(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164526
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20241120BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01L21/26 G
H01L21/265 602B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080066
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】繁桝 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】布施 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 真治
(57)【要約】
【課題】冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる熱処理装置および熱処理方法を提供する。
【解決手段】ハロゲンランプからの光照射によって予備加熱されている半導体ウェハーWの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を行う。フラッシュ加熱終了後、シャワープレート30の複数の噴出孔31から冷却ガスとしての窒素ガスを噴出しつつ、フラッシュ光照射によって加熱された半導体ウェハーWを昇降機構がサセプタ74から上昇させてシャワープレート30に近接させて冷却する。窒素ガスを噴出するシャワープレート30と半導体ウェハーWとの距離を短くすることにより、半導体ウェハーWの表面における窒素ガスの流速が増大して熱伝達率が上昇し、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記基板に光を照射して前記基板を加熱する光照射部と、
前記チャンバー内に気体を供給する気体供給部と、
前記チャンバー内にて前記保持部よりも上方に設けられ、前記気体供給部から供給された気体を下方に向けて噴出する噴出孔が形設された有孔板と、
前記基板を前記保持部に保持される保持高さ位置と前記保持高さ位置よりも上方との間で昇降させる昇降部と、
を備え、
前記有孔板の前記噴出孔から冷却気体を噴出しつつ、前記光照射部からの光照射によって加熱された前記基板を前記昇降部が前記保持部から上昇させて前記有孔板に近接させて冷却する熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記有孔板の下面に、前記基板の径よりも大きな内径の円環形状を有する筒状体を備え、
前記昇降部は、前記基板を前記筒状体の内側に上昇させて冷却する熱処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記有孔板の下面に、前記基板の径よりも小さな内径の円環形状を有する筒状体を備え、
前記昇降部は、前記基板を前記筒状体の下端に近接する高さ位置に上昇させて冷却する熱処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記噴出孔は、前記昇降部に支持される前記基板の中央部に対向する位置に形設される熱処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記噴出孔は、前記昇降部に支持される前記基板の周縁部に対向する位置に形設される熱処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理装置において、
前記基板の中心を挟んで前記噴出孔の形設位置とは反対側に前記チャンバー内の気体を排気する排気孔を設ける熱処理装置。
【請求項7】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記基板を冷却するときに、前記チャンバー内を大気圧未満に減圧する減圧部をさらに備える熱処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記冷却気体は、窒素またはヘリウムである熱処理装置。
【請求項9】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記光照射部は、前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプを含む熱処理装置。
【請求項10】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法であって、
チャンバー内にて保持部に保持された基板に光を照射して前記基板を加熱する照射工程と、
加熱された前記基板を前記保持部から上昇させ、噴出孔から冷却気体を噴出する有孔板に近接させて冷却する冷却工程と、
を備える熱処理方法。
【請求項11】
請求項10記載の熱処理方法において、
前記基板を冷却するときに、前記チャンバー内を大気圧未満に減圧する減圧工程をさらに備える熱処理方法。
【請求項12】
請求項10記載の熱処理方法において、
前記冷却気体は、窒素またはヘリウムである熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置および熱処理方法に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体ウェハー、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプアニールを行う装置として、特許文献1には、ハロゲンランプからの光照射によって半導体ウェハーの予備加熱を行った後に、フラッシュランプからフラッシュ光を照射して半導体ウェハーの表面を1秒以下の極短時間加熱する装置が開示されている。フラッシュ加熱が終了した後、自然冷却によって半導体ウェハーを降温させた場合には、半導体ウェハーが所定温度以下にまで降温するのに相応の時間を要することとなる。そうすると、スループットの向上が阻害されるだけでなく、フラッシュ加熱によって活性化した不純物が不活性化するおそれもある。このため、特許文献1には、フラッシュ光照射の終了後に、チャンバー内にヘリウムガス等の冷却ガスを供給して半導体ウェハーおよびチャンバー内を効率良く迅速に冷却することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単にチャンバー内に冷却ガスを供給しただけでは、十分な降温レートを得ることは困難である。不純物の不活性化を防止するためには、より高い降温レートが求められる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の第1の態様は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記基板に光を照射して前記基板を加熱する光照射部と、前記チャンバー内に気体を供給する気体供給部と、前記チャンバー内にて前記保持部よりも上方に設けられ、前記気体供給部から供給された気体を下方に向けて噴出する噴出孔が形設された有孔板と、前記基板を前記保持部に保持される保持高さ位置と前記保持高さ位置よりも上方との間で昇降させる昇降部と、を備え、前記有孔板の前記噴出孔から冷却気体を噴出しつつ、前記光照射部からの光照射によって加熱された前記基板を前記昇降部が前記保持部から上昇させて前記有孔板に近接させて冷却する。
