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特開2024-164578トレッドパターン推定システム、トレッドパターン推定方法、タイヤ性能予測システム、タイヤ性能予測方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164578
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】トレッドパターン推定システム、トレッドパターン推定方法、タイヤ性能予測システム、タイヤ性能予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20241120BHJP
   G06F 30/15 20200101ALI20241120BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20241120BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
G06F30/15
G06F30/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080170
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】平尾 昌吾
【テーマコード(参考)】
3D131
5B146
【Fターム(参考)】
3D131LA33
3D131LA34
5B146AA05
5B146BA01
5B146DC03
5B146DC04
5B146DJ11
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】タイヤに求めるタイヤ性能の目標値に基づいてタイヤのトレッドパターンを推定するトレッドパターン推定システム、トレッドパターン推定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】推定システムにおいて、特定タイヤ性能の目標値が取得処理部によって取得されると(S13)、その目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンがパターン推定部によって推定される(S15、S16)。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ性能の目標値を取得する目標値取得部と、
前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定するパターン推定部と、
前記パターン推定部によって推定された推定パターンを出力する出力処理部と、
を備えるトレッドパターン推定システム。
【請求項2】
前記パターン推定部による推定後に、前記目標値を変更する目標値変更部を更に備え、
前記パターン推定部は、前記目標値変更部によって前記目標値が変更された場合に、変更後の前記目標値に基づいて前記トレッドパターンを再推定する、
請求項1に記載のトレッドパターン推定システム。
【請求項3】
前記タイヤに関するタイヤ情報を取得するタイヤ情報取得部を更に備え、
前記パターン推定部は、前記目標値及び前記タイヤ情報に基づいて、前記トレッドパターンを推定する、
請求項1又は2に記載のトレッドパターン推定システム。
【請求項4】
前記パターン推定部は、
前記タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報に基づいて前記タイヤ性能の予測値を出力するように機械学習された予測モデルと、
前記予測モデルによる前記予測値が前記目標値の許容範囲に収まるように前記パターン情報を最適化する最適化モデルと、を含み、
前記最適化モデルにより最適化された前記パターン情報により特定されるトレッドパターンを前記目標値を達成可能なトレッドパターンと推定する、
請求項1又は2に記載のトレッドパターン推定システム。
【請求項5】
前記パターン推定部によって推定された前記推定パターンの特徴量に基づいて、前記推定パターンに応じた前記タイヤ性能の値を予測する性能予測部を更に備え、
前記出力処理部は、前記推定パターンと前記性能予測部により予測された予測値とを所定の表示部に表示する、
請求項1又は2に記載のトレッドパターン推定システム。
【請求項6】
前記出力処理部は、前記タイヤ性能ごとに前記予測値を示すグラフを前記表示部に出力する、
請求項5に記載のトレッドパターン推定システム。
【請求項7】
前記タイヤ性能は、燃費性能、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、及び耐摩耗性能のうちの少なくとも二つ以上を含み、
前記パターン推定部は、複数の前記タイヤ性能の各目標値のいずれか一つ又は複数を達成可能な前記トレッドパターンを推定する、
請求項1又は2に記載のトレッドパターン推定システム。
【請求項8】
タイヤ性能の目標値を取得する目標値取得ステップと、
前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定する推定ステップと、
を一又は複数のプロセッサが実行するトレッドパターン推定方法。
【請求項9】
タイヤ性能の目標値を取得する目標値取得ステップと、
前記タイヤ性能及び前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定する推定ステップと、
を、一又は複数のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報を取得するパターン情報取得部と、
前記パターン情報に基づいてタイヤ性能の値を予測する性能予測部と、
前記性能予測部によって予測された前記タイヤ性能の予測値を所定の表示部に表示する性能表示処理部と、
を備えるタイヤ性能予測システム。
【請求項11】
前記性能表示処理部は、前記予測値と前記特徴量とを前記表示部に表示し、
前記表示部に表示された前記特徴量を変更する特徴量変更部を更に備え、
前記性能予測部は、前記特徴量変更部によって前記特徴量が変更された場合に、変更後の前記特徴量を含む前記パターン情報に基づいて前記タイヤ性能の値を再予測する、
請求項10に記載のタイヤ性能予測システム。
【請求項12】
前記性能表示処理部は、前記予測値を示すグラフを前記表示部に表示する、
請求項10又は11に記載のタイヤ性能予測システム。
【請求項13】
前記性能予測部は、前記予測値を出力するように機械学習された予測モデルに前記パターン情報を入力することにより、前記予測モデルに前記予測値を出力させる、
請求項10又は11に記載のタイヤ性能予測システム。
【請求項14】
タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報を取得するパターン情報取得ステップと、
前記パターン情報に基づいてタイヤ性能の値を予測する予測ステップと、
を一又は複数のプロセッサが実行するタイヤ性能予測方法。
【請求項15】
タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報を取得するパターン情報取得ステップと、
前記パターン情報に基づいてタイヤ性能の値を予測する予測ステップと、
を一又は複数のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤのトレッドパターンを推定する技術、又はタイヤ性能を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に装着されるタイヤの接地面画像に基づいてタイヤ性能値を予測するタイヤ性能予測システムが知られている(特許文献1、2参照)。当該予測システムは、タイヤ接地面形状を表す前記接地面画像から画像の特徴量を抽出し、その特徴量を学習済みの予測モデルに入力して、前記予測モデルにタイヤ性能の予測値を出力させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-195038号公報
【特許文献2】特開2022-090349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前掲の従来の予測システムは、前記接地面画像に基づいてタイヤ性能値を予測するものであり、タイヤのトレッドパターンを推定するものではない。
【0005】
また、従来の予測システムは、タイヤに車両の荷重がかかった状態の接地面画像を用いてタイヤ性能を予測するものである。タイヤの接地面の形状は、タイヤの空気圧や、タイヤのゴム硬度、周辺温度(気温)、車両の重量、放置時間などの各測定条件に依存する。これらの各測定条件のいずれか一つでも異なると、前記接地面の形状が変形するため、タイヤ性能値を高精度に予測することが困難である。
【0006】
本開示の目的は、タイヤに求めるタイヤ性能の目標値に基づいてタイヤのトレッドパターンを推定するトレッドパターン推定システム、トレッドパターン推定方法、及びプログラムを提供することにある。
【0007】
本開示の他の目的は、タイヤのトレッドパターンに基づいてタイヤ性能値を予測するタイヤ性能予測システム、タイヤ性能予測方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の局面に係るトレッドパターン推定システムは、タイヤ性能の目標値を取得する目標値取得部と、前記タイヤ性能及び前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定するパターン推定部と、前記パターン推定部によって推定された推定パターンを所定の表示部に表示するパターン表示処理部と、を備える。
【0009】
本開示の他の局面に係るタイヤ性能予測システムは、タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報を取得するパターン情報取得部と、前記パターン情報に基づいてタイヤ性能の値を予測する性能予測部と、前記性能予測部によって予測された前記タイヤ性能の予測値を所定の表示部に表示する性能表示処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、タイヤに求めるタイヤ性能の目標値に基づいてタイヤのトレッドパターンを推定することが可能である。
【0011】
また、本開示によれば、タイヤのトレッドパターンに基づいて当該トレッドパターンに応じたタイヤ性能値を高精度に予測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る推定システムの構成を示す図である。
図2図2は、推定システムが備える推定装置の構成を示すブロック図である。
図3A図3Aは、トレッドパターンを推定するパターン推定部を示すブロック図である。
図3B図3Bは、タイヤ性能値を予測する性能予測部を示すブロック図である。
図4図4は、推定システムが備える情報端末の構成を示すブロック図である。
