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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164537
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】マスク及びマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
A41D13/11 B
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080093
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】596089296
【氏名又は名称】株式会社白鳩
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】横井 隆直
(72)【発明者】
【氏名】森田 恵
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211CB01
3B211CB06
3B211CD02
(57)【要約】
【課題】顔面に貼り付けて用いるマスクにおいて、使い勝手をよいものとすること。
【解決手段】マスク10は、着用者の口及び鼻を覆うマスク本体11と、マスク本体11の上縁部に沿って設けられた粘着部12と、マスク本体11の下部21に設けられた顎掛け形成部13とを備える。顎掛け形成部13として、マスク本体11の下側プリーツ15,16の左右方向の両端側に設けられ、下側プリーツ15,16の広がりを抑制する一対の溶着部41,42を備える。下側プリーツ15,16の広がりが抑制されていることで、下側プリーツ15,16が広げられた際、マスク本体11の下部21が裏面11b側に湾曲変形し顎に引っ掛け可能な凹形状とされる。かかる構成では、粘着部12を着用者の顔面に貼り付け、マスク本体11の下部21を着用者の顎に引っ掛けることで、マスク10を着用者の顔面に装着することができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の口及び鼻を覆うマスク本体と、
前記マスク本体の上縁部に沿って設けられ、着用者の顔面に貼付可能な粘着部と、
前記マスク本体の下部に設けられ、前記下部を着用者の顎に引っ掛け可能とすべく、前記下部を裏面側に湾曲変形して上方に開放された凹形状に変形させる顎掛け形成部と、
を備える、マスク。
【請求項2】
前記マスク本体は、前記下部に、左右方向に延び上下方向に広げることが可能なプリーツを有しており、
前記顎掛け形成部として、前記プリーツの前記左右方向の両端側にそれぞれ設けられ、前記プリーツの広がりを抑制する一対の広がり抑制部を備え、
前記一対の広がり抑制部により前記プリーツの広がりが抑制されることにより、前記プリーツが広げられた際に前記下部が裏面側に湾曲変形して前記凹形状とされる、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記プリーツとして、第1プリーツと、前記第1プリーツの上側に隣接する第2プリーツとを有し、
前記一対の広がり抑制部として、前記第1プリーツの前記左右方向の両端側に設けられた一対の第1広がり抑制部と、前記第2プリーツの前記左右方向の両端側に設けられた一対の第2広がり抑制部とを有し、
前記一対の第1広がり抑制部により前記第1プリーツの広がりが抑制され、かつ前記一対の第2広がり抑制部により前記第2プリーツの広がりが抑制されることにより、前記第1プリーツ及び前記第2プリーツが広げられた際に前記下部が裏面側に湾曲変形して前記凹形状とされる、請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記一対の第1広がり抑制部の間隔は、前記一対の第2広がり抑制部の間隔よりも小さい、請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記一対の第1広がり抑制部の間隔は、85~105mmであり、
前記一対の第2広がり抑制部の間隔は、115~135mmである、請求項3に記載のマスク。
【請求項6】
前記マスク本体は、下端に向けて幅が小さくなるように形成された幅狭部を有しており、
前記一対の第1広がり抑制部は、前記幅狭部に配置されている、請求項4に記載のマスク。
【請求項7】
前記プリーツは、前記マスク本体の一部が折り畳まれることにより形成され、その折り畳みにより重なり合う複数の重なり部を有しており、
前記広がり抑制部は、前記複数の重なり部を接合する溶着部である、請求項2に記載のマスク。
