(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164575
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241120BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241120BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241120BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241120BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241120BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 652B
H01L29/78 652T
H01L29/78 658G
H01L21/304 611Z
B23K26/53
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080167
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 崇
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】油井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】原 佳祐
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB02
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA40
4E168DA46
4E168JA13
5F057AA02
5F057BA16
5F057BB06
5F057CA13
5F057CA31
5F057DA03
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA31
(57)【要約】
【課題】電極が変形することを抑制する。
【解決手段】半導体基板10の一面10a上には、絶縁膜20が配置され、絶縁膜20および半導体基板10には、絶縁膜20側から半導体基板10側に向かって幅が狭くなるテーパ状のコンタクトホール20aが形成されており、電極31、32は、絶縁膜上に配置される部分と、コンタクトホールに配置されて半導体基板と電気的に接続される接続部32bと、を有しており、隣合う接続部32bの間には、絶縁膜が配置されるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
半導体素子が形成され、一面(10a)および前記一面と反対側の他面(10b)を有し、窒化ガリウムで構成される半導体基板(10)と、
前記半導体基板の一面側に配置され、前記半導体素子を駆動するための電極(31、32)と、を備え、
前記半導体基板の一面上には、絶縁膜(20)が配置され、
前記絶縁膜および前記半導体基板には、前記絶縁膜側から前記半導体基板側に向かって幅が狭くなるテーパ状のコンタクトホール(20a)が形成されており、
前記電極は、前記絶縁膜上に配置される部分と、前記コンタクトホールに配置されて前記半導体基板と電気的に接続される接続部(32b)と、を有しており、
隣合う前記接続部の間には、前記絶縁膜が配置されている半導体装置。
【請求項2】
前記コンタクトホールの側面と直交する仮想線(K1)と、前記一面の法線方向に沿った仮想線(K2)との間の成す角度(θ)は、前記半導体基板の他面側から照射されたレーザ光(L2)に対する反射率が80%以上となる角度とされている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体素子が形成され、一面(10a)および前記一面と反対側の他面(10b)を有し、窒化ガリウムで構成される半導体基板(10)と、
前記半導体基板の一面側に配置され、前記半導体素子を駆動するための電極(31、32)と、を備え、
前記半導体基板の一面上には、絶縁膜(20)が配置され、
前記絶縁膜および前記半導体基板には、前記絶縁膜側から前記半導体基板側に向かって幅が狭くなるテーパ状のコンタクトホール(20a)が形成されており、
前記電極は、前記絶縁膜上に配置される部分と、前記コンタクトホールに配置されて前記半導体基板と電気的に接続される接続部(32b)と、を有しており、
隣合う前記接続部の間には、前記絶縁膜が配置されている半導体装置の製造方法であって、
一面(200a)および前記一面と反対側の他面(200b)を有し、窒化ガリウムで構成される加工ウェハ(200)を用意することと、
