(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164561
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】空気中の水分除去装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20241120BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B01D53/26
H01L21/304 648L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080139
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000163660
【氏名又は名称】ケンブリッジフィルターコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】木崎原 稔郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】當麻 晃夫
(72)【発明者】
【氏名】桜井 芳夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 訓樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸太
【テーマコード(参考)】
4D052
5F157
【Fターム(参考)】
4D052AA02
4D052EA05
4D052FA01
4D052GA04
4D052GB00
4D052GB03
5F157CB28
5F157CE56
5F157DB33
(57)【要約】
【課題】露点の管理レベルが-60℃以下というような乾燥した環境に向けて、乾燥空気または窒素ガス中の水分を除去する装置および方法を提供すること。
【解決手段】
乾燥空気または窒素ガスGが流れる空気流路10と、空気流路10を流れる乾燥空気または窒素ガスG中の水分子Wをイオン化させる水分子イオン化装置20と、空気流路10に配置され、水分子Wがイオン化された乾燥空気または窒素ガスGが接触する電気分解用電極32、34と、電気分解用電極32、34に直流電圧を印加する電源装置36とを備える、空気中の水分除去装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥空気または窒素ガスが流れる空気流路と;
前記空気流路を流れる乾燥空気または窒素ガス中の水分子をイオン化させる水分子イオン化装置と;
前記空気流路に配置され、前記水分子がイオン化された乾燥空気または窒素ガスが接触する電気分解用電極と;
前記電気分解用電極に直流電圧を印加する電源装置とを備える;
空気中の水分除去装置。
【請求項2】
前記水分子イオン化装置は、前記空気流路を流れる乾燥空気または窒素ガスにX線を照射するX線照射装置である;
請求項1に記載の空気中の水分除去装置。
【請求項3】
前記水分子イオン化装置は、前記空気流路を流れる乾燥空気または窒素ガスに遠紫外線を照射する遠紫外線照射装置である;
請求項1に記載の空気中の水分除去装置。
【請求項4】
前記電気分解用電極は、前記空気流路を流れる空気の流れ方向に交互に配置された陽電極と陰電極の金属メッシュである;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の空気中の水分除去装置。
【請求項5】
前記電気分解用電極は、前記空気流路を流れる空気の流れ方向に平行に交互に配置された陽電極と陰電極の金属多孔板である;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の空気中の水分除去装置。
【請求項6】
前記電源装置により前記電気分解用電極に10V-300Vの直流電圧を印加する;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の空気中の水分除去装置。
【請求項7】
空気流路内に乾燥空気または窒素ガスを流す工程と;
前記空気流路を流れる乾燥空気または窒素ガス中の水分子をイオン化させる工程と;
前記空気流路内の電気分解用電極に直流電圧を印加する工程とを備える;
空気中の水分除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥空気または窒素ガス中の水分を除去する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、半導体ウエハに刻まれる半導体回路が微細化され、デザインルールが5nm~2nm になってきた。かかる微細な半導体回路を製造する半導体製造装置では、環境の水分から半導体回路に水分子が入り込むと、除去が難しく製品の性能不良の原因となる。
