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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164531
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20241120BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20241120BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B23K26/064 A
B23K26/073
B23K26/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080079
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 研太
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA37
4E168CB03
4E168CB04
4E168DA36
4E168DA39
4E168EA02
4E168EA07
4E168EA13
4E168EA14
4E168EA15
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】レーザビームの作用を受ける部材、例えばフィラワイヤ等を、環状のビーム断面を有するレーザビームの中央部分に、レーザビームの経路を遮ることなく配置することが可能なレーザ装置を提供する。
【解決手段】環状成形光学部品が、レーザビームのビームプロファイルを環状に成形する。環状成形光学部品によって成形された環状のビームプロファイルを有するレーザビームのビーム断面を、分岐光学部品が分割し、相互に空間的に隔てられた2つの分岐レーザビームを生成する。再合成光学部品が、2つの分岐レーザビームを、環状のビームプロファイルを有するレーザビームに再合成する。2つの分岐レーザビームで囲まれた空間の外側から、2つの分岐レーザビームの間の空間を経由して、再合成光学部品により再合成される位置まで、ガイド構造が、レーザビームの作用を受ける部材を案内する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームのビームプロファイルを環状に成形する環状成形光学部品と、
前記環状成形光学部品によって成形された環状のビームプロファイルを有するレーザビームのビーム断面を分割し、相互に空間的に隔てられた2つの分岐レーザビームを生成する分岐光学部品と、
前記2つの分岐レーザビームを、環状のビームプロファイルを有するレーザビームに再合成する再合成光学部品と、
前記2つの分岐レーザビームで囲まれた空間の外側から、前記2つの分岐レーザビームの間の空間を経由して、前記再合成光学部品により再合成される位置まで、レーザビームの作用を受ける部材を案内するガイド構造と
を備えたレーザ装置。
【請求項2】
さらに、前記再合成光学部品によって再合成されたレーザビームを、対象物に向けて集光させる集光光学部品を備えた請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記ガイド構造は、前記集光光学部品による集光箇所に向って、前記集光箇所の手前まで延びている請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記環状成形光学部品は、2枚のアキシコンレンズを含み、前記再合成光学部品より前のレーザビームの経路でビーム径を大径化している請求項2または3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記再合成光学部品と前記集光光学部品との間のレーザビームの経路に、ビーム径を大径化する大径化光学部品が配置されている請求項2または3に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記ガイド構造は、先端から前記部材を繰り出す構造を有し、
前記対象物から前記ガイド構造の先端までの距離を変化させる昇降機構を、さらに備えた請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記ガイド構造は、先端から前記部材を繰り出す構造を有し、
前記ガイド構造の先端を、レーザビームの経路と交差する方向に移動させる変位機構を、さらに備えた請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記分岐光学部品及び前記再合成光学部品のそれぞれは、入射側の表面及び出射側の表面が相互に平行な屈折部材をルーフ型に組み合わせた光学部材を含む請求項1、2、3、6、及び7のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記分岐光学部品は、入射側の表面及び出射側の表面が相互に平行な板状の第1屈折部材及び第2屈折部材を含み、
前記第1屈折部材の入射側の表面の1つの縁は直線であり、入射するレーザビームの中心軸を通過し、入射するレーザビームを、分岐前のレーザビームの中心軸から離れる向きに屈折させ、
前記第2屈折部材は、前記第1屈折部材を通過しなかったレーザビームを、分岐前のレーザビームの中心軸から離れる向きに屈折させ、