【0010】
また、第2の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記有孔板の下面に、前記基板の径よりも大きな内径の円環形状を有する筒状体を備え、前記昇降部は、前記基板を前記筒状体の内側に上昇させて冷却する。
【0011】
また、第3の態様は、第1の態様に係る熱処理装置において、前記有孔板の下面に、前記基板の径よりも小さな内径の円環形状を有する筒状体を備え、前記昇降部は、前記基板を前記筒状体の下端に近接する高さ位置に上昇させて冷却する。
【0012】
また、第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る熱処理装置において、前記噴出孔は、前記昇降部に支持される前記基板の中央部に対向する位置に形設される。
【0013】
また、第5の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る熱処理装置において、前記噴出孔は、前記昇降部に支持される前記基板の周縁部に対向する位置に形設される。
【0014】
また、第6の態様は、第5の態様に係る熱処理装置において、前記基板の中心を挟んで前記噴出孔の形設位置とは反対側に前記チャンバー内の気体を排気する排気孔を設ける。
【0015】
また、第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様に係る熱処理装置において、前記基板を冷却するときに、前記チャンバー内を大気圧未満に減圧する減圧部をさらに備える。
【0016】
また、第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様に係る熱処理装置において、前記冷却気体は、窒素またはヘリウムである。
【0017】
また、第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様に係る熱処理装置において、前記光照射部は、前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプを含む。
【0018】
また、第10の態様は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法において、チャンバー内にて保持部に保持された基板に光を照射して前記基板を加熱する照射工程と、加熱された前記基板を前記保持部から上昇させ、噴出孔から冷却気体を噴出する有孔板に近接させて冷却する冷却工程と、を備える。
【0019】
また、第11の態様は、第10の態様に係る熱処理方法において、前記基板を冷却するときに、前記チャンバー内を大気圧未満に減圧する減圧工程をさらに備える。
【0020】
また、第12の態様は、第10または第11の態様に係る熱処理方法において、前記冷却気体は、窒素またはヘリウムである。
【発明の効果】
【0021】
第1から第9の態様に係る熱処理装置によれば、有孔板の噴出孔から冷却気体を噴出しつつ、光照射部からの光照射によって加熱された基板を昇降部が保持部から上昇させて有孔板に近接させて冷却するため、基板の表面における冷却気体の流速が増大して熱伝達率が上昇し、基板の冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【0022】
特に、第2の態様に係る熱処理装置によれば、有孔板の下面に、基板の径よりも大きな内径の円環形状を有する筒状体を備え、昇降部は、基板を筒状体の内側に上昇させて冷却するため、排気の影響を抑制しつつ、基板の表面における冷却気体の流速をさらに増大させることができる。
【0023】
第10から第12の態様に係る熱処理装置によれば、加熱された基板を保持部から上昇させ、噴出孔から冷却気体を噴出する有孔板に近接させて冷却するため、基板の表面における冷却気体の流速が増大して熱伝達率が上昇し、基板の冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】半導体ウェハーの処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】ガスリングおよびシャワープレートの構成を図解的に示す図である。
【
図10】第1実施形態における半導体ウェハーの冷却を模式的に示す図である。
【
図11】第2実施形態における半導体ウェハーの冷却を模式的に示す図である。
【
図12】第3実施形態における半導体ウェハーの冷却を模式的に示す図である。
【
図13】第4実施形態における半導体ウェハーの冷却を模式的に示す図である。
【
図14】第5実施形態における半導体ウェハーの冷却を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0027】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、シャワープレート30と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0028】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0029】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部にはガスリング90が装着され、下部には反射リング69が装着されている。ガスリング90および反射リング69は、ともに円環状に形成されている。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61、反射リング69およびガスリング90によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0030】
