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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164518
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ケーキ類用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/26 20060101AFI20241120BHJP
   A21D 8/04 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A21D2/26
A21D8/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080057
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久下 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】梅田 明宏
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB05
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK47
4B032DK51
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】ケーキ類の形状不良を抑制できるケーキ類用品質改良剤を提供する。
【解決手段】ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを有効成分とするケーキ類用品質改良剤。ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を含むケーキ類の製造方法。ケーキ類の製造において、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を実施するケーキ類の形状不良の抑制方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを有効成分とするケーキ類用品質改良剤。
【請求項2】
ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を含むケーキ類の製造方法。
【請求項3】
ケーキ類の製造において、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を実施するケーキ類の形状不良の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ類用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の卵の価格高騰、供給制限等により、スポンジケーキ、蒸しケーキ、シフォンケーキ等のケーキ類の各メーカーは、卵の使用量が通常よりも少ない処方の検討を行っているが、該ケーキ類は、ボリュームの低下、形状不良(上部が山形になってしまい、平らにならない)、食感低下(重い食感となる)といった問題が発生することが課題となっている。
【0003】
ケーキ類の品質を改良する技術としてはホスホリパーゼを用いる技術が知られており、例えば、スポンジケーキ類を製造するに際し、原料の一部としてホスホリパーゼで分解した卵液を用い、加熱焼成することを特徴とするスポンジケーキの製造方法(特許文献1)、ホスホリパーゼを含む、洋菓子のボリューム維持剤(特許文献2)等が開示されている。
【0004】
しかし、上記技術を卵の使用量が通常よりも少ないケーキ類に用いた場合、特に形状不良の抑制効果が不十分であるため、形状不良を抑制できるケーキ類用品質改良剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】昭63-258528号公報
【特許文献2】特開2017-109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ケーキ類の形状不良を抑制できるケーキ類用品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ホスホリパーゼに、さらにリパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを併用することにより形状不良を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)~(3)から成っている。
(1)ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを有効成分とするケーキ類用品質改良剤。
(2)ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を含むケーキ類の製造方法。
(3)ケーキ類の製造において、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を実施するケーキ類の形状不良の抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケーキ類用品質改良剤を用いることで、ケーキ類の形状不良を抑制することができる。
また、本発明のケーキ類用品質改良剤を用いることで、ケーキ類の形状不良の抑制のみならず、ケーキ類のボリューム低下及び食感低下をも抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられるホスホリパーゼは、リン脂質の加水分解を触媒する活性を有する酵素である。ホスホリパーゼは触媒する反応の種類により分類できるが、例えば、ホスホリパーゼA、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD等が挙げられ、好ましくはホスホリパーゼAである。ホスホリパーゼの由来としては特に制限はなく、植物由来、動物由来、微生物由来等のいずれであっても良い。
