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特開2024-164506炭化珪素半導体装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164506
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241120BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241120BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241120BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01L29/78 652B
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 652T
H01L29/78 652K
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080022
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大瀬 直之
(57)【要約】
【課題】デバイス設計の自由度が低下するのが抑制されたSiC半導体装置を提供する。
【解決手段】
4H構造の炭化珪素を含む第1炭化珪素層14と、第1炭化珪素層の上面に積層され、且つ3C構造の炭化珪素を含む第2炭化珪素層15と、第1炭化珪素層に設けられた第1導電型のドリフト層2と、第1炭化珪素層において、ドリフト層の上面側に設けられた第2導電型のベース領域82a,82bと、下面がベース領域に接し且つ第1炭化珪素層に設けられたソース拡張領域61a,61b及び下面がソース拡張領域に接し且つ第2炭化珪素層に設けられたソースコンタクト領域62a,62bを有する第1導電型の主領域6a,6bと、主領域及びベース領域を貫通するトレンチ7aの内側に設けられたゲート絶縁膜7bと、トレンチの内側にゲート絶縁膜を介して埋め込まれたゲート電極7cと、ソースコンタクト領域に接して設けられた主電極(11,12)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4H構造の炭化珪素を含む第1炭化珪素層と、
前記第1炭化珪素層の上面に積層され、且つ3C構造の炭化珪素を含む第2炭化珪素層と、
前記第1炭化珪素層に設けられた第1導電型のドリフト層と、
前記第1炭化珪素層において、前記ドリフト層の上面側に設けられた第2導電型のベース領域と、
下面が前記ベース領域に接し且つ前記第1炭化珪素層に設けられたソース拡張領域及び下面が前記ソース拡張領域に接し且つ前記第2炭化珪素層に設けられたソースコンタクト領域を有する第1導電型の主領域と、
前記主領域及び前記ベース領域を貫通するトレンチの内側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記トレンチの内側に前記ゲート絶縁膜を介して埋め込まれたゲート電極と、
前記ソースコンタクト領域に接して設けられた主電極と、
を備えた、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極の前記ゲート絶縁膜に接する位置の上面は、前記第2炭化珪素層と前記第1炭化珪素層との境界面より深い位置にある、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記ソース拡張領域と前記ソースコンタクト領域との間は、前記第1炭化珪素層と前記第2炭化珪素層との境界面により画されている、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極の前記ゲート絶縁膜に接する位置の上面は、前記ソース拡張領域の下面より浅い位置にある、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第2炭化珪素層の厚みは、0.2μm以上、0.5μm以下である、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第2炭化珪素層に含まれる3C構造の炭化珪素の割合は、10パーセント以上、100パーセント以下である、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第2炭化珪素層に設けられた第2導電型のベースコンタクト領域を備え、
前記ベースコンタクト領域は、側面が前記主領域に接し、上面が前記主電極に接し、且つ、深さ方向に沿った寸法が前記ソースコンタクト領域と同じである、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
活性部と、平面視で前記活性部の周囲を囲んで設けられた耐圧構造部とを備え、
前記第2炭化珪素層は、前記活性部と前記耐圧構造部とに亘って前記第1炭化珪素層の上面に積層され、
前記ベース領域、前記主領域、及び前記トレンチは、前記活性部に設けられている、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記耐圧構造部において深さ方向に前記第2炭化珪素層と前記第1炭化珪素層とに亘って設けられ、且つ第2導電型の炭化珪素からなる電界緩和領域を備える、請求項8に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
4H構造の炭化珪素を含み且つ第1導電型のドリフト層を含む第1炭化珪素層を形成する工程と、
3C構造の炭化珪素を含む第2炭化珪素層を、前記第1炭化珪素層の上面に積層する工程と、
前記第1炭化珪素層において、前記ドリフト層の上面側に第2導電型のベース領域を形成する工程と、
前記第1炭化珪素層及び前記第2炭化珪素層に亘って、ソース拡張領域及びソースコンタクト領域の積層構造を有し且つ第1導電型の主領域を形成する工程と、
前記主領域及び前記主領域の下面側に位置する前記ベース領域を貫通するトレンチを形成する工程と、
前記トレンチの内側に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ソースコンタクト領域の上面に接するように主電極を形成する工程と、
を含み、
前記主領域を形成する工程において、前記第1炭化珪素層に前記ソース拡張領域を形成し、前記第2炭化珪素層に前記ソースコンタクト領域を形成する、
炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ゲート電極を形成する工程において、前記ゲート電極の前記ゲート絶縁膜に接する位置の上面を、前記第2炭化珪素層と前記第1炭化珪素層との境界面より深い位置に設ける、請求項10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2炭化珪素層を積層する工程は、炭化珪素からなるアモルファス膜を前記第1炭化珪素層の上面に成膜する工程と、前記アモルファス膜を熱処理する工程と、を含む、請求項10又は11に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記アモルファス膜は、プラズマエンハンスド化学気相成長法、又はスパッタリング法により成膜される、請求項12に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2炭化珪素層を積層する工程は、3C構造の炭化珪素を含む炭化珪素膜を前記第1炭化珪素層の上面に成膜することを含む、請求項10又は11に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2炭化珪素層は、熱化学気相成長法により成膜される、請求項14に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ソースコンタクト領域は、前記第2炭化珪素層にn型不純物をイオン注入することにより形成される、請求項10又は11に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2炭化珪素層にp型不純物をイオン注入することにより、前記ソースコンタクト領域に接するようにベースコンタクト領域を形成する工程を含む、請求項10又は11に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素(SiC)を用いたSiC半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、六方晶単結晶の炭化珪素基板にリンをイオン注入することでアモルファス層を形成し、熱処理することでアモルファス層を立方晶単結晶のn型炭化珪素に再結晶化させ、n型炭化珪素の上面にニッケルを蒸着することで電極を形成する半導体装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、4H-SiCからなるn型SiCの第1主面上に形成させたn型エピタキシャル成長層内において、n型ソース領域と、n型ソース領域内に形成されたn型3C-SiC領域及びp型電位固定領域とを有し、n型3C-SiC領域及びp型電位固定領域と接してバリアメタル膜が形成され、バリアメタル膜上にソース配線用電極が形成される半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-49198号公報