チャンバー側部61に反射リング69およびガスリング90が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング69およびガスリング90が装着されていない中央部分と、反射リング69の上端面と、ガスリング90の下端面で囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
【0031】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0032】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0033】
また、チャンバー6の内壁上部に装着されたガスリング90には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給口81が形設されている。ガス供給口81は、ガスリング90の内部に形成された流路を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中には給気バルブ84が介挿されている。給気バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85からガスリング90に処理ガスが送給され、ガスリング90の内部の流路を通過した処理ガスがガス供給口81から熱処理空間65に供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N2)、ヘリウム(He)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。
【0034】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中には排気バルブ89が介挿されている。排気バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。
【0035】
排気部190は真空ポンプを含む。ガス供給口81からガス供給を行うことなく、排気部190を作動させて熱処理空間65の気体を排気することにより、チャンバー6内を大気圧未満に減圧することができる。すなわち、排気部190は減圧部としても機能する。また、排気部190の真空ポンプとガス排気管88とは、例えば管径の異なる3本のバイパスラインによって接続されており、それらのいずれを開放するかによってチャンバー6からの排気流量および排気速度を変化させることができる。
【0036】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0037】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0038】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0039】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0040】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0041】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0042】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0043】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0044】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0045】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0046】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14としては、例えばパルスモーターが使用される。昇降機構14は、制御部3の指示に従って任意の高さ位置に一対の移載アーム11を昇降移動させることができる。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。
【0047】
サセプタ74に半導体ウェハーWが保持されている状態で昇降機構14が一対の移載アーム11を上昇させると、貫通孔79から突き出た4本のリフトピン12が当該半導体ウェハーWを突き上げる。昇降機構14は、その半導体ウェハーWを保持部7のサセプタ74に保持される保持高さ位置とその保持高さ位置よりも上方の高さ位置との間で昇降移動させる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0048】
図1に戻り、チャンバー6の上部には、ガスリング90およびシャワープレート30が設けられている。
図9は、ガスリング90およびシャワープレート30の構成を図解的に示す図である。概略円筒形状のチャンバー側部61の内壁面上部に装着されるガスリング90は円環形状を有する。ガスリング90は、その中心がチャンバー側部61の中心と一致するように装着される。すなわち、ガスリング90の径方向および周方向とチャンバー側部61の径方向および周方向とは一致する。ガスリング90は、上部リング91と下部リング92とを備える。上部リング91および下部リング92はともに円環形状を有する。上部リング91と下部リング92とが重ね合わされてガスリング90が形成される。
【0049】
円環形状の上部リング91と下部リング92とが重ね合わされた構造において、上部リング91と下部リング92との間には隙間が存在する。この流路は、気体の流れに対する抵抗部となり得るバッファおよびラビリンス構造を有していても良い。当該流路のチャンバー6内に望む側の端部はガス供給口81となる。また、当該流路の他方側の端部はガス供給管83に接続される。
【0050】
シャワープレート30は、石英製の円板形状部材である。よって、シャワープレート30は、上側チャンバー窓63と同じく、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光を透過する。シャワープレート30には、上下に貫通して複数の噴出孔31が穿設されている。複数の噴出孔31が設けられる領域の大きさは、例えば半導体ウェハーWの平面サイズと同程度である。また、各噴出孔31の孔径は数mm程度である。複数の噴出孔31の孔径は均一であることに限定されるものではなく、例えばシャワープレート30の中央から周縁部に向けて徐々に孔径が小さくなるようにしても良い。