【請求項8】
前記マスク本体の裏面側には、前記上縁部に沿って基材が設けられ、
前記基材における前記マスク本体とは反対側に前記粘着部が設けられ、
前記基材は、前記マスク本体に溶着により取り付けられている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項9】
前記粘着部における前記基材とは反対側には剥離シートが貼り付けられており、
前記剥離シートは、前記貼り付けられた状態で前記溶着が行われても溶けない材料で形成されている、請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
請求項1に記載のマスクを製造する方法であって、
前記マスク本体の上縁部に沿って前記粘着部を設ける工程と、
前記マスク本体の前記下部に前記顎掛け形成部を設ける工程と、
を備える、マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク及びマスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マスクは、着用者の口及び鼻を覆うマスク本体と、マスク本体の左右両側に設けられた一対の耳掛け紐とを有している。マスクは、一対の耳掛け紐が着用者の耳に掛けられることにより、着用者の顔に装着されるようになっている。
【0003】
上述した耳掛けタイプのマスクでは、着用者が耳に違和感や痛みを感じる場合が想定される。また、美容院や理髪店では、耳掛け部が邪魔で施術がしづらい問題がある。そこで、これらの対策として、特許文献1には、耳掛け部のないマスクが提案されている。特許文献1のマスクは、マスク本体の左右両側の縁部に沿ってそれぞれ粘着部が設けられ、それら粘着部によりマスク本体を顔面に貼り付けて用いるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-138951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した特許文献1のマスクでは、飲料を飲む際等、一時的に口を露出させる必要がある場合には、マスクを顔面から一時的に取り外す必要がある。しかしながら、その場合、粘着部の付け剥がしが発生し、手間である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、顔面に貼り付けて用いるマスクにおいて、使い勝手をよいものとすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明のマスクは、
着用者の口及び鼻を覆うマスク本体と、
前記マスク本体の上縁部に沿って設けられ、着用者の顔面に貼付可能な粘着部と、
前記マスク本体の下部に設けられ、前記下部を着用者の顎に引っ掛け可能とすべく、前記下部を裏面側に湾曲変形して上方に開放された凹形状に変形させる顎掛け形成部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマスクによれば、マスク本体の上縁部に粘着部が設けられ、マスク本体の下部に顎掛け形成部が設けられている。顎掛け形成部によりマスク本体の下部を裏面側に湾曲変形させ上方に開放された凹形状とすることで、マスク本体の下部を着用者の顎に引っ掛け可能とすることができる。これにより、粘着部を着用者の顔面に貼り付け、マスク本体の下部を着用者の顎に引っ掛けることにより、マスクを顔面に装着することができる。
【0009】
また、上記の構成によれば、着用者が飲料を飲む等、一時的に口を露出させる必要がある場合には、粘着部を顔面に貼り付けたまま、顎に引っ掛けられたマスク本体の下部を顎から外し持ち上げることで、口を露出させることが可能となる。この場合、一時的に口を露出させるにあたり、粘着部を顔面から剥がしてマスクをいちいち取り外す必要がない。そのため、顔面に貼り付けて用いるマスクにおいて、その使い勝手をよいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マスクの正面図。
図2】マスクの背面図。
図3図1のA-A線断面図。
図4】(a)がプリーツを広げた状態におけるマスクを示す側面図であり、(b)が背面図である。
図5】着用者の顔面にマスクを装着した状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態のマスクについて図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、マスク10は、着用者の口及び鼻を覆うマスク本体11と、マスク本体11の上縁部に沿って設けられ着用者の顔面に貼付可能な粘着部12と、マスク本体11の下部21に設けられ、当該下部21を着用者の顎に引っ掛け可能な凹形状(図4(a)及び(b)参照)に変形させる顎掛け形成部13とを備える。本実施形態のマスク10では、粘着部12を着用者の顔面に貼り付け、上記凹形状に変形したマスク本体11の下部21を顎に引っ掛けることにより、マスク10を顔面に装着することが可能となっている。
