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  • 特開-皮脂産生抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164571
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】皮脂産生抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20241120BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20241120BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241120BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241120BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/9789
A61K8/60
A61K8/34
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080153
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】沖嶋 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 和之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC711
4C083AC712
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD211
4C083AD212
4C083CC02
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】
【課題】皮脂産生抑制剤を取得することであり、取得された皮脂産生抑制剤において、皮脂産生抑制効果を亢進することを目的とする。
【解決手段】本発明者らは、皮脂産生抑制剤をスクリーニングする実験系を完成させ、化粧品候補成分について、スクリーニングを行ったところ、カルニチン又はその塩、レモンエキス、ツバキ花エキス、フィセチン、ホノキオール、及びジオスミンが皮脂産生抑制作用を有することを見出し、皮脂産生抑制剤を提供する。皮脂産生抑制剤が可視光下におかれることで、皮脂産生抑制作用が増強されるという点を見出し、光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物を、皮膚に適用し、適用後の皮膚を光存在下に置くことを含む、皮脂産生抑制作用を増強するための美容方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなる群から選ばれる少なくとも1の光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物を、皮膚に適用し、適用後の皮膚を光存在下に置くことを含む、皮脂産生抑制作用を増強するための美容方法。
【請求項2】
前記光応答性皮脂産生抑制剤の皮脂産生抑制作用が光存在下において増強される、請求項1に記載の美容方法。
【請求項3】
べたつき、テカリ、及び化粧崩れを防止するための請求項1又は2に記載の美容方法。
【請求項4】
カルニチン又はその塩、レモンエキス、ツバキ花エキス、フィセチン、ホノキオール、ジオスミンからなるからなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、皮脂産生抑制剤。
【請求項5】
光存在下で、皮脂産生抑制作用が増強される、請求項4に記載の皮脂産生抑制剤。
【請求項6】
遮光容器に収容された、請求項4に記載の皮脂産生抑制剤。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の皮脂産生抑制剤を含み、肌のべたつき、テカリ、又は化粧崩れを防止するための、美容用の皮膚外用組成物。
【請求項8】
紫外線を可視光へと変換する波長変換物質をさらに含む、請求項7に記載の皮膚外用組成物。
【請求項9】
請求項4~6のいずれか一項に記載の皮脂産生抑制剤を含み、過剰皮脂産生により引き起こされる疾患の予防、治療、又は軽減用の皮膚外用組成物。
【請求項10】
紫外線を可視光へと変換する波長変換物質をさらに含む、請求項9に記載の皮膚外用組成物。
【請求項11】
皮脂産生抑制用の皮膚外用組成物の製造における、光存在下において皮脂産生抑制作用を増強するためのカルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなるからなる群から選ばれる少なくとも1の成分の使用。
【請求項12】
光応答性皮脂産生抑制剤の皮脂産生抑制作用を亢進するための装置であって、370~780nmの波長の光を、光応答性皮脂産生抑制剤を適用された皮膚に照射する、照射部を備える、前記装置。
【請求項13】
皮脂産生抑制作用を増強するための美容キットであって、
カルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなる群から選ばれる少なくとも1の光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物と、