図5図5は、推定システムの情報端末に表示される画面の一例であるタイヤ情報入力画面である。
図6図6は、推定システムの情報端末に表示される画面の一例である性能情報入力画面である。
図7図7は、推定システムの情報端末に表示される画面の一例である目標値入力画面である。
図8図8は、推定システムの情報端末に表示される画面の一例である推定パターン画面である。
図9図9は、推定システムの情報端末に表示される画面の一例である予測性能グラフ画面である。
図10図10は、推定システムにおいて実行されるパターン推定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、本開示の第2実施形態に係る予測システムの構成を示す図である。
図12図12は、予測システムが備える予測装置の構成を示すブロック図である。
図13図13は、予測システムが備える情報端末の構成を示すブロック図である。
図14図14は、予測システムの情報端末に表示される画面の一例である予測性能表示画面である。
図15図15は、予測システムの情報端末に表示される画面の一例である特徴量表示画面である。
図16図16は、予測システムにおいて実行される性能予測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示を具体化した一例であり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係る推定システム100の構成を示す図である。本実施形態の推定システム100は、主として、推定装置10と、情報端末20と、データベース30とによって構成されている。なお、推定システム100は、本開示のパターン推定システムの一例である。
【0015】
推定システム100は、特定のタイヤ性能の数値(タイヤ性能値)が予め定められた目標値を達成するトレッドパターンを推定するシステムである。本実施形態では、推定システム100は、予め定められた前記目標値に基づいて、前記目標値と同等なタイヤ性能を備えるタイヤのトレッドパターンを推定可能に構成されている。推定システム100による推定結果は、前記タイヤの開発や前記タイヤの性能試験、前記タイヤの性能評価などに用いられる。
【0016】
前記タイヤは、乗用車、トラックやバス等の大型車両、自動二輪車、競技用車両、産業用車両、特殊車両、トレーラーや台車等の荷重用車両などの車両に装着されるものであり、車両から回転力が伝達されることにより転動して、車両を所定の進行方向へ移動させる。なお、前記タイヤは、路面との接地部分にトレッド部を有するタイヤであればどのような種類のタイヤであってもよく、例えば、内部に圧縮空気が充填される空気入りタイヤ、或いは、内部に圧縮空気が充填されない非空気入りタイヤであってもよい。
【0017】
タイヤの接地面、つまり、タイヤのトレッド部の表面には、タイヤ性能に密接に関係する前記トレッドパターンが形成されている。前記トレッドパターンは、トレッド部に形成された溝模様であり、溝が延びる方向や角度、溝の長さ、溝の深さ、溝の幅、溝の間隔、溝と溝の連結状態などの様々な要素に基づいてその形状が設計される。前記トレッドパターンは、大別して、4つの機能を有する。具体的には、前記トレッドパターンは、路面に車両の駆動力や制動力を伝える機能、路面から伝わった水を排水する機能、路面に対する滑りを抑制して車両の走行を安定させる機能、車両の乗り心地や静寂性を良くする機能などを有する。
【0018】
本開示の発明者は、これらの各機能を評価し得るタイヤ性能として、例えば、前記トレッドパターンに関係する燃費性能、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、及び耐摩耗性能などの特定のタイヤ性能(以下「特定タイヤ性能」という。)に着目し、これらの各タイヤ性能の前記目標値を用いて前記目標値を達成可能なトレッドパターンを推定する推定システム100を開発した。なお、上述の各タイヤ性能は一例であり、推定システム100は、他のタイヤ性能の前記目標値を達成可能なトレッドパターンを推定するものであってもよい。
【0019】
[推定システム100の構成]
図1に示すように、推定システム100は、推定装置10と、情報端末20と、データベース30とを備えており、これらがネットワークN1によって互いに通信可能に接続されている。ネットワークN1は、例えば、LANなどで接続された有線通信網、あるいは、専用回線や公衆回線等の無線通信網である。
【0020】
なお、本実施形態では、ネットワークN1にデータベース30が接続された構成を例示するが、例えば、データベース30は、推定装置10又は情報端末20に備えられていてもよい。また、本実施形態では、ネットワークN1に情報端末20が接続された構成を例示するが、情報端末20が備える各構成要素や各種機能が推定装置10に搭載されていてもよい。
【0021】
推定装置10は、情報端末20から送信されたタイヤ性能の目標値を取得し、取得した前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定する処理を行う。具体的には、推定装置10のパターン推定部111(図2参照)が、情報端末20から送信された前記目標値を含む入力情報や、予め構築された後述の最適化モデル121及び予測モデル122(図3A及び図3B参照)などを用いて、推定対象である前記タイヤのトレッドパターン(溝形状)を推定する。また、推定装置10では、後述の性能予測部112(図2参照)が、情報端末20から送信された入力情報などの各種情報や、後述の予測モデル122(図3及び図3B参照)などを用いて、パターン推定部111によって推定されたトレッドパターン(以下「推定パターン」と称する。)に応じたタイヤ性能値を予測する。パターン推定部111による推定結果(推定パターン)、及び性能予測部112による予測結果(性能予測値)は、情報端末20に出力されて、情報端末20の表示部23に表示される。
【0022】
推定装置10は、各種演算処理を実行可能な情報処理装置であり、例えば、ネットワークN1に接続されたサーバコンピュータ、クラウドサーバー、或いはパーソナルコンピュータである。なお、推定装置10は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステム、或いはクラウドコンピューティングシステムであってもよい。また、推定装置10で実行される各種の処理は、一つ又は複数のプロセッサによって分散して実行されてもよい。推定装置10には、推定システム100を稼働するためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0023】
情報端末20は、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。情報端末20は、いわゆるデスクトップパソコンやノートパソコン、或いは、携帯して持ち運び可能なスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末である。ユーザは、推定装置10において実行されるパターン推定処理(図9参照)などの各種演算処理に用いられる各種情報を情報端末20に入力する。したがって、情報端末20には、推定システム100と連携して推定装置10に前記各種情報や制御信号などを送信したり、前記推定結果や前記予測結果を表示画面に表示したりするためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0024】
データベース30は、推定システム100において取り扱われる各種データが所定のデータ管理方式に基づいて記憶媒体に格納されたデータ群である。データベース30は、ネットワークN1に通信可能に接続された記憶装置、情報処理装置、クラウドサーバー、データサーバーなど、種々の形態で管理される。データベース30は、後述の最適化モデル121(図2参照)に用いられる参照データ30Aと、後述の予測モデル122(図2参照)の生成又は学習に用いられる教師データ30Bを含む。
【0025】
参照データ30Aは、推定装置10による最適化モデル121を用いた最適化処理の実行時に参照されるデータである。参照データ30Aは、後述の最適化モデル121(図2参照)によって予測モデル122に入力される設計変数(パターン情報)を決定する際に参照される。参照データ30Aには、タイヤに適用され得るすべてのトレッドパターンを示す情報(パターン情報)が含まれている。具体的には、参照データ30Aには、例えば、市場に流通している全てのタイヤの前記パターン情報と、各トレッドパターンに基づくタイヤ性能を示す情報などが含まれている。なお、参照データ30Aには、過去の研究や実験の際に製造された多数の試作タイヤの前記パターン情報が含まれていてもよい。
【0026】
前記パターン情報は、例えば、トレッドパターンの特徴量であり、例えば、トレッドパターンを溝角度や溝幅、溝深さ、溝長さなどの溝形状に基づく特徴量(第1特徴量)と、各溝形状の構成比率やトレッド面に対する溝面積の比率などの特徴量(第2特徴量)と、各溝の繋がり状態の評価値(連結度)などの特徴量(第3特徴量)と、を含む。なお、前記パターン情報は、トレッドパターンを示す画像データそのものであってもよい。
【0027】
教師データ30Bは、推定装置10において後述の性能予測部112よる性能予測処理に用いられる予測モデル122(図2参照)を生成又は学習するためのデータセットである。教師データ30Bは、後述の予測モデル122に含まれる種々の関数(以下「予測関数」という。)を生成するために用いられる情報である。具体的には、教師データ30Bは、多数のサンプルタイヤに関するタイヤ情報(説明変数)や、多数のサンプルタイヤの実際のトレッドパターンを示すパターン情報(説明変数)、各サンプルタイヤにおける前記特定タイヤ性能を含む複数のタイヤ性能の実測値(目的変数)などを含むデータセットである。
【0028】
前記タイヤ情報は、例えば、タイヤのサイズ情報(タイヤ幅、扁平率、リム径、タイヤ外径など)、タイヤの用途(スノータイヤ、サマータイヤなど)、タイヤ構造記号、荷重指数(ロードインデックス)、最高速度(速度記号に基づく最高速度)、タイヤの強度(プライレーティング)などである。
【0029】
なお、前記サンプルタイヤは、これまでに製品として製造されたタイヤ、前記タイヤの開発のための研究や実験の際に製造された試作タイヤなどである。
【0030】
[推定装置10]
以下、図2を参照して、推定装置10の構成について説明する。ここで、図2は、推定装置10の構成を示すブロック図である。
【0031】
推定装置10は、本実施形態の推定システム100を実現するためのものであり、後述の最適化モデル121及び予測モデル122を用いて前記推定パターンを推定し、また、後述の予測モデル122を用いて前記性能予測値を予測する。
【0032】
図2に示すように、推定装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15と、を備える。
【0033】