前記加工ウェハの一面側に前記半導体素子を形成することと、
前記加工ウェハの一面上に前記絶縁膜および前記電極を形成することと、
前記加工ウェハの他面側から当該加工ウェハの内部にレーザ光(L1)を照射することにより、前記加工ウェハの内部に、前記加工ウェハの面方向に沿った変質層(15)を形成することと、
前記変質層を境界として前記加工ウェハを分割することにより、前記加工ウェハを、前記加工ウェハの一面側の装置構成ウェハ(230)と、前記加工ウェハの他面側のリサイクルウェハ(240)とに分割することと、
前記装置構成ウェハを個片化することと、を行い、
前記絶縁膜および前記電極を形成することでは、前記絶縁膜に前記コンタクトホールを形成することと、前記コンタクトホールに配置されて前記半導体基板と電気的に接続される前記接続部を有する前記電極を形成することと、を行う半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁膜および前記電極を形成することでは、前記変質層を形成することの際、前記半導体基板の他面側から照射した前記レーザ光に対し、前記コンタクトホールに配置された前記接続部の前記レーザ光に対する前記反射率が80%以上となるように、前記コンタクトホールの側面と直交する仮想線(K1)と、前記一面の法線方向に沿った仮想線(K2)との間の成す角度(θ)が調整されている請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、GaNともいう)で構成される半導体装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、GaNで構成される加工ウェハを分割する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この方法では、加工ウェハを用意した後、レーザ光を照射して加工ウェハの内部に面方向に沿った変質層を形成する。そして、この方法では、変質層を分割の起点として加工ウェハを2つのウェハに分割している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、加工ウェハに複数の半導体素子を形成した状態で加工ウェハを分割し、半導体素子が形成された側のウェハを半導体装置を構成するための装置構成ウェハとすることを検討している。なお、半導体素子は、例えば、ベース層やソース領域等を有するMOSFET等であり、装置構成ウェハには、ベース層やソース領域等と電気的に接続される電極が形成されている。MOSFETは、metal oxide semiconductor field effect transistorの略である。この場合、本発明者らの検討によれば、変質層を形成するためのレーザ光を照射する際、電極がレーザ光で加熱されて変形する場合があることが確認された。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、電極が変形することを抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1は、半導体装置であって、半導体素子が形成され、一面(10a)および一面と反対側の他面(10b)を有し、窒化ガリウムで構成される半導体基板(10)と、半導体基板の一面側に配置され、半導体素子を駆動するための電極(31、32)と、を備え、半導体基板の一面上には、絶縁膜(20)が配置され、絶縁膜および半導体基板には、絶縁膜側から半導体基板側に向かって幅が狭くなるテーパ状のコンタクトホール(20a)が形成されており、電極は、絶縁膜上に配置される部分と、コンタクトホールに配置されて半導体基板と電気的に接続される接続部(32b)と、を有しており、隣合う接続部の間には、絶縁膜が配置されている。
【0007】
これによれば、半導体装置を製造する際、電極のうちの絶縁膜上に配置されている部分は、絶縁膜にてレーザ光が吸収されるため、加熱されて変形することが抑制される。また、コンタクトホールに配置された接続部は、レーザ光がテーパ状とされた部分で反射するため、加熱されて変形することが抑制される。そして、隣合う接続部の間には絶縁膜が配置されているため、反射したレーザ光が別の接続部に達することを抑制できる。
【0008】
