IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-制御装置 図1
  • 特開-制御装置 図2
  • 特開-制御装置 図3
  • 特開-制御装置 図4
  • 特開-制御装置 図5
  • 特開-制御装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164559
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20241120BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241120BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F02D13/02 G
F02D45/00 368S
F02D45/00 360A
F02D45/00 368F
F02D43/00 301K
F02D43/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080131
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 謙介
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AB02
3G092BA01
3G092BA04
3G092DA08
3G092DC01
3G092EA01
3G092EA03
3G092EA04
3G092EA11
3G092FA15
3G092HA01
3G092HC01
3G092HE08
3G384AA01
3G384BA04
3G384BA09
3G384EB01
3G384EB03
3G384EB04
3G384EB08
3G384FA01
3G384FA29
3G384FA37
(57)【要約】
【課題】失火の発生を抑制する。
【解決手段】制御装置は、1つまたは複数のプロセッサと、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、前記プロセッサは、エンジンの吸気バルブおよび排気バルブの少なくとも一方のバルブタイミングを、最遅角側の最遅角位相から最進角側の最進角位相までの範囲内の目標位相に近づくようにフィードバック制御する第1モードと、前記バルブタイミングを、前記最遅角位相と前記最進角位相との間の中間位相に固定する第2モードとを切り替えて実行することと、前記第2モードの解除条件が満たされた場合に、前記第2モードを解除するよりも前に、スロットルバルブの開度を、前記第2モードの解除条件が満たされていない場合と比べて増加させる開度増加処理を行うことと、を含む処理を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
エンジンの吸気バルブおよび排気バルブの少なくとも一方のバルブタイミングを、最遅角側の最遅角位相から最進角側の最進角位相までの範囲内の目標位相に近づくようにフィードバック制御する第1モードと、前記バルブタイミングを、前記最遅角位相と前記最進角位相との間の中間位相に固定する第2モードとを切り替えて実行することと、
前記第2モードの解除条件が満たされた場合に、前記第2モードを解除するよりも前に、スロットルバルブの開度を、前記第2モードの解除条件が満たされていない場合と比べて増加させる開度増加処理を行うことと、
を含む処理を実行する、
制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第2モードを解除した場合における前記バルブタイミングの前記目標位相に対するオーバーシュート量に関する情報に基づいて、前記開度増加処理における前記スロットルバルブの開度の増加量を変化させることを含む処理を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記オーバーシュート量に関する情報に加えて、前記エンジンの温度に関する情報に基づいて、前記増加量を変化させることを含む処理を実行する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記オーバーシュート量に関する情報に加えて、前記エンジンの燃焼圧に関する情報に基づいて、前記増加量を変化させることを含む処理を実行する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記オーバーシュート量に関する情報に加えて、前記エンジンの空燃比に関する情報に基づいて、前記増加量を変化させることを含む処理を実行する、
請求項2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、エンジンの吸気バルブ等のバルブのバルブタイミングを可変とするためのバルブタイミング可変機構が用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、バルブタイミング可変機構を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-190295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルブタイミング可変機構によれば、吸気バルブの開弁期間と排気バルブの開弁期間を部分的に重複させ、排気ポートを介して排気の一部を気筒内に戻す内部EGRを行うことができる。また、バルブタイミング可変機構によれば、バルブタイミングを最遅角側の最遅角位相から最進角側の最進角位相までの範囲内の目標位相に近づくようにフィードバック制御する第1モードと、バルブタイミングを最遅角位相と最進角位相との間の中間位相に固定する第2モードとを切り替えて実行することができる。ここで、第2モードを解除して第1モードを開始する際に、バルブタイミングが急激に変化することに起因して、内部EGRにより気筒内に戻される排気の量が急激に増加し、気筒内に吸入される空気の量が減少し、失火が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、失火の発生を抑制することが可能な制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態に係る制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