【0051】
円板形状のシャワープレート30は、
図9に示すように、その周縁部がガスリング90の下部リング92に支持されてチャンバー6内に装着される。よって、シャワープレート30は、保持部7よりも上方に設けられることとなる。シャワープレート30がチャンバー6内に装着されると、上側チャンバー窓63とシャワープレート30との間に空間が形成される。
【0052】
処理ガス供給源85からガス供給管83を経由してガスリング90に送給された処理ガスは、ガスリング90内の流路を通過してガス供給口81から上側チャンバー窓63とシャワープレート30との間の空間に供給される。その処理ガスは、シャワープレート30に設けられた複数の噴出孔31から下方に向けて噴出される。シャワープレート30からシャワー状に噴出された処理ガスは、熱処理空間65に上方から下方へと向かう処理ガスのダウンフローを形成する。シャワープレート30から噴出される処理ガスの総流量は、例えば100リットル/分である。
【0053】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0054】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
【0055】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0056】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0057】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0058】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0059】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0060】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0061】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0062】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0063】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。制御部3は、昇降機構14を制御して一対の移載アーム11に支持された半導体ウェハーWを可動範囲内の任意の高さ位置に昇降移動させる。
【0064】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0065】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。
図8は、半導体ウェハーWの処理手順を示すフローチャートである。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0066】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気バルブ84が開放されるとともに、排気バルブ89が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。給気バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85からガスリング90に窒素ガスが送給され、ガス供給口81から上側チャンバー窓63とシャワープレート30との間の空間に窒素ガスが供給される。その窒素ガスは、シャワープレート30に設けられた複数の噴出孔31から下方に向けて噴出される。また、排気バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、シャワープレート30から噴出された窒素ガスが下方へと流れて熱処理空間65にダウンフローを形成する。
【0067】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップS1)。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0068】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0069】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0070】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される(ステップS2)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0071】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0072】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0073】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、基板Wの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0074】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う(ステップS3)。フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光は、いずれも石英にて形成されたランプ光放射窓53、上側チャンバー窓63およびシャワープレート30を順に透過して半導体ウェハーWに表面に照射され、半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0075】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0076】
半導体ウェハーWの予備加熱およびフラッシュ加熱を実行しているときには、
図9に示すように、半導体ウェハーWがサセプタ74に保持されている状態でシャワープレート30から下方に向けて窒素ガスが噴出されている。シャワープレート30とサセプタ74に保持されている半導体ウェハーWとの間隔は比較的大きいため、シャワープレート30から噴出された窒素ガスによって加熱中の半導体ウェハーWの温度が低下するおそれはない。