通信部13は、推定装置10をネットワークN1に接続して、所定の通信プロトコルに従って、ネットワークN1に接続された各デバイスとの間でデータ通信を実行するための通信インターフェースである。具体的には、通信部13は、ネットワークN1を通じて情報端末20やデータベース30との間でデータ通信を実行する。
【0034】
記憶部12は、各種の情報やデータを記憶するHDD、SSD、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶部12には、制御プログラム120、最適化モデル121、予測モデル122が記憶されている。なお、最適化モデル121、及び予測モデル122は、それぞれが格納されたメモリを備える電子回路として実現されていてもよい。
【0035】
制御プログラム120は、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、推定装置10に電気的に接続されるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)によって前記記録媒体から読み取られて記憶部12に複製されたものである。なお、制御プログラム120は、ネットワークN1に接続された外部ストレージから読み出されて通信部13を通じて入力され、記憶部12に複製されたものであってもよい。
【0036】
制御プログラム120は、最適化モデル121や予測モデル122などを用いて後述のパターン推定処理(図10参照)を実行するためのプログラムである。なお、制御プログラム120に替えて、前記パターン推定処理を制御部11に実行させるプログラムが記憶部12に記憶されていてもよい。
【0037】
図3A及び図3Bは、パターン推定処理(図10参照)に用いられる最適化モデル121、及び予測モデル122を示すブロック図である。
【0038】
最適化モデル121は、後述のパターン推定部111による推定処理(図10のステップS14参照)に用いられるものであり、学習済みの予測モデル122による予測値が予め定められた前記目標値になるように、或いは、その目標値の許容範囲内に収まるように、未知の前記パターン情報を探索する。図3に示すように、予め定められた初期入力値(初期パターン情報)が制御部11(図2参照)によって予測モデル122に入力されると、最適化モデル121は、予測モデル122から出力された予測値が最適かどうかを判定する。そして、予測モデル122から出力された予測値が最適でない場合に、最適化モデル121は、新たな設計変数(新たなパターン情報)を決定してその設計変数を新たな入力値として予測モデル122に入力し、予測モデル122により再び予測された予測値が最適であるか否かの判定を再度行う。これにより、求める前記パターン情報の探索が行なわれる。この探索は、予測モデル122から出力される予測値が最適解となるまで繰り返し行われる。言い換えると、最適化モデル121は、予測モデル122による予測値と前記目標値との差が最小値となるように、或いは、前記予測値が前記目標値の許容範囲内となるように、前記設計変数(つまりパターン情報)を最適化する。予測モデル122から出力される予測値が最適解と判定されると、その予測時に入力された前記設計変数(パターン情報)が前記推定パターンとして出力される。
【0039】
最適化モデル121による第1の最適化方法として、予め定められた目的関数の計算値が最小値に達した場合に最適と判定する方法が適用可能である。この第1の最適化方法においては、最適化モデル121は、前記目的関数の計算値が前記最小値に達するまで最適化処理を繰り返し実行する。そして、最適化モデル121は、前記目的関数の計算値が前記最小値に達した場合の前記設計変数(パターン情報)を、最適解として出力する。なお、前記最小値は、0から所定の許容値までの間で定められる。
【0040】
前記第1の最適化方法において最適化モデル121に用いられる前記目的関数は、以下の式(1)により表される。この場合、最適化モデル121は、式(1)の目的関数f(v1,・・・vN)の計算値が前回の探索時の計算値よりも小さい値となる前記設計変数の探索を行う。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、式(1)におけるviは、予測モデル122によって予測されるタイヤ性能の種類がN個ある場合のi番目のタイヤ性能の予測値である。また、tiはi番目のタイヤ性能の目標値、ciはi番目のタイヤ性能の重み係数である。また、式(1)の右辺の{(vi-ti)/ti2は、予測値viと目標値tiとの差分(=vi-ti)を目標値tiで除算した差分比率を二乗したものである。すなわち、式(1)で表される目的関数f(vi,・・・,vN)は、前記差分比率の二乗の平方和として与えられる。なお、重みciは、対応する前記タイヤ性能ごとに任意に定めることができる。
【0043】
なお、最適化モデル121は、例えば、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)リスト探索、粒子群最適化(PSO:Particle Swarm Optimization)、応答曲面法(RSM:Response Surface Methodology)などが好適に用いられる。本実施形態では、最適化モデル121は、上述した複数のアルゴリズムを含んでおり、予測モデル122から予測値が出力されるごとに、前記予測値に基づいて、最適化に関する課題の特徴を抽出し、その特徴に基づいて予測モデル122に入力される前記設計変数(パターン情報)の絞り込みを行うとともに、適切な最適化アルゴリズムを選択して、前記目的関数に基づく最適化の計算を行う。なお、最適化モデル121は、上述の各アルゴリズムのうちの一つを用いたものであってもよい。
【0044】
予測モデル122は、後述のパターン推定部111による推定処理に用いられる学習済みモデルである。また、予測モデル122は、性能予測部112による性能予測処理(図10のステップS17参照)に用いられる学習済みモデルでもある。予測モデル122は、入力されたトレッドパターンに関する前記パターン情報に応じたタイヤ性能を予測する。
【0045】
図3Aに示すように、予測モデル122は、最適化モデル121から出力された新入力値(パターン情報)が説明変数として入力部に入力されると、前記新入力値に応じたタイヤ性能の数値を予測して、その予測結果(性能予測値)を目的変数として出力部から出力する。
【0046】
また、図3Bに示すように、予測モデル122は、最適化モデル121から出力された最適解としての推定パターン(推定結果)の前記パターン情報(推定パターンの特徴量)が説明変数として入力部に入力されると、前記推定パターンに応じたタイヤ性能の数値を予測して、その予測結果(性能予測値)を目的変数として出力部から出力する。
【0047】
予測モデル122に入力される入力データは、前記性能情報及び前記タイヤ情報が含まれる。
【0048】
予測モデル122は、入力値(入力データ)に対して予測値(出力データ)を返す周知の関数(予測関数)を含むものであってもよい。また、後述の性能予測部112は、予測モデル122を用いずに、前記予測関数によって前記性能予測値を出力する性能予測値算出部として構成されていてもよい。
【0049】
予測モデル122は、データベース30に格納されている教師データ30Bと、所定のアルゴリズムとに基づいて、制御部11による機械学習によって生成される。なお、制御部11は、教師データ30Bの内容が更新されると、その都度、予測モデル122を再学習させて予測モデル122を更新する。なお、予測モデル122は、制御部11以外の制御部によって生成又は学習されたものが外部から転送されて、記憶部12に格納されたものであってもよい。
【0050】
予測モデル122は、種々の方法で構築することができる。例えば、予測モデル122の構築に必要なアルゴリズムとして、重回帰、一般化線形回帰、主成分回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、カーネル回帰、ランダムフォレスト回帰、ガウス過程回帰、多層ニューラルネットワーク、クラスタリング、サポートベクターマシン、動径基底関数で定義されるRBFネットワークなどが好適に用いられる。また、予測モデル122は、ニューラルネットワークの中間層を多層化する深層学習(ディープラーニング)によって構築されてもよい。なお、予測モデル122は、上述の各アルゴリズムのうちの一つを用いたものであってもよく、或いは、複数のアルゴリズムを用いたものであってもよい。
【0051】
最適化モデル121及び予測モデル122は、市販のコンピュータソフトウェア(例えば、The MathWorks社製のMATLAB(登録商標)や、ESTECO社製のmodeFRONTIER等)、オープンソースソフトウェアのPython等を用いることによって構築することができる。
【0052】
図2に示すように、表示部14は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示装置である。操作部15は、ユーザの操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルなどの入力装置である。
【0053】
制御部11は、推定装置10の各部の動作を制御する。制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUが実行することにより推定装置10を制御する。
【0054】
図2に示すように、制御部11は、取得処理部110、パターン推定部111(本開示のパターン推定部の一例)、性能予測部112(本開示の性能予測部の一例)、出力処理部113(本開示の出力処理部の一例)、教師データ更新部114、モデル学習部115等の各種の処理部を含む。
【0055】
制御部11は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。制御部11又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部11に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。また、前記制御プログラムは、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)を前記各種の処理部(パターン推定部111や性能予測部112など)として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0056】
取得処理部110は、本開示の目標値取得部、及びタイヤ情報取得部の一例であり、情報端末20において設定された情報や入力された情報などが情報端末20から転送されると、それらの情報を受け取る。
【0057】
本実施形態では、取得処理部110は、推定装置10で行われるパターン推定処理(図10参照)に用いられる前記特定タイヤ性能の前記目標値を取得する処理を行う。具体的には、情報端末20においてユーザによって入力された前記目標値がネットワークN1を通じて情報端末50から推定装置10に送信されると、その目標値を示す情報を取得処理部110が取得する。前記目標値はユーザによって任意の値に設定される。
