(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164539
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】温調システム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241120BHJP
F28D 21/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F28D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080096
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田邊 博隆
(72)【発明者】
【氏名】大村 峰正
(72)【発明者】
【氏名】森下 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】三輪 純一
(57)【要約】
【課題】温調対象物に適切な温度域の熱媒体を供給することができる温調システムを提供する。
【解決手段】温調システムは、温調対象物に熱媒体を供給し、熱媒体を循環させるとともに、熱媒体を貯蔵可能なタンクを有する熱媒体回路と、温調対象物と熱交換を行った熱媒体を温調し、温調後の熱媒体をタンクに戻す熱媒体温調装置と、を備え、熱媒体回路は、温調対象物と熱交換を行った熱媒体をタンクに導く第1ラインと、タンクに貯蔵された熱媒体を排出する第2ラインと、第1ラインの温調対象物からタンクへの熱媒体の流れを分岐させる第3ラインと、第2ラインを流れる熱媒体と、第3ラインを流れる熱媒体とを混合するとともに、第2ラインからの熱媒体と第3ラインからの熱媒体との混合比を調整可能な混合比調整装置と、混合比調整装置によって混合された熱媒体を温調対象物に供給する第4ラインと、をさらに有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温調対象物に熱媒体を供給し、前記熱媒体を循環させるとともに、前記熱媒体を貯蔵可能なタンクを有する熱媒体回路と、
前記温調対象物と熱交換を行った前記熱媒体を温調し、温調後の前記熱媒体を前記タンクに戻す熱媒体温調装置と、
を備え、
前記熱媒体回路は、
前記温調対象物と熱交換を行った前記熱媒体を前記タンクに導く第1ラインと、
前記タンクに貯蔵された前記熱媒体を排出する第2ラインと、
前記第1ラインの前記温調対象物から前記タンクへの前記熱媒体の流れを分岐させる第3ラインと、
前記第2ラインを流れる前記熱媒体と、前記第3ラインを流れる前記熱媒体とを混合するとともに、前記第2ラインからの前記熱媒体と前記第3ラインからの前記熱媒体との混合比を調整可能な混合比調整装置と、
前記混合比調整装置によって混合された前記熱媒体を前記温調対象物に供給する第4ラインと、
をさらに有する温調システム。
【請求項2】
前記熱媒体回路は、前記第4ラインに配置され、前記熱媒体を貯蔵可能なバッファタンクをさらに有する請求項1に記載の温調システム。
【請求項3】
前記熱媒体回路は、前記熱媒体温調装置によって温調された前記熱媒体の前記タンクへ向かう流れを前記バッファタンクに分岐させるバイパス回路をさらに備える請求項2に記載の温調システム。
【請求項4】
前記第1ラインの前記温調対象物から前記タンクへの前記熱媒体の流れを、前記第3ラインよりも下流側でさらに分岐させ、前記熱媒体温調装置に導く分岐ラインをさらに備える請求項1に記載の温調システム。
【請求項5】
前記タンクは、直列に接続され、各々に前記熱媒体を貯蔵可能な複数の分割貯蔵空間を有する請求項1に記載の温調システム。
【請求項6】
前記混合比調整装置は、
前記第4ラインに配置され、前記第4ラインを流れる前記熱媒体の温度を検出するセンサと、
前記第2ラインの下流端と、前記第3ラインの下流端と、前記第4ラインの上流端とを接続し、前記センサの検出値に基づいて前記混合比を調整する混合弁と、
を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項7】
前記混合比調整装置は、
前記第2ライン、及び前記第4ラインのいずれか一方を流れる前記熱媒体の温度を検出するセンサと、
前記センサの検出値に基づいて前記第3ラインの前記熱媒体の流量を調整する流量調整弁と、
を有する
請求項1から5のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項8】
前記温調対象物は、発熱源であり、
前記熱媒体温調装置は、前記温調対象物と熱交換を行った前記熱媒体を冷却し、冷却後の前記熱媒体を前記タンクに戻す冷凍サイクルである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チラー装置が開示されている。このチラー装置は、第1熱媒体が流れる一次回路と、第1熱媒体とは異なる第2熱媒体を発熱源に供給する負荷回路と、第1熱媒体と第2熱媒体との間の熱交換を行なう熱交換器と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のチラー装置では、発熱源の発熱量に対して冷却能力が不足すると、発熱源に供給される熱媒体の温度が次第に上昇してしまう。一方で、発熱源の発熱量に対して冷却能力が過剰である場合には、発熱源に供給される熱媒体の温度が必要以上に低下する。発熱源が例えばバッテリや電子機器等、稼動に適した温度域を有する場合、発熱源の過度な冷却を防ぐ必要があり、熱媒体の温度が必要以上に低下することは好ましくない。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、温調対象物に適切な温度域の熱媒体を供給することができる温調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る温調システムは、温調対象物に熱媒体を供給し、前記熱媒体を循環させるとともに、前記熱媒体を貯蔵可能なタンクを有する熱媒体回路と、前記温調対象物と熱交換を行った前記熱媒体を温調し、温調後の前記熱媒体を前記タンクに戻す熱媒体温調装置と、を備え、前記熱媒体回路は、前記温調対象物と熱交換を行った前記熱媒体を前記タンクに導く第1ラインと、前記タンクに貯蔵された前記熱媒体を排出する第2ラインと、前記第1ラインの前記温調対象物から前記タンクへの前記熱媒体の流れを分岐させる第3ラインと、前記第2ラインを流れる前記熱媒体と、前記第3ラインを流れる前記熱媒体とを混合するとともに、前記第2ラインからの前記熱媒体と前記第3ラインからの前記熱媒体との混合比を調整可能な混合比調整装置と、前記混合比調整装置によって混合された前記熱媒体を前記温調対象物に供給する第4ラインと、をさらに有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の温調システムによれば、温調対象物に適切な温度域の熱媒体を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る温調システムの系統図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る温調システムの操作方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の第1実施形態の変形例に係る温調システムの系統図である。
【
図4】本開示の第2実施形態に係る温調システムの系統図である。
【
図5】本開示の第2実施形態に係る冷熱貯蔵の手順を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第2実施形態に係るバッファタンクへの熱媒体貯蔵を説明する図である。