【0011】
上記ホスホリパーゼAはリン脂質をSN-1位又はSN-2位で加水分解する活性を有する酵素である。ホスホリパーゼAとしては例えば、ホスホリパーゼA1(リン脂質をSN-1位で加水分解する活性を有する酵素)、ホスホリパーゼA2(リン脂質をSN-2位で加水分解する活性を有する酵素)等が挙げられ、好ましくはホスホリパーゼA2である。
【0012】
ホスホリパーゼとしては、デナベイクRICH(商品名;ホスホリパーゼA2;ナガセケムテックス社製)、CakeZyme(商品名;ホスホリパーゼA2;DSM社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0013】
本発明に用いられるリパーゼは、トリグリセリドやジグリセリド等の脂質を構成するエステル結合の加水分解を触媒する活性を有する酵素である。リパーゼの由来としては特に制限はなく、植物由来、動物由来、微生物由来等のいずれであっても良い。
【0014】
リパーゼとしては、Lipopan Prime(商品名;ノボザイムズ社製)、リパーゼ R「アマノ」(商品名;天野エンザイム社製)、リポパン50BG(商品名;ノボザイムズ社製)、パナモアスプリング(商品名;DSM社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0015】
本発明に用いられるグリコシルトランスフェラーゼは、糖転移反応を触媒する活性を有する酵素である。グリコシルトランスフェラーゼは、触媒する反応の種類により分類できるが、例えば、マルトトリオシル転移酵素、ブランチングエンザイム、トランスグルコシダーゼ等が挙げられる。これらはいずれも本発明で用いることができるが、好ましくはマルトトリオシル転移酵素又はブランチングエンザイムである。グリコシルトランスフェラーゼの由来としては特に制限はなく、植物由来、動物由来、微生物由来等のいずれであっても良い。
【0016】
上記マルトトリオシル転移酵素とは、α-1,4-D-グルカン鎖からマルトトリオース単位を切り出してα-1,4-D-グルカン鎖に転移する反応を触媒する活性を有する酵素である。上記ブランチングエンザイムとは、α-1,4-D-グルカン鎖から糖鎖を切り出してα-1,4-D-グルカン鎖の6-OH基に転移し、α-1,6-グリコシド結合の枝分かれ構造を生成する反応を触媒する活性を有する酵素である。
【0017】
グリコシルトランスフェラーゼとしては、グライコトランスフェラーゼ「アマノ」(商品名;マルトトリオシル転移酵素;天野エンザイム社製)、ブランチマイスター(商品名;ブランチングエンザイム;アピ社製)、デナチームBBR LIGHT(商品名;ブランチングエンザイム;ナガセケムテックス社製)、Sensea Form(商品名;ブランチングエンザイム;ノボザイムズ社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0018】
本発明のケーキ類用品質改良剤において、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼの合計100質量%中の各成分の含有量としては、ホスホリパーゼの含有量が通常5~98質量%、好ましくは30~95質量%であり、リパーゼの含有量が通常1~45質量%、好ましくは3~35質量%であり、グリコシルトランスフェラーゼの含有量が通常1~45質量%、好ましくは3~35質量%である。
【0019】
本発明のケーキ類用品質改良剤には、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲において、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼ以外の成分を添加しても良く、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、デキストリン等の澱粉類、ショ糖、麦芽糖、トレハロース、オリゴ糖等の糖類、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム等の増粘多糖類、フマル酸、クエン酸三ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤等を添加することができる。
【0020】
本発明のケーキ類用品質改良剤の製造方法としては特に制限はなく、例えば、粉末状のホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを均一になるように混合することにより、粉末状のケーキ類用品質改良剤を得ることができる。
【0021】
本発明のケーキ類用品質改良剤の使用対象であるケーキ類としては、例えば、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ロールケーキ、マフィン、パウンドケーキ、パンケーキ、どら焼き等の焼成菓子や、蒸しパン、蒸しケーキ、饅頭等の蒸し菓子等が挙げられる。本発明のケーキ類用品質改良剤を含有するケーキ類も本発明の形態の一つである。
【0022】