前記第1屈折部材及び前記第2屈折部材のそれぞれを透過した2本の分岐レーザビームの進行方向が相互に平行である請求項1、2、3、6、及び7のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記分岐光学部品と前記再合成光学部品との間のレーザビームの経路に配置され、レーザビームをウォブリングするウォブリング光学部品を、さらに備えた請求項1、2、3、6、及び7のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接において、加工点の横からフィラワイヤや金属粉末を供給し、フィラワイヤや金属粉末を溶かし込みながら溶接を行う肉盛り溶接技術が知られている。肉盛り溶接を行う場合に、一般的にフィラワイヤは、溶接の進行方向の前方から加工点に向けて供給される。フィラワイヤや金属粉末を加工点に供給するガイド機構の存在が、ワークへのアクセスの大きな制限となっていた。この制限を緩和するために、レーザビームと同軸にフィラワイヤや金属粉末を供給する技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示されたレーザ溶接装置では、レーザビームの断面を円環状(リング状)にし、円環形状の中央部分に金属粉末のガイド構造(供給管)を配置し、ガイド構造から金属粉末を加工点に向けて供給するとともに、リング状のレーザビームを加工点に集光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6529610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された溶接装置では、リング状のレーザビームを折返す折返しミラーに設けた貫通孔を通して、ガイド構造をレーザビームの中心部に挿入する。このとき、レーザビームのリング状のビーム断面の一部分がガイド構造と空間的に干渉し、ビーム断面の一部分を通過するレーザビームがガイド構造で遮光されてしまう。これにより、レーザビームのエネルギ損失や、ガイド構造の損傷等が発生する。また、レーザビームの経路の一部分が遮光されることにより、加工点におけるビームプロファイルに方向性が現れる。これにより、溶接品質が低下する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、レーザビームの作用を受ける部材、例えばフィラワイヤ等を、環状のビーム断面を有するレーザビームの中央部分に、レーザビームの経路を遮ることなく配置することが可能なレーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
レーザビームのビームプロファイルを環状に成形する環状成形光学部品と、
前記環状成形光学部品によって成形された環状のビームプロファイルを有するレーザビームのビーム断面を分割し、相互に空間的に隔てられた2つの分岐レーザビームを生成する分岐光学部品と、
前記2つの分岐レーザビームを、環状のビームプロファイルを有するレーザビームに再合成する再合成光学部品と、
前記2つの分岐レーザビームで囲まれた空間の外側から、前記2つの分岐レーザビームの間の空間を経由して、前記再合成光学部品により再合成される位置まで、レーザビームの作用を受ける部材を案内するガイド構造と
を備えたレーザ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
ガイド構造を環状のレーザビームの内部に挿入する箇所において、1本のレーザビームが相互に空間的に隔てられた2つの分岐レーザビームに分岐されている。このため、レーザビームに遮られることなく、2つのレーザビームの間の空間にガイド構造を挿入することができる。ガイド構造が挿入された箇所より下流側で、2つの分岐レーザビームを合成して1本のレーザビームに再合成すると、環状のレーザビームの内部にガイド構造が配置された構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施例によるレーザ装置の概略図である。
図2図2は、集光光学部品の焦点位置からずれた位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を、再合成光学部品を配置した場合と、配置しない場合について示す図である。
図3図3Aは、集光光学部品、ガイド構造、ワーク、及びレーザビームの位置関係を示す模式図であり、図3Bは、ガイド構造とレーザビームとが空間的に干渉しないための条件を示すグラフである。
図4図4は、第1実施例の変形例によるレーザ装置の光学系を示す模式図である。
図5図5は、第1実施例の他の変形例によるレーザ装置の光学系を示す模式図である。
図6図6は、第1実施例のさらに他の変形例によるレーザ装置の光学系を示す模式図である。
図7図7は、第2実施例によるレーザ装置の概略図である。
図8図8は、第2実施例の変形例によるレーザ装置の概略図である。
図9図9は、第2実施例の他の変形例によるレーザ装置の概略図である。
図10図10は、第2実施例のさらに他の変形例によるレーザ装置の概略図である。
図11図11は、第3実施例によるレーザ装置の概略図である。
図12図12Aは、ガイド構造をz方向に昇降させる昇降機構の一例を示す図であり、図12Bは、ガイド構造をz方向に昇降させる昇降機構の他の例を示す図であり、図12Cは、ガイド構造をxy面内で移動させる変位機構を示す図である。
図13図13A及び図13Bは、第4実施例によるレーザ装置の概略図である。
図14図14Aは、第1実施例によるレーザ装置に用いられている分岐光学部品及び再合成光学部品の概略図、及びビーム断面の模式図であり、図14Bは、第5実施例によるレーザ装置に用いられている分岐光学部品及び再合成光学部品の概略図、及びビーム断面の模式図である。