エンジンの吸気バルブおよび排気バルブの少なくとも一方のバルブタイミングを、最遅角側の最遅角位相から最進角側の最進角位相までの範囲内の目標位相に近づくようにフィードバック制御する第1モードと、前記バルブタイミングを、前記最遅角位相と前記最進角位相との間の中間位相に固定する第2モードとを切り替えて実行することと、
前記第2モードの解除条件が満たされた場合に、前記第2モードを解除するよりも前に、スロットルバルブの開度を、前記第2モードの解除条件が満たされていない場合と比べて増加させる開度増加処理を行うことと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、失火の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両に搭載されるエンジンの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るバルブタイミング可変機構の概略構成を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る吸気バルブおよび排気バルブのバルブタイミングの一例を示すグラフである。
図5図5は、オーバーシュートが発生する場合における吸気バルブのバルブタイミングの進角量の推移の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る制御装置が行う第2モードの解除に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
<車両の構成>
図1図4を参照して、本発明の実施形態に係る車両1の構成について説明する。
【0011】
図1は、車両1に搭載されるエンジン100の概略構成を示す模式図である。図1に示されるように、車両1は、エンジン100と、吸気流路200と、排気流路300と、バルブタイミング可変機構400と、空気量センサ501と、温度センサ502と、燃焼圧センサ503と、空燃比センサ504と、制御装置600とを備える。
【0012】
エンジン100は、ガソリンエンジンであり、火花点火式の内燃機関である。エンジン100は、複数の気筒101を有する。ただし、図1では、理解を容易にするために、複数の気筒101のうちの1つの気筒101のみが示されている。気筒101の内部には、ピストン102が摺動可能に設けられており、ピストン102によって燃焼室103が形成されている。気筒101には、燃料噴射弁104および点火プラグ105が、燃焼室103に向けて設けられている。燃料噴射弁104により噴射される燃料によって、空気および燃料を含む混合気が燃焼室103内に形成され、点火プラグ105の点火によって、当該混合気が燃焼する。それにより、ピストン102が直線往復運動を行い、ピストン102と接続されているクランクシャフトへ動力が伝達される。
【0013】
エンジン100では、燃焼室103に吸引される空気が流通する吸気ポート106が気筒101に対して形成されている。吸気ポート106には、吸気流路200が接続されている。ゆえに、燃焼室103は、吸気ポート106を介して吸気流路200と連通している。吸気流路200は、車両1の外部から外気が取り込まれる吸気口と連通している。
【0014】
吸気流路200には、各気筒101に向けて分岐するインテークマニホールドが設けられる。吸気流路200のうちのインテークマニホールドより上流側に、スロットルバルブ201が設けられる。スロットルバルブ201は、吸気流路200を通って、エンジン100に送られ、エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量を調整する。エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量は、スロットルバルブ201の開度に応じて変化する。具体的には、スロットルバルブ201の開度が大きいほど、エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量が多くなる。
【0015】
気筒101には、吸気ポート106を開閉するための機構として、吸気バルブ107と、バルブスプリング108と、カムシャフト109とが設けられている。
【0016】
吸気バルブ107は、吸気ポート106を開閉するバルブである。吸気バルブ107の燃焼室103側の端部107aは、拡径しており、燃焼室103内に位置している。吸気バルブ107の燃焼室103側と逆側の端部107bには、吸気バルブ107の軸より大径のバルブスプリングリテーナが固定されており、端部107bは、燃焼室103外に位置している。
【0017】
バルブスプリング108は、吸気バルブ107を閉じる方向に付勢する。バルブスプリング108は、吸気バルブ107に巻き回されている圧縮バネである。バルブスプリング108は、気筒101の吸気バルブ107における燃焼室103側と、端部107bのバルブスプリングリテーナ間で挟持されており、当該端部107bを気筒101の外側に向けて付勢する。吸気バルブ107がバルブスプリング108の付勢力により気筒101の外側に向けて押し上げられることによって、図1に示されるように、吸気ポート106における燃焼室103側の開口106aが吸気バルブ107の燃焼室103側の端部107aにより塞がれる。これにより、吸気ポート106と燃焼室103との間での流体の流通が遮断される状態となる。この状態が、吸気バルブ107が閉弁した状態である。
【0018】
カムシャフト109には、吸気バルブ107をバルブスプリング108の付勢力に抗して押圧するカム109aが固定されている。カムシャフト109が回転し、吸気バルブ107がカム109aにより気筒101の内側に向けて押し下げられることによって、吸気ポート106における燃焼室103側の開口106aと、吸気バルブ107の燃焼室103側の端部107aとの間に隙間ができる。これにより、吸気ポート106と燃焼室103との間で流体が流通可能な状態となる。この状態が、吸気バルブ107が開弁した状態である。