【特許文献2】国際公開第2017/042963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3C-SiC領域と4H-SiC領域との境界が曖昧になると、デバイス設計の自由度が低下する可能性があった。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑み、デバイス設計の自由度が低下するのが抑制されたSiC半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、4H構造の炭化珪素を含む第1炭化珪素層と、第1炭化珪素層の上面に積層され、且つ3C構造の炭化珪素を含む第2炭化珪素層と、第1炭化珪素層に設けられた第1導電型のドリフト層と、第1炭化珪素層において、ドリフト層の上面側に設けられた第2導電型のベース領域と、下面がベース領域に接し且つ第1炭化珪素層に設けられたソース拡張領域及び下面がソース拡張領域に接し且つ第2炭化珪素層に設けられたソースコンタクト領域を有する第1導電型の主領域と、主領域及びベース領域を貫通するトレンチの内側に設けられたゲート絶縁膜と、トレンチの内側にゲート絶縁膜を介して埋め込まれたゲート電極と、ソースコンタクト領域に接して設けられた主電極と、を備えたSiC半導体装置であることを要旨とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の他の態様は、4H構造の炭化珪素を含み且つ第1導電型のドリフト層を含む第1炭化珪素層を形成する工程と、3C構造の炭化珪素を含む第2炭化珪素層を、第1炭化珪素層の上面に積層する工程と、第1炭化珪素層において、ドリフト層の上面側に第2導電型のベース領域を形成する工程と、第1炭化珪素層及び第2炭化珪素層に亘って、ソース拡張領域及びソースコンタクト領域の積層構造を有し且つ第1導電型の主領域を形成する工程と、主領域及び主領域の下面側に位置するベース領域を貫通するトレンチを形成する工程と、トレンチの内側に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、ソースコンタクト領域の上面に接するように主電極を形成する工程と、を含み、主領域を形成する工程において、第1炭化珪素層にソース拡張領域を形成し、第2炭化珪素層にソースコンタクト領域を形成する、SiC半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、デバイス設計の自由度が低下するのが抑制されたSiC半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るSiC半導体装置の一例を示す平面概略図である。
図2図1のA-A切断線に沿って断面視した時の断面構成を示す縦断面図である。
図3図2中の領域Bを拡大した断面概略図である。
図4】比較例に係るSiC半導体装置の断面概略図である。
図5】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図6】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図5に引き続く断面概略図である。
図7】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図6に引き続く断面概略図である。
図8】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図7に引き続く断面概略図である。
図9】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図8に引き続く断面概略図である。
図10】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図9に引き続く断面概略図である。
図11】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図10に引き続く断面概略図である。
図12】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図11に引き続く断面概略図である。
図13】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図12に引き続く断面概略図である。
図14】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図13に引き続く断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の第1実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0012】
本明細書において、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のソース領域は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域として選択可能な「一方の主領域(第1主領域)」である。また、MOS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタにおいては、「一方の主領域」はカソード領域として選択可能である。MOSFETのドレイン領域は、IGBTにおいてはコレクタ領域を、サイリスタにおいてはアノード領域として選択可能な半導体装置の「他方の主領域(第2主領域)」である。本明細書において単に「主領域」と言うときは、当業者の技術常識から妥当な第1主領域又は第2主領域のいずれかを意味する。
【0013】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」は「おもて面」と読み替えてもよく、「下面」は「裏面」と読み替えてもよい。
【0014】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。またnやpに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じnとnとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0015】
また、SiC結晶には結晶多形が存在し、主なものは立方晶の3C、及び六方晶の4H、6Hである。室温における禁制帯幅は3C-SiCでは2.23eV、4H-SiCでは3.26eV、6H-SiCでは3.02eVの値が報告されている。以下の説明では、4H-SiC及び3C-SiCを主に用いる場合を例示する。
【0016】
(第1実施形態)
<SiC半導体装置の構造>
第1実施形態に係るSiC半導体装置(炭化珪素半導体装置、半導体チップ)100は、図1に示すように、平面視で、例えば矩形状の平面形状を有した活性部101と、活性部101の周囲を囲むように設けられた耐圧構造部102とを備える。また、SiC半導体装置100は、平面視で、活性部101と耐圧構造部102との間には、活性部101を囲むように設けられた領域103を備えている。
【0017】
図2は、図1のA-A線方向から見た断面図である。なお、図2においては、活性部101の一部の図示を省略している。図2に示すように、活性部101には活性素子が含まれ、領域103にはリング領域9bが含まれ、耐圧構造部102には終端構造として後述の電界緩和領域9aが複数含まれる場合を例示している。
【0018】
SiC半導体装置100は、図2に示すように、活性素子としてトレンチゲート型のMOSFETを含む場合を例示する。なお、図2では、1つのトレンチ7aに埋め込まれた絶縁ゲート型電極構造(7b,7c)を含む単位セルを例示するが、実際には、この単位セルが周期的に多数配列されている。
【0019】