図15図15は、レーザ溶接装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図3Bを参照して、第1実施例によるレーザ装置について説明する。
図1は、第1実施例によるレーザ装置の概略図である。レーザ伝送ファイバ10の出力端から出力されたレーザビーム15が、コリメートレンズ11でコリメートされる。コリメートレンズ11でコリメートされたレーザビーム15が、環状成形光学部品20、分岐光学部品30、折返しミラー35、再合成光学部品40、集光光学部品60、及び保護ウィンドウ61を経由して、加工対象物であるワーク65に入射する。
【0011】
レーザビーム15の進行方向をz軸の正の向きとし、折返しミラー35への入射面をxz面とするxyz直交座標系を定義する。図1において、折返しミラー35で反射される前のレーザビーム15に対しては、左向きがz軸の正の向きに相当し、上向きがx軸の正の向きに相当する。反射後のレーザビーム15に対しては、下向きがz軸の正の向きに相当し、右向きがx軸の正の向きに相当する。また、紙面の手前から奥行き方向が、y軸の正の向きに相当する。図1において、レーザビーム15の経路の種々の位置のxy面内におけるビーム断面形状を示している。
【0012】
コリメートレンズ11を通過した位置におけるレーザビーム15Aのビーム断面は円形である。一例として、ビームプロファイルはガウシアン形状である。環状成形光学部品20は、レーザビームのビーム断面を環状形状に変換する。例えば、環状成形光学部品20を通過した位置におけるレーザビーム15Bのビーム断面は、円環状(リング状)である。本明細書において、円環部分の内側のパワー密度が十分低い領域を中空部分という場合がある。環状成形光学部品20は、例えば2枚のアキシコンレンズ20A、20Bで構成される。
【0013】
分岐光学部品30は、環状のビームプロファイルを有するレーザビーム15Bのビーム断面を分割し、相互に空間的に隔てられた2つの分岐レーザビーム15C1、15C2を生成する。分岐光学部品30は、入射側の表面及び出射側の表面が相互に平行な2つの屈折部材をルーフ型に組み合わせた光学部材で構成される。分岐光学部品30は、入射側の2つの平面の交線が谷線となり、出射側の2つの平面の交線が尾根線となり、谷線及び尾根線がx軸に平行になる姿勢で配置されている。谷線及び尾根線は、入射するレーザビーム15Bのビーム断面の中心を通過する。また、入射側の2つの平面の、レーザビーム15Bの中心軸に対する傾斜角(z軸に対する傾斜角)は同一である。このため、分岐レーザビーム15C1、15C2は、y方向に空間的に隔てられることになる。
【0014】
分岐光学部品30で2分岐された分岐レーザビーム15C1、15C2が、折返しミラー35に、例えば入射角45°で入射する。折返しミラー35で反射した後の分岐レーザビーム15C1、15C2も、y方向に隔てられている。折返しミラー35の反射面のうち、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2のビーム断面の幾何中心に相当する位置に貫通孔35Hが設けられている。
【0015】
筒状のガイド構造50が、貫通孔35Hを通り、反射前の2つの分岐レーザビーム15C1、15C2の隙間を通過して、反射後の分岐レーザビーム15C1、15C2の進行方向(z方向)に延びる。すなわち、ガイド構造50は、反射後の分岐レーザビーム15C1、15C2の間の空間に配置される。
【0016】
折返しミラー35で反射した2つの分岐レーザビーム15C1、15C2が、再合成光学部品40によって、元の環状のビーム断面を有する1本のレーザビーム15Dに合成される。再合成光学部品40は、分岐光学部品30と同様に、入射側の表面及び出射側の表面が相互に平行な2つの屈折部材をルーフ型に組み合わせた光学部材で構成される。入射側の2つの平面の交線が尾根線となり、出射側の2つの平面の交線が谷線となり、尾根線及び谷線がx軸に平行になる姿勢で配置されている。
【0017】
再合成光学部品40の尾根線及び谷線は、入射する2つの分岐レーザビーム15C1、15C2のビーム断面の幾何中心を通過する。また、ガイド構造50が再合成光学部品40をz方向に貫通するように、尾根線及び谷線と交差する貫通孔40Hが設けられている。貫通孔40Hの有無以外の点で、分岐光学部品30の形状と再合成光学部品40の形状とは同一である。
【0018】
再合成光学部品40で合成されたレーザビーム15Dが集光光学部品60に入射し、ワーク65の表面に向けて集光される。集光光学部品60として、凸レンズが用いられる。なお、集光光学部品60として、複数の平凸レンズを組み合わせた組レンズを用いてもよい。集光光学部品60とワーク65との間におけるレーザビーム15Eのビーム断面は、円環状であるが、その内径及び外径は、集光光学部品60に入射する前のレーザビーム15Dの内径及び外径より小さい。ワーク65の表面は、集光光学部品60の焦点位置に配置されている。ワーク65の表面は、集光されたレーザビーム15Fのビームウエストの位置、またはその近傍に配置される。
【0019】
集光光学部品60とワーク65との間に、保護ウィンドウ61が配置されている。集光光学部品60及び保護ウィンドウ61に、それぞれガイド構造50が貫通する貫通孔60H、61Hが設けられている。ガイド構造50は、再合成光学部品40で合成された環状のレーザビーム15Dの中空部分を通ってz方向に延び、ワーク65の加工点の手前まで達する。ガイド構造50は、環状のレーザビーム15D、15Eのビーム経路と空間的に干渉しないように配置されている。筒状のガイド構造50の内側の空間を通って、ワーク65の加工点(レーザビーム15の集光箇所)まで、レーザビームによって作用を受ける部材、例えばフィラワイヤ、金属粉体等が供給される。
