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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164577
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電動ポンプ、及びダイヤフラム
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/04 20060101AFI20241120BHJP
   F04B 45/047 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F04B45/04 H
F04B45/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080169
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】593057263
【氏名又は名称】多田プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 遼
(72)【発明者】
【氏名】加藤 有香
(72)【発明者】
【氏名】岩波 重樹
(72)【発明者】
【氏名】森 伸木
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA12
3H077BB10
3H077CC02
3H077CC09
3H077CC17
3H077DD02
3H077DD12
3H077EE23
3H077FF07
3H077FF37
(57)【要約】
【課題】引っ張り応力及び材料の無駄を抑制可能とした電動ポンプを提供すること。
【解決手段】電動ポンプ11は、駆動軸18aを回転駆動するモータ18と、駆動軸の回転軸線L1を中心とした周方向に複数の作動部22aを有し駆動軸に連結されつつ駆動軸の回転によって作動部が往復運動する斜盤22と、回転軸線を中心とした周方向に複数設けられ、作動部に連結される連結部31aと連結部の周囲から薄肉で環状に延びて作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部31bとを有するダイヤフラム31とを備える。薄肉変形部において回転軸線から遠い遠部31dは、薄肉変形部において回転軸線に近い近部31eよりも長く形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(18a)を回転駆動するモータ(18)と、
前記駆動軸の回転軸線(L1)を中心とした周方向に複数の作動部(22a)を有し、前記駆動軸に連結されつつ前記駆動軸の回転によって前記作動部が往復運動する斜盤(22)と、
前記回転軸線を中心とした周方向に複数設けられ、前記作動部に連結される連結部(31a,41a,51a)と前記連結部の周囲から薄肉で環状に延びて前記作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部(31b,41b,51b)とを有するダイヤフラム(31,41,51)と、を備え、
前記作動部の往復運動により前記薄肉変形部が変形することで前記ダイヤフラムによって構成されるポンプ室(P)への流体の吸入と前記ポンプ室からの流体の吐出とを可能とする電動ポンプ(11)であって、
前記薄肉変形部において前記回転軸線から遠い遠部(31d,41c,51c)は、前記薄肉変形部において前記回転軸線に近い近部(31e,41e,51e)よりも長く形成されている、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記薄肉変形部(31b)と共に前記ポンプ室を形成する前記連結部(31a)の端面(31c)は、前記ダイヤフラム(31)に外力が加えられていない状態で、前記回転軸線と直交する面に対して傾斜している、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記ダイヤフラム(31)は、外力が加えられていない状態で、駆動時の前記ポンプ室の最大の形状と同等形状に設定されている、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記遠部(41c)は、前記連結部(41a)の周囲の一部から該連結部の径方向外側に延びるフランジ部(41d)を有することによって、前記近部(41e)よりも長く形成されている、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記連結部(41a)の軸線(La)は前記薄肉変形部(41b)の軸線(Lb)より前記回転軸線側にずれている、
