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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164550
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080114
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 達矢
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC02
(57)【要約】
【課題】 着用時の快適性に優れた冷却衣服を提供する。
【解決手段】 冷却衣服1は、衣服本体2と、衣服本体2の外部から内側へ空気Aを吸入する吸入ファン10と、冷却用媒体Cが封入されており衣服本体2の内面3に沿って設けられる冷却パウチ20と、を備え、冷却パウチ20には、中空空間21と、吸入ファン10で吸入された空気Aを中空空間21に導入する導入孔22と、中空空間21で冷却された空気Aを衣服本体2の内側へ放出する放出孔23と、が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、
上記衣服本体の外部から内側へ空気を吸入する吸入ファンと、
冷却用媒体が封入されており上記衣服本体の内面に沿って設けられる冷却パウチと、
を備え、
上記冷却パウチには、中空空間と、上記吸入ファンで吸入された空気を上記中空空間に導入する導入孔と、上記中空空間で冷却された空気を上記衣服本体の内側へ放出する放出孔と、が設けられている、冷却衣服。
【請求項2】
上記冷却パウチの上記中空空間で生じた結露水を吸収して上記衣服本体の内側で蒸発させる繊維構造体を備える、請求項1に記載の冷却衣服。
【請求項3】
上記衣服本体の内側に設けられるインナー素材を備え、
上記衣服本体と上記インナー素材との間に上記冷却パウチが設けられており、
上記繊維構造体は、上記インナー素材に接合されている、請求項2に記載の冷却衣服。
【請求項4】
上記冷却パウチには上記冷却用媒体としての水が封入され、上記インナー素材の内面には蒸発部が設けられており、
上記冷却パウチに封入されている水を上記蒸発部に供給する水供給部を備える、請求項3に記載の冷却衣服。
【請求項5】
上記冷却パウチは、展開状態のシート状パウチが筒軸まわりに円筒状に丸められてなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却衣服。
【請求項6】
上記冷却パウチは、上記衣服本体の上記内面のうち着用者の腰回りに対向する腰回り領域に沿って延びており、上記放出孔が上向きに開口するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、従来の空調衣服が開示されている。この空調衣服は、衣服本体の外部から内側へ空気を取り込むための電動ファンを備えている。衣服本体の内側へ取り込まれた空気は、電動ファンによる強制対流によって着用者の身体表面の周りを流れる。この空調衣服は、着用者の発汗水分の気化を促進することによって水分蒸発による放熱量を増やすとともに、空気の流れと着用者の身体表面との間の対流熱伝達を利用して着用者の体感温度を下げようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-193622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記空調衣服は、外部環境に影響を受け易いという問を抱えている。例えば暑熱時のような高温環境で空調衣服を使用すると、外部から電動ファンで取り込んだ空気の温度が着用者の身体表面温度を上回り、高温の空気から着用者に熱が付与されることが想定される。この場合、着用者の発汗量が増大し体感温度が高くなるため、空調衣服の本来の目的を全うすることができず、かえって着用時の快適性が損なわれるという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着用時の快適性に優れた冷却衣服を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