【0058】
また、取得処理部110は、前記パターン推定処理に用いられるタイヤ情報を取得する処理を行う。具体的には、情報端末20においてユーザによって入力された前記タイヤ情報がネットワークN1を通じて情報端末50から推定装置10に送信されると、そのタイヤ情報を取得処理部110が取得する。
【0059】
前記タイヤ情報は、前記パターン推定処理によってトレッドパターンを推定させたいタイヤに関する情報であり、例えば、タイヤのサイズ情報、タイヤの用途(スノータイヤ、サマータイヤなど)、タイヤ構造記号、荷重指数(ロードインデックス)、最高速度(速度記号に基づく最高速度)、タイヤの強度(プライレーティング)などである。前記サイズ情報は、例えば、タイヤ幅、扁平率、リム径、タイヤ外径などを含む。
【0060】
パターン推定部111は、取得処理部110によって取得された前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定する処理を行う。
【0061】
パターン推定部111は、情報端末20から、所定の推定要求信号又は再推定要求信号とともに、前記特定タイヤ性能の前記目標値が取得されると、取得された前記目標値、前記最適化モデル121、前記予測モデル122を用いて、前記目標値を達成可能なトレッドパターンを推定する。本実施形態では、パターン推定部111は、前記目標値を達成可能なトレッドパターンの前記パターン情報(特徴量)を推定する。
【0062】
本実施形態では、パターン推定部111は、前記予測モデル122による予測に用いられる前記パターン情報を含む入力データを最適化することにより、前記目標値を達成するための前記パターン情報を算出する。詳細には、前記予測モデル122によって予測される複数のタイヤ性能それぞれの物性値を示す各予測値が、予め設定された前記目標値の前記許容範囲に収まるように前記入力データの前記パターン情報を最適化する。本実施形態では、所定の推定要求信号又は再推定要求信号が入力されると、パターン推定部111は、最適化モデル121を有効にするとともに、予測モデル122の入力部に前記初期入力値を入力して、最適化モデル121による最適解の探索を実行させる。この探索が繰り返されることにより、前記目標関数の計算値が最小値となる設計変数が特定される。すなわち、前記目標値を達成する前記パターン情報が割り出される。
【0063】
また、パターン推定部111は、取得処理部110によって取得された前記目標値を最適化モデル121の入力部に入力して、最適化モデル121による最適化の際に用いられる前記目標値、及びその許容範囲を設定する。
【0064】
本実施形態では、二以上の前記特定タイヤ性能の各目標値が最適化モデル121の前記入力部に入力される。そして、パターン推定部111は、入力された複数の目標値すべてを達成可能なトレッドパターンを推定する。
【0065】
また、パターン推定部111は、前記パターン情報について定められた所定の制約条件を満たすように、予測モデル122に入力される前記入力データの前記パターン情報を最適化する。これにより、最適化の精度が向上する。前記制約条件は、例えば、前記性能情報、及び前記タイヤ情報である。
【0066】
パターン推定部111によって推定された前記推定パターンは、情報端末20の表示部23に表示させるために、出力処理部113によって通信部13を通じて情報端末20に送信される。
【0067】
性能予測部112は、パターン推定部111によって推定された前記推定パターンの特徴量に基づいて、前記推定パターンに応じたタイヤ性能の値(性能値)を予測する。性能予測部112によって予測されるタイヤ性能は、前記推定パターンのトレッドパターンを有するタイヤが備えるタイヤ性能の性能値であり、とりわけ、トレッドパターンに密接に関係する前記特定タイヤ性能の性能値である。
【0068】
具体的には、性能予測部112は、最適化モデル121の出力部から最適解として出力される前記推定パターンの前記パターン情報(特徴量)を予測モデル122の入力部に入力して、予測モデル122に前記パターン情報に応じたタイヤ性能の性能値を予測させ、予測モデル122の出力部から出力される性能予測値を予測結果として取得する。
【0069】
性能予測部112によって予測された前記性能予測値は、情報端末20の表示部23に表示させるために、出力処理部113によって通信部13を通じて情報端末20に送信される。
【0070】
前記推定パターンに対応する性能予測値が予測されると、制御部11は、前記性能予測値及び前記タイヤ情報、並びに前記推定パターンを教師データ30Bに追加して、教師データ30Bの内容を更新する。このような更新処理を行う制御部11は、本実施形態において教師データ更新部114として機能する。
【0071】
そして、制御部11は、教師データ30Bの内容が更新された後に、更新後の教師データ30Bを用いて予測モデル122を学習させる。この処理を行う制御部11は、本実施形態においてモデル学習部115として機能する。
【0072】
出力処理部113は、パターン推定部111による推定結果、性能予測部112による予測結果を通信部13を通じて外部装置に出力する。本実施形態では、前記推定結果及び前記予測結果が情報端末20に送信される。情報端末20は、前記推定結果及び前記予測結果を表示部23に表示する。
【0073】
[情報端末20]
以下、図4を参照して、情報端末20の構成について説明する。ここで、図4は、情報端末20の構成を示すブロック図である。
【0074】
図4に示すように、情報端末20は、制御部21、記憶部22、表示部23、操作部24、通信部25などを備える。情報端末20は、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。ユーザは、推定装置10によるパターン推定処理に用いられる前記タイヤ情報や前記性能情報、前記目標値などの各種情報を情報端末20に入力することができる。また、ユーザは、推定装置10によるパターン推定処理(図10参照)に用いられる前記性能値の許容範囲などを情報端末20に入力することができる。
【0075】
通信部25は、情報端末20をネットワークN1に接続し、ネットワークN1を通じて推定装置10との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0076】
記憶部22は、各種の情報を記憶するフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶部22には、制御部21に各種演算処理を実行させるための制御プログラム221や、各種演算処理に用いられるデータなどが記憶されている。
【0077】
表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示装置である。表示部23には、ユーザの入力要求に応じて、後述の表示処理部213によって各種の情報示す画面230~234が表示される。操作部24は、ユーザによる入力操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルなどの入力装置である。
【0078】
制御部21は、情報端末20の各部の動作を制御する。制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより情報端末20を制御する。
【0079】
図4に示すように、制御部21は、タイヤ情報受付部210と、性能情報受付部211と、目標値受付部212と、表示処理部213と、目標値変更部216(本開示の目標値変更部の一例)等の各種の処理部を含む。制御部21は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。制御部21又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部21に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0080】
タイヤ情報受付部210は、前記タイヤ情報の入力を受け付ける処理を行う。具体的には、タイヤ情報受付部210は、表示部23に表示されるタイヤ情報入力画面230(図5参照)に入力された情報を取得する。
【0081】
図5に示すように、タイヤ情報入力画面230は、前記タイヤ情報の具体的な数値又は評価値などを入力するための入力画面である。タイヤ情報入力画面230は、各タイヤ情報に対応する複数の入力枠を有する。各入力枠には、ユーザが操作部24によってプルダウンキーを選択することによって、プルダウンメニューから任意の前記数値又は評価値を指定することができる。
【0082】
タイヤ情報入力画面230において前記タイヤ情報が入力された後に、次キー33が押されると、入力された情報が記憶部22に記憶される。その後、表示部23に表示される画面が次の性能情報入力画面231(図6参照)に切り替えられる。
【0083】
性能情報受付部211は、タイヤが備える一つ又は複数のタイヤ性能の入力、及びその性能値の許容範囲の入力を受け付ける処理を行う。具体的には、性能情報受付部211は、表示部23に表示される性能情報入力画面231(図6参照)に入力された情報を取得する。
【0084】
図6に示すように、性能情報入力画面231は、タイヤ性能に関する性能情報、詳細には、タイヤ性能及びその性能値の許容範囲を入力するための入力画面である。性能情報入力画面231は、前記タイヤ性能を入力するための入力枠43Aと、各タイヤ性能の許容範囲(下限値及び上限値)を入力するための入力枠43Bとを含む表示枠43を有する。入力枠43Aには、ユーザが操作部24によってプルダウンキー42を選択することによって、プルダウンメニューから任意の前記タイヤ性能を指定することができる。入力枠43Bには、指定された前記タイヤ性能の許容範囲(下限値及び上限値)を任意に入力することができる。
【0085】
入力枠43Aに指定可能な前記タイヤ性能は、例えば、燃費性能、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、及び耐摩耗性能などである。なお、これらのタイヤ性能のすべてが予め入力枠43Aに入力されていてもよく、また、全てのタイヤ性能の許容範囲が予め入力枠43Bに入力されていてもよい。
【0086】
性能情報入力画面231において前記性能情報が入力された後に、次キー33が押されると、入力された情報が記憶部22に記憶される。その後、表示部23に表示される画面が次の目標値入力画面232(図7参照)に切り替えられる。
【0087】
目標値受付部212は、タイヤに備えさせたい前記特定タイヤ性能の目標値の入力を受け付ける処理を行う。具体的には、目標値受付部212は、表示部23に表示される目標値入力画面232(図7参照)に入力された情報を取得する。
【0088】
