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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016453
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20240131BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01G4/32 531
H01G4/32 540
H01G2/10 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118586
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】村上 耕之
(72)【発明者】
【氏名】中田 勇介
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082BB01
5E082BC25
5E082BC31
5E082GG01
5E082JJ04
(57)【要約】
【課題】フィルムコンデンサに関して、トレードオフの関係にあるとされていた〈熱損傷抑制〉と〈耐振性強化〉とを両立させる。
【解決手段】コンデンサ素子11の軸方向両端の端面電極11a,11bにそれぞれバスバー12,13が接続されたコンデンサ素子ユニット10と、コンデンサ素子ユニット10の主要部を収納する開口部付きの外装ケース20と、コンデンサ素子ユニット10の主要部を覆う状態で外装ケース20に充填され固化したモールド樹脂30とを備える。一対のバスバーのうち少なくとも一方のバスバー12においては、モールド樹脂30の外部に露出し、外装ケース20の外側でバスバー先端の外部接続端子部13eまで展開して放熱に供せられる放熱部13cを有する。放熱部13cには、モールド樹脂30内に導入埋設されて位置固定される支持脚部13iが連接されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子の軸方向両端の端面電極にそれぞれバスバーが接続されたコンデンサ素子ユニットと、
前記コンデンサ素子ユニットの主要部を収納する開口部付きの外装ケースと、
前記コンデンサ素子ユニットの主要部を覆う状態で前記外装ケースに充填され固化したモールド樹脂とを備え、
前記一対のバスバーのうち少なくとも一方のバスバーにおいては、前記モールド樹脂の外部に露出し、前記外装ケースの外側でバスバー先端の外部接続端子部まで展開して放熱に供せられる放熱部を有し、
前記放熱部には、前記モールド樹脂内に導入埋設されて位置固定される支持脚部が連接されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記放熱部は、前記モールド樹脂の表面に対して所定間隔を隔てて離間する状態で前記モールド樹脂の表面に沿って延設されている請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記支持脚部は、前記放熱部からほぼ垂直に折り曲げ延出され、前記モールド樹脂の表面に対してほぼ垂直姿勢で導入埋設されている請求項1または請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子の軸方向両端の端面電極にそれぞれバスバーが接続されたコンデンサ素子ユニットと、前記コンデンサ素子ユニットの主要部を収納する開口部付きの外装ケースと、前記コンデンサ素子ユニットの主要部を覆う状態で前記外装ケースに充填され固化したモールド樹脂とを備えたフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような構成のフィルムコンデンサにおいて、近年では、コンデンサ素子の熱損傷抑制(耐熱性向上)とバスバー等の機械的損傷を防止するための耐振性強化とがともに大きな課題となっている。
【0003】
コンデンサ素子の端面電極から延出されるバスバーには放熱部が形成される。放熱部の面積を増せば、フィルムコンデンサの熱損傷を効果的に回避することは可能となる。しかし、その反面、面積が拡張された放熱部は外部振動に対して共振を起こしやすくなり、フィルムコンデンサの耐振性に問題を生じる。一方、耐振性確保のため固有振動数を高い側に調整すべく放熱部の面積を縮小すると、コンデンサ素子が熱損傷するおそれが増大化する。すなわち、熱損傷抑制と耐振性強化とはトレードオフ(二律背反)の関係にある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2018/193589