【0020】
次に、図2を参照してビームプロファイルのシミュレーション結果について説明する。図2は、集光光学部品60の焦点位置からずれた位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を、再合成光学部品40(図1)を配置した場合と、配置しない場合について示す図である。焦点位置からのずれ量が-2.5mm、-1.5mm、-0.5mm、0mm、0.5mm、1.5mm、及び2.5mmのそれぞれについてビームプロファイルをシミュレーションした。ここで、負のずれ量は、焦点位置から集光光学部品60に近づく方向へのずれ量を意味する。再合成光学部品40が配置されていない構成においては、分岐レーザビーム15C1、15C2が相互にy方向に隔てられた状態で集光光学部品60に入射する。なお、分岐レーザビーム15C1、15C2の間隔を約10mmとした。
【0021】
再合成光学部品40を配置しない構成では、焦点からずれた位置でのビーム断面の真円度が低下することがわかる。これに対して再合成光学部品40を配置した構成では、焦点からずれた位置でもビーム断面の高い真円度が維持される。このように、再合成光学部品40を配置することにより、焦点からずれた位置においても、真円度の高いビーム断面を実現することができる。これにより、レーザ加工における方向性が現れにくくなる。
【0022】
次に、図3A及び図3Bを参照して、集光光学部品60の焦点距離と、環状のレーザビーム15Dの外径との関係について説明する。図3Aは、集光光学部品60、ガイド構造50、ワーク65、及びレーザビーム15D、15Eの位置関係を示す模式図である。筒状のガイド構造50の先端からワーク65の加工点に向けてフィラワイヤ67が供給される。フィラワイヤ67の直径をDFと標記し、ワーク65の表面からガイド構造50の先端までの距離をZと標記する。距離Zは、フィラワイヤ67の出代といわれる場合もある。
【0023】
集光光学部品60の外径をDLと標記し、集光前の環状のレーザビーム15Dの外径をDBと標記し、その肉厚をWBと標記する。図3Aにおいて、集光前のレーザビーム15D及び集光後のレーザビーム15Eの経路にハッチングを付している。ガイド構造50は、環状のレーザビーム15D、15Eの中空部分に配置されている。
【0024】
ガイド構造50の先端から加工点までは、フィラワイヤ67の位置及び形状が拘束されない自由な状態となる。フィラワイヤ67は、通常、リール等に巻かれた状態で提供されるため、フィラワイヤ67を自由空間に配置すると、リールに巻かれた状態の癖によってフィラワイヤ67が湾曲する場合がある。この湾曲の程度や湾曲の方向は、フィラワイヤ67の消費状態やフィラワイヤ67の回転等によって変化する。
【0025】
フィラワイヤ67を加工点の中心位置に安定的に供給するためには、フィラワイヤ67の、自由な状態になる部分の長さ、すなわち距離Zを約10mm以下にすることが好ましい。また、ガイド構造50の先端が溶接時の熱によるダメージを受けないようにするために、距離Zを約5mm以上にすることが好ましい。
【0026】
距離Zを5mm以上10mm以下に設定したとき、集光前のレーザビーム15Dの外径DBが小さくなると、ガイド構造50の先端と集光されたレーザビーム15Eとが空間的に干渉してしまう。この干渉を避けるために、集光前のレーザビーム15Dの外径DBをある程度大きくしなければならない。
【0027】
図3Bは、ガイド構造50とレーザビーム15Eとが空間的に干渉しないための条件を示すグラフである。横軸は集光光学部品60の焦点距離Fを単位[mm]で表し、集光前のレーザビーム15の外径DBを単位[mm]で表す。ここで、フィラワイヤ67の直径DFを0.8mmとし、ガイド構造50の先端の直径を1.8mmとし、環状のレーザビーム15Dの肉厚WBを10mmとした。図3Bに示した直線及び破線は、それぞれ距離Zが10mmの場合及び5mmの場合に、ガイド構造50とレーザビーム15Eとが空間的に干渉しないためのレーザビーム15Dの外径DBの下限値を示す。
【0028】
距離Zが10mmのときの外径DB[mm]の下限値は、
DB=0.18×F+20
であり、距離Zが5mmのときの外径DB[mm]の下限値は、
DB=0.36×F+20
である。
【0029】
集光光学部品60の直径DLは、集光前のレーザビーム15Dの外径DBより大きくしなければならない。例えば、距離Zが10mmのとき、集光光学部品60の直径DL[mm]が、以下の式を満たすようにすることが好ましい。
DL>0.18×F+20
【0030】
また、距離Zが5mmのとき、集光光学部品60の直径DL[mm]が、以下の式を満たすようにすることが好ましい。
DL>0.36×F+20
【0031】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2(図1)で囲まれた空間の外側から、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2の間の空間に、分岐レーザビーム15C1、15C2の経路を遮ることなくガイド構造50が進入している。このため、ガイド構造50によるレーザビーム15のエネルギ損失が抑制される。さらに、レーザビーム15によるガイド構造50のダメージが回避される。
【0032】