【0019】
上記のように、吸気バルブ107が開弁される場合、車両1の外部から取り込まれた外気が、図1中で矢印A1により示されるように、吸気流路200および吸気ポート106を介して、気筒101内の燃焼室103に供給される。
【0020】
また、エンジン100では、燃焼室103から排出される排気が流通する排気ポート110が気筒101に対して形成されている。排気ポート110には、排気流路300が接続されている。ゆえに、燃焼室103は、排気ポート110を介して排気流路300と連通している。排気流路300は、車両1の外部へ排気が排出される排気口と連通している。
【0021】
気筒101には、排気ポート110を開閉するための機構として、排気バルブ111と、バルブスプリング112と、カムシャフト113とが設けられている。
【0022】
排気バルブ111は、排気ポート110を開閉するバルブである。排気バルブ111の燃焼室103側の端部111aは、拡径しており、燃焼室103内に位置している。排気バルブ111の燃焼室103側と逆側の端部111bには、排気バルブ111の軸より大径のバルブスプリングリテーナが固定されており、端部111bは、燃焼室103外に位置している。
【0023】
バルブスプリング112は、排気バルブ111を閉じる方向に付勢する。バルブスプリング112は、排気バルブ111に巻き回されている圧縮バネである。バルブスプリング112は、気筒101の排気バルブ111における燃焼室103側と、端部111bのバルブスプリングリテーナ間で挟持されており、当該端部111bを気筒101の外側に向けて付勢する。排気バルブ111がバルブスプリング112の付勢力により気筒101の外側に向けて押し上げられることによって、図1に示されるように、排気ポート110における燃焼室103側の開口110aが排気バルブ111の燃焼室103側の端部111aにより塞がれる。これにより、排気ポート110と燃焼室103との間での流体の流通が遮断される状態となる。この状態が、排気バルブ111が閉弁した状態である。
【0024】
カムシャフト113には、排気バルブ111をバルブスプリング112の付勢力に抗して押圧するカム113aが固定されている。カムシャフト113が回転し、排気バルブ111がカム113aにより気筒101の内側に向けて押し下げられることによって、排気ポート110における燃焼室103側の開口110aと、排気バルブ111の燃焼室103側の端部111aとの間に隙間ができる。これにより、排気ポート110と燃焼室103との間で流体が流通可能な状態となる。この状態が、排気バルブ111が開弁した状態である。
【0025】
上記のように、排気バルブ111が開弁される場合、燃焼室103で生じた排気が、図1中で矢印A2により示されるように、排気ポート110および排気流路300を介して、排出される。
【0026】
バルブタイミング可変機構400は、吸気バルブ107のバルブタイミングを可変とするための機構である。バルブタイミングは、バルブの開閉タイミングを意味する。ただし、後述するように、バルブタイミング可変機構400は、排気バルブ111のバルブタイミングを可変とするものであってもよく、吸気バルブ107および排気バルブ111の両方のバルブタイミングを可変とするものであってもよい。つまり、バルブタイミング可変機構400は、吸気バルブ107および排気バルブ111の少なくとも一方のバルブタイミングを可変とするものであればよい。
【0027】
図2は、バルブタイミング可変機構400の概略構成を示す模式図である。図2に示されるように、バルブタイミング可変機構400は、ロータ401と、ハウジング402とを備える。ロータ401は、吸気バルブ107のカムシャフト109にボルト締結等によって固定されている。ロータ401は、カムシャフト109と一体に回転可能となっている。ハウジング402は、略円筒形状を有する。ハウジング402は、ロータ401を囲むように、カムシャフト109と同軸上に設けられる。クランクシャフトから伝達される動力は、ハウジング402に伝達される。
【0028】
ハウジング402の内周面には、径方向内側に突出する複数の突部402aが周方向に間隔を空けて設けられている。図2の例では、3つの突部402aが周方向に等間隔に設けられている。ロータ401の外周面には、径方向外側に突出する複数のベーン401aが周方向に間隔を空けて設けられている。各ベーン401aは、周方向に隣り合う2つの突部402aの間に位置する。図2の例では、3つのベーン401aが周方向に等間隔に設けられている。ただし、突部402aおよびベーン401aの形状、数および配置は、図2の例に限定されない。
【0029】
ハウジング402内における周方向に隣り合う2つの突部402aの間に形成される空間が、ベーン401aによって進角側油圧室403と遅角側油圧室404とに区画されている。図2の例では、進角側油圧室403に作動油を供給して遅角側油圧室404から作動油を排出すると、ロータ401がハウジング402に対して相対的に時計回りに回動する。それにより、カムシャフト109の位相がクランクシャフトの位相に対して相対的に進角側に変化し、吸気バルブ107のバルブタイミングが進角側に変化する。一方、遅角側油圧室404に作動油を供給して進角側油圧室403から作動油を排出すると、ロータ401がハウジング402に対して相対的に反時計回りに回動する。それにより、カムシャフト109の位相がクランクシャフトの位相に対して相対的に遅角側に変化し、吸気バルブ107のバルブタイミングが遅角側に変化する。
【0030】
バルブタイミング可変機構400には、吸気バルブ107のバルブタイミングを最遅角位相と最進角位相との間の中間位相に固定するためのロック機構405が設けられている。最遅角位相は、吸気バルブ107が取り得るバルブタイミングの範囲内で最遅角側の位相である。最進角位相は、吸気バルブ107が取り得るバルブタイミングの範囲内で最進角側の位相である。
【0031】
ロック機構405は、ロックピン405aと、ピン油圧室405bとを含む。ロックピン405aの状態は、ロックピン405aがロータ401およびハウジング402の両方に挿通されたロック状態と、ロックピン405aがロータ401およびハウジング402の少なくとも一方には挿通されていない解除状態とに切り替え可能となっている。
【0032】
ロック状態では、ロータ401がハウジング402に対して相対的に回動することができなくなる。ロック状態では、吸気バルブ107のバルブタイミングが中間位相に固定される。一方、解除状態では、ロータ401がハウジング402に対して相対的に回動することができる。解除状態では、吸気バルブ107のバルブタイミングが最遅角位相から最進角位相までの範囲内で調整可能となる。
【0033】
ロックピン405aは、ピン油圧室405bの油圧に応じて動作する。例えば、ピン油圧室405bの油圧が閾値よりも低い場合、ロックピン405aの状態がロック状態となり、ピン油圧室405bの油圧が閾値よりも高い場合、ロックピン405aの状態が解除状態となる。
【0034】
以下、図1に戻り、車両1の構成の説明を続ける。
【0035】
空気量センサ501は、エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量を検出する。例えば、空気量センサ501は、吸気流路200を流れる空気の流量を、エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量として検出する。
【0036】
温度センサ502は、エンジン100の温度を検出する。例えば、温度センサ502は、エンジン100の冷却水の水温、または、エンジン100の作動油の油温を、エンジン100の温度として検出する。
【0037】
燃焼圧センサ503は、エンジン100の燃焼圧を検出する。例えば、燃焼圧センサ503は、燃焼室103における燃焼圧センサ503の設置位置の圧力を、エンジン100の燃焼圧として検出する。
【0038】
空燃比センサ504は、エンジン100の空燃比を検出する。例えば、空燃比センサ504は、排気流路300を流れる排気中の酸素濃度に基づいて、エンジン100の空燃比を検出する。
【0039】
制御装置600は、1つまたは複数のプロセッサ600aと、プロセッサ600aに接続される1つまたは複数のメモリ600bと、を有する。プロセッサ600aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ600bは、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0040】
制御装置600は、スロットルバルブ201、バルブタイミング可変機構400、空気量センサ501、温度センサ502、燃焼圧センサ503および空燃比センサ504等の各装置と通信を行う。制御装置600と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0041】
図3は、制御装置600の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、図3に示されるように、制御装置600は、取得部601と、制御部602とを有する。
【0042】
なお、取得部601および制御部602により行われる以下で説明する処理を含む各種処理は、プロセッサ600aによって実行され得る。詳細には、メモリ600bに記憶されているプログラムをプロセッサ600aが実行することにより、各種処理が実行される。
【0043】
なお、本実施形態に係る制御装置600の機能は複数の装置に分割されてもよく、複数の機能が1つの装置によって実現されてもよい。制御装置600の機能が複数の装置に分割される場合、当該複数の装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0044】
取得部601は、制御部602が行う処理において用いられる各種情報を取得し、制御部602へ出力する。例えば、取得部601は、空気量センサ501、温度センサ502、燃焼圧センサ503および空燃比センサ504から情報を取得する。
【0045】
制御部602は、各装置に対して制御指令を出力することによって、各装置の動作を制御する。
【0046】
例えば、制御部602は、スロットルバルブ201の動作を制御する。具体的には、制御部602は、スロットルバルブ201の開度を制御することによって、エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量を制御することができる。
【0047】
また、例えば、制御部602は、バルブタイミング可変機構400の動作を制御する。具体的には、制御部602は、不図示の電磁弁の動作を制御することによって、バルブタイミング可変機構400における各油圧室の油圧を制御する。それにより、制御部602は、吸気バルブ107のバルブタイミングを制御することができる。
【0048】
図4は、吸気バルブ107および排気バルブ111のバルブタイミングの一例を示すグラフである。図4では、横軸をクランク角とし、縦軸を各バルブの開度とし、吸気バルブ107の開度の推移を示すライン701、および、排気バルブ111の開度の推移を示すライン702が示されている。図4に示されるように、排気バルブ111は、吸気バルブ107よりも先に開弁し、吸気バルブ107よりも先に閉弁する。
【0049】
ロックピン405aの状態が解除状態になっている場合、上述したように、吸気バルブ107のバルブタイミングは、最遅角位相から最進角位相までの範囲内で調整可能となっている。図4の例では、ライン701aは、吸気バルブ107のバルブタイミングが最遅角位相となっている場合における吸気バルブ107の開度の推移に相当する。ライン701bは、吸気バルブ107のバルブタイミングが最進角位相となっている場合における吸気バルブ107の開度の推移に相当する。
【0050】
ここで、吸気バルブ107のバルブタイミングを進角側に調整すると、吸気バルブ107の開度の推移を示すラインはライン701bに近づく。それにより、吸気バルブ107の開弁期間と排気バルブ111の開弁期間とが重複する期間が長くなり、内部EGRにより排気ポート110を介して気筒101内に戻される排気の量が多くなる。それにより、車両1の外部に排出される排気中のNOxの量を低減しやすくなる。
【0051】
一方、ロックピン405aの状態がロック状態になっている場合、上述したように、吸気バルブ107のバルブタイミングは、中間位相に固定される。図4の例では、ライン701cは、吸気バルブ107のバルブタイミングが中間位相となっている場合における吸気バルブ107の開度の推移に相当する。
【0052】
制御部602は、吸気バルブ107のバルブタイミングを最遅角位相から最進角位相までの範囲内の目標位相に近づくようにフィードバック制御する第1モードと、吸気バルブ107のバルブタイミングを最遅角位相と最進角位相との間の中間位相に固定する第2モードとを切り替えて実行することができる。
【0053】
第1モードにおいて、制御部602は、ピン油圧室405bの油圧を制御することによって、ロックピン405aの状態を解除状態にし、吸気バルブ107のバルブタイミングを最遅角位相から最進角位相までの範囲内で調整可能にする。また、第1モードにおいて、制御部602は、各種情報に基づいて、目標位相を決定する。そして、制御部602は、吸気バルブ107のバルブタイミングの現在の位相と目標位相との差に応じた調整量で、吸気バルブ107のバルブタイミングを目標位相に近づくように調整する。
【0054】
制御部602は、例えば、エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量、および、エンジン100の回転数等に基づいて、目標位相を決定する。制御部602は、例えば、エンジン100の出力、エンジン100の燃焼圧、および、車両1の外部に排出される排気中のNOxの量等の各種値が最適化されるように、目標位相を決定する。
【0055】
ここで、吸気バルブ107のバルブタイミングを目標位相に制御することが困難となる状況が存在する。例えば、エンジン100の始動時には、バルブタイミング可変機構400における各油圧室に付与できる油圧が制限され、吸気バルブ107のバルブタイミングを目標位相に制御することが困難となる。また、例えば、外気温が過度に低い場合、作動油の粘度が過度に高くなり、バルブタイミング可変機構400における各油圧室に付与できる油圧が制限され、吸気バルブ107のバルブタイミングを目標位相に制御することが困難となる。
【0056】
そこで、制御部602は、吸気バルブ107のバルブタイミングを目標位相に制御することが困難となる上記の状況下において、第2モードを実行する。第2モードにおいて、制御部602は、ピン油圧室405bの油圧を制御することによって、ロックピン405aの状態をロック状態にし、吸気バルブ107のバルブタイミングを中間位相に固定する。それにより、吸気バルブ107のバルブタイミングが意図しない位相になることに起因してエンジン100の出力、エンジン100の燃焼圧、および、車両1の外部に排出される排気中のNOxの量等の各種値が悪化することを抑制できる。
【0057】
<制御装置の動作>
図5および図6を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置600の動作について説明する。
【0058】
図5は、オーバーシュートが発生する場合における吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量の推移の一例を示す図である。オーバーシュートは、後述するように、第1モードにおいて吸気バルブ107のバルブタイミングが目標位相を超える現象である。図5では、吸気バルブ107のバルブタイミングが最遅角位相になっている場合に対する現在の吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量の推移が示されている。
【0059】
図5の例では、時点T1より前において、第2モードが実行され、吸気バルブ107のバルブタイミングが中間位相に固定されている。中間位相と対応する進角量は、進角量B1である。ゆえに、時点T1より前において、吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量は、進角量B1となっている。
【0060】
そして、時点T1において、第2モードが解除されて第1モードが開始する。図5の例では、第1モードにおける目標位相は、中間位相に対して進角側の位相となっている。目標位相と対応する進角量は、進角量B1よりも大きい進角量B2である。ゆえに、時点T1以降において、吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量は、進角量B1から進角量B2に向けて上昇する。
【0061】
ここで、図5の例では、進角量B1と進角量B2との差が大きく、時点T1以降において、吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量が急激に上昇する。その結果、吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量は、時点T2において進角量B2を超え、その後、さらに上昇する。このように、図5の例では、吸気バルブ107のバルブタイミングが目標位相を超えるオーバーシュートが発生する。
【0062】
そして、吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量は、吸気バルブ107のバルブタイミングの目標位相に対するオーバーシュート量ΔBだけ進角量B2から上昇した後に、低下する。その後、時点T3において、吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量は進角量B2まで戻る。時点T3以降において、吸気バルブ107のバルブタイミングの進角量は進角量B2に維持される。
【0063】
図5の例のように、第2モードを解除して第1モードを開始する際に、吸気バルブ107のバルブタイミングのオーバーシュートが発生し、吸気バルブ107のバルブタイミングが急激に変化する場合がある。その場合、内部EGRにより気筒101内に戻される排気の量が急激に増加し、気筒101内に吸入される空気の量が減少し、失火が発生するおそれがある。本実施形態では、第2モードの解除に関する処理に工夫を施すことによって、失火の発生を抑制することが実現される。以下、本実施形態における第2モードの解除に関する処理について説明する。
【0064】
図6は、制御装置600が行う第2モードの解除に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示される処理フローは、第2モードの実行中に実行される。
【0065】
図6に示される処理フローが開始されると、まず、ステップS101において、制御部602は、第2モードの解除条件が満たされたか否かを判定する。
【0066】
後述するように、第2モードの解除条件が満たされる場合に限り、第2モードが解除される。つまり、第2モードの解除条件は、第2モードの解除を許可する条件である。
【0067】
上述したように、制御部602は、例えば、エンジン100の始動時に、第2モードを実行する。この場合、第2モードの解除条件として、例えば、エンジン100の暖機が完了した、との条件が用いられる。例えば、制御部602は、エンジン100の温度が閾値を超えた場合に、エンジン100の暖機が完了したと判断できる。
【0068】
また、上述したように、制御部602は、例えば、外気温が過度に低い場合に、第2モードを実行する。この場合、第2モードの解除条件として、例えば、外気温が過度に低い状況が解消された、との条件が用いられる。例えば、制御部602は、外気温が閾値を超えた場合に、外気温が過度に低い状況が解消されたと判断できる。
【0069】
第2モードの解除条件が満たされていないと判定された場合(ステップS101でNOの場合)、ステップS101が繰り返される。一方、第2モードの解除条件が満たされたと判定された場合(ステップS101でYESの場合)、ステップS102に進む。
【0070】
ステップS101でYESと判定された場合、ステップS102において、制御部602は、開度増加処理を行う。
【0071】
開度増加処理は、スロットルバルブ201の開度を、第2モードの解除条件が満たされていない場合と比べて増加させる処理である。制御部602は、開度増加処理において、スロットルバルブ201の開度を増加させることによって、エンジン100の気筒101内に吸入される空気の流量を増加させることができる。このように、第2モードを解除するよりも前に、開度増加処理を行うことによって、気筒101内に吸入される空気の流量を事前に増加させることができる。ゆえに、第2モードの解除後に、吸気バルブ107のバルブタイミングのオーバーシュートに伴い内部EGRにより気筒101内に戻される排気の量が急激に増加した場合であっても、気筒101内で燃焼に必要な空気を確保できる。よって、失火の発生を抑制することができる。
【0072】
なお、制御部602は、開度増加処理において、スロットルバルブ201の開度を急激には増加させず、時間経過に伴って徐々に増加させることが好ましい。それにより、気筒101内に吸入される空気の量の急激な変化に起因するトルクショックの発生を抑制することができる。
【0073】
また、制御部602は、第2モードを解除した場合における吸気バルブ107のバルブタイミングの目標位相に対するオーバーシュート量ΔBに関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることが好ましい。オーバーシュート量ΔBに関する情報は、オーバーシュート量ΔB自体を示す情報であってもよく、オーバーシュート量ΔBに変換可能な情報であってもよく、オーバーシュート量ΔBを推定するための情報であってもよい。
【0074】
例えば、制御部602は、吸気バルブ107のバルブタイミングの現在の位相と、第1モードの目標位相とに基づいて、オーバーシュート量ΔBを推定する。制御部602は、例えば、第1モードの目標位相が吸気バルブ107のバルブタイミングの現在の位相に対して進角側の位相である場合において、吸気バルブ107のバルブタイミングの現在の位相と、第1モードの目標位相との差が大きいほど、大きな値をオーバーシュート量ΔBとして推定できる。
【0075】
そして、制御部602は、例えば、オーバーシュート量ΔBが大きいほど、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を大きくする。ここで、オーバーシュート量ΔBが大きいほど、エンジン100における失火の発生可能性が高くなると想定される。ゆえに、上記のように、オーバーシュート量ΔBに関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることによって、失火の発生をより効果的に抑制することができる。
【0076】
なお、制御部602は、オーバーシュート量ΔBの推定を行わずに、吸気バルブ107のバルブタイミングの現在の位相と、第1モードの目標位相との差に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させてもよい。この場合、吸気バルブ107のバルブタイミングの現在の位相と、第1モードの目標位相との差を示す情報が、オーバーシュート量ΔBに関する情報に相当する。
【0077】
ここで、失火の発生をさらに効果的に抑制する観点では、制御部602は、オーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて、他の情報をさらに用いて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることが好ましい。
【0078】
例えば、制御部602は、オーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて、エンジン100の温度に関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させてもよい。エンジン100の温度に関する情報は、上記の温度自体を示す情報であってもよく、上記の温度に変換可能な情報であってもよく、上記の温度を推定するための情報であってもよい。
【0079】
制御部602は、例えば、エンジン100の温度が低いほど、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を大きくする。ここで、オーバーシュート量ΔBが同一であっても、エンジン100の温度が低いほど、失火の発生可能性が高くなると想定される。ゆえに、上記のように、エンジン100の温度を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることによって、失火の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0080】
また、例えば、制御部602は、オーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて、エンジン100の燃焼圧に関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させてもよい。エンジン100の燃焼圧に関する情報は、上記の燃焼圧自体を示す情報であってもよく、上記の燃焼圧に変換可能な情報であってもよく、上記の燃焼圧を推定するための情報であってもよい。
【0081】
制御部602は、例えば、エンジン100の燃焼圧が低いほど、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を大きくする。ここで、オーバーシュート量ΔBが同一であっても、エンジン100の燃焼圧が低いほど、失火の発生可能性が高くなると想定される。ゆえに、上記のように、エンジン100の燃焼圧を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることによって、失火の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0082】
また、例えば、制御部602は、オーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて、エンジン100の空燃比に関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させてもよい。エンジン100の空燃比に関する情報は、上記の空燃比自体を示す情報であってもよく、上記の空燃比に変換可能な情報であってもよく、上記の空燃比を推定するための情報であってもよい。
【0083】
制御部602は、例えば、エンジン100の空燃比が下限値より低い、または、上限値より高い場合、エンジン100の空燃比が下限値以上かつ上限値以下の範囲内である場合と比べて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を大きくする。ここで、オーバーシュート量ΔBが同一であっても、エンジン100の空燃比が過度に低い場合、または、過度に高い場合には、失火の発生可能性が高くなると想定される。ゆえに、上記のように、エンジン100の空燃比を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることによって、失火の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0084】
上記では、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量の調整において、オーバーシュート量ΔBに関する情報に対して加味され得る情報として、エンジン100の温度に関する情報、エンジン100の燃焼圧に関する情報、および、エンジン100の空燃比に関する情報を挙げた。ただし、制御部602は、上記で挙げた情報以外の情報を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量の調整を行ってもよい。また、制御部602は、複数種類の情報を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量の調整を行ってもよい。例えば、制御部602は、上記で挙げた情報のうちの任意に選択した複数種類の情報を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量の調整を行ってもよい。
【0085】
ステップS102の次に、ステップS103において、制御部602は、第2モードを解除して第1モードを開始し、図6に示される処理フローは終了する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態では、制御部602は、第2モードの解除条件が満たされた場合に、第2モードを解除するよりも前に、スロットルバルブ201の開度を、第2モードの解除条件が満たされていない場合と比べて増加させる開度増加処理を行う。それにより、第2モードを解除するよりも前に、気筒101内に吸入される空気の流量を事前に増加させることができる。ゆえに、第2モードの解除後に、吸気バルブ107のバルブタイミングのオーバーシュートに伴い内部EGRにより気筒101内に戻される排気の量が急激に増加した場合であっても、気筒101内で燃焼に必要な空気を確保できる。よって、失火の発生を抑制することができる。
【0087】
なお、上記では、オーバーシュート量ΔBに関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量が変化する例を説明した。ただし、制御部602は、オーバーシュート量ΔBに関する情報を用いずに、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を決定してもよい。例えば、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量は、第2モードの解除後に気筒101内で燃焼に必要な空気を確保できる程度に大きい固定値であってもよい。また、例えば、制御部602は、オーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて用いられる情報として上記で挙げた情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を決定してもよい。