【0003】
従来から、水分除去の対策として、製造工程環境を露点―60℃以下程度とするために半導体装置内に窒素ガスを充填し、循環している。しかし、かかる対策を施しても、装置故障等でメンテナンスのために装置を開放すると外気空気が侵入し露点が上がり、窒素ガスを流すことにより、例えば露点―40℃というようなある程度の乾燥環境が得られても、もとの露点に戻すのに数日の時間を要することになる。よって、局所的に短期間で環境の露点を下げる方法および装置が必要となっている。なお本書では、上記のようにある程度の乾燥された空気または窒素ガスを「乾燥空気または窒素ガス」と称する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥空気または窒素ガス中の水分を除去する方法には、乾燥剤により水分子を吸着除去する方法がある。この方法では吸着量に限界があり、乾燥剤の交換が必要になる。露点の管理レベルが-60℃以下というような乾燥した環境では、乾燥剤の交換時に水分の侵入による露点上昇等のトラブルが発生する。
【0005】
そこで、本発明は、露点の管理レベルが-60℃以下というような乾燥した環境に向けて、乾燥空気または窒素ガス中の水分を除去する装置および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る空気中の水分除去装置1は、例えば
図1に示すように、乾燥空気または窒素ガスGが流れる空気流路10と、空気流路10を流れる乾燥空気または窒素ガスG中の水分子Wをイオン化させる水分子イオン化装置20と、空気流路10に配置され、水分子Wがイオン化された乾燥空気または窒素ガスGが接触する電気分解用電極32、34と、電気分解用電極32、34に直流電圧を印加する電源装置36とを備える。
【0007】
このように構成すると、乾燥空気または窒素ガス中の水分子の一部がイオン化され、そのイオンに水分子が結合して水和物イオンとなって電気分解用電極に引き寄せられ、そこで、水分子が電気分解用電極の触媒作用の下で電気分解されて酸素ガスおよび水素ガスとなる。すなわち、乾燥空気または窒素ガス中の水分子が除去される。
【0008】
本発明の第2の態様に係る空気中の水分除去装置1では、例えば
図1に示すように、水分子イオン化装置20は、空気流路10を流れる乾燥空気または窒素ガスGに軟X線を照射する軟X線照射装置であってもよい。このように構成すると、軟X線照射装置より軟X線を水分子に照射するので、水分子を効率よくイオン化することができる。
【0009】
本発明の第3の態様に係る空気中の水分除去装置1では、例えば
図1に示すように、水分子イオン化装置20は、空気流路10を流れる乾燥空気または窒素ガスGに遠紫外線を照射する遠紫外線照射装置であってもよい。このように構成すると、遠紫外線照射装置より遠紫外線を水分子に照射するので、より安全性高く水分子をイオン化することができる。
【0010】
本発明の第4の態様に係る空気中の水分除去装置1では、例えば
図3に示すように、電気分解用電極32、34は、空気流路10を流れる乾燥空気または窒素ガスGの流れ方向に交互に配置された陽電極と陰電極の金属メッシュ42、44であってもよい。このように構成すると、電気分解用電極が金属メッシュであるので、水和物イオンを引き寄せやすく、水分子の電気分解が行われやすい。
【0011】
本発明の第5の態様に係る空気中の水分除去装置1では、例えば
図4に示すように、電気分解用電極32、34は、空気流路10を流れる乾燥空気または窒素ガスGの流れ方向に交互に配置された陽電極と陰電極の金属多孔板46、48であってもよい。このように構成すると、電気分解用電極が金属多孔板であるので、水和物イオンを引き寄せやすく、水分子の電気分解が行われやすい。
【0012】
本発明の第6の態様に係る空気中の水分除去装置1では、電源装置36により電気分解用電極32、34に10V-300Vの直流電圧が印加されてもよい。このように構成すると、電気分解用電極に10-300Vという高電圧が印加されるので、水和物イオンを引き寄せやすく、水分子の電気分解が行われやすい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第7の態様に係る空気中の水分除去方法は、例えば