また、SiC半導体装置100は、炭化珪素からなる第1炭化珪素層14と、炭化珪素からなる第2炭化珪素層15と、を有する。第1炭化珪素層14は、主に4H-SiCを含む。第1炭化珪素層14に含まれる4H-SiCの割合は、例えば、70パーセント以上、100パーセント以下程度である。第2炭化珪素層15は、第1炭化珪素層14の上面に積層された炭化珪素膜であり、且つ3C-SiCを含む。第2炭化珪素層15に含まれる3C-SiCの割合は、例えば10パーセント以上、100パーセント以下程度である。以下、3C-SiCを3C構造と呼び、4H-SiCを4H構造と呼ぶ場合がある。なお、第2炭化珪素層15の膜厚は、SiC半導体装置100のチップ面内において、ほぼ均一である。
【0020】
第1炭化珪素層14は、活性部101と、耐圧構造部102と、領域103と、に亘って設けられている。第2炭化珪素層15は、活性部101と、耐圧構造部102と、領域103と、に亘って、第1炭化珪素層14の上面に積層されている。第1炭化珪素層14と第2炭化珪素層15との境界面を、境界面Sと呼ぶ。より具体的には、第1炭化珪素層14の上面と第2炭化珪素層15の下面との境界面を、境界面Sと呼ぶ。境界面Sは、SiC半導体装置100の縦断面を観察した際に確認することができる。図2に示すように、境界面Sは、断面視すると、例えば第1炭化珪素層14の上面の表面状態にもよるが、直線状に見える。また、第2炭化珪素層15は、少なくとも上面側の部分(第1炭化珪素層14側とは反対側の部分)が3C-SiCを含んでいる。
【0021】
SiC半導体装置100は、活性部101、耐圧構造部102、及び領域103に亘って設けられた、第1導電型(n型)のドリフト層2を備える。ドリフト層2は、第1炭化珪素層14に設けられている。ドリフト層2は、例えば、4H-SiC等のSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。ドリフト層2の不純物濃度は、例えば1×1015cm-3以上、5×1016cm-3以下程度である。ドリフト層2の厚さは、例えば1μm以上、100μm以下程度である。ドリフト層2の不純物濃度及び厚さは、耐圧仕様等に応じて適宜調整可能である。
【0022】
活性部101及び領域103に亘って、ドリフト層2の上面側には、ドリフト層2より高不純物濃度の第1導電型(n型)の電流拡散層(CSL)3が選択的に設けられている。電流拡散層3は、第1炭化珪素層14に設けられている。電流拡散層3の下面は、ドリフト層2の上面に接している。電流拡散層3は、例えば、Nのイオン注入で形成されている。電流拡散層3の不純物濃度は、例えば5×1016cm-3以上、5×1017cm-3以下程度である。なお、電流拡散層3は必ずしも設ける必要はなく、電流拡散層3を設けない場合にはドリフト層2が電流拡散層3の領域まで設けられていてよい。
【0023】
活性部101において、電流拡散層3の上面側には第2導電型(p型)のベース領域5a,5bが選択的に設けられている。ベース領域5a,5bは、第1炭化珪素層14に設けられている。ベース領域5a,5bの下面は、電流拡散層3の上面に接している。なお、電流拡散層3を設けない場合には、ベース領域5a,5bの下面は、ドリフト層2の上面に接している。ベース領域5a,5bは、例えば、電流拡散層3にアルミニウム等のp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ベース領域5a,5bは、4H-SiC等のSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されていても良い。ベース領域5a,5bの不純物濃度は、例えば1×1016cm-3以上、1×1018cm-3以下程度である。
【0024】
活性部101において、ベース領域5a,5bの上面側には、ドリフト層2より高不純物濃度の第1導電型(n型)の第1主領域(ソース領域)6a,6bが選択的に設けられている。ソース領域6a,6bは、第1炭化珪素層14と第2炭化珪素層15とに亘って設けられている。ソース領域6a,6bは、例えば、第2炭化珪素層15と電流拡散層3とに亘る領域にn型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。n型不純物として例えば燐(P)又は窒素(N)を含む。ソース領域6a,6bは、n型不純物として砒素(As)を含んでいてもよい。ソース領域6a,6bの不純物濃度は、例えば2×1019cm-3以上、1×1020cm-3未満程度である。
【0025】
ソース領域6aは、下層であるn型のソース拡張領域61aと、上層であるn型のソースコンタクト領域62aの2層の積層構造を備える。ソース拡張領域61aの下面は、ベース領域5aの上面に接している。ソース拡張領域61aの上面は、ソースコンタクト領域62aの下面に接している。ソース領域6bは、下層であるn型のソース拡張領域61bと、上層であるn型のソースコンタクト領域62bの2層の積層構造を備える。ソース拡張領域61bの下面は、ベース領域5bの上面に接している。ソース拡張領域61bの上面は、ソースコンタクト領域62bの下面に接している。
【0026】
ソース領域6a,6bのうちソース拡張領域61a、61bは第1炭化珪素層14に設けられ、ソースコンタクト領域62a,62bは第2炭化珪素層15に設けられている。換言すると、ソース領域6a,6bのうち第1炭化珪素層14に設けられた部分をソース拡張領域61a、61bと呼び、第2炭化珪素層15に設けられた部分をソースコンタクト領域62a,62bと呼ぶ。ソース拡張領域61aとソースコンタクト領域62aとの間、及びソース拡張領域61bとソースコンタクト領域62bとの間は、境界面Sにより画されている。ソース拡張領域61a,61bは、第2炭化珪素層15を含まない。そのため、ソース拡張領域61a,61bは、3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含まない、若しくはたとえ3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含んでいたとしても、僅かである。
【0027】
ソースコンタクト領域62a,62bは、3C-SiCを含む。ソースコンタクト領域62a,62bに含まれる3C-SiCの割合は第2炭化珪素層15と同じであり、例えば10パーセント以上、100パーセント以下程度である。3C-SiCの割合が100パーセントである場合、ソースコンタクト領域62a,62b及び第2炭化珪素層15は3C-SiCからなる。3C-SiCの割合が100パーセントより小さい場合、ソースコンタクト領域62a,62b及び第2炭化珪素層15は、3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含んでいても良い。また、ソースコンタクト領域62a,62bは、第2炭化珪素層15の上面から下面までに亘って形成されている。そのため、ソースコンタクト領域62a,62bの深さ方向に沿った寸法は、第2炭化珪素層15と同じである。
【0028】
図2に示すように、ソース領域6a,6bの上面からソース領域6a,6bの上面の法線方向(深さ方向)に向かって、ソース領域6a,6b及びベース領域5a,5bを貫通するトレンチ7aが設けられている。トレンチ7aの下面は電流拡散層3に達する。トレンチ7aの幅は例えば1μm以下程度である。トレンチ7aの左側の側面には、ソース領域6a及びベース領域5aが接している。トレンチ7aの右側の側面には、ソース領域6b及びベース領域5bが接している。トレンチ7aは、図2の紙面の奥行方向及び手前方向にストライプ状に延伸する平面パターンを有していてもよく、ドット状の平面パターンを有していてもよい。
【0029】
トレンチ7aの下面及び両側の側面に沿ってゲート絶縁膜7bが設けられている。トレンチ7aの内側にはゲート絶縁膜7bを介してゲート電極7cが埋め込まれている。ゲート絶縁膜7b及びゲート電極7cによりトレンチゲート型の絶縁ゲート型電極構造(7b,7c)が構成されている。
【0030】
ゲート絶縁膜7bとしては、シリコン酸化膜(SiO膜)の他、酸窒化珪素(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、窒化珪素(Si)膜、アルミニウム酸化物(Al)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y)膜、ハフニウム酸化物(HfO)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO)膜、タンタル酸化物(Ta)膜、ビスマス酸化物(Bi)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。ゲート電極7cの材料としては、例えばp型不純物又はn型不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)や、チタン(Ti)、タングステン(W)又はニッケル(Ni)等の高融点金属が使用可能である。