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、フィルムコンデンサに関して、トレードオフの関係にあるとされていた〈熱損傷抑制〉と〈耐振性強化〉とを両立させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0007】
本発明によるフィルムコンデンサは、
コンデンサ素子の軸方向両端の端面電極にそれぞれバスバーが接続されたコンデンサ素子ユニットと、
前記コンデンサ素子ユニットの主要部を収納する開口部付きの外装ケースと、
前記コンデンサ素子ユニットの主要部を覆う状態で前記外装ケースに充填され固化したモールド樹脂とを備え、
前記一対のバスバーのうち少なくとも一方のバスバーにおいては、前記モールド樹脂の外部に露出し、前記外装ケースの外側でバスバー先端の外部接続端子部まで展開して放熱に供せられる放熱部を有し、
前記放熱部には、前記モールド樹脂内に導入埋設されて位置固定される支持脚部が連接されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、少なくとも一方のバスバーは次のように構成されている。
【0009】
放熱部の実質的な長さ寸法(面積)を大きくすることにより、コンデンサ素子よりバスバーの埋設部分を介して放熱部に伝導してきた熱は、良好に外部に拡散放熱される。結果として、放熱作用が強化され、コンデンサ素子から発生した熱がモールド樹脂内で蓄積増大化することが抑制され、コンデンサ素子の熱損傷を良好に回避することになる。
【0010】
併せて、 放熱部に支持脚部を連接し、その支持脚部をモールド樹脂内に導入埋設し位置固定するので、振動部材における弦の腹に相当する部分の長さ寸法が短尺化される。短尺化に応じて固有振動数fnが高くなり、外部からの不特定な振動との共振が抑えられ、結果として機械的損傷を抑制することができる。すなわち、上記したトレードオフを解消して、熱損傷抑制と耐振性強化を図ることができる。
【0011】
上記構成の本発明のフィルムコンデンサには、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0012】
〔1〕前記放熱部は、前記モールド樹脂の表面に対して所定間隔を隔てて離間する状態で前記モールド樹脂の表面に沿って延設されている。これにより、放熱面を広げながらも全体がコンパクトにまとめ上げられる。
【0013】
〔2〕また、前記支持脚部は、前記放熱部からほぼ垂直に折り曲げ延出され、前記モールド樹脂の表面に対してほぼ垂直姿勢で導入埋設されている。放熱部を弦とみなしたときに、弦の一方端の節は埋設の境界部であって、それは放熱部からほぼ垂直に折り曲げ延出されてモールド樹脂の表面に対してほぼ垂直姿勢で導入埋設されており、他方、支持脚部は弦の他方端の節であり、それは放熱部からほぼ垂直に折り曲げ延出されてモールド樹脂の表面に対してほぼ垂直姿勢で導入埋設されたものとなっている。すなわち、放熱部とその両端の節である埋設の境界部と支持脚部とは全体として門型を形成してモールド樹脂で固定されており、その結果として耐振性の向上に有利に作用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルムコンデンサにつき、バスバーにおける放熱部に支持脚部を連接し、その支持脚部をモールド樹脂内に導入埋設して位置固定しているので、コンデンサ素子の熱損傷を回避しながら、耐振性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例における外装ケースに収納する前段階のコンデンサ素子ユニットの斜め右上方向視の斜視図
図2】本発明の実施例におけるコンデンサ素子ユニットを外装ケースに収納した状態のフィルムコンデンサの斜め右上方向視の斜視図
図3】本発明の実施例におけるコンデンサ素子ユニットの分解斜視図
図4】本発明の実施例における外装ケースに収納する前段階のコンデンサ素子ユニットの斜め左上方向視の斜視図
図5】本発明の実施例におけるコンデンサ素子ユニットを外装ケースに収納した状態のフィルムコンデンサの斜め左上方向視の斜視図
図6】本発明の実施例における要部の拡大斜視図(樹脂充填前の状態)