【0013】
マスク本体11は、不織布によりシート状に形成され、表面11aと裏面11bとを有している。マスク本体11は、略矩形形状とされ、複数枚(具体的には3枚)の不織布が重ねられて形成されている。複数枚の不織布は、周縁部に沿って溶着(例えば超音波溶着)されることにより一体化されている。この場合、マスク本体11には、その周縁部に沿って各不織布を溶着する周縁溶着部14が設けられている。周縁溶着部14には、マスク本体11の上縁部に沿って設けられた上縁溶着部14aと、マスク本体11の各側縁部に沿って設けられた一対の側縁溶着部14bと、マスク本体11の下縁部に沿って設けられた下縁溶着部14cとが含まれている。
【0014】
図1図3に示すように、マスク本体11は、上下方向に並ぶ複数のプリーツ15~18を有している。本実施形態のマスク10は、プリーツタイプのマスクとなっており、詳しくはオメガ式プリーツタイプのマスクとなっている。各プリーツ15~18はいずれも左右方向に延びており、上下方向に広げることが可能となっている。各プリーツ15~18には、マスク本体11の下部21に設けられた複数(具体的には2つ)の下側プリーツ15,16と、マスク本体11の上部に設けられた複数(具体的には2つ)上側プリーツ17,18とが含まれている。
【0015】
下側プリーツ15,16は、マスク本体11の一部が上下方向に折り畳まれることにより形成されている。各下側プリーツ15,16のうち、下側プリーツ15が下側に配置され、下側プリーツ16が上側に配置されている。下側プリーツ15は、各プリーツ15~18のうち、最も下側に配置されたプリーツとなっている。各下側プリーツ15,16は同様の構成を有しており、そのため、以下では、各下側プリーツ15,16をまとめて説明する。
【0016】
下側プリーツ15,16は、表面11aが下方に凸となるように折り畳まれた山折り部15a,16aと、裏面11bが上方に凸となるように折り畳まれた谷折り部15b,16bとを有している。下側プリーツ15,16は、山折り部15a,16a及び谷折り部15b,16bでそれぞれ折り畳まれることにより、マスク本体11の厚み方向(換言すると前後方向)に重なり合う複数(具体的には3つ)の重なり部15c,16cを有している。マスク本体11の厚み方向における着用者の顔面側を「顔面側」、顔面側とは反対側を「反顔面側」とした場合、谷折り部15b,16bは、山折り部15a,16aよりも顔面側でかつ山折り部15a,16aよりも上方で折り畳まれている。
【0017】
なお、各下側プリーツ15,16が特許請求の範囲に記載された「プリーツ」に相当する。また、下側プリーツ15が「第1プリーツ」に相当し、下側プリーツ16が「第2プリーツ」に相当する。
【0018】
上側プリーツ17,18は、下側プリーツ15,16と同様、マスク本体11の一部が上下方向に折り畳まれることにより形成されている。各上側プリーツ17,18のうち、上側プリーツ17が下側に配置され、上側プリーツ18が上側に配置されている。各上側プリーツ17,18は同様の構成を有しており、そのため、以下では、各上側プリーツ17,18をまとめて説明する。
【0019】
各上側プリーツ17,18は、表面11aが上方に凸となるように折り畳まれた山折り部17a,18aと、裏面11bが下方に凸となるように折り畳まれた谷折り部17b,18bとを有している。上側プリーツ17,18は、山折り部17a,18a及び谷折り部17b,18bでそれぞれ折り畳まれることにより、マスク本体11の厚み方向に重なり合う複数(具体的には3つ)の重なり部17c,18cを有している。谷折り部17b,18bは、山折り部17a,18aよりも顔面側でかつ山折り部17a,18aよりも下方で折り畳まれている。
【0020】
マスク本体11は、マスク本体11の下端に向かうにつれて幅(左右方向の長さ)が小さくなるように形成された幅狭部25を有している。幅狭部25は、上下方向の長さがマスク本体11の上下方向の長さの略半分となっている。幅狭部25においては、マスク本体11の各側縁26が下方に向かうにつれて互いに近づくように斜めに延びており、詳しくは緩やかな円弧状をなして延びている。各側縁26の下端は、マスク本体11の下縁27の両端に繋がっている。マスク本体11の下縁27は、左右方向に直線状に延びており、その長さがマスク本体11の幅の半分以下となっている。また、幅狭部25においては、側縁溶着部14bが側縁26に沿って斜めに延びている。