【0031】
電流拡散層3の内部で、且つトレンチ7aの底部には、第2導電型(p型)のゲート底部保護領域4が設けられている。ゲート底部保護領域4は、第1炭化珪素層14に設けられている。ゲート底部保護領域4の上面はトレンチ7aの下面に接している。ゲート底部保護領域4の上面はトレンチ7aの下面に接しなくともよい。ゲート底部保護領域4の不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。ゲート底部保護領域4は、例えば、電流拡散層3にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ゲート底部保護領域4は、図示省略する部分でソース配線電極12に電気的に接続されており、MOSFETのオフ時に空乏化してトレンチ7aの下面にかかる電界を緩和させる機能を有する。
【0032】
電流拡散層3の上面側には、第2導電型(p型)の埋込領域81a,81bが、ベース領域5a,5bに接して選択的に設けられている。埋込領域81a,81bは、第1炭化珪素層14に設けられている。埋込領域81a,81bの下面は、電流拡散層3に接している。埋込領域81aの側面は、電流拡散層3及びベース領域5aに接し、埋込領域81bの側面は、電流拡散層3及びベース領域5bに接している。埋込領域81a,81bは、例えば、電流拡散層3にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。埋込領域81a,81bの不純物濃度は、例えば5×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。
【0033】
埋込領域81a,81bの上面側には、埋込領域81aより高不純物濃度のp型のベースコンタクト領域82a,82bが選択的に設けられている。ベースコンタクト領域82a,82bは、第2炭化珪素層15に設けられている。ベースコンタクト領域82aの下面は埋込領域81aの上面に接し、ベースコンタクト領域82aの側面はソース領域6aに接する。ベースコンタクト領域82bの下面は埋込領域81bの上面に接し、ベースコンタクト領域82bの側面はソース領域6bに接する。また、ベースコンタクト領域82aはベース領域5aと電気的に接続され、ベースコンタクト領域82bはベース領域5bと電気的に接続されている。ベースコンタクト領域82a,82bは、例えば、第2炭化珪素層15にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ベースコンタクト領域82a,82bの不純物濃度は、例えば2×1019cm-3以上、1×1020cm-3未満程度である。
【0034】
埋込領域81a,81b及びベースコンタクト領域82a,82bは、第2炭化珪素層15と第1炭化珪素層14とに亘ってp型不純物をイオン注入したp型のSiCからなる領域である。p型のSiCからなる領域のうち、第1炭化珪素層14に設けられた部分を埋込領域81a,81bと呼び、第2炭化珪素層15に設けられた部分をベースコンタクト領域82a,82bと呼ぶ。埋込領域81aとベースコンタクト領域82aとの間、及び埋込領域81bとベースコンタクト領域82bとの間は、境界面Sにより画されている。埋込領域81a,81bは、第2炭化珪素層15を含まない。そのため、埋込領域81a,81bは、3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含まない、若しくはたとえ3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含んでいたとしても、僅かである。
【0035】
ベースコンタクト領域82a,82bは、3C-SiCを含む。ベースコンタクト領域82a,82bに含まれる3C-SiCの割合は第2炭化珪素層15と同じであり、例えば10パーセント以上、100パーセント以下程度である。3C-SiCの割合が100パーセントである場合、ベースコンタクト領域82a,82b及び第2炭化珪素層15は3C-SiCからなる。3C-SiCの割合が100パーセントより小さい場合、ベースコンタクト領域82a,82b及び第2炭化珪素層15は、3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含んでいても良い。ベースコンタクト領域82a,82bが3C-SiCを含んでいるので、後述のソース電極(11,12)との接触抵抗を抑制できる。また、ベースコンタクト領域82a,82bは、第2炭化珪素層15の上面から下面までに亘って形成されている。そのため、ベースコンタクト領域82a,82bの深さ方向に沿った寸法は、第2炭化珪素層15及びソースコンタクト領域62a,62bと同じである。
【0036】
図3は、図2の領域Bを拡大した図である。図3を参照して、ゲート電極7c及びソース領域6aの構成について、さらに詳細に説明する。ソースコンタクト領域62a及び第2炭化珪素層15の深さ方向に沿った寸法を、d1とする。寸法d1は、例えば、0.2μm以上、0.5μm以下程度である。そして、ソース領域6aの深さ方向に沿った寸法を、d2とする。寸法d2は、例えば、1μm程度である。ソースコンタクト領域62aが3C-SiCを含むことにより、ソース電極(11,12)と低抵抗でオーミック接触することができる。
【0037】
また、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する端部の位置の上面(上端)7dは、ソースコンタクト領域62aのゲート絶縁膜7bと接する位置の下面(下端)62xより深い位置にある。換言すると、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する位置の上面7dは、境界面Sより深い位置にある。また、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する端部の位置の上面(上端)7dは、ソース拡張領域61aの下面、より具体的にはソース拡張領域61aのゲート絶縁膜7bと接する位置の下面(下端)61xより浅い位置にある。
【0038】
なお、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する位置の上面7dは、ゲート電極7cの最上面であってよい。例えば、ゲート電極7cの上面全体として下側に凸の曲面である場合には、ゲート電極7cの中央部の上面は、ゲート電極7cの端部の上面7dより深い位置にあってもよい。
【0039】
ゲート電極7cとソース拡張領域61aは、ゲート絶縁膜7bを介して互いに対向する。より具体的には、ゲート電極7cと第1炭化珪素層14は、ゲート絶縁膜7bを介して互いに対向する。ゲート電極7cとソースコンタクト領域62aは、ゲート絶縁膜7bを介して互いに対向しない。より具体的には、ゲート電極7cと第2炭化珪素層15は、ゲート絶縁膜7bを介して互いに対向しない。ソースコンタクト領域62aは、ゲート絶縁膜7bを介して絶縁膜10と対向する。より具体的には、第2炭化珪素層15は、ゲート絶縁膜7bを介して絶縁膜10と対向する。ゲート電極7cのソースコンタクト領域62aの上面からの落ち込み量d0は、ソースコンタクト領域62a及び第2炭化珪素層15の深さ方向に沿った寸法d1より大きい(d1<d0)。ゲート電極7cの落ち込み量d0及びゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する位置の上面7dの位置は、例えばゲート電極7cのエッチング条件を調整することにより制御可能である。ソース拡張領域61aは、3C-SiCを含まない若しくはたとえ含んでいたとしても僅かであるので、ソースコンタクト領域62aより結晶欠陥が少ない。
【0040】
図2に示したソース領域6bのソース拡張領域61b及びソースコンタクト領域62bは、ソース領域6aのソース拡張領域61a及びソースコンタクト領域62aとそれぞれ同様の構成であるので、重複した説明を省略する。また、ソース領域6bのソース拡張領域61b及びソースコンタクト領域62bとゲート電極7cとの位置関係は、ソース領域6aのソース拡張領域61a及びソースコンタクト領域62aとゲート電極7cとの位置関係と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0041】