図7】本発明の実施例における要部の拡大斜視図(樹脂充填後の状態)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、上記構成の本発明のフィルムコンデンサにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0017】
図1図5において、10はインバータ等の外部機器に対するノイズフィルタ用としてのコンデンサ素子ユニットである。このコンデンサ素子ユニット10は静電容量が比較的小さく、占有空間容積も小さい。
【0018】
コンデンサ素子ユニット10は、1つのコンデンサ素子11における軸方向両端にある上側端面電極11aおよび下側端面電極11bにそれぞれ第1のバスバー12および第2のバスバー13が電気的かつ機械的に接続されている。
【0019】
第1のバスバー12は、内部接続端子部12a、第1の繋ぎ部12b、第2の繋ぎ部12c、外部接続端子部12dより構成されている。内部接続端子部12aは平板状を呈し、コンデンサ素子11の上側端面電極11aに当接状態で電気的かつ機械的に接続されている。第1の繋ぎ部12bは比較的小幅短尺の矩形平板状を呈し、内部接続端子部12aの端部から上方に向けてほぼ直角に折り曲げられ、組み立て状態で外装ケース20の外側面20aの上縁である側壁上端縁20a1に対応する高さ位置よりも高位置まで小寸法だけ延出している。この高さ位置関係により、第1のバスバー12における第2の繋ぎ部12cおよび外部接続端子部12dは外装ケース20の側壁上端縁20a1を乗り越えてケース外に位置している。第2の繋ぎ部12cは逆L字状を呈し、第1の繋ぎ部12bの上端部から延出されている。第2の繋ぎ部12cは、水平姿勢の基部12c1と垂下部12c2とがほぼ直角をなすように折り曲げられている。基部12c1は、第1の繋ぎ部12bの上端部からほぼ直角の姿勢で折り曲げられている。外部接続端子部12dは、基部12d1と先端部12d2とがほぼ直角をなすように折り曲げられて逆L字状を呈している。基部12d1は、第2の繋ぎ部12cの下端部からほぼ直角の姿勢で折り曲げられている。その基部12d1はほぼ水平姿勢であり、コンデンサ素子11の側面から水平方向外側に離れる方向に展開している。外部接続端子部12dの先端部12d2には丸形の取付け孔12eが形成されている。本実施例では、内部接続端子部12aにもう1つの外部接続端子部12fが連接されている。その外部接続端子部12fは、内部接続端子部12aにおいて第1の繋ぎ部12bの対角位置からほぼ直角に上方に折り曲げられている。外部接続端子部12fの先端部には丸形の取付け孔12gが形成されている。
【0020】
以上の内部接続端子部12a、第1の繋ぎ部12b、第2の繋ぎ部12c、外部接続端子部12dおよび12gからなる第1のバスバー12は、銅板などの導電性の金属薄板を打ち抜いて折り曲げ加工することにより形成されている。
【0021】
第1のバスバー12における第2の繋ぎ部12cの基部12c1は、モールド樹脂30の水平上表面30aよりも上位の位置で、さらには外装ケース20の開口面よりも上位の位置で水平方向に展開されている。
【0022】
第2のバスバー13は、内部接続端子部13a、第1の繋ぎ部13b、放熱部13c、第2の繋ぎ部13d、外部接続端子部13eより構成されている。内部接続端子部13aは、コンデンサ素子11の下側端面電極11bに当接状態で電気的かつ機械的に接続されている。第1の繋ぎ部13bは比較的小幅短尺の矩形平板状を呈し、内部接続端子部13aの端部から上方に向けてほぼ直角に折り曲げられ、かつコンデンサ素子11の側面に沿って立ち上げられ、上側端面電極11aおよび第1のバスバー12の内部接続端子部12aよりも高位置まで延出されている。
【0023】
放熱部13cは、第1の繋ぎ部13bの上端部からほぼ直角に折り曲げられ、コンデンサ素子11の上側端面電極11aおよび第1のバスバー12の内部接続端子部12aに対してその上方に平行な水平姿勢で対向している。放熱部13cは、高い放熱性を確保するために、変形六角形状(正六角形を1方向に沿って少し引き延ばした形状)を呈し、第1の繋ぎ部13bの幅寸法よりも大きな幅寸法および長さ寸法を有している。放熱部13cは、外装ケース20の外側でバスバー先端の外部接続端子部13eまで展開している。第2の繋ぎ部13dは比較的小幅短尺の矩形平板状を呈し、放熱部13cの端縁部の1辺からほぼ直角に折り曲げられ、コンデンサ素子11の側面に沿って立ち下げられている。第2の繋ぎ部13dは、その幅寸法が第1の繋ぎ部13bの幅寸法と同じ程度になっている。第2の繋ぎ部13dも放熱作用を有している。