請求項3は、請求項1に記載の半導体装置に関する製造方法であって、一面(200a)および一面と反対側の他面(200b)を有し、窒化ガリウムで構成される加工ウェハ(200)を用意することと、加工ウェハの一面側に半導体素子を形成することと、加工ウェハの一面上に絶縁膜および電極を形成することと、加工ウェハの他面側から当該加工ウェハの内部にレーザ光(L1)を照射することにより、加工ウェハの内部に、加工ウェハの面方向に沿った変質層(15)を形成することと、変質層を境界として加工ウェハを分割することにより、加工ウェハを、加工ウェハの一面側の装置構成ウェハ(230)と、加工ウェハの他面側のリサイクルウェハ(240)とに分割することと、装置構成ウェハを個片化することと、を行い、絶縁膜および電極を形成することでは、絶縁膜にコンタクトホールを形成することと、コンタクトホールに配置されて半導体基板と電気的に接続される接続部を有する電極を形成することと、を行う。
【0009】
これによれば、電極のうちの絶縁膜上に配置されている部分は、絶縁膜にて変質層を形成する際のレーザ光が吸収されるため、加熱されて変形することが抑制される。また、コンタクトホールに配置された接続部は、変質層を形成する際のレーザ光がテーパ状とされた部分で反射するため、加熱されて変形することが抑制される。そして、隣合う接続部の間には絶縁膜が配置されているため、反射したレーザ光が別の接続部に達することを抑制できる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図2A】
図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2B】
図2Aに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2C】
図2Bに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2D】
図2Cに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2E】
図2Dに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2F】
図2Eに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2G】
図2Fに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2H】
図2Gに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2I】
図2Hに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2J】
図2Iに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図2K】
図2Jに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3B】
図3Aに続く電極を形成する工程を示す断面図である。
【
図3C】
図3Bに続く電極を形成する工程を示す断面図である。
【
図3D】
図3Cに続く電極を形成する工程を示す断面図である。
【
図3E】
図3Dに続く電極を形成する工程を示す断面図である。
【
図4】加工ウェハの一面上に電極が直接配置されている部分の電極の形状を説明するための断面図である。
【
図5】加工ウェハの一面上に電極が絶縁膜を介して配置されている部分の電極の形状を説明するための断面図である。
【
図6】
図3Cの工程における抜けレーザ光を示す断面図である。
【
図7】入射角度、反射率、金属材料の関係を示す図である。
【
図8】入射角度、反射率、金属材料の関係を示す図である。
【
図9】他の実施形態における半導体装置のソース電極を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、縦型であるnチャネル型のMOSFETが形成されている半導体装置を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための半導体装置を構成するのに適用されると好適である。
【0014】
半導体装置S1は、
図1に示されるように、n
+型のGaNで構成される基板11を備えている。なお、本実施形態では、基板11にてドレイン層が構成される。基板11上には、n型のGaNで構成されるドリフト層12が形成されている。ドリフト層12の表層部には、p型のベース層13が形成されている。このベース層13は、MOSFETのチャネルを構成する層である。ベース層13の表層部には、n
+型とされたソース領域14が形成されている。そして、本実施形態では、基板11、ドリフト層12、ベース層13、ソース領域14等を含んで半導体基板10が構成されている。以下、半導体基板10のうちの基板11側の面を半導体基板10の他面10bとし、半導体基板10のうちのソース領域14側の面を一面10aとして説明する。
【0015】