図7に示すように、目標値入力画面232は、複数の前記タイヤ性能それぞれの前記目標値を入力し且つ表示するための入力枠44を有する。入力枠44は、前記目標値を入力し且つ表示するための入力枠45(破線囲み部分)を有する。ユーザが操作部24を操作することによって、タイヤに備えさせたい任意の特定タイヤ性能に対応する入力枠45に任意の数値の目標値を入力することができる。ユーザは、複数のタイヤ性能のうち、少なくとも一つのタイヤ性能について前記目標値を入力する必要がある。もちろんすべてのタイヤ性能について前記目標値を入力してもよい。なお、前記特定タイヤ性能は、前記目標値が入力されたタイヤ性能のことを示す。
【0089】
目標値入力画面232において、前記目標値が入力された後に、登録キー32が押されると、入力された前記目標値の情報が記憶部22に記憶される。その後、トレッドパターンの推定要求信号とともに、前記タイヤ性能の許容範囲、及び前記目標値の情報が推定装置10に送信される。
【0090】
表示処理部213は、パターン推定部111によって推定された前記推定パターンに関する情報や、性能予測部112によって予測された前記性能予測値に関する情報を表示部23に表示する処理を行う。
【0091】
具体的には、表示処理部213は、推定装置10から送信された前記推定パターンを受信すると、その推定パターンのイメージデータを含む推定パターン画面233(図8参照)を表示部23に表示する。
【0092】
また、表示処理部213は、推定装置10から送信された前記性能予測値を受信すると、その性能予測値を推定パターン画面233に表示する。
【0093】
図8に示すように、推定パターン画面233は、前記推定パターンに関する情報を表示するための表示枠46と、前記性能予測値を表示するための表示枠47とを有する。
【0094】
表示枠46には、前記推定パターンを示す前記パターン情報(特徴量)から図式化された推定パターン画像(二次元画像又は三次元画像)が表示される。また、表示枠47には、性能情報入力画面231の入力枠43Aに入力されたタイヤ性能と、その性能予測値と、前記目標値とが表示される。
【0095】
また、表示処理部213は、性能情報入力画面231の入力枠43Aに入力されたタイヤ性能ごとに前記性能予測値を示すグラフを表示部23に表示する処理を行う。具体的には、表示処理部213は、上述した表示枠47と、レーダーチャート49(本開示のグラフの一例)を表示するための表示枠48とを含む予測性能グラフ画面234(図9参照)を表示部23に表示する。
【0096】
図9には、9つの前記タイヤ性能に対応する番号と、各番号に対応する性能予測値とを含むレーダーチャート49が示されている。レーダーチャート49は、各タイヤ性能の予測値を示す多角形グラフであり、各タイヤ性能と、それらの性能予測値とがグラフ内に反映されている。レーダーチャート49は、0~4までの5つの目盛りで表示されており、予め定められた前記許容範囲の下限値を0、前記許容範囲の上限値を4として、この範囲を基準として前記性能予測値の目盛り位置が定められている。なお、推定パターン画面233の次キー33が押されると、その後、表示部23に表示される画面が予測性能グラフ画面234(図9参照)に切り替えられる。
【0097】
本実施形態では、推定パターン画面233又は予測性能グラフ画面234の表示枠47は、表示内容の数値を変更可能に構成されている。仮に、すでに目標値が入力されている場合は、その目標値の数値を変更することができる。また、目標値が入力されていない場合は、その目標値の空欄に新たな数値を入力することができる。ユーザは、操作部24を操作することによって、表示枠47内の前記目標値の表示内容を前記許容範囲内で変更することができる。
【0098】
目標値変更部216は、前記推定パターンが推定された後に、前記推定パターンの推定に用いられた前記目標値を変更する処理を行う。具体的には、目標値変更部216は、表示枠47内の前記目標値の数値が変更された場合に、その変更後の目標値の入力を受け付けて、記憶部22に記憶する。また、目標値変更部216は、前記目標値の数値が変更された後に目標値変更キー35が押されると、トレッドパターンの再推定要求信号とともに、変更後の目標値の情報を推定装置10に送信する。
【0099】
[パターン推定処理]
以下、図10のフローチャートを参照して、推定システム100において実行されるパターン推定処理の手順の一例とともに、本開示のパターン推定方法について説明する。なお、前記パターン推定処理に含まれる一又は複数のステップが適宜省略されてもよく、また、各ステップは、同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。
【0100】
まず、ステップS11では、情報端末20の制御部21は、前記タイヤ情報、前記性能情報、及び前記目標値が入力されたか否かを判定する。前記タイヤ情報及び前記目標値が入力されると、制御部21は、前記タイヤ情報、前記性能情報、及び前記目標値とともに、推定要求信号を推定装置10に送信する(S12)。
【0101】
次のステップS13において、推定装置10の制御部11は、前記推定要求信号を受信すると、前記推定要求信号とともに送られてきた前記タイヤ情報、前記性能情報、及び前記目標値を取得する。なお、ステップS13は、本開示の目標値取得ステップの一例である。
【0102】
前記推定要求信号を受信すると、推定装置10の制御部11は、最適化モデル121及び予測モデル122を動作可能なように有効にし、パターン推定部111に推定実行信号を出力して、推定処理を実行する(S14)。この場合、パターン推定部111は、最適化モデル121の入力部に、推定処理に最低限必要な情報として、情報端末20から送られてきた前記目標値を入力し、また、予測モデル122の入力部に前記初期入力値を入力して、最適化モデル121及び予測モデル122による最適解の探索を実行させる(S15)。本実施形態では、制御部11は、前記目標値に加え、情報端末20から送られてきた前記性能情報及び前記タイヤ情報を制約条件として最適化モデル121の入力部に入力する。
【0103】
次のステップS16において、制御部11は、所定時間内に、前記推定パターンが最適化モデル121の出力部から出力されたか否かを判定する。仮に、所定時間が経過しても出力されなかった場合は、エラー信号を情報端末20に出力する(S23)。一方、最適解として前記推定パターンが最適化モデル121の出力部から出力された場合は、次のステップS17に進む。
【0104】
ステップS17において、制御部11は、性能予測部112に予測実行信号を出力して、性能予測処理を実行する。具体的には、制御部11は、予測モデル122の入力部に、最適化モデル121の出力部から出力された前記推定パターンを示すパターン情報(推定パターン情報)と、推定処理に用いられた前記タイヤ情報を入力して、予測モデル122に正常予測処理を行わせる。
【0105】
次のステップS18において、制御部11は、所定時間内に、前記性能予測値が予測モデル122の出力部から出力されたか否かを判定する。仮に、所定時間が経過しても出力されなかった場合は、エラー信号を情報端末20に出力する(S23)。一方、前記性能予測値が予測モデル122の出力部から出力された場合は、次のステップS19に進み、制御部11は、前記推定パターンと前記性能予測値とを情報端末20に送信する。
【0106】
情報端末20の制御部21は、推定装置10から前記推定パターン及び前記性能予測値を受信すると、ステップS20において、前記推定パターン及び前記性能予測値を表示部23に表示する。具体的には、制御部21は、前記推定パターン画像(二次元画像又は三次元画像)や、前記推定パターンに応じた前記性能予測値を含む推定パターン画面233(図8参照)を表示部23に表示する。そして、次キー33が押されたことを条件に、前記性能予測値及びそのグラフを含む予測性能グラフ画面234(図9参照)を表示部23に表示する。
【0107】
次のステップS21では、制御部21は、推定パターン画面233又は予測性能グラフ画面234の表示枠47に表示されている前記目標値の数値が変更されたか否かを判定する。ここで、前記目標値が変更されなかった場合は、一連の処理が終了する。
【0108】
ステップS21において、前記目標値が変更されたと判定されると、制御部21は、変更後の前記目標値とともに、再推定要求信号を推定装置10に送信する(S22)。推定装置10において前記再推定要求信号を受信すると、制御部11は、ステップS14以降の処理を繰り返し実行する。
【0109】
このように、本実施形態の推定システム100では、前記特定タイヤ性能の前記目標値が取得処理部110によって取得されると、その目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンがパターン推定部111によって推定される。そのため、ユーザは、開発しようとするタイヤにおける特定タイヤ性能の目標値が決まりさえすれば、その目標値を情報端末20に入力することにより、その目標値を達成するトレッドパターン(推定パターン)の情報を入手することができる。
【0110】
また、本実施形態では、パターン推定部111によって推定パターンが推定された後に、前記目標値が変更された場合に、パターン推定部111が変更後の目標値に基づいて再度トレッドパターンを推定する。そのため、ユーザは、開発しようとするタイヤの前記推定パターンが所望する形状ではなかった場合に、前記目標値を変更したり、或いは設定していなかった目標値を追加入力したりするだけで、もう一度、パターン推定部111にトレッドパターンを推定させることができる。
【0111】
また、本実施形態では、前記目標値、及び推定対象のタイヤのタイヤ情報に基づいて前記トレッドパターンが推定される。そのため、より正確にトレッドパターンが推定される。
【0112】
また、パターン推定部111は、最適化モデル121を用いて、予測モデル122に入力されるパターン情報の探索を行うように構成されている。そのため、高精度の推定結果(推定パターン)を容易に得ることができる。
【0113】
また、本実施形態の推定システム100は、パターン推定部111だけでなく、前記推定パターンの特徴量に基づいて、前記推定パターンに応じた前記タイヤ性能の値を予測する性能予測部112を更に備える。そのため、ユーザは、前記推定パターンだけでなく、その推定パターンのトレッドパターンを有するタイヤの性能予測値も把握することができる。
【0114】
また、情報端末20には、前記推定パターンと、前記性能予測値を示すレーダーチャート49が表示される。これにより、ユーザは、タイヤ性能別に前記性能予測値のバランスを容易に把握して、各性能予測値を容易に比較することができる。なお、本実施形態では、前記性能予測値を示すレーダーチャート49を表示部23に表示する例について説明したが、表示部23に表示されるグラフはレーダーチャートに限られず、散布図や折れ線部などの他のグラフであってもよい。
【0115】