第1および第2の繋ぎ部13b,13dの板面はともに鉛直面に沿っているが、それら板面どうしは互いにほぼ直交する姿勢となっている。第2の繋ぎ部13dの下端部はコンデンサ素子11の下側端面電極11bの高さ位置とほぼ同じ高さ位置にあり、その下端部から逆L字状の外部接続端子部13eが連接されている。外部接続端子部13eは、基部13e1と先端部13e2とがほぼ直角をなすように折り曲げられ、基部13e1は、第2の繋ぎ部13dの下端部からほぼ直角の姿勢で折り曲げられている。その基部13e1はほぼ水平姿勢であり、コンデンサ素子11の側面から水平方向外側に離れる方向に展開している。外部接続端子部13eの先端部13e2には丸形の取付け孔13fが形成されている。本実施例では、その放熱部13cにもう1つの外部接続端子部13gが連接されている。その外部接続端子部13gは、放熱部13cの端縁部の1辺(前記変形六角形状において、第2の繋ぎ部13dへの折り曲げ部とは対向する位置の1辺)からほぼ直角に上方に折り曲げられている。外部接続端子部13gの先端部には丸形の取付け孔13hが形成されている。
【0024】
さらに、本実施例においては、図6図7に示すように、第2のバスバー13の放熱部13cに、モールド樹脂30内に導入埋設されて位置固定される支持脚部13iが連接されている。この支持脚部13iは、図4図5に示すように、放熱部13cから立ち下がる第2の繋ぎ部13dと放熱部13cから立ち上がる外部接続端子部13gとの中間位置で、放熱部13cから立ち下がる第1の繋ぎ部13bの向かい側位置において放熱部13cの端縁部の1辺からほぼ直角に下方に折り曲げられている。すなわち、放熱部13cから部分円筒状の屈曲部13i′(その軸線は水平方向)を介して鉛直下方に向けて折り曲げられている。
【0025】
図6はモールド樹脂30を外装ケース20内に充填する前段階の状態を表し、図7はモールド樹脂30を充填した後の状態を表している。第2のバスバー13の放熱部13cから垂下した支持脚部13iは、その下端側部分13i1がモールド樹脂30の水平上表面30aよりモールド樹脂30内に導入埋設されて位置固定されている。図6においける支持脚部13iの所定の高さ位置に描いた破線L1は、図7において、モールド樹脂30の水平上表面30aに対する支持脚部13iの接触境界線L2に対応している。
【0026】
支持脚部13iの破線L1より下位の下端側部分13i1がモールド樹脂30の所定の厚さに亘って埋設され強固に固定されている。
【0027】
この支持脚部13iは、コンデンサ素子11の外周面の直近でその外周面から離間した状態で設けられている。離間しているので、コンデンサ素子11の外周面と支持脚部13iとの隙間部分を含めて支持脚部13iの下端側部分13i1がモールド樹脂30内に埋設され強固に固定されている。
【0028】
以上の内部接続端子部13a、第1の繋ぎ部13b、放熱部13c、第2の繋ぎ部13d、外部接続端子部13eおよび13g、支持脚部13iからなる第2のバスバー13は、銅板などの導電性の金属薄板を打ち抜いて折り曲げ加工することにより形成されている。
【0029】
第2のバスバー13における放熱部13cは、モールド樹脂30の水平上表面30aよりも上位の位置に露出し、さらには外装ケース20の開口面よりも上位の位置で水平方向に展開されている。この高さ位置関係により、第2のバスバー13における第2の繋ぎ部12cおよび第2の繋ぎ部13dは外装ケース20の側壁上端縁20a1を乗り越えてケース外への配置が可能となっている。
【0030】
第2のバスバー13における逆L字状の外部接続端子部13eは、取付け孔13fを通してねじ込むネジによって、車載用のインバータなどの外部機器から延出されているケーブル先端の圧着端子(図示せず)に対して接続されるとともに固定されるようになっている。
【0031】
モールド樹脂30に埋設された部分からモールド樹脂30の外部へと抜ける第1のバスバー12の埋設の境界部を起点にして考える。放熱部13cの長さ寸法は、埋設の境界部から外部接続端子部13eまでの長さ寸法である。放熱作用を促進すべく放熱部13cの長さ寸法(放熱面の面積)を大きくすれば、コンデンサ素子11より放熱部13cに伝導してきた熱の拡散効果は高まる。結果として、コンデンサ素子11から発生した熱がモールド樹脂30内で蓄積増大化することが抑制され、コンデンサ素子11の熱損傷を良好に回避することになる。
【0032】
併せて、放熱部13cに支持脚部13iを連接し、その支持脚部13iをモールド樹脂30内に導入埋設し位置固定しているので、放熱部13cの途中部分が固定され、振動に対して抵抗部となるので、上記のコンデンサ素子11の熱損傷回避の効果を確保しながら、耐振性の増強も図ることができる。