なお、本実施形態の半導体装置S1では、基板11およびドリフト層12がGaNで構成され、ベース層13およびソース領域14がイオン注入等で形成される。このため、本実施形態の半導体装置は、GaNで構成されるGaN半導体装置ということもできる。
【0016】
半導体基板10の一面10a上には、酸化膜(SiO2)等で構成される絶縁膜20が形成されている。そして、絶縁膜20上には、ゲート電極31およびソース電極32が形成されている。具体的には、ゲート電極31は、絶縁膜20のうちのベース層13上に位置する部分をゲート絶縁膜として、このゲート絶縁膜上に形成されている。なお、本実施形態では、後述するように、絶縁膜20にて抜けレーザ光L2が吸収される。このため、絶縁膜20は、吸収層としての機能も発揮する。
【0017】
ソース電極32は、ベース層13およびソース領域14と電気的に接続されるように形成されている。詳しくは、絶縁膜20および半導体基板10には、絶縁膜20側からソース領域14を貫通してベース層13に達するコンタクトホール20aが形成されている。つまり、コンタクトホール20aは、ベース層13およびソース領域14を露出させるように形成されている。そして、ソース電極32は、コンタクトホール20aを通じてソース領域14およびベース層13と電気的に接続されるように絶縁膜20上に形成されている。以下、ソース電極32のうちの絶縁膜20上に位置する部分を主部32aとし、コンタクトホール20aに埋め込まれている部分を接続部32bとして説明する。なお、ソース電極32の主部32aは、ゲート電極31とは分離して形成されている。
【0018】
ここで、本実施形態のコンタクトホール20aの形状について説明する。コンタクトホール20aは、絶縁膜20側からベース層13およびソース領域14側に向かって幅が狭くなるテーパ状とされていると共に、ベース層13に位置する先端部が尖った形状とされている。なお、ここでの幅とは、コンタクトホール20aの相対する側面の間隔のことであり、
図1中の紙面左右方向に沿った長さのことである。そして、コンタクトホール20aの側面と直交する仮想線K1と一面200aに対する法線方向に沿った仮想線K2との間の成す角度θは、後述する抜けレーザ光L2の接続部32bに対する反射率が80%以上となるように、角度が調整されている。
【0019】
また、コンタクトホール20aは、隣合うコンタクトホール20aの間に絶縁膜20が位置するように形成されている。言い換えると、隣合う接続部32bの間には、絶縁膜20が配置されている。本実施形態では、ソース電極32がゲート電極31を挟むように形成されており、ゲート電極31を挟む部分のソース電極32は、それぞれ接続部32bを有している。そして、これらの接続部32bの間には、絶縁膜20が配置されている。
【0020】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極33が形成されている。
【0021】
以上が本実施形態における半導体装置S1の構成である。次に、上記半導体装置の製造方法について、
図2A~
図2Kを参照しつつ説明する。
【0022】
まず、
図2Aに示されるように、一面100aおよび他面100bを有し、バルクウェハ状とされているGaNウェハ100を用意する。例えば、GaNウェハ100は、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×10
17~5×10
19cm
-3とされたものが用いられる。なお、GaNウェハ100の厚みについては任意であるが、例えば400μm程度のものが用意される。また、本実施形態のGaNウェハ100は、一面100aがガリウム面とされると共に他面100bが窒素面とされている。また、このGaNウェハ100は、下記半導体装置S1の製造工程を行った後では、後述する
図2Kのリサイクルウェハ240を再利用することで用意される。
【0023】
次に、
図2Bに示されるように、GaNウェハ100の一面100a上に、10~100μm程度のGaNで構成されるエピタキシャル膜110を形成することにより、複数の装置形成領域RAがダイシングラインDLで区画される加工ウェハ200を用意する。本実施形態のエピタキシャル膜110は、GaNウェハ100の一面100a側から、n
+型のエピタキシャル層、n
-型のエピタキシャル層が順に成膜されて構成される。n
+型のエピタキシャル膜は、例えば、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×10
17~1×10
18cm
-3程度とされる。n
-型のエピタキシャル層は、例えば、シリコン等がドーパントされ、不純物濃度が1×10
16~1×10
17cm
-3程度とされる。なお、本実施形態では、n
+型のエピタキシャル層を含んで半導体装置S1における基板11が構成され、n