図2に示すように、耐圧構造部102において、ドリフト層2の上面側には第2導電型(p型)の電界緩和領域9aが複数選択的に設けられている。図2に示す例では、ドリフト層2の上面側には電界緩和領域9aが3つ設けられている。電界緩和領域9aは、図示を省略するが、平面視で同心リング状のガードリング(フィールドリミティングリング)である。電界緩和領域9a同士の間は、ドリフト層2により分離されている。電界緩和領域9aの下面は、ドリフト層2の上面に接している。電界緩和領域9aは、例えば、ドリフト層2及び第2炭化珪素層15にアルミニウム等のp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。
【0042】
電界緩和領域9aは、深さ方向に第2炭化珪素層15と第1炭化珪素層14とに亘って設けられている。電界緩和領域9aのうち、第1炭化珪素層14に設けられた部分を第1部分91aと呼び、第2炭化珪素層15に設けられた部分を第2部分92aと呼ぶ。第1部分91aと第2部分92aとの間は、境界面Sにより画されている。第2部分92aの深さ方向に沿った寸法は、第2炭化珪素層15と同じである。第1部分91aは、例えば、その不純物濃度が埋込領域81a,81bの不純物濃度と同程度のp型である。第2部分92aは、例えば、その不純物濃度が、ベースコンタクト領域82a,82bと同程度のp型である。
【0043】
耐圧構造部102において、ドリフト層2の上面側最外周には第1導電型(n型)のチャネルストッパ領域6cが設けられている。チャネルストッパ領域6cは、平面視で耐圧構造部102の外周を一巡するように設けられ、その下面は、ドリフト層2の上面に接している。チャネルストッパ領域6cのうち、第1炭化珪素層14に設けられた部分を第1部分6c1と呼び、第2炭化珪素層15に設けられた部分を第2部分6c2と呼ぶ。第1部分6c1と第2部分6c2との間は、境界面Sにより画されている。チャネルストッパ領域6cは、例えば、ドリフト層2及び第2炭化珪素層15にn型不純物をイオン注入した3C-SiCからなる領域である。第1部分6c1及び第2部分6c2の不純物濃度は、例えば、ソース領域6a,6bの不純物濃度と同程度である。
【0044】
領域103において、ドリフト層2の上面側には第2導電型(p型)のリング領域9bが選択的に設けられている。リング領域9bの下面は、ドリフト層2の上面に接している。リング領域9bは、例えば、ドリフト層2にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。リング領域9bは、図示を省略するが、平面視で活性部101の縁部を囲うリング状の部分である。
【0045】
リング領域9bは、深さ方向に第2炭化珪素層15と第1炭化珪素層14とに亘って設けられている。リング領域9bのうち、第1炭化珪素層14に設けられた部分を第1部分91bと呼び、第2炭化珪素層15に設けられた部分を第2部分92bと呼ぶ。第1部分91bと第2部分92bとの間は、境界面Sにより画されている。第2部分92bの深さ方向に沿った寸法は、第2炭化珪素層15と同じである。第1部分91bは、例えば、その不純物濃度が埋込領域81a,81bの不純物濃度と同程度のp型である。第2部分92bは、例えば、その不純物濃度がベースコンタクト領域82a,82bと同程度のp型である。
【0046】
ゲート電極7cの上面側、領域103の上面側、及び耐圧構造部102の上面側には、絶縁膜10が選択的に設けられている。耐圧構造部102において、絶縁膜10は電界緩和領域9aの上面に設けられている。より具体的には、絶縁膜10は、電界緩和領域9aの第2部分92aを覆う位置に設けられている。絶縁膜10は、例えば硼素(B)及び燐(P)を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)、燐(P)を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜、硼素(B)を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、シリコン窒化膜(Si膜)等の単層膜や、これらの積層膜で構成されている。絶縁膜10には、ソース領域6a,6b及びベースコンタクト領域82a,82bの上面を露出するようにコンタクトホール10a,10bが設けられている。また、絶縁膜10には、リング領域9bの上面、より具体的には第2部分92bの上面を露出するようにコンタクトホール10cが設けられている。
【0047】
絶縁膜10と、コンタクトホール10a,10bから露出したソース領域6a,6b及びベースコンタクト領域82a,82bの上面と、コンタクトホール10cから露出したリング領域9bの上面と、を覆うように第1主電極(ソース電極)(11,12)が設けられている。ソース電極(11,12)は、下層のバリアメタル層11と、上層のソース配線電極12を備える。例えば、バリアメタル層11は、例えば窒化チタン(TiN)、チタン(Ti)、又はTiを下層としたTiN/Tiの積層構造等の金属で構成されている。バリアメタル層11は、ソースコンタクト領域62a,62bの上面及びベースコンタクト領域82a,82bの上面に直接接し、ソースコンタクト領域62a,62b及びベースコンタクト領域82a,82bと低抵抗でオーミック接触している。また、バリアメタル層11は、リング領域9bの第2部分92bに直接接し、第2部分92bと低抵抗でオーミック接触している。また、電界緩和領域9aは、第2部分92aの上面が絶縁膜10に覆われているので、バリアメタル層11には接触していない。
【0048】
ソース配線電極12は、バリアメタル層11を介してソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bに電気的に接続されている。ソース配線電極12は、ゲート電極7cに電気的に接続されるゲート配線電極(図示省略)と分離して設けられている。ソース配線電極12は、例えばアルミニウム(Al)、アルミニウム-シリコン(Al-Si)、アルミニウム-銅(Al-Cu)、銅(Cu)等の金属で構成されている。
【0049】
ドリフト層2の下面側には、ドリフト層2より高不純物濃度の第1導電型(n型)の第2主領域(ドレイン領域)1が設けられている。ドレイン領域1は、例えば4H-SiCからなる半導体基板(SiC基板)で構成されている。ドレイン領域1の不純物濃度は、例えば1×1018cm-3以上、3×1020cm-3以下程度である。ドレイン領域1の厚さは、例えば30μm以上、500μm以下程度である。なお、ドリフト層2とドレイン領域1との間には、ドリフト層2より高不純物濃度で、且つドレイン領域1より
低不純物濃度のn型のバッファ層である、転位変換層や再結合促進層が設けられていてもよい。
【0050】
ドレイン領域1の下面側には、第2主電極(ドレイン電極)13が設けられている。ドレイン電極13としては、例えば金(Au)からなる単層膜や、ドレイン領域1側からチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、Auの順で積層された金属膜が使用可能であり、更にその最下層にモリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属膜を積層してもよい。また、ドレイン領域1とドレイン電極13との間にオーミック接触のためのニッケルシリサイド(NiSi)膜等のドレインコンタクト層が設けられてもよい。
【0051】
第1実施形態に係るSiC半導体装置の動作時は、ソース電極(11,12)をアース電位として、ドレイン電極13に正電圧を印加し、ゲート電極7cに閾値以上の正電圧を印加すると、ベース領域5a,5bのトレンチ7aの側面側に反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。オン状態では、ドレイン電極13からドレイン領域1、ドリフト層2、電流拡散層3、ベース領域5a,5bの反転層及びソース領域6a,6bを経由してソース電極(11,12)へ電流が流れる。一方、ゲート電極7cに印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域5a,5bに反転層が形成されないため、オフ状態となり、ドレイン電極13からソース電極(11,12)へ電流が流れない。
【0052】
第1実施形態に係るSiC半導体装置によれば、ソース領域6a,6bをソース拡張領域61a及びソースコンタクト領域62aの2層構造とし、ソース電極(11,12)と接する上層のソース拡張領域61aが3C-SiCを含むことにより、ニッケル(Ni)シリサイド等のシリサイド層を形成せずに、ソースコンタクト領域62aがソース電極(11,12)と低抵抗でオーミック接触することができる。よって、シリサイド層を形成した場合と比較して、シリサイド層の剥離等の課題を抑制することができる。
【0053】