請求項4に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記遠部(51c)は、前記連結部(51a)の周方向の一部に凹部(51d)が設けられることによって、前記近部(51e)よりも長く形成されている、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記複数のダイヤフラムは、接続されることで単一のダイヤフラム部材(23)を構成している、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
駆動軸(18a)を回転駆動するモータ(18)と、前記駆動軸の回転軸線(L1)を中心とした周方向に複数の作動部(22a)を有し前記駆動軸に連結されつつ前記駆動軸の回転によって前記作動部が往復運動する斜盤(22)とを備える電動ポンプ(11)に備えられ、前記回転軸線を中心とした周方向に複数設けられ、前記作動部に連結される連結部(31a,41a,51a)と前記連結部の周囲から薄肉で環状に延びて前記作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部(31b,41b,51b)とを有し、前記作動部の往復運動により前記薄肉変形部が変形することで流体の吸入と吐出とを可能とするダイヤフラム(31,41,51)であって、
前記薄肉変形部において前記回転軸線から遠い位置に配置される遠部(31d,41c,51c)は、前記薄肉変形部において前記回転軸線に近い位置に配置される近部(31e,41e,51e)よりも長く形成されている、
ダイヤフラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ポンプ、及びダイヤフラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電動ポンプとしては、駆動軸を回転駆動するモータと、斜盤と、カップ状の複数のダイヤフラムとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。斜盤は、回転運動を往復運動に変換する装置の一部である。詳しくは、斜盤は、駆動軸の回転軸線を中心とした周方向に複数の作動部を有する。そして、斜盤は、駆動軸の回転に伴って作動部の各々が傾きながら往復運動するように構成されている。
【0003】
ダイヤフラムは、複数の作動部に対応して複数設けられる。ダイヤフラムは、作動部に連結される連結部と、連結部の周囲から薄肉で筒状に延びて作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部とを有する。ダイヤフラムは、薄肉変形部が変形することによって流体の吸入と吐出とを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-52617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように構成される電動ポンプでは、ダイヤフラムの薄肉変形部の一部である回転軸線から遠い遠部が回転軸線に近い近部よりも駆動時の変位量が大きくなる。これにより、最も変位量の大きくなる遠部で大きな引っ張り応力が発生するという問題があった。なお、引っ張り応力の発生は、ダイヤフラムの耐久性を低下させる原因となる。また、最も変位量の大きくなる遠部での引っ張り応力を抑えるために単に薄肉変形部の長さを全体的に長くすると、回転軸線に近い近部での材料の無駄が大きく生じることになる。
【0006】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、引っ張り応力及び材料の無駄を抑制可能とした電動ポンプ、及びダイヤフラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動ポンプ(11)は、駆動軸(18a)を回転駆動するモータ(18)と、前記駆動軸の回転軸線(L1)を中心とした周方向に複数の作動部(22a)を有し、前記駆動軸に連結されつつ前記駆動軸の回転によって前記作動部が往復運動する斜盤(22)と、前記回転軸線を中心とした周方向に複数設けられ、前記作動部に連結される連結部(31a,41a,51a)と前記連結部の周囲から薄肉で環状に延びて前記作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部(31b,41b,51b)とを有するダイヤフラム(31,41,51)と、を備え、前記作動部の往復運動により前記薄肉変形部が変形することで前記ダイヤフラムによって構成されるポンプ室(P)への流体の吸入と前記ポンプ室からの流体の吐出とを可能とする電動ポンプであって、前記薄肉変形部において前記回転軸線から遠い遠部(31d,41c,51c)は、前記薄肉変形部において前記回転軸線に近い近部(31e,41e,51e)よりも長く形成されている。
【0008】
同構成によれば、薄肉変形部において回転軸線から遠い遠部は、薄肉変形部において回転軸線に近い近部よりも長いため、最も変位量の大きくなる遠部での引っ張り応力を抑えながら、近部での材料の無駄を抑制できる。すなわち、薄肉変形部における回転軸線から遠い遠部と回転軸線に近い近部との長さが同じ場合、最も変位量の大きくなる遠部での引っ張り応力を抑えようとすると、近部での材料の無駄が大きく生じるが、これを抑制できる。また、近部での必要以上のたるみを抑制できるので、当該部位での擦れを抑制できる。