図1に示すように、空気流路10内に乾燥空気または窒素ガスGを流す工程と、空気流路10を流れる乾燥空気または窒素ガスG中の水分子Wをイオン化させる工程と、空気流路10内の電気分解用電極32、34に直流電圧を印加する工程とを備える。
【0014】
このように構成すると、乾燥空気または窒素ガス中の水分子の一部がイオン化され、そのイオンに水分子が結合して水和物イオンとなって電気分解用電極に引き寄せられ、そこで、水分子が電気分解用電極の触媒作用の下で電気分解されて酸素ガスおよび水素ガスとなる。すなわち、乾燥空気または窒素ガス中の水分子が除去される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水分除去装置によれば、乾燥空気または窒素ガスが流れる空気流路と、空気流路を流れる乾燥空気または窒素ガス中の水分子をイオン化させる水分子イオン化装置と、空気流路に配置され、水分子がイオン化された乾燥空気または窒素ガスが接触する電気分解用電極と、電気分解用電極に直流電圧を印加する電源装置とを備えるので、乾燥空気または窒素ガス中の水分子の一部がイオン化され、そのイオンに水分子が結合して水和物イオンとなって電気分解用電極に引き寄せられ、そこで、水分子が電気分解されて乾燥空気または窒素ガス中の水分子が酸素ガス、水素ガスとなって、乾燥空気または窒素ガス中の水分子が除去される。
【0016】
本発明の水分除去方法によれば、空気流路内に乾燥空気または窒素ガスを流す工程と、空気流路を流れる乾燥空気または窒素ガス中の水分子をイオン化させる工程と、空気流路内の電気分解用電に直流電圧を印加する工程とを備えるので、乾燥空気または窒素ガス中の水分子の一部がイオン化され、そのイオンに水分子が結合して水和物イオンとなって電気分解用電極に引き寄せられ、そこで、水分子が電気分解されて乾燥空気または窒素ガス中の水分子が酸素ガス、水素ガスとなって、乾燥空気または窒素ガス中の水分子が除去される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による水分除去装置を用いて乾燥空気中の水分を除去する状態を例示する模式図である。
【
図2】本発明による水分除去装置内部の要素を例示する模式図である。
【
図3】電気分解用電極として金属メッシュを用いた例の模式図である。
【
図4】電気分解用電極として金属多孔板を用いた例の模式図である。
【
図5】本発明による水分除去装置による水分除去を確認するのに用いた装置の模式図である。
【
図6】本発明による水分除去装置による水分除去を確認した露点の変化を示すグラフで、(a)は水分子除去装置を作動させない場合、(b)は作動させた場合の露点の変化を示す。
【
図7】従来技術として、水中の水分子を電気分解する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1は、本発明による水分除去装置1を用いて乾燥空気または窒素ガスG(以下、簡潔化のため「乾燥空気G」と記載することもある。)中の水分を除去する状態を例示する模式図である。
【0019】
本発明の水分除去装置1は、乾燥空気Gから電気分解を利用して水分を除去するという新規な発想に基づく装置である。乾燥空気Gから電気分解を利用して水分を除去する方法を説明する前に、参考として従来の水を電気分解する方法について、簡単に説明する。
【0020】
図7に示した例では、容器100に微量(例えば0.1mol/リットル)の希硫酸または苛性ソーダを混入させた水を入れる。希硫酸または苛性ソーダを混入させることにより、水の一部はOH
-イオン(図中、「-」として示す)とH
+イオン(図中、「+」として示す)となる。その水中に陽電極110と陰電極120を入れ、電極110、120間に例えば1.6Vの直流電圧をかける。水溶中に発生したOH
-イオンとH
+イオンはそれぞれ陽電極110と陰電極120に引き寄せられる。その結果、陽電極110と陰電極120とには電気二重層112、122が形成される。電気二重層としては、厚さ1nmオーダの電気二重層の反応層が形成される。陽電極110と陰電極120との電圧は、電気二重層112、122に集中し、電気二重層112、122の間の領域130では、電圧はほぼ一定となっている。この領域130内では、OH
-イオンとH
+イオンに電極110、120からの電磁力は作用せず、OH
-イオン、H
+イオンおよび水分子H
2O(図中、「+-」として示す)は、乱流と拡散作用で動き回る。
【0021】