-型のエピタキシャル層にてドリフト層12等が構成される。
【0024】
以下では、加工ウェハ200のうちのエピタキシャル膜110側の面を加工ウェハ200の一面200aとし、加工ウェハ200のうちのGaNウェハ100側の面を加工ウェハ200の他面200bとする。そして、各装置形成領域RAは、加工ウェハ200の一面200a側に構成される。
【0025】
次に、
図2Cに示されるように、一般的な半導体製造プロセスのうちの一面200a側に対するプロセスである表面側プロセスを行う。具体的には、表面側プロセスとして、イオン注入、蒸着、ウェットプロセス等を適宜行い、上記のベース層13、ソース領域14、絶縁膜20、ゲート電極31、ソース電極32等を形成する。その後、必要に応じ、加工ウェハ200の一面200a側に、レジスト等で構成される表面保護膜を形成する。
【0026】
ここで、本実施形態のソース電極32を形成する工程について、
図3A~
図3Eを参照しつつ説明する。なお、
図3A~
図3Eでは、ベース層13およびソース領域14を省略して示してある。
【0027】
まず、ベース層13およびソース領域14を形成した後、加工ウェハ200の一面200a上に絶縁膜20を配置し、絶縁膜20上にレジスト210を配置する。以下、レジスト210のうちの絶縁膜20と反対側の面を一面210aとし、レジスト210のうちの絶縁膜20側の面を他面210bとして説明する。
【0028】
次に、
図3Bに示されるように、フォトエッチング等によってレジスト210をパターニングし、レジスト210における絶縁膜20のコンタクトホール20aが形成される部分と対応する部分に開口部211を形成する。
【0029】
なお、レジスト210の開口部211は、絶縁膜20側に向かって幅が狭くなるテーパ状に形成される。このような開口部211は、例えば、次のように形成される。すなわち、まず、ドライエッチング等で開口部211を形成する。また、レジスト210は、絶縁膜20上に配置されており、他面210bが絶縁膜20で拘束されると共に一面210aが解放されているため、一面210a側の部分と他面210b側の部分とで熱収縮が異なる。このため、加熱処理を行い、一面210a側の部分を他面210b側の部分より熱収縮させることにより、開口部211を絶縁膜20側に向かって幅が狭くなるテーパ状に形成する。
【0030】
続いて、
図3Cに示されるように、レジスト210をマスクとして絶縁膜20にコンタクトホール20aを形成する。その後、レジスト210をアッシング処理等によって除去する。なお、この工程では、加工ウェハ200にはコンタクトホール20aは形成されていない。
【0031】
次に、
図3Dに示されるように、絶縁膜20をマスクとし、コンタクトホール20aを絶縁膜20から加工ウェハ200に達するように掘り下げる。この際、絶縁膜20も除去されることにより、
図3Cよりも絶縁膜20の厚さが薄くなると共にコンタクトホール20aにおける開口部の幅が広くなる。なお、仮想線K1と仮想線K2との間の成す角度θは、
図3Cの工程で絶縁膜20に形成されたコンタクトホール20aのテーパ角度および、絶縁膜20とGaN(すなわち、加工ウェハ200)との選択比に依存する。そして、成す角度θは、後述する抜けレーザ光L2の接続部32bに対する反射率が80%以上となるように、ソース電極32の材質によって適宜調整される。
【0032】
その後、
図3Eに示されるように、CVD(chemical vapor depositionの略)法等により、コンタクトホール20aが埋め込まれるように絶縁膜20上に金属膜を配置し、この金属膜をパターニングすることで上記のソース電極32が形成される。
【0033】
ソース電極32等を形成した後は、
図2Dに示されるように、加工ウェハ200の一面200a側に保持部材300を配置する。保持部材300は、例えば、基材310と粘着剤320とを有するダイシングテープ等が用いられる。基材310は、製造工程中に反り難い材料で構成され、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成される。粘着剤320は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。この場合、粘着剤320は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。但し、粘着剤320は、後述する
図2Gのドレイン電極33を形成する際にも粘着力を維持する材料で構成される。
【0034】
次に、
図2Eに示されるように、加工ウェハ200の他面200bからレーザ光L1を照射し、加工ウェハ200の一面200aから所定深さDとなる位置に、加工ウェハ200の面方向に沿った変質層220を形成する。なお、レーザ光L1は、加工ウェハ200の他面200bに対する法線方向に沿って照射される。