【0033】
放熱部13cに発生する振動を弦の振動に置き換えて考察する。いま、放熱部13cには支持脚部13iが連接されていないとする(従来例相当)。振動部材は支持脚部13iのない放熱部13cとなり、振動部材における弦の長さLは放熱部13cの全長寸法となる。一般的に固有振動数fnと弦の長さLとの関係は、弦の長さLが長くなるほど(つまり放熱部13cの長さを大きくするほど)、固有振動数fnは低くなる。当該のフィルムコンデンサが搭載される機器類・装置類に外部から伝搬してくる不特定な振動の振動数が放熱部13cの固有振動数fnに接近し同期すると、放熱部13cは大きく振動する(共振動作)。
【0034】
つまり、放熱部13cを外装ケース20外で広く展開すれば(放熱部13cの長さ寸法を大きくとれば)、放熱面積が増大化するため、フィルムコンデンサの熱損傷を効果的に回避することは可能となるが、その反面、長さ寸法が増加したこととの関係で放熱部13cが外部振動と共振を起こして異常変形、亀裂、破断などの機械的損傷を受けやすくなる。すなわち、フィルムコンデンサの耐振性に問題を生じる。一方、外部振動との共振の確率を低くして耐振性を確保するために、固有振動数fnを高い側に調整すべく、反比例的な関係にある放熱部13cの長さ寸法を短くすると(外装ケース20外で放熱部13cの展開を小面積化すると)、今度はフィルムコンデンサを熱損傷するおそれが増大化する。
【0035】
つまり、熱損傷抑制と耐振性増強とはトレードオフの関係にある。
【0036】
これに対し、本実施例にあっては、放熱部13cに支持脚部13iを連接し、その支持脚部13iをモールド樹脂30内に導入埋設し位置固定するので、弦の一方の節に対応する埋設の境界部ともう一方の節に対応する支持脚部13iとの間の弦の腹に相当する部分の長さ寸法が、支持脚部13iがない場合の放熱部13c全体の長さ寸法よりも短尺化される。その短尺化された長さ寸法に対応して固有振動数fnが反比例的に変化して高くなるので、外部から伝搬してくる不特定な振動との共振の確率が抑えられ、結果として機械的損傷を抑制することができる。すなわち、上記したトレードオフを解消して、熱損傷抑制と耐振性増強とをともに向上することができる。
【0037】
放熱部13cは、モールド樹脂30の表面30aに対して所定間隔を隔てて離間する状態でその表面30aに沿って延設されており、放熱面を広げながらもフィルムコンデンサのコンパクト化が図られている。
【0038】
放熱部13cからほぼ垂直に折り曲げ延出された支持脚部13iは、モールド樹脂30の表面30aにほぼ垂直姿勢で導入埋設されている。放熱部13cと第1の繋ぎ部13bおよび支持脚部13iとは全体として門型を形成してモールド樹脂30で固定され、かつ支持脚部13iと第2の繋ぎ部13dとも全体として門型を形成してモールド樹脂30で固定されているため、耐振性の向上に有利に作用する。
【0039】
なお、上記の実施例では支持脚部13iをモールド樹脂30の表面30aに対して垂直姿勢で埋没させているがこれに限定されず、モールド樹脂30の表面30aに対して斜め方向から埋没させてもよい。さらに、上記の実施例では支持脚部13iを直線状にモールド樹脂30の内部に埋没させているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、モールド樹脂30の内部で支持脚部13iを折り曲げてもよい。例えば、支持脚部13iの先端部を水平に折り曲げた断面逆L字形に形成してもよい。また、支持脚部13iの先端部の折り曲げの方向を放熱部13cから遠ざかる方向や放熱部13cに近づく方向としてもよい。モールド樹脂30の内部で支持脚部13iを折り曲げることで耐振性をさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、フィルムコンデンサに関して、コンデンサ素子の熱損傷を回避しながら、耐振性の向上を図ることができる技術として有用である。
【符号の説明】
【0041】
10 コンデンサ素子ユニット
11 コンデンサ素子
11a 上側端面電極
11b 下側端面電極
12 第1のバスバー
13 第2のバスバー
13c 放熱部
13e 外部接続端子部
13i 支持脚部
20 外装ケース
20a 外装ケースの外側面
30 モールド樹脂
30a 水平上表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7