さらに、図2を参照して説明したように、第1実施例では、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2を再合成して1本の環状のレーザビーム15Dにすることにより、焦点近傍の位置におけるビーム断面の真円度の低下が抑制される。
【0033】
次に、図4図6を参照して、第1実施例の変形例によるレーザ装置について説明する。図4図6は、第1実施例の変形例によるレーザ装置の光学系を示す模式図である。図4図6では、ガイド構造50(図1)の記載が省略されている。
【0034】
また、第1実施例(図1)では、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2が相互に隔てられている方向(y方向)が、折返しミラー35への入射面に対して垂直である。図4図6においては、ビーム径の変化を視覚的に把握しやすいようにするために、便宜上、分岐光学部品30及び再合成光学部品40の谷線及び尾根線が、折返しミラー35への入射面(図4図6の紙面に相当)に対して垂直であるように示している。これに対応して、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2が相互に隔てられている方向が、折返しミラー35への入射面に対して平行になるように示されている。実際には、図1に示したように、分岐光学部品30及び再合成光学部品40の谷線及び尾根線は、折返しミラー35への入射面(図4図6の紙面に相当)に対して平行であり、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2が相互に隔てられている方向は、折返しミラー35への入射面に対して垂直である。
【0035】
図4に示した変形例では、環状成形光学部品20が、レーザビーム15のビーム断面を環状にするとともに、ビーム径を大径化する。例えば、第1実施例(図1)によるレーザ装置の構成と比べて、上流側のアキシコンレンズ20Aと下流側のアキシコンレンズ20Bとの間隔が広い。また、環状のレーザビーム15の大径化に対応して、下流側のアキシコンレンズ20Bも大径化されている。再合成光学部品40と集光光学部品60との間のレーザビーム15Dのビーム径DBは一定である。なお、上流側のアキシコンレンズ20Aと下流側のアキシコンレンズ20Bとの頂角をやや異ならせることにより、環状成形光学部品20と集光光学部品60との間のビーム経路において、ビーム径DBが徐々に大きくなるか、または徐々に小さくなるようにしてもよい。
【0036】
図5に示した変形例では、再合成光学部品40と集光光学部品60との間のビーム経路に、大径化光学部品45が配置されている。大径化光学部品45は、上流側に配置された平凹レンズ45Aと下流側に配置された平凸レンズ45Bを含む。図6に示した変形例では、再合成光学部品40と集光光学部品60との間のビーム経路に配置された大径化光学部品45が、上流側に配置された平凹アキシコンレンズ45Cと下流側に配置された平凸アキシコンレンズ45Dを含む。
【0037】
図4図6に示した変形例では、集光光学部品60に入射するレーザビーム15Dを大径化することにより、ガイド構造50(図3A)の先端とレーザビーム15E(図3A)との空間的な干渉が生じにくい構成を採用しやすくなる。
【0038】
図4に示した変形例は、図5及び図6に示した変形例と比べて、光学素子の個数が少ないという点で優れている。図5及び図6に示した変形例は、図4に示した変形例と比べて、環状成形光学部品20の下流側のアキシコンレンズ20B、分岐光学部品30、再合成光学部品40が小さいという点で優れている。特に、ルーフ型の分岐光学部品30及び再合成光学部品40は高価である。図5及び図6に示した変形例では、図4に示した変形例と比べて分岐光学部品30及び再合成光学部品40の価格を抑制し、レーザ装置を安価に提供できるという優れた効果が得られる。
【0039】
次に、第1実施例のさらに他の変形例について説明する。
第1実施例によるレーザ装置は、レーザ溶接に用いられるが、他の用途に用いることも可能である。例えば、ガイド構造50から供給される部材で三次元構造物を作成する3Dプリンタに適用することも可能である。
【0040】
次に、図7を参照して第2実施例によるレーザ装置について説明する。以下、図1図3を参照して説明した第1実施例によるレーザ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0041】
図7は、第2実施例によるレーザ装置の概略図である。第2実施例では、図4に示した第1実施例の変形例によるレーザ装置と同様に、環状成形光学部品20によってレーザビームが大径化される。図7では、レーザビーム15を、そのビーム断面の中心を連ねた1本の直線で表している。2つの分岐レーザビーム15C1、15C2(図4)も、2つのビーム断面の全体の中心を連ねた1本の直線で表している。なお、図7においても図4と同様に、便宜上、分岐光学部品30及び再合成光学部品40の谷線及び尾根線が、折返しミラー35への入射面に対して垂直になるように示されているが、実際には、図1に示したように、分岐光学部品30及び再合成光学部品40の谷線及び尾根線は、折返しミラー35への入射面に平行である。
【0042】
第1実施例(図1)では、折返しミラー35が静止されているが、第2実施例では、揺動装置39が折返しミラー35を、貫通孔35Hの位置を揺動中心として2方向に揺動(ウォブリング)させる。すなわち、揺動装置39及び折返しミラー35が、分岐レーザビーム15C1、15C2をウォブリングさせるウォブリング光学部品を構成している。ワーク65の表面においてレーザビーム15Fのビームスポットがウォブリングする。
【0043】