陽電極110側の表面の電気二重層112まで乱流と拡散作用により近づいた水分子は、陽電極110に直接接触しなくても陽電極110とトンネル効果により電子の授受を行い酸化されて、H+イオンが発生する。これらH+イオンは乱流や拡散作用で陰電極120まで移動して、陰電極120の触媒作用の下で水素ガスH2になる。また、陰電極120により水分子から発生したOH-イオンは、乱流・拡散作用で陽電極110まで移動し、陽電極110の触媒作用の下で酸素ガスO2になる。このように酸素ガスO2と水素ガスH2が発生する。これが、水の電気分解である。
【0022】
本発明の水分除去装置1は、乾燥空気Gを対象として水分除去を行うものである。気体をイオン化装置20でイオン化する場合、発明者らの実測によれば発生するイオン濃度は1660ppm程度であり、水の電気分解の場合のイオン濃度と比較し格段に薄い。一方、気体の平均自由工程は長い。そこで、電極間に電圧を印加し、イオンの移動速度を上げて電界で両電極に移動させることがよいと考えた。
図1に示すように、乾燥空気Gの空気流路としての容器10内に乾燥ガスGが流される。なお、乾燥ガスGは、半導体製造装置(不図示)に用いられている気体で、例えば半導体装置をメンテナンスのために開放した後に窒素ガスで置換するために流されているものである。窒素ガス自体は十分に乾燥されているが、半導体装置を開放後は開放時に侵入した水分のために露点が上がり、例えば露点として-40℃レベルである。露点として-40℃レベルまでは比較的容易に乾燥できるが、半導体装置としては、露点を-60℃レベルにまで乾燥させる要求がある。
【0023】
容器10の入口12から乾燥空気Gを流し、出口14から水分除去した乾燥空気Hを流出し、例えば半導体製造装置(不図示)に供給する。容器10内を流れる乾燥空気Gに水分子イオン化装置20としての軟X線照射装置より軟X線を照射する。なお、水分子イオン化装置20は、遠紫外線を照射する遠紫外線照射装置であってもよい。乾燥空気Gに軟X線または遠紫外線を照射すると、乾燥空気G中の水分子の一部がイオン化する。すなわち、OH-イオンとH+イオンとが生ずる。
【0024】
水分子H2Oは、双極子モーメント特性を持った中性の分子であるので、OH-イオンやH+イオンに付着し、水分子H2Oは極性を持つようになり、更にその端部に水分子H2Oが付着するようになる。すなわち、プラス水和物イオン(H+)(H2O)(H2O)・・・とマイナス水和物イオン(OH-)(H2O)(H2O)・・・としてクラスターを形成するようになる。陰電極34と陽電極32により作り出される電位差Eによりプラス水和物イオンは陰電極34に、マイナス水和物イオンは陽電極32に引き寄せられ、付着する。すなわち、軟X線の照射により水分子の一部をイオン化することにより、イオンから水和物イオンを生成して、電極に水和物としての水分子を搬送することができる。
【0025】
なお、文献(阪田、岡田「イオン核形成に及ぼす水分濃度の影響」エアロゾル研究第8巻第1号(1993)37-45頁)によれば、クリーンエア中の水分濃度が低くなると、プラス水和物イオンとしてはH+水和物以外の水和物は観察されなくなる。すなわち、軟X線により乾燥空気Gをイオン化しても、水分濃度が低いので、H+イオン以外のプラスイオン(例えば、N+)の水和物は実質的には生成されないものと考えられる。
【0026】
陽電極32に付着したマイナス水和物イオンの水分子からは陽電極32の触媒作用の下で酸素O2が発生し、陰電極34に付着したプラス水和物イオンの水分子からは陰電極34の触媒作用の下で水素H2が発生する。さらにプラスイオンとマイナスイオンも、水の電気分解と同様に、電極で電気分解される。結果として、乾燥空気G中の水分が酸素O2と水素H2となり、さらに水分が除去された乾燥空気Hとなる。
【0027】
図2に本発明による水分除去装置1の構成要素を模式的に例示する。空気流路としての容器10の入口12には、乾燥空気Gを容器10に送るためのファン16が備えられる。容器10には、水分子イオン化装置としての軟X線照射装置20が備えられる。容器10の入口12および出口14には、軟X線遮断シート24が流路全面を塞ぐように設置される。軟X線遮断シート24により、軟X線照射装置20から容器10内に放射された軟X線の容器10外への漏洩を防止する。軟X線遮断シート24としては、例えば特許第4751275号に開示された軟X線遮断シート等を用いることができる。なお、水分子イオン化装置20として遠紫外線照射装置を用いた場合には、遠紫外線は管理が要求されないので、軟X線遮断シート24を用いる必要がなくなる。ただし、水分子をイオン化するためには、軟X線の方が効率が高い。
【0028】