【0035】
具体的には、図示しない、レーザ光L1を発振するレーザ光源、レーザ光の光軸を変えるように配置されたダイクロイックミラー、レーザ光を集光するための集光レンズ、および変位可能なステージ等を有するレーザ装置を用意する。そして、変質層220を形成する際には、レーザ光L1の集光点が加工ウェハ200の面方向に沿って相対的に走査されるように、ステージ等の位置を調整する。これにより、加工ウェハ200には、面方向に沿った変質層220が形成される。より詳しくは、レーザ光L1を照射することにより、窒素がガスとして蒸発すると共にガリウムが析出された変質層220が形成される。
【0036】
なお、変質層220を形成する際の所定深さDは、半導体装置S1のハンドリングのし易さや狙いのオン抵抗等に応じて設定され、例えば、65μm程度とされる。また、変質層220は、エピタキシャル膜110の厚さに応じて形成される場所が変更され、エピタキシャル膜110の内部、エピタキシャル膜110とGaNウェハ100との境界、またはGaNウェハ100の内部のいずれかに形成される。そして、変質層220がエピタキシャル膜110の内部またはエピタキシャル膜110とGaNウェハ100との境界に形成されると、基板11は、n+型のエピタキシャル層で構成される。変質層220がGaNウェハ100の内部に形成されると、基板11は、n+型のエピタキシャル層およびGaNウェハ100で構成される。本実施形態では、エピタキシャル膜110とGaNウェハ100との境界に変質層220を形成する例を説明する。
【0037】
また、特に限定されるものではないが、本実施形態では、変質層220を形成する際のレーザ光L1は、固体レーザ光であって、波長が532nmのグリーンレーザが用いられる。そして、レーザ光L1は、加工点出力が0.1~0.3μJ、パルス幅が500ps、加工速度が50~500mm/sとされて照射される。但し、これらの条件は1例であり、本発明者らは、レーザ光の加工点出力がさらに低い場合やパルス幅等がさらに短い場合等においても、適切に変質層220が形成されることを確認している。また、本発明者らは、レーザ光L1の加工点出力がさらに高い場合やパルス幅がさらに長い場合等においても、適切に変質層220が形成されることを確認している。さらに、ここではレーザ光L1としてグリーンレーザを例に挙げたが、半導体材料に応じて、レーザ光L1は、波長が355nmである紫外線レーザ、波長が1064nmであるYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)レーザ、波長が10.6μmである炭酸ガスレーザ等が用いられてもよい。
【0038】
以下では、加工ウェハ200のうちの変質層220より一面200a側の部分を装置構成ウェハ230とし、加工ウェハ200のうちの変質層220より他面200b側の部分をリサイクルウェハ240として説明する。
【0039】
ここで、本発明者らは、加工ウェハ200にレーザ光L1を照射した際に次の現象が発生し得ることを確認している。まず、加工ウェハ200の他面200b側からレーザ光L1を照射した際、レーザ光L1は、一部が集光点から一面200a側に抜け出る。以下では、集光点から一面200a側に抜け出たレーザ光L1を抜けレーザ光L2ともいう。なお、
図4および
図5は、加工ウェハ200にレーザ光L1を照射した際の現象を説明するための図であり、本実施形態の加工ウェハ200の一部を示すものではない。
【0040】
本発明者らは、
図4に示されるように、加工ウェハ200の一面200aに電極35が直接配置された部分では、集光点から一面200a側に抜け出た抜けレーザ光L2によって電極35が加熱され、電極35が変形する場合があることを確認している。また、本発明者らは、
図5に示されるように、加工ウェハ200の一面200a上に酸化膜等の絶縁膜20を介して電極35が配置されている部分では、抜けレーザ光L2が絶縁膜20で吸収され、電極35が変形しないことを確認している。なお、本発明者らの検討によれば、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム等も絶縁膜20の候補となる。
【0041】
このため、本実施形態では、抜けレーザ光L2によってソース電極32およびゲート電極31が変形しないように、ソース電極32およびゲート電極31が上記のように配置されている。具体的には、ゲート電極31は、絶縁膜20上に配置されている。このため、抜けレーザ光L2がゲート電極31に達し難くなり、ゲート電極31が変形することが抑制される。
【0042】
また、ソース電極32は、ソース領域14およびベース層13と電気的に接続される接続部32bは、テーパ状とされたコンタクトホール20aに配置されている。このため、