【0021】
続いて、粘着部12について説明する。
【0022】
マスク本体11の裏面11b側には、マスク本体11の上縁部に沿って基材31が設けられている。基材31は、樹脂材料によりシート状に形成され、例えばPET素材のスパンボンドにより形成されている。基材31は、マスク本体11の上縁部に沿って帯状に延びており、詳しくはマスク本体11の上縁部全域に亘って延びている。基材31は、マスク本体11の裏面11bに溶着により取り付けられている。基材31がマスク本体11に溶着されている溶着部32は、基材31の長手方向(左右方向)に沿って設けられ、本実施形態では上下に2列設けられている。
【0023】
基材31におけるマスク本体11側とは反対側の面(換言すると、顔面側の面)には、粘着部12が設けられている。粘着部12は、基材31に接着剤が塗布されることにより形成されている。粘着部12は、基材31の全域に亘って設けられている。
【0024】
粘着部12には、剥離シート33が貼り付けられている。剥離シート33は、粘着部12に剥離可能に貼り付けられている。剥離シート33は、基材31よりも耐熱性に優れた材料により形成されている。例えば、剥離シート33は、グラシン紙の表面にシリコン加工が施されることにより形成されている。詳しくは、剥離シート33は、粘着部12に貼り付けられた状態で基材31がマスク本体11に溶着されても、その溶着により溶けることのない耐熱性を有している。このため、上記の溶着の際に、剥離シート33が基材31に溶着されることがないようになっている。
【0025】
続いて、顎掛け形成部13について説明する。
【0026】
マスク本体11の下部21には、顎掛け形成部13として、一対の第1溶着部41と、一対の第2溶着部42とが設けられている。これら各溶着部41,42は、マスク本体11の幅狭部25に設けられている。各溶着部41,42は、各側縁溶着部14bの間に配置され、各側縁溶着部14bから離間した位置にある。
【0027】
一対の第1溶着部41は、下側プリーツ15の左右方向の両端側にそれぞれ設けられている。各第1溶着部41は、マスク本体11の左右方向の中央部を基準として左右対称に配置されている。各第1溶着部41は、下側プリーツ15の各重なり部15cを溶着により接合している。この場合、各第1溶着部41は、スポット溶着により3つの重なり部15cを互いに接合している。これにより、下側プリーツ15の左右方向の両端側において下側プリーツ15の広がりが抑制されている。なお、各第1溶着部41が第1広がり抑制部に相当する。
【0028】
各第1溶着部41は、下側プリーツ15の上下幅の中央部に位置している。詳しくは、各第1溶着部41は、上下方向において、下側プリーツ15における山折り部15aと谷折り部15bとの中央部に位置している。また、各第1溶着部41の間隔L1は、85~105mmとなっており、詳しくは90~100mmとなっている。本実施形態では、各第1溶着部41の間隔L1が95mmとなっている。
【0029】
一対の第2溶着部42は、下側プリーツ16の左右方向の両端側にそれぞれ設けられている。各第2溶着部42は、マスク本体11の左右方向の中央部を基準として左右対称に配置されている。各第2溶着部42は、下側プリーツ16の各重なり部16cを溶着により接合している。この場合、各第2溶着部42は、スポット溶着により3つの重なり部16cを互いに接合している。これにより、下側プリーツ16の左右方向の両端側において下側プリーツ16の広がりが抑制されている。なお、各第2溶着部42が第2広がり抑制部に相当する。
【0030】
各第2溶着部42は、下側プリーツ16の上下幅の中央部に位置している。詳しくは、各第2溶着部42は、上下方向において、下側プリーツ16における山折り部16aと谷折り部16bとの中央部に位置している。また、各第2溶着部42の間隔L2は、各第1溶着部41の間隔L1よりも大きくなっている。各第2溶着部42の間隔L2は、115~135mmとなっており、詳しくは120~130mmとなっている。本実施形態では、各第2溶着部42の間隔L2が125mmとなっている。また、上下方向における各第2溶着部42と各第1溶着部41との間の距離は5~15mmとなっており、本実施形態ではその距離が10mmとなっている。
【0031】
なお、下側プリーツ15には、左右方向における各第1溶着部41よりも内側の範囲に各重なり部15cを溶着する溶着部が一切設けられていない。同様に、下側プリーツ16には、左右方向における各第2溶着部42よりも内側の範囲に各重なり部16cを溶着する溶着部が一切設けられていない。