【
図7】本開示の第2実施形態に係るタンクへの熱媒体貯蔵を説明する図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る温調システムの即応性を説明する図である。
【
図9】本開示の第3実施形態に係る温調システムの系統図である。
【
図10】本開示の第4実施形態に係る温調システムの系統図である。
【
図11】本開示の第4実施形態に係るバッファタンクへの熱媒体貯蔵を説明する図である。
【
図12】本開示の第4実施形態に係るタンクへの熱媒体貯蔵を説明する図である。
【
図13】本開示の第4実施形態に係る発熱源の冷却過程を説明する図である。
【
図14】本開示の第4実施形態に係るタンクへの熱媒体補充を説明する図である。
【
図15】本開示の第5実施形態に係る温調システムの系統図である。
【
図16】本開示の実施形態に係るハードウェア構成図である。
【
図17】本開示のその他の変形例に係る温調システムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
(温調システムの構成)
以下、本開示の第1実施形態に係る温調システム1について、
図1、
図2を参照して説明する。温調システム1は、所定の温度域で効率良く稼動することができる機器を温調するために用いられる。以下では、温調システム1によって温調される機器を「温調対象物2」と称する。
また、以下では、温調対象物2が稼動時に発熱する発熱源2aであり、温調システム1が発熱源2aを冷却する冷却システムである場合を例に実施形態を説明する。
【0010】
この温調システム1は、例えば移動体に搭載されている。移動体の例として、例えば自動車等の車両が挙げられる。なお、温調システム1は、一般の車両に搭載される場合に限られない。温調システム1は、例えば特殊車両に搭載されていてもよい。
【0011】
移動体には、エンジンや電子機器等の発熱源2aが搭載されている。これらの発熱源2aは、稼動すると発熱する。
このような発熱源2aは、ある一定の温度域で効率良く稼動することができる。発熱源2aを効率良く稼動させることができる適切な温度域に維持するために、温調システム1が設けられている。
【0012】
なお、温調システム1は、移動体に搭載される場合に限定されない。温調システム1は、例えばデータセンターを構成するサーバ内の電子機器や、空調機器の温調に用いられてもよい。すなわち、発熱源2aは、移動体に搭載される機器に限定されず、例えばデータセンターを構成するサーバ内の電子機器や、空調機器であってもよい。
【0013】
図1に示すように、温調システム1は、熱媒体回路10と、熱媒体温調装置30と、接続回路40と、制御ユニット50とを備える。熱媒体回路10は、発熱源2aに熱媒体Fを供給し、熱媒体Fを循環させる。また、熱媒体回路10は、熱媒体Fを貯蔵可能なタンク3を有する。熱媒体温調装置30は、温調対象物2と熱交換を行った熱媒体Fを温調し、温調後の熱媒体Fをタンク3に戻す。本実施形態の熱媒体温調装置30は、発熱源2aと熱交換を行った熱媒体Fを冷却する冷凍サイクル30aである。この冷凍サイクル30aには、後述する接続回路40を介して、発熱源2aと熱交換を行った熱媒体Fが供給される。そして、冷凍サイクル30aに供給された熱媒体Fは、冷凍サイクル30aで冷却され、接続回路40を介して冷却後の熱媒体Fをタンク3に戻される。接続回路40は、熱媒体回路10と、冷凍サイクル30aとを接続している。以下、これらの各構成について詳細に説明する。
熱媒体回路10内を循環する熱媒体Fは、例えば水(冷却水)である。なお、熱媒体Fは、冷却水以外の冷媒であってもよい。
【0014】
(熱媒体回路)
熱媒体回路10は、密閉型の回路であり、熱媒体回路10の全体に熱媒体Fが充填されている。熱媒体回路10は、タンク3と、第1ライン11と、第2ライン12と、第3ライン13と、逆止弁13aと、混合比調整装置20と、第4ライン14と、ポンプ15と、を有する。
【0015】
(タンク)
タンク3は、熱媒体Fを貯蔵可能な貯蔵空間Sを内部に有する。本実施形態では、タンク3は、熱媒体回路10に1つのみ設けられている。タンク3の貯蔵空間S内には、冷凍サイクル30aで冷却された低温の熱媒体Fが貯蔵される。すなわち、タンク3には、冷凍サイクル30aを通過した冷却水に包含された冷熱が蓄えられる。
以下では、冷凍サイクル30aで貯蔵された低温の熱媒体Fを「低温熱媒体F1」と称して説明する場合がある。
【0016】
(第1ライン)
第1ライン11は、発熱源2aとタンク3とを接続している。第1ライン11は、発熱源2aと熱交換を行った高温の熱媒体Fをタンク3に導く。
以下では、発熱源2aと熱交換を行った高温の熱媒体Fを「高温熱媒体F2」と称して説明する場合がある。この高温熱媒体F2には、発熱源2aの排熱が含有されている。すなわち、第1ライン11は、発熱源2aを排熱する配管である
【0017】
(第2ライン)
第2ライン12は、タンク3に貯蔵された熱媒体Fを排出する。第2ライン12には、タンク3から供給された低温熱媒体F1が流れる。
【0018】
(第3ライン)
第3ライン13は、第1ライン11の中流部に設けられている。第3ライン13は、第1ライン11の発熱源2aからタンク3への熱媒体Fの流れを分岐させる。第3ライン13には、第1ライン11と同様に発熱源2aの排熱を含有した高温熱媒体F2が流れる。
【0019】
(逆止弁)
逆止弁13aは、第3ライン13に設けられている。逆止弁13aは、第3ライン13を流れる熱媒体Fが第1ライン11に逆流することを防止する。
【0020】
(混合比調整装置)
混合比調整装置20は、第2ライン12を流れる熱媒体F(低温熱媒体F1)と、第3ライン13を流れる熱媒体F(高温熱媒体F2)とを混合する。すなわち、混合比調整装置20は、発熱源2aから出て第1ライン11を流れる高温熱媒体F2の一部を第3ライン13から抽出して、第2ライン12を介してタンク3から供給される低温熱媒体F1と混合させる。さらに、混合比調整装置20は、第2ライン12からの低温熱媒体F1と第3ライン13からの高温熱媒体F2との混合比を調整することができる。これにより、タンク3に蓄えられた冷熱と、発熱源2aの排熱の一部とが、適切な割合で混合され、発熱源2aの温調に適した温度域の熱媒体Fが生成される。以下では、適切な温度域の熱媒体Fを「適温熱媒体F3」と称して説明する場合がある。
混合比調整装置20で混合された熱媒体Fは、後述する第4ライン14を介して発熱源2aに供給される。
【0021】
本実施形態の混合比調整装置20は、センサ21と、混合弁22と、を有する。
【0022】
(センサ)
センサ21は、第4ライン14に配置されている。センサ21は、第4ライン14を流れる熱媒体Fの温度を検出する。
【0023】
(混合弁)
混合弁22は、第2ライン12の下流端と、第3ライン13の下流端と、第4ライン14の上流端とを接続する三方弁である。混合弁22は、センサ21の検出値に基づいて、第2ライン12からの熱媒体F(低温熱媒体F1)と第3ライン13からの熱媒体F(高温熱媒体F2)との混合比を調整する。
【0024】
混合弁22は、第3ライン13側の入口を閉じて第2ライン12側からのみ熱媒体Fを第4ライン14に流すこともできる。また逆に、混合弁22は、第2ライン12側の入口を閉じて第3ライン13側からのみ熱媒体Fを第4ライン14に流すこともできる。
【0025】
(第4ライン)
第4ライン14は、混合比調整装置20によって混合された熱媒体F(適温熱媒体F3)を発熱源2aに供給する。本実施形態では、第4ライン14は、混合弁22と発熱源2aとを接続している。
