(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164576
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキのキャリパボディ及び、該キャリパボディの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16D 65/02 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
F16D65/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080168
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀樹
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA84
3J058AA87
3J058BA32
3J058BA46
3J058BA61
3J058CC22
3J058DD11
3J058EA13
3J058EA17
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】キャリパボディ全体を樹脂材料で形成し、機械的強度及び構造的剛性を確保しながら軽量化を図るとともに、ロータパス部では、耐熱性の向上を図ることができる車両用ディスクブレーキのキャリパボディ及び、該キャリパボディの製造方法を提供する。
【解決手段】車両用ディスクブレーキ1のキャリパボディ5は、ディスクロータ2を挟んで設けられるアウタボディ部5b及びインナボディ部5aと、ディスクロータ2の外周縁よりもディスク径方向外側位置で、アウタボディ部5bとインナボディ部5aとを連結するロータパス部5cとを備える。アウタボディ部5bとインナボディ部5aとは、エポキシ樹脂及び炭素繊維から構成される第1の樹脂により形成され、ロータパス部5cは、エポキシ樹脂及び炭素繊維及びカーボンナノチューブから構成される第2の樹脂により形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ディスクロータの外周縁よりもディスク径方向外側位置で、前記アウタボディ部と前記インナボディ部とを連結するロータパス部とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、
前記アウタボディ部と前記インナボディ部とは、エポキシ樹脂及び炭素繊維から構成される第1の樹脂により形成され、
前記ロータパス部は、エポキシ樹脂及び炭素繊維及びカーボンナノチューブから構成される第2の樹脂により形成されることを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
【請求項2】
ディスクロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ディスクロータの外周縁よりもディスク径方向外側位置で、前記アウタボディ部と前記インナボディ部とを連結するロータパス部とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法において、
前記キャリパボディは、前記キャリパボディに対応するキャビティを備えた成形型により成形され、
該成形型は、前記キャビティの前記アウタボディ部に対応する位置に第1注入口を、前記インナボディ部に対応する位置に第2注入口を、前記ロータパス部に対応する位置に第3注入口をそれぞれ備え、
前記成形型に炭素繊維基材を配置する基材配置工程と、
前記第1注入口及び前記第2注入口から溶融状態のエポキシ樹脂を、前記第3注入口からカーボンナノチューブを添加した溶融状態のエポキシ樹脂を、前記キャビティにそれぞれ同時に注入して前記炭素繊維基材に含浸させる注入工程と、
溶融状態の前記エポキシ樹脂を硬化させる硬化工程とを備えることを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法。
【請求項3】
ディスクロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ディスクロータの外周縁よりもディスク径方向外側位置で、前記アウタボディ部と前記インナボディ部とを連結するロータパス部とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法において、
前記キャリパボディは、前記キャリパボディに対応するキャビティを備えた成形型により成形され、
該成形型は、前記キャビティの前記アウタボディ部に対応する位置に第1注入口を、前記インナボディ部に対応する位置に第2注入口を、前記ロータパス部に対応する位置に第3注入口をそれぞれ備え、
前記第1注入口及び前記第2注入口から、炭素繊維を添加したエポキシ樹脂のBMC(Bulk Molding Compound)を、前記第3注入口から、炭素繊維とカーボンナノチューブとを添加したエポキシ樹脂のBMC(Bulk Molding Compound)を、前記キャビティにそれぞれ同時に圧縮注入する注入工程と、