折返しミラー35をウォブリングさせることによるレーザビーム15Dのビーム経路の位置の変位量は、環状のレーザビーム15Dの中空部分の大きさに比べて十分小さい。このため、レーザビーム15をウォブリングさせても、レーザビーム15Dの経路とガイド構造50とが空間的に干渉することはない。
【0044】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
ワーク65の表面におけるレーザビーム15Fのビームスポット径が小さ過ぎると、安定したフィラ肉盛り溶接を行うことができない場合がある。このとき、ビームスポットを大きくすると、ビームスポットの中心部分のエネルギ密度が低くなり、安定したフィラ肉盛り溶接を行うことができなくなる。第2実施例では、ビームスポットをウォブリングさせることにより、安定したフィラ肉盛り溶接を行うことが可能になる。
【0045】
次に、図8図10を参照して第2実施例の変形例によるレーザ装置について説明する。図8図10は、第2実施例の変形例によるレーザ装置の概略図である。図8図10においても図7と同様に、レーザビーム15を1本の直線で表している。
【0046】
図8に示した変形例では、図6に示した第1実施例の変形例によるレーザ装置の折返しミラー35を、揺動装置39がウォブリングさせる。図7に示した変型例では、ウォブリングする折返しミラー35の位置で分岐レーザビーム15C1、15C2が大径化されているため、分岐レーザビーム15C1、15C2のビーム断面に対応した大きな折返しミラー35を用いる必要がある。これに対して図8に示した変型例では、ウォブリングする折返しミラー35よりも下流側で、大径化光学部品45が、合成後のレーザビーム15を大径化する。このため、折返しミラー35として、図7に示したレーザ装置の場合より小さなミラーを用いることができる。
【0047】
図9に示した変型例では、図8に示した変型例の折返しミラー35に代えて、2枚の折返しミラー35A、35Bが用いられる。2枚の折返しミラー35A、35Bのそれぞれは、1方向に揺動し、分岐レーザビーム15C1、15C2を1方向に走査する。2枚の折返しミラー35A、35Bを揺動させることにより、ワーク65の表面でビームスポットを2方向にする変位させることができる。ガイド構造50は、下流側の折返しミラー35Bに設けられた貫通孔35Hを通過して、2つの分岐レーザビーム15C1、15C2の間の空間に挿入される。
【0048】
図9に示した変型例においても、図8に示した変型例と同様に、折返しミラー35A、35Bとして、図7に示したレーザ装置の場合より小さなミラーを用いることができる。また、折返しミラー35A、35Bのそれぞれは1方向にのみ揺動するため、図8に示した2方向に揺動する折返しミラー35と比べて、揺動機構を単純化することができる。
【0049】
図10に示した変型例では、図6に示した第1実施例の変形例によるレーザ装置の分岐光学部品30と折返しミラー35との間の分岐レーザビーム15C1、15C2の経路に、揺動する2枚の折返しミラー34A、34Bが配置されている。ガイド構造50は、静止された折返しミラー35に設けられた貫通孔35Hを通過して、分岐レーザビーム15C1、15C2の間の空間に挿入される。
【0050】
図10に示した変型例においても、図8に示した変型例と同様に、折返しミラー34A、34Bとして、図7に示したレーザ装置の場合より小さなミラーを用いることができる。また、折返しミラー34A、34Bのそれぞれは1方向にのみ揺動するため、図8に示した2方向に揺動する折返しミラー35と比べて、揺動機構を単純化することができる。
【0051】
次に、図11図12Cを参照して第3実施例によるレーザ装置について説明する。以下、図1図3Bを参照して説明した第1実施例によるレーザ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0052】
図11は、第3実施例によるレーザ装置の概略図である。第1実施例(図1)では、ガイド構造50の位置が変動しないが、第3実施例では、駆動機構51がガイド構造50を、xy面内方向、及びz方向に移動させる。
【0053】
図12Aは、ガイド構造50をz方向に昇降させる昇降機構の一例を示す図である。この昇降機構は、ラックアンドピニオン機構52を含む。モータ53がピニオンを回転させることにより、ガイド構造50を昇降させる。
【0054】
図12Bは、ガイド構造50をz方向に昇降させる昇降機構の他の例を示す図である。この昇降機構は、ボールネジ機構54を含む。モータ53がボールネジを駆動することにより、ガイド構造50を昇降させる。
【0055】
図12Cは、ガイド構造50をxy面内で移動させる変位機構55を示す図である。この変位機構55は、ガイドスリーブ55A、外側偏芯ガイド55B、及び内側偏芯ガイド55Cを含む二重偏芯構造を有する。内側偏芯ガイド55Cに対して偏芯した位置にフィラワイヤ67を通すフィラワイヤガイド孔58が設けられている。外側偏芯ガイド55Bに対して偏芯した位置に内側偏芯ガイド55Cが支持されている。ガイドスリーブ55Aに対して偏芯した位置に外側偏芯ガイド55Bが支持されている。ガイドスリーブ55Aは、集光光学部品60に対して同心状に配置されている。
【0056】
外側偏芯ガイド55B及び内側偏芯ガイド55Cを独立して回転させることにより、ガイドスリーブ55Aに対するフィラワイヤガイド孔58の位置を、xy面内で移動させることができる。
【0057】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