本実施形態では、二以上の前記特定タイヤ性能の各目標値が最適化モデル121の前記入力部に入力された場合に、パターン推定部111は、入力された複数の目標値すべてを達成可能なトレッドパターンを推定する処理例について説明した。しかしながら、本開示はこのような処理例に限られず、例えば、複数の特定タイヤ性能の各目標値が最適化モデル121に入力された場合であっても、少なくとも一つの目標値を達成可能なトレッドパターンを推定して出力する処理例であってもよい。
【0116】
なお、上述の実施形態では、推定装置10に、取得処理部110、パターン推定部111、性能予測部112、出力処理部113、教師データ更新部114、モデル学習部115が設けられ、情報端末20に、タイヤ情報受付部210、目標値受付部212、表示処理部213、目標値変更部216が設けられた構成の推定システム100を例示したが、本開示はこの構成に限られない。例えば、情報端末20が備える各構成の少なくとも一つ又は複数が推定装置10に設けられていてもよく、また、推定装置10が備える各構成の少なくとも一つ又は複数が情報端末20に設けられていてもよい。
【0117】
[第2実施形態]
以下、図11乃至図16を参照して、本開示の第2実施形態に係る予測システム200について説明する。なお、本実施形態で用いられる用語については、上述の第1実施形態で用いられた用語と同じ定義又は意味を有するものとする。また、本実施形態において、上述の第1実施形態と共通する構成又は部分については、第1実施形態における説明を参照されたい。また、上述の第1実施形態と共通する構成又は部分のうち、第1実施形態において符号を付し示した構成又は部分については、第1実施形態の説明で用いた符号と同符号を各図に付し示すことにより、その説明を省略する。
【0118】
図11は、本開示の第2実施形態に係る予測システム200の構成を示す図である。本実施形態の予測システム200は、主として、予測装置40と、情報端末50と、データベース30とによって構成されている。なお、予測システム200は、本開示のタイヤ性能予測システムの一例である。
【0119】
予測システム200は、既存の前記タイヤの前記トレッドパターンを示す前記パターン情報に基づいて、前記タイヤの前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能の値(性能値)を予測するシステムである。本実施形態では、予測システム200は、前記トレッドパターンの前記特徴量を含む前記パターン情報に基づいて、前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能の値を予測可能に構成されている。予測システム200による予測結果は、前記タイヤの開発や前記タイヤの性能試験、前記タイヤの性能評価などに用いられる。
【0120】
[予測システム200の構成]
図11に示すように、予測システム200は、予測装置40と、情報端末50と、データベース30とを備えており、これらがネットワークN1によって互いに通信可能に接続されている。
【0121】
なお、データベース30は、予測装置40又は情報端末50に備えられていてもよい。また、本実施形態では、ネットワークN1に情報端末50が接続された構成を例示するが、情報端末50が備える各構成要素や各種機能が予測装置40に搭載されていてもよい。
【0122】
予測装置40は、情報端末50から送信された予測対象である前記タイヤの前記パターン情報を取得し、取得した前記パターン情報に基づいて、前記タイヤの前記トレッドパターンに応じた前記タイヤ性能の値を予測する処理を行う。具体的には、予測装置40は、情報端末50から送信された前記パターン情報などの各種情報や、予め構築された上述の予測モデル122(図3参照)などを用いて、既存の前記タイヤの前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能値を予測する。予測モデル122による予測結果(性能予測値)は、情報端末50に出力されて、情報端末50の表示部53に表示される。
【0123】
予測装置40は、上述の推定装置10と同様のハードウェアであり、各種演算処理を実行可能な情報処理装置であり、例えば、ネットワークN1に接続されたサーバコンピュータ、クラウドサーバー、或いはパーソナルコンピュータである。予測装置40には、予測システム200を稼働するためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0124】
情報端末50は、上述の情報端末20と同様のハードウェアであり、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。ユーザは、予測装置40において実行される性能予測処理(図16参照)などの各種演算処理に用いられる各種情報を情報端末50に入力する。したがって、情報端末50には、予測システム200と連携して予測装置40に前記各種情報や制御信号などを送信したり、前記予測結果を表示画面に表示したりするためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0125】
[予測装置40]
以下、図12を参照して、予測装置40の構成について説明する。ここで、図2は、予測装置40の構成を示すブロック図である。
【0126】
予測装置40は、本実施形態の予測システム200を実現するためのものであり、上述の予測モデル122(図3参照)を用いて予測対象のタイヤのトレッドパターンに応じたタイヤ性能の前記性能予測値を予測する。
【0127】
図12に示すように、予測装置40は、制御部41と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15と、を備える。
【0128】
通信部13は、予測装置40をネットワークN1に接続し、ネットワークN1を通じて情報端末50やデータベース30との間でデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0129】
記憶部12は、不揮発性の記憶媒体であり、制御プログラム420、予測モデル122が記憶されている。なお、予測モデル122は、当該予測モデル122が格納されたメモリを備える電子回路として実現されていてもよい。
【0130】
制御プログラム420は、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、予測装置40に電気的に接続されるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)によって前記記録媒体から読み取られて記憶部12に複製されたものである。なお、制御プログラム420は、ネットワークN1に接続された外部ストレージから読み出されて通信部13を通じて入力され、記憶部12に複製されたものであってもよい。
【0131】
制御プログラム420は、予測モデル122を用いて後述の性能予測処理(図16参照)を実行するためのプログラムである。なお、制御プログラム420に替えて、前記性能予測処理(図16)を制御部41に実行させるプログラムが記憶部12に記憶されていてもよい。
【0132】
予測モデル122は、第1実施形態で説明した性能予測部112による性能予測処理(図10のステップS17参照)に用いられる学習済みモデルと同じものである。本実施形態では、予測装置40の制御部41が備える後述の性能予測部412が、予測モデル122を用いて予測対象のタイヤの前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能の数値を予測する。予測モデル122の入力部に、情報端末50から取得された予測対象のタイヤの前記パターン情報(トレッドパターンの特徴量)が説明変数として入力部に入力されると、予測モデル122は、予測対象のタイヤの前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能の数値を予測して、その予測結果(性能予測値)を目的変数として出力部から出力する。予測モデル122に入力される入力データは、前記パターン情報のほかに、予測対象のタイヤに関する前記タイヤ情報(説明変数)が含まれる。
【0133】
なお、前記パターン情報ではなく、予測対象のタイヤのトレッドパターンのイメージデータが情報端末50から取得された場合は、後述の性能予測部412が、前記イメージデータから前記トレッドパターンの前記パターン情報(特徴量)を抽出し、そのパターン情報が予測モデル122の入力部に入力される。
【0134】
本実施形態においても、予測モデル122は、入力値(入力データ)に対して予測値(出力データ)を返す周知の関数(予測関数)を含むものであってもよい。後述の性能予測部412は、予測モデル122を用いずに、前記予測関数によって前記性能予測値を出力する性能予測値算出部として構成されていてもよい。
【0135】
制御部41は、予測装置40の各部の動作を制御する。制御部41は、第1実施形態の制御部11と同様の構成であり、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。制御部41は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUが実行することにより予測装置40を制御する。
【0136】
図12に示すように、制御部41は、取得処理部410(本開示のパターン情報取得部の一例)、性能予測部412(本開示の性能予測部の一例)、性能表示処理部413(本開示の性能表示処理部の一例)等の各種の処理部を含む。
【0137】
制御部41は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。制御部41又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部41に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。また、前記制御プログラムは、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)を前記各種の処理部(性能予測部412など)として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0138】
取得処理部410は、情報端末50において設定された情報や入力された情報などが情報端末50から転送されると、それらの情報を受け取る。
【0139】
本実施形態では、取得処理部410は、予測装置40で行われる性能予測処理(図16参照)に用いられる予測対象のタイヤの前記パターン情報を取得する処理を行う。具体的には、ユーザによって情報端末50に入力された前記パターン情報がネットワークN1を通じて情報端末50から予測装置40に送信されると、そのパターン情報を取得処理部410が取得する。
【0140】
また、取得処理部410は、前記性能予測処理(図16参照)に用いられるタイヤ情報を取得する処理を行う。具体的には、情報端末50においてユーザによって入力された前記タイヤ情報がネットワークN1を通じて情報端末50から予測装置40に送信されると、そのタイヤ情報を取得処理部410が取得する。