また、図4に示すように、仮に、3C-SiCを含むソース領域6xを単層構造で形成し、ソース領域6xがゲート絶縁膜7bを介してゲート電極7cと対向する場合を考える。この場合、ソース領域6xが3C-SiCを含むため、ソース領域6xがソース電極(11,12)とオーミック接触することはできる。しかし、3C-SiCは4H-SiCと比較して結晶欠陥が多く、表面の凹凸も大きいため、ゲート電極7cとソース領域6xの間にリーク電流iが流れてしまう恐れがある。
【0054】
これに対して、第1実施形態に係るSiC半導体装置100によれば、図3に示すように、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する位置の上面7dを、第1炭化珪素層14と第2炭化珪素層15との境界面Sより深くし、且つソース拡張領域61aの下面61xより浅くする。これにより、ソース領域6aのうちの結晶欠陥が少ない第1炭化珪素層14に設けられたソース拡張領域61aがゲート絶縁膜7bを介してゲート電極7cと対向し、ソース領域6aのうちの結晶欠陥が多い第2炭化珪素層15に設けられたソースコンタクト領域62aがゲート絶縁膜7bを介してゲート電極7cと対向しない。よって、ソース領域6aとゲート電極7cとの間のリーク電流の発生を抑制可能となる。
【0055】
また、従来から、六方晶単結晶の炭化珪素基板にリンをイオン注入することでアモルファス層を形成し、熱処理することでアモルファス層を立方晶単結晶のn型炭化珪素に再結晶化させる場合があった。しかし、不純物をイオン注入した場合、SiC内の不純物濃度の高い領域と低い領域との境界は曖昧であった。そのため、熱処理後のSiC内において、3C-SiCを含む領域と3C-SiCを殆ど含まない領域との境界が曖昧になる場合があった。また、プレーナ型のSiC半導体装置ではSiC上面にゲート電極を有しているが、トレンチ型のSiC半導体装置では、ゲート電極がトレンチ内部において深さ方向(厚み方向)に沿って設けられる。そのため、深さ方向に沿って、コンタクト抵抗を抑制するための3C-SiCを含む領域と、4H-SiCの領域とを作り分ける必要があった。一般的に、不純物のイオン注入は、深さ方向の不純物濃度の制御の方が横方向の不純物濃度の制御より難しい。より具体的には、横方向の不純物濃度の制御は、例えばマスクパターンを用いて制御可能である。これに対して、深さ方向の不純物濃度の制御は、不純物のドーズ量と加速エネルギーとの調整になるため、深さ方向の不純物濃度の制御は、横方向の不純物濃度の制御より難しい。そのため、トレンチ型のSiC半導体装置では、3C-SiCを含む領域と3C-SiCを殆ど含まない領域との境界を特定することが容易ではない場合があり、リーク電流iを抑制するためにマージンを多めに見積もり、ゲート電極7cのソースコンタクト領域62aの上面からの落ち込み量d0を多めに設定する場合があった。このように、デバイス設計の自由度が低下する場合があった。
【0056】
これに対して、第1実施形態に係るSiC半導体装置100は、4H構造の炭化珪素を含む第1炭化珪素層14と、第1炭化珪素層14の上面に積層され、且つ3C-SiCを含む炭化珪素からなる第2炭化珪素層15と、の積層構造を有するので、3C-SiCを含む領域と、主に4H構造の炭化珪素からなる領域との境界が、境界面Sにより明確になる。そして、境界面Sより深い領域では、3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含まない、若しくはたとえ3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含んでいたとしても、僅かであることが分かるので、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する位置の上面7dを、境界面Sより深い位置に設けるよう設計すれば良い。これにより、マージンを多めに見積もることなくリーク電流iを抑制することができ、デバイス設計の自由度が低下するのを抑制できる。
【0057】
<SiC半導体装置の製造方法>
次に、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べるSiC半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0058】
まず、図5に示すように、窒素(N)等のn型不純物が添加されたn型の4H-SiCの半導体基板(SiC基板)1を用意する。SiC基板1の上面は、例えば{0001}面から3度~8度のオフ角を有する。そして、SiC基板1の上面に、N等のn型不純物が添加され、SiC基板1より低不純物濃度のn型の4H-SiCからなるドリフト層2をエピタキシャル成長させる。これにより、第1炭化珪素層14を得る。
【0059】
次に、図6に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いてドリフト層2の上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン20を形成する。そして、マスクパターン20をイオン注入用マスクとして用いて、ドリフト層2の上部に、窒素(N)等のn型不純物のイオン注入することにより4H-SiCからなるn型の電流拡散層3を形成する。その後、マスクパターン20を除去する。なお、マスクパターン20は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0060】
次に、図7に示すように、ドリフト層2の上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン21を形成する。そして、マスクパターン21をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入してゲート底部保護領域4を選択的に形成する。この場合のアルミニウムのイオン注入は、深い領域への注入となる為、例えば、780keV以上960keV以下の高加速エネルギーで行われる。その後、マスクパターン21を除去する。
【0061】
次に、図8に示すように、ドリフト層2の上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン22を形成する。そして、マスクパターン22をイオン注入用マスクとして用いて燐(P)や窒素(N)等のn型不純物を選択的にイオン注入する。イオン注入時のドーズ量は、例えば2×1015cm-2未満程度となるように設定する。この結果、第1炭化珪素層14では、活性部101におけるドリフト層2の上面側にn型のソース拡張領域61が選択的に形成され、耐圧構造部102におけるドリフト層2の上面側にn型の第1部分6c1が形成される。その後、マスクパターン22を除去する。なお、マスクパターン22は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0062】
次に、図9に示すように、ドリフト層2の上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン23を形成する。そして、マスクパターン23をイオン注入用マスクとして用いてアルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入する。この結果、電流拡散層3に、図9に示すように、活性部101における電流拡散層3の上面側でソース拡張領域61の下面側に、ベース領域5が選択的に形成される。このベース領域5が、p型不純物で形成される領域の中で、最も不純物濃度が低い領域となる。その後、マスクパターン23を除去する。なお、マスクパターン23は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0063】
次に、図10に示すように、第2炭化珪素層15を形成するために、SiCからなるアモルファス膜15aを第1炭化珪素層14の上面に成膜する。アモルファス膜15aは、N等のn型不純物が添加されたn型のSiCであり、そのn型不純物の濃度はドリフト層2と同程度である。アモルファス膜15aは、プラズマエンハンスドCVD(プラズマエンハンスド化学気相成長法)、又はスパッタリング法により成膜される。プラズマエンハンスド化学気相成長法によるアモルファス膜15aの成膜は、例えば300℃以上、650℃以下程度の温度で行われる。スパッタリング法によるアモルファス膜15aの成膜は、プラズマエンハンスド化学気相成長法の場合より低温で行うことができ、例えば室温で行うことができる。
【0064】