【0009】
上記課題を解決するダイヤフラム(31,41,51)は、駆動軸(18a)を回転駆動するモータ(18)と、前記駆動軸の回転軸線(L1)を中心とした周方向に複数の作動部(22a)を有し前記駆動軸に連結されつつ前記駆動軸の回転によって前記作動部が往復運動する斜盤(22)とを備える電動ポンプ(11)に備えられ、前記回転軸線を中心とした周方向に複数設けられ、前記作動部に連結される連結部(31a,41a,51a)と前記連結部の周囲から薄肉で環状に延びて前記作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部(31b,41b,51b)とを有し、前記作動部の往復運動により前記薄肉変形部が変形することで流体の吸入と吐出とを可能とするダイヤフラムであって、前記薄肉変形部において前記回転軸線から遠い位置に配置される遠部(31d,41c,51c)は、前記薄肉変形部において前記回転軸線に近い位置に配置される近部(31e,41e,51e)よりも長く形成されている。
【0010】
同構成によれば、薄肉変形部において回転軸線から遠い位置に配置される遠部は、薄肉変形部において回転軸線に近い位置に配置される近部よりも長いため、最も変位量の大きくなる遠部での引っ張り応力を抑えながら、近部での材料の無駄を抑制できる。すなわち、薄肉変形部における回転軸線から遠い遠部と回転軸線に近い近部との長さが同じ場合、最も変位量の大きくなる遠部での引っ張り応力を抑えようとすると、近部での材料の無駄が大きく生じるが、これを抑制できる。また、近部での必要以上のたるみを抑制できるので、当該部位での擦れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態における電動ポンプの断面図。
図2】一実施形態におけるダイヤフラム部材の斜視図。
図3】一実施形態におけるダイヤフラムの断面図。
図4】別例におけるダイヤフラムの断面図。
図5】別例におけるダイヤフラムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、電動ポンプの一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0013】
(電動ポンプ11の構成)
図1に示すように、電動ポンプ11は、第1ハウジング12と、第2ハウジング13と、エンドプレート14と、入出力ハウジング15と、アンブレラ弁16と、逆止弁17とを備える。また、電動ポンプ11は、モータ18と、クランクブッシュ19と、傾斜軸20と、軸受21と、斜盤22と、ダイヤフラム部材23とを備える。
【0014】
(電動ポンプ11のハウジングの構成)
第1ハウジング12は、筒状に形成されている。第1ハウジング12は、長さ方向の中央部に径方向内側に突出するモータ支持壁12aを有する。
【0015】
第2ハウジング13は、第1ハウジング12の先端部(図1中、上端部)に固定されている。第2ハウジング13は、第1ハウジング12の軸中心であって後述するモータ18の回転軸線L1を中心とした周方向に複数の貫通孔13aを有する。本実施形態の貫通孔13aは、回転軸線L1を中心とした周方向に90°間隔で4つ設けられている。なお、図1では、180°間隔で設けられた2つの貫通孔13aを図示している。
【0016】
エンドプレート14は、第2ハウジング13の先端部(図1中、上端部)に固定されている。エンドプレート14は、回転軸線L1を中心とした周方向に複数の弁固定孔14a、吸入孔14b及び吐出孔14cを有する。本実施形態の弁固定孔14a、吸入孔14b及び吐出孔14cは、回転軸線L1を中心とした周方向に90°間隔で4つずつ設けられている。なお、図1では、180°間隔で設けられた2つずつの弁固定孔14a、吸入孔14b及び吐出孔14cを図示している。弁固定孔14a、吸入孔14b及び吐出孔14cは、回転軸線L1から遠ざかる方向に吐出孔14c、弁固定孔14a、吸入孔14bの順で並んで設けられている。
【0017】
弁固定孔14aの各々には、アンブレラ弁16の軸部16aが嵌着されている。アンブレラ弁16の弁部16bは、第2ハウジング13の貫通孔13aの内側であって、図1中、エンドプレート14の下面に沿って配置されつつ、吸入孔14bを覆う位置に配置されている。
【0018】
また、エンドプレート14において回転軸線L1上の中央部には、逆止弁17が固定されている。逆止弁17は、吐出孔14cの各々に対応した位置に弁部17aを有する。弁部17aは、第2ハウジング13の貫通孔13aの外側であって、図1中、エンドプレート14の上面に沿って配置されつつ、吐出孔14cを覆う位置に配置されている。
【0019】