図6に示されるように、抜けレーザ光L2が接続部32bに達すると、抜けレーザ光L2は、接続部32bで反射する。そして、本実施形態では、隣合う接続部32bの間には、絶縁膜20が配置されている。このため、接続部32bで反射した抜けレーザ光L2は、絶縁膜20に達する。したがって、抜けレーザ光L2がソース電極32に吸収され難くなり、ソース電極32が変形することが抑制される。なお、レーザ光L1は、加工ウェハ200の他面200bに対する法線方向に沿って照射されるため、抜けレーザ光L2は、仮想線K2に沿った方向となる。このため、仮想線K1と仮想線K2との成す角度θは、抜けレーザ光L2の入射方向(すなわち、レーザ光L1の入射方向)と仮想線K2とのなす角度ともいえる。
【0043】
そして、本発明者らの検討によれば、抜けレーザ光L2の接続部32bに対する反射率が80%以上であれば、ソース電極32の形状にほぼ変化が発生しないことが確認されている。このため、成す角度θは、抜けレーザ光L2の接続部32bに対する反射率が80%以上となるように、角度が調整されている。
【0044】
但し、
図7および
図8に示されるように、反射率は、ソース電極32を構成する金属の種類によって変化する。なお、
図7および
図8は、波長が532nmのグリーンレーザに対する各金属の反射率である。また、
図7および
図8における入射角度は、本実施形態の成す角度θに相当している。
図8中の各金属の後に示される値は、各金属の仕事関数である。また、
図8中のハッチングを施した部分は、反射率が80%以上となる部分である。
【0045】
図7および
図8に示されるように、反射率は、金属の種類によって変化する。このため、成す角度θは、抜けレーザ光L2の接続部32bに対する反射率が80%以上となるように、ソース電極32の材質によって調整されることが好ましい。また、特に図示しないが、反射率は、照射するレーザの種類によっても変化する。このため、成す角度θは、抜けレーザ光L2の接続部32bに対する反射率が80%以上となるように、レーザ光L1の種類に応じて調整されることが好ましい。
【0046】
変質層220を形成した後は、
図2Fに示されるように、加工ウェハ200の他面200b側に補助部材400を配置する。補助部材400は、例えば、基材410と、粘着力を変化させることのできる粘着剤420とで構成される。この場合、補助部材400における基材410は、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成され、補助部材400における粘着剤420は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。そして、保持部材300および補助部材400を把持して加工ウェハ200の厚さ方向に引張力等を印加し、変質層220を境界(すなわち分岐の起点)として装置構成ウェハ230とリサイクルウェハ240とに分割する。
【0047】
以下では、装置構成ウェハ230のうちのソース電極32等が形成されている側の面を一面230aとし、装置構成ウェハ230のうちの分割された面側を他面230bとし、リサイクルウェハ240のうちの分割された面側を一面240aとして説明する。そして、装置構成ウェハ230における他面230b側の部分にて半導体装置S1における基板11が構成され、基板11上の部分がドレイン12層となる。また、
図2F以降の各図では、装置構成ウェハ230の他面230bおよびリサイクルウェハ240の一面240aに残存する変質層220等を適宜省略して示している。
【0048】
その後、
図2Gに示されるように、残りの半導体製造プロセスとして、装置構成ウェハ230の他面230bに、ドレイン電極33等を形成する裏面側プロセスを行う。
【0049】
なお、ドレイン電極33等の裏面側プロセスを行う前に、必要に応じて、CMP(chemical mechanical polishingの略)法等で装置構成ウェハ230の他面230bを平坦化する工程を行うようにしてもよい。
図2Gは、装置構成ウェハ230の他面230bを平坦化した場合の図を示している。また、ドレイン電極33を形成する工程を行った後、必要に応じて、ドレイン電極33と装置構成ウェハ230の他面230bとをオーミック接触とするためのレーザアニールなどの加熱処理を行うようにしてもよい。
【0050】
続いて、
図2Hに示されるように、装置構成ウェハ230のうちの他面230b側、つまりドレイン電極33側に保持部材500を配置する。保持部材500は、例えば、基材510と粘着剤520とを有するダイシングテープ等が用いられる。なお、粘着剤520は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。