衣服本体と、
上記衣服本体の外部から内側へ空気を吸入する吸入ファンと、
冷却用媒体が封入されており上記衣服本体の内面に沿って設けられる冷却パウチと、を備え、
上記冷却パウチには、中空空間と、上記吸入ファンで吸入された空気を上記中空空間に導入する導入孔と、上記中空空間で冷却された空気を上記衣服本体の内側へ放出する放出孔と、が設けられている、冷却衣服、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の冷却衣服によれば、吸入ファンによって衣服本体の外部から内側へ吸入された空気は、冷却パウチの導入孔を通じて中空空間に導入され、中空空間で冷却された後に、放出孔を通じて衣服本体の内側へ放出される。このとき、衣服本体の外部の空気を中空空間のような閉鎖的な空間に導入すれば、当該空気を冷却パウチとの間での熱交換によって効果的に冷風化できる。そして、冷風化した空気を冷却パウチから放出して着用者の身体表面に供給することで、当該空気と身体表面との間での熱交換によって、着用者の体感温度を下げることができる。
【0008】
以上のごとく、上述の態様によれば、着用時の快適性に優れた冷却衣服を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の冷却衣服の正面図。
図2】実施形態1の冷却衣服の背面図。
図3】実施形態1の冷却衣服の内側の概略図。
図4図3のIV-IV線矢視断面図。
図5図3中の冷却パウチを展開状態にて示す斜視図。
図6図3中の冷却パウチの変更例を示す斜視図。
図7】実施形態1にかかるインナーウェアの概略図。
図8】実施形態2にかかるインナーウェア及び携帯ポーチの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0011】
上述の態様の冷却衣服は、上記冷却パウチの上記中空空間で生じた結露水を吸収して上記衣服本体の内側で蒸発させる繊維構造体を備えるのが好ましい。この冷却衣服において、吸入ファンによって衣服本体の外部から内側へ吸入された空気に含まれる水分は、冷却パウチの中空空間で冷却されて結露することがある。このときに冷却パウチの中空空間で生じた結露水を繊維構造体で吸収して衣服本体の内側で蒸発させることで、本来は不要な結露水を有効利用して水分蒸発による放熱量を増加させることができる。また、結露水の処理が不要になる。
【0012】
上述の態様の冷却衣服は、上記衣服本体の内側に設けられるインナー素材を備え、上記衣服本体と上記インナー素材との間に上記冷却パウチが設けられており、上記繊維構造体は、上記インナー素材に接合されているのが好ましい。この冷却衣服によれば、冷却パウチの中空空間で生じた結露水を繊維構造体からインナー素材まで移動させてインナー素材で水分を蒸発させることができる。
【0013】
上述の態様の冷却衣服において、上記冷却パウチには上記冷却用媒体としての水が封入され、上記インナー素材の内面には蒸発部が設けられており、上記冷却パウチに封入されている水を上記蒸発部に供給する水供給部を備えるのが好ましい。この冷却衣服によれば、冷却パウチに冷却用媒体として封入されている水を、水供給部によって蒸発部に供給することができる。このため、冷却用媒体である水を利用して蒸発部から水分を強制的に投入することによって、水分蒸発による放熱量を増加させることができる。また、冷却パウチが空気を冷却する機能と蒸発部への水の供給源としての機能を兼務しているため、蒸発部への水の供給源となる専用の水パウチを要しない。これにより、専用の水パウチを省略でき、その重量分だけ着用者が受ける荷重負荷を低減できる。
【0014】
上述の態様の冷却衣服において、上記冷却パウチは、展開状態のシート状パウチが筒軸まわりに円筒状に丸められてなるのが好ましい。これより、必要に応じて冷却パウチを円筒状から展開状態のシート状パウチに展開させて冷却衣服を収納することが可能になる。
【0015】