【0026】
(ポンプ)
ポンプ15は、第4ライン14上のセンサ21よりも下流側に配置されている。ポンプ15は、混合比調整装置20によって混合された熱媒体Fを発熱源2aに圧送する。
【0027】
(冷凍サイクル)
冷凍サイクル30aは、熱媒体温調装置30の一例である。冷凍サイクル30aは、発熱源2aを冷却するための冷熱を生成するチラー装置である。冷凍サイクル30aは、冷媒Rを流通させる配管である冷媒ライン31と、当該冷媒ライン31上に配置された圧縮機32と、凝縮器33と、膨張弁34と、蒸発器35と、を有する。これら圧縮機32、凝縮器33、膨張弁34、及び蒸発器35は、冷媒ライン31上でこの順に配列されている。また、冷凍サイクル30aが運転されている場合には、冷媒Rもこの順で各装置を通過する。
【0028】
圧縮機32は、冷媒ライン31内の冷媒Rを圧送する。これにより、圧縮機32を通過した後の冷媒Rの圧力、及び温度は、通過前の冷媒Rに比べて上昇する。凝縮器33には、送風ファン33aが設けられている。凝縮器33は、当該凝縮器33に流れ込んだ冷媒Rと、送風ファン33aから供給される気体との間で熱交換をさせる。膨張弁34は、当該膨張弁34を通過する冷媒Rの圧力を下げることで、温度を急激に低下させる。蒸発器35は、当該蒸発器35に流れ込んだ冷媒Rと、後述する接続回路40を介して熱媒体回路10から供給される熱媒体Fとの間で熱交換をさせる。熱媒体Fは、蒸発器35を通過することにより冷却される。
【0029】
(接続回路)
接続回路40は、熱媒体回路10にて発熱源2aと熱交換した熱媒体F(高温熱媒体F2)を冷凍サイクル30aに導く。冷凍サイクル30aによって冷却された熱媒体F(低温熱媒体F1)は、再び接続回路40を介して熱媒体回路10に戻される。接続回路40は、熱媒体回路10と同様に密閉型の回路であり、接続回路40の全体に熱媒体Fが充填されている。
本実施形態では、接続回路40は、供給ライン41と、ポンプ42と、戻しライン43と、を有する。
【0030】
供給ライン41は、タンク3と蒸発器35とを接続している。また、供給ライン41には、ポンプ42が配置されている。ポンプ42がタンク3内に貯蔵された熱媒体Fを圧送することより、タンク3内の熱媒体Fが蒸発器35に導かれる。蒸発器35では、熱媒体Fと、冷凍サイクル30a内を循環する冷媒Rとの間で熱交換が行われる。このようにして熱媒体Fが冷却され、低温熱媒体F1が生成される。
【0031】
戻しライン43は、蒸発器35とタンク3とを接続している。戻しライン43は、蒸発器35にて冷却された熱媒体Fをタンク3に戻す。このようにして、タンク3内には、十分に冷却された低温熱媒体F1が貯蔵される。
【0032】
(制御ユニット)
制御ユニット50は、発熱源2a、及び温調システム1を構成する各種機器に電気的に接続されている。制御ユニット50は、発熱源2a、及び温調システム1の稼動を制御する。
【0033】
(温調システムの操作手順)
以下、第1実施形態に係る温調システム1の操作方法の手順について
図2のフローを参照して説明する。
発熱源2aの稼動前に、まずタンク3内に冷熱を貯蔵する(ステップS1)。ステップS1では、制御ユニット50が、タンク3と冷凍サイクル30aの蒸発器35との間でのみ熱媒体Fを循環させて熱媒体Fを冷却させ、タンク3内に低温熱媒体F1を充填させる。ステップS1では、例えば混合弁22で第2ライン12側の入口を閉じて第3ライン13側からのみ熱媒体Fを第4ライン14に流すようにすることより、発熱源2aからタンク3への熱媒体Fが供給されることを防止している。また、発熱源2aからタンク3への熱媒体Fが供給されることを防止するその他の方法として、第4ライン14上のポンプ15を停止する方法や、第1ライン11に開閉弁を設けて第1ライン11を閉塞する方法がある。
ステップS1の完了後、タンク3の貯蔵空間S内には、例えば約10℃の低温熱媒体F1が充填され、発熱源2aの冷却の準備が完了する。
【0034】
その後、制御ユニット50が発熱源2aを稼動させる(ステップS2)。発熱源2aが稼動すると、発熱源2aが発熱し、発熱源2aに供給されている熱媒体Fに発熱源2aの熱が供給される。
ステップS2の直後、又はステップS2と同時に制御ユニット50がポンプ15を稼動し、熱媒体回路10を稼動させる(ステップS3)。なお、ステップS3は、ステップS2の前に実行されてもよい。
【0035】
この時、発熱源2aに供給された熱媒体Fは、発熱源2aと熱交換を行うことにより加熱され、例えば約30℃の高温熱媒体F2となる。この高温熱媒体F2は、発熱源2aから排出される。高温熱媒体F2の一部は、第1ライン11を通ってタンク3内の貯蔵空間S内に供給され、高温熱媒体F2の別の一部は、第1ライン11から第3ライン13に供給される。タンク3内の熱媒体Fは、冷凍サイクル30aの蒸発器35で冷却され、低温状態で維持される。
【0036】
ステップS3の後、混合比調整装置20が、タンク3内の低温熱媒体F1と、発熱源2aから排出された高温熱媒体F2とを適切な混合比で混合することにより、例えば約20℃の適温熱媒体F3を生成する(ステップS4)。
【0037】
ここで、冷凍サイクル30aの冷却能力や発熱源2aの発熱量によっては、温調システム1を長時間稼動させると、発熱源2aから排出される高温熱媒体F2の温度が変動する場合がある。このため、ステップS4では、混合比調整装置20が、熱媒体Fの温度変化に基づいて、低温熱媒体F1と高温熱媒体F2とを混合比を適宜調整している。本実施形態では、センサ21が第4ライン14を流れる熱媒体Fの出口温度を検出し、混合弁22がセンサ21の検出値に基づいて低温熱媒体F1と高温熱媒体F2との混合比を調整する。
【0038】
例えば、発熱源2aの発熱量が多い場合には、発熱源2aから排出される高温熱媒体F2の温度が上昇していくため、混合比調整装置20は、高温熱媒体F2の混合比率を減少させる。
また逆に、発熱源2aの発熱量が少ない場合には、発熱源2aから排出される高温熱媒体F2の温度が低下していくため、混合比調整装置20は、高温熱媒体F2の混合比率を増大させる。
このようにすることで、混合比調整装置20で生成される適温熱媒体F3の温度は発熱源2aの稼動に適した温度域に維持される。
【0039】
これにより、発熱源2aは、この適温熱媒体F3によって稼動に最適な温度域まで冷却される。また、上述したように適温熱媒体F3は適切な温度域で維持されているため、発熱源2aが過度に冷却されることもない。
【0040】
その後、制御ユニット50が発熱源2aを停止させる(ステップS5)と、制御ユニット50がポンプ15を停止して、熱媒体回路10を停止させる(ステップS6)。
【0041】
ステップS6の後、ステップS1の同様の手順で、タンク3内に冷熱を貯蔵する(ステップS7)。ステップS7では、制御ユニット50がタンク3と冷凍サイクル30aの蒸発器35との間でのみ熱媒体Fを循環させて熱媒体Fを冷却させ、タンク3内に低温熱媒体F1を充填させる。ステップS7により、発熱源2aの冷却に使用されたタンク3内の低温熱媒体F1が補充される。これにより、次の冷却の準備が完了する。
以上の手順で温調システム1が操作される。
なお、ステップS7の後、時間をおかずに温調システム1を稼動させる場合には、タンク3内に低温熱媒体F1を充填するステップS11は省略され、発熱源2aを稼動させるステップS12から開始してもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、低温熱媒体F1が約10℃、高温熱媒体F2が約30℃、適温熱媒体F3が約20℃である場合を例に温調システム1の操作手順を説明したが、これに限られない。低温熱媒体F1、高温熱媒体F2及び適温熱媒体F3の温度は、適宜設定可能である。