入出力ハウジング15は、エンドプレート14の先端部(図1中、上端部)に固定されている。入出力ハウジング15は、エンドプレート14の外縁に固定される筒部15aと筒部15aの先端部(図1中、上端部)を閉塞する底部15bとを有する。また、入出力ハウジング15は、筒部15aの内側を区画する小筒部15cを有し、吸入孔14bと連通する小筒部15cの外側が吸入室15dとされ、吐出孔14cと連通する小筒部15cの内側が吐出室15eとされている。また、入出力ハウジング15は、吸入室15dと連通しつつ底部15bから外部に突出する吸入筒部15fと、吐出室15eと連通しつつ底部15bから外部に突出する吐出筒部15gとを有する。
【0020】
(電動ポンプ11の駆動部分の構成)
モータ18は、第1ハウジング12内に収容保持されている。モータ18は、第1ハウジング12の基端側(図1中、下側)から第1ハウジング12内に挿入されることにより、モータ支持壁12aと当接した状態で保持されている。モータ18は、駆動軸18aを回転駆動可能に構成され、駆動軸18aの回転軸線L1が第1ハウジング12の軸中心と一致するように配置されている。
【0021】
クランクブッシュ19は、駆動軸18aと一体回転するように固定されている。クランクブッシュ19は、傾斜軸20の基端部を保持している。クランクブッシュ19は、傾斜軸20の軸線が回転軸線L1に対して傾斜した状態となるように、傾斜軸20を保持している。
【0022】
斜盤22は、軸受21を介して傾斜軸20の先端部に回転可能に連結されている。斜盤22は、回転軸線L1を中心とした周方向に複数の作動部22aを有する。作動部22aは連結孔22bを有する。本実施形態の作動部22aは、回転軸線L1を中心とした周方向に90°間隔で4つ設けられている。なお、図1では、180°間隔で設けられた2つの作動部22aを図示している。作動部22aの各々は、駆動軸18aの回転によって傾きながら往復運動することになる。図1中、左側の作動部22aは、回転軸線L1と直交する面に対して最も大きく傾斜した状態である。図1中、右側の作動部22aは、回転軸線L1と直交する面に対して最も小さく傾斜した状態である。
【0023】
ダイヤフラム部材23は、ゴム等の弾性材よりなる。ダイヤフラム部材23は、回転軸線L1を中心とした周方向に複数のダイヤフラム31を有する。本実施形態のダイヤフラム31は、回転軸線L1を中心とした周方向に90°間隔で4つ設けられている。なお、図1では、180°間隔で設けられた2つのダイヤフラム31を図示している。
【0024】
言い換えると、図2に示すように、4つのダイヤフラム31は、接続されることで単一のダイヤフラム部材23を構成している。4つのダイヤフラム31は、回転軸線L1上の中心位置でまとめて接続されるとともに、回転軸線L1を中心とした周方向に隣り合うダイヤフラム31同士がそれぞれ接続されている。
【0025】
そして、図1に示すように、ダイヤフラム部材23は、回転軸線L1上の中心位置と、回転軸線L1から最も離れた外縁とが第2ハウジング13とエンドプレート14との間に挟持されることによって固定されている。また、ダイヤフラム部材23は、ダイヤフラム31の各々が第2ハウジング13の貫通孔13aを貫通するように固定されている。
【0026】
ダイヤフラム31は、作動部22aに連結される連結部31aと、連結部31aの周囲から薄肉で環状に延びて作動部22aの往復運動によって変形する薄肉変形部31bとを有する。連結部31aは、連結孔22bに嵌着されることで作動部22aに連結されている。薄肉変形部31bの先端(図1中、上端)の開口部は、エンドプレート14に密着されている。これにより薄肉変形部31bの内側がポンプ室Pとされる。すなわち、ポンプ室Pは、薄肉変形部31bと連結部31aの内側の端面31cとエンドプレート14とによって形成されている。また、薄肉変形部31bの先端の開口部は、エンドプレート14の吸入孔14b及び吐出孔14cを囲うように配置されている。すなわち、ポンプ室Pは、吸入孔14b及び吐出孔14cと連通するように設けられている。これにより、電動ポンプ11は、作動部22aの往復運動により薄肉変形部31bが変形することでダイヤフラム31によって構成されるポンプ室Pへの流体の吸入とポンプ室Pからの流体の吐出とを可能とする。
【0027】
ここで、本実施形態では、薄肉変形部31bにおいて回転軸線L1から遠い遠部31dは、薄肉変形部31bにおいて回転軸線L1に近い近部31eよりも長く形成されている。言い換えると、回転軸線L1から最も遠い位置の薄肉変形部31bである遠部31dは、回転軸線L1に最も近い位置の薄肉変形部31bである近部31eよりも長く形成されている。また、薄肉変形部31bは、回転軸線L1から遠い遠部31dから回転軸線L1に近い近部31eに向かって徐々に長さが短くなるように形成されている。
【0028】