【0032】
続いて、顎掛け形成部13(各溶着部41,42)の作用について図4に基づき説明する。
【0033】
上述したように、本実施形態のマスク10では、一対の第1溶着部41により下側プリーツ15の広がりが抑制され、一対の第2溶着部42により下側プリーツ16の広がりが抑制されている。そして、本マスク10では、各下側プリーツ15,16の広がりが抑制されていることにより、各下側プリーツ15,16が広げられた際に、図4(a)及び(b)に示すように、マスク本体11の下部21が裏面11b側に湾曲変形して上方に開放された凹形状とされる。これにより、マスク本体11の下部21を着用者の顎に引っ掛けることが可能となる(図5も参照)。つまり、上記凹形状の内側に顎を配置した状態で、マスク本体11の下部21を顎に引っ掛けることが可能となる。
【0034】
続いて、着用者がマスク10を顔面に装着する際の手順について図5に基づき説明する。
【0035】
マスク10を顔面に装着する際には、まず各プリーツ15~18を上下に広げる。すると、マスク本体11の下部21については、上述したように、各下側プリーツ15,16が広げられることにより、顎に引っ掛け可能な凹形状とされる。
【0036】
続いて、図5に示すように、剥離シート33を剥がして粘着部12を着用者の顔面に貼り付け、凹形状とされたマスク本体11の下部21を着用者の顎に引っ掛ける。これにより、マスク10が顔面に保持され、当該顔面に装着される。具体的には、本マスク10では、粘着部12を顔面に貼り付け、マスク本体11の下部21を顎に引っ掛けることのみにより、マスク10を顔面に装着可能(保持可能)となっている。
【0037】
なお、念のため付言すると、本マスク10には、マスク本体11に耳掛け紐等、耳に掛けられる耳掛け部材が設けられていない。さらに言うと、本マスク10では、マスク本体11の周縁からはみ出して着用者の顔(ひいては着用者)に装着される部材が一切設けられていない。そのため、本マスク10では、正面視にて、マスク10の外形形状がマスク本体11の外形形状と同じ形状となっている。また、本マスク10は、左右対称の形状(構成)を有している。
【0038】
また、マスク本体11には、顔面に貼付可能な粘着部として粘着部12のみ設けられている。そのため、本マスク10では、マスク本体11の側縁部や下縁部等、マスク本体11の上縁部以外の部位に、粘着部が一切設けられていない。
【0039】
続いて、上述したマスク10の製造方法について説明する。
【0040】
マスク10を製造する際には、マスク本体11を製造する第1工程と、マスク本体11の下部21に顎掛け形成部13(第1溶着部41及び第2溶着部42)を設ける第2工程と、マスク本体11の上縁部に沿って粘着部12を設ける第3工程とをそれぞれ行う。第1工程では、マスク本体11を構成する複数の不織布を溶着して一体化することによりマスク本体11を製造する。
【0041】
第2工程では、マスク本体11の下側プリーツ15の左右方向の両端側において各重なり部15cを溶着することにより第1溶着部41を形成する。また、第2工程では、下側プリーツ16の左右方向の両端側において各重なり部16cを溶着することにより第2溶着部42を形成する。
【0042】
第3工程ではまず、基材31と、基材31の片面に設けられた粘着部12と、粘着部12における基材31とは反対側に設けられた剥離シート33とを有する粘着シート体を準備する準備工程を行う。この場合、粘着シート体としては、市場で流通する市販品を用いることが考えられる。
【0043】
準備工程の後、粘着シート体をマスク本体11の裏面11bにマスク本体11の上縁部に沿って配置する配置工程を行う。この工程では、基材31がマスク本体11の裏面11bに重なるように粘着シート体を配置する。配置工程の後、粘着シート体の基材31をマスク本体11に溶着する溶着工程を行う。この工程により、基材31がマスク本体11に溶着部32により接合された状態となる。これにより、粘着部12がマスク本体11の上縁部に沿って設けられる。また、溶着工程では、粘着シート体の剥離シート33が粘着部12に貼り付けられた状態で、基材31がマスク本体11に溶着される。その点、剥離シート33は、溶着により溶けない材料で形成されているため、溶着の際、剥離シート33が基材31に溶着されることはない。
【0044】
上述した第1工程~第3工程(各工程)は、例えば同時に行われるようになっている。但し、各工程を、第1工程→第2工程→第3工程の順に行ったり、第1工程→第3工程→第2工程の順に行ったりする等、順番に行うようにしてもよい。
【0045】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0046】