上述の態様の冷却衣服において、上記冷却パウチは、上記衣服本体の上記内面のうち着用者の腰回りに対向する腰回り領域に沿って延びており、上記放出孔が上向きに開口するように構成されているのが好ましい。この冷却衣服によれば、冷却パウチの中空空間で冷却された空気が着用者の腰回り領域から首回り領域に向けて流れる上向流を形成させることができる。これにより、冷風化した空気と着用者の身体表面との間での熱交換を促進することができる。
【0016】
以下、上述の態様の冷却衣服の具体例について、図面を参照しつつ説明する。この図面では、特に断わらない限り、冷却衣服の着丈方向(上下方向)をX軸方向とし、冷却衣服の身幅方向(左右方向)をY軸方向とし、冷却衣服の平置き状態での厚み方向をZ軸方向とする。
【0017】
(実施形態1)
図1及び図2に示されるように、実施形態1の冷却衣服1は、衣服本体2と、吸入ファン10と、冷却パウチ20と、繊維構造体30と、を備えている。
【0018】
1.衣服本体2の構成
図1に示されるように、衣服本体2は、ジャンパタイプ或いはブルゾンタイプの上着であり、着用者の胴部及び腕部を覆うような長袖のものである。この衣服本体2の素材は特に限定されないが、ポリエステルなどの柔軟な非通気性素材を使用するのが好ましい。なお、必要に応じて、この衣服本体2の形状を半袖やベストタイプのものに変更することもできる。
【0019】
2.吸入ファン10の構造
図1図3に示されるように、吸入ファン10は、衣服本体2の外部から内側へ空気を吸入するためのものである。吸入ファン10は、衣服本体2の外側に向けて開口形成された吸入口10a(図2を参照)と、衣服本体2の内側に向けて開口形成された排出口10b(図1及び図3を参照)と、を有する。吸入ファン10は、回転体であるプロペラ(図示省略)と、このプロペラを回転駆動するための電動モータ(図示省略)と、が内蔵された既知の構造の電動ファンである。吸入ファン10は、電動モータのオン操作及びオフ操作が可能なスイッチ(図示省略)に電気的に接続されている。
【0020】
本形態では、2つの吸入ファン10がX軸方向に延びる仮想中心線L(図3を参照)に対して線対称位置に設けられている。2つの吸入ファン10は、Y軸方向に並置されている。なお、吸入ファン10の数や配置については、本形態のものに限定されるものではなく、必要に応じて変更が可能である。
【0021】
3.冷却パウチ20の構造
図3に示されるように、冷却パウチ20は、衣服本体2の内面3に沿って設けられる。本形態では、特に、衣服本体2の内面3のうち着用者の腰回りに対向する腰回り領域3aに沿って冷却パウチ20が延びるように設けられる。冷却パウチ20は、Y軸方向が筒軸方向となるように構成された長尺の筒状体である。
【0022】
冷却パウチ20には冷却用媒体Cが封入されている。冷却用媒体Cは、冷却パウチ20の表面を形成する樹脂フィルム20aによって密封されている。本形態では、冷却用媒体Cとして水を使用している。このため、冷却パウチ20は、常温状態では水の流動性によって形状変化が許容される。これに対して、冷却パウチ20は、凍結状態では水が固化にて氷になるため形状変化が阻止される。なお、樹脂フィルム20aの材質は特に限定されないが、空気の冷却性能を維持するために、外部との熱交換を極力抑制することができる素材を使用するのが好ましい。
【0023】
冷却パウチ20には、中空空間21と、導入孔22と、放出孔23と、が設けられている。中空空間21は、空気Aを冷却するための空間である。導入孔22は、吸入ファン10で吸入された空気Aを中空空間21に導入する孔部である。放出孔23は、中空空間21で冷却された空気Aを衣服本体2の内側へ放出する孔部である。導入孔22と放出孔23はいずれも、冷却パウチ20の筒壁を貫通するように設けられており、且つ、衣服本体2に取り付けられた状態で上向きに開口するように配置されている。
【0024】
図4に示されるように、冷却パウチ20は、Z軸方向について衣服本体2とインナーウェア4との間に設けられる。インナーウェア4は、衣服本体2の内側に設けられるインナー素材である。インナーウェア4は、衣服本体2の下に着用される衣服である。これにより、冷却パウチ20が着用者に直に接触するのがインナーウェア4によって阻止される。