前記エポキシ樹脂を硬化させる硬化工程とを備えることを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクブレーキのキャリパボディ及び、該キャリパボディの製造方法に関し、詳しくは、全体を樹脂材料で成形した車両用ディスクブレーキのキャリパボディ及び、該キャリパボディの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ディスクブレーキのキャリパボディでは、機械的強度及び構造的剛性を維持しつつ軽量化を図るために、鉄やアルミ合金によって形成されるキャリパボディの少なくとも一部を炭素繊維強化熱可塑性材料によって形成したものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ディスクロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、これらアウタボディ部とインナボディ部とを連結するロータパス部とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディでは、制動時に発生する制動熱により、温度が上昇することがある。さらに、長い坂道を下る際等に、運転者がフットブレーキを多用すると、ブレーキパッドが非常に高熱になり、ディスクロータや摩擦パッドからの熱の影響を受けやすいロータパス部では、更に高温域(例えば200℃近く)まで温度が上昇することがあった。
【0005】
上述の特許文献1に示されるように、炭素繊維強化熱可塑性材料によってキャリパボディを形成しようとすると、高温域まで耐えうる炭素繊維強化熱可塑性材料を用いる必要があるが、価格等の面から量産に適した、高温域まで耐えうる炭素繊維強化熱可塑性材料が見いだされていなかった。これにより、高温になるおそれがあるロータパス部は金属で形成し、アウタボディ部やインナボディ部を炭素繊維強化熱可塑性材料で形成するのが実情で、キャリパボディ全体を炭素繊維強化熱可塑性材料で形成することは難しかった。
【0006】
そこで本発明は、キャリパボディ全体を樹脂材料で形成し、機械的強度及び構造的剛性を確保しながら軽量化を図るとともに、ロータパス部では、耐熱性の向上を図ることができる車両用ディスクブレーキのキャリパボディ及び、該キャリパボディの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ディスクロータの外周縁よりもディスク径方向外側位置で、前記アウタボディ部と前記インナボディ部とを連結するロータパス部とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記アウタボディ部と前記インナボディ部とは、エポキシ樹脂及び炭素繊維から構成される第1の樹脂により形成され、前記ロータパス部は、エポキシ樹脂及び炭素繊維及びカーボンナノチューブから構成される第2の樹脂により形成されることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法は、ディスクロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ディスクロータの外周縁よりもディスク径方向外側位置で、前記アウタボディ部と前記インナボディ部とを連結するロータパス部とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法において、前記キャリパボディは、前記キャリパボディに対応するキャビティを備えた成形型により成形され、該成形型は、前記キャビティの前記アウタボディ部に対応する位置に第1注入口を、前記インナボディ部に対応する位置に第2注入口を、前記ロータパス部に対応する位置に第3注入口をそれぞれ備え、前記成形型に炭素繊維基材を配置する基材配置工程と、前記第1注入口及び前記第2注入口から溶融状態のエポキシ樹脂を、前記第3注入口からカーボンナノチューブを添加した溶融状態のエポキシ樹脂を、前記キャビティにそれぞれ同時に注入して前記炭素繊維基材に含浸させる注入工程と、溶融状態の前記エポキシ樹脂を硬化させる硬化工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法は、ディスクロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ディスクロータの外周縁よりもディスク径方向外側位置で、前記アウタボディ部と前記インナボディ部とを連結するロータパス部とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法において、前記キャリパボディは、前記キャリパボディに対応するキャビティを備えた成形型により成形され、該成形型は、前記キャビティの前記アウタボディ部に対応する位置に第1注入口を、前記インナボディ部に対応する位置に第2注入口を、前記ロータパス部に対応する位置に第3注入口をそれぞれ備え、前記第1注入口及び前記第2注入口から、炭素繊維を添加したエポキシ樹脂のBMC(Bulk Molding Compound)を、前記第3注入口から、炭素繊維とカーボンナノチューブとを添加したエポキシ樹脂のBMC(Bulk Molding Compound)を、前記キャビティにそれぞれ同時に圧縮注入する注入工程と、前記エポキシ樹脂を硬化させる硬化工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディによれば、全体を樹脂材料で形成したことにより、軽量化を図ることができる。また、アウタボディ部とインナボディ部とロータパス部とには、炭素繊維が添加されていることから、キャリパボディの機械的強度及び構造的剛性を確保することができる。さらに、ロータパス部には、カーボンナノチューブが添加されていることから、最も高温となるおそれのあるロータパス部の耐熱性の向上を図ることができる。さらに、高価なカーボンナノチューブは、ロータパス部にのみ用いられることから、価格の上昇を抑えることができる。