【0043】
(作用効果)
本実施形態の温調システム1によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
【0044】
本実施形態では、温調システム1は、発熱源2aに熱媒体Fを供給し、熱媒体Fを循環させるとともに、熱媒体Fを貯蔵可能なタンク3を有する熱媒体回路10と、発熱源2aと熱交換を行った熱媒体Fを冷却し、冷却後の熱媒体Fをタンク3に戻す冷凍サイクル30aと、を備える。熱媒体回路10は、発熱源2aと熱交換を行った熱媒体Fをタンク3に導く第1ライン11と、タンク3に貯蔵された熱媒体Fを排出する第2ライン12と、第1ライン11の発熱源2aからタンク3への熱媒体Fの流れを分岐させる第3ライン13と、第2ライン12を流れる熱媒体Fと、第3ライン13を流れる熱媒体Fとを混合し、第2ライン12からの熱媒体Fと第3ライン13からの熱媒体Fとの混合比を調整可能な混合比調整装置20と、混合比調整装置20によって混合された熱媒体Fを発熱源2aに供給する第4ライン14と、を有する。
【0045】
本実施形態では、冷凍サイクル30aによって冷却された低温の熱媒体Fをタンク3に貯蔵する。さらに、混合比調整装置20が、発熱源2aと熱交換を行った高温熱媒体F2と、タンク3内の低温熱媒体F1とを混合する。この時、混合比調整装置20は、発熱源2aから直接供給される高温熱媒体F2と、タンク3内の低温熱媒体F1との混合比を調整することができる。これにより、例えば発熱源2aの発熱量が増大したとしても、タンク3から供給される低温熱媒体F1の混合比率を増大することにより、熱媒体Fの温度を一定に保つことができる。混合比調整装置20によって適切な混合比で混合された熱媒体F(適温熱媒体F3)は、第4ライン14を介して発熱源2aに供給される。よって、本実施形態によれば、発熱源2aに適切な温度域の熱媒体Fを供給することができる。
【0046】
また、このようにして発熱源2aの温度を長時間維持することができるため、発熱源2aの長時間運転が可能となる。また、冷凍サイクル30aが予期せず停止した場合でも、タンク3内に低温熱媒体F1が貯蔵されているため、一定時間は、発熱源2aへの適温熱媒体F3の供給が可能となる。
【0047】
さらに、上述したように、発熱源2aの発熱量が増大したとしても、発熱源2aに供給される熱媒体Fのうち低温熱媒体F1の割合を増やすことにより、適温熱媒体F3の温度を維持することができるため、冷凍サイクル30aを大型化することなく冷却能力を維持することができる。本実施形態のように温調システム1が移動体に搭載されて冷凍サイクル30aの設置スペースが限定される場合であっても、冷凍サイクル30aの大型化が抑制できるため、温調システム1の搭載が容易となる。
【0048】
本実施形態では、混合比調整装置20は、第4ライン14に配置され、第4ライン14を流れる熱媒体Fの温度を検出するセンサ21と、第2ライン12の下流端と、第3ライン13の下流端と、第4ライン14の上流端とを接続し、センサ21の検出値に基づいて混合比を調整する混合弁22と、を有する。
これにより、混合比調整装置20は、第4ライン14を流れる熱媒体Fの温度が一定となるように、高温の熱媒体Fと低温の熱媒体Fとの混合比を高精度に調整することができる。
【0049】
上記実施形態では、混合比調整装置20が、第2ライン12の下流端と第3ライン13の下流端とを接続する混合弁22を有する場合について説明したが、これに限られない。
図3に示すように、混合比調整装置20aは、第3ライン13に配置された流量調整弁22aを有する構成であってもよい。
【0050】
図3に示すように、本変形例では、第2ライン12の下流端と第3ライン13の下流端と第4ライン14の上流端とが直接接続されている。
【0051】
(混合比調整装置)
本変形例の混合比調整装置20aは、センサ21aと、流量調整弁22aと、を有する。
【0052】
(センサ)
センサ21aは、第4ライン14に配置されている。センサ21aは、第4ライン14を流れる熱媒体Fの温度を検出する。
【0053】
(流量調整弁)
流量調整弁22aは、第3ライン13に配置されている。流量調整弁22aは、センサ21aの検出値に基づいて第3ライン13の熱媒体Fの流量を調整する。流量調整弁22aは、例えば電動の絞り弁である。
第4ライン14には、第2ライン12からの低温熱媒体F1と第3ライン13からの高温熱媒体F2とが混合されて適温熱媒体F3が流れる。本変形例では、第4ライン14を流れる適温熱媒体F3の温度変化をセンサ21aによって検出し、適温熱媒体F3の温度変化に基づいて流量調整弁22aにより第3ライン13を流れる高温熱媒体F2の流量を制御する。適温熱媒体F3の温度が上昇傾向にあるときは、流量調整弁22aが第3ライン13を流れる高温熱媒体F2の流量を減少させて高温熱媒体F2の混合比率を減少させる。また逆に、適温熱媒体F3の温度が減少傾向にあるときは、流量調整弁22aが第3ライン13を流れる高温熱媒体F2の流量を増大させて高温熱媒体F2の混合比率を増大させる。
【0054】
(作用効果)
本変形例の温調システム1によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
【0055】
本変形例では、混合比調整装置20aは、第4ライン14を流れる熱媒体Fの温度を検出するセンサ21aと、第3ライン13に配置され、センサ21aの検出値に基づいて第3ライン13の熱媒体Fの流量を調整する流量調整弁22aと、を有する。
【0056】
本変形例によれば、第4ライン14を流れる熱媒体Fの温度変化に応じて第3ライン13中の熱媒体Fの流量を調整することができる。これにより、高温の熱媒体Fと低温の熱媒体Fとの混合比を高精度に調整することができる。
【0057】
なお、センサ21aは、第2ライン12に設けられ、第2ライン12を流れる熱媒体Fの温度を検出してもよい。この場合、流量調整弁22aは、センサ21aによって検出される第2ライン12を流れる熱媒体Fの温度の検出値に基づいて第3ライン13の熱媒体Fの流量を調整する。
また、センサ21aは第2ライン12及び第4ライン14の両方に設けられ、流量調整弁22aは、第2ライン12のセンサ21aと第4ライン14のセンサ21aとの両方の検出値に基づいて第3ライン13の熱媒体Fの流量を調整してもよい。
【0058】
<第2実施形態>
以下、本開示の第2実施形態に係る温調システム101について、
図4から
図8を参照して説明する。上記の実施形態と共通する構成については、同一の名称、符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0059】
図4に示すように、本実施形態では、熱媒体回路110は、熱媒体Fを貯蔵可能なバッファタンク16と、第1ライン11に配置された開閉弁11aと、をさらに有する。
【0060】
(バッファタンク)
バッファタンク16は、第4ライン14上のポンプ15よりも上流側に配置されている。バッファタンク16には、混合比調整装置20によって混合比を調整されて、発熱源2aに適した温度域に調整された適温熱媒体F3が貯蔵される。
【0061】
開閉弁11aは、第1ライン11上の第3ライン13よりも下流側に配置されている。開閉弁11aは、第1ライン11の開度を調整する。開閉弁11aが完全に閉塞されている時は、発熱源2aからタンク3への熱媒体Fの供給が停止される。
【0062】
(温調システムの操作手順)
以下、第2実施形態に係る温調システム101の操作方法の手順について説明する。