【0141】
前記タイヤ情報は、予測対象である既存のタイヤに関する情報であり、例えば、タイヤのサイズ情報、タイヤの用途(スノータイヤ、サマータイヤなど)、タイヤ構造記号、荷重指数(ロードインデックス)、最高速度(速度記号に基づく最高速度)、タイヤの強度(プライレーティング)などである。前記サイズ情報は、例えば、タイヤ幅、扁平率、リム径、タイヤ外径などを含む。
【0142】
性能予測部412は、予測対象であるタイヤのトレッドパターンの特徴量に基づいて、前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能の値(性能値)を予測する。
【0143】
性能予測部412は、情報端末50から、所定の予測要求信号又は再予測要求信号とともに、前記パターン情報(特徴量)が取得されると、取得された前記パターン情報、及び前記予測モデル122を用いて、前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能の値(性能値)を予測する。
【0144】
具体的には、性能予測部412は、取得処理部410によって取得された前記パターン情報(特徴量)を予測モデル122の入力部に入力して、予測モデル122に前記パターン情報に応じたタイヤ性能の性能値を予測させ、予測モデル122の出力部から出力される性能予測値を予測結果として取得する。
【0145】
本実施形態では、性能予測部412は、前記パターン情報のみならず、前記タイヤ情報を説明変数として予測モデル122の入力部に入力して、予測モデル122に前記トレッドパターンに応じたタイヤ性能の値(性能値)を予測させる。このため、タイヤ性能の予測精度が向上する。
【0146】
なお、予測対象のタイヤのトレッドパターンのイメージデータが取得された場合は、性能予測部412は、前記イメージデータから前記トレッドパターンの前記パターン情報(特徴量)を抽出し、そのパターン情報を予測モデル122の入力部に入力する。
【0147】
性能表示処理部413は、性能予測部412による予測結果を通信部13を通じて外部装置に出力する。性能予測部412によって予測された前記性能予測値を情報端末50の表示部23に表示させるために、性能表示処理部413は、通信部13を通じて情報端末50に前記性能予測値を送信する。また、本実施形態では、性能表示処理部413は、前記性能予測値とともに予測処理に用いた前記パターン情報を表示部23に表示させるために、前記パターン情報も情報端末50に送信する。情報端末50は、前記性能予測値及び前記パターン情報を表示部23に表示する。
【0148】
[情報端末50]
以下、図13を参照して、情報端末50の構成について説明する。ここで、図13は、情報端末50の構成を示すブロック図である。
【0149】
図13に示すように、情報端末50は、制御部51、記憶部22、表示部23、操作部24、通信部25などを備える。情報端末50は、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。ユーザは、予測装置40により実行される前記性能予測処理(図16参照)に用いられる前記パターン情報や、前記タイヤ情報などの各種情報を情報端末50に入力することができる。
【0150】
通信部25は、情報端末50をネットワークN1に接続し、ネットワークN1を通じて予測装置40との間でデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0151】
記憶部22は、不揮発性の記憶媒体であり、制御プログラム521や、各種演算処理に用いられるデータなどが記憶されている。
【0152】
表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示装置である。
【0153】
制御部51は、情報端末50の各部の動作を制御する。制御部51は、第1実施形態の制御部21と同様の構成であり、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。制御部51は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより情報端末50を制御する。
【0154】
図13に示すように、制御部51は、タイヤ情報受付部210と、パターン情報受付部512と、表示処理部513と、特徴量変更部516(本開示の特徴量変更部の一例)等の各種の処理部を含む。制御部51は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。制御部51又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部51に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0155】
タイヤ情報受付部210は、前記タイヤ情報の入力を受け付ける処理を行う。具体的には、タイヤ情報受付部210は、表示部23に表示されるタイヤ情報入力画面230(図5参照)に入力された情報を取得する。
【0156】
タイヤ情報入力画面230において前記タイヤ情報が入力された後に、次キー33が押されると、入力された情報が記憶部22に記憶される。
【0157】
パターン情報受付部512は、予測対象のタイヤのトレッドパターンの前記特徴量を含む前記パターン情報の入力を受け付ける処理を行う。
【0158】
前記パターン情報は、トレッドパターンの特徴量であり、例えば、トレッドパターンの特徴量であり、例えば、トレッドパターンを溝角度や溝幅、溝深さ、溝長さなどの溝形状の基づく特徴量(第1特徴量)と、各溝形状の構成比率やトレッド面に対する溝面積の比率などの特徴量(第2特徴量)と、各溝の繋がり状態の評価値(連結度)などの特徴量(第3特徴量)と、を含むものである。これらの特徴量は、例えば、予測対象のタイヤのトレッドパターンを実測して取得することができる。或いは、これらの特徴量は、予測対象のタイヤのトレッドパターンの画像を解析することにより取得されてもよい。或いは、これらの特徴量は、タイヤメーカーがWEBサイトなどで提供する前記パターン情報をダウンロードして、そのパターン情報から取得されてもよい。前記パターン情報は、ユーザによって情報端末50に入力され、その後、記憶部22に記憶されるとともに、予測装置40による性能予測処理のために予測装置40に送信される。
【0159】
表示処理部513は、性能予測部412によって予測された前記性能予測値に関する情報を表示部23に表示する処理を行う。
【0160】
具体的には、表示処理部513は、予測装置40から送信された前記性能予測値を受信すると、その性能予測値を含む予測性能表示画面235(図14参照)を表示部23に表示する。
【0161】
図14に示すように、予測性能表示画面235は、予測されるタイヤ性能とその性能予測値(予測結果)を表示するための表示枠61を有する。表示処理部513は、予測されるタイヤ性能と、その性能予測値とを、表示枠61に表示する。
【0162】
また、表示処理部513は、予測されるタイヤ性能ごとに前記性能予測値を示すグラフを表示部23に表示する処理を行う。
【0163】
予測性能表示画面235は、前記グラフを表示するための表示枠62を有する。表示処理部513は、前記タイヤ性能と、その性能予測値とを含むレーダーチャート63を表示枠62に表示する。
【0164】
図14の予測性能表示画面235には、9つの前記タイヤ性能に対応する番号と、各番号に対応する性能予測値とを含むレーダーチャート63が示されている。レーダーチャート63は、各タイヤ性能の予測値を示す多角形グラフであり、各タイヤ性能と、それらの性能予測値とがグラフ内に反映されている。レーダーチャート63は、0~4までの5つの目盛りで表示されており、例えば、予め定められた許容範囲の下限値を0、前記許容範囲の上限値を4として、この範囲を基準として前記性能予測値の目盛り位置が定められている。
【0165】
また、表示処理部513は、性能予測処理に用いられた前記特徴量を表示部23に表示する処理を行う。具体的には、表示処理部513は、予測装置40から送信された前記性能予測値を受信すると、特徴量表示画面236(図15参照)を表示部23に表示する。
【0166】
図15に示すように、特徴量表示画面236は、性能予測処理に用いられた前記特徴量を表示するための表示枠64と、レーダーチャート63を表示するための表示枠62とを有する。表示処理部513は、特徴量表示画面236の表示枠64に各特徴量の名称と、各特徴量の値(数値、レベル値、ランク値など)とを表示する。
【0167】
本実施形態では、特徴量表示画面236の表示枠64は、表示枠64における特徴量の値を変更可能に構成されている。仮に、特徴量の値が入力されている場合は、その数値を変更することができる。また、数値が空欄になっている特徴量がある場合は、その特徴量の空欄に新たな数値を入力することができる。ユーザは、操作部24を操作することによって、表示枠64内の前記特徴量の値を任意に変更することができる。
【0168】
なお、予測性能表示画面235において、次キー33が押されると、表示部23に表示される画面が特徴量表示画面236(図15参照)に切り替えられる。
【0169】
特徴量変更部516は、前記性能予測値が予測された後に、前記性能予測処理に用いられた前記特徴量の値を変更する処理を行う。具体的には、特徴量変更部516は、表示枠64内の前記特徴量の値が変更された場合に、その変更後の値の入力を受け付けて、記憶部22に記憶する。また、特徴量変更部516は、前記特徴量の値が変更された後に特徴量変更キー36が押されると、タイヤ性能を再度予測させる再予測要求信号とともに、変更後の特徴量の値情報を予測装置40に送信する。
【0170】
[性能予測処理]
以下、図16のフローチャートを参照して、予測システム200において実行される性能予測処理の手順の一例とともに、本開示の性能予測方法について説明する。なお、前記性能予測処理に含まれる一又は複数のステップが適宜省略されてもよく、また、各ステップは、同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。
【0171】
まず、ステップS31では、情報端末50の制御部51は、前記タイヤ情報、及び前記パターン情報が入力されたか否かを判定する。前記タイヤ情報及び前記パターン情報が入力されると、制御部51は、前記タイヤ情報及び前記パターン情報とともに、予測要求信号を予測装置40に送信する(S32)。
【0172】
次のステップS33において、予測装置40の制御部41は、前記予測要求信号を受信すると、前記予測要求信号とともに送られてきた前記タイヤ情報及び前記パターン情報を取得する。なお、ステップS33は、本開示のパターン情報取得ステップの一例である。
【0173】