【0011】
また、本発明のキャリパボディの製造方法によれば、製品品質のばらつきが少ない、安定した品質の樹脂製のキャリパボディを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの正面図である。
【
図3】本発明の一形態例を示すキャリパボディの側面図である。
【
図5】本発明に係るキャリパボディを製造する第1の製造方法を示す説明図である。
【
図6】エポキシ樹脂に添加するカーボンナノチューブの割合に対するガラス転移温度の変化を示すグラフである。
【
図7】本発明に係るキャリパボディを製造する第2の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図4は本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキで、
図1に示す矢印Rは、車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0014】
本形態例の車両用ディスクブレーキ1は、
図1及び
図2に示されるように、車輪(図示せず)と一体に回転するディスクロータ2と、該ディスクロータ2の一側部で車体に固定されるキャリパブラケット3と、該キャリパブラケット3に一対のスライドピン4,4を介してディスクロータ軸方向へ移動可能に支持されるピンスライド型のキャリパボディ5と、前記ディスクロータ2の両側部に対向配置される一対の摩擦パッド6,6とを備えている。
【0015】
キャリパボディ5は、ディスクロータ2の車体内側に配置されるインナボディ部5aと、ディスクロータ2の車体外側に配置されるアウタボディ部5bと、これらをディスクロータ2の外周縁よりもディスク径方向外側位置を跨いで連結するロータパス部5cとを備えている。
【0016】
インナボディ部5aのディスク回入側とディスク回出側とには、取付腕5d,5dが突設され、各取付腕5d,5dには前記スライドピン4が取り付けられ、該スライドピン4を介してキャリパボディ5がキャリパブラケット3にディスク軸方向に移動可能に支持される。また、インナボディ部5aには、ディスクロータ2側が開口したシリンダ孔5e,5eがディスク周方向に並設され、アウタボディ部5bには、反力爪5fが設けられている。シリンダ孔5e,5eには有底円筒状のピストン7,7が移動可能にそれぞれ内挿され、各シリンダ孔5e,5eの底部とピストン7,7との間に液圧室8,8が画成される。
【0017】
このようなキャリパボディ5は、全体が樹脂材料で形成され、
図2乃至
図4に示されるように、インナボディ部5aを構成する領域Aと、アウタボディ部5bを構成する領域Bは、高耐熱性のエポキシ樹脂及び高弾性の炭素繊維から構成される第1の樹脂で形成され、ロータパス部5cを構成する領域Cは、前記エポキシ樹脂及び前記炭素繊維とカーボンナノチューブとから構成される第2の樹脂で形成されている。
【0018】
図5は、上述の形態例のようなキャリパボディを製造する第1の製造方法を示す説明図である。上述のようなキャリパボディ5は、
図5に示されるようなRTM(Resin Transfer Molding)成形法による成形システムにて成形される。該成形システムは、キャリパボディ5に対応するキャビティ12を有する成形型11と、前記キャビティ12に樹脂材料を供給する供給ユニット13とを備えている。
【0019】
成形型11は、キャビティ12のアウタボディ部5bに対応する位置に第1注入口14が、インナボディ部5aに対応する位置に第2注入口15が、ロータパス部5cに対応する位置に第3注入口16がそれぞれ設けられている。
【0020】
供給ユニット13は、第1注入口14にエポキシ樹脂を供給する第1樹脂流路14aと、第2注入口15にエポキシ樹脂を供給する第2樹脂流路15aと、第3注入口16にカーボンナノチューブを添加したエポキシ樹脂を供給する第3樹脂流路16aとを備えている。
【0021】
キャリパボディ5を製造する際には、まず、成形型11の上型と下型との間に、例えば、10mm~40mm程度の長さを有する長繊維の炭素繊維が用いられた炭素繊維基材を配置した後、成形型11を閉じる基材配置工程が行われる。
【0022】
次に、第1樹脂流路14aと第2樹脂流路15aとを介して、第1注入口14と第2注入口15とから溶融状態のエポキシ樹脂を、第3樹脂流路16aを介して第3注入口16からカーボンナノチューブを添加した溶融状態のエポキシ樹脂を、それぞれキャビティ12に同時に注入し、前記炭素繊維基材に含浸させる注入工程が行われる。なお、注入工程の際には、第3注入口16から注入されるカーボンナノチューブを添加した溶融状態のエポキシ樹脂は、第1注入口14と第2注入口15とから注入される溶融状態のエポキシ樹脂に比べて粘度が高いことから、カーボンナノチューブを添加した溶融状態のエポキシ樹脂に、反応性希釈剤を適宜添加して粘度を下げ、各注入口からの注入される樹脂材料の充填速度を合わせている。
【0023】