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に温調システム101が操作されるが、一部の手順が異なる。第2実施形態特有の特徴的な手順について
図5のフローや
図6、
図7を参照して説明する。
図6、
図7は、第2実施形態に係る温調システム101を説明するための模式図である。
図6、
図7では、開放されて熱媒体Fが流通可能なラインは実線で示され、閉塞されて熱媒体Fが流通不可能なラインは破線で示されている。
【0063】
図5に示すように、タンク3内に冷熱を貯蔵するステップS1では、まず、制御ユニット50が、バッファタンク16内に適温熱媒体F3を貯蔵させる(ステップS11)。ステップS11では、
図6に示すように、開閉弁11aによって第1ライン11が開放され、第1ライン11に熱媒体Fが流通可能となっている。また、混合弁22によって第3ライン13が閉塞され、第3ライン13に熱媒体Fが流通不可能となっている。反対に、第2ライン12は、熱媒体Fが流通可能となっている。この時、タンク3と蒸発器35との間で熱媒体Fが循環することにより、熱媒体Fが徐々に冷却される。さらに、発熱源2aを停止させた状態で、熱媒体回路110内で熱媒体Fを循環させることにより、バッファタンク16内に発熱源2aの稼動に適した温度域の適温熱媒体F3が貯蔵される。
【0064】
バッファタンク16内に適温熱媒体F3が充填されると、制御ユニット50が、タンク3内に低温熱媒体F1を貯蔵させる(ステップS12)。ステップS12では、
図7に示すように、開閉弁11aによって第1ライン11が閉塞され、第1ライン11のうち第3ライン13との接続箇所よりも下流側に熱媒体Fが流通不可能となっている。また、混合弁22によって第2ライン12が閉塞され、第2ライン12に熱媒体Fが流通不可能となっている。反対に、第3ライン13は、熱媒体Fが流通可能となっている。ステップS12では、タンク3と蒸発器35との間でのみ熱媒体Fを循環させることにより、タンク3内の熱媒体Fが冷却される。このようにすることで、タンク3内には、低温熱媒体F1が次第に貯蔵されていく。タンク3内に低温熱媒体F1が充填されると、ステップS12が終了し、発熱源2aを稼動させるステップS2に移行する。ステップS2以降は、第1実施形態と同様の手順で進行する。
【0065】
なお、発熱源2aの停止後、次の冷却の準備のために冷熱を貯蔵するステップS7についても、本実施形態のステップS1と同様の手順で進行する。なお、ステップS7では、バッファタンク16内に適温熱媒体F3が充填されている場合、ステップS11を省略してステップS12から開始してもよい。
【0066】
(作用効果)
本実施形態の温調システム101によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
【0067】
本実施形態では、熱媒体回路110は、第4ライン14に配置され、熱媒体Fを貯蔵可能なバッファタンク16をさらに有する。
【0068】
上記構成によれば、予めバッファタンク16に発熱源2aに適した温度域の熱媒体Fを貯蔵することができる。これにより、発熱源2aの稼動直後に、バッファタンク16内に貯蔵された適温熱媒体F3を発熱源2aに供給することができるので、
図8に示すような発熱源2aの稼動に対する冷却能力の即応性を得ることができる。
【0069】
図8には、横軸を時間軸として、上から順に、温調システム101の冷却能力、発熱源2aの発熱量、タンク3の温度(タンク温度)、第3ライン13を流れる発熱源2aの排熱を含んだ高温熱媒体F2の温度(排熱温度)、混合弁22内で混合される熱媒体Fのうち第3ライン13から供給される高温熱媒体F2の比率(混合弁排熱比率)、第4ライン14を流れる発熱源2aへの供給直前の熱媒体Fの温度(発熱源供給温度)の時間変化が開示されている。
【0070】
図8に示すように、発熱源2aが稼動を開始すると(
図8中の発熱ON)、発熱源2aが発熱を開始する(
図8の2段目参照)。発熱源2aが停止する(
図8中の発熱OFF)まで、発熱量が一定のまま発熱源2aは発熱し続ける。発熱源2aの発熱中は、発熱源2aから熱媒体Fに熱が供給される為、タンク3内の温度は発熱源2aが停止するまで上昇し続ける(
図8の3段目参照)。また、第3ライン13中の排熱温度は、発熱源2aの稼動直後は、急激に上昇する(
図8の4段目参照)。この時、混合弁22がこの排熱温度の急激な上昇に合わせて、混合弁排熱比率を急激に減少させる(
図8の5段目参照)。これにより、排熱温度が一定となり、混合比弁排熱比率の減少度合も緩やかになる。
【0071】
ここで、発熱源2aの稼動直後は、混合弁排熱比率の調整が間に合わず、混合弁22から生成される熱媒体Fは、発熱源2aに適した温度域から外れるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、バッファタンク16内に適温熱媒体F3が貯蔵されているため、発熱源2aの稼動直後は、バッファタンク16内の適温熱媒体F3を発熱源2aに供給することで、
図8の6段目に示すように、発熱源供給温度を一定に維持することができる。このため、
図8の1段目に示すように、温調システム101の冷却能力を一定に維持することが可能となる。
【0072】
このように、混合比調整装置20による適切な温度域の熱媒体Fの生成までの要求温度の熱媒体貯蔵と、混合比調整装置20の応答性の影響緩和が可能となり、運転中の発熱源2aへの安定した冷熱供給を達成することができる。すなわち、発熱源2aが発熱して、適切な温度域の熱媒体Fが生成されるまでに、目的とする温度域よりも低温の熱媒体Fが発熱源2aに供給されるのを防ぐことができる。
【0073】
<第3実施形態>
以下、本開示の第3実施形態に係る温調システム201について、
図9を参照して説明する。上記の実施形態と共通する構成については、同一の名称、符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0074】
図9に示すように、本実施形態では、接続回路240は、供給ライン41に代えて分岐ライン44を有する。
【0075】
(分岐ライン)
分岐ライン44は、第1ライン11の発熱源2aからタンク3への熱媒体Fの流れを、第3ライン13よりも下流側でさらに分岐させ、冷凍サイクル30aに導く。より詳細には、分岐ライン44は、第1ライン11上の開閉弁11aよりも下流側と、蒸発器35とを接続している。分岐ライン44を介して発熱源2aから直接供給された熱媒体Fは、蒸発器35にて冷凍サイクル30aを循環する冷媒Rと熱交換を行い、冷却される。また、分岐ライン44には、熱媒体Fを蒸発器35に向けて圧送するポンプ42が設けられている。
【0076】
本実施形態では、第1ライン11は、接続回路240のポンプ42の圧送流量と、熱媒体回路110のポンプ15との圧送流量との差を吸収するために、発熱源2aとタンク3とを接続している。なお、接続回路240のポンプ42の圧送流量と、熱媒体回路110のポンプ15との圧送流量とに差が無い場合、第1ライン11の下流端には、分岐ライン44が接続され、第1ライン11はタンク3に直接接続されていなくてもよい。この場合、第1ライン11は、接続回路240を介して間接的にタンク3に接続されるため、発熱源2aから排出された高温熱媒体F2は、全て冷凍サイクル30aの蒸発器35で冷却されてからタンク3に供給される。
【0077】
(作用効果)
本実施形態の温調システム201によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
【0078】