本発明のケーキ類用品質改良剤を用いることで、ケーキ類の形状不良を抑制することができる。ここで、ケーキ類の中でも、卵の使用量が通常よりも少ないケーキ類は、形状不良の発生が比較的多いことから、本発明のケーキ類用品質改良剤の使用に適している。ここで、「卵の使用量が通常よりも少ないケーキ類」とは、例えば、卵の含有量が、ケーキ類の生地(以下、「ケーキ生地」という。)の原材料中の穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、50質量部以上150質量部未満であるケーキ類等が挙げられる。なお、本発明のケーキ類用品質改良剤は、卵の使用量が通常の範囲内であるケーキ類にも使用することができる。ここで、「卵の使用量が通常の範囲内であるケーキ類」とは、例えば、卵の含有量が、ケーキ生地の原材料中の穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、150質量部以上200質量部以下であるケーキ類等が挙げられる。
【0023】
本発明のケーキ類用品質改良剤の使用方法としては、ケーキ生地に添加する方法であれば特に制限はなく、例えば、ケーキ生地を調製する際に、原材料と一緒に混合して用いることができる。該原材料としては、穀粉類(例えば、小麦粉、米粉等)、澱粉類(例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、コーンスターチ、小麦澱粉、又はこれらを原料として得られるエーテル化工澱粉、エステル化工澱粉、架橋化工澱粉、酸化工澱粉等)、糖類、卵、水、油脂類(例えば、マーガリン、ショートニング、製菓用油脂、バター等)、製菓用起泡剤(製菓用起泡性乳化油脂を含む)、乳製品(例えば、牛乳、濃縮乳、生クリーム、脱脂粉乳、練乳、チーズ等)、果実、果実加工品、ココア、ココアパウダー、チョコレート類、ナッツ類、洋酒類、膨張剤(例えば、ベーキングパウダー、重曹等)、調味料(例えば、香料、甘味料、酸味料、食塩等)、着色料、酸化防止剤等が挙げられる。
【0024】
本発明のケーキ類用品質改良剤の使用量としては、ケーキ生地の原材料中の穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、通常0.1~5.0質量部、好ましくは0.5~2.0質量部である。
【0025】
以上のように、本発明のケーキ類用品質改良剤を使用することで、ケーキ類の形状変化を抑制できるが、ケーキ類の製造時に、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを別々に添加することによっても、本発明のケーキ類用品質改良剤を使用した場合と同等の効果を得ることができる。ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を含むケーキ類の製造方法、並びに、ケーキの製造において、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を実施するケーキ類の形状不良の抑制方法も、本発明の形態の一つである。
【0026】
本発明のケーキ類の製造方法及び形状不良の抑制方法は、ケーキ類の製造工程においてホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加すること以外は、一般的なケーキ類の公知の製造方法に従い実施することができる。例えば、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する工程を実施した後、該生地を蒸し又は焼成等の方法で加熱することにより、形状不良が抑制されたケーキ類を製造することができる。ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼをケーキ生地に添加する方法に特に制限はないが、例えば、ケーキ生地の調製工程において、穀粉類、澱粉類、糖類、卵、水、製菓用起泡剤等の原材料と共に、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを混合することができる。
【0027】
本発明のケーキ類の製造方法及び本発明のケーキ類の形状不良の抑制方法において、ケーキ類の製造時に、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを別々に添加する際の、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼの使用量としては、ケーキ生地の原材料中の穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、ホスホリパーゼの添加量が通常0.005~0.8質量部、好ましくは0.02~0.4質量部、リパーゼの添加量が通常0.001~0.5質量部、好ましくは0.005~0.05質量部、グリコシルトランスフェラーゼの添加量が通常0.001~0.5質量部、好ましくは0.005~0.05質量部となるよう調整すれば良い。
【0028】
以下に実施例を比較例と共に挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【実施例0029】
[ケーキ類用品質改良剤の製造]
(1)原材料
1)ホスホリパーゼ(商品名:デナベイクRICH;ホスホリパーゼA2;ナガセケムテックス社製)
2)リパーゼ(商品名:Lipopan Prime;ノボザイムズ社製)
3)グリコシルトランスフェラーゼ1(商品名:グライコトランスフェラーゼ「アマノ」;マルトトリオシル転移酵素;天野エンザイム社製)
4)グリコシルトランスフェラーゼ2(商品名:ブランチマイスター;ブラチングエンザイム;アピ社製)
5)賦形剤(商品名:コーンスターチY-4P;コーンスターチ;日本コーンスターチ社製)
【0030】
(2)ケーキ類用品質改良剤の配合
上記原材料を用いて製造したケーキ類用品質改良剤1~19の配合組成を表1~3に示した。この内、表1及び2のケーキ類用品質改良剤1~11は本発明に係る実施例であり、表3のケーキ類用品質改良剤12~19はそれらに対する比較例である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