370~780nmの波長の光を、光応答性皮脂産生抑制剤を適用された皮膚に照射する照射部を備え、光応答性皮脂産生抑制剤の皮脂産生抑制作用を亢進するための装置とを含む、前記美容キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮脂産生抑制の技術分野に関する。より具体的に、皮脂産生抑制剤に関し、さらに皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物を皮膚に適用し、適用後の皮膚を光存在下に置くことを含む、皮脂産生抑制作用を増強するための美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮脂は、皮脂腺から分泌される脂肪を主成分とする成分である。皮膚の成分は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクアレン、コレステロールなどの脂質成分から主に構成されており、皮膚常在菌によってその一部が分解され、さらに複雑な構成となる。皮膚常在菌の作用により、分泌された脂肪が脂肪酸に分解され、それにより皮膚表面が弱酸性に保たれる。また、皮脂により皮膚表面がおおわれることで、皮膚表面からの水蒸散が抑制され、これにより皮脂は皮膚の水分保持に寄与する。このように、皮脂は皮膚の保護に重要な役割を有している。一方で、皮脂の産生過多により、肌のべたつき、テカリ、角栓、毛穴の拡大などの皮膚性状をもたらす。また、皮脂が産生されることにより、化粧崩れ、におい、脂ぎった毛髪などの美容上のトラブルを生じうる。さらに、皮脂により毛穴が詰まることで、ニキビや吹き出物の原因となり、そのほか脂漏性湿疹、老人性脂腺増殖症、脂腺母斑、酒さ、脱毛症といった皮膚疾患の原因となる。そのうえ、産生された皮脂の脂質が酸化して、過酸化脂質となると、コラーゲンやエラスチンなどの皮膚弾性線維を傷害し、皮膚老化や色素沈着をもたらすことも知られている。したがって、適度な皮脂産生は健常な皮膚の維持に必要である一方、皮脂の産生過多は美容上好ましくなく、過剰な皮脂産生を抑制することは美容上又は皮膚疾患治療上重要な課題である。
【0003】
皮脂は、毛穴に配置される皮脂腺で合成され、毛穴を通して皮膚表面に産出される。これまで、竹エキス、カリンエキス、ケイトウ属植物などの植物抽出物や、カロテノイド及びその誘導体が、皮脂産生抑制作用を有することが報告されている(特許文献1:特開2021-181494号公報、特許文献2:特開2013-32331号公報、特許文献3:特開2011-140460号公報、及び特許文献4:特開2013-028572号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-181494号公報
【特許文献2】特開2013-32331号公報
【特許文献3】特開2011-140460号公報
【特許文献4】特開2013-028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、皮脂産生抑制剤を取得することであり、取得された皮脂産生抑制剤において、皮脂産生抑制効果を亢進することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、皮脂産生抑制剤をスクリーニングする実験系を完成させ、化粧品候補成分について、スクリーニングを行ったところカルニチン又はその塩、レモンエキス、ツバキ花エキス、フィセチン、ホノキオール、及びジオスミンが皮脂産生抑制作用を有することを見出した。さらに、カルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなる群から選ばれる成分が適用後に可視光下におかれることで、皮脂産生抑制作用が増強されるという点を見出し、本発明に至った。
【0007】
そこで本願は、以下の発明を提供する。
[1] カルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなる群から選ばれる少なくとも1の光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物を、皮膚に適用し、適用後の皮膚を光存在下に置くことを含む、皮脂産生抑制作用を増強するための美容方法。
[2] 前記皮脂産生抑制剤の皮脂産生抑制作用が光存在下において増強される、項目1に記載の美容方法。
[3] べたつき、テカリ、及び化粧崩れを防止するための項目1又は2に記載の美容方法。
[4] カルニチン又はその塩、レモンエキス、ツバキ花エキス、フィセチン、ホノキオール、ジオスミンからなるからなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、皮脂産生抑制剤。
[5] 光存在下で、皮脂産生抑制作用が増強される、項目4に記載の皮脂産生抑制剤。
[6] 遮光容器に収容された、項目4又はに記載の皮脂産生抑制剤。
[7] 項目4~6のいずれか一項に記載の皮脂産生抑制剤を含み、肌のべたつき、テカリ、又は化粧崩れを防止するための、美容用の皮膚外用組成物。
[8] 紫外線を可視光へと変換する波長変換物質をさらに含む、項目7に記載の皮膚外用組成物。