本実施形態では、温調システム201は、第1ライン11の発熱源2aからタンク3への熱媒体Fの流れを、第3ライン13よりも下流側でさらに分岐させ、冷凍サイクル30aに導く分岐ライン44をさらに備える。
【0079】
これにより、発熱源2aと熱交換を行った熱媒体Fを冷凍サイクル30aに直接供給することができる。このようにすることで、冷凍サイクル30aの低圧側の圧力が上昇する。これにより、圧縮機32の吸入密度が増加する。よって、冷凍サイクル30aの冷却能力を向上させることができる。冷凍サイクル30aの冷却能力が向上することにより、熱媒体Fを効率良く冷却することができるため、温調システム201全体としての冷却能力を向上させることができる。
【0080】
また、発熱源2aからタンク3に直接供給される高温熱媒体F2の供給量を減らすことができるため、タンク3内に効率良く低温熱媒体F1を貯蔵することができる。
【0081】
<第4実施形態>
以下、本開示の第4実施形態に係る温調システム301について、
図10から
図14を参照して説明する。上記の実施形態と共通する構成については、同一の名称、符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0082】
図10に示すように、本実施形態では、熱媒体回路310は、タンク3に代えてタンク303を有し、タンク接続ライン17と、膨張タンク18と、をさらに有する。
【0083】
(タンク)
タンク303は、各々に熱媒体Fを貯蔵可能な複数の分割貯蔵空間Saを有する。複数の分割貯蔵空間Saは、直列に接続されている。より詳細には、タンク303は、複数の分割タンク303aを有する。分割タンク303a内には、それぞれ分割貯蔵空間Saが形成されている。隣り合う分割タンク303a同士は、タンク接続ライン17によって接続され、複数の分割貯蔵空間Sa同士は、タンク接続ライン17によって連通している。複数の分割貯蔵空間Saが合わさって、1つの貯蔵空間Sが構成されている。
なお、1つのタンク303内に、複数の仕切り体が設けられ、これら複数の仕切り体よってタンク303内の貯蔵空間Sが分割されて、複数の分割貯蔵空間Saが形成されてもよい。
【0084】
直列に並ぶ複数の分割タンク303aのうち一方側の端に配置された分割タンク303aには、発熱源2aから高温熱媒体F2が直接供給される。以下では、この分割タンク303aを、排熱側分割タンク303bと称して説明する場合がある。
直列に並ぶ複数の分割タンク303aのうち他方側の端に配置された分割タンク303aには、冷凍サイクル30aの蒸発器35から、蒸発器35で冷却された低温熱媒体F1が直接供給される。以下では、この分割タンク303aを、冷熱側分割タンク303cと称して説明する場合がある。
また、直列に並ぶ複数の分割タンク303aの配列方向において、排熱側分割タンク303bが配置される側を排熱側と称し、冷熱側分割タンク303cが配置される側を冷熱側と称して説明する場合がある。
【0085】
膨張タンク18は、熱媒体Fの熱膨張による体積変動を吸収するために設けられている。本実施形態では、複数の分割タンク303aのうち、冷熱側分割タンク303cに接続されている。
【0086】
(温調システムの操作手順)
以下、第4実施形態に係る温調システム301の操作方法の手順について説明する。
第4実施形態でも、第2実施形態と同様に温調システム301が操作させるが、直列に接続された複数の分割貯蔵空間Saが設けられているため、過程が一部異なる。第4実施形態特有の過程について
図11から
図14を参照して説明する。
図11から
図14は、第4実施形態に係る温調システム301を説明するための模式図である。
図11から
図14では、開放されて熱媒体Fが流通可能なラインは実線で示され、閉塞されて熱媒体Fが流通不可能なラインは破線で示されている。
【0087】
タンク303内に冷熱を貯蔵するステップS1では、まず、第2実施形態と同様に、まず、制御ユニット50が、バッファタンク16内に適温熱媒体F3を貯蔵させる(ステップS11)。ステップS11では、
図11に示すように、開閉弁11aによって第1ライン11が開放され、第1ライン11に熱媒体Fが流通可能となっている。また、混合弁22によって第3ライン13が閉塞され、第3ライン13に熱媒体Fが流通不可能となっている。反対に、第2ライン12は、熱媒体Fが流通可能となっている。ステップS11によって、バッファタンク16内に適温熱媒体F3が充填される。バッファタンク16内に適温熱媒体F3が充填されると、第2実施形態と同様に、制御ユニット50が、タンク303内に低温熱媒体F1を貯蔵させる(ステップS12)。ステップS12では、
図12に示すように、開閉弁11aによって第1ライン11が閉塞され、第1ライン11のうち第3ライン13との接続箇所よりも下流側に熱媒体Fが流通不可能となっている。また、混合弁22によって第2ライン12が閉塞され、第2ライン12に熱媒体Fが流通不可能となっている。反対に、第3ライン13は、熱媒体Fが流通可能となっている。ステップS12では、タンク303と蒸発器35との間でのみ熱媒体Fを循環させることにより、タンク303内の熱媒体Fが冷却される。このようにすることで、タンク303内には、低温熱媒体F1が次第に貯蔵されていく。本実施形態では、複数の分割タンク303aのうち冷熱側から順に、低温熱媒体F1が充填される。全ての分割タンク303a内に低温熱媒体F1が充填されると、ステップS12が終了し、発熱源2aを稼動させるステップS2に移行する。ステップS2以降は、第2実施形態と同様の手順で進行する。
【0088】
ただし、本実施形態では、適温熱媒体F3を生成する発熱源2aを冷却するステップS4において、
図13に示すように、冷熱側の分割タンク303aから低温熱媒体F1が使用され、排熱側の分割タンク303aから順に発熱源2aから高温熱媒体F2が供給される。
【0089】
なお、発熱源2aの停止後、次の冷却の準備のために冷熱を貯蔵するステップS7についても、本実施形態のステップS1と同様の手順で進行する。なお、ステップS7では、バッファタンク16内に適温熱媒体F3が充填されている場合、ステップS11を省略してステップS12から開始してもよい。
また、本実施形態では、ステップS7において、冷熱を補充する際、
図14に示すように、冷熱側の分割タンク303aから順に低温熱媒体F1が充填されていく。
【0090】
(作用効果)
本実施形態の温調システム301によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
【0091】
本実施形態では、タンク303は、直列に接続され、各々に熱媒体Fを貯蔵可能な複数の分割貯蔵空間Saを有する。
【0092】
本実施形態によれば、発熱源2aに対して下流側(排熱側)の分割貯蔵空間Saから順に冷凍サイクル30aによって冷却された低温熱媒体F1を供給し、発熱源2aに対して上流側(冷熱側)の分割貯蔵空間Saから順に発熱源2aから排出される高温熱媒体F2を供給することができる。これにより、発熱源2aから供給される高温熱媒体F2が、冷凍サイクル30aによって冷却された低温熱媒体F1と混ざり合うことなく混合比調整装置20に送られることを抑制することができる。このため、発熱源2aに対して下流側(排熱側)の分割貯蔵空間Saと、上流側(冷熱側)の分割貯蔵空間Saとに温度差が生じ易くなる。これにより、発熱源2aの発熱時には、冷熱側の分割貯蔵空間Saに貯蔵された熱媒体Fの冷熱を効率良く取り出すことができる。また、発熱源2aの停止時には、排熱側の分割貯蔵空間Saに貯蔵された熱媒体Fの排熱を効率良く取り出すことができる。