【0025】
図3及び図4に示されるように、冷却パウチ20は、筒状のガイド部材11を介して吸入ファン10に接続される。ガイド部材11は、吸入ファン10から冷却パウチ20の中空空間21まで空気Aをガイドするためのものである。このために、ガイド部材11は、その一端側の開口部が吸入ファン10の排出口10bに連通しており、その他端側の開口部が冷却パウチ20の導入孔22に連通している。これにより、吸入ファン10の排出口10bから排出された空気Aは、ガイド部材11を通じて冷却パウチ20の導入孔22まで達し、この導入孔22を通じて中空空間21に導入される。
【0026】
なお、冷却パウチ20のY軸方向の両端は、開口していても良いし、或いは閉鎖されていても良い。冷却パウチ20の両端が開口している場合には、この開口部が放出孔23と同様の機能を果たす。これに対して、冷却パウチ20の両端が閉鎖している場合には、開口している場合に比べると中空空間21の閉鎖度合いが高まるため、中空空間21における空気Aの冷却効率を高めることができる。
【0027】
特に図示しないものの、冷却パウチ20は、ボタンや面ファスナーなどの適宜の取付部材によって、ガイド部材11のみに、或いはガイド部材11及び衣服本体2の両方に、取り外し可能に取り付けられる。
【0028】
図5に示されるように、冷却パウチ20は、展開状態のシート状パウチ20Aが筒軸Mまわりに円筒状に丸められてなる。シート状パウチ20Aは、厚み方向から見たとき、矢印D1方向を長手方向とし、矢印D2方向を短手方向とする略長方形をなしている。導入孔22と放出孔23は、筒軸M方向に沿って一列に配置されている。なお、本形態では、冷却パウチ20が2つの導入孔22と4つの放出孔23を有するが、導入孔22と放出孔23のそれぞれの数はこれに限定されるものではなく、適宜の数を採用することができる。
【0029】
シート状パウチ20Aの厚み方向の一方の面には、複数(図5では5つ)の留め具24が設けられている。また、シート状パウチ20Aの厚み方向の他方の面には、複数(図5では5つ)の係止部25が設けられている。シート状パウチ20Aは、繊維構造体30の吸水部31(図4)を挟み込むように円筒状に丸められて、複数の留め具24のそれぞれが複数の係止部25のそれぞれに係止されることによって、円筒状の冷却パウチ20となる。これにより、継ぎ目を有する円筒状の冷却パウチ20が形成される。なお、留め具24として、例えば、ボタンや面ファスナーなどを使用できる。また、図6に変更例として示されるように、継ぎ目の無い円筒状の冷却パウチ20を使用しても良い。
【0030】
4.繊維構造体30の構造
図4に示されるように、繊維構造体30は、冷却パウチ20の中空空間21で生じた結露水Wを吸収して衣服本体2の内側で蒸発させるためのものである。このために、繊維構造体30は、吸水性及び蒸発性に優れた特性を有する既知の合成繊維からなる。繊維構造体30は、シート状に形成されており、冷却パウチ20の中空空間21に配置される吸水部31と、インナーウェア4の内面5に接合される蒸発部32と、を有する。
【0031】
冷却パウチ20による空気Aの冷却によって、この空気A中の水分が中空空間21で結露することがある。冷却パウチ20の中空空間21に結露水Wが生じた場合、この結露水Wは、繊維構造体30の吸水部31で吸水されたのち、毛細管現象を利用して蒸発部32まで移動して蒸発する。これにより、繊維構造体30の蒸発部32から衣服本体2の内側に結露水Wに由来の水分が投入される。或いは、繊維構造体30の水分はインナーウェア4の蒸発部6まで移動して蒸発部6で蒸発する。
【0032】
5.インナーウェア4の構造
図7に示されるように、インナーウェア4は、着用者の胴部及び肩部を覆うような半袖のものである。本形態では、このインナーウェア4は、衣服本体2とセットで使用される。インナーウェア4は、予め衣服本体2と一体化されていても良いし、或いは衣服本体2とは別体であっても良い。インナーウェア4の素材は特に限定されないが、ポリエステルなどの柔軟な非通気性素材を使用するのが好ましい。なお、必要に応じて、このインナーウェア4の形状を長袖やベストタイプのものに変更することもできる。また、このインナーウェア4に代えて、衣服本体2の内面3に接合されるインナー素材(基布)などを使用しても良い。
