(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164533
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】トンネル掘削機およびトンネル施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/087 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
E21D9/087 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080087
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤上 晋
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054BA03
2D054BB05
2D054BB07
(57)【要約】
【課題】簡易にカッタービットを交換または増減することを可能とし、地山状況に応じた効率的なトンネル施工を行うことを可能としたトンネル掘削機およびトンネル施工方法を提案する。
【解決手段】カッタースポーク4と、カッタースポーク4に固定された複数のカッタービット5,5,…および複数の台座6,6,…とを備えるトンネル掘削機1である。台座6には、補助カッタービット7を固定するための複数のボルト孔62,62,…が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッドと、
前記カッターヘッドに固定された複数のカッタービットおよび複数の台座と、を備えるトンネル掘削機であって、
前記台座には、補助カッタービットを固定するための複数のボルト孔が形成されていることを特徴とする、トンネル掘削機。
【請求項2】
前記ボルト孔に螺合されたボルトを介して前記台座に固定された補助カッタービットを備えていることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記台座は、前記カッターヘッドのカッタースポークの側面に溶接されていることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記カッタースポークの外周側端部の側面に側板が添設されており、
前記側板の内周側面と前記カッタースポークの側面との角部に前記台座が溶接されていることを特徴とする、請求項3に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
トンネル掘削機の先端に回転可能に設けられたカッターヘッドに複数のボルト孔が形成された台座を固定する台座固定工程と、
前記台座に補助カッタービットを固定する補助ビット固定工程と、
前記トンネル掘削機を利用して地山を掘削する掘進工程と、を備えるトンネル施工方法であって、
前記補助ビット固定工程では、前記補助カッタービットに形成された貫通孔にボルトを挿通するとともに、前記ボルトを前記ボルト孔に螺着することを特徴とする、トンネル施工方法。
【請求項6】
チャンバー内から前記ボルトを脱着して、前記補助カッタービットを交換する補助ビット交換工程を備えることを特徴とする、請求項5に記載のトンネル施工方法。
【請求項7】
前記台座固定工程では、前記カッターヘッドのカッタースポークの外周側端部の側面に側板を溶接する作業と、前記側板の内周側面と前記カッタースポークの側面との角部に前記台座を溶接する作業と、を行うことを特徴とする、請求項5に記載のトンネル施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機およびトンネル施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法やTBM等で使用するトンネル掘削機は、前面に設けられたカッターヘッドを地山に押し当てつつ回転させることで地山を切削する。カッターヘッドには、複数のカッタービットが固定されている。
トンネル掘削機により掘進作業を進めると、土砂や岩盤等との接触等によりカッタービットに摩耗や破損が生じる場合がある。カッタービットに摩耗や破損が生じると、切削能力が低下するため、カッタービットを交換する必要がある。また、地山の性質(土質)は、必ずしも一定ではなく、掘進に伴って地山(土質)が変化するのが一般的である。そのため、地山の変化に応じてカッタービットの種類や形状を変更する場合もある。
カッタービットの交換方法としては、チャンバー内の土砂を除去した後、チャンバー内に作業員が入り込んで、あるいはカッターヘッドの前面に作業員が出て、カッターヘッドのスポークまたは面板に固定されたカッタービットを交換するのが一般的である。
例えば、特許文献1には、排土口付きのカッターヘッドに、排土口を中心に放射方向にスライド可能に取り付けられたスライドビットと、排土口を跨ぐように着脱可能に取り付けられたセンタービットとを備えるトンネル掘削機が開示されている。特許文献1のトンネル掘削機では、排土口を利用してスライドビットとセンタービットを交換できる。