よって、運転サイクル中でのタンク303内の流れ方向の入れ替わりや、車両等の移動体特有の振動・傾斜によるタンク303内の不規則な分布によって、タンク303内に貯蔵された熱媒体Fの冷熱を使いきれずに、タンク303の出口温度が上昇してしまうことを防止することできる。
【0093】
<第5実施形態>
以下、本開示の第5実施形態に係る温調システム401について、
図15を参照して説明する。上記の実施形態と共通する構成については、同一の名称、符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0094】
図15に示すように、本実施形態では、熱媒体回路410は、バイパス回路60をさらに備える。
【0095】
(バイパス回路)
バイパス回路60は、冷凍サイクル30aによって冷却された熱媒体Fのタンク303へ向かう流れをバッファタンク16に分岐させる。バイパス回路60は、バイパス弁61と、第1バイパスライン62と、第2バイパスライン63と、を有する。バイパス弁61は、所謂三方弁である。バイパス弁61の一端は、戻しライン43によって冷凍サイクル30aの蒸発器35と接続されている。第1バイパスライン62は、バイパス弁61の別の一端を冷熱側分割タンク303cに接続している。第1バイパスライン62には、逆止弁62aが設けられている。この逆止弁62aは、タンク303からバイパス弁61への逆流を防止する。また、第2バイパスライン63は、バイパス弁61の残りの一端をバッファタンク16に接続している。第2バイパスライン63には、逆止弁63aが設けられている。この逆止弁63aは、バッファタンク16からバイパス弁61への逆流を防止する。
【0096】
また、本実施形態では、膨張タンク18はバッファタンク16に接続され、第4ライン14のうちバッファタンク16よりも上流側には、開閉弁14aが配置されている。
【0097】
(作用効果)
本実施形態の温調システム401によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
【0098】
本実施形態では、熱媒体回路410は、冷凍サイクル30aによって冷却された熱媒体Fのタンク303へ向かう流れをバッファタンク16に分岐させるバイパス回路60をさらに備える。
【0099】
これにより、発熱源2aの冷却中に冷凍サイクル30aの出口温度がタンク303温度に干渉することを防止することができる。例えば、冷凍サイクル30aの稼動直後等、冷凍サイクル30aでの熱媒体Fの冷却が不十分な場合に、その冷却が不十分な熱媒体Fをタンク303ではなくバッファタンク16に導くことができる。よって、タンク303内の温度が安定し、混合比調整装置20の制御性向上につながる。
【0100】
(ハードウェア構成)
上記実施形態の制御ユニット50は、
図16に示すようなコンピュータに実装される。
図16は、各実施形態に係る制御ユニット50が実装されるコンピュータの構成を示す概略ブロック図の一例である。コンピュータ1100は、プロセッサ1110と、メインメモリ1120と、ストレージ1130と、インタフェース1140とを備える。
【0101】
そして、制御ユニット50の各機能部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0102】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0103】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1140または通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体であってもよい。
【0104】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0105】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0106】
なお、上記の温調システム1、101、201、301、401が発熱源2aを冷却する場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、発熱源2aの稼動開始時に、発熱源2aが過度に冷却されていた場合、発熱源2aを加熱するために温調システム1、101、201、301、401が用いられてもよい。
【0107】
また、温調システム1、101、201、301、401は、冷熱源2b(温調対象物2の別の一例)を加熱するために用いられてもよい。例えば、
図17に示すように、温調システム1Aは、第1実施形態の冷凍サイクル30aに代えて加熱装置30bを備え、熱媒体回路10Aは、第1実施形態の発熱源2aに代えて冷熱源2bを備えてもよい。この場合、冷熱源2bと熱交換を行って冷却された熱媒体Fが、加熱装置30bによって加熱されてタンク3内に貯蔵される。また、第1実施形態を例に本変形例を説明したが、第1実施形態以外の各実施形態についても、冷熱源2bを加熱するために温調システム101、201、301、401が用いられてもよい。すなわち、温調システム1、101、201、301、401において、冷凍サイクル30aに代えて加熱装置30bが設けられ、発熱源2aに代えて冷熱源2bが設けられてもよい。
【0108】
<付記>
各実施形態に記載の温調システム1、1A、101、201、301、401は、例えば以下のように把握される。
【0109】
(1)第1の態様に係る温調システム1、1A、101、201、301、401は、温調対象物2に熱媒体Fを供給し、前記熱媒体Fを循環させるとともに、前記熱媒体Fを貯蔵可能なタンク3、303を有する熱媒体回路10、10A、110、310、410と、前記温調対象物2と熱交換を行った前記熱媒体Fを温調し、温調後の前記熱媒体Fを前記タンク3、303に戻す熱媒体温調装置30と、を備え、前記熱媒体回路10、10A、110、310、410は、前記温調対象物2と熱交換を行った前記熱媒体Fを前記タンク3、303に導く第1ライン11と、前記タンク3、303に貯蔵された前記熱媒体Fを排出する第2ライン12と、前記第1ライン11の前記温調対象物2から前記タンク3、303への前記熱媒体Fの流れを分岐させる第3ライン13と、前記第2ライン12を流れる前記熱媒体Fと、前記第3ライン13を流れる前記熱媒体Fとを混合するとともに、前記第2ライン12からの前記熱媒体Fと前記第3ライン13からの前記熱媒体Fとの混合比を調整可能な混合比調整装置20、20aと、前記混合比調整装置20、20aによって混合された前記熱媒体Fを前記温調対象物2に供給する第4ライン14と、をさらに有する。
熱媒体Fの例として、上述した実施形態の冷却水や、冷却水以外の冷媒等が挙げられる。
なお、ここでいう、温調とは、物を加熱又は冷却して、当該物の温度を調整することを意味する。よって、熱媒体温調装置30の例として、上述した冷凍サイクル30aや、加熱装置30b等が挙げられる。また、温調対象物2の例として、上述した発熱源2aや冷熱源2b等が挙げられる。
【0110】
本態様では、熱媒体温調装置30によって温調された熱媒体Fをタンク3、303に貯蔵する。さらに、混合比調整装置20、20aが、温調対象物2と熱交換を行った熱媒体Fと、タンク3、303内の熱媒体Fとを混合する。この時、混合比調整装置20、20aは、発熱源2aから直接供給される熱媒体Fと、タンク3、303内の熱媒体Fとの混合比を調整することができる。これにより、温調対象物2の温度が変化しても、混合比を調整することにより、熱媒体Fの温度を一定に保つことができる。混合比調整装置20、20aによって適切な混合比で混合された熱媒体Fは、第4ライン14を介して温調対象物2に供給される。よって、本態様によれば、温調対象物2に適切な温度域の熱媒体Fを供給することができる。