【0077】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。また、制御部3が移載機構10の駆動部を制御して一対の移載アーム11を退避位置から移載動作位置に水平移動させてから上昇させる。これにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。そして、シャワープレート30の複数の噴出孔31から冷却ガスとしての窒素ガスを噴出させつつ、昇降機構14がリフトピン12を上昇させて半導体ウェハーWをシャワープレート30に近接させて冷却する(ステップS4)。
【0078】
図10は、第1実施形態における半導体ウェハーWの冷却を模式的に示す図である。制御部3の制御下にて昇降機構14がリフトピン12を上昇させて半導体ウェハーWをシャワープレート30の直下にまで近接させる。半導体ウェハーWは、シャワープレート30との間隔が例えば10mm以下となる高さ位置にまで上昇する。シャワープレート30の複数の噴出孔31から窒素ガスを噴出しつつ、半導体ウェハーWをシャワープレート30に近接させることにより、噴出された窒素ガスは直接に半導体ウェハーWに吹き付けられて半導体ウェハーWの表面に沿って流れ、当該表面における窒素ガスの流速が増大する。これにより、半導体ウェハーWから窒素ガスへの熱伝達率が上昇し、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【0079】
フラッシュ加熱終了後に、半導体ウェハーWを自然冷却(放冷)によって降温させると、高い降温レートを得ることができず、不純物が不活性化する温度域に半導体ウェハーWが長時間留まることになる。そうすると、フラッシュ加熱によって活性化した不純物が不活性化するという問題が生じる。第1実施形態においては、窒素ガスを噴出するシャワープレート30に半導体ウェハーWを近接させ、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることにより、半導体ウェハーWは迅速に不活性化温度域を通過することになり、フラッシュ加熱によって活性化した不純物の不活性化を抑制することができる。
【0080】
半導体ウェハーWを冷却した後、昇降機構14がリフトピン12を下降させて半導体ウェハーWを受け渡し位置に移動させる。この受け渡し位置は、シャワープレート30に近接する半導体ウェハーWの冷却高さ位置とサセプタ74に半導体ウェハーWを保持する保持高さ位置との間の高さ位置である。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する(ステップS5)。
【0081】
第1実施形態においては、シャワープレート30の複数の噴出孔31から冷却ガスとしての窒素ガスを噴出しつつ、フラッシュ光照射によって加熱された半導体ウェハーWを昇降機構14がサセプタ74から上昇させてシャワープレート30に近接させて冷却している。窒素ガスを噴出するシャワープレート30と半導体ウェハーWとの距離を短くすることにより、半導体ウェハーWの表面における窒素ガスの流速が増大して熱伝達率が上昇し、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。その結果、不純物の不活性化を抑制できるとともに、処理時間を短くしてスループットを向上させることも可能となる。
【0082】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(
図1)。また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである(
図8)。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、シャワープレート30にリングを設けている点である。
【0083】
図11は、第2実施形態における半導体ウェハーWの冷却を模式的に示す図である。第2実施形態のシャワープレート30の下面には、リング32が取り付けられている。第2実施形態のリング32は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径の円環形状を有する筒状体である。換言すれば、リング32は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径の円筒形状部材である。従って、相対的に大きな内径を有するリング32の内側にまで半導体ウェハーWを上昇させることが可能である。リング32の内径は、半導体ウェハーWの直径がφ300mmであれば、例えばφ320mm~φ330mmである。
【0084】
また、リング32は、シャワープレート30と同様に、石英にて形成されている。シャワープレート30におけるリング32の内側領域には複数の噴出孔31が形設されている。
【0085】
第2実施形態においては、フラッシュ加熱処理が終了した後、シャワープレート30の複数の噴出孔31から窒素ガスを噴出させつつ、昇降機構14がリフトピン12を上昇させて半導体ウェハーWをリング32の内側にまで上昇させて冷却する。半導体ウェハーWを円筒形状部材であるリング32の内側にまで上昇させることにより、噴出孔31から噴出される窒素ガスがより強く半導体ウェハーWに吹き付けられることとなり、半導体ウェハーWの表面における窒素ガスの流速が第1実施形態よりもさらに増大する。その結果、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【0086】
また、半導体ウェハーWを円筒形状のリング32に内側に入れて冷却すれば、ガス排気孔86からの排気の影響を抑制して半導体ウェハーWに表面に均質な窒素ガス流を形成することが可能となる。すなわち、リング32による整流作用を得ることができる。これにより、半導体ウェハーWの全面を均一な降温レートで降温させることができる。
【0087】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(
図1)。また、第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである(
図8)。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、シャワープレート30にリングを設けている点である。但し、第3実施形態においては、リングの大きさが第2実施形態とは異なる。
【0088】