光軸上における加工に適した位置は、ワーク65の材料や形状によって様々である。また、レーザ発振器や光学素子の交換で、レーザビーム15の焦点位置が変化することがある。このため、ワーク65の種類ごとに、またはレーザ装置のメンテナンス後に、ガイド構造50の先端からワーク65までの距離Z(図3A)を調整する必要が生じ得る。
【0058】
さらに、フィラワイヤ67の湾曲状態が変化すると、ワーク65の表面におけるフィラワイヤ67(図3A)の先端の位置が変化する。フィラワイヤ67の先端の位置を、ビームスポットの位置(加工点の位置)に一致させるために、ガイド構造50の先端の位置をxy面内で移動させる必要が生じ得る。
【0059】
第3実施例では、これらの要請に柔軟に対応することが可能である。
【0060】
次に、図13A及び図13Bを参照して、第4実施例によるレーザ装置について説明する。以下、図1図3Bを参照して説明した第1実施例によるレーザ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0061】
図13A及び図13Bは、第4実施例によるレーザ装置の概略図である。図13A及び図13Bにおいても図4と同様に、便宜上、分岐光学部品30及び再合成光学部品40の谷線及び尾根線が、折返しミラー35への入射面に対して垂直になるように示されている。
【0062】
第1実施例(図1)では、環状成形光学部品20を通過した環状のレーザビーム15Bの外径は不変である。これに対して第4実施例では、環状成形光学部品20を通過した環状のレーザビーム15Bの外径を変化させることができる。光学系の基本構成は、図4に示した第1実施例の変形例によるレーザ装置の光学系の基本構成と同一である。
【0063】
図13Aに示すように、レーザ伝送ファイバ10の出力端、コリメートレンズ11、及び環状成形光学部品20の上流側のアキシコンレンズ20Aが、ビーム径調整機構16によって光軸方向(z方向)に移動可能である。ビーム径調整機構16は、スライダ18と、スライダ18をz方向に案内する案内レール17とを含む。レーザ伝送ファイバ10の出力端、コリメートレンズ11、及びアキシコンレンズ20Aがスライダ18に支持されており、スライダ18とともにz方向に移動する。上流側のアキシコンレンズ20Aがz方向に移動すると、上流側のアキシコンレンズ20Aと下流側のアキシコンレンズ20Bとの間隔が変化する。
【0064】
図13Aに示したように、上流側のアキシコンレンズ20Aと下流側のアキシコンレンズ20Bとの間隔がL1のとき、集光光学部品60の入射側のレーザビーム15Dの外径をDB1と標記する。
【0065】
図13Bに示すように、上流側のアキシコンレンズ20Aと下流側のアキシコンレンズ20Bとの間隔をL2まで狭めたとき、集光光学部品60の入射側のレーザビーム15Dの外径をDB2と標記する。L1>L2のとき、DB1>DB2が成り立つ。すなわち、集光光学部品60の入射側のレーザビーム15Dの外径を変化させることができる。
【0066】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
フィラワイヤ67の湾曲度が小さい(直進性が高い)場合は、ワーク65とガイド構造50の先端との距離Z(図3A)を長くしても、フィラワイヤ67の先端の十分な位置精度を確保することができる。このため、距離Zをできるだけ長くすることが可能である。距離Zが長くなると、ガイド構造50の先端と集光されたレーザビーム15E(図3A)とが空間的に干渉しない条件を満たした状態で、集光光学部品60の入射側のレーザビーム15Dの外径DB(図3A)を小さくすることが可能である。
【0067】
集光光学部品60の入射側のレーザビーム15Dの外径DBが小さくなると、焦点深度が長く(深く)なる。焦点深度を長くすると、安定した加工を行うことが可能になる
【0068】
また、フィラワイヤ67を使用しない溶接を行う場合には、距離Zを長くし、かつ集光光学部品60の入射側のレーザビーム15Dの外径DBを小さくすることにより、焦点深度を長くして安定した溶接を行うことが可能になる。
【0069】
次に、図14A及び図14Bを参照して、第5実施例によるレーザ装置について説明する。以下、図1図3Bを参照して説明した第1実施例によるレーザ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0070】
図14Aは、第1実施例(図1)によるレーザ装置に用いられている分岐光学部品30及び再合成光学部品40の概略図、及びビーム断面の模式図である。図14Aにおいて、レーザビームの経路にハッチングを付している。第1実施例では、分岐光学部品30及び再合成光学部品40として、入射側の表面及び出射側の表面が相互に平行な屈折部材をルーフ型に組み合わせた光学部材が用いられている。ルーフ型の分岐光学部品30により、相互に隔てられた2つの分岐レーザビーム15C1、15C2が得られる。
【0071】
図14Bは、第5実施例によるレーザ装置に用いられている分岐光学部品30及び再合成光学部品40の概略図、及びビーム断面の模式図である。図14Bにおいて、レーザビームの経路にハッチングを付している。
【0072】
第5実施例では、分岐光学部品30が、入射側の表面及び出射側の表面が相互に平行な板状の第1屈折部材30A及び第2屈折部材30Bを含む。第1屈折部材30Aの入射側の表面の1つの縁は直線であり、入射するレーザビーム15の中心軸15Zを通過する。第1屈折部材30Aの入射側の表面は、入射するレーザビーム15を、分岐前のレーザビーム15Bの中心軸15Zから離れる向きに屈折させる。第1屈折部材30Aの内部を伝搬するレーザビームは、出射側の表面で屈折することにより、z方向に平行な分岐レーザビーム15C1となる。