[9] 項目4~6のいずれか一項に記載の皮脂産生抑制剤を含み、過剰皮脂産生により引き起こされる疾患の予防、治療、又は軽減用の皮膚外用組成物。
[10] 紫外線を可視光へと変換する波長変換物質をさらに含む、項目9に記載の皮膚外用組成物。
[11] 皮脂産生抑制用の皮膚外用組成物の製造における、光存在下において皮脂産生抑制作用を増強するためのカルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなるからなる群から選ばれる少なくとも1の成分の使用。
[12] 光応答性皮脂産生抑制剤の皮脂産生抑制作用を亢進するための装置であって、370~780nmの波長の光を、光応答性皮脂産生抑制剤を適用された皮膚に照射する、照射部を備える、前記装置。
[13] 皮脂産生抑制作用を増強するための美容キットであって、
カルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなる群から選ばれる少なくとも1の光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物と、
370~780nmの波長の光を、光応答性皮脂産生抑制剤を適用された皮膚に照射する照射部を備え、光応答性皮脂産生抑制剤の皮脂産生抑制作用を亢進するための装置とを含む、前記キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮脂産生抑制剤により、皮脂産生が抑制される。また、光応答性皮脂産生抑制剤を適用後の皮膚を光の存在下におくことにより、皮脂産生作用が増強される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、皮脂腺細胞において皮脂産生を抑制する成分についてスクリーニングした結果を示す。光未照射下と、光照射下とで、皮脂産生量を測定し、対照に対する皮脂産生量の割合(%)を示す。
図2図2は、光未照射下における皮脂産生量に対する、光照射下における皮脂産生量の割合(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、皮脂産生抑制剤に関する。また、皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物を、皮膚に適用し、適用後の皮膚を光存在下に置くことを含む、皮脂産生抑制作用を増強するための美容方法にも関する。光存在下において皮脂産生抑制作用が増強される皮脂産生抑制剤を、光応答性皮脂産生抑制剤と呼ぶものとする。また、光応答性皮脂産生抑制剤のうち、光非存在下では皮脂産生抑制作用を有さず、光存在下でのみ皮脂産生抑制作用を有する皮脂産生抑制剤を、偏性光応答性皮脂産生抑制剤ということができる。
【0011】
[皮脂産生抑制剤]
本発明において、皮脂産生抑制剤としては、カルニチン又はその塩、レモンエキス、ツバキ花エキス、フィセチン、ホノキオール、及びジオスミンからなる群から選ばれる少なくとも1の成分が用いられる。これらの皮脂産生抑制剤は、光非存在下でも皮脂産生抑制効果を有するが、その皮脂産生抑制効果は光の照射下で亢進する。したがって、これらの皮脂産生抑制剤を、通性光応答性皮脂産生抑制剤ということができる。
【0012】
本発明において、偏性光応答性皮脂産生抑制剤としては、キイチゴエキス、マンゴスチンエキス、及びツバキ葉エキスが挙げられる少なくとも1の成分が用いられる。これらの偏性光応答性皮脂産生抑制剤は、光非存在下では皮脂産生抑制効果を有さず、光の照射下におかれることで皮脂産生抑制作用が生じる。
【0013】
通性光応答性皮脂産生抑制剤と、偏性光応答性皮脂産生抑制剤とを合わせて、光応答性皮脂産生抑制剤ということができる。したがって、光応答性皮脂産生抑制剤は、カルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなる群から選ばれる少なくとも1の成分が用いられる。
【0014】
本発明は、さらに本発明に係る皮脂産生抑制剤又は光応答性皮脂産生抑制剤を含む、皮膚外用組成物に関してもよい。皮膚外用組成物は、美容組成物又は医薬組成物であってもよい。本発明に係る美容組成物は、皮脂産生の抑制により生じる任意の作用、例えば肌のべたつき、テカリ、角栓、毛穴の拡大、化粧崩れ、におい、脂ぎった毛髪、ニキビや吹き出物などの美容上のトラブルを抑制するための美容用の皮膚外用組成物である。本発明に係る医薬組成物は、皮脂産生の抑制により治療、予防又は軽減しうる任意の疾患、例えばざ瘡、脂漏性湿疹、老人性脂腺増殖症、脂腺母斑、酒さ、脱毛症から選ばれる少なくとも1の皮膚疾患の治療、予防又は軽減用の医薬組成物に関する。本発明に係る皮膚外用組成物が、光応答性皮脂産生抑制剤を含む場合、当該皮膚外用組成物は、適用後の皮膚を光存在下に置くという用法を特徴とする。かかる用法は、製品パッケージや広告、使用説明書等に明記されうる。本発明にかかる皮膚外用組成物は、波長変換物質をさらに配合されてもよい。これにより、皮膚に適用された皮膚外用剤が、屋外などで紫外線に曝露された場合も、紫外線が可視光に変換され、光応答性皮脂産生抑制剤に作用し、皮脂産生抑制作用を発揮することができる。
【0015】