容器10内には、乾燥空気Gが流れる方向に直交する面に複数の電気分解用陽電極32と電気分解用陰電極34が交互に配置される。電気分解用陽電極32と電気分解用陰電極34には電源装置36から直流電圧が印加される。印加される電圧は、プラス水和物イオンとマイナス水和物イオンを引き寄せるために、3V以上の電圧、好ましくは10V以上の電圧、さらに、100V以上の高電圧とするのが好ましい。なお、汎用の直流電圧電源は定格電圧300Vであることが多いが、300V以上とする必要はないものと考えられる。軟X線の照射により生成された乾燥空気G中のプラス水和物イオンとマイナス水和物イオンは、それぞれ電気分解用陰電極34、電気分解用陽電極32に捕捉され、そこで、水分が酸素O2と水素H2となる。複数の電気分解用陽電極32と電気分解用陰電極34を交互に通過することで、水分が除去された乾燥空気Hとなって、出口14から流出し、例えば半導体製造装置(不図示)に送られる。複数の電気分解用陽電極32と電気分解用陰電極34を交互に通過することで、乾燥空気G中のより多くのプラス水和物イオンとマイナス水和物イオンが捕捉され、水分が除去される。すなわち、入口12から出口14は乾燥空気Gを流し、電気分解用電極32、34を交互に配置することで、乾燥空気Gを電気分解用電極32、34に多く接触させることができる。なお、金属メッシュ42、44や多孔金属板46、48とするなど軟X線や遠紫外線が透過できるのであれば、電気分解用陰電極34、電気分解用陽電極32を乾燥空気Gの流れ方向と直交せずに、例えば平行に、配置してもよい。
【0029】
図3は、電気分解用陽電極32および電気分解用陰電極34として、金属メッシュ42、44を使用する例を示す。電気分解用電極として金属メッシュ42、44を使用することにより、乾燥空気Gの容器10内の流れに対する抵抗を少なくしつつ、乾燥空気Gと電気分解用陽電極42および電気分解用陰電極44との接触面積を広くすることが可能で、多くのプラス水和物イオンとマイナス水和物イオンを捕捉して、水分を除去することができる。
【0030】
図4は、電気分解用陽電極32および電気分解用陰電極34として、金属多孔板46,48を使用する例を示す。電気分解用電極として金属多孔板42、44を使用することにより、乾燥空気Gの容器10内の流れを可能にしつつ、乾燥空気Gと電気分解用陽電極42および電気分解用陰電極44との接触面積を広くし、多くのプラス水和物イオンとマイナス水和物イオンを捕捉し易くして、水分を除去することができる。
【実施例0031】
続いて、実機を用いて水分除去を調べた実施例について説明する。
図5に実施例で用いた水分除去装置2を模式的に示す。水分除去装置2では、断面が200mm×200mm、長さが450mmの容器10を用いた。容器10内に金属メッシュ42、44による電気分解用陽電極と電気分解用陰電極を窒素ガスの流れに直交して、
図5では3組しか図示しないが、8組配置した。金属メッシュ42、44はそれぞれ14mm間隔とした。金属メッシュ42、44には電源装置36から電圧を印加できるようにした。そして、4基の軟X線照射装置20を、2基を容器10の相対する面に向かい合わせにした2組として、窒素ガスの流れに沿って離間して配置した。容器10の入口12には、窒素ガスボンベ50から管を接続し、管には露点計51を設置した。容器10の出口15には排気用の管を接続し、管には露点計52を設置した。
【0032】
窒素ボンベ50から水分除去装置2を通して窒素ガスを18リットル/分の流量で流し、露点計51、52で窒素ガスの露点の変化を計測した。なお、窒素ガスには水分はほとんど含まれないが、水分除去装置2をセットした時点で、容器10および管内に外気が入るため、初期の装置内には水分がある。
【0033】
図6に入口側の露点計51および出口側の露点計52で測定した露点のグラフを示す。
図6(a)は水分除去装置2を起動しないまま窒素ガスを流し続けた場合の露点の変化を、(b)は水分除去装置2を起動した場合の露点の変化を示す。図中のグラフ(1)は入口側の露点、グラフ(2)は出口側の露点、グラフ(3)は出口側の露点と入口側の露点の差を表す。
【0034】
窒素ガスを流し始めた時点では、初期の水分が含まれているので露点が高い。窒素ガスを流すことにより水分除去装置2の容器10中および管内の水分がある程度除去され、露点が下がる。出口側の露点計52での露点が-50℃になった時点で、水分除去装置2を起動した。すなわち、軟X線放射装置20を起動し、また、金属メッシュ42、44に電源装置36から300Vの直流電圧を印加した。水分除去装置2を起動しないまま窒素を流し続けた結果である
図6(a)と、水分除去装置2で水分除去をした結果である
図6(b)とを比較すると、水分除去装置2で水分を除去することにより出口14での露点の上昇が抑えられることが確認された。すなわち、水分除去装置2で水分除去が行われていることが確認された。