次に、図11に示すように、アモルファス膜15aの上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン24を形成する。マスクパターン24は、ソース拡張領域61及び第1部分6c1がと重なる位置に開口を有する。そして、マスクパターン24をイオン注入用マスクとして用いて燐(P)や窒素(N)等のn型不純物を選択的にイオン注入する。イオン注入時のドーズ量は、例えばソース拡張領域61及び第1部分6c1を形成した際のドーズ量と同程度となるように設定する。この結果、ソース拡張領域61の上面側のアモルファス膜15aに、n型のソースコンタクト領域62が選択的に形成され、第1部分6c1の上面側にn型の第2部分6c2が形成される。ソース拡張領域61及びソースコンタクト領域62がソース領域6を構成し、第1部分6c1及び第2部分6c2がチャネルストッパ領域6cを構成する。その後、マスクパターン24を除去する。なお、マスクパターン24は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0065】
次に、図12に示すように、埋込領域81a,81b、ベースコンタクト領域82a,82b、電界緩和領域9a、及びリング領域9bを形成する。より具体的には、埋込領域81a,81b及びベースコンタクト領域82a,82bを形成する工程のイオン注入と、電界緩和領域9a及びリング領域9bを形成する工程のイオン注入と、を同時に行う。まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、アモルファス膜15aの上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン25を形成する。なお、マスクパターン25は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。マスクパターン25は、活性部101においてベースコンタクト領域82a,82bを形成する位置に開口を有し、耐圧構造部102において電界緩和領域9aを形成する位置に開口を有し、領域103においてリング領域9bを形成する位置に開口を有する。
【0066】
そして、マスクパターン25をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入する。イオン注入を多段で行うことにより、SiCの上面側の不純物濃度をそれより深い位置より高くする。例えば、SiCの上面側に近い領域では、ドーズ量を、例えば2×1015cm-2未満程度となるように設定する。また、SiCの上面側から離れた深い領域では、ドーズ量を、上述の値より小さくすれば良い。この結果、第1炭化珪素層14では、活性部101における電流拡散層3の上面側に、ベース領域5に接するように埋込領域81a,81bが形成される。そして、埋込領域81a,81bの上面側のアモルファス膜15aに、ソース領域6に接するように、ベースコンタクト領域82a,82bが形成される。
【0067】
また、耐圧構造部102においては、電界緩和領域9aが形成される。より具体的には、第1炭化珪素層14では、電流拡散層3の上面側に電界緩和領域9aの第1部分91aが形成され、第1部分91aの上面側のアモルファス膜15aに、第2部分92aが形成される。そして、領域103においては、リング領域9bが形成される。より具体的には、第1炭化珪素層14では、電流拡散層3の上面側にリング領域9bの第1部分91bが形成され、第1部分91bの上面側のアモルファス膜15aに、第2部分92bが形成される。その後、マスクパターン25を除去する。
【0068】
次に、活性化アニール(熱処理)工程を行う。この活性化アニール工程では、例えば1400℃以上、1900℃以下程度で活性化アニールを行うことにより、ゲート底部保護領域4、ベース領域5、ソース領域6、埋込領域81a,81b、及びベースコンタクト領域82a,82b、電界緩和領域9a、リング領域9b等にそれぞれイオン注入されたp型不純物又はn型不純物を一斉に活性化させる。また、アモルファス膜15aは、例えば1200℃以上の温度で熱処理されることにより再結晶化され、その少なくとも一部が3C-SiCになる。そのため、上述の活性化アニールを行うことにより、アモルファス膜15aを再結晶化させて第2炭化珪素層15を得ることができる。すなわち、アモルファス膜15aを再結晶化させる熱処理を別途行わなくても良い。これにより、第2炭化珪素層15に形成されたソースコンタクト領域62、ベースコンタクト領域82a,82b、及び第2部分92a,92b,6c2それぞれの少なくとも一部が3C-SiCとなる。そして、第1炭化珪素層14に形成されたソース拡張領域61、埋込領域81a,81b、第1部分91a,91b,6c1は、活性化アニールの後も4H-SiCのままである。
【0069】
なお、ここではすべてのイオン注入工程の後に一括して1回の活性化アニールを行う場合を例示するが、各イオン注入工程後に個別に複数回の活性化アニールを行ってもよい。また、イオン注入工程は、順を入れ替えてもよい場合がある。また、活性化アニールの前に、カーボン(C)からなるキャップ膜を成膜し、キャップ膜で被覆した状態で活性化アニールを行い、活性化アニールの後にキャップ膜を除去してもよい。
【0070】
次に、図13に示すように、トレンチ形成工程を行う。このトレンチ形成工程では、フォトリソグラフィ技術、ドライエッチング技術、及びCVD技術等を用いて、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンをSiCの上面に形成する。ハードマスクパターンは、トレンチを形成する位置に開口を有する。そしてハードマスクパターンをエッチング用マスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング技術により、ソース領域6の上面から深さ方向にトレンチ7aを選択的に形成する。なお、ハードマスクパターンの代わりに、フォトレジスト膜をエッチング用マスクとして用いてもよい。トレンチ7aは、ソース領域6及びベース領域5を貫通し、更に電流拡散層3の上部を掘り込み、ゲート底部保護領域4に達する。ソース領域6はソース領域6a,6bに分割され、ベース領域5はベース領域5a,5bに分割される。その後、エッチング用マスクを除去する。
【0071】
次に、ゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程を行う。このゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程では、CVD技術、高温酸化(HTO)法又は熱酸化法等により、トレンチ7aの下面及び側面に、ゲート絶縁膜7bを形成する。次に、CVD技術等により、トレンチ7aの内側を埋め込むように、燐(P)やボロン(B)等の不純物を高濃度で添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)を堆積する。その後、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、ポリシリコン層の一部及びゲート絶縁膜7bの一部を選択的に除去する。この結果、図13に示すように、ゲート絶縁膜7b及びゲート電極7cからなる絶縁ゲート型電極構造(7b,7c)が形成される。より具体的には、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bに接する位置の上面が、第2炭化珪素層15と第1炭化珪素層14との境界面Sより深い位置になるまで、ポリシリコン層をエッチバックする。
【0072】
次に、図14に示すように、CVD技術等により、SiCの上面に絶縁膜10を堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等により、絶縁膜10の一部を選択的に除去し、絶縁膜10にソース領域6a,6b及びベースコンタクト領域82a,82bの上面を露出するコンタクトホール10a,10bを開口する。また、リング領域9bの上面を露出するコンタクトホール10cを開口する。その後、絶縁膜10を平坦化するための熱処理(リフロー)を行ってもよい。
【0073】
次に、スパッタリング技術又は蒸着法等により、絶縁膜10の上面及び側面と、ソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bの上面を覆うように、バリアメタル層11及びソース配線電極12を順次形成し、図2に示すソース電極(11,12)を形成する。バリアメタル層11は、ソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bと接触する。バリアメタル層11は、ソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bと低抵抗でオーミック接触する。
【0074】
