、322、323:貫通ビア 341-343:端子 431、432、433:ビア
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10