【0033】
インナーウェア4の内面5には、中空糸膜からなる蒸発部6が設けられている。蒸発部6は、インナーウェア4の内面5に糸状の中空糸膜を張り巡らすように接合することによって構成されている。中空糸膜は、合成樹脂製の既知の中空繊維である。中空糸膜を使用することで水分を広範囲で蒸発させるのに有効である。一方で、必要に応じて、中空糸膜とは別の繊維(例えば、繊維構造体30を構成する合成繊維など)を使用して蒸発部6を構成しても良い。
【0034】
蒸発部6の中空糸膜には水供給管7が繋がっている。水供給管7は、その一端部が蒸発部6の中空糸膜に接続されており、その他端部が送水ポンプ8に接続されている。送水ポンプ8は、冷却パウチ20に封入されている水を水供給管7に送り出すためのポンプである。この場合、水供給管7及び送水ポンプ8は、冷却パウチ20に封入されている水を蒸発部6に供給する水供給部9を構成している。このように、本形態の冷却パウチ20は、空気Aを冷却する機能と、蒸発部6への水の供給源としての機能と、を兼務している。
【0035】
6.冷却衣服1の使用方法
ここで、上記構成の冷却衣服1の使用方法について説明する。
【0036】
先ず、冷却パウチ20の使用前準備を行う。冷却パウチ20を、冷却衣服1から予め取り外した状態で、円筒状のまま冷却用媒体Cが凍結状態になるまで予め冷却する。その後、冷却パウチ20を冷却衣服1に取り付ける。着用者は、インナーウェア4を着用し、更にインナーウェア4の上に衣服本体2を重ねて着用する。その後、吸入ファン10を作動させて、衣服本体2の外部から内側へ空気Aを吸入する。これにより、冷却パウチ20の中空空間21で空気Aの冷却が開始される。冷却パウチ20の放出孔23から放出された冷風は、インナーウェア4を通過した後に着用者の身体表面に供給される。
【0037】
なお、吸入ファン10の作動開始直後は、冷却パウチ20に封入されている冷却用媒体Cは氷の状態である。このため、氷が水に相変化するときの潜熱分を空気Aの冷却に使用できる。また、冷却パウチ20の使用経過に伴って氷の一部が解凍されて水になった段階で送水ポンプ8を使用できる。必要に応じて送水ポンプ8を作動させると、冷却パウチ20に封入されている水が水供給管7に送り出されて蒸発部6に供給される。これにより、冷却パウチ20に由来の水分を蒸発部6から衣服本体2の内側へ蒸発させることができる。
【0038】
7.作用効果
次に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0039】
実施形態1の冷却衣服1において、吸入ファン10によって衣服本体2の外部から内側へ吸入された空気Aは、冷却パウチ20の導入孔22を通じて中空空間21に導入され、中空空間21で冷却された後に、放出孔23を通じて衣服本体2の内側へ放出される。このとき、衣服本体2の外部の空気を中空空間21のような閉鎖的な空間に導入すれば、当該空気Aを冷却パウチ20との間での熱交換によって効果的に冷風化できる。そして、冷風化した空気Aを冷却パウチ20から放出して着用者の身体表面に供給することで、当該空気Aと身体表面との間での熱交換によって、着用者の体感温度を下げることができる。
【0040】
したがって、実施形態1によれば、着用時の快適性に優れた冷却衣服1を提供することが可能になる。
【0041】
実施形態1の冷却衣服1によれば、冷却パウチ20の中空空間21で生じた結露水Wを繊維構造体30で吸収して衣服本体2の内側で蒸発させることで、本来は不要な結露水Wを有効利用して水分蒸発による放熱量を増加させることができる。とりわけ、冷却パウチ20の中空空間21で生じた結露水Wを繊維構造体30からインナーウェア4まで移動させてインナーウェア4で水分を蒸発させることができる。また、結露水Wの処理が不要になる。
【0042】