次に、研削又は化学機械研磨(CMP)等により、SiC基板1を下面側から薄化して厚さを調整することにより、ドレイン領域1とする。次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域1の下面の全面に金(Au)等からなるドレイン電極13(図2参照)を形成する。このようにして、図2に示したSiC半導体装置が完成する。
【0075】
従来から、六方晶単結晶の炭化珪素基板にリンをイオン注入することでアモルファス層を形成し、熱処理することでアモルファス層を立方晶単結晶のn型炭化珪素に再結晶化させる場合があった。しかし、不純物をイオン注入した場合、SiC内の不純物濃度の高い領域と低い領域との境界は曖昧であった。そのため、熱処理後のSiCにおいて、3C-SiCを含む領域と、4H-SiCの領域との境界が曖昧になる場合があった。特に、トレンチ型のSiC半導体装置では、深さ方向に沿って、コンタクト抵抗を抑制するための3C-SiCを含む領域と、4H-SiCの領域とを作り分ける必要があるが、不純物をイオン注入することにより3C-SiCを形成した場合、3C-SiCを含む領域と3C-SiCを殆ど含まない領域との境界が曖昧になる場合があった。そのため、トレンチ型のSiC半導体装置では、3C-SiCを含む領域と3C-SiCを殆ど含まない領域との境界を特定することが容易ではない場合があり、リーク電流iを抑制するためにマージンを多めに見積もり、ゲート電極7cのソースコンタクト領域62aの上面からの落ち込み量d0を多めに設定する場合があった。このように、デバイス設計の自由度が低下する場合があった。
【0076】
これに対して、第1実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法は、4H構造の炭化珪素を含み且つ第1導電型のドリフト層2を含む第1炭化珪素層14を形成する(準備する)工程と、3C構造の炭化珪素を含む第2炭化珪素層15を、第1炭化珪素層14の上面に積層する工程と、を有する。すなわち、本技術では第1炭化珪素層14を成膜方式により形成しているので、3C-SiCを含む領域と、主に4H構造の炭化珪素からなる領域との境界が、境界面Sにより明確になる。そして、境界面Sより深い領域では、3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含まない、若しくはたとえ3C-SiCと4H-SiCとの混晶を含んでいたとしても、僅かであることが分かるので、ゲート電極7cのゲート絶縁膜7bと接する位置の上面7dを、境界面Sより深い位置に設けるよう設計することができる。これにより、マージンを多めに見積もることなくリーク電流iを抑制することができ、デバイス設計の自由度が低下するのを抑制できる。
【0077】
また、不純物を4H-SiCにイオン注入してアモルファス化し、その後熱処理を行うことにより3C-SiCを形成する場合(以下、イオン注入により3C-SiCを形成する場合と呼ぶ)、高価な装置を用いる必要があった。より具体的には、4H-SiCをアモルファス化するためには、高濃度で不純物をイオン注入する必要があり、高価なイオン注入装置の稼働時間を増加させる必要があった。
【0078】
これに対して、第1実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法では、プラズマエンハンスド化学気相成長法、又はスパッタリング法によりアモルファス膜15aを第1炭化珪素層14の上面に直接成膜するので、イオン注入装置より安価な装置で形成することができる。
【0079】
また、イオン注入により3C-SiCを形成する場合では、後に3C化する部分の4H-SiCを予め形成しておく必要があった。そして、4H-SiCの形成は、熱CVD(熱化学気相成長法)装置を用いて、例えば1600℃程度の高温でエピタキシャル成長させる必要があった。
【0080】
これに対して、第1実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法では、イオン注入により3C-SiCを形成する場合より低温でアモルファス膜15aを成膜できる。より具体的には、プラズマエンハンスド化学気相成長法によるアモルファス膜15aの成膜は、例えば300℃以上、650℃以下程度の温度で行うことができる。そして、スパッタリング法によるアモルファス膜15aの成膜は、プラズマエンハンスド化学気相成長法の場合より低温で行うことができ、例えば室温で行うことができる。このように、第1実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法では、イオン注入により3C-SiCを形成する場合より、処理温度を低くすることができるので、製造コストを抑制することができる。また、アモルファス膜15aは、例えば1200℃以上の温度で熱処理されることにより再結晶化されるので、SiCにイオン注入されたp型不純物又はn型不純物を活性化させる際に、一緒に再結晶化させることができる。アモルファス膜15aを再結晶化させる熱処理を別途行わなくても良く、製造コストを抑制することができる。
【0081】
(第1実施形態の変形例1)
上述の第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法では、図10に示すように、第2炭化珪素層15を形成するために、SiCからなるアモルファス膜15aを第1炭化珪素層14の上面に成膜し、その後熱処理によりアモルファス膜15aを再結晶化していたが、本技術はこれには限定されない。第1実施形態の変形例1に係るSiC半導体装置の製造方法では、図10において、第1炭化珪素層14の上面に、アモルファス膜15aに代えて、3C-SiCを含む第2炭化珪素層15を直接成膜しても良い。その場合、第2炭化珪素層15は、熱CVD法(熱化学気相成長法)により成膜される。
【0082】
第1実施形態の変形例1に係るSiC半導体装置の製造方法であっても、上述の第1実施形態の場合と同様の効果が得られる。より具体的には、3C-SiCを含む第2炭化珪素層15の成膜は、イオン注入装置より安価な装置で行うことができる。また、第2炭化珪素層15を熱CVD法により成膜する際の処理温度は、例えば800℃以上、1100℃以下程度であり、アモルファス膜15aの成膜温度より高くなるものの、イオン注入により3C-SiCを形成する場合の処理温度より低い。そのため、イオン注入により3C-SiCを形成する場合より製造コストを抑制することができる。なお、上述以外の製造法は、第1実施形態で説明した製造方法と同じであるので、説明を省略する。第1実施形態の変形例1に係るSiC半導体装置の製造方法では、3C-SiCを含む第2炭化珪素層15を直接成膜するので、3C化するための熱処理を必要としない。
【0083】
(その他の実施形態)
上記のように、本開示の第1実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0084】
例えば、第1実施形態に係る半導体装置としてMOSFETを例示したが、n型のドレイン領域1の代わりにp型のコレクタ領域を設けた構成の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)にも適用可能である。また、IGBT単体以外にも、逆導通型IGBT(RC-IGBT)や、逆阻止絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RB-IGBT)にも適用可能である。
【0085】
また、第1実施形態において、電界緩和領域9aがガードリングであるとして説明したが、JTE構造であっても良い。
【0086】
また、第1実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本開示はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0087】
1…ドレイン領域(SiC基板)
2…ドリフト層
3…電流拡散層
3a,3b…n型層
4…ゲート底部保護領域
5…ベース領域
6,6a,6b…ソース領域
61,61a,61b…ソース拡張領域
61x…下面
62,62a,62b…ソースコンタクト領域
6c…チャネルストッパ領域
7a…トレンチ
7b…ゲート絶縁膜
7c…ゲート電極
7d…上面
81a,81b…埋込領域
82a,82b…ベースコンタクト領域
9a…電界緩和領域
9b…リング領域
91a,91b,6c1…第1部分
92a,92b,6c2…第2部分
93a…第3部分
10…絶縁膜
10a,10b,10c…コンタクトホール
11…バリアメタル層
12…ソース配線電極
13…ドレイン電極
14…第1炭化珪素層
15…第2炭化珪素層
15a…アモルファス膜
S…境界面
図1
図2
図3
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