図12は、第3実施形態における半導体ウェハーWの冷却を模式的に示す図である。第3実施形態のシャワープレート30の下面には、リング33が取り付けられている。第3実施形態のリング33は、半導体ウェハーWの直径よりも小さな内径の円環形状を有する筒状体である。換言すれば、リング33は、半導体ウェハーWの直径よりも小さな内径の円筒形状部材である。第2実施形態とは異なり、相対的に小さな内径のリング33の内側に半導体ウェハーWを入れることは出来ない。リング33の内径は、半導体ウェハーWの直径がφ300mmであれば、例えばφ270mm~φ280mmである。
【0089】
また、リング33は、シャワープレート30と同様に、石英にて形成されている。シャワープレート30におけるリング33の内側領域には複数の噴出孔31が形設されている。
【0090】
第3実施形態においては、フラッシュ加熱処理が終了した後、シャワープレート30の複数の噴出孔31から窒素ガスを噴出させつつ、昇降機構14がリフトピン12を上昇させて半導体ウェハーWをリング33の下端に近接する高さ位置にまで上昇させて冷却する。半導体ウェハーWが当該高さ位置にまで上昇すると、リング33の下端は半導体ウェハーWの周縁部と微少間隔を隔てて近接することとなる。但し、リング33の下端は半導体ウェハーWの周縁部に接触はしない。このようにしても、複数の噴出孔31から噴出される窒素ガスの全てがリング33内を通過して半導体ウェハーWに吹き付けられることになるため、窒素ガスがより強く半導体ウェハーWに吹き付けられることとなり、半導体ウェハーWの表面における窒素ガスの流速が第1実施形態よりもさらに増大する。その結果、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【0091】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(
図1)。また、第4実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである(
図8)。第4実施形態が第1実施形態と相違するのは、シャワープレート30の構成である。
【0092】
図13は、第4実施形態における半導体ウェハーWの冷却を模式的に示す図である。第1実施形態から第3実施形態ではシャワープレート30に複数の噴出孔31が設けられていたが、第4実施形態においては、シャワープレート30の中央に1つの噴出孔34が穿設されている。より正確には、リフトピン12に支持される半導体ウェハーWの中央部に対向するシャワープレート30の位置に1つの噴出孔34が穿設されている。噴出孔34の孔径は噴出孔31の孔径より大きくても良い。
【0093】
第4実施形態においては、フラッシュ加熱が終了した後、シャワープレート30の中央の噴出孔34から下方に向けて窒素ガスを噴出させつつ、昇降機構14がリフトピン12を上昇させて半導体ウェハーWをシャワープレート30に近接させて冷却する。
図13に示すように、噴出孔34から噴出された窒素ガスは、半導体ウェハーWの中央部に吹き付けられ、その中央部から周縁部に向けて拡がるように流れる。このようにしても、半導体ウェハーWの表面における窒素ガスの流速が増大して熱伝達率が上昇し、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【0094】
また、半導体ウェハーWの中央部に吹き付けられた窒素ガスが周縁部に向かって流れるため、半導体ウェハーWに表面に均質な窒素ガス流を形成することができる。これにより、半導体ウェハーWの全面を均一な降温レートで降温させることができる。
【0095】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(
図1)。また、第5実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである(
図8)。第5実施形態が第1実施形態と相違するのは、シャワープレート30の構成である。
【0096】
図14は、第5実施形態における半導体ウェハーWの冷却を模式的に示す図である。第5実施形態においては、シャワープレート30の端部に1つの噴出孔35が穿設されている。より正確には、リフトピン12に支持される半導体ウェハーWの周縁部に対向するシャワープレート30の位置に1つの噴出孔35が穿設されている。噴出孔35の孔径は噴出孔31の孔径より大きくても良い。
【0097】
また、第5実施形態においては、チャンバー6内の気体を排気するガス排気孔86を設ける位置を調整している。具体的には、チャンバー6を上方から見た平面視において、リフトピン12に支持される半導体ウェハーWの中心を挟んでシャワープレート30の噴出孔35とは反対側にガス排気孔86を設けている。ガス排気孔86を設ける高さ位置は適宜のものとすることができる。
【0098】
第5実施形態においては、フラッシュ加熱が終了した後、シャワープレート30の端部の噴出孔35から下方に向けて窒素ガスを噴出させつつ、昇降機構14がリフトピン12を上昇させて半導体ウェハーWをシャワープレート30に近接させて冷却する。
図14に示すように、噴出孔35から噴出された窒素ガスは、半導体ウェハーWの周縁部の一方側に吹き付けられ、その一方側から周縁部の他方側に向けて流れる。なお、ここでの周縁部の他方側は、半導体ウェハーWの中心を挟んで上記周縁部の一方側の反対側である。
【0099】
また、第5実施形態においては、半導体ウェハーWの中心を挟んで噴出孔35とは反対側にガス排気孔86を設けているため、ガス排気孔86からの排気を行うことによって、上述したような半導体ウェハーWの周縁部の一方側から他方側に向かう窒素ガスの流れがより形成されやすい。すなわち、ガス排気孔86からの排気によって、半導体ウェハーWの周縁部の一方側から他方側に向かう窒素ガスの流れが形成されるのを補助しているのである。
【0100】
第5実施形態のように、半導体ウェハーWの表面に沿って周縁部の一方側から他方側に向かう窒素ガスの流れを形成することにより、半導体ウェハーWの表面における窒素ガスの流速が増大して熱伝達率が上昇し、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。また、第5実施形態においては、半導体ウェハーWの周縁部の一方側から他方側に向かうような概ね一方向の窒素ガスの流れを形成するため、窒素ガスの滞留は生じにくい。
【0101】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同様である(
図1)。また、第6実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである(