実施形態1の冷却衣服1によれば、冷却パウチ20に冷却用媒体Cとして封入されている水を、水供給部9によって蒸発部6の中空糸膜に供給することができる。このため、冷却用媒体Cである水を利用して蒸発部6から水分を強制的に投入することによって、水分蒸発による放熱量を増加させることができる。また、冷却パウチ20が空気Aを冷却する機能と蒸発部6への水の供給源としての機能を兼務しているため、蒸発部6への水の供給源となる専用の水パウチを要しない。これにより、専用の水パウチを省略でき、その重量分だけ着用者が受ける荷重負荷を低減できる。
【0043】
実施形態1によれば、必要に応じて冷却パウチ20を円筒状から展開状態のシート状パウチ20Aに展開させて冷却衣服1を収納することが可能になる。或いは、冷却パウチ20を冷却衣服1から取り外してシート状パウチ20Aとして保管できる。
【0044】
実施形態1の冷却衣服1によれば、冷却パウチ20の中空空間21で冷却された空気が着用者の腰回り領域から首回り領域に向けて流れる上向流を形成させることができる。これにより、冷風化した空気Aと着用者の身体表面との間での熱交換を促進することができる。
【0045】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、上述の実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0046】
(実施形態2)
実施形態2は、蒸発部6への水の供給源に冷却パウチ20を使用しないという点で実施形態1と相違している。その代わりに、図8に示されるように、専用の水パウチ41を蒸発部6への水の供給源として使用する。水パウチ41は、送水ポンプ42に接続されている。
【0047】
送水ポンプ42は、水パウチ41に封入されている水を水供給管7に送り出す機能を有する電動ポンプであり、実施形態1で使用する送水ポンプ8と同様の構造を有する。送水ポンプ42は、水パウチ41とともに携帯ポーチ40に内蔵されている。このため、送水ポンプ42は、着用者の腰回りに携帯ポーチ40が巻かれた状態で使用される。送水ポンプ42から水供給管7に送り出された水は、蒸発部6の中空糸膜に供給されて蒸発する。これにより、衣服本体2の内側に水分が投入される。
【0048】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0049】
実施形態2によれば、冷却パウチ20を空気Aの冷却のみで使用し、冷却用媒体Cを衣服本体2の内側で蒸発させるものではないため、冷却用媒体Cとして、水のみならず、水を含有する液体、水以外の成分からなる溶剤などを適宜に使用することが可能になる。
【0050】
その他、実施形態1の場合と同様に作用効果を奏する。
【0051】
本発明は、上述の典型的な形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0052】
上述の形態では、冷却パウチ20に結露水Wを吸収して蒸発させる繊維構造体30を設ける場合について例示したが、必要に応じて繊維構造体30を省略しても良い。
【0053】
上述の形態では、衣服本体2に加えてインナーウェア4を使用する場合について例示したが、必要に応じてインナーウェア4を省略しても良い。
【0054】
上述の形態では、衣服本体2の内面3のうちの腰回り領域3aに沿って冷却パウチ20を配置する場合について例示したが、冷却パウチ20の配置位置や方向はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に可能である。その場合、冷却パウチ20における放出孔23の向きは、冷却パウチ20の配置位置や方向に応じて設定されるのが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1…冷却衣服、 2…衣服本体、 3…内面、 3a…腰回り領域、 4…インナーウェア(インナー素材)、 5…内面、 6…蒸発部、 9…水供給部、 10…吸入ファン、 20…冷却パウチ、 20A…シート状パウチ、 21…中空空間、 22…導入孔、 23…放出孔、 30…繊維構造体、 A…空気、 C…冷却用媒体、 M…筒軸、 W…結露水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8