【0111】
(2)第2の態様の温調システム101、201、301、401は、第1の態様の温調システム101、201、301、401であって、前記熱媒体回路110、310、410は、前記第4ライン14に配置され、前記熱媒体Fを貯蔵可能なバッファタンク16をさらに有してもよい。
【0112】
上記構成によれば、予めバッファタンク16に温調対象物2に適した温度域の熱媒体Fを貯蔵することができる。これにより、温調対象物2の稼動直後に、バッファタンク16内に貯蔵された適温熱媒体F3を温調対象物2に供給することができる。このため、温調対象物2が稼動して、適切な温度域の熱媒体Fが生成されるまでに、目的とする温度域から外れた熱媒体Fが温調対象物2に供給されるのを防ぐことができる。
【0113】
(3)第3の態様の温調システム401は、第2の態様の温調システム401であって、前記熱媒体回路410は、前記熱媒体温調装置30によって温調された前記熱媒体Fの前記タンク3、303へ向かう流れを前記バッファタンク16に分岐させるバイパス回路60をさらに備えてもよい。
【0114】
これにより、温調対象物2の温調中に熱媒体温調装置30の出口温度がタンク温度に干渉することを防止することができる。例えば、熱媒体温調装置30の稼動直後等、熱媒体温調装置30での熱媒体Fの温調が不十分な場合に、その温調が不十分な熱媒体Fをタンク3、303ではなくバッファタンク16に導くことができる。
【0115】
(4)第4の態様の温調システム201、301、401は、第1から第3のいずれか1つの態様の温調システム201、301、401であって、前記第1ライン11の前記温調対象物2から前記タンク3、303への前記熱媒体Fの流れを、前記第3ライン13よりも下流側でさらに分岐させ、前記熱媒体温調装置30に導く分岐ライン44をさらに備えてもよい。
【0116】
これにより、温調対象物2と熱交換を行った熱媒体Fを熱媒体温調装置30に直接供給することができる。このようにすることで、熱媒体温調装置30の低圧側の圧力が上昇する。これにより、圧縮機32の吸入密度が増加する。よって、熱媒体温調装置30の温調能力を向上させることができる。
【0117】
(5)第5の態様の温調システム301、401は、第1から第4のいずれか1つの態様の温調システム301、401であって、前記タンク303は、直列に接続され、各々に前記熱媒体Fを貯蔵可能な複数の分割貯蔵空間Saを有してもよい。
【0118】
本態様によれば、温調対象物2に対して下流側の分割貯蔵空間Saから順に熱媒体温調装置30によって温調された熱媒体Fを供給し、温調対象物2に対して上流側の分割貯蔵空間Saから順に温調対象物2から排出される熱媒体Fを供給することができる。これにより、温調対象物2から供給される熱媒体Fが、熱媒体温調装置30によって温調された熱媒体Fと混ざり合うことなく混合比調整装置20、20aに送られることを抑制することができる。このため、温調対象物2に対して下流側の分割貯蔵空間Saと、温調対象物2に対して上流側の分割貯蔵空間Saとに温度差が生じ易くなる。これにより、温調対象物2の稼動時には、温調対象物2に対して上流側の分割貯蔵空間Saに貯蔵された熱媒体Fの冷熱又は排熱を効率良く取り出すことができる。また、温調対象物2の停止時には、温調対象物2に対して下流側の分割貯蔵空間Saに貯蔵された熱媒体Fの排熱又は冷熱を効率良く取り出すことができる。
【0119】
(6)第6の態様の温調システム1、101、201、301、401は、第1から第5の態様のいずれか1つの温調システム1、101、201、301、401であって、前記混合比調整装置20、20aは、前記第4ライン14に配置され、前記第4ライン14を流れる前記熱媒体Fの温度を検出するセンサ21と、前記第2ライン12の下流端と、前記第3ライン13の下流端と、前記第4ライン14の上流端とを接続し、前記センサ21の検出値に基づいて前記混合比を調整する混合弁22と、を有してもよい。
【0120】
これにより、混合比調整装置20は、第4ライン14を流れる熱媒体Fの温度が一定となるように、高温の熱媒体Fと低温の熱媒体Fとの混合比を高精度に調整することができる。
【0121】
(7)第7の態様の温調システム1は、第1から第5の態様の温調システム1であって、前記混合比調整装置20、20aは、前記第2ライン12、及び前記第4ライン14のいずれか一方を流れる前記熱媒体Fの温度を検出するセンサ21aと、前記センサ21aの検出値に基づいて前記第3ライン13の前記熱媒体Fの流量を調整する流量調整弁22aと、を有してもよい。
【0122】
本態様によれば、第2ライン12、及び第4ライン14のいずれか一方を流れる熱媒体Fの温度変化に応じて第3ライン13中の熱媒体Fの流量を調整することができる。これにより、高温の熱媒体Fと低温の熱媒体Fとの混合比を高精度に調整することができる。
【0123】
(8)第8の態様の温調システム1、101、201、301、401は、第1から第7の態様のいずれか1つの態様の温調システム1、101、201、301、401であって、前記温調対象物2は、発熱源2aであり、前記熱媒体温調装置30は、前記温調対象物2と熱交換を行った前記熱媒体Fを冷却し、冷却後の前記熱媒体Fを前記タンク3、303に戻す冷凍サイクル30aであってもよい。
【0124】
本態様では、冷凍サイクル30aによって冷却された低温の熱媒体Fをタンク3、303に貯蔵する。さらに、混合比調整装置20、20aが、発熱源2aと熱交換を行った高温の熱媒体Fと、タンク3、303内の低温の熱媒体Fとを混合する。この時、混合比調整装置20、20aは、発熱源2aから直接供給される高温の熱媒体Fと、タンク3、303内の低温の熱媒体Fとの混合比を調整することができる。これにより、例えば発熱源2aの発熱量が増大したとしても、タンク3、303から供給される低温の熱媒体Fの混合比率を増大することにより、熱媒体Fの温度を一定に保つことができる。混合比調整装置20、20aによって適切な混合比で混合された熱媒体Fは、第4ライン14を介して発熱源2aに供給される。よって、本態様によれば、発熱源2aに適切な温度域の熱媒体Fを供給することができる。
【符号の説明】
【0125】
1…温調システム 2…温調対象物 2a…発熱源 3…タンク 10…熱媒体回路 11…第1ライン 12…第2ライン 13…第3ライン 13a…逆止弁 14…第4ライン 15…ポンプ 20…混合比調整装置 21…センサ 22…混合弁 30…熱媒体温調装置 30a…冷凍サイクル 31…冷媒ライン 32…圧縮機 33…凝縮器 33a…送風ファン 34…膨張弁 35…蒸発器 40…接続回路 41…供給ライン 42…ポンプ 43…戻しライン 50…制御ユニット F…熱媒体 F1…低温熱媒体 F2…高温熱媒体 F3…適温熱媒体 R…冷媒 S…貯蔵空間 Sa…分割貯蔵空間
20a…混合比調整装置 21a…センサ 22a…流量調整弁
101…温調システム 110…熱媒体回路 11a…開閉弁 16…バッファタンク
201…温調システム 240…接続回路 44…分岐ライン
301…温調システム 310…熱媒体回路 303…タンク 303a…分割タンク 303b…排熱側分割タンク 303c…冷熱側分割タンク 17…タンク接続ライン 18…膨張タンク
401…温調システム 410…熱媒体回路 14a…開閉弁 60…バイパス回路 61…バイパス弁 62…第1バイパスライン 62a…逆止弁 63…第2バイパスライン 63a…逆止弁
1100…コンピュータ 1110…プロセッサ 1120…メインメモリ 1130…ストレージ 1140…インタフェース
1A…温調システム 10A…熱媒体回路 2b…冷熱源 30b…加熱装置