【0073】
第2屈折部材30Bは、第1屈折部材30Aより下流側に配置されている。第2屈折部材30Bの入射側の表面は、レーザビーム15Bのうち第1屈折部材30Aを通過しなかったレーザビームを、分岐前のレーザビーム15Bの中心軸15Zから離れる向きに屈折させる。第2屈折部材30Bの内部を伝搬するレーザビームは、出射側の表面で屈折することにより、z方向に平行な分岐レーザビーム15C2となる。第2屈折部材30Bが配置された位置において、分岐レーザビーム15C1は、入射するレーザビーム15Bの中心軸15Zから離れているため、第2屈折部材30Bの中心軸15Z側の端面は、厳密に中心軸15Zの位置に合わせる必要はなく、中心軸15Zを越えてもよい。
【0074】
再合成光学部品40も、入射側の表面及び出射側の表面が相互に平行な板状の第3屈折部材40A及び第4屈折部材40Bを含む。一方の分岐レーザビーム15C1が、第3屈折部材40Aに入射する。第3屈折部材40Aの入射側の表面は、入射する分岐レーザビーム15C1を、分岐前のレーザビーム15Bの中心軸15Zに近づく向きに屈折させる。第3屈折部材40Aの内部を伝搬するレーザビームは、出射側の表面で屈折することにより、z方向に平行なレーザビームとなる。分岐レーザビーム15C2は、中心軸15Zから離れているため、第3屈折部材40Aの中心軸15Z側の端面は、厳密に中心軸15Zの位置に合わせる必要はなく、中心軸15Zを越えてもよい。
【0075】
第4屈折部材40Bは、第3屈折部材40Aより下流側に配置されている。第4屈折部材40Bの入射側の表面は、第3屈折部材40Aを通過しない分岐レーザビーム15C2を、分岐前のレーザビーム15の中心軸15Zに近づく向きに屈折させる。第4屈折部材40Bの内部を伝搬するレーザビームは、出射側の表面で屈折することにより、z方向に平行なレーザビームとなる。第4屈折部材40Bの出射側の表面の1つの縁は直線であり、中心軸15Zを通過し、第3屈折部材40Aを通過したレーザビームのビーム経路に進入していない。
【0076】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例によるレーザ装置(図1)で用いられているルーフ型の分岐光学部品30及び再合成光学部品40は高価である。これに対して第5実施例によるレーザ装置で用いられている第1屈折部材30A、第2屈折部材30B、第3屈折部材40A、及び第4屈折部材40Bは、相対的に安価である。このため、レーザ装置のコスト低減を図ることが可能である。
【0077】
次に、図15を参照して、上述の種々の実施例によるレーザ装置が搭載されたレーザ溶接装置について説明する。図15は、レーザ溶接装置の概略斜視図である。
【0078】
レーザ溶接装置は、多関節ロボット70、直動機構71、レーザ加工ヘッド73、レーザ発振器72、レーザ伝送ファイバ10、及び制御装置74を含む。多関節ロボット70のアームの先端に、直動機構71を介してレーザ加工ヘッド73が支持されている。多関節ロボット70には、例えば6軸ロボットが用いられる。
【0079】
レーザ発振器72から出力された加工用のレーザビームが、レーザ伝送ファイバ10を経由してレーザ加工ヘッド73まで伝送される。レーザ発振器72として、例えば波長約1070nmのパルスレーザビームを出力するファイバレーザ発振器が用いられる。レーザ加工ヘッド73として、上記第1実施例~第5実施例のいずれかの実施例、またはその変形例によるレーザ装置が用いられる。
【0080】
レーザ加工ヘッド73まで伝送された加工用のレーザビームは、レーザ加工ヘッド73の先端から出力される。直動機構71は、相互に直交する3軸の並進自由度を持ち、レーザ加工ヘッド73の位置を微調整する。多関節ロボット70、直動機構71、レーザ発振器72は、制御装置74によって制御される。
【0081】
多関節ロボット70の可動範囲内に、ワーク65が配置される。レーザ加工ヘッド73から出力されるレーザビーム15により、ワーク65に対して溶接加工が行われる。
【0082】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0083】
10 レーザ伝送ファイバ
11 コリメートレンズ
15、15A、15B、15D、15E、15F レーザビーム
15C1、15C2 分岐レーザビーム
15Z レーザビームの中心軸
16 ビーム径調整機構
17 案内レール
18 スライダ
20 環状成形光学部品
20A、20B アキシコンレンズ
30 分岐光学部品
30A 第1屈折部材
30B 第2屈折部材
34A、34B、35、35A、35B 折返しミラー
35H 貫通孔
39 揺動装置
40 再合成光学部品
40A 第3屈折部材
40B 第4屈折部材
40H 貫通孔
45 大径化光学部品
45A 平凹レンズ
45B 平凸レンズ
45C 平凹アキシコンレンズ
45D 平凸アキシコンレンズ
46 ウォブリング機構
50 ガイド構造
51 駆動機構
52 ラックアンドピニオン機構(昇降機構)
53 モータ
54 ボールネジ機構(昇降機構)
55 変位機構
55A ガイドスリーブ
55B 外側偏芯ガイド
55C 内側偏芯ガイド
58 フィラワイヤガイド孔
60 集光光学部品
60H 貫通孔
61 保護ウィンドウ
61H 貫通孔
65 ワーク
67 フィラワイヤ
70 多関節ロボット
71 直動機構
72 レーザ発振器
73 レーザ加工ヘッド
74 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15