本発明において波長変換物質は、特定の波長の入射光を吸収し、入射光よりも長い波長の出射光を放出する物質をいう。本発明の波長変換物質が吸収する入射光は、紫外線が好ましい。波長変換物質により放出される出射光は、紫外線よりも波長が長く、好ましくは450nm~700nm、より好ましくは500nm~700nmにピーク波長を有する。ある実施形態では、波長変換物質は、200nm~400nmの励起光で励起した際に発する光の主波長が450nm~700nm、より好ましくは500nm~700nmを示す。
【0016】
波長変換物質の例として、以下の成分が挙げられる:アロフィコシアニン、C-フィコシアニン、R-フィコシアニン、フィコエリスロシアニン、B-フィコエリスリン、b-フィコエリスリン、C-フィコエリスリン、R-フィコエリスリンなどのフィコビリ蛋白;ビタミンA、、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、クチナシ、ベニバナ、ウコン、コチニール、シソ、赤キャベツ、フラボノイド、カロテノイド、例えばβカロテン、リコピン等、キノイド、ポルフィリン類、アントシアニン類、ポリフェノール類などの天然由来又は合成成分;赤色401号、赤色227号、赤色504号、赤色218号、橙色205号P、黄色4号、黄色5号、緑色201号、ピラニンコンク、青色1号、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、アリズリンパープルSS、紫色401号、黒色401号、へリンドンピンク、黄色401号、ベンチジンエローG、青色404号、赤色104号、メタアミノフェノールなどの色素;無機化合物にドープし蛍光を持たせた蛍光体、例えば、特許第6424656号に記載の非晶質シリカ粒子と、セリウムと、リン及び/又はマグネシウムとを含む青色蛍光体および特許第6361416号に記載のアルカリ土類金属硫化物とガリウム化合物との混晶物にユーロピウムを賦活した化合物を含む赤色蛍光体、国際公開第2018/004006号に記載の酸化亜鉛蛍光体、特開2018-131422号に記載の酸化亜鉛蛍光体;特開平5-117127号に記載の無機蛍光体;等が挙げられる。ある実施形態では、無機蛍光体は、ZnO:Zn、Zn1+z、ZnO1-xのように表すことができる酸化亜鉛を国際公開第2018/004006号に記載の、例えば硫化亜鉛、硫酸亜鉛等の硫化塩及び/又は硫酸塩といった硫黄含有化合物でドープした蛍光体、MgTiO3、Mg2TiO4といったチタン酸マグネシウムをマンガンでドープしたチタン酸マグネシウム蛍光体、及びCa(H2PO42、CaHPO4、Ca3(PO42といったリン酸カルシウムをセリウムでドープしたリン酸カルシウム蛍光体から選択される1種又は複数種の蛍光体である。
【0017】
波長変換物質は、動物、植物、藻類等の天然物から抽出などの方法により得ても、化学的な合成といった人工的な方法により得てもよい。例えば、フィコビリ蛋白は、スピルリナ(Spirulina platensis)などの藍藻類、チノリモ(Porphyridium purpureum)などの紅藻類といった藻類を、例えば特許第4048420号、特許第4677250号、特許第3303942号等に記載の方法で抽出することにより調製してもよい。酸化亜鉛蛍光体は、例えば国際公開第2018/004006号、特開2018-131422号、特開平5-117127号に記載の方法により製造してもよい。チタン酸マグネシウム蛍光体は、特開2017-88719号に記載の方法により製造してもよい。リン酸カルシウム蛍光体は、国際公開第2018/117117号に記載の方法により製造してもよい。なかでも、肌に有益な波長の可視光をより適切な強度で発するという観点から、酸化亜鉛蛍光体、チタン酸マグネシウム蛍光体、C-フィコシアニンからなる群から選ばれる物質を波長変換物質として使用しうる。
【0018】
本発明は、皮脂産生抑制用の皮膚外用組成物の製造における、光存在下において皮脂産生抑制作用を増強するためのカルニチン又はその塩、ツバキ花エキス、レモンエキス、マンゴスチンエキス、ジオスミン、キイチゴエキス、ホノキオール、ツバキ葉エキス、及びフィセチンからなるからなる群から選ばれる少なくとも1の成分の使用にも関する。
【0019】
[美容方法]
本発明は、光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物を、皮膚に適用し、適用後の皮膚を光存在下に置くことを含む、皮脂産生抑制作用を増強するための美容方法にも関する。光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物が適用された皮膚が、光存在下におかれることで、皮脂産生抑制作用が亢進する。光は、可視光のみであってもよいし、紫外線を含む白色光であってもよいし、自然光であってもよく、光応答性皮脂産生抑制剤の皮脂産生抑制作用を増大する光を適宜選択することができる。光存在下におかれるとは、日常生活における電灯や太陽光への曝露であってもよいし、照射部を備えた装置を用いた光の照射であってもよい。本発明の美容方法は、光応答性皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物の適用後、特定の波長の光を照射することを含んでもよく、これにより適用された皮膚外用組成物における皮脂産生抑制作用を増強することができる。光を照射する工程を含む観点から、皮膚に有害な紫外線は除去されていることが好ましく、可視光のみを照射することが好ましい。より好ましくは、成分に応じて、皮脂産生抑制作用を亢進可能な波長を含む可視光が照射される。本発明の美容方法は、例えば美容サロンなどで、医師以外の美容施術者により、特定の波長の可視光を照射可能な照射器を用いて行われうる。
【0020】
一の実施形態として、本発明に係る皮膚外用組成物を皮膚に適用し、当該皮膚外用組成物に含まれる光応答性皮脂産生抑制剤の種類に応じて、照射する光を選択して、光照射器を用いて照射することができる。照射される光は、可視光、白色光が挙げられる。可視光は、紫外線、赤外線を含まない光である一方、白色光は紫外線及び/又は赤外線を含む光を指す。紫外線を避ける観点から、可視光を照射することが好ましい。光応答性皮脂産生抑制剤の種類に応じて、皮脂産生抑制作用を高める光を適宜選択することができる。可視光の中でも特に、赤、橙、黄、緑、青、藍、及び紫の色から選択される特定波長を有する光を選択することもできる。通常、可視光としては、紫外線をカットする紫外線フィルター及び/又はIRフィルターを、ソーラーシュミレーター等の光源に装着することで照射することができるし、予め紫外線の発生を抑制した光源を用いて照射することもできる。白色光は、400nm以下の波長の紫外線、400~760nmの波長の可視光、及び800nm以上の波長の赤外線を含んでおり、それぞれエネルギーバランスに顕著な偏りのない光を指す。白色光は、自然光であってもよいし、自然光を模した光源、例えばソーラーシュミレーターをフィルターなしで用いて照射することができる。
【0021】
可視光の照射強度及び照射時間は、光照射器に応じて適宜選択することができる。皮脂産生量測定方法によって、細胞実験で効果を有する照射強度及び照射時間に基づいて、適宜設定することができる。一例として、可視光の強度は1~100mW/cm2を選択することができ、1分~30分間照射することが好ましい。十分な皮脂産生抑制作用を発揮させる観点から可視光強度は、10mW/cm2以上が好ましく、20mW/cm2以上がさらに好ましい。強度が強すぎると細胞に毒性が生ずる懸念があるため可視光強度は、50mW/cm2以下が好ましく、30mW/cm2以下がさらに好ましい。十分な皮脂産生抑制作用を発揮させる観点から、10分以上、より好ましくは30分間以上照射することが好ましい。
【0022】
本発明の、皮脂産生抑制剤、美容方法及び皮膚外用組成物により、皮膚において皮脂産生抑制作用を亢進することで、肌のべたつき、テカリ、角栓、毛穴の拡大、化粧崩れ、におい、脂ぎった毛髪、ニキビや吹き出物などの美容上のトラブル、並びに脂漏性湿疹、老人性脂腺増殖症、脂腺母斑、酒さ、脱毛症といった皮膚疾患を治療又は予防することができる。したがって、本発明の美容方法及び皮膚外用組成物を適用する対象は、特に皮脂産生に悩む対象において適用することが好ましい。皮脂産生に悩む対象としては、肌のべたつき、テカリ、角栓、毛穴の拡大、化粧崩れ、におい、脂ぎった毛髪、ニキビや吹き出物から選ばれる少なくとも1の美容上のトラブル、又は脂漏性湿疹、老人性脂腺増殖症、脂腺母斑、酒さ、脱毛症から選ばれる少なくとも1の皮膚疾患を患う対象が挙げられる。
【0023】
[皮脂産生量の測定]
本発明において、皮脂産生量は、インビボにおいて産生する皮脂量を、スワブを行うことにより、又はてかりなどの外観から測定してもよい。さらに別の態様では、皮脂産生量は、インビトロにおいて皮脂腺細胞の培養、又は皮脂腺の器官培養を行うことで、皮脂産生量を測定することができる。特定の成分の適用及び/又は光の照射を行うことで、皮脂産生量の変化を測定し、皮脂産生抑制作用を決定することができる。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は皮脂産生抑制剤のスクリーニング方法に関してもよい。皮脂産生抑制剤は、培養された皮脂腺細胞において油滴量を指標とすることで、皮脂産生抑制剤をスクリーニングすることができる。より具体的に以下の:
候補成分を含む培地で、皮脂腺細胞を培養する工程、
候補薬剤を含む培地で培養中又は培養後において、皮脂腺細胞における油滴量を測定する工程、及び
測定された油滴量を対照と比較し、候補薬剤の皮脂産生抑制作用を決定する工程
を含む。
油滴量が減少した場合に、候補成分を皮脂産生抑制剤としてスクリーニングすることができる。油滴量は、油滴をオイルレッドなどの染色剤を用いて染色することにより測定することができる。対照として、ビヒクル対照(候補成分のみを添加しない対照)における皮脂産生量を用いることができる。さらに別の態様では、培養工程の間に候補成分を含む培地に対し、光、特に可視光を照射する工程を含んでもよい。光の照射条件は、本明細書において記載の条件を用いることができる。その場合、光未照射対照における皮脂産生量に対する光照射した場合の皮脂産生量を比較することにより、皮脂産生抑制作用を決定することができる。
【0025】
本発明のスクリーニング方法に用いる候補成分は、化粧品素材、食品素材、医薬品素材などの任意のライブラリーを使用することができる。かかるライブラリーとしては、化合物ライブラリー、エキスライブラリーなどを使用してもよい。各ライブラリーに含まれる化合物及びエキスは、市販の化合物及びエキスを使用してもよいし、合成された化合物及び調製されたエキスを使用してもよい。本発明のスクリーニング方法において、皮脂産生抑制作用を有すると決定された成分として、塩化レボカルニチン、レモンエキス、ツバキ花エキス、ジオソミン、フィセチン、及びホノキオールが挙げられる。また光照射下で皮脂産生抑制作用が増強される成分として、塩化レボカルニチン、レモンエキス、ツバキ花エキス、ジオソミン、フィセチン、ホノキオール、キイチゴエキス、マンゴスチンエキス、及びツバキ葉エキスが挙げられる。
【0026】
ツバキ花エキスは、日本原産のツバキ(Camellia japonica)の花から溶媒抽出されたエキスである。溶媒として水、アルコール、又はそれらの混合溶媒を用いて、抽出することにより調製することができる。アルコールとしては、エタノール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いることができる。より好ましくは、水とエタノール又は水と1,3-ブチレングリコールの任意の割合の混合液、例えば10:90~90:10の混合液、好ましく30:70~70:30、さらに好ましくは50:50の混合液により抽出されうる。ツバキ花エキスは、抗酸化作用をはじめとして様々な美容効果があることが知られている。ツバキ花エキスは、0.000001%~1.0%の濃度で化粧品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0027】
ツバキ葉エキスは、日本原産のツバキ(Camellia japonica)の葉から溶媒抽出されたエキスである。溶媒として水、アルコール、又はそれらの混合溶媒を用いて抽出することにより調製することができる。アルコールとしては、エタノール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いることができる。より好ましくは、水とエタノール又は水と1,3-ブチレングリコールの任意の割合の混合液、例えば10:90~90:10の混合液、好ましく30:70~70:30、さらに好ましくは50:50の混合液により抽出されうる。ツバキ葉エキスは、抗酸化作用、エラスターゼ阻害作用、エストロゲン様作用などを有し、アンチエイジング等の美容効果があることが知られている。ツバキ葉エキスは、0.000001%~1.0%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0028】
レモンエキスは、栽培種として広く栽培されているレモン(Citrus limon)の果実から溶媒抽出されたエキスである。レモンエキスは一例として、溶媒として水、アルコール、又はそれらの混合溶媒を用いて抽出することにより調製することができる。アルコールとしては、エタノール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いることができる。より好ましくは、水とエタノール又は水と1,3-ブチレングリコールの任意の割合の混合液、例えば10:90~90:10の混合液、好ましく30:70~70:30、さらに好ましくは50:50の混合液により抽出されうる。レモンエキスには、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、シトラールなどのテルペノイドが含まれ、引き締め作用などの美容効果があることが知られている。レモンエキスは、0.000001%~1.0%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0029】
キイチゴエキスは、北半球の寒帯から温帯に広く自生するキイチゴ(Rubus Idaeus)の果実から溶媒抽出されたエキスである。キイチゴエキスは、溶媒として水、アルコール、又はそれらの混合溶媒を用いて抽出することにより調製することができる。アルコールとしては、エタノール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いることができる。より好ましくは、水とエタノール又は水と1,3-ブチレングリコールの任意の割合の混合液、例えば10:90~90:10の混合液、好ましく30:70~70:30、さらに好ましくは50:50の混合液により抽出されうる。レキイチゴエキスには、アントシアニンなどのフラボノイドや、アスコルビン酸などのビタミン等が含まれ、抗アレルギー作用、メラニン生成抑制作用を発揮し、シミ抑制や抗老化抑制などの美容効果があることが知られている。キイチゴエキスは、0.000001%~1.0%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0030】
マンゴスチンエキスは、東南アジア原産のマンゴスチン(Garcinia mangostana L.)の果実から溶媒抽出されたエキスである。マンゴスチンエキスは、一例として溶媒として水、アルコール、又はそれらの混合溶媒を用いて抽出することにより調製することができる。アルコールとしては、エタノール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いることができる。より好ましくは、水とエタノール又は水と1,3-ブチレングリコールの任意の割合の混合液、例えば10:90~90:10の混合液、好ましく30:70~70:30、さらに好ましくは50:50の混合液により抽出されうる。マンゴスチンエキスには、ロダンテノンBが含まれることが知られており、抗糖化作用を発揮し、抗老化抑制などの美容効果があることが知られている。マンゴスチンエキスは、0.000001%~1.0%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0031】