(1)マスク本体11の上縁部に粘着部12が設けられ、マスク本体11の下部21に顎掛け形成部13(具体的には、溶着部41,42)が設けられている。顎掛け形成部13によりマスク本体11の下部21を裏面11b側に湾曲変形させ上方に開放された凹形状とすることで、マスク本体11の下部21を着用者の顎に引っ掛け可能とすることができる。これにより、粘着部12を着用者の顔面に貼り付け、マスク本体11の下部21を着用者の顎に引っ掛けることにより、マスク10を顔面に装着することができる。
【0047】
また、上記の構成によれば、着用者が飲料を飲む等、一時的に口を露出させる必要がある場合には、粘着部12を顔面に貼り付けたまま、顎に引っ掛けられたマスク本体11の下部21を顎から外し持ち上げることで、口を露出させることが可能となる。この場合、一時的に口を露出させるにあたり、粘着部12を顔面から剥がしてマスク10をいちいち取り外す必要がない。そのため、顔面に貼り付けて用いるマスク10において、その使い勝手をよいものとすることができる。
【0048】
ところで、粘着部をマスク本体11の上縁部における左右方向の両端側にのみ設ける構成も考えられるが、その場合、粘着部を顔面に貼り付けた際にマスク本体11の左右方向の中央側については上下方向の位置が定まりにくくなってしまう。そのため、マスク本体11の下部21を凹形状に変形して顎に引っ掛ける際に、安定した状態で引っ掛けることが難しくなると考えられる。その点、粘着部12がマスク本体11の上縁部に沿って設けられる上記実施形態の構成では、粘着部12を顔面に貼り付けた際に、マスク本体11の左右方向の略全域においてマスク本体11の上下位置が定まるようにすることができる。これにより、マスク本体11の下部21を安定した状態で顎に引っ掛けることが可能となる。
【0049】
(2)顎掛け形成部13として、下側プリーツ15,16の左右方向の両端側にそれぞれ、下側プリーツ15,16の広がりを抑制する一対の溶着部41,42が設けられている。また、一対の溶着部41,42により下側プリーツ15,16の広がりが抑制されることにより、下側プリーツ15,16が広げられた際にマスク本体11の下部21が裏面11b側に湾曲変形して凹形状とされるようになっている。この場合、下側プリーツ15,16を広げることにより、マスク本体11の下部21を顎に引っ掛け可能な凹形状に変形させることができる。そのため、顎に引っ掛ける部分を容易に形成することができる。
【0050】
(3)マスク本体11の下部21に、下側プリーツ15,16として、下側プリーツ15と、下側プリーツ15の上側に隣接する下側プリーツ16とが設けられている。また、一対の溶着部41,42として、下側プリーツ15の左右方向の両端側に一対の第1溶着部41が設けられ、下側プリーツ16の左右方向の両端側に一対の第2溶着部42が設けられている。この場合、各下側プリーツ15,16を広げることにより、マスク本体11の下部21が裏面11b側に湾曲変形して凹形状とされる。かかる構成では、マスク本体11の下部21を湾曲させ易く、顎に引っ掛け易い凹形状を好適に形成することが可能となる。
【0051】
(4)一対の溶着部41,42により下側プリーツ15,16における左右方向の両端側の広がりを抑制する上記実施形態の構成では、下側プリーツ15,16が広げられることにより形成されるマスク本体11の下部21の凹形状が、左右方向の両端側に対して中央側が凹む湾曲形状を含むものとなる。そして、かかる構成において、上記の実施形態では、下側プリーツ15における一対の第1溶着部41の間隔が、下側プリーツ16における一対の第2溶着部42の間隔よりも小さくなっている。この場合、各下側プリーツ15,16が広げられた際におけるマスク本体11の下部21の上記湾曲形状の曲率が上側よりも下側の方が大きくなるため、先細りする顎形状にフィットし易い凹形状を得ることが可能となる。
【0052】
(5)具体的には、一対の第1溶着部41の間隔は85~105mmの範囲となっており、一対の第2溶着部42の間隔は115~135mmの範囲となっている。この場合、各下側プリーツ15,16が広げられた際にマスク本体11の下部21を顎に好適にフィットする凹形状とすることができる。つまり、顎に引っ掛けた際にきつくもなく緩くもない最適な凹形状を得ることができる。
【0053】
(6)マスク本体11は、下端に向けて幅が小さくなるように形成された幅狭部25を有し、その幅狭部25に一対の第1溶着部41が配置されている。この場合、下側プリーツ15,16が広げられることにより形成されるマスク本体11の下部21の凹形状を下側に向けて幅狭となるように形成することができる。これにより、先細りする顎形状によりフィットさせ易くすることができる。