【0051】
その後、
図2Iに示されるように、装置構成ウェハ230のうちの一面230a側に貼り付けてある保持部材300を剥離する。ここでは、保持部材300のうちの装置構成ウェハ230に貼り付けている粘着剤320の接着力を低下させる処理、例えば、粘着剤320をUV樹脂接着材で構成している場合にはUV照射を行う。
【0052】
続いて、
図2Jに示されるように、ダイシングソー、またはレーザダイシングなどにより、装置構成ウェハ230を装置単位に個片化することで各半導体装置S1を構成する。この際、装置構成ウェハ230を装置単位に分割しつつも、保持部材500については切断されること無く繋がったままの状態となるように、ダイシング深さを調整することが好ましい。
【0053】
半導体装置S1に関するこの後の工程については図示しないが、例えば、次の工程が行われる。すなわち、保持部材500をエキスパンドし、ダイシングカットした部分にて各半導体装置S1の間隔を広げる。その後、加熱処理や光を照射する等して粘着剤520の粘着力を弱まらせ、半導体装置S1をピックアップする。これにより、半導体装置S1が製造される。
【0054】
また、
図2Kに示されるように、
図2Fで構成されたリサイクルウェハ240には、一面240aに対して研磨装置600等を用いたCMP法を行うことにより、当該一面240aを平坦化する。そして、平坦化したリサイクルウェハ240をGaNウェハ100とし、再び上記
図2A以降の工程を行う。これにより、GaNウェハ100は、半導体装置S1を構成するのに複数回利用されることができる。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、ゲート電極31は、絶縁膜20上に配置されている。このため、ゲート電極31が抜けレーザ光L2によって加熱されることを抑制でき、ゲート電極31が変形することを抑制できる。
【0056】
また、ソース電極32は、幅が狭くなるテーパ状とされたコンタクトホール20aに配置された接続部32bを有しており、接続部32bがベース層13およびソース領域14と電気的に接続されている。そして、隣合うコンタクトホール20aに配置される接続部32bの間には、絶縁膜20が配置されている。このため、加工ウェハ200の他面200bからレーザ光L1を照射した際、抜けレーザ光L2が接続部32bに達すると抜けレーザ光L2が反射されて絶縁膜20に達する。このため、ソース電極32が抜けレーザ光L2によって加熱されることを抑制でき、ソース電極32が変形することを抑制できる。
【0057】
(1)本実施形態では、成す角度θは、抜けレーザ光L2に対する反射率が80%以上となる角度に調整されている。このため、接続部32bが抜けレーザ光L2を吸収することを抑制でき、さらにソース電極32が変形することを抑制できる。
【0058】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0059】
上記第1実施形態では、半導体素子として、縦型であるnチャネル型のMOSトランジスタが形成された例を説明した。しかしながら、半導体素子は、pチャネル型のMOSトランジスタであってもよいし、横型とされていてもよい。また、半導体素子は、発光ダイオード等の光半導体素子や半導体レーザ等であってもよい。
【0060】
また、上記第1実施形態において、
図9に示されるように、絶縁膜20および半導体基板10には、複数のコンタクトホール20aが形成され、ソース電極32は、各コンタクトホール20aに埋め込まれた複数の接続部32bを有する形状とされていてもよい。但し、このような構成とする場合においても、隣合うコンタクトホール20a(すなわち、接続部32b)の間に絶縁膜20を配置することにより、抜けレーザ光L2によってソース電極32が変形することが抑制される。なお、
図9では、ベース層13およびソース領域14を省略して示してある。
【0061】
そして、上記第1実施形態では、
図2Jの工程にて装置構成ウェハ230から各半導体装置S1に個片化する例を説明した。しかしながら、例えば、変質層220を形成する前にダイシングラインDLに沿って予め溝等を形成し、変質層220を形成する際に当該変質層220を溝等と交差するように形成してもよい。
【0062】
また上記第1実施形態において、成す角度θは、抜けレーザ光L2に対する反射率が80%未満となる角度に調整されていてもよい。このような構成としても、コンタクトホール20aがテーパ状とされていることにより、抜けレーザ光L2の一部を反射できるため、ソース電極32が変形することを抑制できる。
【符号の説明】
【0063】
10 半導体基板
10a 一面
10b 他面
31 ゲート電極
32 ソース電極