図8)。第6実施形態においては、半導体ウェハーWの冷却中にチャンバー6内の減圧を行っている。
【0102】
第6実施形態のシャワープレート30の構成は、第1実施形態から第5実施形態のいずれかと同じである。すなわち、シャワープレート30には少なくとも1つの噴出孔が穿設されている。シャワープレート30にはリングが設けられていても良い。
【0103】
第6実施形態においては、フラッシュ加熱が終了した後、シャワープレート30に設けられた噴出孔から下方に向けて窒素ガスを噴出させつつ、昇降機構14がリフトピン12を上昇させて半導体ウェハーWをシャワープレート30に近接させて冷却する。それとともに、第6実施形態においては、排気部190がガス排気孔86からチャンバー6内の気体を排気することによって、チャンバー6内を大気圧未満に減圧している。チャンバー6内に窒素ガスを噴出しつつ排気を行っているため、チャンバー6内を高真空状態にまで減圧することは困難であるものの、窒素ガスの供給流量よりも排気流量を大きくすることによって、チャンバー内を大気圧未満(例えば、5000Pa程度)に減圧することは可能である。
【0104】
窒素ガスを噴出するシャワープレート30に半導体ウェハーWを近接させるとともに、チャンバー6内を大気圧未満に減圧することにより、半導体ウェハーWの表面における窒素ガスの流速をさらに増大させることができる。その結果、窒素ガスへの熱伝達率が上昇し、半導体ウェハーWの冷却効率を向上させて高い降温レートを得ることができる。
【0105】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、シャワープレート30から冷却ガスとして窒素ガスを噴出させていたが、これに限定されるものではなく、冷却ガスとして例えば高い熱伝導率を有するヘリウムガスまたは水素ガスを用いるようにしても良い。窒素ガスよりも熱伝導率の高いヘリウムガスまたは水素ガスを冷却ガスとして用いることにより、より半導体ウェハーWの冷却効率を向上させることが可能となる。もっとも、ヘリウムガスまたは水素ガスに比較して窒素ガスは顕著に安価であるため、冷却ガスとして窒素ガス用いることによりランニングコストの上昇を抑制することができる。
【0106】
また、第4実施形態および第5実施形態において、シャワープレート30に複数の噴出孔を設けるようにしても良い。すなわち、第4実施形態では、シャワープレート30の中央に複数の噴出孔34を設けるようにしても良い。第5実施形態では、シャワープレート30の端部に複数の噴出孔35を設けるようにしても良い。
【0107】
また、第2実施形態と第4実施形態または第5実施形態とを併用するようにしても良い。すなわち、シャワープレート30の下面に半導体ウェハーWの直径よりも大きなリングを設けるとともに、そのリングの内側領域の中央または端部に1つの噴出孔を設けるようにしても良い。
【0108】
また、半導体ウェハーWをシャワープレート30に近接させたときの双方の間隔は適宜の値に調整することができる。シャワープレート30と半導体ウェハーWとの間隔が狭くなるほど、ウェハー表面における窒素ガスの流速を増大させて冷却効率を向上させることができるものの、当該表面にパーティクル等が付着する懸念も高まる。熱処理装置1におけるプロセスの内容によっては上記各実施形態よりも相対的に低い降温レートが好適な場合もある。このような場合には、必要とする降温レートを得ることができる間隔に半導体ウェハーWをシャワープレート30に近接させるのが好ましい。
【0109】
また、チャンバー6内の気体を排気するガス排気孔86を設ける位置を適宜に調整することもできる。ガス排気孔86を設ける位置によって、冷却時に半導体ウェハーWに表面に形成される窒素ガスの流れの方向を調整することができる(但し、第2実施形態および第3実施形態のようにリングを設けた場合は、窒素ガス流はガス排気孔86の影響を受けない)。従って、最も冷却効率を高めることができる窒素ガスの流れを形成する位置にガス排気孔86を設けるのが好適である。このため、第5実施形態では、半導体ウェハーWの中心を挟んで噴出孔35とは反対側にガス排気孔86を設けている。
【0110】
なお、第5実施形態において、ガス排気孔86の位置調整は必須ではない。ガス排気孔86の位置に関わらず、第5実施形態のようにシャワープレート30の端部の噴出孔35から窒素ガスを噴出させることにより、半導体ウェハーWの表面に沿った窒素ガスの流れを形成することは可能である。もっとも、半導体ウェハーWの中心を挟んで噴出孔35とは反対側にガス排気孔86を設けるようにすれば、より確実に半導体ウェハーWの周縁部の一方側から他方側に向かう窒素ガスの流れを形成することができる。
【0111】
また、昇降機構14がリフトピン12を上昇させるタイミングは、フラッシュ光照射の後に限定されるものではなく、フラッシュ光照射とほぼ同時であっても良い。フラッシュランプFLからのフラッシュ光の照射時間は、0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の極めて短時間であるため、フラッシュ光照射とほぼ同時にリフトピン12を上昇させたとしても、半導体ウェハーWの表面温度は目標とする処理温度T2に到達する。そして、フラッシュ光照射とほぼ同時にリフトピン12を上昇させることにより、加熱後の半導体ウェハーWを迅速に冷却することができる。
【0112】
また、上記各実施形態においては、フラッシュランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲンランプハウス4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0113】
また、上記各実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)またはLEDランプを連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0114】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
12 リフトピン
14 昇降機構
30 シャワープレート
31,34,35 噴出孔
32,33 リング
61 チャンバー側部
65 熱処理空間
74 サセプタ
81 ガス供給口
84 給気バルブ
85 処理ガス供給源
86 ガス排気孔
89 排気バルブ
90 ガスリング
91 上部リング
92 下部リング
190 排気部
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー