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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164560
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】装飾パネル
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20241120BHJP
   E04B 1/92 20060101ALI20241120BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241120BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H05K9/00 F
E04B1/92
B32B9/00 A
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080132
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】591196751
【氏名又は名称】旭コンステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 健
(72)【発明者】
【氏名】関根 健二
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
5E321
【Fターム(参考)】
2E001DH01
2E001FA03
2E001GA12
2E001GA22
2E001HA21
2E001HB01
2E001HB02
2E001HB03
2E001HB04
2E001HB05
4F100AA03C
4F100AB01B
4F100AB01D
4F100AK01A
4F100AK01E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA10A
4F100DB01
4F100DD01C
4F100JD08
4F100JL11
5E321AA44
5E321BB23
5E321GG05
(57)【要約】
【課題】電磁波遮蔽機能を発揮することができるとともに、コスト低減を図ることができる装飾パネルを提供すること。
【解決手段】装飾パネル1は、装飾パネル1は、板状の芯材10と一枚物の装飾シート20とを備える。芯材10は、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム板からなる。装飾シート20は、樹脂製の基材と、基材に積層された金属層とを含む。そして、芯材10の一方の主面11を被覆して意匠面1aを形成するともに芯材10の端面13を被覆する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾノトライト系ケイ酸カルシウム板からなる板状の芯材と、
樹脂製の基材と該基材に積層された金属層とを含み、上記芯材の一方の主面を被覆して意匠面を形成するともに上記芯材の端面を被覆する一枚物の装飾シートと、を備える、装飾パネル。
【請求項2】
樹脂製の基材と該基材に積層された金属層とを含み、上記芯材の他方の主面を被覆する裏面シートとを含む、請求項1に記載の装飾パネル。
【請求項3】
上記芯材の一方の主面は、所定の凹凸形状を有しており、
上記装飾シートは、上記凹凸形状を有する上記主面に密着した状態で被覆して上記意匠面を形成する、請求項1又は2に記載の装飾パネル。
【請求項4】
上記装飾シートは、上記基材の表側面に表出して上記意匠面を構成する表層と、上記基材の裏側面に積層された上記金属層と、上記金属層の裏側面に積層された接着層とを有し、上記接着層を介して上記芯材の上記一方の主面及び上記端面に密着している、請求項1又は2に記載の装飾パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の急速な進展により、混信の発生、通信効率の低下、無線通信の傍受による機密情報の漏洩や電子機器の動作異常などの問題が生じやすくなっている。このような問題に鑑みて、部屋を構成する建材に電磁波遮蔽機能を付与することにより、室外から室内に電磁波が侵入したり、室内から室外へ電磁波が漏洩したりすることを防止することが試みられている。例えば、特許文献1には、石膏ボードの裏側面又は表側面をアルミ箔で被覆した電磁波遮蔽用石膏ボードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-336796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、装飾パネルや壁紙を別途設ける必要があり、コストが増加する。また、特許文献1に開示の構成では、石膏ボードの端面である小口はアルミ箔で被覆されていないため、小口から電磁波が侵入して電磁波遮蔽機能が低下するおそれがある。また、特許文献1に開示の構成では、アルミ箔をクラフト紙に貼り付けてアルミ箔を補強して施工時の傷や破れを防止しているが、通常アルミ箔はクラフト紙よりも延性が低いため、石膏ボードが過度に膨張した場合、クラフト紙はこれに追従して延びることができたとしてもアルミ箔はこれに追従して延びることが困難であることから、アルミ箔の破断を招いて電磁波遮蔽機能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、電磁波遮蔽機能を発揮することができるとともに、コスト低減を図ることができる装飾パネルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム板からなる板状の芯材と、
樹脂製の基材と該基材に積層された金属層とを含み、上記芯材の一方の主面を被覆して意匠面を形成するともに上記芯材の端面を被覆する一枚物の装飾シートと、を備える、装飾パネルにある。
【発明の効果】
【0007】
上記一態様では、壁の装飾を行うための装飾パネルの主面に金属層を有する装飾シートが被覆されていることにより電磁波遮蔽機能を発揮することができる。さらに、意匠面を形成する芯材の一方の主面とともに芯材の端面にも金属層を有する装飾シートが被覆されていることにより、当該端面においても電磁波遮蔽機能を発揮することができる。そのため、電磁波遮蔽機能を有する部材を別途用いることなく、壁の装飾を行うことができ、コスト低減を図ることができる。また、装飾シートは一枚物であって、切れ目のない構成となっているため、十分な電磁波遮蔽機能を奏することができる。また、芯材はゾノトライト系ケイ酸カルシウム板からなることから寸法安定性が極めて高い。そのため、芯材の寸法変化は極めて小さく、それゆえ芯材として石膏ボードを用いた場合に比べて金属層の破断は生じにくいことから、電磁波遮蔽機能の低下を防止することができる。
【0008】
以上のように、本発明によれば、電磁波遮蔽機能を発揮することができるとともに、コスト低減を図ることができる装飾パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における、装飾パネルの正面図。
図2図1における、装飾パネルのII-II線位置断面図。
図3】実施例1における、装飾シートの断面拡大図。
図4】実施例1における、裏面シートの断面拡大図。
図5】実施例1における、装飾パネルの製造方法を説明するための模式図。
図6】実施例1における、装飾パネルの製造方法を説明するための他の模式図。
図7】実施例1における、他の装飾パネルの断面拡大図。
図8】実施例1における、装飾パネルの組付方法を説明するための模式図。
図9】確認試験1における、試料1-1、試料1-2及び試料1-3及び比較試料の試験結果と外観を示す図。
図10】確認試験1における、試料2-1、試料2-2及び試料2-3の試験結果と外観を示す図。
図11】確認試験1における、試料3-1、試料3-2及び試料3-3の試験結果と外観を示す図。
図12】確認試験1における、試料4-1、試料4-2及び試料4-3の試験結果と外観を示す図。
図13】確認試験1における、試料5-1、試料5-2及び試料5-3の試験結果と外観を示す図。
図14】確認試験1における、試料6の試験結果と外観を示す図。
図15】確認試験1における、試料7の試験結果と外観を示す図。
図16】確認試験1における、比較試料の試験結果と外観を示す図。
図17】確認試験2の試験構成を示す概念図。
図18】確認試験2における試験体1、2、9の構成を示す概念図。
図19】確認試験2における試験体9における試験態様を示す概念図。
図20】確認試験2における試験体1、2における試験態様を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
樹脂製の基材と該基材に積層された金属層とを含み、上記芯材の他方の主面を被覆する裏面シートとを含むことが好ましい。この場合、電磁波遮蔽機能を向上することができる。
【0011】
上記芯材の一方の主面は、所定の凹凸形状を有しており、上記装飾シートは、上記凹凸形状を有する上記主面に密着した状態で被覆して上記意匠面を形成することが好ましい。この場合、装飾パネルの意匠面を凹凸形状とすることができ、意匠性を高めることができるとともに、意匠面の面積が増加するため、電磁波遮蔽機能を向上することができる。
【0012】
上記装飾シートは、上記基材の表側面に表出して上記意匠面を構成する表層と、上記基材の裏側面に積層された上記金属層と、上記金属層の裏側面に積層された接着層とを有し、上記接着層を介して上記芯材の表側面に密着していることが好ましい。この場合、金属層が基材により覆われて保護されるため、装飾パネルを設置した後、使用に伴う物理的ない衝撃などにより金属層が損傷することが防止され、設置後の電磁波遮蔽機能の維持が図られる。また、表層及び基材が光透過性を有する場合には、外部から観察したときに表層及び基材を介して金属層による金属光沢を視認でき、深みのある金属感を呈して意匠性を向上することができる。
【実施例0013】
(実施形態1)
上記装飾パネルの実施例につき、図1図17を用いて説明する。
本実施形態1の装飾パネル1は、図1、2に示すように、板状の芯材10と一枚物の装飾シート20とを備える。
芯材10は、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム板からなる。
装飾シート20は、樹脂製の基材21と、基材21に積層された金属層22とを含む。そして、芯材10の一方の主面11を被覆して意匠面1aを形成するともに芯材10の端面13を被覆する。
【0014】
以下、本実施形態の装飾パネル1について、詳述する。
図1に示すように、装飾パネル1の芯材10は板状の部材であって、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムからなる。すなわち、芯材10は、主成分のケイ酸カルシウム水和物として主にゾノトライトを含む。なお、芯材10は、ケイ酸カルシウムのつなぎ成分として、有機質系又は無機質系の繊維材料を含んでいてもよい。芯材10の大きさは特に限定されないが、本実施形態では、縦Hが910mm、横Wが910mmであって、図2に示すように、最も厚い部分の厚さT1が8mmであり、最も薄い部分の厚さT2が3mmである。
【0015】
芯材10の一方の主面11には、凹部111及び凸部112を含む所定パターンを繰り返してなる凹凸形状110が設けられており、他方の主面12は平面となっている。なお、主面とは板状物においては最も広い面積を有する一対の面のそれぞれを指す。本明細書では、一方の主面11を表側面11といい、他方の主面12を裏側面12というものとする。なお、表側面11の凹凸形状110は限定されず、所望の形状とすることができ、また、表側面11に凹凸形状110を設けずに表側面11を平面にすることもできる。なお、芯材10の外周を形成する4つの端面13はいずれも平面となっている。
【0016】
芯材10と装飾シート20との間には、芯材10と装飾シート20との接着性と高めるためのプライマーが含まれていてもよい。プライマーの種類は特に限定されないが、水溶性を有するものであることが好ましい。本実施形態では、プライマーとして、水系アクリルプライマーと水系ウレタンプライマーとを含有する水溶性のプライマーを使用している。
【0017】
装飾シート20は、図2に示すように、芯材10の一方の主面11と端面13を覆うように設けられている。なお、装飾シート20の一部は芯材10の裏側面12に回り込んでいる。図3に示すように、装飾シート20は、少なくとも基材21と金属層22とを含む。基材21は樹脂製であって、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などを採用することができ、本実施形態では塩化ビニル製の樹脂シートを採用している。なお、当該樹脂シートは光透過性を有している。基材21の厚さは限定されないが、例えば、0.1mm~2.0mmの範囲内とすることができ、本実施形態で0.2mmとしている。
【0018】
金属層22は基材21に積層されて、基材21の一方の面の全域を覆っている。金属層22を形成する金属の種類は限定されず、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの金属又はその合金や、これらの酸化物を含む金属酸化物を採用でき、本実施形態ではアルミニウムを採用している。金属層22の形成方法は、限定されず、真空蒸着、スパッタリングを含む蒸着により形成したり、予め作成した金属箔を基材21に貼付することにより形成したりすることができる。金属層22は基材21の表側面(芯材10と反対側の面)、裏面側(芯材10に対向する側の面)のどちらに形成することもできるが、本実施形態1では金属層22は基材21の裏面側に形成している。金属層22を基材21の裏面側に形成することにより、後述の表層24及び基材21が光透過性を有する場合には、外部から観察したときに表層24及び基材21を介して金属層22による金属光沢を視認でき、深みのある金属感を呈して意匠性を向上することができる。
【0019】
金属層22の厚さは限定されず、10nm~100μmの範囲内とすることができる。金属層22を蒸着で形成した場合には、金属層22の厚さを10~1000nmとすることができ、金属層22を薄膜として形成することができる。これにより、後述する真空成型機5を用いて装飾シート20を芯材10に貼り付ける場合において、装飾シート20を引き伸ばす際に金属層22が破断することを抑制できる。本実施形態ではアルミ蒸着で形成した薄膜の金属層22として厚さ40nmを有するものを用いている。また、金属層22を金属箔の貼付で形成した場合には、金属層22の厚さを1~100nmとすることができ、本実施形態ではアルミ箔の貼付で形成した金属層22として厚さ5μmを有するものを用いている。
【0020】
本実施形態では、図3に示すように、装飾シート20は接着層23を有している。接着層23は金属層22に積層してもよいし、反対側の基材21に積層してもよい。本実施形態では接着層23は金属層22に積層している。接着層23の材料及び厚さは、必要な接着力が得られれば特に限定されない。例えば、接着層23は所望の厚さを有する公知の両面テープにより形成することができる。装飾シート20は接着層23を介して芯材10に接着されている。
【0021】
本実施形態では、図3に示すように、装飾シート20は基材21において接着層23が設けられる側と反対側、すなわち基材21の表側面に表層24が積層されている。表層24は、意匠面1aが所望の色彩や模様を呈するように所望のインクを印刷または塗布して形成することができる。表層24を構成するインクの種類は限定されず、公知のものを採用することができる。例えば、光透過性を有するインクを用いて表層24を構成することで、表層24を介して基材21又は基材21が光透過性を有する場合は金属層22を視認することができ、透明感及び奥行き感のある意匠性を呈するようにすることができる。
【0022】
なお、基材21の表側面を表出させて意匠面1aを構成する場合には、基材21の表側面にインクを印刷等せずに基材21の表側面を表層24としてもよい。また、金属層22を基材21の表側面に設けた場合は、当該金属層22の表側面に表層24を積層することができるし、金属層22の表側面を表出させて意匠面1aを構成する場合には、金属層22の表側面にインクを印刷等せずに金属層22の表側面を表層24としてもよい。
【0023】
図2に示すように、本実施形態では、装飾シート20は、芯材10の表側面11の全域を覆う主面被覆部20aと、芯材10の端面13の全域を覆う端面被覆部20bと、後述の裏面シート30とともに芯材10の裏側面12の縁部を覆うように裏側面12に回り込んだ裏面被覆部20cとを有する。装飾シート20の主面被覆部20aによって芯材10の表側面11が覆われることにより、意匠面1aが形成される。装飾シート20の主面被覆部20aは芯材10の表側面11と密着しており、これにより意匠面1aは芯材10の表側面11の凹凸形状110と同等の凹凸形状を呈する。
【0024】
本実施形態では、図2に示すように、芯材10の裏側面12に裏面シート30が設けられている。図4に示すように、裏面シート30は、少なくとも基材31と金属層32とを含む。基材31は装飾シート20の基材21と同様の構成とすることができる。金属層32は基材31に積層されて、基材31の一方の面の全域を覆っている。裏面シート30の金属層32も装飾シート20の金属層22と同様の構成とすることができる。また、裏面シート30には、金属層32に接着層33が積層されている。なお、接着層33は、基材31における金属層32と反対の面に積層してもよい。裏面シート30は、接着層33を介して芯材10の裏側面12に接着されている。
【0025】
図2に示すように、裏面シート30は、芯材10の裏側面12と平面視で略同一形状を有しており、裏側面12全域を覆っている。本実施形態では裏面シート30の外縁部は、上述の裏面被覆部20cに覆われている。
【0026】
次に、装飾パネル1の製造方法100について説明する。装飾パネル1の製造方法100は、準備工程S1、裏面シート貼付工程S2、装飾シート被覆工程S3を含む。まず、準備工程S1では、所定厚さのゾノトライト系ケイ酸カルシウム板を用意し、研削加工により表側面11に凹凸形状110を形成して芯材10を作成する。次いで、裏面シート貼付工程S2では、芯材10の裏面側に裏面シート30を接着層33を介して貼り付ける。
【0027】
本実施形態では、装飾シート被覆工程S3は、図5(a)~図6(b)に示す真空成型機5を用いて、以下のように行う。図5(a)に示すように、真空成型機5は上側チャンバーボックス51と下側チャンバーボックス52とに上下に分割されたチャンバーボックス50を有する。まず、下側チャンバーボックス52の内側に設けられた台53に裏面シート30を裏側面12に貼り付けた芯材10を載置するとともに、上側チャンバーボックス51と下側チャンバーボックス52との間に、外周部全周を枠体54に保持された装飾シート20を配置する。これにより、図5(b)に示すように、上下に分かれたチャンバーボックス50の境目に装飾シート20が位置してチャンバーボックス50内が上下2つの空間に分割される。そして、上下2つの空間それぞれを密封状態とする。
【0028】
その後、上下2つの密封空間内を両方とも真空状態にし、装飾シート20を変形可能に加熱して上記真空状態を維持したまま、図6(a)に示すように、裏面シート30を貼付した芯材10を載置した台53を上昇させて、芯材10の表側面11によって装飾シート20を押し上げる。これにより、一枚物の装飾シート20は初期の状態からほぼ全面が引き延ばされた状態となる。このとき、装飾シート20は金属層22が破断しない程度に引き伸ばすようにする。
【0029】
そして、下側チャンバーボックス52内の空間を真空状態に維持しつつ、上側チャンバーボックス51内の空間を大気圧に戻す。これにより、その圧力差を利用して装飾シート20をさらに引き延ばし、図6(b)に示すように、芯材10の端面13の全面を覆うとともに芯材10の裏側面12の外縁部を裏面シート30を介して覆うように回り込ませる。そして、図示しないが、下側チャンバーボックス52内の空間を大気圧に戻した後、芯材10の裏側面12の縁部の内側で余分な装飾シート20を切りとって、装飾シート被覆工程S3を完了する。以上のように、各工程S1~S3を行うことにより、装飾パネル1が完成する。
【0030】
なお、本実施形態1の装飾パネル1では、芯材10の裏側面12に裏面シート30を設けたが、これに替えて、図7に示すように、裏面シート30を設けず、芯材10の裏側面12が表出するようにした装飾パネル2としてもよい。また、図示しないが裏面シート30に替えて、金属層32を有しない保護シートを芯材10の裏側面12に設けてもよい。
【0031】
次に、本実施形態1の装飾パネル1の取り付け方法について詳述する。図8(a)に示すように、まず、所定間隔で立設されたスタッド101、102に複数の下地材103を取り付ける。下地材としては木質合板を用いたり、プラスターボードなどの多孔質材料を用いたりすることができる。次に、図8(b)に示すように、下地材103に重ねて隙間なく装飾パネル1を配列し、図示しない両面テープを介して装飾パネル1を下地材103に貼り付ける。隣り合う装飾パネル1の継ぎ目には、捨て目地シート104を貼り付けることにより、隣り合う装飾パネル1を互いに密着させた状態で装飾パネル1を隙間なく配置させることができる。さらに、捨て目地シート104として導電を有するものを使用しているため、隣り合う装飾パネル1が捨て目地シート104を介して確実に電気的に接続されている。隣り合う装飾パネル1の継ぎ目は互いの端面が当接することで導電性が保たれているため、当該継ぎ目を電磁波が下地材103側に透過することは防止されているが、さらに、導電を有する捨て目地シート104が設けられることによって、隣り合う装飾パネル1の継ぎ目を進入しようとする電磁波は、捨て目地シート104から装飾パネル1に導電されて減衰してゆくため、隣り合う装飾パネル1の継ぎ目から下地材103側に透過することが一層防止される。
【0032】
また、捨て目地シート104が設けられることにより、温度や湿度の変化等の環境変化によって隣り合う装飾パネル1の継ぎ目に隙間が生じることを防止することもできる。さらに、地震などの発生によって装飾パネル1にわずかに位置ずれが生じて隣り合う装飾パネル1の継ぎ目に隙間が生じたとしても、当該隙間は導電性を有する捨て目地シート104で覆われたままの状態とすることができるため、当該継ぎ目から電磁波が地材103側に透過することを防止する効果を維持することができる。なお、下地材103としてプラスターボードなどの多孔質材料を用いる場合は、装飾パネル1を貼り付ける前に予め下地材103の表面にプライマー処理を施す。なお、装飾パネル2の場合も装飾パネル1と同様に組み付けることができる。
【0033】
(確認試験1)
装飾パネル1の電磁波遮蔽機能を確認するために下記の確認試験1を行った。確認試験における試験対象は試験装置の制約を考慮して、表1に示す通りとした。
【0034】
【表1】
【0035】
表1において、芯材の欄の「なし」であるものは、ゾノトライト系ケイ酸カルシウムは電磁波遮蔽機能が無視できる程度に低いことから、芯材10を有さずに金属層22を有する装飾シート20を1枚又は2枚を有する構成としたものを示す。装飾シートの欄が「1枚」であるものは、装飾シート20を1枚のみ有する構成をさす。したがって、芯材が「なし」かつ装飾シートが「1枚」である試料1-1、試料2-1、試料3-1、試料4-1、試料5-1、試料6及び試料7は、図7に示す裏面シート30を有しない装飾パネル2を使用した状態を模したものである。
【0036】
また、表1において、装飾シートの欄が「2枚(直接貼り付け)」であるものは、2枚の装飾シート20を互いに直接貼り付けた構成をさす。したがって、芯材が「なし」かつ装飾シートが「2枚(直接貼り付け)」である試料1-2、試料2-2、試料3-2、試料4-2及び試料5-2は、図2に示す裏面シート30を有する装飾パネル1を使用した状態を模したものである。
【0037】
また、表1において、芯材の欄が「MDFボード(厚さ4mm)」であって、装飾シートの欄が「2枚(MDF両面)」であるものは、芯材として厚さが4mmのMDFボードの両面に装飾シート20をそれぞれ貼り付けた構成をさし、2枚の装飾シート20を直接貼り付けた場合に対して、2枚の装飾シート20が芯材10の厚さ分程度離間した構成となっている。したがって、試料1-3、試料2-3、試料3-3、試料4-3及び試料5-3は、装飾シート20と同一構成の裏面シート30を有する装飾パネル1であって装飾シート20と裏面シート30とが離間した状態を模したものである。
【0038】
また、表1において、型番の欄は、装飾シート20として使用するシートの型番であって、タキロンシーアイ株式会社、製品名「粘着剤付き化粧フィルム ベルビアン」の各型番を示す。いずれも仕様上の厚さは0.2mmとなっている。なお、比較試料の型番は、「粘着剤付き化粧フィルム ベルビアン」において、金属層を有さずに基材21と接着層23及び表層24を有するものの型番である。
【0039】
試験は、500Hzから1GHzの周波数帯については、KEC法に基づく電界シールド効果評価装置を用いて試料に照射した電磁波と試料を透過した電磁波との差分である電磁波低減量をシールド効果(電磁波遮蔽機能)の試験結果として取得した。また、1GHzから6GHzの周波数帯については、GHz KEC法に基づく電界シールド効果評価装置を用いて試料に照射した電磁波と試料を透過した電磁波との差分である電磁波低減量をシールド効果(電磁波遮蔽機能)の試験結果として取得した。
【0040】
各試料における確認試験1の試験結果を図9図16に示し、表1のシールド効果の評価の欄に各試料におけるシールド効果を評価した。シールド効果の評価は、シールド効果(電磁波低減量)が概ね20dB以上である場合に「〇(良好)」とし、概ね20dB未満である場合は「×(不良)」とした。なお、試験を実施していない場合はシールド効果の評価は「-(不実施)」とした。
【0041】
当該確認試験1によれば、図9図16及び表1に示すように、比較試料以外のすべての試料において、シールド効果は概ね20dB以上であって、十分なシールド効果を奏することが確認できた。そして、試料1-1と試料1-2、試料2-1と試料2-2、試料3-1と試料3-2、試料4-1と試料4-2、試料5-1と試料5-2のそれぞれの比較結果から、装飾シート20が2枚に場合はシールド効果が概ね30dB以上であって、装飾シート20が1枚の場合よりもシールド効果が高いことが確認できた。これは、装飾シート20が1枚の場合に比べて、装飾シート20が2枚の場合では装飾シート20による電磁波の反射が増加したことにより試料を透過する電磁波が減少したためと推察される。
【0042】
また、試料1-2と試料1-3、試料2-2と試料2-3、試料3-2と試料3-3、試料4-2と試料4-3、試料5-2と試料5-3のそれぞれの比較結果から、2枚の装飾シート20が芯材の厚さ分程度離間していることで、一部の試料を除いてシールド効果が高い傾向があることが確認できた。これは、2枚の装飾シート20の間で電磁波が多重反射して電磁波の減衰が促進されたものと推察される。
【0043】
また、図14及び図15に示す試料6及び試料7と図9に示す試料1-1とを比較するとシールド効果は概ね同等であるといえることから、金属層22の厚さがシールド効果の大きさに与える効果は少ないと推察された。一方、図16に示す比較試料では、装飾シートが金属層を有していないことにより、シールド効果は得られなかったものと推察される。なお、比較試料の試験結果は、図9図13にも記載している。
【0044】
以上の確認試験1に基づいて、本実施形態1の装飾パネル1、2は十分なシールド効果を奏すると推察できることが確認できた。
【0045】
(確認試験2)
本実施形態1における図2に示す装飾パネル1、及び図7に示す装飾パネル2の電磁波遮蔽機能(シールド効果)を確認するために、下記の確認試験2を行った。
確認試験2では、図17に示すように、電波暗室内において、上面が開口したシールドボックス60の中に携帯型音楽プレーヤ61と携帯型音楽プレーヤ61に接続されたBluetooth(登録商標)送信機(以下、送信機62という)を設置した。また、シールドボックス60から水平方向に3m離れた位置に、Bluetooth(登録商標)受信部及び増幅部(以下、本体部63という)を有するフラットスピーカ64を設置した。そして、シールドボックス60の上面に試験体を被せて開口部に蓋をした状態で、フラットスピーカ64の音声が遮断されるかどうかを検証するものとする。
【0046】
送信機62は、TAOTRONICS社製、型番TT-BA09(周波数帯2.4GHz)を用いた。また、フラットスピーカ64は、本体部63として、株式会社オーセンティックインターナショナル社製、製品名「TOUGHBEAT」(適合規格Bluetooth4.1、最大出力4.5W+4.5W、インピーダンス4Ω、通信距離10m、送信出力Class2)を用い、本体部63が取り付けられるスピーカ部は板状部材を用いた。シールドボックス60は、タカチ電気工業株式会社製、型番BDN12-22-BNのアルミダイキャストボックスの内側全面に銅テープを密着貼りしたものを用いた。
【0047】
試験手順は、まず、送信機62と受信部63とが周波数が2.4GHz帯域のBluetooth通信可能な状態で携帯型音楽プレーヤ61を再生するとともに、シールドボックス60の上面を覆うように試験体を重ねて、スピーカ64からの音声出力を検出した。
【0048】
試験体1は、図18(a)に示すように、図2に示す装飾パネル1と同様に芯材10の表側面が装飾シート20により覆われるとともに、芯材10の裏側面も裏面氏と30でおおわれる構成とした。
試験体2は、図18(b)に示すように、図7に示す装飾パネル2と同様に芯材10の表側面が装飾シート20により覆われるとともに、芯材10の裏側面は覆われていない構成とした。
試験体9は、図18(c)に示すように、芯材10の表側面が装飾シート92により覆われるとともに、芯材10の裏側面は覆われていない構成とした。ただし、装飾シート92は上述の装飾シート20とは異なり、金属層22を有していないものとした。したがって、試験体9は比較例として用意したものである。
なお、いずれの試験体1、2、9でも芯材10は平板状のゾノトライト系ケイ酸カルシウム板であって両主面は平面であるものとし、その大きさは縦450mm、横450mm、厚さ8mmとした。
【0049】
以降、確認試験2の試験結果について詳述する。まず、シールドボックス60の上面に試験体を載置していない状態では、スピーカ64から音声が途切れることなく出力されることを確認した。
【0050】
次に、図19(a)に示すように、比較例としての試験体9を装飾シート92が上面となるように、すなわち、試験体9において装飾シート92で覆われていない面が直接シールドボックス60の開口部を覆うように載置した状態では、スピーカ64から音声が途切れることなく出力されることを確認した。
【0051】
また、図19(b)に示すように、比較例としての試験体9を装飾シート92が下面となるように、すなわち、試験体9において装飾シート92が直接シールドボックス60の開口部を覆うように載置した状態でも、スピーカ64から音声が途切れることなく出力されることを確認した。
【0052】
また、図19(c)に示すように、図19(a)と同様に、比較例としての試験体9を装飾シート92が上面となるようにシールドボックス60の開口部を覆い、さらに2枚の試験体9をいずれも装飾シート92が上面となるように重ねて、合計3枚の試験体9を載置した状態でも、スピーカ64から音声が途切れることなく出力されることを確認した。
【0053】
また、図19(d)に示すように、図19(b)と同様に、比較例としての試験体9を装飾シート92が下面となるようにシールドボックス60の開口部を覆い、さらに2枚の試験体9をいずれも装飾シート92が下面となるように重ねて、合計3枚の試験体9を載置した状態でも、スピーカ64から音声が途切れることなく出力されることを確認した。
【0054】
一方、図20(a)に示すように、試験体1を装飾シート20が上面となるように、すなわち、試験体1において裏面シート30が直接シールドボックス60の開口部を覆うように載置した状態では、スピーカ64から音声が出力されないことを確認した。
【0055】
しかしながら、図20(b)に示すように、試験体2を装飾シート20が上面となるように、すなわち、試験体2において装飾シート20で覆われていない芯材10の面が直接シールドボックス60の開口部を覆うように載置した状態では、スピーカ64から音声が途切れることなく出力されることを確認した。
【0056】
これに替えて、図20(c)に示すように、試験体2を装飾シート20が下面となるように、すなわち、試験体1において装飾シート20が直接シールドボックス60の開口部を覆うように載置した状態では、スピーカ64から音声が出力されないことを確認した。
【0057】
以上の試験結果から、まず、図19(a)~(d)に示す比較例としての試験体9では、装飾シート92は金属層を有していないため、装飾シート92を上面にした場合でも下面にした場合でも、矢印で示すようにBluetooth信号が試験体9を透過して送信部62と受信部63との無線通信は遮断されなかったものと推察される。
【0058】
一方、試験例1では、図20(a)に示す試験体1では、裏面シート30に備えられた金属層32により、矢印で示すようにBluetooth信号が試験体1を透過できず送信部62と受信部63との無線通信が遮断されたものと推察される。また、同様に、図20(c)に示す試験体2では、矢印で示すように装飾シート20に備えられた金属層22によってBluetooth信号が試験体2を透過できず、送信部62と受信部63との無線通信が遮断されたものと推察される。