【0054】
(7)下側プリーツ15,16は、マスク本体11の一部が折り畳まれることにより形成され、その折り畳みにより重なり合う複数の重なり部15c,16cを有している。複数の重なり部15c,16cは溶着部41,42により接合され、その溶着部41,42により下側プリーツ15,16の広がりが抑制されている。この場合、下側プリーツ15,16(重なり部15c,16c)を溶着することにより、簡単に下側プリーツ15,16の広がりを抑制することができる。
【0055】
(8)マスク本体11の裏面11b側に基材31が設けられ、基材31におけるマスク本体11とは反対側に粘着部12が設けられている。また、基材31は、マスク本体11に溶着により取り付けられている。この場合、粘着部12を顔面からはがす際に、粘着部12とともに基材31が顔面に貼り付いて残ってしまうのを抑制することができる。
【0056】
(9)粘着部12における基材31とは反対側には剥離シート33が貼り付けられている。剥離シート33は、粘着部12に貼り付けられた状態で基材31がマスク本体11に溶着されても溶けない材料で形成されている。この場合、剥離シート33を粘着部12に貼り付けた状態で基材31をマスク本体11に溶着しても、剥離シート33が溶けることがなく、ひいては剥離シート33が基材31に溶着されて剥がしにくくなる不都合が生じることがない。そのため、剥離シート33を基材31に貼り付けたまま、基材31をマスク本体11に溶着することが可能となる。
【0057】
なお、上述した(8)及び(9)は、マスク本体11の上縁部に粘着部12を設ける場合に限らず、マスク本体11の側縁部や下縁部に粘着部を設ける場合にも適用が可能である。また、マスク本体11に顎掛け形成部13が設けられていない構成にも適用が可能である。
【0058】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0059】
(a)上記実施形態では、下側プリーツ15の各重なり部15cを第1溶着部41により接合し、下側プリーツ16の各重なり部16cを第2溶着部42により接合したが、各重なり部15c,16cを縫製や接着等、溶着以外の接合方法により接合してもよい。この場合にも、下側プリーツ15,16の広がりを抑制することができる。
【0060】
また、下側プリーツ15,16の広がりを抑制する上では、必ずしも各重なり部15c,16cを接合する必要はない。例えば、マスク本体11の厚み方向(換言すると重なり部15c,16cの重なり方向)において各重なり部15c,16cを挟んだ両側に一対の挟み部(例えば、ボタン部材)を設け、それら各挟み部により各重なり部15c,16cを挟むことで下側プリーツ15,16の広がりを抑制するようにしてもよい。この場合、各重なり部15c,16cを貫通する軸部を設け、その軸部に各挟み部をそれぞれ連結する構成とすることが考えられる。
【0061】
(b)上記実施形態では、顎掛け形成部13として、一対の第1溶着部41と一対の第2溶着部42とを設ける構成としたが、例えば一対の第2溶着部42を不具備としてもよい。この場合、顎掛け形成部13として、一対の第1溶着部41のみ設ける構成となる。かかる構成においても、下側プリーツ15を広げることにより、マスク本体11の下部21を顎に引っ掛け可能な凹形状に変形させることが可能となる。
【0062】
(c)マスク本体11の下部21に、顎掛け形成部13として、溶着部41,42に代え、塑性変形可能な線状部材を設けてもよい。例えば、線状部材として、ノーズフィッターで用いられる部材を用いることが考えられる。この場合、かかる線状部材を、マスク本体11の幅狭部25(下部21)における各側縁26に沿って設ける構成とする。かかる構成によれば、線状部材を塑性変形させることにより、マスク本体11の下部21を裏面11b側に湾曲変形させ顎に引っ掛け可能な凹形状とすることができる。
【0063】
(d)上記実施形態では、マスク本体11の裏面11bに基材31を介して粘着部12を設けたが、マスク本体11の裏面11bに直接、粘着部12を設けてもよい。
【0064】
(e)上記実施形態では、オメガ式プリーツタイプのマスク10に本発明を適用したが、階段式プリーツタイプのマスクに本発明を適用してもよい。また、立体型マスク等、プリーツマスク以外のマスクに本発明を適用してもよい。この場合、顎掛け形成部として、上記(c)で説明した線状部材を用いることが考えられる。
【符号の説明】
【0065】
10…マスク、11…マスク本体、12…粘着部、13…顎掛け形成部、15…下側プリーツ、16…下側プリーツ、41…第1溶着部、42…第2溶着部。
図1
図2
図3
図4
図5