また、図3に示すように、薄肉変形部31bと共にポンプ室Pを形成することになる連結部31aの端面31cは、ダイヤフラム31に外力が加えられていない状態で、回転軸線L1と直交する面に対して傾斜している。また、ダイヤフラム31は、外力が加えられていない状態で、駆動時のポンプ室Pの最大の形状と同等形状に設定されている。なお、図1中、左側のポンプ室Pは、駆動時のポンプ室Pの最大の形状であり、この状態の形状が、外力が加えられていない状態のダイヤフラム31(図3参照)と同等形状とされている。また、ダイヤフラム31は、外力が加えられていない状態で、駆動時のポンプ室Pの最大の形状と同じ形状となるように設定しているが、実際は斜盤22等との係合具合等によって形状が一定とならない場合があり、全く同じ形状とは言えず同等形状とされている。
【0029】
次に、上記のように構成された電動ポンプ11の作用について説明する。
モータ18に電源が供給されると、駆動軸18aが回転駆動される。すると、傾斜軸20は回転軸線L1に対して傾斜した状態で回転し、それに伴って、作動部22aの各々が傾きながら往復運動する。すると、薄肉変形部31bが変形することでダイヤフラム31によって構成されるポンプ室Pへの流体の吸入とポンプ室Pからの流体の吐出が行われる。
【0030】
具体的には、図1中の左側のように、ポンプ室Pが最大の形状となる過程で、ポンプ室P内の気圧が低くなることで、アンブレラ弁16の弁部16bが開くとともに、吸入筒部15f、吸入室15d、及び吸入孔14bを介してポンプ室Pに空気が吸入される。また、図1中の右側のように、ポンプ室Pが最小の形状となる過程で、ポンプ室P内の気圧が高くなることで、逆止弁17の弁部17aが開くとともに、吐出孔14c、吐出室15e、及び吐出筒部15gを介してポンプ室Pから空気が吐出される。
【0031】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)薄肉変形部31bにおいて回転軸線L1から遠い遠部31dは、薄肉変形部31bにおいて回転軸線L1に近い近部31eよりも長く形成されている。よって、最も変位量の大きくなる遠部31dでの引っ張り応力を抑えながら、近部31eでの材料の無駄を抑制できる。すなわち、回転軸線L1から遠い遠部31dと回転軸線L1に近い近部31eとの長さが同じ場合、最も変位量の大きくなる遠部31dでの引っ張り応力を抑えようとすると、近部31eでの材料の無駄が大きく生じるが、これを抑制できる。また、近部31eでの必要以上のたるみを抑制できるので、当該部位での擦れを抑制できる。
【0032】
(2)薄肉変形部31bと共にポンプ室Pを形成することになる連結部31aの端面31cは、ダイヤフラム31に外力が加えられていない状態で、回転軸線L1と直交する面に対して傾斜しているため、引っ張り応力及び材料の無駄を良好に抑制可能となる。
【0033】
(3)ダイヤフラム31は、外力が加えられていない状態で、駆動時のポンプ室Pの最大の形状と同等形状に設定されているため、引っ張り応力及び材料の無駄を最大限抑制できる。
【0034】
(4)4つのダイヤフラム31は、接続されることで単一のダイヤフラム部材23を構成しているため、それぞれ独立している場合に比べて、電動ポンプ11の部品点数を低減することができる。また、組み付け時に、遠部31dを回転軸線L1から遠い位置に配置するといった位置決めをする必要がなくなる。すなわち、ダイヤフラム部材23を組み付けるだけで、自然と遠部31dを回転軸線L1から遠い位置に配置することが可能となる。よって、組み付けが容易となる。
【0035】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、連結部31aの端面31cは、ダイヤフラム31に外力が加えられていない状態で、回転軸線L1と直交する面に対して傾斜しているとしたが、これに限定されず、回転軸線L1と直交する面に対して平行であってもよい。
【0036】
・上記実施形態では、ダイヤフラム31は、外力が加えられていない状態で、駆動時のポンプ室Pの最大の形状と同等形状に設定されているとしたが、これに限定されず、駆動時のポンプ室Pの最大の形状と異なる形状に設定されていてもよい。
【0037】
例えば、図4に示すように、変更してもよい。この例(図4参照)のダイヤフラム41は、連結部41aと薄肉変形部41bとを有する。そして、この例の薄肉変形部41bにおける遠部41cは、連結部41aの周囲の一部から該連結部41aの径方向外側に延びるフランジ部41dを有することによって、近部41eよりも長く形成されている。すなわち、この例の遠部41cは、連結部41aの周囲の一部から該連結部41aの径方向外側に延びるフランジ部41dの分だけ近部41eよりも長く形成されている。このようにしても、遠部41cが長いことで、最も変位量の大きくなる遠部41cでの引っ張り応力を抑えながら、近部41eでの材料の無駄を抑制できる。
【0038】
また、この例(図4参照)では、連結部41aの軸線Laは薄肉変形部41bの軸線Lbより回転軸線L1側にずれている。このようにすると、フランジ部41dを容易に設けることができる。
【0039】