前記予測要求信号を受信すると、予測装置40の制御部41は、予測モデル122を動作可能なように有効にし、性能予測部112に予測実行信号を出力して、予測処理を実行する(S34)。そして、制御部41は、予測モデル122の入力部に、予測処理に最低限必要な情報として、情報端末50から送られてきた前記パターン情報内の特徴量を入力する(S35)。本実施形態では、制御部41は、前記特徴量に加え、情報端末50から送られてきた前記タイヤ情報を予測モデル122の入力部に入力する。
【0174】
次のステップS36において、制御部41は、所定時間内に、前記性能予測値が予測モデル122の出力部から出力されたか否かを判定する。仮に、所定時間が経過しても出力されなかった場合は、エラー信号を情報端末50に出力する(S43)。
【0175】
一方、前記性能予測値が予測モデル122の出力部から出力された場合は、次のステップS37において、制御部41は、前記性能予測値と、性能予測処理に用いた前記特徴量とを情報端末50に送信する。
【0176】
情報端末50の制御部51は、予測装置40から前記性能予測値及び前記特徴量を受信すると、ステップS38において、前記性能予測値及び前記特徴量を表示部23に表示する。具体的には、制御部51は、前記性能予測値を含む予測性能表示画面235(図14参照)を表示部23に表示する。そして、次キー33が押されたことを条件に、前記特徴量を含む特徴量表示画面236(図15参照)を表示部23に表示する。
【0177】
次のステップS39では、制御部51は、特徴量表示画面236の表示枠61に表示されている前記特徴量の値が変更されたか否かを判定する。ここで、前記特徴量の値が変更されなかった場合は、一連の処理が終了する。
【0178】
ステップS39において、前記特徴量の値が変更されたと判定されると、制御部51は、変更後の前記特徴量の値とともに、再予測要求信号を予測装置40に送信する(S40)。予測装置40において前記再予測要求信号を受信すると、制御部41は、ステップS34以降の処理を繰り返し実行する。
【0179】
このように、本実施形態の予測システム200では、予測対象のタイヤの前記パターン情報が取得処理部410によって取得されると、そのパターン情報に含まれる前記特徴量に基づいて、予測対象のタイヤのタイヤ性能の値が性能予測部412によって予測される。そのため、ユーザは、タイヤ性能が不明なタイヤのトレッドパターンの情報が分かれば、そのタイヤの前記パターン情報を情報端末50に入力することにより、予測対象のタイヤのタイヤ性能の予測値(性能予測値)を入手することができる。
【0180】
また、本実施形態では、性能予測部412によって前記性能予測値が予測された後に、前記特徴量が変更された場合に、性能予測部412が変更後の特徴量の値に基づいて再度、タイヤ性能の数値を予測する。そのため、ユーザは、タイヤのトレッドパターンの特徴量をどのように変更すれば、いずれのタイヤ性能の予測値がどのように変化するのかを容易に把握することができる。
【0181】
また、本実施形態では、前記特徴量の値、及び予測対象のタイヤのタイヤ情報に基づいて前記性能予測値が予測される。そのため、より正確に予測対象のタイヤの性能が予測される。
【0182】
また、性能予測部412は、前記性能予測値を出力するように学習された予測モデル122に前記性能予測値を出力させるように構成されている。そのため、予測モデル122の学習度を高めさえすれば、高精度の予測結果(性能予測値)を容易に得ることができる。
【0183】
また、情報端末50には、前記性能予測値と、前記性能予測値を示すレーダーチャート49が表示される。これにより、ユーザは、タイヤ性能別に前記性能予測値のバランスを容易に把握して、各性能予測値を容易に比較することができる。なお、本実施形態では、前記性能予測値を示すレーダーチャート49を表示部23に表示する例について説明したが、表示部23に表示されるグラフはレーダーチャートに限られず、散布図や折れ線部などの他のグラフであってもよい。
【0184】
なお、上述の実施形態では、予測装置40に、取得処理部410、性能予測部412、性能表示処理部413などが設けられ、情報端末50に、タイヤ情報受付部210、パターン情報受付部512、表示処理部513、特徴量変更部516などが設けられた構成の予測システム200を例示したが、本開示はこの構成に限られない。例えば、情報端末50が備える各構成の少なくとも一つ又は複数が予測装置40に設けられていてもよく、また、予測装置40が備える各構成の少なくとも一つ又は複数が情報端末50に設けられていてもよい。
【0185】
以上説明した本開示の実施形態は、以下に記す各開示事項(1)~(15)を含む。
【0186】
開示事項(1)に係るトレッドパターン推定システムは、タイヤ性能の目標値を取得する目標値取得部と、前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定するパターン推定部と、前記パターン推定部によって推定された推定パターンを出力する出力処理部と、を備える。
【0187】
開示事項(2)は、前記開示事項(1)に記載のトレッドパターン推定システムにおいて、前記パターン推定部による推定後に、前記目標値を変更する目標値変更部を更に備え、前記パターン推定部は、前記目標値変更部によって前記目標値が変更された場合に、変更後の前記目標値に基づいて前記トレッドパターンを再推定する。
【0188】
開示事項(3)は、前記開示事項(1)又は(2)のトレッドパターン推定システムにおいて、前記タイヤに関するタイヤ情報を取得するタイヤ情報取得部を更に備え、前記パターン推定部は、前記目標値及び前記タイヤ情報に基づいて、前記トレッドパターンを推定する。
【0189】
開示事項(4)は、前記開示事項(1)から(3)のいずれかに記載のトレッドパターン推定システムにおいて、前記パターン推定部は、前記タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報に基づいて前記タイヤ性能の予測値を出力するように機械学習された予測モデルと、前記予測モデルによる前記予測値が前記目標値の許容範囲に収まるように前記パターン情報を最適化する最適化モデルと、を含み、前記最適化モデルにより最適化された前記パターン情報により特定されるトレッドパターンを前記目標値を達成可能なトレッドパターンと推定する。
【0190】
開示事項(5)は、前記開示事項(1)から(4)のいずれかに記載のトレッドパターン推定システムにおいて、前記パターン推定部によって推定された前記推定パターンの特徴量に基づいて、前記推定パターンに応じた前記タイヤ性能の値を予測する性能予測部を更に備え、前記出力処理部は、前記推定パターンと前記性能予測部により予測された予測値とを所定の表示部に表示する。
【0191】
開示事項(6)は、前記開示事項(5)のトレッドパターン推定システムにおいて、前記出力処理部は、前記タイヤ性能ごとに前記予測値を示すグラフを前記表示部に出力する。
【0192】
開示事項(7)は、前記開示事項(1)から(6)のいずれかに記載のトレッドパターン推定システムにおいて、前記タイヤ性能は、燃費性能、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能、及び耐摩耗性能のうちの少なくとも二つ以上を含み、前記パターン推定部は、複数の前記タイヤ性能の各目標値のいずれか一つ又は複数を達成可能な前記トレッドパターンを推定する。
【0193】
開示事項(8)に係るトレッドパターン推定方法は、タイヤ性能の目標値を取得する目標値取得ステップと、前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定する推定ステップと、を一又は複数のプロセッサが実行する方法である。
【0194】
開示事項(9)に係るプログラムは、タイヤ性能の目標値を取得する目標値取得ステップと、前記タイヤ性能及び前記目標値に基づいて、前記目標値を達成可能なタイヤのトレッドパターンを推定する推定ステップと、を、一又は複数のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0195】
開示事項(10)に係るタイヤ性能予測システムは、タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報を取得するパターン情報取得部と、前記パターン情報に基づいてタイヤ性能の値を予測する性能予測部と、前記性能予測部によって予測された前記タイヤ性能の予測値を所定の表示部に表示する性能表示処理部と、を備える。
【0196】
開示事項(11)は、前記開示事項(10)に記載のタイヤ性能予測システムにおいて、前記性能表示処理部は、前記予測値と前記特徴量とを前記表示部に表示し、前記表示部に表示された前記特徴量を変更する特徴量変更部を更に備え、前記性能予測部は、前記特徴量変更部によって前記特徴量が変更された場合に、変更後の前記特徴量を含む前記パターン情報に基づいて前記タイヤ性能の値を再予測する。
【0197】
開示事項(12)は、前記開示事項(10)又は(11)に記載のタイヤ性能予測システムにおいて、前記性能表示処理部は、前記予測値を示すグラフを前記表示部に表示する。
【0198】
開示事項(13)は、前記開示事項(10)から(12)のいずれかに記載のタイヤ性能予測システムにおいて、前記性能予測部は、前記予測値を出力するように機械学習された予測モデルに前記パターン情報を入力することにより、前記予測モデルに前記予測値を出力させる。
【0199】
開示事項(14)に係るタイヤ性能予測方法は、タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報を取得するパターン情報取得ステップと、前記パターン情報に基づいてタイヤ性能の値を予測する予測ステップと、を一又は複数のプロセッサが実行する方法である。
【0200】
開示事項(15)に係るプログラムは、タイヤのトレッドパターンの特徴量を含むパターン情報を取得するパターン情報取得ステップと、前記パターン情報に基づいてタイヤ性能の値を予測する予測ステップと、を一又は複数のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0201】
10 :推定装置
11 :制御部
20 :情報端末
21 :制御部
30 :データベース
30A :参照データ
30B :教師データ
100 :推定システム
110 :取得処理部
111 :パターン推定部
112 :性能予測部
113 :出力処理部
114 :教師データ更新部
115 :モデル学習部
121 :最適化モデル
122 :予測モデル
210 :タイヤ情報受付部
211 :性能情報受付部
212 :目標値受付部
213 :表示処理部
216 :目標値変更部
200 :予測システム
410 :取得処理部
412 :性能予測部
413 :性能表示処理部
512 :パターン情報受付部
513 :表示処理部
516 :特徴量変更部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16