次いで、キャビティ12に注入された溶融状態のエポキシ樹脂を硬化させる硬化工程が行われ、さらに、硬化したキャリパボディ5を成形型11から外す離型工程が行われる。これにより、キャリパボディ5は、インナボディ部5aを構成する領域Aと、アウタボディ部5bを構成する領域Bは、炭素繊維基材にエポキシ樹脂を含浸させて構成した前記第1の樹脂で形成され、ロータパス部5cを構成する領域Cは、前記炭素繊維基材にエポキシ樹脂及びカーボンナノチューブを含浸させて構成した前記第2の樹脂で形成される。
【0024】
次に、エポキシ樹脂に添加するカーボンナノチューブ(CNT)の割合(wt%)に応じて、ガラス転移温度(Tg)がどのように変化するかを計測した結果を
図6に示した。
図6に示すグラフの横軸はエポキシ樹脂にカーボンナノチューブを添加する割合(wt%)を示し、グラフの縦軸はガラス転移温度(Tg)を示している。
【0025】
図6のグラフに示されるように、カーボンナノチューブの添加割合が0wt%ではTg210℃であるが、カーボンナノチューブの添加割合が5wt%ではTg220℃、カーボンナノチューブの添加割合が7.5wt%ではTg230℃という高いガラス転移温度を実現することができた。これにより、エポキシ樹脂に添加するカーボンナノチューブの添加割合を5wt%以上とすることで、220℃まで耐えうる樹脂材料が得られることが分かった。
【0026】
第1の製造方法により製造された本形態例のキャリパボディ5は、上述のように全体を樹脂材料で形成したことにより、軽量化を図ることができる。また、インナボディ部5a及びアウタボディ部5b及びロータパス部5cを構成する領域A及び領域B及び領域Cには、炭素繊維が添加されることから、機械的強度及び構造的剛性を満足させることができる。さらに、領域Cでは、カーボンナノチューブが添加されることにより、220℃まで耐えうる耐熱性を備えることができる。また、高価なカーボンナノチューブは、領域Cにのみ添加されることから、価格の上昇を抑えることができる。
【0027】
さらに、キャリパボディ5は、成形型11に予め炭素繊維基材を配置し、成形型11を閉じた後、エポキシ樹脂やカーボンナノチューブを、炭素繊維基材に同時に含浸させることから、製品品質のばらつきが少ない、安定した品質のキャリパボディを成形することができる。
【0028】
図7は、本形態例のようなキャリパボディを製造する第2の製造方法を示す説明図であり、第1の製造方法と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0029】
第2の製造方法は、BMC(Bulk Molding Compound)成形法による成形システムを用いる。該成形システムの供給ユニット21は、第1注入口14に連結する第1ポット22と、第2注入口15に連結する第2ポット23と、第3注入口16に連結する第3ポット24とを備え、各ポット22,23,24には、樹脂流路22a,23a,24aがそれぞれ接続されている。さらに、第1ポット22と第2ポット23と第3ポット24とには、各ポット22,23,24内に前記樹脂流路22a,23a,24aを介して供給された溶融した樹脂材料を、キャビティ12に押し込むプランジャ22b,23b,24bが設けられている。
【0030】
キャリパボディを製造する際には、第1ポット22と第2ポット23とに、エポキシ樹脂に炭素繊維を添加して練り合わせて形成したBMC(Bulk Molding Compound)を、樹脂経路22a,23aを介してそれぞれ供給するとともに、第3ポットに、エポキシ樹脂に炭素繊維とカーボンナノチューブとを添加して練り合わせて形成したBMC(Bulk Molding Compound)を、樹脂経路24aを介して供給する。
【0031】
次いで、各プランジャ22b,23b,24bを適宜作動させ、2種類の前記BMCをキャビティ12に同時に、且つ、同一の充填速度で押し込む注入工程が行われ、次いで、第1形態例と同様に、硬化工程と離型工程とが順に行われ、キャリパボディ5が成形される。このように製造されたキャリパボディ5は、第1形態例と同様に、インナボディ部5aを構成する領域Aと、アウタボディ部5bを構成する領域Bとが、前記第1の樹脂で形成され、ロータパス部5cを構成する領域Cは、前記第2の樹脂で形成される。
【0032】
このように、第2の製造方法では、注入工程の際に、各プランジャ22b,23b,24bを適宜作動させ、2種類のBMCをキャビティ12に同時に、且つ、同一の充填速度で押し込むことにより、製品品質のばらつきが少ない、安定した品質のキャリパボディを成形することができる。
【0033】
なお、本発明のキャリパボディは、上述の形態例のように、ピンスライドタイプのキャリパボディに限るものではなく、アウタボディ部及びインナボディ部の双方にピストンを備えたピストン対向型のキャリパボディにも適用することができ、また、ピストンの数も任意である。
【符号の説明】
【0034】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、4…スライドピン、5…キャリパボディ、5a…インナボディ部、5b…アウタボディ部、5c…ロータパス部、5d…取付腕、5e…シリンダ孔、5f…反力爪、6…摩擦パッド、7…ピストン、8…液圧室、11…成形型、12…キャビティ、13…供給ユニット、14…第1注入口、14a…樹脂流路、15…第2注入口、15a…樹脂流路、16…第3注入口、16a…樹脂流路、21…供給ユニット、22…第1ポット、22a…樹脂経路、22b…プランジャ、23…第2ポット、23a…樹脂経路、23b…プランジャ、24…第3ポット、24a…樹脂経路、24b…プランジャ