しかし、カッターヘッドに設けられた多数のカッタービットを地山の変化に応じて交換する作業は、手間がかかり、工期短縮の妨げになるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような観点から、本発明は、カッタービットを簡易に交換または増減することを可能とし、地山状況に応じた効率的なトンネル施工を行うことを可能としたトンネル掘削機およびトンネル施工方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明のトンネル掘削機は、カッターヘッドと、前記カッターヘッドに固定された複数のカッタービットおよび複数の台座とを備えている。前記台座には、補助カッタービットを固定するための複数のボルト孔が形成されている。補助カッタービットは、前記ボルト孔に螺合されたボルトにより前記台座に着脱可能に固定される。
【0006】
また、本発明のトンネル施工方法は、トンネル掘削機の先端に回転可能に設けられたカッターヘッドに複数のボルト孔が形成された台座を固定する台座固定工程と、前記台座に補助カッタービットを固定する補助ビット固定工程と、前記トンネル掘削機を利用して地山を掘削する掘進工程とを備えている。前記補助ビット固定工程では、前記補助カッタービットに形成された貫通孔にボルトを挿通するとともに、前記ボルトを前記ボルト孔に螺着する。なお、補助カッタービットは、カッターヘッドの前面に出ずともよく、チャンバー内から前記ボルトを脱着して、交換すればよい。
【0007】
かかるトンネル掘削機およびトンネル施工方法によれば、カッタービットとは異なる位置に、補助カッタービットを着脱可能な台座を備えているため、地山状況に応じて補助カッタービットの着脱できる。すなわち、地山状況に応じたカッタービットの配置および増減が可能となるため、効率的なトンネル施工が可能となる。また、補助カッタービットはボルトにより着脱可能なため、着脱時および交換時に火気を使用する必要がない。補助カッタービット(台座)の取付位置は、任意に設定できるため、地山条件に応じた配置が可能である。
【0008】
前記台座は、前記カッターヘッドのカッタースポークの側面(カッタースポーク同士の間、若しくはカッタースポークと面板との間に形成された開口部に臨む面)に溶接されているのが望ましい。こうすることで、台座が地山との接触により損傷することを抑制できる。
カッタースポークの外周側端部の側面に側板を添接するとともに、前記側板の内周側面と前記カッタースポークの側面とに前記台座を溶接するのが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトンネル掘削機およびトンネル施工方法によれば、簡易にカッタービットを交換または増減することを可能とし、ひいては、地山状況に応じた効率的なトンネル施工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル掘削機の概要を示す断面図である。
【
図3】台座を示す図であって、(a)は外側から望む斜視図、(b)はチャンバー側から望む斜視図である。
【
図4】補助カッタービットと台座を示す断面図である。
【
図5】トンネル施工方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態では、シールド工法によりトンネルを施工する場合について説明する。
図1にトンネルの施工に使用するトンネル掘削機1を示す。トンネル掘削機1は、
図1に示すように、本体部2と、本体部2の前面に設けられたカッターヘッド3とを備えている。本体部2は、外面がスキンプレート21により覆われていて、内部にはカッターヘッド3の動力となるモーター22や推進ジャッキ23等を備えている。本体部2の前部にはバルクヘッド(隔壁)24が設けられている。カッターヘッド3とバルクヘッド24との間には、掘削土が取り込まれるチャンバー25が形成されている。
【0012】
図2にカッターヘッド3を示す。
図2に示すように、本実施形態のカッターヘッド3は、面板31を有するいわゆる面板形カッターヘッドである。カッターヘッド3は、カッタースポーク4と、カッタースポーク4に固定された複数のカッタービット5,5,…および複数の台座6,6,…と、カッタースポーク4,4,…の外周側端部が接続される外周リング9とを備えている。
図2に示すように、カッタースポーク4は、面板31に形成されたスリット32に配設されており、カッターヘッド3の中心から放射状に配設されている。カッタースポーク4と面板31(スリット32の縁)と間には、所定の大きさの隙間(開口部)が形成されている。なお、カッタースポーク4の形状、本数および配置等は限定されるものではなく、適宜決定される。同様に、面板31の形状も限定されるものではなく、適宜決定される。
カッタービット5は、カッタースポーク4の前面および側面(カッタースポーク4と面板31との間に形成された開口部に臨む面)と、面板31の前面に固定されている。カッタービット5の配置は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0013】
台座6は、カッタースポーク4の側面に溶接されている。
図3に台座6を示す。