【0059】
これに対して、図20(b)に示す試験体2では、シールドボックス60の開口部は実質的に芯材10の裏面により覆われており、金属層で覆われていないため、図20(b)において矢印で示すように、Bluetooth信号は芯材10の裏面側から芯材10に入り込んで装飾シート20によって反射されて芯材10内を進行し、芯材10の裏面のシールドボックス60と重なっていない領域から外部に放出されることにより、送信部62と受信部63との無線通信が遮断されなかったものと推察される。なお、図20(b)に示すようにシールドボックス60の開口部に試験体2を載置した状態では、シールドボックス60の開口部側からシールドボックス60の内部に向かうBluetooth信号は、試験体2の上面に位置する装飾シート20により反射して試験体2を透過できず、送信部62と受信部63との無線通信が遮断されたものと推察される。また、図20(a)に示す試験体1の場合でもシールドボックス60の開口部側からシールドボックス60の内部に向かうBluetooth信号は、試験体1の上面に位置する装飾シート20により反射して試験体1を透過できず、送信部62と受信部63との無線通信が遮断されたのと推察される。
【0060】
以上から、試験体1、2では、比較例としての試験体9に対してシールド効果を奏することを確認できた。また、試験体1では、内部から外部への無線通信の遮断と外部から内部への無線通信の遮断の両方が可能であるため、役員室や会議室などに適用することが好ましく、試験体2では、外部から内部への無線通信の遮断が可能であるため、医療機器などの精密機械を扱う部屋に適用することが好ましいといえる。
【0061】
次に、本実施形態1の装飾パネル1、2の作用効果について述べる。本実施形態1では、壁の装飾を行うための装飾パネル1、2において、意匠面1aを形成する芯材10の主面11に金属層22を有する装飾シート20が被覆されていることにより電磁波遮蔽機能を発揮することができる。さらに、芯材10の端面13にも金属層22を有する装飾シート20が被覆されていることにより、当該端面13においても電磁波遮蔽機能を発揮することができる。そのため、電磁波遮蔽機能を有する部材を別途用いることなく、壁の装飾を行うことができ、コスト低減を図ることができる。また、装飾シート20は一枚物であって、切れ目のない構成となっているため、十分な電磁波遮蔽機能を奏することができる。また、芯材10はゾノトライト系ケイ酸カルシウム板からなることから寸法安定性が極めて高い。そのため、芯材10の寸法変化は極めて小さく、それゆえ芯材10として石膏ボードを用いた場合に比べて金属層22の破断が生じにくいことから、電磁波遮蔽機能の低下を防止することができる。
【0062】
また、本実施形態1では、樹脂製の基材31と基材31に積層された金属層32とを含み、芯材10の他方の主面12を被覆する裏面シート30を備える。これにより、電磁波遮蔽機能を向上することができる。
【0063】
また、本実施形態1では、芯材10の一方の主面11は、所定の凹凸形状110を有しており、装飾シート20は、凹凸形状110を有する上記主面11に密着した状態で被覆して意匠面1aを形成している。これにより、装飾パネル1、2の意匠面1aを凹凸形状110とすることができ、意匠性を高めることができるとともに、意匠面1aの面積が増加するため、電磁波遮蔽機能を向上することができる。
【0064】
また、本実施形態1では、装飾シート20は、基材21の表側面に表出して意匠面1aを構成する表層24と、基材21の裏側面に積層された金属層22と、金属層22の裏側面に積層された接着層23とを有し、接着層23を介して芯材10の表側面11に密着している。これにより、金属層22が基材により覆われて保護されるため、装飾パネル1を設置した後、使用に伴う物理的ない衝撃などにより金属層22が損傷することが防止され、設置後の電磁波遮蔽機能の維持が図られる。また、本実施形態1では、表層24及び基材21が光透過性を有するため、外部から観察したときに表層24及び基材21を介して金属層22による金属光沢を視認でき、深みのある金属感を呈して意匠性を向上することができる。
【0065】
以上のように、本実施形態1によれば、電磁波遮蔽機能を発揮することができるとともに、コスト低減を図ることができる装飾パネル1、2を提供することができる。
【0066】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1、2 装飾パネル
1a 意匠面
10 芯材
11 主面(表側面)
12 主面(裏側面)
13 端面
20 装飾シート
21、31 基材
22、32 金属層
23、33 接着層
30 裏面シート
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