カルニチンは、以下の式:
【化1】
で表される化合物である。カルニチン又はその塩は、赤身の肉に含まれる成分であり、脂質代謝にかかわることが知られている。カルニチンとしては特にL-カルニチンが好ましい。カルニチンは、0.01%~5%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.1%~1%がより好ましい。
【0032】
ジオスミンは、以下の式:
【化2】
で表される化合物である。ジオスミンは、柑橘類の果実に含まれるフラボノイド配糖体である。ジオスミンは、血管保護作用を有することが知られている。ジオスミンは、0.0001%~1.0%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0033】
ホノキオールは、以下の式:
【化3】
で表される化合物である。ホノキオールは、モクレンの樹皮に含まれるポリフェノールの一種であり、抗酸化作用を有する。ホノキオールは、漢方薬として使用されており、鎮痛作用、抗炎症作用、抗がん作用などの生理作用が報告されている。ホノキオールは、0.0001%~1.0%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0034】
フィセチンは、以下の式
【化4】
で表される化合物である。フィセチンは、イチゴ、ハグマノキ等に含まれるフラボノイドの一種であり、抗酸化作用を有し、また抗炎症、抗がん作用、老化抑制作用を有することが報告されている。フィセチンは、
0.0001%~1.0%の濃度で化粧品、医薬部外品又は医薬品に配合され、0.001%~0.1%がより好ましい。
【0035】
本明細書に記載されるエキスは常法により得ることができ、例えばその起源となる植物を抽出溶媒とともに常温又は加熱して浸漬または加熱還流した後、濾過し、濃縮して得ることができる。抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、例えば、水性溶媒、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、あるいは有機溶媒、例えばエタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、含水アルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。好ましくは、溶媒として水とアルコール、例えば1,3-ブチレングリコールの混合溶媒が使用される。上記溶媒で抽出して得られた抽出物をそのまま、あるいは例えば凍結乾燥などにより濃縮したエキスを使用でき、また必要であれば吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えばアンバーライトXAD-2)のカラムにて吸着させた後、所望の溶媒で溶出し、さらに濃縮したものも使用することができる。
【0036】
本発明の皮膚外用組成物は、本発明において特定された光応答性皮脂産生抑制剤を含んでいれば任意の皮膚外用組成物であってもよい。このような皮膚外用組成物は、医薬品、医薬部外品、化粧品等であってもよい。本発明の美容方法において用いる皮膚外用組成物の剤型、塗布法、投与回数等は任意に決定できる。例えば、化粧水、スプレー、オイル、クリーム、乳液、ゲル、サンスクリーン剤、サンタン剤、といった形態であってもよい。本発明の美容方法における光照射前に、皮膚外用組成物を1回又は複数回塗布し、その後すぐに、又は一定期間、例えば10分~数時間あけて、光を照射してもよい。光の照射に代えて、屋外又は点灯された屋内で活動することで、光を照射されてもよい。本発明に係る皮膚外用組成物は、遮光容器に収容することを特徴としてもよい。本発明の皮膚外用組成物に含まれる光応答性皮脂産生抑制剤は、光の照射により皮脂産生抑制作用が増大するが、光照射により光応答性皮脂産生抑制剤の安定性が失われる可能性がある。したがって、遮光容器に収容することで、光応答性皮脂産生抑制剤を適用直前まで安定に保持することができる。
【0037】
また、本発明の皮膚外用組成物は、必要に応じて、例えば、賦形剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、油分、粉末、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤等の添加剤を任意に選択し併用することができる。さらに、本発明の効果を高めるために、他の細胞賦活化剤等を併用してもよい。
【0038】
[装置]
光照射器は、皮膚外用組成物を適用した皮膚に限定して照射するために、ハンディタイプであってもよいし、全身照射用であってもよい。皮膚外用組成物の適用は、全身の皮膚であってよいが、特に皮脂産生抑制作用を発揮させる観点から、顔、頭、四肢、体などの任意の部位の皮膚であってもよい。
【0039】