(3)ケーキ類用品質改良剤の製造方法
表1~3に記載の原材料を1L容のポリエチレン製の袋に入れ、その袋の口を縛ったものを手で持ち、均一になるよう混合してケーキ類用品質改良剤1~19を得た。なお、使用した原材料の合計は200gとした。
【0035】
[スポンジケーキの製造と評価]
(1)原材料
1)殺菌液卵(商品名:エクセルエッグHV;キユーピータマゴ社製)
2)上白糖(商品名:上白糖ST;DM三井製糖社製)
3)製菓用起泡性乳化油脂(商品名:パティグラース-300;理研ビタミン社製)
4)薄力粉(商品名:バイオレット;日清製粉社製)
5)ベーキングパウダー(商品名:BP(O#1);オリエンタル酵母工業社製)
6)水
7)ケーキ類用品質改良剤1~19
8)ホスホリパーゼ(商品名:デナベイクRICH;ホスホリパーゼA2;ナガセケムテックス社製)
9)リパーゼ(商品名:Lipopan Prime;ノボザイムズ社製)
10)グリコシルトランスフェラーゼ1(商品名:グライコトランスフェラーゼ「アマノ」;マルトトリオシル転移酵素;天野エンザイム社製)
11)グリコシルトランスフェラーゼ2(商品名:ブランチマイスター;ブラチングエンザイム;アピ社製)
【0036】
(2)スポンジケーキの配合
上記原料を用いて製造したスポンジケーキ1~22の配合割合を、使用する小麦粉(薄力粉)を100質量部として表4~6に示した。この内、表4及び5のスポンジケーキ1~13は本発明に係る実施例であり、表6のスポンジケーキ14~21はそれらに対する比較例であり、表6のスポンジケーキ22はケーキ類用品質改良剤を用いず、かつ、ホスホリパーゼ、リパーゼ、グリコシルトランスフェラーゼのいずれも用いずに製造した対照である。また使用した小麦粉(薄力粉)は200gとした。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
(3)スポンジケーキの製造方法
表4~6に示した原材料のうち、殺菌液卵、上白糖、製菓用起泡性乳化油脂及びケーキ類用品質改良剤1~19、又は、殺菌液卵、上白糖、製菓用起泡性乳化油脂、ホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを、5コート縦型ミキサー(型式:万能混合撹拌機5DMr;ワイヤーホイッパー装着;品川工業所社製)に入れ、該ミキサーにて、1分間低速で撹拌した。その後、上記撹拌で得られた混合物と、残り全ての原材料とを、該ミキサーにて、1分間低速で撹拌した後、生地比重が0.48~0.49g/cmになるまで高速で撹拌し、ケーキ生地を得た。得られたケーキ生地を6号丸型に320g充填し、上火180℃下火160℃で29分焼成し、スポンジケーキ1~22を得た。
【0041】
(4)形状の評価
得られたスポンジケーキ1~22を室温で45分間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密閉し、さらに室温にて24時間保管後、下記のとおり中心高及び淵の高さを測定又は算出した。中心高については、中心部の高さをレーザー体積計(型式:SELNAC-Win VM2000;アステックス社製)にて測定した。淵の高さについては、ケーキの淵(任意の3か所)にノギスを挿して各箇所の高さを測定した上で平均値を算出し、該平均値を淵の高さとした。以上のとおり中心高及び淵の高さを測定又は算出した後、中心高の値から端の高さの値を減じた値を算出した。算出した結果について下記基準にて記号化した。結果を表8に示す。なお、値が小さい程、上面が平らであるといえ、値が大きい程、上面に傾斜があり山形であるといえる。
◎:値が12mm未満
〇:値が12mm以上、17mm未満
△:値が17mm以上、22mm未満
×:値が22mm以上
【0042】
(5)比容積の測定
得られたスポンジケーキ1~22を室温で45分間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密閉し、さらに室温にて24時間保管後、レーザー体積計(型式:SELNAC-Win VM2000;アステックス社製)にて比容積(cm/g)を測定した。比容積の測定は各スポンジケーキ3個ずつ行い、平均値を算出した。結果を表8に示す。
【0043】
(6)官能評価
得られたスポンジケーキ1~21を室温で45分間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密閉し、さらに室温にて24時間保管後、食感についての官能評価を行った。評価は、表7の評価基準により、10名のパネラーで行った。結果はそれぞれ10名の評点の平均値を求め、下記基準にて記号化した。結果を表8に示す。
◎:平均点3.5以上
〇:平均点2.5以上、3.5未満
△:平均点1.5以上、2.5未満
×:平均点1.5未満
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
表8の結果から明らかなように、本発明のケーキ類用品質改良剤1~11を添加して得られたスポンジケーキ1~11、並びにホスホリパーゼ、リパーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼを添加して得られたスポンジケーキ12及び13は、形状の評価が「◎」又は「〇」であり、形状変化が抑制されていた。しかも対照と比較して比容積が大きくボリュームの低下が抑制されていたこと、さらには食感の評価も「◎」又は「〇」であり、食感低下が抑制されていたことも分かった。これに対し、比較例のケーキ類用品質改良剤12~19を添加して得られたスポンジケーキ14~21は、形状の評価が「△」又は「×」であり、実施例に比べて劣っていた。しかも、対照と比較して比容積が同等か、又はやや大きい程度であり、さらに食感の評価も「△」又は「×」であったため、実施例に比べて一層劣っていたことが分かった。