また、例えば、図5に示すように、変更してもよい。この例(図5参照)のダイヤフラム51は、連結部51aと薄肉変形部51bとを有する。そして、この例の薄肉変形部51bにおける遠部51cは、連結部51aの周方向の一部に凹部51dが設けられることによって、近部51eよりも長く形成されている。このようにしても、遠部51cが長いことで、最も変位量の大きくなる遠部51cでの引っ張り応力を抑えながら、近部51eでの材料の無駄を抑制できる。
【0040】
・上記実施形態では、4つのダイヤフラム31は、接続されることで単一のダイヤフラム部材23を構成しているとしたが、これに限定されず、それぞれ独立した4つの部品であってもよい。
【0041】
・上記実施形態では、電動ポンプ11は、回転軸線L1を中心とした周方向に4つのダイヤフラム31を備える構成としたが、他の数のダイヤフラム31を備える構成としてもよい。なお、この場合、もちろん、弁固定孔14a、吸入孔14b及び吐出孔14cの数やアンブレラ弁16の数や作動部22aの数等をダイヤフラム31の数と一致させる必要がある。
【0042】
本発明の特徴を以下の通り示す。
[1]駆動軸(18a)を回転駆動するモータ(18)と、前記駆動軸の回転軸線(L1)を中心とした周方向に複数の作動部(22a)を有し、前記駆動軸に連結されつつ前記駆動軸の回転によって前記作動部が往復運動する斜盤(22)と、前記回転軸線を中心とした周方向に複数設けられ、前記作動部に連結される連結部(31a,41a,51a)と前記連結部の周囲から薄肉で環状に延びて前記作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部(31b,41b,51b)とを有するダイヤフラム(31,41,51)と、を備え、前記作動部の往復運動により前記薄肉変形部が変形することで前記ダイヤフラムによって構成されるポンプ室(P)への流体の吸入と前記ポンプ室からの流体の吐出とを可能とする電動ポンプ(11)であって、前記薄肉変形部において前記回転軸線から遠い遠部(31d,41c,51c)は、前記薄肉変形部において前記回転軸線に近い近部(31e,41e,51e)よりも長く形成されている、電動ポンプ。
【0043】
[2]前記薄肉変形部(31b)と共に前記ポンプ室を形成する前記連結部(31a)の端面(31c)は、前記ダイヤフラム(31)に外力が加えられていない状態で、前記回転軸線と直交する面に対して傾斜している、上記[1]に記載の電動ポンプ。
【0044】
[3]前記ダイヤフラム(31)は、外力が加えられていない状態で、駆動時の前記ポンプ室の最大の形状と同等形状に設定されている、上記[1]または上記[2]に記載の電動ポンプ。
【0045】
[4]前記遠部(41c)は、前記連結部(41a)の周囲の一部から該連結部の径方向外側に延びるフランジ部(41d)を有することによって、前記近部(41e)よりも長く形成されている、上記[1]に記載の電動ポンプ。
【0046】
[5]前記連結部(41a)の軸線(La)は前記薄肉変形部(41b)の軸線(Lb)より前記回転軸線側にずれている、上記[4]に記載の電動ポンプ。
[6]前記遠部(51c)は、前記連結部(51a)の周方向の一部に凹部(51d)が設けられることによって、前記近部(51e)よりも長く形成されている、上記[1]に記載の電動ポンプ。
【0047】
[7]前記複数のダイヤフラムは、接続されることで単一のダイヤフラム部材(23)を構成している、上記[1]から上記[6]のいずれか1つに記載の電動ポンプ。
[8]駆動軸(18a)を回転駆動するモータ(18)と、前記駆動軸の回転軸線(L1)を中心とした周方向に複数の作動部(22a)を有し前記駆動軸に連結されつつ前記駆動軸の回転によって前記作動部が往復運動する斜盤(22)とを備える電動ポンプ(11)に備えられ、前記回転軸線を中心とした周方向に複数設けられ、前記作動部に連結される連結部(31a,41a,51a)と前記連結部の周囲から薄肉で環状に延びて前記作動部の往復運動によって変形する薄肉変形部(31b,41b,51b)とを有し、前記作動部の往復運動により前記薄肉変形部が変形することで流体の吸入と吐出とを可能とするダイヤフラム(31,41,51)であって、前記薄肉変形部において前記回転軸線から遠い位置に配置される遠部(31d,41c,51c)は、前記薄肉変形部において前記回転軸線に近い位置に配置される近部(31e,41e,51e)よりも長く形成されている、ダイヤフラム。
【符号の説明】
【0048】
11…電動ポンプ、18…モータ、18a…駆動軸、22…斜盤、22a…作動部、23…ダイヤフラム部材、31…ダイヤフラム、31a…連結部、31b…薄肉変形部、31c…端面、31d…遠部、31e…近部、41…ダイヤフラム、41a…連結部、41b…薄肉変形部、41c…遠部、41d…フランジ部、41e…近部、51…ダイヤフラム、51a…連結部、51b…薄肉変形部、51c…遠部、51d…凹部、51e…近部、L1…回転軸線、La…軸線、Lb…軸線、P…ポンプ室。
図1
図2
図3
図4
図5