[美容キット]
本発明のさらなる態様では、本発明は、皮脂産生抑制剤を含む皮膚外用組成物と、可視光域の波長、特に450~700nm、450~600nm、又は500~550nmの波長で、1000~100000Luxの可視光を照射する照射器とを含む、美容キットに関していてもよい。かかる美容キットは、購入者により使用されてもよいし、美容施術者により使用されてもよい。可視光を照射する照射器は、本技術分野に周知の照射器を用いることで照射することが可能である。所定のピーク範囲の可視光を照射する観点から、LEDと、場合によりフィルターとを用いて照射される波長を調節することが好ましい。
【0040】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例0041】
実施例1:光照射により、皮脂産生抑制作用を増強可能な皮脂産生抑制剤のスクリーニング
1.細胞培養及び光照射処理
ヒト皮脂腺細胞(SK370、頭皮由来、CTI社)をSebGln4(CTI社)に播種し、2日間CO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内で培養を行った。2日間の培養後、回収したヒト皮脂腺細胞を、24ウェルプレートの1ウェルあたり9000cellsで播種し、SebGln4培地で培養した。2日間CO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内で培養後、脂質合成誘導因子(Frozen Lipid Droplet Stimulator、CTI社)配合の培地に交換し、0.01%カルニチン(丸善製薬株式会社)、1μMジオスミン(東京化成工業)、1μMホノキオール(東京化成工業)、0.1%レモンエキス(香栄興業株式会社)、0.1%キイチゴエキス(イワキ株式会社)、0.1%加水分解真珠タンパク抽出液(イワキ株式会社)、0.1%ハマメリス(塩野香料株式会社)、0.1%ツバキ花エキスBG50(Bioland Ltd.)、0.1%ツバキ葉エキスBG50(Bioland Ltd.)、マンゴスチンエキス((一丸ファルコス株式会社)をそれぞれ添加した。カルニチンは水、ジオスミン、ホノキオールはDMSOに溶解し、その他エキスはそれぞれそのまま用いた。ビヒクルのウェルには、それぞれの薬剤又はエキスの溶媒のみを培地に添加した。翌日、培地を温HBSS(+)(富士フイルム和光純薬社)に交換し、可視光を15分間照射した。照射にはソーラーシュミレーターを用い、UVとIRをカットするためにGG420フィルターとKG1フィルター(エドモンド・オプティクス・ジャパン社)を使用した。可視光の強度は36.2mJ/cm2とした。光未照射対照群では完全遮光下同条件で実験を行った。光照射終了後、培地をSebGln4に交換し、さらに3日間培養を行い、3日後に同様の可視光照射を行った。さらに2日間培養を行い、以下に説明する手法に基づいて、細胞数及び油滴量を測定した。光未照対照群のビヒクルにおける皮脂産生量に対する、光未照射群の各成分を添加した場合の皮脂産生量を測定し、皮脂産生抑制率とした。光照射群でも同様に、光未照射対照における皮脂産生量に対する光照射群の各成分を添加した場合の皮脂産生量を測定し、皮脂産生抑制率とした。結果を図1に示す(白グラフ:光未照射群、灰色グラフ:光照射群)。
さらに、光未照射群の皮脂産生量に対する光照射群の皮脂産生量を計算し、光照射による皮脂産生変化率(%)として示した(図2)。
【0042】
2.細胞数の測定
培養処理した細胞を温PBS(-)(ナカライテスク社)で洗浄し、5μg/mLに調製したHoechst(登録商標)33342(Thermo Fisher社)/PBS溶液を添加し、30分間インキュベート後、再度温PBS(-)で洗浄し、BioTek社製のマルチプレートリーダーを用いて蛍光強度(励起波長350nm、蛍光波長461nm)測定を行った。Hoechst(登録商標)33342は、二本鎖DNAと結合すると青色蛍光を発するため、細胞数の測定に使用された。
【0043】
3.油滴産生量の測定
油滴量の測定には、リピッドアッセイキット(PMC社)を使用した。細胞数測定を行った細胞を10%中性ホルマリン(富士フィルム和光純薬社)に一晩浸漬し、固定した。その後超純水で洗浄し、オイルレッドO溶液(PMC社)を添加した。15分インキュベート後、超純水で2度以上洗浄し、抽出液で色素を抽出した。抽出液を、540nmの吸光度で測定し、細胞数で割ったものを細胞あたりの油滴量とした。
【0044】
4.結果
塩化レボカルニチン、レモンエキス、ツバキ花エキス、ジオソミン、フィセチン、及びホノキオールを添加した場合に、ビヒクル群に比較して皮脂産生量が減少した。したがってこれらの成分は皮脂産生抑制剤ということができる。
また、光照射を行うことにより、さらに皮脂産生量が抑制された成分として、塩化レボカルニチン、レモンエキス、ツバキ花エキス、ジオソミン、フィセチン、及びホノキオールが挙げられ、これらの成分を光応答性皮脂産生抑制剤ということができる。
なお、キイチゴエキス、マンゴスチンエキス、及びツバキ葉エキスは、光未照射下では、皮脂産生抑制作用を有さなかった一方、光照射下で皮脂産生抑制作用を有した。したがって、これらの成分は、光応答性皮脂産生抑制剤ということができるが、特に偏性光応答性皮脂産生抑制剤ということができる。
図1
図2