【0088】
また、上記では、バルブタイミング可変機構400が、吸気バルブ107のバルブタイミングを可変とするための機構である例を説明した。ただし、バルブタイミング可変機構400は、排気バルブ111のバルブタイミングを可変とするものであってもよい。その場合、制御部602は、排気バルブ111のバルブタイミングを、上記の例における吸気バルブ107のバルブタイミングと同様に制御する。また、バルブタイミング可変機構400は、吸気バルブ107および排気バルブ111の両方のバルブタイミングを可変とするものであってもよい。その場合、制御部602は、吸気バルブ107および排気バルブ111の両方のバルブタイミングを、上記の例における吸気バルブ107のバルブタイミングと同様に制御する。
【0089】
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置600の効果について説明する。
【0090】
本実施形態に係る制御装置600は、1つまたは複数のプロセッサ600aと、プロセッサ600aに接続される1つまたは複数のメモリ600bとを有する。そして、プロセッサ600aは、エンジン100の吸気バルブ107および排気バルブ111の少なくとも一方のバルブタイミングを、最遅角側の最遅角位相から最進角側の最進角位相までの範囲内の目標位相に近づくようにフィードバック制御する第1モードと、上記のバルブタイミングを、最遅角位相と最進角位相との間の中間位相に固定する第2モードとを切り替えて実行することと、第2モードの解除条件が満たされた場合に、第2モードを解除するよりも前に、スロットルバルブ201の開度を、第2モードの解除条件が満たされていない場合と比べて増加させる開度増加処理を行うことと、を含む処理を実行する。それにより、第2モードを解除するよりも前に、気筒101内に吸入される空気の流量を事前に増加させることができる。ゆえに、第2モードの解除後に、上記のバルブタイミングのオーバーシュートに伴い内部EGRにより気筒101内に戻される排気の量が急激に増加した場合であっても、気筒101内で燃焼に必要な空気を確保できる。よって、失火の発生を抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る制御装置600では、プロセッサ600aは、第2モードを解除した場合における上記のバルブタイミングの目標位相に対するオーバーシュート量ΔBに関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることを含む処理を実行することが好ましい。それにより、第2モードを解除した場合におけるオーバーシュート量ΔBを考慮して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を失火の発生可能性に応じて調整することができる。ゆえに、失火の発生をより効果的に抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る制御装置600では、プロセッサ600aは、上記のオーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて、エンジン100の温度に関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることを含む処理を実行することが好ましい。それにより、エンジン100の温度を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を失火の発生可能性に応じてより適切に調整することができる。ゆえに、失火の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る制御装置600では、プロセッサ600aは、上記のオーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて、エンジン100の燃焼圧に関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることを含む処理を実行することが好ましい。それにより、エンジン100の燃焼圧を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を失火の発生可能性に応じてより適切に調整することができる。ゆえに、失火の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る制御装置600では、プロセッサ600aは、上記のオーバーシュート量ΔBに関する情報に加えて、エンジン100の空燃比に関する情報に基づいて、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を変化させることを含む処理を実行することが好ましい。それにより、エンジン100の空燃比を加味して、開度増加処理におけるスロットルバルブ201の開度の増加量を失火の発生可能性に応じてより適切に調整することができる。ゆえに、失火の発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0095】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0096】
例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 車両
100 エンジン
101 気筒
102 ピストン
103 燃焼室
104 燃料噴射弁
105 点火プラグ
106 吸気ポート
107 吸気バルブ
108 バルブスプリング
109 カムシャフト
110 排気ポート
111 排気バルブ
112 バルブスプリング
113 カムシャフト
200 吸気流路
201 スロットルバルブ
300 排気流路
400 バルブタイミング可変機構
600 制御装置
600a プロセッサ
600b メモリ
601 取得部
602 制御部
ΔB オーバーシュート量
図1
図2
図3
図4
図5
図6