図3(a)および(b)に示すように、本実施形態の台座6は、カッタースポーク4の外周側端部において、カッタービット5と重ならない位置に設けられている。
図3(a)に示すように、カッタースポーク4の外周側端部の側面には、側板61が添設されている。側板61は、カッタースポーク4の外周側端部の側面および外周リングの前端面に溶接されている。台座6は、側板61の内周側面とカッタースポーク4の側面との角部に溶接されている。本実施形態の台座5は、外周リング9の内周面にも溶接されている。台座6には、補助カッタービットを固定するための複数(本実施形態では4つ)のボルト孔62,62,…が形成されている。
図4に補助カッタービット7が取り付けられた台座6を示す。
図4は、
図2のA-A断面図である。
図4に示すように、台座6は、カッタースポーク4の前面から突出しないように配置されている。補助カッタービット7には、貫通孔71が形成されている。貫通孔71には、ボルト8が挿通される。補助カッタービット7は、ボルト孔62に螺合されたボルト8を介して台座6に着脱可能に固定される。
【0014】
本実施形態のトンネル施工方法について説明する。
図5にトンネル施工方法の手順を示す。
図5に示すように、トンネル施工方法は、台座固定工程S1と、補助ビット固定工程S2と、掘進工程S3と、ビット交換工程S4とを備えている。
台座固定工程S1では、トンネル掘削機1の先端に回転可能に設けられたカッタースポーク4(カッターヘッド3)に台座6を固定する。台座固定工程S1では、まず、カッタースポーク4の外周側端部の側面(他のカッタースポーク4側の面)に側板61を溶接する。次に、側板61の内周側面とカッタースポーク4の側面に台座6を溶接する(
図3参照)。
【0015】
補助ビット固定工程S2では、台座6に補助カッタービット7を固定する。より詳細に説明すると、補助ビット固定工程S2では、
図4に示すように、補助カッタービット7に形成された貫通孔71にボルト8を挿通するとともに、ボルト8をボルト孔62に螺着することにより補助カッタービット7を台座6に固定する。
掘進工程S3では、トンネル掘削機1を利用して地山を掘削する。
補助ビット交換工程S4では、チャンバー25内からボルト8を脱着して、補助カッタービット7を交換する。
【0016】
本実施形態のトンネル掘削機1およびトンネル施工方法によれば、カッタービット5とは異なる位置に、補助カッタービット7を着脱可能な台座6を備えているため、補助カッタービット7を着脱することにより、地山状況に応じた掘削が可能となる。すなわち、地山状況に応じたカッタービット5(補助カッタービット7を含む)の配置および増減が可能となるため、効率的なトンネル施工が可能となる。
【0017】
台座6は、カッタースポーク4の側面(カッタースポーク4と面板31との間に形成された開口部に臨む面)に溶接されているため、掘進時に台座6が地山と接触することにより損傷することを抑制できる。
台座6の外周側に側板61が添設されているため、カッターヘッド3の側面に転石等が接触した場合であっても、側板61が緩衝材として機能し、台座6および補助カッタービット7が転石に接触して損傷することが抑制されている。
【0018】
補助カッタービット7はボルト8により着脱可能なため、着脱時および交換時に火気を使用する必要がない。
補助カッタービット7(台座6)の取付位置は、任意に設定できるため、地山条件に応じた配置が可能である。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
カッターヘッド3の形状やカッタースポーク4の配置等は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、カッタースポーク4に設けられるカッタービット5の数および配置も適宜決定すればよい。
前記実施形態では、面板形のカッターヘッド3について説明したが、カッターヘッド3はスポーク形であってもよい。
【0020】
台座6のカッタースポーク4への固定方法は溶接に限定されるものではなく、例えば、ボルトなどを利用して固定してもよい。
台座6の固定箇所は、カッタースポーク4の外周部に限定されるものではなく、カッタースポーク4の中間部や基端部(カッタヘッド3の中央側)であってもよい。
台座6をカッタースポーク4に固定するタイミングは限定されるものではない。例えば、工場でトンネル掘削機1を製造する段階で固定してもよいし、現場に搬入してトンネル掘削機を組み立てる段階または組立後に固定してもよい。
補助カッタービット7を取り付けるタイミングは限定されるものではなく、例えば、トンネルを所定の位置まで掘進してから台座6に固定してもよい。
側板61は必要に応じて設置すればよい。
ビット交換工程S4は、必要に応じて実施すればよい。また、補助カッタービット7は、地山状況に応じて、着脱してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 トンネル掘削機
2 本体部
3 カッターヘッド
31 面板
32 スリット
4 カッタースポーク
5 カッタービット
6 台座
61 側板
62 ボルト孔
7 補助カッタービット
71 貫通孔
8 ボルト
9 外周リング